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オリエンタル白石(株)に対する件

独禁法7条の2(独禁法3条後段)

平成23年(判)第76号ないし第78号

課徴金の納付を命ずる審決

東京都江東区豊洲五丁目6番52号
被審人 オリエンタル白石株式会社
同代表者 代表取締役 井 岡 隆 雄
同代理人 弁 護 士 井 上 展 成
同          北   秀 昭
同          濱 口 善 紀
同          北 川 恵 子
同          古 澤 陽 介

 公正取引委員会は,上記被審人に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第35号)附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)に基づく課徴金納付命令審判事件について,公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号)による改正前の公正取引委員会の審査及び審判に関する規則(以下「規則」という。)第82条の規定により審判長審判官後藤健,審判官原一弘及び審判官山田健男から提出された事件記録及び規則第84条の規定により被審人から提出された異議の申立書に基づいて,同審判官らから提出された別紙審決案を調査し,次のとおり審決する。

              主       文
被審人は,課徴金として金5億3730万円(平成23年(判)第76号につき金1億574万円,平成23年(判)第77号につき金3億7581万円,平成23年(判)第78号につき金5575万円)を平成24年11月26日までに国庫に納付しなければならない。

              理       由
1 当委員会の認定した事実,証拠,判断及び法令の適用は,いずれも別紙審決案の理由第1ないし第5と同一であるから,これらを引用する。
2 よって,被審人に対し,独占禁止法第54条の2第1項及び規則第87条第1項の規定により,主文のとおり審決する。

平成24年9月25日

委員長  竹  島  一  彦
委 員  濵  田  道  代
委 員  小 田 切  宏  之
委 員  幕  田  英  雄

平成23年(判)第76号ないし第78号

審   決   案

東京都江東区豊洲五丁目6番52号
被審人 オリエンタル白石株式会社
同代表者 代表取締役 井 岡 隆 雄
同代理人 弁 護 士 井 上 展 成
同          北   秀 昭
同          濱 口 善 紀
同          北 川 恵 子
同          古 澤 陽 介

上記被審人に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第35号。以下「改正法」という。)附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)に基づく課徴金納付命令審判事件について,公正取引委員会から独占禁止法第51条の2及び公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号)による改正前の公正取引委員会の審査及び審判に関する規則(以下「規則」という。)第31条第1項の規定に基づき担当審判官に指定された本職らは,審判の結果,次のとおり審決することが適当であると考え,規則第82条及び第83条の規定に基づいて本審決案を作成する。

主       文
被審人は,課徴金として金5億3730万円(平成23年(判)第76号につき金1億574万円,平成23年(判)第77号につき金3億7581万円,平成23年(判)第78号につき金5575万円)を国庫に納付しなければならない。

