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南建設(株)による審決取消請求事件

独禁法3条後段

平成22年(行ケ)第10号

判決

岩手県九戸郡軽米町大字晴山第27地割12番地2
原告 南建設株式会社
代表者代表取締役 南勉
訴訟代理人弁護士 吉田杉明
東京都千代田区霞が関1丁目1番1号
被告 公正取引委員会
代表者委員長 竹島一彦
指定代理人 田中久美子
同 島崎伸夫
同 秋沢陽子
同 髙野雄二
同 藤原昌子
同 坪田法
同 小髙真侑
同 大元慎二

主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告
(1)被告が原告に対して,公正取引委員会平成17年(判)第14号独占禁止法違反審判事件について,平成22年3月23日付けでした審決を取り消す。
(2)訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文と同旨。
第2 事案の概要
1 被告は,原告を含む被審人らが,受注価格の低落防止及び受注機会の均等化を図るため,基本合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,岩手県発注の特定建築工事の取引分野における競争を実質的に制限していたと認定し,平成17年法律第35号による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)2条6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法3条の規定に違反するとして,平成22年3月23日付けで,原告を含む被審人80事業者に対し,独占禁止法54条2項等に基づいて審決をした(平成17年(判)第14号。以下「本件審決」という。)。
2 本件審決の主文のうち,原告に関する部分は,次のとおりである。
(1)原告は,被審人である他の78事業者並びにその他の事業者(本件審決別紙3,別紙4,別紙5記載の事業者)と共同して,遅くとも平成13年11月8日ころ以降行っていた,岩手県が条件付一般競争入札,受注希望型指名競争入札又は指名競争入札の方法により,Aの等級に格付している者のうち岩手県内に本店を置く者(これらの者のみを構成員とする特定共同企業体を含む。)のみを入札参加者として発注する建築一式工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている旨を確認することを取締役会等の業務執行の決定機関において決議しなければならない。
(2)原告は,次の事項を,被審人である他の78事業者と岩手県に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については,あらかじめ,被告の承認を受けなければならない。
ア 前項に基づいて採った措置
イ 今後,共同して,岩手県が条件付一般競争入札,受注希望型指名競争入札又は指名競争入札の方法により発注する前記工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(3)原告を含む被審人79事業者は,今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して,岩手県が競争入札の方法により発注する前記工事について,受注予定者を決定してはならない。
(4)原告を含む被審人79事業者は,前3項に基づいて採った措置を速やかに被告に報告しなければならない。
3 原告は,本件審決には,独占禁止法82条1項の取消事由があると主張して,本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。
4 本件審決の認定した事実のうち,原告に関する違反行為の要旨は,次のとおりである(略称は,特記したもののほかは本件審決のものを用いる。)。
(1)独占禁止法違反となる事実
被審人80事業者(原告を含む。)を含む106事業者(106社)は,いずれも建設業を営み又は営んでいた者であるが,原告にあっては遅くとも平成13年11月8日ころ以降,岩手県が,条件付一般競争入札,受注希望型指名競争入札又は指名競争入札の方法により,同県が建築一式工事についてAの等級(A級)に格付した者(A級建築業者)のうち同県内に本店を置く業者(県内業者)のみを入札参加者として発注する建築一式工事(岩手県発注の特定建築工事)について,受注価格の低落防止及び受注機会の均等化を図るため
ア 当該工事について受注を希望する者(受注希望者)は,106社が会員となっていた「トラスト・メンバーズ」又は「TST親交会」と称する会(TST親交会等)の会長又は地区役員(TST等世話役)に対して,その旨を表明し
(ア)受注希望者が1名のときは,その者を受注予定者とする
(イ)受注希望者が複数のときは,継続性(主として過去に自社が施工した建築物の工事であること),関連性(主として過去に自社が施工した建築物と関連する建築物の工事であること),地域性(主として工事場所が自社の事務所に近いこと)等の事情を勘案して,受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する
イ 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は受注予定者がその定めた価格で受注できるよう協力する
