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大分大山町農業協同組合に対する件

独禁法19条(一般指定13項)

平成21年(措)第24号

排除措置命令

大分県日田市大山町西大山3487番地
大分大山町農業協同組合
代表理事 矢幡 欣治

公正取引委員会は,上記の者に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第20条第1項の規定に基づき,次のとおり命令する。

主文
1 大分大山町農業協同組合は,自らが農産物直売所(別紙1記載の施設をいう。以下主文において同じ。)として運営する「木の花ガルテン」と称する施設(以下主文において「木の花ガルテン」という。)に直売用農産物(別紙2記載の農産物及び農産物加工品をいう。以下主文において同じ。)を出荷するために同組合に登録を行っている農業者(以下主文において「木の花ガルテンの出荷登録者」という。)に対し,株式会社元氣家が運営する「日田天領水の里元氣の駅」と称する農産物直売所(以下主文において「元氣の駅」という。)に直売用農産物を出荷しないようにさせている行為を取りやめなければならない。
2 大分大山町農業協同組合は,前項の行為を取りやめる旨及び今後,自らが運営する農産物直売所に直売用農産物を出荷する農業者に対し,自らが運営する農産物直売所以外の農産物直売所に直売用農産物を出荷しないようにさせる行為を行わない旨を,理事会において決議しなければならない。
3 大分大山町農業協同組合は,前2項に基づいて採った措置を,株式会社元氣家,木の花ガルテンの出荷登録者(第1項の行為により木の花ガルテンへの直売用農産物の出荷を取りやめた者を含む。),同組合が木の花ガルテン各店舗への直売用農産物の配送業務を委託している運送事業者並びに木の花ガルテン鶴見園店,明野店,わさだ店,春日浦店及び原店における店舗の運営業務を委託している事業者に通知し,かつ,同組合の職員及び木の花ガルテンの従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
4 大分大山町農業協同組合は,今後,自らが運営する農産物直売所に直売用農産物を出荷する農業者に対し,自らが運営する農産物直売所以外の農産物直売所に直売用農産物を出荷しないようにさせる行為を行ってはならない。
5 大分大山町農業協同組合は,今後,自らが運営する農産物直売所に直売用農産物を出荷する農業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針を作成するために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については,前項の行為をすることのないようにするために十分なものでなければならず,かつ,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
6 大分大山町農業協同組合は,第1項から第3項まで及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