理       由
第1 前提となる事実等(当事者間に争いのない事実及び公知の事実)
1 本件の経緯
⑴ 公正取引委員会は, 平成16年10月15日,国,地方公共団体等がプレストレスト・コンクリート工事(以下「PC工事」という。)として発注する橋梁の新設工事の入札参加業者が,共同して,受注予定者を決定していた等として,オリエンタル建設株式会社ほか22社(以下「23社」という。)に対して,3件の違反行為について,それぞれ排除措置を採るべきことを勧告した(平成16年(勧)第27号ないし第29号)。
⑵ 23社が上記の勧告をいずれも応諾しなかったことから,公正取引委員会は,平成16年11月18日,23社に対して,審判開始決定を行った。
⑶ オリエンタル建設株式会社は,平成19年10月1日,株式会社白石を吸収合併し,商号を「オリエンタル白石株式会社」に変更した。
⑷ 東京地方裁判所は,平成20年12月31日午前10時,被審人に対して,更生手続開始の決定を行った。この決定において,管財人河野玄逸が選任され,更生債権等の届出をすべき期間が平成21年3月31日までと定められた。被審人に係る更生手続において,公正取引委員会は,課徴金債権について届出を行わなかった。
⑸ 東京地方裁判所は,平成22年2月28日,被審人に係る更生計画認可の決定を行った。また,同日,管財人として富永宏が追加選任された。更生計画認可の決定は,同年7月1日に確定した。
⑹ 公正取引委員会は,平成22年9月21日,23社の3件の違反行為(後記2⑴ないし⑶参照)について,それぞれ排除措置を命ずる審判審決を行い(平成16年(判)第26号ないし第28号。以下,併せて「本案審決」という。),これらの審決は,いずれも平成22年10月22日に確定した。
なお,被審人管財人河野玄逸は,同年9月22日,管財人を辞任した。
⑺ 公正取引委員会は,本案審決を前提として,平成23年6月15日,被審人管財人富永宏に対し,独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき,3件の課徴金納付命令を発した(平成23年(納)第63号,第72号及び第81号)。同管財人が,同年7月14日,本件における課徴金に係る請求権(以下「本件課徴金債権」という。)は,会社更生法の定めるところにより既に失権しており,課徴金納付命令を発することはできないことを理由として,同条第5項の規定に基づく審判手続の開始をいずれも請求したことから,公正取引委員会は,同法第49条第2項の規定により,各審判手続を開始した(本件審判事件)。
⑻ 東京地方裁判所は,平成23年10月24日,前記⑸の被審人に係る更生手続を終結する旨の決定を行った。そこで,被審人は,同年11月2日,本件審判事件について,被審人管財人富永宏を受継した。
2 本件違反行為
⑴ 平成23年(判)第76号事件
被審人は,他の事業者と共同して,遅くとも平成13年4月1日以降,平成16年3月31日まで,国土交通省が関東地方整備局において一般競争入札,公募型指名競争入札,工事希望型指名競争入札又は指名競争入札の方法によりPC工事として発注する橋梁の新設工事(以下「関東地整発注の特定PC橋梁工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,関東地整発注の特定PC橋梁工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係るものである。
⑵ 平成23年(判)第77号事件
被審人は,他の事業者と共同して,遅くとも平成12年4月1日以降,平成15年12月3日まで,国土交通省(ただし,平成13年1月5日までは建設省)が近畿地方整備局(ただし,平成13年1月5日までは近畿地方建設局)において一般競争入札,公募型指名競争入札,工事希望型指名競争入札又は指名競争入札の方法によりPC工事として発注する橋梁の新設工事(以下「近畿地整発注の特定PC橋梁工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,近畿地整発注の特定PC橋梁工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係るものである。
⑶ 平成23年(判)第78号事件
被審人は,他の事業者と共同して,遅くとも平成13年4月1日以降,平成15年12月3日まで,福島県が条件付き一般競争入札,技術評価型意向確認方式指名競争入札,希望工種反映型指名競争入札又は指名競争入札の方法によりPC工事として発注する橋梁の新設工事(以下「福島県発注の特定PC橋梁工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,福島県発注の特定PC橋梁工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係るものである。
3 課徴金の計算の基礎
⑴ 平成23年(判)第76号事件
 ア 本件違反行為の実行期間
被審人が違反行為の実行としての事業活動を行った日は,前記2⑴の違反行為に基づき被審人が最初に関東地整発注の特定PC橋梁工事の入札に参加した平成13年10月25日である。また,被審人は,平成16年4月1日以降,当該違反行為を取りやめており,同年3月31日にその実行としての事業活動はなくなっている。
