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古河電気工業(株)による審決取消請求事件

独禁法7条の2

平成24年(行ケ)第1号

判決

東京都千代田区丸の内二丁目2番3号
原告 古河電気工業株式会社
代表者代表取締役 吉田政雄
訴訟代理人弁護士 今村 誠
同 篠田憲明
同 谷 英樹
東京都千代田区霞が関一丁目1番1号
被告 公正取引委員会
代表者委員長代理委員 濵田道代
指定代理人 中里 浩
同 島崎伸夫
同 北脇俊之
同 藤原昌子
同 小髙真侑
同 徳力徹也

主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告が原告に対し公正取引委員会平成22年(判)第14号私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に基づく課徴金納付命令審判事件について平成23年12月15日付けでした審決を取り消す。
第2 事案の概要
1(1) 被告は,光ファイバケーブル製品の製造業を営む原告が,他の同様の事業者と共同して,公共の利益に反して,「アクセス系SM型光ファイバWBケーブル」などの特定の光ファイバケーブル製品(以下「本件特定製品」という。)の販売分野における競争を実質的に制限し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)2条6項所定の不当な取引制限を行い,同法3条に違反したとして,平成22年5月21日,原告を含む4事業者に対し,同法7条1項に基づき,排除措置を命ずる(平成22年(措)第11号事件。以下「本件排除措置命令」という。)とともに,原告に対し,同法7条の2第1項に基づき,42億7335万円の課徴金の納付を命じた(平成22年(納)第79号事件。以下「本件納付命令」という。)ところ,本件排除措置命令は確定した。
(2) 原告は,実行期間(平成18年6月2日から平成21年6月1日までの3年間)における原告の本件特定製品についての売上額(406億9863万1930円)のうち他社から仕入れた製品に係る売上額20億9634万5360円についての課徴金の算定率が,小売業又は卸売業以外の場合の10%ではなく,小売業の場合の3%とされるべきであり,これによる課徴金の額は41億1927万円に止まるのであるから,本件納付命令のうちこれを超えて課徴金の納付を命じた部分は違法であると主張して,当該部分の取消を求める審判を請求したところ,被告は,本件違反行為に係る取引についての原告の業種が小売業又は卸売業以外のものに当たり,他社から仕入れた製品に係る売上額についても課徴金の算定率は10%となる(ただし,本件における課徴金の算定には,独禁法7条の2第7項(繰り返し違反の加重算定率)により加重された15%が適用される。)として,原告の請求を棄却する審決をした(以下「本件審決」という。)。
(3) 本件は,原告が,本件納付命令及び本件審決における課徴金の算定に関する被告の判断を不服として,被告に対し,その取消を求めた事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実及び被告が本件審決で証拠に基づき認定し,原告も実質的な証拠の欠缺を主張していない事実)
(1) 特定光ファイバケーブル製品(本件特定製品)の発注方法等
日本電信電話株式会社,東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社(一括して,以下「NTT3社」という。)は,本件特定製品について,原則として年度ごとにいわゆる「見積合わせ」を実施し,最も低い見積価格を提示した参加者と交渉して決定した発注単価による取引を全ての参加者に対して適用することにしていた。また,NTT3社は,本件特定製品についての予定発注シェア(発注総額に占める発注金額の割合の予定)を,原則として,低額の見積価格を提示した参加者から順に大きくなるように決定していた。
(2) 本件違反行為
原告,住友電気工業株式会社及び株式会社フジクラ(一括して,以下「原告ら3社」という。)は,遅くとも平成17年2月9日以降,本件特定製品の販売価格の低落防止を図るとともに,販売金額の均等化を図るため,他の同様の事業者と共同して,①見積合わせごとに覚悟値(NTT3社との価格交渉において目標とする現行の発注単価からの低減率の限度値又は目標とする下限価格)及び見積順位(見積合わせで提示された見積価格の低さによる参加者の順位)を決定する,②決定した覚悟値及び見積順位に応じた参加者各自が提示する見積価格を決定するとの合意の下に,見積合わせごとに,原告ら3社の協議により覚悟値を決定し,また,見積順位に関する希望,過去の販売実績等から予想した予定発注シェア等を踏まえた見積順位を決定し,その覚悟値及び見積順位に応じて,参加者各自が提示する見積価格を決定することにより,公共の利益に反して,本件特定製品の販売分野における競争を実質的に制限していた(以下「本件違反行為」という。)。
(3) 課徴金算定の基礎事実
ア 原告は,遅くとも平成17年2月9日には本件違反行為の実行としての事業活動を開始し,これを取り止めた平成21年6月2日まで,本件違反行為の実行としての事業活動を行っていた(したがって,独禁法7条の2第1項所定の実行期間は,平成18年6月2目から平成21年6月1日までの3年間となる。)。