理由
第1 事実
1(1)ア 大分大山町農業協同組合(以下「大山農協」という。)は,肩書地に主たる事務所を置き,大分県日田市大山町(以下「大山町」という。)及び同市前津江町赤石の区域を地区とし,地区内において農業を営む者等を組合員として,昭和23年6月29日,農業協同組合法(昭和22年法律第132号)に基づき設立された農業協同組合であって,別紙1記載の施設(以下「農産物直売所」という。)における別紙2記載の農産物及び農産物加工品(以下「直売用農産物」という。)等の販売その他の経済事業等を行っている者である。
平成20年4月から平成21年3月までの1年間における大山農協の事業収益は,約34億6084万円である。
イ 大山農協は,10アール以上の土地を耕作する個人の農業者であって,その住所又は経営に係る土地若しくは施設が地区内にある者等を正組合員とし,地区内に住所を有する個人で,大山農協の事業を利用することが適当と認められる者等を准組合員としているところ,大山農協の組合員の数は,平成21年3月末日現在,合計879名であり,そのうち正組合員が647名,准組合員が232名である。
ウ 大山農協は,意思決定機関として,総会及び理事会を置き,経済事業の運営方針等を決定している。
(2)ア 大山農協は,平成2年以降,大分県日田市(以下「日田市」という。)等において,「木の花ガルテン」と称する農産物直売所(以下「木の花ガルテン」という。)を順次開設してきており,平成21年9月末日現在,日田市に2店舗(大山店及びひた店),大分県別府市に1店舗(鶴見園店)及び大分市に3店舗(明野店,わさだ店及び春日浦店)並びに福岡市に2店舗(原店及び野間大池店)の合計8店舗(以下「木の花ガルテン8店舗」という。)を運営している。木の花ガルテン8店舗のうち,鶴見園店,明野店,わさだ店,春日浦店及び原店については,店舗の運営業務を他の事業者に委託している。また,大山農協は,集荷場から木の花ガルテン8店舗への直売用農産物の配送業務を運送事業者に委託している。
木の花ガルテン8店舗は,開設以来,順調に販売金額を伸ばしており,平成20年4月から平成21年3月までの1年間における木の花ガルテン8店舗の販売金額は約16億8684万円である。
イ 直売用農産物を木の花ガルテンに出荷することを希望する者は大山農協に登録を行う必要があるところ,当該登録を行っている者(以下「木の花ガルテンの出荷登録者」という。)は,平成21年3月末日現在,約3,400名であり,そのうちの大部分は大山農協の組合員以外の者である。
木の花ガルテンの出荷登録者は,日田市及びその周辺地域に所在する農業者であるところ,後記(3)の日田市に所在する農産物直売所に直売用農産物を出荷することが可能な者のほとんどが木の花ガルテンの出荷登録者となっている。
ウ 大山農協は,木の花ガルテンの出荷登録者が木の花ガルテンに出荷した直売用農産物の販売を受託するとともに,木の花ガルテンの出荷登録者から,「出荷手数料」と称して,当該木の花ガルテンの出荷登録者が木の花ガルテンに出荷して販売した直売用農産物の販売金額の22パーセントに相当する額を収受することとしている。
エ 大山農協は,木の花ガルテンの出荷登録者のうち大山農協の正組合員を構成員とする「大山部会」と称する部会(以下「大山部会」という。)並びに同登録者のうち大山農協の准組合員及び非組合員を構成員とする「日田部会」と称する部会(以下「日田部会」という。)をそれぞれ組織しており,木の花ガルテンの出荷登録者に対し,それぞれの部会を通じて理事会等で決定した事項の周知を図るなどしている。
(3)ア 主に日田市内で生産された直売用農産物を取り扱う農産物直売所として日田市に所在している施設は,平成21年4月16日より前は,木の花ガルテン大山店及び木の花ガルテンひた店のほか,日田市に本店を置く株式会社おおやま夢工房が運営する1店舗,日田市に主たる事務所を置く日田市民生活協同組合が運営する3店舗及び大分市に主たる事務所を置く大分県農業協同組合の日田地域本部が運営する2店舗の合計8店舗(以下「既存農産物直売所8店舗」という。)であった。
既存農産物直売所8店舗の中で最も販売金額の大きな店舗は木の花ガルテン大山店であり,その販売金額は平成20年4月から平成21年3月までの1年間において約4億7587万円である。
また,平成20年4月から平成21年3月までの1年間における木の花ガルテン大山店及び木の花ガルテンひた店における直売用農産物の販売金額の合計は,既存農産物直売所8店舗における直売用農産物の総販売金額の過半を占めていた。
イ(ア) 株式会社元氣家(以下「元氣家」という。)は,平成21年4月16日,日田市内に「日田天領水の里元氣の駅」と称する農産物直売所(以下「元氣の駅」という。)を開設して営業を開始した。