   したがって,被審人については,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,実行期間は,平成13年10月25日から平成16年3月31日までとなる。
イ 被審人の売上額
被審人の前記アの実行期間における関東地整発注の特定PC橋梁工事に係る売上額は,改正法附則第2条のなお従前の例によることとする規定により,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成17年政令第318号)による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(以下「独占禁止法施行令」という。)第6条の規定に基づき算定すべきところ,当該規定に基づき算定すると,4件の契約により定められた対価の額を合計した17億6242万5000円である。
⑵ 平成23年(判)第77号事件
 ア 本件違反行為の実行期間
被審人が違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成12年12月3日以前である。また,被審人は,平成15年12月4日以降,当該違反行為を取りやめており,同月3日にその実行としての事業活動はなくなっている。
   したがって,被審人については,前記2⑵の違反行為の実行としての事業活動を行った日から当該違反行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間が3年を超えるため,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,実行期間は,平成12年12月4日から平成15年12月3日までの3年間となる。
イ 被審人の売上額
被審人の前記アの実行期間における近畿地整発注の特定PC橋梁工事に係る売上額は,独占禁止法施行令第6条の規定に基づき算定すべきところ,当該規定に基づき算定すると,7件の契約により定められた対価の額を合計した62億6356万5000円である。
⑶ 平成23年(判)第78号事件
 ア 本件違反行為の実行期間
被審人が違反行為の実行としての事業活動を行った日は,前記2⑶の違反行為に基づき被審人が最初に福島県発注の特定PC橋梁工事の入札に参加した平成13年4月10日である。また,被審人は,平成15年12月4日以降,当該違反行為を取りやめており,同月3日にその実行としての事業活動はなくなっている。
   したがって,被審人については,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,実行期間は,平成13年4月10日から平成15年12月3日までとなる。
イ 被審人の売上額
被審人の前記アの実行期間における福島県発注の特定PC橋梁工事に係る売上額は,独占禁止法施行令第6条の規定に基づき算定すべきところ,当該規定に基づき算定すると,3件の契約により定められた対価の額を合計した9億2932万7962円である。
第2 本件の争点
1 本件課徴金債権は,更生債権に該当するか。
2 本件課徴金債権は,更生計画認可の決定により免責されるか。
3 本件課徴金債権が更生計画認可の決定により免責される場合,公正取引委員会は,課徴金の納付を命ずることができるか。
第3 争点についての双方の主張
1 争点1(本件課徴金債権は,更生債権に該当するか)について
⑴ 審査官の主張
更生債権は,更生会社に対し更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であるが(会社更生法〔平成14年法律第154号〕第2条第8項柱書),以下の理由から,本件課徴金債権は,「更生手続開始前の原因に基づく」ものといえないため,会社更生法上の更生債権に該当せず,共益債権あるいは開始後債権に該当する。
ア 「更生手続開始前の原因に基づく」とは,意思表示等の債権発生の基本的構成要件該当事実が更生手続開始決定前に存在することを意味し,当該債権自体が更生手続開始の時点で既に成立していることまでは要しないが,その債権発生の基本となる法律関係が更生手続開始前に生じ,債権の成立に必要な事実の大部分が更生手続開始前に具備されていることが必要と解される(一部具備説)。一部具備説の根拠は,更生手続開始決定前に更生会社との間に債権発生の基本となる法律関係が生じていて,将来,更生会社に対して請求権を有するに至る強度の可能性のある者は,債権の発生前であっても,既に債権として成立している場合と同様の利益状況にあると考えられることにある。そして,独占禁止法は,公正取引委員会に対し,カルテル等の違反行為を公正取引委員会レベルで確定した場合には,課徴金の納付を命ずることを義務付けているのであって,単に独占禁止法の規定に違反すると評価され得る行為が客観的に存在しただけで,公正取引委員会に課徴金納付命令を発する義務が生じるものではないこと,事件の調査に当たって公正取引委員会に裁量が存在すること,違反行為に係る審判手続において,違反行為の存在が認定されず,課徴金納付命令が発令されないことがあること等からすれば,独占禁止法上の課徴金債権について,その基本となる法律関係が生じ,課徴金債権の成立に必要な事実の大部分が具備され,課徴金納付命令が行われるに至る強度の可能性が認められるのは,早くとも,違反行為が公正取引委員会レベルで確定した時点である。
