文字サイズの変更
背景色の変更
本文表示
         content

PDFダウンロード

㈳日本音楽著作権協会に対する件

独禁法3条前段

平成21年(措)第2号

排除措置命令

東京都渋谷区上原三丁目6番12号
社団法人日本音楽著作権協会
理事 加藤 衛

公正取引委員会は,上記の者に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第1項の規定に基づき,次のとおり命令する。

主文
1 社団法人日本音楽著作権協会は,放送法(昭和25年法律第132号)第2条第3号の2に規定する放送事業者及び電気通信役務利用放送法(平成13年法律第85号)第2条第3項に規定する電気通信役務利用放送事業者のうち衛星役務利用放送(電気通信役務利用放送法施行規則(平成14年総務省令第5号)第2条第1号に規定する衛星役務利用放送をいう。)を行う者であって,音楽の著作物(以下主文において「音楽著作物」という。)の著作権に係る著作権等管理事業を営む者(以下主文において「管理事業者」という。)から音楽著作物の利用許諾を受け放送等利用(放送又は放送のための複製その他放送に伴う音楽著作物の利用をいう。以下主文において同じ。)を行う者(以下主文において「放送事業者」という。)から徴収する放送等利用に係る使用料(以下主文において「放送等使用料」という。)の算定において,放送等利用割合(当該放送事業者が放送番組(放送事業者が自らの放送のために制作したコマーシャルを含む。)において利用した音楽著作物の総数に占める社団法人日本音楽著作権協会が著作権を管理する音楽著作物の割合をいう。)が当該放送等使用料に反映されないような方法を採用することにより,当該放送事業者が他の管理事業者にも放送等使用料を支払う場合には,当該放送事業者が負担する放送等使用料の総額がその分だけ増加することとなるようにしている行為を取りやめなければならない。
2 社団法人日本音楽著作権協会は,前項の行為を取りやめる旨及び今後,前項の行為と同様の行為を行わない旨を,理事会において決議しなければならない。
3 社団法人日本音楽著作権協会は,第1項の行為を取りやめるに当たり採用する放送等使用料の徴収方法について,あらかじめ,当委員会の承認を受けなければならない。
4 社団法人日本音楽著作権協会は,第1項及び第2項に基づいて採った措置を自己と音楽著作物の利用許諾に関する契約を締結している放送事業者,他の管理事業者及び自己に音楽著作物の著作権の管理を委託している者に通知しなければならない。この通知の方法については,あらかじめ,当委員会の承認を受けなければならない。
5 社団法人日本音楽著作権協会は,今後,第1項の行為と同様の行為を行ってはならない。
6 社団法人日本音楽著作権協会は,第1項,第2項及び第4項に基づいて採った措置を速やかに当委員会に報告しなければならない。