旨の合意(本件基本合意)の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,岩手県発注の特定建築工事の取引分野における競争を実質的に制限していた(以下,本件基本合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた行為を「本件違反行為」といい,個別の物件において受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を「受注調整」という。)。
(2)具体的事実
ア 原告を含む被審人らは,それぞれ国土交通大臣又は岩手県知事から建設業の許可を受け,岩手県内の区域において建設業を営み又は営んでいた者である。なお,原告は,岩手県知事から建設業の許可を受けた者である。また,106社のうち被審人以外の者は,それぞれ岩手県知事から建設業の許可を受け,岩手県内の区域において建設業を営み又は営んでいた者である。
イ 社団法人岩手県建設業協会(岩手県建設業協会)の会員のうち岩手県が発注する建設工事についてA級に格付されている者によって,岩手県建設業協会A級会(岩手県A級会),その下部組織として盛岡地方振興局管内に所在するA級建築業者によって,岩手県建設業協会盛岡支部建築A級会(盛岡支部A級会)が,それぞれが設けられていて,盛岡支部A級会の会員は受注調整を行っていたが,盛岡支部A級会は,いわゆる埼玉土曜会事件の摘発を契機に,岩手県建設業協会につながる組織のままでは受注調整を続けられないとして,平成6年8月20日ころに解散した。
ウ 盛岡支部A級会は解散したものの,盛岡支部A級会の会長であった被審人タカヤの取締役であった稲垣孝一(稲垣)らは,岩手県が指名競争入札の方法により発注する建築一式工事について,競争を回避し,受注価格の低落を防止するために,引き続き事前に受注調整をできるようにするため,盛岡支部A級会に代わるものとしてトラスト・メンバーズを発足させることとし,岩手県内のA級建築業者77社がその会員募集に応じ,平成6年11月1日付けでトラスト・メンバーズの会員名簿が作成され,同月2日,盛岡市所在の南部会館において,「第一回の集い」と称する発足会合が開催された。
トラスト・メンバーズは,会員各社の営業責任者級の者で運営され,会長,副会長等の役員が選任されていたほか,平成11年ころ以降は,岩手県の各地方振興局の各管轄区域からそれぞれ地区役員が選出され,会長には稲垣が就任した。
トラスト・メンバーズの会員は,岩手県が指名競争入札の方法により発注する建築一式工事について,受注調整を行い,受注予定者の決定においては,「継続性」,「関連性」,「地域性」の有無等が考慮されていた。
エ トラスト・メンバーズは,毎年1回,ほとんどの会員の出席の下,総会を開催していた。
オ トラスト・メンバーズの会員になるためには,会則において会員2社の推薦が必要とされていたほか,岩手県が競争入札の方法により発注する建築一式工事を対象に会員間で事前に受注調整が行われていること及びその方法について推薦者から説明を受け,これに賛同した上で,総会の承認を得ることになっていた。そして,新規に加入した者は,その年の総会で出席会員に紹介されるとともに,総会資料においても「新入会員紹介」等として記載され,既存会員に対して周知されていた。併せて,総会資料に添付される会員名簿によって新入会員も既存会員を知ることができるようになっていた。
力 原告は,あらかじめ推薦者からTST親交会等の活動内容について説明を受け,TST親交会等の目的に賛同した上,平成13年11月8日に開催されたTST親交会等の総会において,出席会員に紹介され,加入が承認された。
キ 106社は,岩手県発注の特定建築工事について,以下のような方法で受注調整を行っていた。
(ア)106社は,それぞれ自社が,岩手県発注の特定建築工事について指名競争入札若しくは受注希望型指名競争入札の指名を受けた場合又は条件付一般競争入札に参加する場合には,指名を受けた日又は入札の公告日から基本的に3日以内に指名を受けた旨又は入札に参加する旨を,また,受注を希望するときはその旨及び受注を希望する理由を,TST等世話役に対して連絡することとしていた。入札に参加する者が受注希望を表明しないときは,当該工事について受注を希望せず,他の受注希望者が受注予定者となることを了承したものとして取り扱うこととしていた。
(イ)TST等世話役は,受注希望を表明した会員に対して,他の受注希望者の有無を伝えることとしていた。106社は,次のとおり受注予定者を決定することとしていた。①受注希望者が1社のときは,当該受注希望者を受注予定者とし,②受注希望者が複数のときは,受注希望者が互いに連絡を取り合い,あるいは「研究会」と称する会合を開催するなどして,話合いにより受注予定者を決定していた。話合いでは,受注希望者が,「継続性」,「関連性」,「地域性」,直近の受注高の多寡など,受注を希望する理由を互いに主張し合って,受注予定者を決定することとしていた。この際,受注希望者が1社に絞られることを条件として自らの受注調整を取り下げる旨を表明する者もいた。「研究会」と称する会合等には,受注希望者のほか,TST等世話役や他の入札参加者が参加することもあり,話合いのための会合場所としては,盛岡市所在の建設研修センターの会議室のほか,受注を希望する会社の会議室やホテルの会議室などを利用していた。