したがって,独占禁止法上の課徴金債権についての債権発生の基本的構成要件該当事実は,違反行為の認定が公正取引委員会レベルで確定したことであり,本件においては,公正取引委員会が違反行為を認める審判審決をしたことである。その時期は,公正取引委員会が本案審決をした平成22年9月21日である。
イ(ア) 独占禁止法は,複雑な経済現象を対象とするものであり,多くの場合,違反行為の存在,市場効果等は慎重な判断を経なければ認定することができず,これらが確認されなければ,当該違反行為が課徴金の対象となるかどうかも判断することができない。このため,独占禁止法は,課徴金納付命令又は課徴金の納付を命ずる審決を行う前に公正取引委員会レベルでの違反行為の確定を先行させている。公正取引委員会レベルで違反行為を確定していない段階で,公正取引委員会に対して,本件課徴金債権を届け出るように求めることは,額未定という届出が許容されるとしても,理不尽かつ非現実的である。
(イ) 公正取引委員会は,公正かつ中立な機関として,被審人の防御権を十分に保障する対審構造の審判手続(独占禁止法第52条及び第54条の3)において,課徴金の対象となる違反行為の有無を判断するものとされるところ,違反行為の存否について審判手続を行っている間に,公正取引委員会が,違反行為の存在を前提として,独占禁止法上の課徴金債権を更生債権として届け出ることは,その公正・中立性に疑義を持たれることとなるから,行うべきではない。
ウ 独占禁止法上の課徴金は,違反行為の摘発に伴う不利益を増大させてその誘因を少なくして違反行為を抑止することを目的とする行政上の措置であり(最高裁判所第三小法廷平成17年9月13日判決・民集59巻7号1950頁),独占禁止法上の課徴金債権が執行されることは,更生会社も参加する市場の公正の確保という公共の利益の実現に不可欠である。独占禁止法上の課徴金債権の上記の公益的性質に鑑みれば,免責や権利内容の変更の対象とされる範囲は,できる限り狭くなるよう解釈すべきである。
エ 被審人の主張ウについて 
  罰金等の請求権(会社更生法第204条第1項第3号)及び租税の逋(ほ)脱等に係る租税債権(同項第4号)について,債権の届出をしない場合にも更生会社は免責されず,更生会社の利害関係人に影響を及ぼすことになっているのであり,独占禁止法上の課徴金債権について届出がなく免責されないとしても,不当とはいえない。
オ 被審人の主張エについて
独占禁止法上の課徴金債権は,課税要件を充足したときに納税義務が生じ,その後の確定手続によって納税義務の内容が具体化される租税債権とは異なり,客観的に独占禁止法第7条の2第1項所定の行為があったとしても,公正取引委員会レベルでそれを確定しなければ,具体的な納付義務はもとより,抽象的な納付義務も生じないのであるから,独占禁止法上の課徴金債権を租税債権と同様に考えることはできない。
カ 被審人の主張オについて
  会社更生法上の罰金等の請求権は,更生債権となる場合でも,一般的な更生債権特有の性質をほとんど具備していないため,更生債権に該当するかどうかにより生じる取扱いの差が小さいのに対して,独占禁止法上の課徴金債権は,更生手続開始前の原因に基づくものとして更生債権に該当するかどうかにより生じる取扱いの差が非常に大きい。したがって,罰金等の請求権において用いられている更生債権への該当性についての判断基準を,独占禁止法上の課徴金債権にそのまま適用することはできない。仮に,会社更生法上の罰金等の請求権において用いられる更生債権への該当性についての判断基準を,独占禁止法上の課徴金債権に適用するのであれば,後記2⑴のとおり,独占禁止法上の課徴金債権についても,罰金等の請求権と同様に免責されることはないと考えるべきである。
キ 被審人の主張カについて
  金融商品取引法(昭和23年法律第25号)上の課徴金債権は,投資家の損害賠償請求権よりも劣後的な扱いを受けさせるという政策的要請から,租税等の請求権ではなく過料の請求権とされた(同法第185条の16)。しかし,金融商品取引法上の課徴金債権に関して,更生手続開始前の原因といえるかどうかの判断基準につき,確定的な解釈があるわけではない。
⑵ 被審人の主張
以下の理由から,本件課徴金債権は,「更生手続開始前の原因に基づく」ものであり,更生債権である。
ア 審査官の主張アについて
(ア) 「更生手続開始前の原因に基づく」とは,意思表示等債権発生の基本的構成要件該当事実が更生手続開始決定前に存在することを意味し,飽くまでも事実が客観的に存在するか否かが問題とされる。そして,本件課徴金債権の基本的構成要件該当事実とは,独占禁止法第7条の2第1項所定の違反行為に係る事実であり,本件では,前記第1の2の事実である。これらの事実の全てが更生手続開始前に客観的に存在していたものである以上,本件課徴金債権は「更生手続開始前の原因に基づく」ものである。このように判断することが,会社更生法第2条第8項の条文解釈として明確かつ条文の文理にかなう。
(イ) 更生手続開始前の原因に基づくか否かを違反行為が公正取引委員会レベルで確定したかどうかにより決定するという考え方は,違反行為が公正取引委員会レベルで確定した時点という内容そのものが著しく不明確であるし,事実の客観的な存在のレベルと事実の調査,評価・認定,法令の適用等のレベルを混同するものである。公正取引委員会レベルで違反行為を確定するかどうかは,公正取引委員会内部の問題にすぎないし,公正取引委員会の審判手続にどのくらい時間を要するかという偶然的な要素によって,更生債権か共益債権かが決まるのは不当である。