イ 本件実行期間における本件特定製品に係る原告の売上額は406億9863万1930円であったところ,このうち原告が三菱電線工業株式会社(以下「三菱電線」という。)から仕入れた製品に係る売上額は20億9634万5360円であった。
ウ 繰り返し違反の加重算定率
原告は,被告が調査を開始した平成21年6月2日から遡って10年以内に独禁法7条の2第1項に基づく課徴金納付命令(平成21年(納)第18号)を受けたことがあり,同命令は,審判が請求されず,確定していたから,原告は,同条7項1号に該当する事業者として,課徴金の算定率を5割加重されて適用されることになる。
エ 課徴金減免制度による減額
原告は,独禁法の一部を改正する法律(平成21年法律第51号。以下「改正法」という。)による改正前の独禁法(以下「改正前独禁法」という。)7条の2第9項1号により,被告の調査開始日である平成21年6月2日以後,平成21年公正取引委員会規則第12号による改正前の「課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則」(以下「改正前規則」という。)5条所定の期日までに,同規則4条及び6条所定の事実の報告及び資料の提出を被告に単独で行い,その後は違反をしていない。また,本件違反行為について,改正前独禁法7条の2第7項1号等による報告及び資料の提出を行った者の数は3に満たないところ,これらの規定による報告及び資料の提出を行った者の数と,同条9項1号による報告及び資料の提出を行った事業者であって,原告より先に改正前規則4条1項所定の報告書の提出を行った者の数を合計した数も3に満たないから,原告は,改正法附則17条により,独禁法7条の2第12項による課徴金減免制度の適用を受ける事業者となり,課徴金が30%減額される。
(4) 本件納付命令
被告は,平成22年5月21日,原告に対して,本件特定製品の販売分野における競争を実質的に制限していたとして,独禁法7条に基づき本件排除措置命令を発するとともに,本件実行期間における本件特定製品に係る原告の売上額406億9863万1930円の全額について独禁法7条の2第1項所定の小売業又は卸売業以外の業種の場合の算定率10%を適用して算出した課徴金42億7335万円の納付を命じる本件納付命令を発した。
(5) 本件審決
原告は,本件実行期間における本件特定製品の売上額のうち三菱電線から仕入れた製品に係る売上額20億9634万5360円についての課徴金算定率は,小売業又は卸売業以外の場合の10%ではなく,小売業の場合の3%が適用されるべきであり,これによる場合の課徴金の額は41億1927万円に止まるから,本件納付命令中,これを超える部分は違法であると主張して,その取消を求めて審判を請求した(平成22年(判)第14号課徴金納付命令審判事件)ところ,被告は,平成23年12月15日,違反行為に係る取引に小売業又は卸売業に属する事業活動とそれ以外の業種に属する事業活動が混在する場合には,いずれか単一の業種を認定し,その業種に適用される算定率により課徴金を算出するべきであり,業種の認定に当たっては,違反行為に係る個々の取引の内容や取引全体に対する割合等の事情を斟酌し,取引を全体としてみて,行為者の事業活動がどの業種に該当するかを判断するとした上で,本件違反行為に係る取引についての原告の事業活動は,小売業又は卸売業以外の業種に当たり,三菱電線から仕入れた製品に係る売上額を含む本件実行期間における売上額の全額について算定率を10%として課徴金を算定するのが相当であるとして,原告の審判請求を棄却する審決をした。
3 争点
本件違反行為に対する課徴金の額の算定に当たり適用される算定率
(1) 原告の主張
ア 独禁法7条の2第1項が,課徴金の算定率を原則として10%とした上で,小売業や卸売業については,他の業種よりもこれを軽減しているのは,小売業や卸売業が商品の流通により差益を得るものであって,その性質上,売上高に対する利益率が相対的に小さなものとならざるを得ないという事業の実態に基づくものである。したがって,違反行為の中に複数の業種に属する事業活動が混在する場合には,業種ごとに算出した売上額に基づき,それぞれの業種に適用される算定率により課徴金の額を算定するべきであり,このような方法が,卸売業や小売業について算定率を軽減している同項の趣旨に合致するとともに,違反行為によって得られた不当な経済的利益を剥奪して社会的公正を図り,違反行為を抑止するという課徴金制度の趣旨にも合致するというべきである。
イ 独禁法施行令5条1項及び6条1項は,「実行期間」における「売上額」の算定方法について,引渡を基準とするのを原則とし,例外的に契約を基準とすることを定めたものにすぎず,違反行為の対象となる商品又は役務について全ての売上額を算出すべきことを定めたものではなく,また,全ての対価の額を合計すると明示しているわけでもない。そもそも,独禁法施行令の上記条項の文言により独禁法の課徴金算定率の適用方法を解釈する被告の主張は論理が逆転しており不当である。
