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(株)高光建設ほか3名に対する件

独禁法7条の2(独禁法3条後段)

平成23年(判)第1号ないし第3号及び第7号

課徴金の納付を命ずる審決

盛岡市上堂二丁目4番15号
被審人 株式会社高光建設
同代表者 代表取締役 高 橋 精 一
岩手県大船渡市盛町字内ノ目12番地13
被審人 株式会社匠建設
同代表者 代表取締役 中 嶋   豊
盛岡市本宮五丁目5番5号
被審人 株式会社タカヤ
同代表者 代表取締役 望 月 郁 夫
盛岡市菜園一丁目6番3号
被審人 下建設株式会社
同代表者 代表取締役  下   光
上記4名代理人弁護士 奥     毅
同          妹 尾 佳 明
同          小根山 祐 二

公正取引委員会は,上記被審人らに対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第35号)附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)に基づく課徴金納付命令審判事件について,公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号)による改正前の公正取引委員会の審査及び審判に関する規則(以下「規則」という。)第82条の規定により審判長審判官後藤健,審判官原一弘及び審判官多田尚史から提出された事件記録並びに規則第84条の規定により審査官及び被審人下建設株式会社を除く被審人らから提出された各異議の申立書に基づいて,同審判官らから提出された別紙審決案を調査し,次のとおり審決する。

             主       文
1 被審人株式会社高光建設は金412万円を,
  被審人株式会社匠建設は金2111万円を,
  被審人株式会社タカヤは金2068万円を,
 それぞれ課徴金として,平成25年7月23日までに国庫に納付しなければならない。
2 被審人下建設株式会社に対しては,課徴金の納付を命じない。

