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㈱山陽マルナカに対する件

独禁法19条

平成23年(措)第5号

排除措置命令

平成23年(措)第5号
排除措置命令書

岡山市南区平福一丁目305番2号
株式会社山陽マルナカ
同代表者 代表取締役 中山 明憲

公正取引委員会は,上記の者に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第20条第2項の規定に基づき,次のとおり命令する。
なお,主文及び理由中の用語のうち,別紙「用語」欄に掲げるものの定義は,別紙「定義」欄に記載のとおりである。

主文
1 株式会社山陽マルナカ(以下「山陽マルナカ」という。)は,次の事項を,取締役会において決議しなければならない。
(1) 遅くとも平成19年1月以降,取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者(以下「特定納入業者」という。)に対して行っていた次の行為を取りやめている旨を確認すること
ア 新規開店,全面改装,棚替え等に際し,これらを実施する店舗に商品を納入する特定納入業者に対し,当該特定納入業者が納入する商品以外の商品を含む当該店舗の商品について,当該特定納入業者の従業員等が有する技術又は能力を要しない商品の移動,陳列,補充,接客等の作業を行わせるため,あらかじめ当該特定納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく,かつ,派遣のために通常必要な費用を自社が負担することなく,当該特定納入業者の従業員等を派遣させていた行為
イ 新規開店又は自社が主催する「こども将棋大会」若しくは「レディーステニス大会」と称する催事等の実施に際し,特定納入業者に対し,当該特定納入業者の納入する商品の販売促進効果等の利益がない又は当該利益を超える負担となるにもかかわらず,金銭を提供させていた行為
ウ 自社の食品課が取り扱っている調味料等の商品(以下「食品課商品」という。)のうち,自社が独自に定めた「見切り基準」と称する販売期限を経過したものについて,当該食品課商品を納入した特定納入業者に対し,当該特定納入業者の責めに帰すべき事由がなく,当該食品課商品の購入に当たって当該特定納入業者との合意により返品の条件を定めておらず,当該食品課商品の返品によって当該特定納入業者に通常生ずべき損失を自社が負担せず,かつ,当該特定納入業者から当該食品課商品の返品を受けたい旨の申出がないにもかかわらず,当該食品課商品を返品していた行為
エ(ア) 食品課商品のうち,季節商品の販売時期の終了等に伴う商品の入替えを理由として割引販売を行うこととしたものについて,当該食品課商品を納入した特定納入業者に対し,当該特定納入業者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず,当該食品課商品の仕入価格に50パーセントを乗じて得た額に相当する額を,当該特定納入業者に支払うべき代金の額から減じていた行為
(イ) 食品課商品又は自社の日配品課が取り扱っている牛乳等の商品(以下「日配品課商品」という。)のうち,全面改装に伴う在庫整理を理由として割引販売を行うこととしたものについて,当該食品課商品又は当該日配品課商品を納入した特定納入業者に対し,当該特定納入業者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず,当該割引販売において割引した額に相当する額等を,当該特定納入業者に支払うべき代金の額から減じていた行為
オ クリスマスケーキ等のクリスマス関連商品(以下「クリスマス関連商品」という。)の販売に際し,仕入担当者から,特定納入業者に対し,懇親会において申込用紙を配付した上で最低購入数量を示しその場で注文するよう指示する又は特定納入業者ごとに購入数量を示す方法により,クリスマス関連商品を購入させていた行為
(2) 今後,前記(1)の行為と同様の行為を行わない旨
2 山陽マルナカは,前項に基づいて採った措置を,納入業者に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 山陽マルナカは,今後,第1項(1)の行為と同様の行為を行ってはならない。
4 山陽マルナカは,今後,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については,第1項(1)の行為と同様の行為をすることのないようにするために十分なものでなければならず,かつ,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の改定
(2) 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての,役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者による定期的な監査
5(1) 山陽マルナカは,第1項,第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
(2) 山陽マルナカは,前項(2)に基づいて講じた措置の実施内容を,今後3年間,毎年,公正取引委員会に報告しなければならない。