(イ) 直売用農産物を元氣の駅に出荷することを希望する者は,「元氣の会」と称する組織の会員(以下「元氣の会の会員」という。)にならなければならないとされている。
(ウ) 元氣家は,元氣の会の会員が元氣の駅に出荷した直売用農産物の販売を受託するとともに,元氣の会の会員から,「販売手数料」と称して,当該元氣の会の会員が元氣の駅に出荷して販売した直売用農産物の販売金額の15パーセントに相当する額を収受することとしている。
(4)ア 農産物に対する安全・安心志向の高まり等を受け,全国的に,農産物直売所の数は年々増加しており,農産物直売所において取り扱われる直売用農産物の販売金額も年々増加している。
イ 既存農産物直売所8店舗及び元氣の駅の9店舗(以下「9店舗」という。)においては,主に日田市内で生産された直売用農産物を,生産者名を明示した上で販売する方法が採られており,9店舗にとっては直売用農産物を多種類にわたってそろえることが重要となっている。このような直売用農産物の中には,梅干し等の地元の特産品であって青果市場には供給されていないため,9店舗でしか購入できないものがある。
また,木の花ガルテン大山店,株式会社おおやま夢工房が運営する1店舗及び元氣の駅の3店舗は,大分自動車道の日田インターチェンジから続く国道沿いに位置していることから,観光客や自家用車で来店する一般消費者が多い。
ウ 多くの木の花ガルテンの出荷登録者にとって,木の花ガルテンは知名度が高く,ブランド力が強いことなどから他の農産物直売所に比して集客力があること及び木の花ガルテン大山店等の集荷場に直売用農産物を搬入すると木の花ガルテン8店舗に当該直売用農産物が配送され店頭に陳列されるため販売機会が多くなることから,木の花ガルテンとの取引においては安定した収入が見込まれ,木の花ガルテンは直売用農産物の重要な出荷先となっている。
2(1)ア 大山農協は,かねてから,木の花ガルテンの出荷登録者に木の花ガルテンと競合する農産物直売所に直売用農産物を出荷しないようにさせる方針を有しており,これまでにも,木の花ガルテンと競合する農産物直売所が開設されるたびに,木の花ガルテンの出荷登録者に対し,当該農産物直売所に直売用農産物を出荷しないようにさせてきた。このことから,大山農協の前記方針は,木の花ガルテンの出荷登録者に周知されている状況にあった。
イ 前記アの状況の下,元氣家は,元氣の駅を開設するに先立ち,地元の農業者に対して元氣の駅に直売用農産物を出荷するよう依頼した。これを受けて,大山農協は,当該依頼に応じて元氣の会の会員にもなった木の花ガルテンの出荷登録者(以下「双方出荷登録者」という。)の数を調査したところ,40名程度いることを把握した。
(2) 平成21年3月中旬ころ,大山農協は,元氣の駅が営業を開始すれば,木の花ガルテン8店舗の中で最も収益を上げている木の花ガルテン大山店の販売金額が25パーセント程度減少すると予想し,その結果,大山農協の木の花ガルテンに係る経済事業全体の運営に支障を来すおそれが生じると懸念した。このため,大山農協の代表理事,専務理事,理事兼大山部会の部会長(以下「大山部会長」という。)らは,元氣の駅の営業開始による木の花ガルテン大山店の販売金額の減少を防ぐための方策を検討したところ
ア 双方出荷登録者に対し,元氣の駅に直売用農産物を出荷しないようにさせること
イ その手段として,双方出荷登録者に対し,元氣の駅に直売用農産物を出荷した場合には木の花ガルテンへの直売用農産物の出荷を取りやめるよう申し入れること
を基本方針とすることとした(以下この基本方針を「本件基本方針」という。)。そして,本件基本方針について,後日,理事会に諮ることとした。
(3) 大山農協は,前記(2)の検討結果を受け,平成21年3月24日に開催した理事会において,本件基本方針を実施することについて検討した。
(4) 大山農協は,前記(2)及び(3)の検討結果を受け,平成21年4月1日に開催した臨時理事会において,本件基本方針を実施することを決定した。
また,大山農協は,木の花ガルテン及び元氣の駅のいずれにも直売用農産物を出荷する双方出荷登録者に対しては,当該双方出荷登録者が木の花ガルテンに出荷した直売用農産物を,木の花ガルテン各店舗において人目に付かない売場に移すなどの制裁措置を講ずることとした。
(5) 大山農協は,平成21年4月13日に開催した臨時理事会において,本件基本方針を再確認した。
3 大山農協が前記2の本件基本方針等に基づいて双方出荷登録者等に対して行った申入れ等の状況は,次のとおりである。
(1) 平成21年3月31日に開催した大山部会の役員会において,出席した大山部会の役員に対し,大山部会長から,本件基本方針を説明した。