イ 審査官の主張イについて
本件課徴金債権については,届出さえ行われていれば,更生債権とし    て取り扱われたものであり,額未定としての届出も認められている。公    正取引委員会と被審人との間で事実の存否や法令の適用をめぐる争い    が存在していたとしても,公正取引委員会が債権届出を行うこと自体は    可能であった。
ウ 公正取引委員会が,本件課徴金債権の届出という会社更生法上の手続を行わなかったにもかかわらず,公正取引委員会内部の事情や裁量によって,更生手続開始前に既に客観的に存在していた事実を根拠として,いつまでも更生会社に課徴金を請求できるということになれば,事業の維持更生という会社更生手続の目的が達成し得なくなる。また,潜在的な債務の遮断も行われないことになって,他の更生債権者等の更生会社の利害関係人の予測可能性や法的安定を著しく害する。
エ 租税債権が更生手続開始前の原因に基づくといえるためには,更生手続開始前に課税要件の全てを充足し,将来,一定金額の具体的租税債権として確定されるべき状態であること,すなわち,会社の納税義務が成立していることを要し,また,これをもって足りる。租税債権においては,客観的に課税要件に係る事実が存在しているか否かと,その後の賦課・徴収の手続は区別されるのであって,前者の客観的に課税要件に係る事実が存在していることが「原因」として捉えられている。独占禁止法上の課徴金債権は,会社更生法上は租税等の請求権として取り扱われるのであるから,同様の判断基準が用いられるべきである。
オ 会社更生法上の罰金等の請求権が更生手続開始前のものであるといえるためには,罰金,科料,追徴金若しくは過料を科された,又は刑事訴訟の対象となった当該犯罪行為若しくは法令違反行為自体が更生手続開始前に成立していれば足り,罰金等を科する裁判若しくは行政処分が,更生手続開始前に効力を生じ,あるいは確定している必要はないと解されている。更生手続開始前の罰金等の請求権(会社更生法第142条第2号)の「更生手続開始前の」と会社更生法第2条第8項の「更生手続開始前の原因に基づいて生じた」は同様に解釈すべきであり,独占禁止法上の課徴金債権についても,違反行為自体が更生手続開始前に客観的に成立していれば足りると解するべきである。
カ 金融商品取引法上の課徴金債権については,会社更生法上,租税等の請求権として扱われることに不都合があるとして,更生手続上過料とみなす旨の規定が設けられている(金融商品取引法第185条の16)。したがって,金融商品取引法上の課徴金債権については,会社更生法上の罰金等の請求権に関しての判断基準が適用され,更生手続開始前の罰金等の請求権といえるためには,法令違反行為自体が更生手続開始前に成立していれば足り,課徴金を課する行政処分が,更生手続開始前に効力を生じ,あるいは確定したものである必要はないこととなる。
①金融商品取引法上の課徴金も独占禁止法上の課徴金も法律用語として同一の名称の債権であって,違反行為の抑止を目的とした行政上の制裁であるという性質は何ら異ならないこと,②証券取引法の平成16年改正で独占禁止法上の制度を参考として金融商品取引法の課徴金制度(第6章の2)が創設されたこと,③金融商品取引法第172条ないし第175条において,独占禁止法における課徴金納付命令の覊(き)束性と同様の規定が設けられていること等からすると,独占禁止法上の課徴金債権が更生手続開始前の請求権といえるかどうかについては,上記のとおり,金融商品取引法上の課徴金債権と同様の判断基準によるべきである。
キ 違反事業者に対する被害者の損害賠償請求権(独占禁止法第25条,民法第709条)については,更生手続開始前に存在していた違反行為によるものであれば,更生債権として取り扱われることとなる。審査官の主張によれば,全く同じ原因に基づく被害者の損害賠償請求権が更生債権として取り扱われるにもかかわらず,本件課徴金債権については共益債権として優先的な取扱いを受けることとなり,債権者間の衡平を著しく害する結果となる。
2 争点2(本件課徴金債権は,更生計画認可の決定により免責されるか)について
⑴ 審査官の主張
ア 罰金と独占禁止法上の課徴金は,共に制裁としての性質を有し,違反行為を抑止するという機能においても共通する点があるところ,罰金は,会社更生手続においては,届出がない場合でも免責されることはなく,また,権利変更の対象とはならないのであるから,独占禁止法上の課徴金債権も,会社更生手続においては,罰金に対する取扱いと同様に,更生債権の届出がない場合でも免責されず,また,権利変更の対象とはならないという取扱いをすべきである。
租税等の請求権であっても,会社更生法第204条第1項第4号の租税の逋(ほ)脱等に係る租税債権については,届出がない場合でも免責されないこととされており,その根拠は,当該租税債権は,可罰的行為に対する制裁という点において罰金等の請求権と性質を同じくするものであるからとされている。したがって,独占禁止法上の課徴金債権についても,その性質に鑑み,罰金等の請求権及び租税の逋(ほ)脱等に係る租税債権と同様に免責されないと解すべきである。
