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エイベックス・マーケティング㈱に対する保証金没取申立事件

独禁法63条

平成23年(行タ)第53号

決定

東京都千代田区霞が関1丁目1番1号
申立人 公正取引委員会
同代表者委員長 竹島一彦
同指定代理人 田中久美子
同 島崎伸夫
同 秋沢陽子
同 藤原昌子
同 小髙真侑
同 松原大樹
東京都港区南青山3丁目1番30号
相手方 エイベックス・マーケティング株式会社
同代表者代表取締役 林真司
同代理人弁護士 石田英遠
同 田中勇気

平成23年(行タ)第53号 保証金没取申立事件

主文
 申立人が平成20年7月24日にした審決(平成17年(判)第11号)につき,相手方がその執行を免れるため供託した保証金200万円の全部を没取する。

理由
1 申立人は主文と同旨の裁判を求めた。その理由は,別紙保証金没取の申立書の「理由」に記載のとおりであり,これに対する相手方の意見は,別紙意見書に記載のとおりである。
2 一件記録によると以下の事実を認めることができる。
申立人は,平成20年7月24日,相手方,株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント,ビクターエンタテインメント株式会社及びユニバーサルミュージック株式会社を被審人として,平成17年(判)第11号審決(以下「本件審決」という。)を行った。本件審決の内容は,相手方ら4社が共同していわゆる着うた提供業者に対し原盤権の利用許諾を行わないようにしている行為(以下「本件違反行為」という。)を禁止し,この禁止命令に基づいて取った措置の内容及び今後本件違反行為を行わず4社が自主的に原盤権利用許諾可否を決定する旨をそれぞれ他の3社と東芝イーエムアイ株式会社及びレーベルモバイル株式会社に通知し,自社の従業員及び着うた提供業者にも周知させること等を命ずるものであった。申立人は,本件審決に先立つ平成17年3月24日,相手方ら4社及び東芝イーエムアイ株式会社に対し,本件違反行為が不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)1項1号に該当し独占禁止法(平成17年法律第35号改正前のもの。以下同じ)19条に違反するとして排除の勧告を行ったのに対し,東芝イーエムアイ株式会社は応諾したが,相手方ら4社は応諾しなかったため,相手方ら4社を被審人として本件審決を行ったものである。
相手方は平成20年8月20日,東京高等裁判所に対し本件審決の取消しを求めて提訴するとともに(以下,この訴訟を「本件審決取消訴訟」という。)同月29日,本件審決の執行を免れるため審決執行免除の申立てをし,同年11月4日,200万円を保証金として供託することを条件として審決確定まで執行を免除する旨の決定を得て,同年12月24日,上記保証金を供託した。
東京高等裁判所は,平成22年1月29日,本件審決取消訴訟について請求棄却の判決を言い渡した。この判決によれば,相手方ら4社がレーベルモバイル株式会社に着うた配信事業を委託する一方,他の着うた提供業者からの楽曲の提供の申入れに対して利用許諾をしたことがほとんどないこと,申入れに対する相手方らの対応状況などから,相手方ら4社は相互に利用許諾を拒絶することを認識しこれを認容した上で,他の着うた提供業者からの利用許諾申入れに対して拒絶していたものであり,利用拒絶行為の共同性があったと認定されており,また, 審理終結に至るまで相手方ら4社が拒絶行為を取りやめたことを対外的に明らかにするような行動をしたものと認めることができず,利用許諾が行われるようになった状況を認めるべき事情もないから,本件違反行為はなお継続しているものと認められるとして,排除措置の必要性も肯定されている。
相手方は平成22年2月12日に上告の提起及び上告受理の申立てをしたが,最高裁判所は,平成23年2月18日,上告を棄却するとともに,上告審として受理しない旨の決定をし,本件審決は確定した。
3 保証金の供託による執行免除(独占禁止法62条)及び審決確定による保証金の没取(同法63条)の制度は,審決の迅速な執行による競争秩序の速やかな回復という公益上の要請と審決の執行によって生じる原状回復が困難な被審人(相手方)の損害の回避という相手方の保護との調整を図るとともに安易な執行免除の申立てを抑制することを目的として設けられたものである。この制度趣旨と上記認定の本件審決の内容,本件審決取消訴訟の経過,同訴訟における判決の内容,本件審決の執行免除から審決の確定までに経過した期間及び保証金の額を総合考慮すると,本件における保証金200万円については,その全額を没取するのが相当と認められる。
相手方は,執行免除の申立権を濫用したり,本件審決取消訴訟を不当に遅延させたことはなく,また,本件審決が命じる排除措置を実質的に履行済みであって本件審決の執行免除によって公益を害していない旨主張するが,保証金の没取は執行免除の申立権を濫用し,又は審決取消訴訟を不当に遅延させた場合に限って行われるものではなく,また,本件審決取消訴訟において確定した判決の内容に照らすと,相手方が本件審決が命じる排除措置を実質的に履行済みであって公益を害していないとする主張も,保証金全部の没取を妨げるものとはいえない。相手方のその他の主張によっても,保証金の没取に関する前記判断は左右されない。
よって,主文のとおり決定する。

平成23年5月26日

裁判長裁判官 園尾隆司
裁判官 三代川俊一郎
裁判官 今泉秀和
裁判官 櫻井左英
裁判官 片山憲一

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