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(株)リコムに対する件

独禁法66条1項 

平成21年(判)第10号ないし第16号

審判請求却下審決

東京都豊島区南池袋一丁目19番12号
審判請求人 株式会社リコム
同代表者 代表取締役 浜 屋 忠 生
同代理人 弁 護 士 本 郷   亮
同          五 島 丈 裕
同          織 田 英 生

公正取引委員会は,上記審判請求人に対する消費者庁及び消費者委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成21年法律第49号)附則第6条第3項ただし書の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)に基づく平成21年(判)第10号ないし第16号審判事件について,公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号。以下「規則」という。)第73条の規定により審判長審判官大久保正道,審判官真渕博及び審判官酒井紀子から提出された事件記録及び規則第75条の規定により審判請求人から提出された異議の申立書に基づいて,同審判官らから提出された別紙審決案を調査し,次のとおり審決する。

主       文
審判請求人の各審判請求をいずれも却下する。

理       由
1 当委員会の認定した事実,判断及び法令の適用は,いずれも別紙審決案の理由第1ないし第7と同一であるから,これらを引用する。
2 よって,審判請求人に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第66条第1項,景品表示法第6条第2項及び規則第78条第1項の規定により,主文のとおり審決する。

平成22年2月24日

公正取引委員会
委員長 竹島 一彦
委 員 後藤  晃
委 員 神垣 清水
委 員 濵田 道代
委 員 細川  清

平成21年(判)第10号ないし第16号

審   決   案

東京都豊島区南池袋一丁目19番12号
審判請求人 株式会社リコム
同代表者 代表取締役 浜 屋 忠 生
同代理人 弁 護 士 本 郷   亮
同    弁 護 士 五 島 丈 裕
同    弁 護 士 織 田 英 生

別紙「事業者名」欄記載の7社(以下「7社」という。)に対する消費者庁及び消費者委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成21年法律第49号)附則第6条第3項ただし書の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)に基づく平成21年(判)第10号ないし第16号事件について,公正取引委員会から私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第56条第1項及び公正取引委員会の審判に関する規則(以下「規則」という。)第12条第1項及び第2項の規定に基づき,審判請求人による景品表示法第6条第2項により読み替えて適用する独占禁止法第49条第6項に基づく審判請求が独占禁止法第66条第1項にいう「その他不適法であるとき」に該当するか否かにつき判断することに関して,担当審判官に指定された本職らは,審判の結果,次のとおり審決することが適当であると考え,規則第73条及び第74条の規定に基づいて本審決案を作成する。