イ 更生手続における免責制度は,関係人が更生手続に参加してその権利を行使する機会が与えられることを前提として,関係人が権利の届出を怠った場合に免責されることを定めたものであるところ,本件においては,前記1⑴イのとおり,公正取引委員会が本件課徴金債権の届出をすることはできず,その結果,公正取引委員会が関係人として本件更生手続に参加して権利を行使する機会はなかったのであるから,本件課徴金債権は,免責制度が適用される前提を欠いており,本件課徴金債権は免責されるべきではない。したがって,本件課徴金債権についても,会社更生法第204条第1項第2号ないし第4号を類推適用して免責されないものと解すべきである。
⑵ 被審人の主張
ア 独占禁止法上の課徴金債権は,会社更生法上は「国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」に該当し,租税等の請求権(会社更生法第2条第15項)として取り扱われることになるから,これを罰金等の請求権と同様の取扱いをするのは,明文の規定に反する。
  独占禁止法上の課徴金債権については,金融商品取引法上の課徴金債権とは異なり,過料の請求権とみなす等の立法上の手当てが行われていないから,罰金等の請求権と同様の取扱いをすることは,許されない。
  審査官の主張は,罰金と独占禁止法上の課徴金債権とを実質的に同一視した主張にほかならないものであって,罪刑法定主義(憲法第31条),二重処罰の禁止(同第39条)といった憲法上の要請にも反する可能性がある。
また,会社更生法第204条第1項各号は,同項柱書が規定する厳格かつ強力な失権効の原則に対する特別な例外規定として限定列挙されているのであるから,失権効の原則を潜脱することとなる拡大解釈は許容されない。
イ 会社更生法が定める失権効について,更生債権者が仮に債権の存在を認識していなくても,届出がない以上,失権するというのが最高裁判所の考え方であり(最高裁判所第二小法廷平成21年12月4日判決・集民232号529頁),届出が可能であったか否かといった事情によって免責制度が適用されるか否かの判断が左右されることはなく,そのような事情を考慮しなければならないとする根拠はない。
3 争点3(本件課徴金債権が更生計画認可の決定により免責される場合,公正取引委員会は,課徴金の納付を命ずることができるか)について
⑴ 審査官の主張
ア 会社更生法は,更生会社は認可決定によって,①更生債権等については「その責任を免れ」と規定し,②株主の権利や更生担保権については「消滅する」と規定しており(第204条第1項),この両者は明確に区別されている。また,更生債権が消滅すると解すると,保証債務,連帯債務及び第三者が設定した物上担保権もその附従性によって消滅するはずであるが,会社更生法は,これらについて,影響を受けないと定めている(第203条第2項)。これらの点などからすると,仮に,本件課徴金債権が更生債権に該当するとしても,更生計画認可の決定により消滅せず,単に責任が消滅したにすぎないので,本件審判手続を経て課徴金の納付を命ずる審決を行うことは,妨げられない。
イ 公正取引委員会は,違反行為を認定した以上は,違反行為者に課徴金の納付を命じなければならず(独占禁止法第7条の2第1項及び第48条の2第1項),更生手続において免責される場合であっても課徴金債権を成立させなければならない。この場合,課徴金の納付を命ずる審決が行われても,同法第64条の2第4項の規定は適用されないこととなるが,租税債権が更生手続において免責となった場合,債権自体は存続し,会社に対してその責任を追及できなくなると解されており,これと同様に解釈すべきである。
ウ 現行独占禁止法附則第7条第1項は,現行独占禁止法により課徴金納付命令を受ける事業者が過去10年以内に独占禁止法第54条の2第1項に基づき課徴金の納付を命ずる審決を受けたことがあるときには,現行独占禁止法第7条の2第7項及び第9項(繰り返しの違反に対する割増し算定率)を適用することを定めており,本件課徴金債権に係る課徴金の納付を命ずることは,被審人の今後の違反行為を抑止する観点からも必要である。
⑵ 被審人の主張
ア 会社更生法上の失権効の規定は,独占禁止法よりも優先し,公正取引委員会が違反行為を認定した場合でも,会社更生法第204条第1項柱書の規定に基づき失権した場合には,独占禁止法第48条の2第1項の適用はない。したがって,本件課徴金債権について課徴金の納付を命ずるべきではない。
イ 審査官は,本件課徴金債権が失権した場合,課徴金の納付を命ずる審決がされても,独占禁止法第64条の2第4項の規定は適用されなくなると主張する。しかし,独占禁止法上の課徴金債権について,その納付を命ずる審決が行われる場合,公正取引委員会には国税滞納処分の例による強制徴収権限が付与されることとなるが,更生計画認可の決定によって既に自然債務に変容された本件課徴金債権については,当該債権の履行を請求し,強制的な権利実現を図ることはできないはずであって,強制徴収権限が付与されることになるような本件課徴金債権の納付を命ずる審決等は行い得ないはずである。
ウ 審査官は,本件被審人の今後の違反行為を抑止する観点から課徴金の納付を命ずる外形を作出する必要があると主張する。しかし,そうであれば,本件課徴金債権の届出といった会社更生法所定の手続を履践しておくべきであったのであって,そのような手続を怠ったことによって本件課徴金債権に係る課徴金の納付を命ずる審決を行い得なくなったとしてもやむを得ない。
第4 審判官の判断
1 争点2(本件課徴金債権は,更生計画認可の決定により免責されるか)について
⑴ 会社更生法上の免責について