理由
第1 事実
1(1) 社団法人日本音楽著作権協会(以下「JASRAC」という。)は,肩書地に主たる事務所を置き,音楽の著作物(以下「音楽著作物」という。)の著作権(以下「音楽著作権」という。)に係る著作権等管理事業(以下「管理事業」という。)を営む者(以下「管理事業者」という。)である。
(2) 管理事業とは,我が国において,音楽著作権を有する作詞者及び作曲者(以下「著作者」という。)並びに著作者より音楽著作権の譲渡を受けた音楽出版社から音楽著作権の管理の委託を受け,音楽著作物の利用者に対し,著作権を管理する音楽著作物(以下「管理楽曲」という。)の利用を許諾し,その利用に伴い当該利用者から使用料を徴収し,管理手数料を控除して著作者及び音楽出版社に分配する事業である。
(3)ア 管理事業を営むには,平成13年9月30日までは,著作権に関する仲介業務に関する法律(昭和14年法律第67号。以下「仲介業務法」という。)の規定に基づき,文化庁長官の許可が必要とされ,事実上,JASRACのみが管理事業(平成13年9月30日までは,仲介業務法の規定に基づく仲介業務のうち音楽著作権に係るものをいう。)を営んでいたところ,同年10月1日,著作権等管理事業法(平成12年法律第131号。以下「管理事業法」という。)が施行されるとともに仲介業務法が廃止され,同日以降は,管理事業法の規定に基づき,文化庁長官の登録を受け管理委託契約約款及び使用料規程を文化庁長官に届け出ることにより管理事業を営むことが可能となった。
イ 前記アに伴い,JASRACのほか,東京都港区に本店を置く株式会社イーライセンス(以下「イーライセンス」という。),東京都渋谷区に本店を置く株式会社ジャパン・ライツ・クリアランス,東京都品川区に本店を置くダイキサウンド株式会社及び東京都渋谷区に本店を置く株式会社アジア著作協会(平成15年5月1日付けで,商号を株式会社韓日著作協会から現商号に変更したものである。)も,順次,管理事業を開始した。
(4) 著作者及び音楽出版社は,放送又は放送のための複製その他放送に伴う音楽著作物の利用(以下「放送等利用」という。),録音等に係る音楽著作物の利用,インタラクティブ配信(インターネット等を利用した配信をいう。)に係る音楽著作物の利用,業務用通信カラオケに係る音楽著作物の利用等の音楽著作物の利用方法ごとに,管理事業者を選択して音楽著作権の管理を委託することができる。
(5) 平成13年10月1日の管理事業法の施行後,放送等利用に係る管理楽曲の利用を許諾し放送等利用に係る使用料(以下「放送等使用料」という。)を徴収する事業者は,JASRACとイーライセンスのみであるところ,イーライセンスは平成18年10月に放送等利用に係る管理事業を開始している。
(6) 平成18年9月までの間はJASRACのみが放送等利用に係る管理事業を営んできており,放送等利用に係る音楽著作権のほとんどすべてをJASRACが管理していることから,放送法(昭和25年法律第132号)第2条第3号の2に規定する放送事業者及び電気通信役務利用放送法(平成13年法律第85号)第2条第3項に規定する電気通信役務利用放送事業者のうち衛星役務利用放送(電気通信役務利用放送法施行規則(平成14年総務省令第5号)第2条第1号に規定する衛星役務利用放送をいう。)を行う者であって,管理事業者から音楽著作物の利用許諾を受け放送等利用を行う者(以下「放送事業者」という。)のすべては,JASRACとの間で放送等利用に係る管理楽曲の利用許諾に関する契約を締結し,JASRACの放送等利用に係る管理楽曲をその放送番組(放送事業者が自らの放送のために制作したコマーシャルを含む。以下同じ。)において利用している。
(7) 放送事業者から放送等使用料を徴収する方法には,包括徴収(放送事業者に対し管理事業者の放送等利用に係る管理楽曲全体について包括的に利用を許諾し,放送等使用料を包括的に算定し徴収する方法をいう。以下同じ。)と個別徴収(放送等使用料を管理楽曲1曲1回ごとの利用につき算定し徴収する方法をいう。以下同じ。)がある。
(8) 各放送事業者が一定期間内の放送番組において利用する音楽著作物の総数は,それぞれほぼ一定であるところ,放送等利用に係る管理楽曲の利用許諾に関する契約を締結する相手方である管理事業者が放送事業者から放送等使用料を包括徴収の方法により徴収する場合において,当該放送等使用料の額を当該放送事業者の放送事業収入に一定率を乗ずる等の方法で算定することにより当該放送事業者の放送番組において利用された音楽著作物の総数に占める当該管理事業者の放送等利用に係る管理楽曲の割合が当該放送等使用料に反映されないような方法を採用するときは,当該放送事業者が他の管理事業者にも放送等使用料を支払うと,当該放送事業者が負担する放送等使用料の総額はその分だけ増加することとなる。