(ウ)受注予定者となった者は,TST等世話役を介するなどして他の入札参加者を確認し,入札の前までに,自社の入札価格が最低価格となるように,他のTST親交会等の会員である入札参加者(会員入札参加者)に対して,「1回目○○万円,2回目以下○○万円下げ」,「自社の入札価格である○○万円以上の価格」等という内容の入札価格に関する連絡を,電話又は金額を記載した「札」と呼ばれる紙片を手渡しすることにより行うこととしていた。そして,他の会員入札参加者は,受注予定者から連絡された価格又はそれよりも高い価格で入札し,受注予定者がその定めた価格で受注できるよう協力することとしていた。そして,106社以外の者(アウトサイダー)が入札に参加する場合は,その者に対しても,受注予定者となった者が,自社が受注できるよう,適宜,協力を要請することとしていた。
ク(ア)TST親交会等においては,平成13年度以降も役員会が開催され,受注予定者の決定方法等に関する情報交換が行われていた。
(イ)トラスト・メンバーズが岩手県発注の特定建築工事について受注調整を行っている疑いがあるとの情報が岩手県に寄せられたため,平成14年10月29日,トラスト・メンバーズの会長,副会長等が岩手県による事情聴取を受け,これを受けて,同年11月13日,トラスト・メンバーズの役員会において,受注希望の表明方法,受注予定者の決定に関する各地区での対処方法及びアウトサイダーへの対処方法が再確認され,引き続き受注調整を継続することが確認されるとともに,同年10月16日に開催された平成14年度の総会で承認されていたTST親交会への名称変更が確認され,受注調整の発覚を防ぐために対外的には役員は存在しないこととされた。
平成14年11月25日付け文書により,トラスト・メンバーズの各会員に対し,同年12月1日から会の名称をTST親交会とすることが周知された。
(ウ)TST親交会等においては,平成13年度以降も毎年,ほとんどの会員の出席の下,総会が開催されていたところ,平成15年10月16日及び平成16年10月20日に開催された各総会では,従来の会則に代えて,「1.みんなで決めたルールを尊重し,人としての礼節を守り,小異をすてて効率的に柔軟な人間関係の形成をめざして英知を結集する場としましよう。」という内容の新たに制定された指標が総会資料に記載され,総会資料に含まれていた会員名簿の記載も会社名から個人名に変更されるなどして,引き続き受注調整を継続することが確認され,総会資料は,欠席者に対しても配布された。
ケ(ア)平成13年4月1日から平成16年10月25日までの期間(本件期間)における岩手県発注の特定建築工事は木件審決別紙7(以下「審決案」という。)別紙8記載の133物件(本件発注物件133物件)であり,106社はそのうちの118物件(本件受注物件118物件)を受注した。本件発注物件133物件のうち,原告が入札に参加したものは,審決案別紙8記載の番号71(物件71)の(工事名)岩手県立福岡病院アンギオ室工事,(発注方法)指名競争入札,(公告日通知日)平成14年10月24日,(入札日)平成14年11月1日,(予定価格(税抜き))630万円,(落札業者)(株)中舘建設,(落札価格(税抜き))580万円,(落札率)92,06%,(入札参加者)(株)一戸建設,内沢建設(有),(株)小山組,佐藤建設工業(株),(株)田中建設,(株)丹野組,(株)中舘建設,原告,(株)野方建設(106社以外の者),(株)小田島工務店(106社以外の者で入札日当日に参加していない者),同番号96(物件96)の(工事名)岩手県立一戸高等看護学院移転新築体育館(建築・機械設備)工事,(発注方法)指名競争入札,(公告日通知日)平成15年6月19日,(入札日)平成15年7月8日,(予定価格(税抜き))8939万0800円,(落札業者)(株)中舘建設,(落札価格(税抜き))7630万円,(落札率)85.36%,(入札参加者)(株)一戸建設,内沢建設(有),蒲野建設(株),佐藤建設工業(株),(株)田中建設,(株)丹野組,(株)中舘建設,原告,(株)小田島工務店(106社以外の者),(株)野方建設(l06社以外の者),同番号100(物件100)の(工事名)県北家畜死体保冷保管施設新築(建築)工事,(発注方法)指名競争入札,(公告日通知日)平成15年7月17日,(入札日)平成15年8月5日,(予定価格(税抜き))8441万円,(落札業者)蒲野建設(株),(落札価格(税抜き))8400万円,(落札率)99.51%,(入札参加者)(株)石倉建設,蒲野建設(株),(株)小山組,佐藤建設工業(株),(株)新田組,(株)中舘建設,原告,宮城建設(株),(株)中塚工務店(106社以外の者),山田建設(株)(106社以外の者)である。
(イ)本件発注物件133物件のうち,審決案別紙9記載の58物件(58物件)及び同別紙10記載の5物件の合計63物件(63物件)について受注調整が行われ,審決案別紙10記載の5物件については,受注予定者を決定していたが,106社の受注には至らなかった。受注調整等が行われた上記各物件のうち,原告が入札に参加し受注調整が行われたものは,物件100(審決案別紙9記載の(42)。同別紙8記載の番号100のもの)であり,受注調整の内容等は,次のとおりである。