会社更生法上,罰金等の請求権(更生手続開始前の罰金,科料,刑事訴訟費用,追徴金又は過料の請求権であって共益債権に該当しないもの〔会社更生法第142条第2号〕)は,更生計画認可の決定により免責されない(同法第204条第1項第3号)。これは,罰金等の請求権については,その制裁としての性質上,更生計画において債権を減免する等権利に影響を及ぼす定めをすることが許されず(同法第168条第7項),裁判所に届出をしなかった場合にも,更生計画認可の決定により免責されないことを明らかにする趣旨である。
また,租税等の請求権については,裁判所に届出をしなかった場合,原則として,更生計画認可の決定により免責されるが(同法第204条第1項),租税等の請求権であっても,これを免れ,若しくは免れようとし,不正の行為によりその還付を受け,又は徴収して納付し,若しくは納入すべきものを納付せず,若しくは納入しなかったことにより,更生手続開始後懲役若しくは罰金に処せられ,又は国税犯則取締法第14条第1項の規定による通告の旨を履行した場合における,免れ,若しくは免れようとし,還付を受け,又は納付せず,若しくは納入しなかった額の租税等の請求権(租税の逋(ほ)脱等に係る租税債権)については,届出をしなくても,更生計画認可の決定により免責されない(会社更生法第204条第1項第4号)。これは,同号の請求権は,届出がされた場合には優先的更生債権となる(同法第169条第1項)が,届出がされなかった場合でも,制裁としての性質を有し,更生計画認可の決定によって免責をするのは適当ではないことから,罰金等の請求権と同様に,劣後的な扱いを受ける請求権として存続させたものと考えられる(同法第204条第2項)。
以上から,会社更生法は,罰金等の請求権及び制裁としての性質を有し,罰金等の請求権と同様の扱いをすることが適当な租税等の請求権については,その性質上,更生計画認可の決定により免責されないという扱いをしているものと解される。
なお,金融商品取引法上の課徴金債権については,事業者に開示義務違反があり,投資者の損害賠償請求権と金融商品取引法上の課徴金債権が競合することとなった場合等に,課徴金債権に優先権があると投資者の保護に欠けることから,それを避けるため,国税徴収の例によって徴収するのではなく,強制執行の手続に従って執行することとされ(金融商品取引法第185条の15第2項),倒産手続の中で他の請求権と比べて劣後的な取扱いをするために,過料の請求権とみなされている(同法第185条の16)。その結果,金融商品取引法上の課徴金債権は,会社更生法上は,罰金等の請求権として取り扱われ,届出がない場合でも更生計画認可の決定により免責されないこととなる。
⑵ 独占禁止法上の課徴金の性格等について
 独占禁止法上の課徴金は,昭和52年の独占禁止法改正により,独占禁止法に違反する行為による経済的利得を徴収し,違反行為者が違反行為による経済的利得を保持し得ないようにすることによって,違反行為の抑止を図り,違反行為の禁止規定の実効性を確保し,もって競争秩序を維持するための行政上の措置を定めた制度として導入された(前掲最高裁判所第三小法廷平成17年9月13日判決,公正取引委員会平成8年8月6日審決・審決集第43巻110頁,公正取引委員会平成20年7月29日審決・審決集第55巻359頁参照)。独占禁止法上の課徴金は,違反行為を抑止するため,違反行為者に対して経済的な不利益を課する点において,行政上の制裁としての性質を有する。
なお,その後の独占禁止法改正による算定率の引上げ等により,課徴金の基本的な目的,機能,性質等は変わらないものの,課徴金の違反行為に対する抑止効果が強化され,行政上の制裁としての性質が強まっている。
独占禁止法上の課徴金と罰金とを比較すると,罰金は,不正行為の反社会性ないし反道徳性に着目して,道義的・社会的非難として科される刑罰であり,独占禁止法上の課徴金とはその趣旨,目的,手続等を異にするが,両者は,違反行為を抑止する機能を有し,違反行為者に対する制裁としての性質を有する点において共通するといえる。
平成17年の独占禁止法改正により,罰金と課徴金を併科する場合には,課徴金の額から罰金額の2分の1に相当する金額を控除する規定が設けられた(現行独占禁止法第7条の2第19項及び第51条)。この規定からも,罰金と課徴金が共に違反行為を抑止する機能を有することは明らかであり,この点は,平成17年の独占禁止法改正前においても同様である。
なお,金融商品取引法上の課徴金は,違反行為の抑止を図り,違反行為の禁止規定の実効性を確保するという行政目的を達成するための行政上の措置を定めた制度として導入されたものであり,独占禁止法上の課徴金と共通の性質を有するものと解される。
⑶ 独占禁止法上の課徴金債権が免責されるかについて
ア 独占禁止法は,課徴金の納付の督促を受けたものが指定された期限までに納付すべき金額を納付しないときは「国税滞納処分の例により,これを徴収することができる」旨を規定しており(同法第64条の2第4項),独占禁止法上の課徴金債権は,会社更生法上は「国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」として,租税等の請求権(会社更生法第2条第15項)に該当する。しかし,これは,独占禁止法上の課徴金の徴収方法について,租税等と同様にする旨を定めたものにすぎない。前記⑵のとおり,独占禁止法上の課徴金は,罰金等と同様に制裁としての性質を有するのであって,この点で,租税等と性質を異にする。