ウ 独禁法7条の2第1項は,事件ごとに個別の不当な利得を算定して課徴金の額を決定するのは技術的に困難が伴い,また,違反行為を防止するという行政目的の達成の観点から事案処理の迅速性,行政上の効率性を図るためにも政策的に適当ではないことから,業種ごとに算定率を法定して,基準を明確化し,課徴金の算定を容易にしているのであるが,この基準の明確性及び容易性の要請は,このような限度で既に実現されているのであり,さらにこれを超えて重視される絶対的な利益とはいえない。業種の認定に当たっては事業活動の実態がまず重視されるべきであり,違反行為の中に複数の業種の事業活動が混在するという実態はなおさら重視されるべきであるから,それが課徴金の算定に当たり反映されるのは当然のことである。そして,複数の業種の事業活動が混在している場合には,行為者もそれぞれの業種に応じた経済的利得を保有しているに止まり,それを超えて不当な経済的利得を保有しているわけではないのが実態であるから,これを課徴金の算定に当たっても反映させる必要がある。
この点について,本件審決は,最高裁判所平成14年(行ヒ)第72号同17年9月13日第三小法廷判決(民集59巻7号1950頁。以下「平成17年最判」という。)を引用して,「課徴金額の計算に当たり,個々の取引につき厳密に事業活動の実態を反映させる方法を採用しなければならないものではなく,また,現実の不当利得の額に近似させなければならないものでもない」としているのであるが,この判例は,課徴金の対象となる役務の対価として営業保険料の合計額から純保険料又は保険金の支払に充てられた部分の額等を控除すべきであるとの被上告人の主張に対して,「課徴金の額はカルテルによって実際に得られた不当な利得の額と一致しなければならないものではなく,算定基準の明確性や算定の容易性といった行政上の要請から,課徴金の額の算定に当たり,純保険料又は保険料の支払に充てられた部分の額等を控除する必要はない」旨を判示したものにすぎず,違反行為の中に複数の業種に属する事業活動が混在する場合の課徴金の算定率が争点となっている本件とは全く事案が異なるというべきである。また,この判例は,「課徴金の額はカルテルによって実際に得られた不当な利得の額と一致しなければならないものではない」と判示するに止まり,算定基準の明確性や算定の容易性を理由に,不当利得の額に近似しない金額を課徴金の額とすることまで正当化しているものではない。課徴金の算定に当たっては,独禁法7条の2第1項の文言及び立法趣旨が重視されるべきであり,現実の不当利得と一致しないまでも,少なくとも現実の利得額と近似する算定方法を採用するべきである。そして,このように解することが,行政法の基本原理である比例原則や,憲法31条の適正手続の保障にも合致することになる。本件のように違反行為の中に複数の業種の事業活動が混在している場合には,行為者はそれぞれの業種に応じた経済的利得を保有し,それを超えて不当な経済的利得を保有しているのではないから,小売業・卸売業に属する事業活動に基づく売上額に対しても,それ以外の業種についての算定率を適用することは,違反行為の抑止の観点からも必要な限度を超えて過重な不利益を課する点で比例原則に反するものであり,また,適正手続にも反するというべきである。
以上に関連して,本件審決は,業種ごとに売上額を算定することになると,①違反行為の対象とされる全商品に係る個々の取引について,第三者からの仕入れの有無を確定する必要が生ずる,②第三者からの仕入れがある場合には,その取引量等が僅少なものであっても,仕入先との契約関係,製造過程に対する行為者の関与の有無や程度等の取引の実態を全て調査して確定した上で,売上額を算出する必要が生ずる,③取引の実態等に関する証拠が残存していないという事態も生ずるなどとしている。しかし,まず,①については,被告には,罰則(法第94条第1号)による制裁を背景とする独禁法47条1項各号の調査権限が付与されており,実際に,本件においても,報告命令による調査が実施されているから,実務上の困難はない。次に,②についても,被告は,報告命令により,違反した事業者に対して,仕入先への出資の有無,役員又は従業員の出向等の状況を報告させるとともに,契約書や覚書等を提出させており,その契約関係はもちろん,仕入先の製造過程に対する関与の有無や程度等の取引の実態を把握することも可能である。このような調査によっても,「実質的にみて卸売業又は小売業の機能に属しない他業種の事業活動を行っていると認められる特段の事情」という例外的な事情が認定できなければ,原則どおり仕入販売を行っていたという事実に即して小売業・卸売業のいずれかに業種を認定すればよいだけであり,被告が業種を認定するに当たり過度の負担を負うことになるわけではない。このような被告の負担を理由として原則と例外とを逆転させるような解釈をすることは許されない。さらに,③についても,上記の「特段の事情」が認定されなければ,原則どおりに小売業・卸売業のいずれかとして業種を認定することになるだけであるから,証拠が残存していないとの理由で課徴金の算定が困難となることもない。
したがって,単一の業種を認定して,その業種の算定率を適用するとの法解釈により被告の過大な負担という問題を解決しようとするのは本末転倒というべきであり,算定基準の明確性や算定の容易性は,単一の業種を認定し,その業種の算定率を適用するという処理方法を正当化する理由とはなり得ないものである。