入札前に,岩手県久慈市所在の久慈グランドホテルの会議室において,会員入札参加者のうち5社が集まって話合いを行った結果,受注希望者が被審人蒲野建設と同石倉建設の2社に絞り込まれた。両被審人の話合いの結果,被審人蒲野建設が受注予定者となった。
被審人蒲野建設は,入札前に,例えば被審人小山組に対し,1回目は8600万円以上で,2回目は1回目の最低入札価格から40万円以内の範囲で引き下げた価格で入札するよう依頼するなど,他の会員入札参加者に対し,入札価格を連絡した。
入札において,被審人蒲野建設以外の会員入札参加者は,同被審人が受注できるような価格で入札し,同被審人が1回目の入札で落札した。
(ウ)審決案別紙11記載の8物件についても,受注予定者を決定するための「研究会」が開催されていた。
コ 平成16年10月26日,本件について,被告が独占禁止法の規定に基づき立入検査を実施して審査を開始したところ,被審人らは同日以降,本件違反行為を取りやめ,TST親交会は同月28日に解散した。
5 原告主張の取消事由は,次のとおりである。
(1)ア 原告がトラスト・メンバーズへ入会したのは平成13年11月8日である。
原告の関連会社であるAの代表取締役南元舟は,平成13年4月ころ,被審人タカヤの代表者からトラスト・メンバーズへの入会の誘いを受けたが,その際,建設業者の「単なる親睦団体である」と説明されており,会の趣旨や具体的な入会手続等についてはなんら説明をされなかった。
イ 原告は,平成11年6月に岩手県から建築についてもA級の格付をされてはいたが,この当時からずっと土木業を中心とし,民間・下請工事を主な業務としていたため,建築工事の受注は,下請けとして受注している物件を含めても業務全体の1割弱程度であり,そもそも県発注の大規模な建築工事を何件も受注できるだけの備えはなかった。そのため,原告は入会の誘いを受けたときも,建築業者の集まる会に入会してもさほどメリットはないと考えたものの,南元舟の実兄で原告代表者である南勉がかつて世話になったことのある被審人タカヤからの誘いであったこともあり,入会することによって他の業者を知ることは重要であること,将来的に建築業の業務を拡大する可能性に備え建築業者の集まっている会又は協会に入会していれば発注者からの信用が得られること,入会すればこれを通じて原告がなお主な業務としていた民間・下請工事の情報収集ができると考えたことから,同会に入会してもよいと考えた。
すなわち,原告は,建築工事を受注する「メリット」ではなく,社会性に対する「メリット」を予期して,同会に入会したものである。
ウ 原告代表者は,入会の手続等についても,知らされていなかったし,入会金を1万円払ったが,総会で承認を得てはじめて入会となるということはなく,単に入会金を支払えばその時点で入会という扱いになっていた。
(2)被告は,「TST親交会等の会員となった事業者は,特段の事情のない限り,同会が主として受注調整を行うことを目的とする組織であること,実際に受注調整が行われていること,自社もそれに参加することとなることを,認識していたものと認めるのが相当である。106社のいずれについても,本件全証拠によっても,これらのことを認識することなくTST親交会等に加入していたものとうかがわれる上記特段の事情があるとは認められない。」と判断した(審決案理由第4の1(1)カ)。
被告の上記判断の資料は査88であるが,同文書は平成10年11月25日付けのものであって,本件で問題とされる以前の文書にすぎない。また,「受注調整に関する連絡等が,各会員に対して恒常的に行われていたこと」として時間軸を考えないまま「恒常的」と判断しており,被告の判断には無理がある。まして,被告は,「(したがって,受注調整に参加する意思のない者を入会させることは,部外者に対して自分達が組織的に受注調整をしている事実を暴露するに等しいこと)も踏まえれば」として上記のとおり判断しているが,「認識していたかどうか」は実際に認識していたかどうかであり,各社においてその認識は異なる。それを上記のように「暴露するに等しいことはやらないはずだから認識した」との論理は何の根拠にもならない。むしろ事前に受注調整をしていることを説明し,入会を断られたら,第三者に暴露することになるからむやみに事前に説明などしていないと見る方が自然である。このことを前提として考えるなら,個々の会社が受注調整をしているとの説明を明確にしているとの事実を指摘した上で,よって認識していたと判断すべきである。
したがって,被告の判断は実質的な証拠を欠く。
(3)本件審決は,審決案理由第4の1(5)イにおいて,「TST親交会等については,原告は,物件100の入札に参加していたところ,同物件については,別紙9の(42)のとおり,TST親交会等の会員問での受注調整が行われ,そこで受注予定者となった被審人蒲野建設が,原告を含む他の入札参加者に対して,入札価格の連絡を行い,原告を含む他の入札参加者が,入札において,当該受注予定者が受注できるように協力したこと(同別紙9の(42)掲記の各証拠により認められる。),原告が物件71及び96の入札にも参加しており,その入札状況(査169)をみても受注調整の存在を否定すべき事情はうかがわれないこと等も踏まえれば,原告について,前記(1)カの特段の事情があるとは認められない」とし,同エにおいて,物件100について入札価格の連絡を受けていないとの原告の主張に対し,「受注調整により受注予定者となった者が自社の受注を確実にするために他の入札参加者に入札価格を連絡する際に,一部の入札参加者に対してその連絡をしないということは容易に想定し難いから,被審人蒲野建設は,原告に対しても物件100に係る入札価格の連絡を行ったものと推認するのが相当である」とするが,物件100は再入札となった物件であり,再入札が行われたのであれば,他の物件と一律に論じえないはずである。