  そして,前記⑴のとおり,会社更生法第204条第1項第3号及び第4号は,罰金等の請求権及び制裁としての性質を有する租税等の請求権について更生計画認可の決定によっても当然に免責されないとの取扱いをしているところ,これは,当該請求権の制裁としての性質に基づくものであるから,制裁としての性質を有し,罰金等の請求権と同様の扱いをすることが適当な租税等の請求権については,明文の規定がないものであっても,免責されないと解することが同法第204条第1項第3号及び第4号の趣旨に合致する。前記⑵のとおり,独占禁止法上の課徴金は,制裁としての性質を有し,また,違反行為を抑止するという機能を有する点で罰金と共通していることからすると,独占禁止法上の課徴金債権については,会社更生法第204条の定める免責との関係では,罰金等の請求権と同様に扱うのが相当である。また,前記⑴のとおり,金融商品取引法上の課徴金債権は更生計画認可の決定により免責されないところ,前記⑵のとおり,金融商品取引法上の課徴金と独占禁止法上の課徴金は,違反行為を抑止するための行政上の措置であるという点で共通であるから,両者の間で異なる取扱いをする理由はない。
以上からすると,独占禁止法上の課徴金債権については,届出がなかった場合であっても,会社更生法第204条第1項第3号又は第4号を類推適用して,更生計画認可の決定によっても免責されないと解すべきである。
イ 被審人は,独占禁止法上の課徴金債権は租税等の請求権に該当するから,免責されないとの解釈は明文の規定に反する,会社更生法第204条第1項各号は,同項柱書が規定する厳格かつ強力な失権効の原則に対する特別な例外を限定列挙するものであるから,失権効の原則を潜脱することとなる拡大解釈は許容されない,等と主張する。
しかし,会社更生法上の失権効の原則が,解釈上,例外を一切許容しないものとはいえない。前記アのとおり,独占禁止法上の課徴金と罰金との間に性質,機能等の共通性が存在することを考慮して,免責との関係で両者を同様に取り扱うことは,むしろ会社更生法第204条第1項の趣旨に合致するものである。
また,更生計画認可の決定の失権効は,更生会社の利害関係人の予測可能性の確保に資するものであるが,前記第1の1⑴のとおり,公正取引委員会は,平成16年10月15日,被審人を含む事業者に排除措置を採ることを勧告し,この事実は公表されていたから,平成20年12月31日に更生手続開始の決定があった被審人及びその利害関係人は,将来被審人に対して課徴金債権が発生することを容易に予測することができたのであって,本件課徴金債権が更生計画認可の決定により免責されないと解したとしても,利害関係人の予測可能性を著しく害するとはいえない。また,会社更生法第204条第2項のとおり,独占禁止法上の課徴金債権については,更生計画で定められた弁済期間満了までの間は,弁済等の債権消滅行為をすることができないのであるから,本件課徴金債権について免責されないとしても,事業の維持更生という会社更生手続の目的を害するともいえない。
なお,被審人は,上記のように解すると,刑罰と独占禁止法上の課徴金債権を同一視することとなり,憲法上の罪刑法定主義(憲法第31条),二重処罰の禁止(同第39条)に違反する可能性があると主張する。しかし,独占禁止法上の課徴金債権は行政上の措置であって,刑罰である罰金とはその趣旨,目的,手続等を異にするものであり,これらを併科しても憲法の規定に違反することはないと解されるところ,この点については,独占禁止法上の課徴金債権について,その制裁としての性質に基づき更生計画認可の決定により免責されないという取扱いをしても何ら変わりはないから,被審人の主張は失当である。
2 結論
前記1のとおり,本件課徴金債権は,会社更生法上の租税等の請求権に該当するが,会社更生法第204条第1項第3号又は第4号が類推適用され,被審人はその責任を免れないから,その余の争点について判断するまでもなく,被審人は,本件課徴金を納付する義務を負う。
以上を前提とすると,被審人が国庫に納付しなければならない課徴金の額は,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,①平成23年(判)第76号事件については,被審人の売上額17億6242万5000円(前記第1の3⑴イ参照)に100分の6を乗じて得た額から,同条第4項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて算出された1億574万円となり,②平成23年(判)第77号事件については,被審人の売上額62億6356万5000円(前記第1の3⑵イ参照)に100分の6を乗じて得た額から,1万円未満の端数を切り捨てて算出された3億7581万円となり,③平成23年(判)第78号事件については,被審人の売上額9億2932万7962円(前記第1の3⑶イ参照)に100分の6を乗じて得た額から,1万円未満の端数を切り捨てて算出された5575万円となる。
第5 法令の適用
以上によれば,本件については,独占禁止法第7条の2第1項及び第4項の規定を適用して,被審人に対し,同法第54条の2第1項の規定により,主文のとおり審決することが相当であると判断する。
   
平成24年8月24日

公正取引委員会事務総局

審判長審判官  後 藤   健

審判官  原   一 弘

審判官  山 田 健 男

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