主     文
審判請求人の各審判請求をいずれも却下する。

理     由
1 審判請求の趣旨
平成21年(排)第7号ないし第13号事件の排除命令(別添1ないし7のとおり。以下「本件各処分」という。)について,全部の取消しを求める。
2 事案の概要
公正取引委員会は,7社が行っていた「シャンピニオンエキス」と称する成分(以下「シャンピニオンエキス」という。)を使用した各商品(いずれも,シャンピニオンエキスを含有する錠剤状若しくはカプセル状の食品であり,商品名は別紙「商品名」欄記載のとおりである。以下「本件各商品」という。)に係る各表示について,景品表示法第4条第2項の規定に基づき,7社に対し,期間を定めて,当該各表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたが,提出された資料はいずれも当該各表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められず,当該各表示は,いずれも一般消費者に対し,実際のものよりも著しく優良であると示すことにより,不当に顧客を誘引し,公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示とみなされるとの判断の下に,当該各表示は同条第1項第1号の規定に違反するとして,7社に対し本件各処分を行った。これに対して,7社はいずれも,本件各処分に対して審判請求を行うことなく,その主文に記載された排除措置を受け入れ履行したが,シャンピニオンエキスを製造,販売する事業者である審判請求人が本件各処分の全部の取消しを求めて審判を請求したのが本件である。
3 違反行為等
(1) 審判請求人
審判請求人は,肩書地に本店を置き,シャンピニオンエキスを製造,販売するものである。審判請求人は,原料商社や加工メーカーを通じて,シャンピニオンエキスを7社に流通させている。(争いがない。)
(2) 違反行為
7社は,本件各商品を別添各排除命令書の事実の3に記載のとおり表示して販売を行った(以下,これらの各表示を「本件各表示」という。)。(争いがない。)
(3) 審判請求
7社は,本件各処分に対して審判請求を行うことなく受け入れ,これを履行した。
審判請求人は,「本件各処分は,シャンピニオンエキスの効果を否定するものであり,審判請求人がシャンピニオンエキスの販売,取引をすることを不能にし,また,7社と紛争を生じさせるものであるから,審判請求人は,本件各処分について利害関係を有している」として,その取消しを求めて,審判請求を行った(以下「本件各審判請求」という。)。(争いがない。)
4 本件の争点
本件の争点は,排除命令の受命者ではない審判請求人が本件各審判請求について審判請求適格を有するか否か,すなわち,本件各審判請求が独占禁止法第66条第1項にいう「その他不適法であるとき」に該当するか否かである。
5 審判請求人の意見
(1) 審判請求適格の判断について
景品表示法第6条第2項及び独占禁止法第49条第6項に基づき審判を請求することができる者については,「排除命令に不服がある者」と規定されているが,「排除命令に不服がある者」とは,当該排除命令の受命者及び当該排除命令について「法律上の利害関係を有する者」である。
「法律上の利害関係を有する者」に該当するかどうかは,おおむね,行政事件の不服申立適格に関する理論(行政事件訴訟法第9条等参照)に沿って判断されるべきである。そして,同条における原告適格が広く解されるすう勢にあることを踏まえ,「法律上の利害関係を有する」かどうかは,行政事件訴訟法第9条第2項に列挙されるような事項,その他の事項を実質的に考慮して,実態に即した柔軟な解釈によって,審判請求適格の拡大を図る方向で,当該処分により自己の権利ないし法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれがあるか否かという点で判断すべきである。
(2) 審判請求人は「法律上の利害関係を有する」か
ア 審判請求人について
(ア) 審判請求人の地位
審判請求人は,シャンピニオンエキスの唯一の製造,販売会社であり,原料商社,加工メーカーを通じて,これを7社に流通させている。
(イ) 本件各処分の審判請求人に対する影響
本件各表示は,本件各商品に消臭効果があること及びその消臭効果が本件各商品に含まれるシャンピニオンエキスの作用によるものであることを前提としているものであるから,公正取引委員会が本件各処分を行うに当たって,7社に提出を求めた「本件各表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料」とは,シャンピニオンエキスの消臭効果を裏付ける資料ということになる。そして,7社が公正取引委員会に提出した資料を作成したのは,審判請求人であり,上記資料はシャンピニオンエキスの消臭効果の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであった。ところが,公正取引委員会は,上記資料は合理的な根拠を示すものではないという誤った判断をして,本件各処分を行ったのである。そうすると,本件各処分は,本件各表示を不当とするのみならず,実質的には,審判請求人が製造,販売しているシャンピニオンエキスの消臭効果をも否定する効果があるといわざるを得ない。