理由
第1 事実
1(1) 山陽マルナカは,肩書地に本店を置き,岡山県,大阪府,兵庫県及び広島県の区域に「マルナカ」と称する店舗を出店し,食品,日用雑貨品,衣料品等の小売業を営む者である。
(2) 山陽マルナカは,自社の店舗で販売する商品のほとんど全てを納入業者から買取りの方法により仕入れており,納入業者との間で商談を行い,事前に当該商品の仕入価格等の取引条件を決定していた。納入業者は,食品,日用雑貨品,衣料品等の製造業者又は卸売業者であり,その多くが岡山県又はその周辺の区域に本店又は支店等の事業所を置いて事業を行っていた。
(3)ア 山陽マルナカは,岡山県の区域を中心に店舗を展開しており,売上高では同県の区域に本店を置く百貨店及び総合スーパーの中で最大手の事業者である。また,岡山県における小売業に係る食品の売上高に占める山陽マルナカの売上高の割合は,小売業者の中で最も高い。
イ 山陽マルナカは毎年店舗数を増加させており,山陽マルナカの年間売上高は1200億円を超えて推移しているところ,納入業者の中には,今後の山陽マルナカとの取引額の増加を期待する者が多い。
ウ 納入業者の中には,当該納入業者の売上高に占める山陽マルナカに対する売上高の割合が高いなど,山陽マルナカを主な取引先とする者が存在する。
エ 納入業者の中には,他の事業者との取引を開始する又は拡大することにより山陽マルナカに対する売上高と同程度の売上高を確保することが困難な者が存在する。
オ 納入業者の中には,山陽マルナカと取引がある自社の支店等の事業所の売上高に占める山陽マルナカに対する売上高の割合が高いことなどにより,自社の支店等の事業所と山陽マルナカとの取引関係を重視する者が存在する。
カ 前記アからオまでの事情等により,特定納入業者は,山陽マルナカとの取引の継続が困難になれば事業経営上大きな支障を来すこととなり,このため,山陽マルナカとの取引を継続する上で,納入する商品の納入価格等の取引条件とは別に,山陽マルナカからの種々の要請を受け入れざるを得ない立場にあり,その取引上の地位は山陽マルナカに対して劣っていた。
2(1) 山陽マルナカは,遅くとも平成19年1月以降,特定納入業者に対して,次の行為をしていた。
ア 新規開店,全面改装,棚替え等に際し,これらを実施する店舗に商品を納入する特定納入業者に,当該特定納入業者が納入する商品以外の商品を含む当該店舗の商品について,当該特定納入業者の従業員等が有する技術又は能力を要しない商品の移動,陳列,補充,接客等の作業を行わせることとし,あらかじめ当該特定納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく,仕入担当者から,当該特定納入業者に対し,直接又は他の納入業者を通じて,これらの作業を行う店舗,日時等を連絡し,その従業員等を派遣するよう要請していた。
この要請を受けた特定納入業者は,山陽マルナカとの取引を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされ,その従業員等を派遣していた。また,山陽マルナカは,当該派遣のために通常必要な費用を負担していなかった。
イ 新規開店を宣伝するためのアドバルーンの設置等に要する費用を確保するため,又は自社が主催する「こども将棋大会」若しくは「レディーステニス大会」と称する催事等の実施に要する費用を確保するため,あらかじめ仕入部門ごとに特定納入業者から提供を受ける金銭の目標額を設定し,仕入担当者から,特定納入業者に対し,当該特定納入業者の納入する商品の販売促進効果等の利益がない又は当該利益を超える負担となるにもかかわらず,金銭を提供するよう要請していた。
この要請を受けた特定納入業者は,山陽マルナカとの取引を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされ,金銭を提供していた。
ウ 食品課商品のうち,自社が独自に定めた「見切り基準」と称する販売期限を経過したものについて,当該食品課商品を納入した特定納入業者に対し,当該特定納入業者の責めに帰すべき事由がなく,当該食品課商品の購入に当たって当該特定納入業者との合意により返品の条件を定めておらず,かつ,当該特定納入業者から当該食品課商品の返品を受けたい旨の申出がないにもかかわらず,当該食品課商品を返品していた。
この返品を受けた特定納入業者は,山陽マルナカとの取引を継続して行う立場上,その返品を受け入れることを余儀なくされていた。また,山陽マルナカは,この返品によって当該特定納入業者に通常生ずべき損失を負担していなかった。
エ(ア) 食品課商品のうち,季節商品の販売時期の終了等に伴う商品の入替えを理由として割引販売を行うこととしたものについて,当該食品課商品を納入した特定納入業者に対し,当該特定納入業者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず,当該割引販売に伴う自社の損失を補塡するために,当該食品課商品の仕入価格に50パーセントを乗じて得た額に相当する額を,当該特定納入業者に支払うべき代金の額から減じていた。
この減額を受けた特定納入業者は,山陽マルナカとの取引を継続して行う立場上,その減額を受け入れることを余儀なくされていた。