エ 被告は,単一の業種を認定するに当たっては,「違反行為に係る個々の取引の内容や,取引全体に占める割合等の事情を斟酌し,違反行為に係る取引を全体としてみて」業種を認定するとしている。しかし,これでは,非裁量的な制度として設計されている課徴金制度の下においては,業種の認定のための判断基準も明確かつ具体的であるべきにもかかわらず,何ら明確かつ具体的な基準とはなり得ていないというべきである(例えば,製造業,小売業及び卸売業が3分の1ずつの割合で事業活動が行われている場合には,「取引全体に占める割合」によって単一の業種を認定することは不可能であり,製造業40%,小売業35%,卸売業25%の場合には,上記の基準では,どのようにして単一の業種を認定することになるのかが全く不明である。)。上記の曖昧かつ抽象的な基準では,被告による恣意的な業種の認定も可能となって不当な結果を招来するのであり,このような基準による業種の認定に基づく課徴金の算定は,「算定基準も明確なものであることが望ましく,(中略)算定が容易であることが必要」とした平成17年最判や,「課徴金の算定方式の簡明性,明確性の要請は,業種区分にも当てはまる」とした被告の平成6年(判)第5号事件の審決の趣旨にも反することは明らかである。また,独禁法7条の2第1項には,取引全体に占める割合等の事情を斟酌して単一の業種の算定率を適用するとは規定されておらず,このような見解はそもそも文理解釈としても失当である。
なお,被告は,平成16年(判)第4号事件の審決において,「一定の取引分野は,本来,重層的に成立し得る」ものであることを前提として,「公正取引委員会としては,その一つを選択して,それに係る違反行為を問擬することができる」と述べており,違反行為の画定において被告に裁量を認めるとの見解を示している。この見解に基づき,併せて,取引の割合等により単一の業種を認定し,単一の算定率を適用するとの考えによる場合には,例えば,違反行為の画定の基礎となる「一定の取引分野」が狭く画定されれば,取引の割合によって業種が小売業・卸売業と認定される場合であっても,算定率が大きくなるように被告があえて「一定の取引分野」を広く画定することにより,それ以外の業種と認定する結論に操作することも可能となる。これに加えて,本件審決のような曖昧かつ抽象的な基準により業種が認定されるのであれば,より一層,被告による恣意的な操作が可能となってしまうことになる。非裁量性を制度設計の旨とする現行の課徴金制度において,このような本件審決の見解は,極めて恣意的・裁量的な法運用を可能にする点からも不当である。
(2) 被告の主張
ア 独禁法7条の2第1項,同法施行令5条1項及び6条1項の規定によれば,課徴金額の算定は,まず違反行為である事業活動の「実行期間」を認定し,その期間中に引き渡された商品又は提供された役務の額を合計して違反行為の対象商品又は役務の全ての「売上額」を算出した上で,この売上額に算定率を乗じる方法によると解するのが相当であり,個々の取引について個別に業種を認定した上で,業種ごとの売上額を算定して,対応する算定率を乗じることが予定されていると解することは困難である。
また,課徴金納付命令は,不当な取引制限等の違反行為ごとに個々の違反行為者に対して発令されるものであり,独禁法7条の2第1項所定の「実行期間」とは違反行為の実行としての事業活動が行われた期間をいい,「商品又は役務」とは行為者が違反行為の対象として提供した商品又は役務をいい,「売上額」についても「商品又は役務」の売上額とされている以上,違反行為に係るものであると解すべきである。したがって,「実行期間」,「商品又は役務」及び「売上額」は,いずれも行為者の違反行為ごとに定められる概念である。そうすると,課徴金の算定率についても,違反行為に係る行為者の業種として単一の業種を認定し,単一の算定率を適用するのが整合的である。
したがって,独禁法7条の2第1項,同法施行令5条1項及び6条1項に照らしても,課徴金額の算定に当たっては,単一の業種を認定して,単一の算定率を適用することが予定されていると解するのが相当である。
確かに,独禁法7条の2第1項は,事業活動の実態を考慮して,業種ごとに課徴金の算定率を設けており,業種の認定に当たっても事業活動の実態が考慮される必要がある。しかし,課徴金制度は,あくまでもカルテルの摘発に伴う不利益を増大させて,その経済的誘因を減少させ,カルテルの予防効果を強化することを目的とする行政上の措置であって,課徴金の額が,カルテルによって現実に得られた利得額と一致しなければならないものではない(平成17年最判)のであるから,その計算に当たり,個々の取引につき厳密に事業活動の実態を反映させる必要はなく,また,現実の利得額に近似させる必要もない。そして,独禁法7条の2第1項は,課徴金額の計算方法の明確性や容易性を求めているところ,原告主張の計算方法では,その計算過程が極めて複雑かつ困難なものとなり,同項の趣旨に反する結果となるのであり,同項が,違反行為中の個々の取引につき個別に業種を認定して,その売上額に対してそれぞれの算定率を適用することまで要請しているとは解することができない。また,同項が,事業活動の実態を考慮して,業種ごとに算定率を設けながら,売上額の全体に算定率を乗じることを予定していることからも,課徴金額の計算に当たっては,単一の業種が認定されることを前提に,業種の認定については事業活動の実態等も考慮して実質的に判断すべきであるが,それ以上に,個々の取引について個別に業種を認定し,認定された業種ごとに区分した売上額を算定することまでは予定していないと解するのが合理的である。