また,消費者は,本件各商品のシャンピニオンエキスの消臭効果を期待するものであるから,7社は,本件各商品について,シャンピニオンエキスの消臭効果に係る表示ができなければ,これらの商品を販売する利益がなくなって販売をやめることになり,その成分であるシャンピニオンエキスの仕入れも行わなくなる蓋然性が高い。
よって,本件各処分は,審判請求人によるシャンピニオンエキスの製造,販売を不可能にし,あるいは著しく困難にするものであり,したがって,本件各処分の実質的効果として,審判請求人の財産権ないし営業上の利益が侵害されることは明らかである。
イ その他考慮すべき事項
(ア) 景品表示法の趣旨,目的
景品表示法は,商品・役務の取引に関連する不当な景品類と表示による顧客の誘引を防止するため,独占禁止法の特例法として制定された法律であり,公正な競争を確保し,もって一般消費者の利益を保護することを目的とすると規定する(第1条)。
これを事業者の側からみると,景品表示法は,消費者が自主的かつ合理的に商品選択をすることで安くて良い商品を購入することになれば,そのような安くて良い商品を製造,販売している事業者の売上げが増大し,利益を得ることができることになり,市場において価格の低下と品質の向上,そして商品等の多様性がもたらされるという市場の円滑な機能実現を趣旨,目的とするといい得る。
そして,本件各処分の根拠規定(景品表示法第4条第2項,同条第1項第1号及び第6条第1項)も,不当な表示を禁止することで,その適正化を図り,前記のような市場経済を支える仕組みを維持し,もって,消費者や公正な事業者を保護することを趣旨,目的とするといえる。
これを公正な事業者の保護という観点からいうと,当該表示をした事業者のみならず,その表示の根拠について特別の利害関係を有する事業者の利益を保護しなければ,市場の円滑な機能の実現は不可能ないし困難となるから,上記根拠規定は,これらの事業者を保護することも趣旨,目的とするともいえる。
(イ) 考慮されるべき利益
本件各処分は,シャンピニオンエキスの消臭効果がないことを根拠とするが,上記消臭効果がないとの判断(又は,7社が提出した資料が合理的な根拠を示すものではないとの判断)に誤りがあって,実際には消臭効果があるとすれば,シャンピニオンエキスの消臭効果を主張して製造,販売する唯一の事業者である審判請求人は,違法な行政処分(排除命令)によって,その財産権や営業上の自由(営業上の利益)が害されることは自明である。景品表示法が前記のとおり市場の円滑な機能の実現を法の趣旨,目的とするものであることにかんがみれば,同法に基づく本件各処分においては,上記のような審判請求人の権利利益は,最大限,考慮されなければならない。
ウ 結論
以上のとおり,本件各処分における審判請求人の立場,法の趣旨,目的,本件各処分において考慮されるべき利益の内容及び性質(本件各処分が根拠となる法令に違反してされた場合に害されることになる利益)などに照らせば,審判請求人は,本件各処分により自己の権利ないし法律上保護された利益を侵害され,また必然的に侵害されるおそれがあるといえ,よって,審判請求人は本件各処分について「法律上の利害関係を有する」といえる。
したがって,審判請求人は,審判請求適格を有し,本件各処分について審判請求をすることができる。
6 審判官の判断
(1) 排除命令の受命者ではない者の審判請求適格
審判請求人は,景品表示法第6条に基づく排除命令(本件各処分)について取消しを求めるものであるが,同排除命令は,景品表示法第6条第2項により排除措置命令とみなされ,独占禁止法第49条第6項及び第66条各項の規定が適用されるところ,審判請求人のように排除命令の受命者ではない者が同法第49条第6項の規定により審判請求することができるか否か,すなわちその者に審判請求適格があるか否かが問題である。そして,当該適格が否定されるときは,その者による審判請求は,同第66条第1項の「その他不適法であるとき」に該当し,却下されるべきである。
そこで,排除命令の受命者以外にいかなる者が同法第49条第6項の規定により審判請求することができるかについて考えるに,審判手続を経た審決は行政訴訟等の司法救済に連なるものであるから,他の行政処分の取消訴訟における原告適格と同じく解することができ,審判請求をなし得るものは,行政事件訴訟法第9条第1項にいう「法律上の利益を有する者」とその範囲を同じくするとみるべきである。
行政事件訴訟法第9条第1項にいう「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい,法律上保護された利益とは,当該行政処分の根拠となった法規が私人等の個人的利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障される利益であるとされ(最高裁判所昭和53年3月14日判決・民集32巻2号211頁),さらに,行政法規が他の目的,特に公益の実現を目的として行政権の行使に制約を課している結果たまたま一定の者が受けることとなる反射的利益とは区別されるとされている(同判決)。