(2) 平成21年4月3日に開催した日田部会の役員会において,出席した日田部会の役員に対し,大山部会長から,本件基本方針を説明するとともに,日田部会の会員に本件基本方針を周知するよう伝えたところ,一部の日田部会の役員から,日田部会に所属する双方出荷登録者に対して直接本件基本方針を伝えるべきであるとの指摘を受けた。このため,大山農協は,日田部会に所属する双方出荷登録者を集めて本件基本方針を直接伝えることとした。
(3) 平成21年4月6日に開催した日田部会に所属する双方出荷登録者を集めた会合において,出席した双方出荷登録者20名に対し,専務理事から,元氣の駅に直売用農産物を出荷した場合には木の花ガルテンへの直売用農産物の出荷を取りやめるよう申し入れるとともに,木の花ガルテン及び元氣の駅のいずれにも直売用農産物を出荷するのであれば前記2(4)の制裁措置を講ずることを伝えた。
(4) 平成21年4月上旬以降,営農事業部長等の職員をして大山部会に所属する双方出荷登録者並びに前記(2)及び(3)の会合に出席していなかった日田部会に所属する双方出荷登録者を個別に訪問等させることにより,当該双方出荷登録者に対し,元氣の駅に直売用農産物を出荷した場合には木の花ガルテンへの直売用農産物の出荷を取りやめるよう申し入れた。
(5) 元氣の駅が営業を開始した平成21年4月16日,元氣の駅に営農事業部長等の職員を派遣し,双方出荷登録者の出荷状況を調査したところ,17名の双方出荷登録者が元氣の駅に直売用農産物を出荷していたことを把握した。このうち,3名に対して,木の花ガルテン8店舗への直売用農産物の配送業務を委託している運送事業者の代表者及び運転手に指示して木の花ガルテン各店舗において陳列されていた当該3名の直売用農産物を売場から撤去させた上でこれを返品し,また,このうち,別の1名に対して木の花ガルテンへの直売用農産物の出荷を取りやめるよう申し入れた。さらに,このうち大山農協の組合員である別の2名及び後日元氣の駅に直売用農産物を出荷していたことを把握した大山農協の組合員1名については,大山農協からの除名処分とすることを検討している。
(6) 平成21年4月22日に開催した農事主事会(大山農協の主たる組合員の会合をいう。)及び同年6月6日に開催した総会において,それぞれ,木の花ガルデンの出荷登録者を含む大山農協の組合員に対し,本件基本方針を説明した。
4 前記3の大山農協の申入れ等の行為により,前記2(1)イの双方出荷登録者40名程度のうち,例えば,大山町の特産品である梅干しを元氣の駅に出荷しようとしていた5名中4名が出荷を取りやめるなど,19名が元氣の駅に直売用農産物を出荷することを取りやめ,また,2名がこれまで継続して行ってきた木の花ガルテンへの直売用農産物の出荷を取りやめた。
5 前記3及び4により,元氣家は,元氣の駅を運営するために必要な量の直売用農産物を確保することが困難な状態となっており,近隣の青果市場を通じて直売用農産物でない農産物を仕入れざるを得なくなり,更には大山町の特産品である梅干しを目玉商品とする催事を中止せざるを得なくなるなど,元氣の駅の運営に支障を来している。
第2 法令の適用
前記事実によれば,大山農協は,本件基本方針に基づき双方出荷登録者に対して元氣の駅に直売用農産物を出荷した場合には木の花ガルテンへの直売用農産物の出荷を取りやめるよう申し入れるとともに,木の花ガルテンの出荷登録者に対して本件基本方針を周知すること等により,木の花ガルテンの出荷登録者に対し,元氣の駅に直売用農産物を出荷しないようにさせており,これは,木の花ガルテンの出荷登録者の事業活動を不当に拘束する条件を付けて,木の花ガルテンの出荷登録者と取引しているものであって,不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)の第13項に該当し,独占禁止法第19条の規定に違反するものである。
よって,大山農協に対し,独占禁止法第20条第1項の規定に基づき,主文のとおり命令する。




別紙1

 農業者又は農業者のグループ,市区町村,農業協同組合等が運営し,農業者が自ら生産した農産物及び農産物加工品を一般消費者に販売するための施設であって,有人の常設店舗形態で年間又は季節的に営業しているもの

別紙2

 地元の農業者が生産した野菜等の農産物(主に販売当日の朝に収穫したもの)及び農産物加工品であって,農産物直売所における販売のために当該農業者が当該農産物直売所に搬入するもの

平成21年12月10日

委員長 竹島一彦
委員 濱崎恭生
委員 後藤晃
委員 神垣清水
委員 濵田道代

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