被審人蒲野建設が原告に対しても連絡を行った証拠とする新田勝美供述(査143)は,なにを根拠に発言しているのか不明瞭である。地域内の協調関係さえ存在しない二戸地区の事情と久慈地区の業者間では大きな認識の違いがあり,二戸地区と久慈地区を仲介する入物など存在しておらず,ましてや原告は基本合意のルールさえも知らなかったのである。被審人蒲野建設が,地域を越える全指名業者を知りえて,会合に参加しない他地域の業者にまで入札価格の連絡を行ったと断定することはできない。
また,物件96に至っては指名競争入札であり,予定価格も公表されていない状況の中で各社最低制限価格付近での競争をしており談合を疑われるような入札状況であるとは全く思えず,原告の入札の応札価格が予定価格に近い金額であるからといって,直ちに受注に向けて協力したとの認識は誤りである。物件71では,小規模な建築工事は,工事の直接原価より仮設費や技術者を配置する給与・諸経費の現場管理費などが経費倒れする傾向にあり,赤字になりやすく,1回目の入札価格が各社の勝負価格であり,指名入札制度の上で再度入札3回となっているので2回目以降の価格は各社の社内事情で応札しているにすぎない。原告の2回目以降の札入れは,自社で設定指示した入札価格範囲内であったことにより,入札担当者の独自判断で入札しているにすぎない。
(4)本件審決は,審決案理由第4の1(5)アにおいて「原告がトラスト・メンバーズに入会した平成13年11月以降においても,また被審人タカヤが民事再生手続に入った平成14年4月以降においても引き続き恒常的に行われていたこと等に照らせば,本件基本合意は本件期間の全部を通じて実効性を失わなかったと認められ」るとし,「平成12年ころ以降,TST親交会等における受注調整の困難性が増大し,受注調整のルールからの逸脱もみられるようになってきたことはうかがわれるが,それによって上記認定判断が左右されるものとは解されない」としているが,全期間について岩手県全域隅々にまで徹底して受注調整が行われていたかは不明確なままであり,原告が位置する二戸地区においても基本合意のもとにTST親交会等やTST等世話役により受注調整の実効性が保たれていたということはできない。
(5)本件審決は,被審人らに本件違反行為と同様の行為を繰り返すおそれがあり,独占禁止法54条2項に規定する「特に必要があると認めるとき」に該当すると認められる(審決案第4の4(2)キ)としているが,少なくとも原告に対し,排除勧告を出す必要はない。
入札の時期から現在に至るまで,岩手県の特に県北地域は,入札で激しい仁義なき戦いが続いており,また,原告を単体で勘案すると「当該違反行為が将来繰り返されるおそれがある場合や,当該違反行為の結果が残存しており,競争秩序の回復が不十分である場合」に該当するものではない。TST親交会等も解散し,原告は,2件の入札に参加しているが何も不自然な状況はみられない。
6 原告の主張に対する被告の認否等は,次のとおりである。
(1)原告の主張(1)ないし(4)について
本件違反行為に係る認定事実は,実質的な証拠を備えている。
本件においては,TST親交会等の会員となった事業者は,特段の事情のない限り,同会が主として受注調整を行うことを目的とする組織であること,実際に受注調整が行われていること,自社もそれに参加することになることを認識していたものと認められ,原告についても上記特段の事情があるとは認められない。また,原告が入札に参加した物件100において受注調整が行われたと認められる上,受注予定者となった蒲野建設は,原告に対しても物件100に係る入札価格の連絡を行ったものと推認される。
(2)同(5)について
違反行為が既になくなっていると認められる場合であっても,違反行為が再び行われるおそれがある場合や,当該違反行為の結果が残存していて競争秩序の回復が不十分である場合などには,「特に必要があると認めるとき」(独占禁止法54条2項)に該当すると解され,被告は,審決をもって,被審人に対し,同法7条2項に規定する措置を命じなければならないところ,原告を含む106社について,本件違反行為と同様の行為を繰り返すおそれがあり,上記「特に必要があると認めるとき」に該当する。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,本件審決が摘示した証拠により,原告に対する関係で本件審決が認定した事実と同一の事実を認めることができ,本件審決の基礎となった事実を立証する実質的な証拠がないということはできないと判断する。その理由は,次のとおりである。