したがって,原告の主張は理由がない。
イ 原告は,独禁法施行令5条1項及び6条1項について,同条項は,「実行期間」における「売上額」の算定方法について引渡基準によるのか契約基準によるのかを明らかにするものにすぎないと主張する。
しかし,独禁法7条の2第1項,同施行令5条1項及び6条1項の文理上,課徴金額を計算する方法としては,まず実行期間を認定し,その期間中に引き渡された商品又は提供された役務の対価を合計して売上額を算出した上で,この売上額に算定率を乗じるという手順によることを規定していると解するのが相当である,これらの規定の一部である同法施行令の上記条項が契約基準か引渡基準かについて規定しているからといって,また,全ての対価の額を合計するとは明示していないからといって,上記のような解釈ができないというものではない。
原告は,本件審決の見解が,独禁法により小売業や卸売業について軽減した算定率が定められている趣旨を無視するものであるに止まらず,同法施行令の文言をもって独禁法の課徴金算定率の適用のあり方を解釈するものであって,論理が逆転しているとも主張する。しかしながら,本件審決は,小売業及び卸売業の事業活動の実態を考慮して軽減した算定率を定めている独禁法7条の2第1項が,個々の取引につき個別に業種を認定して,業種ごとの売上額に対してそれぞれの算定率を適用することまで要請していると解することはできないとしているのであるから,同項の趣旨を無視するものではないことは明らかであり,また,同法施行令の文言だけで単一の業種を認定して,単一の算定率を適用して課徴金額を算定することが予定されていると解しているものでもないから,原告の主張はその前提において誤りである。
また,原告は,「実行期間」や「商品又は役務」が違反行為ごとに画されるからといって,「売上額」についても違反行為ごとの合計額とする根拠はないと主張する。しかし,本件審決は,「実行期間」が違反行為の実行としての事業活動が行われた期間をいい,「商品又は役務」が違反行為の対象として提供した商品又は役務をいうものであるから,「売上額」も「商品又は役務」の売上額とされている以上,違反行為に係るものと解されるとしているにすぎないのであり,課徴金額の算定に当たっては,単一の業種を認定し,単一の算定率を適用すべきとする本件審決の判断はこれらの文言だけを根拠とするものではなく,原告の非難は失当である。
さらに,原告は,複数の業種の事業活動が混在しているにもかかわらず,単一の業種の算定率を適用すると,独禁法が業種ごとに算定率を法定し,特に,卸売業及び小売業については算定率を軽減している趣旨が全く没却されてしまうと主張する。しかし,課徴金制度は,カルテルの摘発に伴う不利益を増大させて,その経済的誘因を減少させ,カルテルの予防効果を強化することを目的とする行政上の措置であって,課徴金の額が,カルテルによって現実に得られた利得額と一致しなければならないものではない(前掲平成17年最判参照)から,業種ごとにそれぞれの算定率を適用することが制度趣旨に合致するとの原告の主張は,その前提において誤りというべきである。また,独禁法が軽減した算定率を設けている趣旨に照らしても,個々の取引につき個別に業種を認定して,その売上額に対してそれぞれの算定率を適用することまで求めているとは解することができない。
以上のとおり,原告の主張は,いずれも理由がない。
ウ 原告は,課徴金の算定基準の明確性や算定の容易性が絶対的な利益ではなく,業種の認定に当たり事業活動の実態が重視されるならば,複数の業種の事業活動が混在するという実態はさらに重視されるべきであり,それは課徴金の算定に当たっても考慮されるべきであると主張する。
しかし,独禁法7条の2第1項が事業活動の実態を考慮して業種ごとの算定率を設けているといっても,他方で,課徴金制度は,あくまでもカルテルの摘発に伴う不利益を増大させて,その経済的誘因を減少させ,カルテルの予防効果を強化することを目的とする行政上の措置であって,課徴金の額が,カルテルによって現実に得られた利得額と一致しなければならないものではないから,課徴金額の計算に当たり厳密に事業活動の実態を反映させるまでの必要はなく,また,現実の利得額に近似させなければならないものでもない。