(イ) 食品課商品又は日配品課商品のうち,全面改装に伴う在庫整理を理由として割引販売を行うこととしたものについて,当該食品課商品又は当該日配品課商品を納入した特定納入業者に対し,当該特定納入業者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず,当該割引販売に伴う自社の損失を補塡するために,当該割引販売において割引した額に相当する額等を,当該特定納入業者に支払うべき代金の額から減じていた。
この減額を受けた特定納入業者は,山陽マルナカとの取引を継続して行う立場上,その減額を受け入れることを余儀なくされていた。
オ 平成21年11月から同年12月にかけて実施したクリスマス関連商品の販売に際し,あらかじめ自社の仕入部門ごとにクリスマス関連商品の目標販売数量を設定した上で,仕入担当者から,特定納入業者に対し
(ア) 特定納入業者との懇親会において,クリスマス関連商品の申込用紙を配付し,クリスマス関連商品の最低購入数量を示した上で,その場で注文するよう指示する
(イ) 自社との取引額を踏まえて,特定納入業者ごとにクリスマス関連製品の購入数量を示す方法により,クリスマス関連商品を購入するよう要請していた。
 この要請を受けた特定納入業者は,山陽マルナカとの取引を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされ,クリスマス関連商品を購入していた。
(2) 前記(1)の行為について,山陽マルナカは
ア 平成19年1月から平成22年5月までの間に実施した新規開店,全面改装,棚替え等に際し,これらを実施する店舗に商品を納入する特定納入業者約140社に対し,延べ約4,200人の従業員等を派遣させ,使用する
イ 平成19年4月から平成22年4月までの間に実施した新規開店又は自社主催の催事等の実施に際し,特定納入業者約130社に対し,総額約3200万円の金銭を提供させる
ウ 平成21年3月から同年8月までの間に実施した全面改装に伴う在庫整理を理由とした割引販売に際し,当該割引販売を行った食品課商品又は日配品課商品を納入する特定納入業者約20社に対し,総額約410万円を当該特定納入業者に支払うべき代金の額から減じる
などしていた。
3 平成22年5月18日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行ったところ,同月19日以降,山陽マルナカは,前記2(1)の行為を取りやめている。
第2 法令の適用
前記事実によれば,山陽マルナカは,自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に
1 継続して取引する相手方に対して,当該取引に係る商品以外の商品を購入させ
2 継続して取引する相手方に対して,自己のために金銭又は役務を提供させ
3 取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ,又は取引の相手方に対して取引の対価の額を減じ
ていたものであって,この行為は,独占禁止法第2条第9項第5号(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成21年法律第51号)の施行日である平成22年1月1日前においては平成21年公正取引委員会告示第18号による改正前の不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)の第14項)に該当し,独占禁止法第19条の規定に違反するものである。このため,山陽マルナカは,独占禁止法第20条第2項において準用する独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者である。また,山陽マルナカは,平成16年(勧)第3号の審決において排除措置を命じられたにもかかわらず違反行為を行っていたこと,違反行為が長期間にわたって行われていたこと,違反行為の取りやめが公正取引委員会の立入検査を契機としたものであること等の諸事情を総合的に勘案すれば,特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって,山陽マルナカに対し,独占禁止法第20条第2項の規定に基づき,主文のとおり命令する。
平成23年6月22日

公正取引委員会

委員長 竹  島  一  彦

委 員 後  藤     晃

委 員 神  垣  清  水

委 員 濵  田  道  代

委 員 細  川     清

別紙

番号 用語 定義
1 納入業者 株式会社山陽マルナカ(以下「山陽マルナカ」という。)が自ら販売する商品を,山陽マルナカに直接販売して納入する事業者のうち,山陽マルナカと継続的な取引関係にあるもの
2 新規開店 山陽マルナカが,新たに店舗を設置して,当該店舗の営業を開始すること
3 全面改装 山陽マルナカが,自社の既存の店舗について,一旦営業を取りやめた上で売場の移動,売場面積の拡縮,設備の改修その他の改装を行うこと
4 棚替え 山陽マルナカが,自社の既存の店舗について,商品の陳列場所の変更,商品の入替えその他の改装を行うこと(全面改装に伴うものを除く。)
5 仕入担当者 納入業者との間で商談等の仕入業務を行い,当該納入業者との取引に直接影響を及ぼし得る山陽マルナカの従業員

平成23年6月22日

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