2 本件において,被告は,TST親交会等の会長の稲垣(査61,111,153),本件審決の被審人である吉武建設株式会社の代表取締役吉田悦子(査62,115,142),被審人である東野建設工業株式会社(以下「東野建設工業」という。)の専務取締役吉田耕二(以下「吉田」という。)(査116,147,151),被審人である千葉建設株式会社(以下「千葉建設」という。)の営業部長B(以下「B」という。)(査117),被審人である株式会社新田組(以下「新田組」という。)の専務取締役新田勝美(以下「新田」という。)(査127,143),被審人である株式会社佐賀組の代表取締役金野勇一(査128),大蔵建設株式会社の取締役社長C(査129),被審人であるタカヨ建設株式会社代表取締役髙橋寿夫(査130),白根建設株式会社の代表取締役D(査131),被審人タカヤの常務取締役の佐々木憲雄(査139),被審人である北水建設工業株式会社の専務取締役三田村侑(査140),被審人である篠村建設株式会社の代表取締役篠村光利(査141),被審人である株式会社恵工業の顧問E(査144),株式会社丸卓建設の社長付き岩渕彦市(査149),被審人である菱和建設株式会社(以下「菱和建設」という。)の企画副本部長細川勉(査150),株式会社石川工務所の代表取締役F(査158),被審人である千田工業株式会社の代表取締役千田三義(査177)の各供述調書及びトラスト・メンバーズが平成7年2月1日付けで会員向けに発行した「トラスト,シグナル」と題する連絡文書(査79),稲垣が平成8年8月20日付けで会員向けに発行した「お願い」と題する連絡文書(査81)及び平成10年11月25日付けで佐々勇建設株式会社に交付した連絡文書(査88),平成16年度TST親交会総会資料(査51)その他の証拠(査12,36,63ないし78,80,82ないし87,89ないし110,112ないし114,122,148,152,155ないし157,159ないし176,178ないし247,249ないし267,269,270,279,280)をもって,TST親交会等において,岩手県発注の特定建築工事について,上記第2の4(1),(2)記載の受注調整ルールが存在し,それに従って受注調整が行われていたことを認定しているが,当裁判所もこれら各証拠により上記認定をすることができると判断する。原告も原告を除く被審人ら間において本件基本合意が存在していたことについて実質的な証拠があることを争うものではない。そして,上記各証拠によれば,原告は,平成13年11月8日ころにトラスト・メンバーズに入会することにより,そのころ本件基本合意に加わったものと認められる。
3(1)原告は,トラスト・メンバーズに入会した際に,トラスト・メンバーズが受注調整をしていることを認識していなかったと主張し,個々の会社がTST親交会等が受注調整をしているとの説明を受けたという事実を指摘しなければ,本件審決にいうような「認識をしていた」との判断ができない旨主張するが,次のとおり,本件審決の判断は相当である。
上記のとおり,TST親交会等が,受注調整を行うために設立され,新たに入会する者には,推薦者において受注調整が行われていることなどを説明し,その賛同と総会での承認を得た上で入会させることとしていた組織であって,さらに,実際,同会においては,TST等世話役も関与する形で恒常的に受注調整が行われ,受注調整に関する連絡等が会員に対して恒常的に行われてきたような組織であることが認められるから,特段の事情のない限り,その会員が,自社も受注調整に参加することとなる等,本件審決が挙げるようなことを認識しないままTST親交会等に参加しているとは考えられないというべきである。そして,本件違反行為が平成16年10月26日,被告が本件について立入検査を実施して審査を開始したことにより同日以降取りやめられているが,それまでの間,本件期間を通じて本件基本合意に従って受注調整が行われていると認められるのであるから(査12,36,51,61,112,114,116,117,122,131,139,142ないし144,148,150,152,155ないし158,161ないし247,279,280),原告が平成13年11月8日ころに新たに入会をした時点でも,TST親交会等が恒常的に受注調整を行っている組織であったことに変わりはない(なお,平成13年11月8日の時点で本件基本合意が維持されなくなったこと等をうかがうべき証拠はない。)。そして,査36,61,68,69,96,100ないし106,111ないし113,142,150,156,168ないし177によれば,岩手県全域を対象とする条件付一般競争入札が導入された場合でもTST親交会等は,受注調整を行うために平成11年2月12日には臨時役員会において協議をし,その後も役員会において受注調整のための協議が続けられ,受注予定者がより確実に受注できるようにするためトラスト・メンバーズに加入していない岩手県内のA級建築業者に対して加入の勧誘を行っていくことも確認されたこと,二戸地区においても受注調整が行われていたこと(二戸地区の中舘建設株式会社(以下「中舘建設」という。)は,物件3(審決案別紙9記載の(3)。入札日平成13年6月5日)を受注調整により落札したほか,物件7(同9記載の(5)。入札日同年7月3日)について入札に参加している。また,同地区の佐藤建設工業株式会社(以下「佐藤建設工業」という。)は,物件9(同9記載の(7)。入札日同月31日)について受注調整を経て入札に参加している。なお,原告がその代表者から入会の誘いを受けたと主張する高弥建設(被審人株式会社タカヤ)は,物件1及び物件2(同9記載の(1),(2)。入札日同年5月22日),物件8(同9記載の(6)。入札日同年7月24日),物件21(同9記載の14。入札日同年9月25日)を受注調整によりそれぞれ落札している。),当時二戸地区からも役員が選出されており,原告は,二戸地区の役員である佐藤建設工業及び株式会社丹野組(以下「丹野組」という。)の推薦を受けてTST親交会等に入会し,平成13年度の総会のほか,平成14年度,平成15年度の総会にも出席していることが認められるのであるから,他に特段の事情のない本件にあっては,個々の会社がTST親交会等が受注調整をしていることの説明を受けたとの具体的事実の認定の有無にかかわらず,原告はTST親交会等が主として受注調整を行うことを目的とする組織であること,実際に受注調整が行われていること,自社もそれに参加することとなることを認識していたものと認めるのが相当である。