また,独禁法7条の2第1項は,課徴金額の計算方法の明確性や容易性を求めているところ,原告の主張するように個々の取引について個別に業種を認定し,業種ごとに区分した売上額を算定し,それぞれの算定率を適用するためには,課徴金の計算過程が極めて複雑かつ困難なものとなり,むしろ同項の趣旨に反する結果となる。同項は,課徴金額の計算に当たっては単一の業種が認定されることを前提として,その認定に際しては事業活動の実態等を考慮して実質的に判断すべきであるということ以上に,個々の取引について個別に業種を認定して,その業種ごとに区分した売上額を算定し,それぞれの算定率を適用することまで予定したものではないと解するのが合理的である。したがって,原告の主張するように複数の業種に属する事業活動が混在するという実態がさらに重視されるべきであるということにはならない。なお,原告は,本件審決が引用する平成17年最判について,本件とは事案が異なる上,基準の明確性や算定の容易性を理由に,利得の額に近似しない課徴金の額を正当化するものではないと主張する。しかし,平成17年最判は,広く課徴金制度の趣旨について述べているものであり,本件審決もその意味でこれを引用しているものと解される上,本件審決はこの判例だけを根拠として判断しているわけではないから,原告の批判は当たらないというべきである。
原告は,小売業・卸売業以外の算定率を適用することは,違反行為の抑止の観点から必要な限度を超えて過重な不利益を課する点において比例原則に違反するとも主張する。しかしながら,課徴金制度の目的は,現実の利得の剥奪ではなく,違反行為の抑止にあり,また,その算定方法は,具体的な違反行為による現実的な経済的利得自体とは切り離されており,課徴金額が必ずしもこれに近似する必要はないから,カルテルによって現実に得られた利得額とは異なるものになることは法律上も当然に予定されているのである。したがって,現実に得られた利得額と課徴金額とを比較して,目的達成のために必要な限度を超えているとか,侵害される利益と不均衡であるとするのは誤りであり,比例原則に関する原告の主張は理由がない。
さらに,原告は,個々の取引について個別に業種を認定した上で,業種ごとに区分した売上額を算定し,それぞれの算定率を適用する作業が困難なものではないと主張する。しかし,原告が根拠として主張する①の点については,他社から仕入れて販売した製品及びその売上額の報告を受けること(本件では原告から報告命令による報告を受けている。)に加え,個々の取引について違反行為者と仕入れ先との関係等の取引の実態を全て調査して確定する必要があり,そのような手続は極めて複雑かつ困難なものであり,独禁法7条の2第1項の趣旨に反する結果となる。また,原告が根拠として主張する②及び③の点についても,原告主張の証明ルールによっても,個々の取引について違反行為者と仕入先との関係等の取引の実態を全て調査して確定する必要があるなど,極めて複雑かつ困難な手続を要することになることに変わりはない。さらに,原告主張の計算方法では,取引量等が僅少なものについても,実態を考慮して個々に業種を漏れなく認定し,その売上額を算出する必要が生ずることになるのであり,取引全体で業種を認定する方法と比較すると,手続の複雑さが全く異なることになるのである。
以上のとおり,課徴金の算定基準の明確性や算定の容易性に関する原告の主張は,いずれも理由がない。
エ 原告は,「個々の取引の内容や,取引全体に占める割合等の事情を斟酌し」て単一の業種を認定するというのが,何ら明確かつ具体的な判断基準とはいえず,このような基準では被告による業種の認定も恣意的なものになり,算定基準の明確性や算定の容易性に関する平成17年最判や,被告の審決例(前掲公正取引委員会平成11年7月8日審決)の趣旨にも反すると主張する。しかし,違反行為に係る個々の取引の内容や,取引全体に占める割合等の事情は十分に客観的に判断できる事項であり,これを斟酌しながら取引全体を対象として,その事業活動がどの業種に当たるかを判断することが明確性や具体性を欠くとはいえないのみならず,それにより被告の恣意を許すことにもならないから,上記判例等の趣旨に反することにもならない。
また,原告は,独禁法7条の2第1項では,取引全体に占める割合等の事情を斟酌して単一の業種の算定率を適用するとは規定されておらず,本件審決の判断は文理解釈としても失当であると主張する。しかし,本件審決は,課徴金の算定率を決定する前提として単一の業種を認定するに当たっては,個々の取引の内容や,取引全体に占める割合等の事情を斟酌して違反行為に係る取引を全体としてみて,その事業活動がどの業種に当たるかを判断することが相当であるとしているのであって,本件審決の判示した判断基準は,独禁法7条の2第1項の文言だけに基づくものではないし,また,「相当である」という判断には,当然,同項の文言に反するものでもないとの判断が含まれているのである。そして,法文上明確に規定されていなければ文理解釈として失当であるということにもならないから,いずれにしても原告の主張は誤りである。
さらに,原告は,取引分野の画定には被告の裁量が認められるから,恣意的な操作が可能となってしまい,非裁量性を制度設計の旨とする現行の課徴金制度の趣旨に反すると主張する。しかし,「一定の取引分野」は,算定率を決定する前提となる業種の認定とは無関係に画定されるものであるから,原告が主張するような操作をされることはなく,また,課徴金制度が非裁量的な制度とされているのは,排除措置命令の場合とは異なり,課徴金納付命令の対象となる違反行為があった場合には,法定された方法に従って一律かつ画一的に計算される金額を課徴金として徴収することが被告に義務付けられているという意味において非裁量的とされているのであって,違反行為の判断に関する「一定の取引分野」の画定の問題とは直接の関係がなく,本件審決のいう業種の認定方法が課徴金制度の非裁量性に反することにはならないから,原告の主張は理由がない。