(9) 放送等利用に係る管理事業者は,著作者及び音楽出版社に対し放送等使用料を分配するため,放送等利用に係る管理楽曲の利用許諾に関する契約を締結している放送事業者から,当該管理事業者の放送等利用に係る管理楽曲の放送番組における利用状況について報告を受け,当該利用状況を把握している。
(10) 平成15年3月31日に当委員会が公表した「デジタルコンテンツと競争政策に関する研究会」報告書においては,管理事業法の施行により複数の管理事業者の参入が認められることとなったにもかかわらず,管理事業者が大口の利用者との間で包括契約(事業収入等に応じて管理楽曲の使用料を包括的に徴収する内容の契約をいう。)を締結していることを理由に管理事業への新規参入が行われなくなる場合には,当該包括契約が管理事業における競争を阻害する要因ともなり得ること等の問題点について指摘している。
2(1) JASRACは,平成13年10月1日の管理事業法の施行後,すべての放送事業者から,包括徴収の方法により放送等使用料を徴収しているところ,当該包括徴収に係る放送等使用料の算定に当たっては,放送等利用割合(当該放送事業者が放送番組において利用した音楽著作物の総数に占めるJASRACの放送等利用に係る管理楽曲の割合をいう。以下同じ。)を当該放送等使用料に反映させていない(以下,JASRACが採用する放送等利用割合を反映させない包括徴収の方法を「本件包括徴収」という。)。
(2) JASRACは,平成17年4月ころ,放送事業者のうち社団法人日本民間放送連盟(以下「民放連」という。)に加盟する地上波放送を行う放送事業者(以下「民間放送事業者」という。)との利用許諾に関する当時の契約が平成18年3月31日をもって終了することから,平成18年4月以降の民間放送事業者との契約の在り方について,民間放送事業者から放送等使用料を徴収する方法について本件包括徴収を維持する方針の下,民放連と協議を開始したところ,平成17年9月下旬,当該協議の場において,民放連から,前記1(5)のイーライセンスの放送等利用に係る管理事業への参入の動きがあったことを受け,民間放送事業者から本件包括徴収により徴収している放送等使用料の額を減額する意向の有無について確認されたが,減額する意向はない旨回答し,その後,当該協議を経た上で,平成18年9月28日,各民間放送事業者との間で,平成18年4月1日から平成25年3月31日までを契約期間とし,民間放送事業者から放送等使用料を徴収する方法について本件包括徴収とする内容の契約を締結した。
(3) JASRACとすべての放送事業者は,JASRACの使用料規程に準拠して放送等使用料の徴収方法を規定する利用許諾に関する契約を締結しているところ,JASRACの使用料規程においては放送事業者から放送等使用料を徴収する方法として個別徴収も規定されているものの,放送事業者が個別徴収の方法を選択する場合には,1曲1回の利用ごとにJASRACから放送等利用に係る管理楽曲の利用許諾を受けなければならず,かつ,JASRACが使用料規程において設定している1曲1回の利用に係る放送等使用料が高額であるため本件包括徴収の方法による場合に比して放送事業者がJASRACに支払わなければならない放送等使用料の総額が著しく高くなることから,すべての放送事業者は,JASRACとの間で,放送等使用料を徴収する方法について本件包括徴収とする契約を締結している。
(4) イーライセンスは,使用料規程について平成18年3月に,管理委託契約約款について同年9月に,それぞれ放送等利用に係る規定を追加する変更を文化庁長官に対し届け出た上で,東京都港区に本店を置く株式会社エイベックスマネジメントサービス(以下「エイベックスマネジメントサービス」という。)等から放送等利用に係る音楽著作権の管理の委託を受け,放送事業者との間で,放送事業者に対し自らの放送等利用に係る管理楽曲全体を包括的に利用許諾した上で放送事業者から徴収する放送等使用料の徴収方法を個別徴収とする内容の契約を締結しており,同年10月1日以降放送等利用に係る管理事業を行っているところ,その後の経緯は,次のとおりである。