(2)次に,本件審決において,受注調整があったと認定された物件100(県北家畜死体保冷保管施設新築(建築)工事)について検討する。
物件100は,被審人蒲野建設が1回目の入札で落札したのであるが(査169),物件100について受注調整をした旨の新田組の新田の供述(査143),同入札に参加した被審人小山組の「入札・見積結果報告書」(査228)には,「工事名」欄に「県北家畜死体保冷保管施設新築(建築)工事」,「入札見積日時」欄に「平成15年8月5日午前10時」,「小山組入札・見積金額」の「1」欄に「86,000,000以上」,同「2」欄に「40万以内下げ」と記載されているところ,東野建設工業の吉田が「現行の入札制度では,事前には1回目の入札の最低金額が分からないことから,2回目以降の入札金額を事前に準備することなどは到底できないため,2回目以降の入札金額については,入札会場に出向いた者がその場で入札金額を決めることになるわけなのであります。ちなみに,当社の場合,最低いくらまでの入札価格であれば,会社としての採算が取れるといった程度のことは準備しますが,先程も申しましたとおり,『○○万円以上』とか,『最低から○○万円以内』などといった入札会場で入札時の最低価格が分からないにもかかわらず,あらかじめ準備するようなことまでは行えません。仮に行っているようなことがあれが,当該物件については,先程も申しましたとおり,入札参加業者間で,あらかじめ受注予定者,つまり本命を決定し,当該本命が無事受注できるよう相指名業者としてこれに協力していた物件と言わざるを得ないと考えます。」(査116)と供述していて,菱和建設の専務取締役G(査187),千葉建設のB(査117)も同様の供述をしていること,上記のとおりTST親交会等が受注調整を恒常的に行っていたことからすれば,新田組が,久慈地区の建設業者であって,物件100の入札に参加していないこと,東野建設工業や,菱和建設,千葉建設が二戸地区,久慈地区の建築業者でなく,物件100の入札に参加していないことを考慮しても,物件100について受注調整がされたことが認められる。
原告は二戸地区と久慈地区との間では協調関係が存在しないとも主張し,物件100の入札について受注調整のために開催された会合に原告は出席していないことが認められる(査143)が,新田は,久慈地区の工事は久慈地区の業者が行うことになっている旨供述し(査143),上記のとおり,受注予定者の決定は,「継続性」,「関連性」,「地域性」等の事情によって決定されていたのであるから,久慈地区の工事については「地域性」の事情を有する久慈地区の業者が受注を希望し,これらの者の間で話合いが行われたとしてもなんら不自然ではないし,受注を希望しない者は話合いに参加しないこともあるのであるから,原告が上記会合に出席していないことが不合理とはいえない。したがって,これらの事情から,久慈地区の業者が受注調整を行った場合に,受注予定者である被審人蒲野建設がTST親交会等の会員である他の入札参加者の一部の者にその連絡をしないことは想定することができず,上記認定の諸事情からすると,被審人蒲野建設から久慈地区以外の会合に参加しなかった二戸地区所在の入札参加者である原告や佐藤建設工業に物件100に係る入札価格の連絡が行われたことは容易に推認することができる。
(3)原告は,物件71,物件96の受注調整に参加していない旨主張するので検討する。
本件審決は,争点①(106社が本件違反行為を行ったか否か)については,63物件について被審人らによる受注調整が行われたと認定していて(審決案理由第2の6(2)),物件71(岩手県立福岡病院アンギオ室工事)及び物件96(岩手県立一戸高等看護学院移転新築体育館(建築・機械設備)工事)については,被審人らによる受注調整がされたとするものではない。審決案は,原告が物件71及び物件96の入札にも参加しており,その入札状況(査169)をみても受注調整の存在を否定すべき事情はうかがわれないこと等も踏まえれば,原告について,TST親交会等が主として受注調整を行うことを目的とする組織であること,実際に受注調整が行われていること,自社もそれに参加することになることを認識することなくTST親交会等に加入していたものとうかがわれる特段の事情があるとは認められない旨の判断をしているにすぎない(審決案理由第4の1(5)イ)。したがって,積極的に物件71及び物件96について受注調整が行われたとみるべき具体的証拠がないとしても,原告について本件審決を取り消すべき事由となるものではない。