第3 争点に対する判断
1 本件違反行為の対象商品である本件特定製品の本件実行期間中の売上額は406億9863万1930円であるところ,この中には原告が三菱電線から仕入れた製品に係る取引(以下「本件取引」という。)が含まれており,その売上額は20億9634万5360円であって,全売上額のわずか5%余りに止まり,その余の約95%の取引が小売業又は卸売業のいずれにも当たらないことは当事者間に争いがない事実である。
以上の事実関係のもとで,本件違反行為に係る原告の業種を小売業又は卸売業以外のものに当たるとして10%の算定率を適用した本件審決の適法性,言い換えると,本件取引を除くその余の取引については小売業又は卸売業のいずれにも当たらないとして10%の算定率を適用するとともに,本件取引については小売業の実態を有しているとして3%の算定率を適用すべきであるとする原告の主張の当否について,以下,検討することとする。
2 独禁法7条の2第1項は,課徴金の額を算定するに当たっては,実行期間における「商品又は役朔の政令で定める方法により算定した売上額」に算定率を乗じて計算すると規定している。また,同法施行令5条1項は,同法7条の2第1項所定の「政令で定める売上額の算定の方法」につき,原則として「実行期間において引き渡した商品又は提供した役務の対価の額を合計する方法とする」と規定した上で,同法施行令6条1項は,例外的に「実行期間において締結した契約により定められた商品の販売又は役務の提供の対価の額を合計する方法とする」と規定している。これらの規定に照らすと,課徴金額の算定は,まず違反行為の実行として行われた事業活動の「実行期間」を認定した上で,その期間中に引き渡された商品又は提供された役務の対価の額を合計する方法により算出した「売上額」に算定率を乗ずる方法によると解するのが相当であり,行為者の違反行為に係る個々の取引について,個別に業種を認定した上で,業種ごとに区分した売上額を算出して,その業種に対応する算定率を各別に乗ずることが予定されていると解することは困難である。
また,課徴金納付命令は,不当な取引制限等の違反行為ごとに個々の違反行為者に対して発令されるものであり,独禁法7条の2第1項所定の「実行期間」とは違反行為の実行としての事業活動が行われた期間をいい,「商品又は役務」とは違反行為の対象として提供した商品又は役務をいい,「売上額」についても「商品又は役務」の売上額とされている以上,違反行為に係るものと解すべきであるから,「実行期間」,「商品又は役務」及び「売上額」はいずれも違反行為ごとに定まるものというべきである。そうすると,課徴金の算定率についても,違反行為に係る事業活動として単一の業種が認定され,それに対応する算定率が適用されると解することが,上記とも整合する解釈ということができる。
したがって,独禁法7条の2第1項,同法施行令5条1項及び6条1項の規定によれば,課徴金額の算定に当たっては,単一の業種を認定した上で,単一の算定率を適用することが予定されていると解するのが相当である。
3 独禁法が定める課徴金の制度は,不当な取引制限等の違反行為を禁止する実効性を確保するための行政上の措置として機動的に発動できるように定めたものである。また,課徴金の額を算定するに当たっては,実行期間における売上額に一定の算定率を乗ずる方式が採用されているところ,これは,課徴金制度が行政上の措置であるため,その算定基準は明確であることが望まれる上,制度の積極的かつ効率的な運営により違反行為の抑止効果を確保するためにも算定が容易であることも要請されるのであり,このような観点からも,個々の取引ごとに行為者が得た経済的利益を算定した上で,課徴金の額を決定することが適切なものとは解することができない。そうすると,課徴金の額は,行為者が違反行為によって実際に得た利得の額とは必ずしも一致する必要がないというべきである(平成17年最判参照)から,違反行為に係る売上額を業種ごとに区別して,それぞれの業種に応じた算定率を乗じて課徴金を計算する方式を独禁法が予定しているとは解することができない。したがって,違反行為の中に複数の業種の事業活動が混在する場合であっても,業種ごとに算定した売上額にそれぞれの業種ごとの算定率を乗じて得た額を課徴金の額とする方法によることが求められているとまでは解することができない。
他方,独禁法7条の2第1項が,課徴金の額は,個々の取引について個別に業種を認定した上で,業種ごとに売上額を算定し,それに対応する算定率を乗じるという算定方法を予定していると解した場合には,対象商品の全てについて,違反行為者が自ら製造したものか,第三者から仕入れたものかの認定を要することになるほか,対象商品が仕入れられていた場合には,さらに,違反行為者が仕入先に対して仕様など製造に関する指示をし,原材料の調達に関与するなどして,仕入先に製品を製造させており,実質的に製造業と同視することができないかを判断するため,違反行為者と仕入先との契約関係,仕入先の製造過程に対する違反行為者の関与の有無や程度等の取引の実態を全て調査した上で,違反行為に係る売上額を算出する必要が生ずることになり,課徴金の算定手続が極めて複雑煩瑣なものとなることが予想されるのであり,法の趣旨にそぐわない事態を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。