さらに,行政事件訴訟法第9条第2項は,「法律上の利益」の有無の判断について,「裁判所は,処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては,当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては,当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。」旨規定している。
これによれば,審判請求人が,本件各処分について「法律上の利益」を有するかを判断するにおいては,本件各処分の根拠となる法律である景品表示法の趣旨及び目的,本件各処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮することになる。そこで,これらの点について,以下,判断する。
なお,審判請求人は,その主張の中で,処分の受命者を「法律上の利益を有する者」,処分の受命者以外の第三者を「法律上の利害関係を有する者」として使い分けているようであるが,「法律上の利害関係を有する者」についての基本的な考え方は上記の考え方と異なるものではなく,あえて別の呼称を使用する必要性は認められないので,以下では上記の考え方に従って審判請求人が「法律上の利益を有する者」に該当するかどうかについて判断する。
また,景品表示法は,商品及び役務の取引に関連する不当な景品類の提供及び不当な表示を規制の対象とする法律であるが,以下では,本件事案に則して,商品取引における不当表示に限定して述べる。
(2) 本件についての判断
ア 景品表示法の趣旨及び目的並びに不当表示の規制の趣旨及び効果
(ア) 景品表示法の趣旨及び目的
景品表示法は,もともと,独占禁止法の不公正な取引方法の一として独占禁止法によっても規制し得る不当な表示による顧客の誘引行為について,これをより迅速かつ効果的に規制するため,独占禁止法の特例として制定されたものであり,その目的は,独占禁止法と同様に,公正な競争を確保し,もって一般消費者の利益を保護することにある。すなわち,同法は,取引について一般消費者に誤認を与える不当な表示をすることを排除し,一般消費者の適正な商品選択を確保するとともに,事業者間の適正な表示による公正な競争の確保自体を目的としているのである。
審判請求人は,景品表示法は,一般消費者のみならず,公正な事業者の保護も趣旨,目的とすると主張するが,同法は事業者間の適正な表示による公正な競争の確保を目的とするものであって,その範囲内で事業者の保護が図られることになるものであり,審判請求人の主張もその限度で認められるにすぎない。
(イ) 景品表示法の不当表示に対する規制の趣旨及び効果
景品表示法は,前記目的を達成するため,第4条(不当な表示の禁止)及び第6条(排除命令)において同法に違反する行為の禁止及び排除の規定を定める。同法第4条が規制の対象とするのは,あくまでも商品の提供に当たり事業者が行う表示そのものであって,当該商品やその販売そのものを規制するものではない(まして,製品に含まれる原料等の取引を規制するものではない。)。また,当該表示が商品の効果・性能を標ぼうするものである場合,公正取引委員会は,当該表示が同法に違反する不当な表示に該当するか否かを判断するに当たり,その理由中において当該商品が表示にかかる効果・性能を有するか否かの判断をすることになるが,かかる理由中の判断が対世的な確定力を有することはない。そして,公正取引委員会は,当該表示が不当な表示であると認定した場合には,当該不当表示を行った事業者に対して,排除命令を発し,当該不当表示の取りやめや,一般消費者の誤認を排除するための公示などを命じることになるが,排除命令は,当該不当表示を行った事業者に対してのみ発せられ,その拘束力もその受命者である事業者にしか及ばないのであって,当該事業者以外の者は何ら排除命令の拘束を受けるものではないのである。
排除命令によって当該事業者に対して,当該商品についての表示の取りやめ等の措置が命じられれば,その結果として,当該事業者のみならず,当該事業者と取引関係にある者等に対しても,事実上の影響が及ぶことがあることは否定できない。しかし,前記1で述べた「法律上の利益」の判断において考慮されるべきとされる景品表示法の趣旨及び目的,あるいは,参酌すべきとされる趣旨及び目的を共通にすると解される独占禁止法の趣旨及び目的にかんがみれば,景品表示法は,排除命令を発するに当たり,そのような利害関係者の権利利益を考慮すべきものとするものとはいえない。
イ 審判請求人の主張に対する判断
審判請求人は,本件における具体的事情を挙げて,同人が本件各処分につき「法律上の利益を有する」と主張するので,以下これについて判断する。
(ア) 審判請求人は,本件各処分の対象商品(本件各商品)の成分であるシャンピニオンエキスの唯一の製造業者であるところ,本件各処分は,審判請求人が,7社及びその他の者との間で,口臭,体臭及び便臭を消す効果があることを前提としたシャンピニオンエキスの販売,その他の取引をすることを不可能にし,あるいは著しく困難にするものであり,また,審判請求人と7社との紛争を生じさせるおそれがあるものであると主張する。