なお,本件審決は,争点②(本件違反行為が「競争を実質的に制限」するものであったか否か)において,平成13年4月1日から平成16年10月25日までの期間(本件期間)内の岩手県発注の特定建築工事133物件(本件発注物件133物件)のうちTST親交会等の会員であった106社が受注した118物件(本件受注物件118物件)のうち,被告において受注調整があったことを認定した58物件以外の60物件の全部又は大部分においても本件基本合意に基づく受注調整が行われたものと推認しているところ(審決案理由第4の2(3)),物件71は再入札(3回目で落札)物件であり,1回目の入札の際に最低価格で入札した者がその後の入札において引き続き最低価格で入札して落札していることが認められる(査169)上,物件71と物件96の入札参加者は,アウトサイダー2社を含めほぼ同一の建設会社であり,異なる入札参加者も被審人小山組(物件71)と被審人蒲野建設(物件96)であって,この両会社とも,上記のとおり物件100について受注調整に参加していること,また,両物件の入札に参加している佐藤建設工業,中舘建設は,上記のとおり物件3,物件7又は物件9について受注調整に参加しているほか,株式会社一戸建設,株式会社田中建設,丹野組も,物件7の受注調整に参加していること(査36,150,168,169,171),物件96の入札状況,物件71及び物件96の落札者が上記物件3を落札した中舘建設であること(査169),そして,本件基本合意の存在からすると,物件71及び物件96についても受注調整がされたことは十分にうかがわれるのである。
4 独占禁止法54条2項にいう「特に必要があると認めるとき」について検討する。
(1)本件審決は,次の各事実を認定した上で,被審人らについては,本件違反行為と同様の行為を繰り返すおそれがあり,独占禁止法54条2項に規定する「特に必要があると認めるとき」に該当すると判断した。
ア 原告を含む被審人らTST親交会等の会員は,岩手県発注の特定建築工事について,受注価格の低落防止及び受注機会の均等化を図ることによって利益を得る目的で,本件違反行為を開始又は参加し,本件期間中,3年半以上の長期間にわたって本件違反行為を継続していた。その間,上記会員らは,実際に受注調整を行い,そのうち相当数の事例において,受注予定者を決定してその者に受注させることに成功した。
イ 岩手県は,平成12年2月1日以降,入札の透明性及び公平性確保の観点から,条件付一般競争入札を導入するなどの入札制度改革を行ったが,トラスト・メンバーズの会員らは,その導入に先立って臨時役員会を開催し,条件付一般競争入札の方法による発注の場合の受注予定者の決定方法について協議するなど,上記制度改革への具体的な対応策を講じた上で,その後も,条件付一般競争入札に係る物件も含めて本件違反行為を継続した。
ウ 岩手県は,岩手県発注の特定建築工事についてトラスト・メンバーズが受注調整を行っているとの情報を受け,平成14年10月29日に,稲垣らに対する事情聴取を行った。しかしながら,トラスト・メンバーズの会員らは,本件違反行為をやめることなく,会の名称を変更し,本件違反行為の発覚を防ぐために対外的に役員が存在しないこととするなど対応策を講じた上で,その後も本件違反行為を継続した,
エ 本件違反行為の取りやめは,被告が本件違反行為に関する立入検査を実施して審査を開始したという外部的要因によるものであり,被審人らの自発的意思に基づくものではない。
オ 本件違反行為終了後の101物件のすべてにおいて,91社のうちの84社のいずれかが入札に参加しており,そのうち100物件において,同84社のいずれか複数の者が入札に参加している。上記101物件において,入札に参加したアウトサイダーの総数は31社であり,本件期間における当該総数(46社)より減少している。そして,91社は,上記101物件のうち87物件(86.1%),発注総額約142億8739万円のうち約122億459万円(85.47%)を受注している。
以上によれば,現在に至るまで,岩手県発注の特定建築工事の取引分野における被審人らの地位等に大きな変化はない。
力 本件違反行為終了後,岩手県において入札制度の変更が行われており,具体的には,ほとんどの工事が条件付一般競争入札の方法により発注されるようになり,また,一部の工事について,いわゆる総合評価落札方式が試行されている。
しかしながら,本件違反行為において,条件付一般競争入札の方法により発注される建築一式工事も恒常的に受注調整の対象とされており,総合評価落札方式はいまだ試行段階にあり,当面の間,建築一式工事の適用対象はわずかに留まる。
(2)上記(1)アないしカの各事実は,前掲各証拠及び査277,278,283ないし285,292ないし296,304,305により,これを認めることができる。
そして,上記認定事実からすると,原告に対する関係でも独占禁止法54条2項所定の「特に必要があると認めるとき」との要件に該当するとしてした排除確保措置を命ずる本件審決は,被告の裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するということはできない。
5 よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することして,主文のとおり判決する。

平成23年10月7日

裁判長裁判官 下田文男
裁判官 木下秀樹
裁判官 綿引 穣
裁判官 杉原 則彦
裁判官 脇 由紀

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