原告は,被告に付与された権限に基づく調査等により,業種の認定について被告に過度の負担が生ずることにはならないと主張する。しかしながら,独禁法7条の2第1項が課徴金の額を算定するに当たって,実行期間における「商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額」に算定率を乗ずる方法によるとし,その算定率も小売業については3%,卸売業については2%,それ以外の業種については10%と3種類しか規定していないことからも明らかなように,課徴金については,その計算方法が明確であることや,算定が容易なものであることが要請されているものと解されるところ,原告が主張するような方法では,その算定作業において煩雑かつ困難な場合が生ずることは避けられないのであるから,そのような作業が必要となる方法を採用することが相当とは判断することができない。
4 原告は,小売業や卸売業について例外的に軽減された算定率を設定しているのは,その事業活動における実態に着日したものであり,複数の業種の事業活動が混在する場合には,業種ごとに算定した売上額にそれぞれの算定率を乗じて課徴金の額を計算することが比例原則や憲法31条の適正手続の保障の趣旨にも合致すると主張する。
しかしながら,独禁法が定める課徴金制度は,違反行為者が得た不当な利得の剥奪を直接の目的とするものではなく,あくまでも違反行為の摘発に伴う不利益を増大させて,その経済的誘因を減少し,違反行為の予防効果を強化することを目的とする行政上の措置であって,課徴金の額が,違反行為によって現実に得られた利得額と必ずしも一致する必要がないことは前述したとおりであり,課徴金の制度は,違反行為者の現実の利得額と課徴金の額とが異なる結果となる場合があることを当然に予定しているものというべきである。したがって,課徴金の額は,個々の取引について厳密な対応関係を要するという意味での事業活動の実態を反映させるまでの必要はないのみならず,現実の利得額に一致させる必要があるというものでもないと解するべきであり,被告主張の計算方法が,課徴金制度の目的の達成のために必要な限度を超えるとか,侵害される利益との均衡を失しているということにはならず,比例原則に違反するなどとする原告の上記主張も採用することはできないというべきである。
5 原告は,非裁量的な制度として設計されている課徴金制度の下では,業種の認定基準も明確かつ具体的であるべきにもかかわらず,被告主張の認定方法では何ら明確かつ具体的な基準にならないと主張する。しかしながら,個々の取引の内容や,取引全体に占める割合等は十分に客観的な事情として判断することが可能なものであり,本件の場合においても,これらを斟酌した上で,違反行為に係る取引を全体としてみて,その事業活動がどの業種に当たるかを判断することが明確性や具体性を欠くものとは解されず,また,被告の恣意を許すことになるものとも解されないというべきであるから,原告の上記の主張も失当というべきである。
6 以上によれば,原告に対する課徴金の額を算出するに当たっては,本件違反行為の実行として行われた本件特定製品の取引について,適用すべき課徴金の算定率を選択するため,原告の事業活動の業種を検討する必要があることになる。
そこで,この点を検討するに,本件違反行為の対象商品である本件特定製品の取引については,原告が三菱電線から仕入れた商品に係る取引も含まれるところ,この取引の全体が小売業の実態を有していたと認められる証拠はない上,仮に,この取引が小売業の実質を有していたとしても,原告の本件特定製品の取引全体に占める割合は売上額の5%余りにすぎないのに対し,その余の約95%の取引が小売業又は卸売業のいずれにも当たらないことは前述したとおり当事者間に争いがない事実である。そうすると,仮に三菱電線との取引の実態が小売業の実質を有していたとしても,本件違反行為に係る原告の事業活動は,小売業又は卸売業以外の業種に当たると判断するのが相当である。
したがって,原告に対する課徴金の額は,本件実行期間における本件特定製品の売上額の全額である406億9863万1930円に対して,小売業又は卸売業以外の業種に適用される課徴金の算定率である10%を基本として,独禁法7条の2第7項により加重した15%(繰り返し違反による加重算定率)を乗じた金額から,課徴金減免制度により30%を乗じて得た額を減額し,さらに,1万円未満の端数を切り捨てた42億7335万円となる,
第4 結論
以上によれば,三菱電線との取引の売上額を含む原告の売上額の全額に小売業又は卸売業以外の業種に適用される課徴金の算定率である10%を適用して課徴金を算定し,小売業の場合の3%の算定率を適用しなかった本件納付命令及び本件審決は適法なものであり,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。

平成24年11月30日

裁判長裁判官 奥田隆文
裁判官 渡邉 弘
裁判官 片山憲一
裁判官 齊藤 顕
裁判官 清藤健一

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