ア エイベックスマネジメントサービスがイーライセンスに対し放送等利用に係る音楽著作権の管理を委託した音楽著作物(以下「エイベックス楽曲」という。)の中には,人気歌手である大塚愛の「恋愛写真」を含め,人気楽曲となることが予想される,又は既に人気楽曲であったことから放送等利用が見込まれる音楽著作物があったところ,FMラジオ局(超短波のラジオ放送を行う民間放送事業者をいう。)を中心とした放送事業者は,エイベックス楽曲を自らの放送番組で利用することを検討したものの,JASRACが放送等使用料を本件包括徴収により徴収しているため,エイベックス楽曲を自らの放送番組で利用すれば,自らが放送等利用に係る管理事業者に対して支払うべき放送等使用料の追加負担が生じ,その総額が増加することから,当該追加負担を避けるため,平成18年10月上旬以降,自ら制作する放送番組においてエイベックス楽曲をほとんど利用しなかった。
イ エイベックスマネジメントサービスの親会社であり,東京都港区に本店を置くエイベックス・グループ・ホールディングス株式会社及びイーライセンスは,エイベックス楽曲が放送事業者にほとんど利用されないことへの対策について,平成18年10月中旬に協議を行い,同年10月1日から12月31日までに期間を限定して,放送等使用料の追加負担が生じないよう民放連に加盟する放送事業者に対しエイベックス楽曲に係る放送等使用料を無料とすることを決定し,同年10月中旬から下旬にかけて,その旨を当該放送事業者に周知したが,当該無料期間が経過した後においてもエイベックス楽曲の利用状況が改善されてイーライセンスが放送事業者から放送等使用料を徴収しエイベックスマネジメントサービスに分配できるようになることはほとんど見込まれなかったことから,同年12月下旬,エイベックスマネジメントサービスは,平成19年1月以降のイーライセンスへの放送等利用に係る音楽著作権の管理委託契約を解約した。
ウ イーライセンスの放送等利用に係る管理楽曲のうち,放送等利用が見込まれるものはエイベックス楽曲がほとんどであったところ,前記イのとおりエイベックスマネジメントサービスが解約したほか,エイベックスマネジメントサービス以外の著作者及び音楽出版社も,JASRACがすべての放送事業者から本件包括徴収により放送等使用料を徴収している中,放送事業者が自ら制作する放送番組においてイーライセンスの放送等利用に係る管理楽曲を利用することはほとんど見込まれないため,イーライセンスに対し,放送等利用が見込まれる音楽著作物の放送等利用に係る著作権の管理を委託することはほとんどない。
(5) JASRACがすべての放送事業者から本件包括徴収により放送等使用料を徴収していることから,JASRACの放送等利用に係る管理楽曲以外の音楽著作物は放送事業者の放送番組においてほとんど利用されず,著作者及び音楽出版社がJASRAC以外の管理事業者に放送等利用に係る音楽著作権の管理を委託しても放送等使用料の分配を受けることはほとんどできないものと見込まれるため,JASRAC及びイーライセンス以外の管理事業者は,著作者及び音楽出版社から放送等利用が見込まれる音楽著作物の放送等利用に係る著作権の管理の委託を受けることができず,放送等利用に係る管理事業を開始していない。
3 前記2により,JASRAC以外の管理事業者は,自らの放送等利用に係る管理楽曲が放送事業者の放送番組においてほとんど利用されず,また,放送等利用に係る管理楽曲として放送等利用が見込まれる音楽著作物をほとんど確保することができないことから,放送等利用に係る管理事業を営むことが困難な状態となっている。
第2 法令の適用
前記事実によれば,JASRACは,すべての放送事業者との間で放送等使用料の徴収方法を本件包括徴収とする内容の利用許諾に関する契約を締結し,これを実施することによって,他の管理事業者の事業活動を排除することにより,公共の利益に反して,我が国における放送事業者に対する放送等利用に係る管理楽曲の利用許諾分野における競争を実質的に制限しているものであって,これは,独占禁止法第2条第5項に規定する私的独占に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
よって,JASRACに対し,独占禁止法第7条第1項の規定に基づき,主文のとおり命令する。

平成21年2月27日

委員長 竹島一彦
委員 濱崎恭生
委員 後藤晃
委員 神垣清水

PDFダウンロード

戻る 新規検索