しかしながら,既に述べたところから明らかなように,本件各処分は,7社に対して措置を講じることを命ずるものであって,審判請求人に対し何ら措置を命じるものではない。また,本件各処分は,本件各商品の販売に当たり,7社が行った本件各表示がいずれも景品表示法第4条第2項の規定により同条第1項第1号に該当する表示とみなされることから,本件各表示が実際のものよりも著しく優良であると示すものである旨を一般消費者に対し公示すること,今後本件各商品又はこれと同種の商品の取引に関し表示の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有することなく本件各表示と同様の表示をしてはならないこと等を命じるものである。つまり,本件各処分は,本件各商品に係る取引自体を禁ずるものではないし,まして本件各商品の原材料であるシャンピニオンエキスそのものの取引について何ら措置を命じるものでもない。
(イ) 審判請求人は,本件各処分に際し景品表示法第4条第2項が適用されたところ,同項にいう「本件表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料」について,「本件表示の裏付け」はシャンピニオンエキスの消臭効果であるから,本件各処分は,実質的にはシャンピニオンエキスの消臭効果を否定するものであると主張する。
しかしながら,既に述べたように,本件表示が不当表示に該当するとの判断に至る理由中における商品の効果・性能に関する判断は,あくまでも理由中の判断にすぎないから,かかる理由中の判断は何ら確定力を有するものではない。加えて,本件各処分は,「7社が提出した資料は,7社が販売する商品(本件各商品)について行った表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料とは認められない」との判断をしたにすぎないものであり,シャンピニオンエキスの効果そのものについて判断したものでもない。また,本件各処分によって確定されるのは,本件各商品(シャンピニオンエキスを含有する錠剤状又はカプセル状の食品)に関する本件各表示が不当表示であったことに尽き,かつ,その拘束を受けるのは7社のみであって,シャンピニオンエキス自体の性能・効果は何ら確定されるものではない。景品表示法第4条第2項の適用に当たり,7社が提出した資料が審判請求人の作成したものであったとしても,この理は同じである。
(ウ) 以上のとおりであるから,審判請求人がシャンピニオンエキスを製造,販売することが,本件各処分の存在によって何ら妨げられるものではないし,シャンピニオンエキスの効果・性能等に関して本件各処分により審判請求人が拘束を受けることもない。したがって,また,審判請求人と7社との法律関係において,審判請求人が7社に対してシャンピニオンエキスの効果・性能について自ら信じるところを主張することも,本件各処分により妨げられるものでもないのである。
ウ 以上述べたところによれば,本件各処分の存在によって,審判請求人と7社又はその他の者との間におけるシャンピニオンエキスの販売その他の取引状況等に変化が生じ,これにより審判請求人に何らかの損害が発生し,また,審判請求人と7社との間に何らかの紛争が生じるおそれがあるとしても,このような観点からの審判請求人の利益は,景品表示法上保護され,あるいは考慮されるべき利益に当たるものということはできず,単なる反射的利益にすぎないものというべきである。
したがって,審判請求人は,本件各処分のいずれについても「法律上の利益を有する者」には当たらないというべきである。
7 法令の適用
以上によれば,審判請求人は,景品表示法第6条第2項により読み替えて適用される独占禁止法第49条第6項の規定に基づく審判請求について審判請求適格を有しておらず,本件各審判請求は,独占禁止法第66条第1項の「その他不適法であるとき」に該当するものであって却下されるべきであるから,同規定により,主文のとおり審決することが相当であると判断する。

   平成21年12月24日

        公正取引委員会事務総局

             審判長審判官    大久保 正 道

                審判官    真 渕   博

                審判官    酒 井 紀 子

事 業 者 名 所 在 地 商 品 名
株式会社健康の杜  福岡市中央区大名二丁目10番29号 爽臭革命
株式会社ベンチャーバンク 東京都渋谷区渋谷二丁目15番1号 養蜂堂シャンピニオンエキス400
グリーンハウス株式会社 福岡市中央区天神二丁目14番8号 楽臭生活
株式会社ディーエイチシー 東京都港区南麻布二丁目7番1号 シャンピニオン
株式会社協和 東京都福生市東町1番地1 シャンピニオンミラクル
株式会社デイ・シー・エス 東京都新宿区西新宿六丁目5番1号 スメルナース
原澤製薬工業株式会社 東京都港区高輪三丁目19番17号 爽やかエチケット

※ 別添省略。

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