             理       由
1 当委員会の認定した事実,証拠,判断及び法令の適用は,後記第2項のとおり訂正するほかは,いずれも別紙審決案の理由第1ないし第7と同一であるから,これらを引用する。
2 別紙審決案を以下のとおり訂正する(ページ数は,同審決案のページ数を指す。)。
(1) 59ページ9行目から60ページ12行目までを次のように改める。
「(ウ) この場合でも,①研究会等において被審人高光建設・阿部工務店JV若しくは他のJVが受注予定者として決定され,その他の会員入札参加者が受注予定者の受注に協力したこと(このような場合として,被審人高光建設・阿部工務店JVが受注予定者に決定され,東野建設工業・昭栄建設JVが本件基本合意に反して受注目的で被審人高光建設・阿部工務店JVより低額で入札したが,低入札価格調査の結果失格したため,被審人高光建設・阿部工務店JVが落札した場合と,東野建設工業・昭栄建設JVが受注予定者に決定されたが,低入札価格調査の結果失格したため,被審人高光建設・阿部工務店JVが落札した場合が考えられる。),又は,②研究会等において複数のJV(被審人高光建設・阿部工務店JV及び東野建設工業・昭栄建設JVのほか,被審人タカヤ・恵工業JVも含まれ得る。)の間で競争をすることが決定され,他の会員入札参加者はこの競争に協力したこと等が認められれば,物件122について具体的な競争制限効果が発生したといえる場合がある。
(エ) 物件122については,前記(ア)②のとおり,被審人高光建設が参加して研究会が開かれたことが認められ,また,前記(ア)④のとおり,5番札以降の4JVの入札価格が設計金額の94.27パーセントから98.23パーセントまでで,1番札から4番札までの入札価格から大きく(10パーセント以上)かい離していたことが認められ,これは,5番札以降の4JVが本件基本合意に従って受注予定者の受注に協力したことをうかがわせる事実である。しかし,前記(イ)のとおり,被審人高光建設・阿部工務店JV,東野建設工業・昭栄建設JV,被審人タカヤ・恵工業JV及び日本住宅・千葉匠建設JVの4JVが価格競争をしていること,前記(ア)①及び③のとおり,物件122は,多くの事業者が受注を希望する物件でありながら,強い継続性を主張できる者がいない物件であったことに照らせば,上記研究会において物件122について合意に至ることができず,いわゆるフリー物件(各事業者が基本合意に拘束されず,自社の判断で入札価格を決める物件)になった可能性も十分にあったというべきである。そうすると,物件122については,上記研究会等において,会員入札参加者の間で,被審人高光建設・阿部工務店JV,東野建設工業・昭栄建設JV及び被審人タカヤ・恵工業JVないしその一部が物件122を受注することが決定され,他の事業者がこれに協力した事実(前記(ウ)の①,②)を認めることはできない。」
(2) 61ページ19行目から62ページ14行目までを次のように改める。
「(ウ) この場合でも,①被審人高光建設若しくは他の事業者が受注予定者として決定され,その他の会員入札参加者が受注予定者の受注に協力したこと(このような場合として,大平建設が受注予定者に決定されたが,低入札価格調査の結果失格したため,被審人高光建設が落札した場合が考えられる。また,被審人高光建設と中亀建設が同額で入札しており,受注予定者とならなかった者があえて受注予定者と同額で入札する理由はないから,そのいずれか一方が受注予定者となっていたことは考えがたい。),又は,②複数の事業者(被審人高光建設,大平建設及び中亀建設のほか,阿部工務店も含まれ得る。)の間で競争をすることが決定され,他の会員入札参加者はこの競争に協力したこと等が認められ,かつ,③被審人高光建設が受注調整に直接又は間接に関与したことが認められれば,物件127について具体的な競争制限効果が発生したといえる場合がある。
(エ) 物件127については,前記(ア)③のとおり,6番札以降の会員入札参加者8社の入札価格は,設計金額の90パーセントを超えていることは認められ,これは,6番札以降の会員入札参加者が受注予定者の受注に協力したことをうかがわせる事実ではあるが,前記(イ)のとおり,大平建設,被審人高光建設,中亀建設等が価格競争をしていること,前記(ア)②のとおり,物件127について強い継続性を主張できる者がいなかったことに照らせば,物件127については,そもそも研究会の開催等による受注調整が行われなかった可能性や,受注調整を行ったが合意に至ることができず,フリー物件になった可能性も十分にあったというべきである。そうすると,物件127については,会員入札参加者の間で,被審人高光建設,大平建設及び中亀建設ないしその一部が物件127を受注することが決定され,他の事業者がこれに協力した事実(前記(ウ)①,②)を認めることはできない。」
(3) 63ページ23行目から64ページ20行目までを次のように改める。
「(ウ) この場合でも,①被審人下建設若しくは他の事業者が受注予定者として決定され,その他の会員入札参加者が受注予定者の受注に協力したこと(このような場合として,被審人下建設が受注予定者に決定され,被審人タカヤが本件基本合意に反して受注目的で被審人下建設より低額で入札したが,最低制限価格未満であったことから失格したため,被審人下建設が落札した場合と,被審人タカヤが受注予定者に決定されたが,最低制限価格未満であったことから失格したため,被審人下建設が落札した場合が考えられる。),又は,②複数の事業者(被審人下建設及び被審人タカヤ)の間で競争をすることが決定され,他の会員入札参加者はこの競争に協力したこと等が認められ,かつ,③被審人下建設が受注調整に直接又は間接に関与したことが認められれば,物件108について具体的な競争制限効果が発生したといえる場合がある
(エ) 物件108については,前記(ア)④のとおり,3番札以降の会員入札参加者5社及びアウトサイダー3社の入札価格は,いずれも予定価格の97.46パーセント以上であり,被審人下建設及び被審人タカヤの入札価格から大きく(10パーセント以上)かい離していたことが認められ,これは,3番札以降の会員入札参加者が受注予定者の受注に協力したことをうかがわせる事実ではあるが,前記(イ)のとおり,被審人下建設と被審人タカヤが価格競争をしていること,前記(ア)③のとおり,物件108について強い継続性を主張できる者がいなかったことに照らせば,物件108については,そもそも研究会の開催等による受注調整が行われなかった可能性や,受注調整を行ったが合意に至ることができず,フリー物件になった可能性も十分にあったというべきである。そうすると,物件108については,会員入札参加者の間で,被審人下建設及び被審人タカヤ又はそのいずれかが物件108を受注することが決定され,他の事業者がこれに協力した事実(前記(ウ)①,②)を認めることはできない。」
3 ところで,審査官はその異議の申立書において,争点2に関連し,被審人高光建設の物件122,同被審人の物件127及び被審人下建設の物件108(以下「3物件」という。)について
(1) 本件基本合意の下では,受注調整の結果,必ず受注予定者が1社に決定されるとは限らず,複数の受注希望者のうちのいずれかの者が受注予定者と決定される場合もあるが,そのような場合でも,それ以外の会員入札参加者は,上記受注希望者のうちのいずれかの者が受注できるように協力することとされていた
(2) 3物件の入札結果等をみると,会員入札参加者の中には高価格で入札した者がおり,これらの者は各被審人及び低価格で入札した会員入札参加者の受注に協力したと推認できる
(3) 以上によれば,3物件については,本件基本合意に基づいて受注調整が行われた結果,少なくとも,各被審人及び低価格で入札した会員入札参加者のうちのいずれかの者が受注することが決定され,かつ,他の会員入札参加者がその受注に協力したとみることができるから,具体的な競争制限効果が発生したと認められ,独占禁止法第7条の2第1項の「当該・・・役務」に該当する
と主張する。
確かに,上記(1)及び(2)の事実が認められれば,具体的な競争制限効果が発生したといえる場合があると考えられる。
しかしながら,上記(1)については,受注予定者が1社に決定されず複数の受注希望者のうちのいずれかの者が受注予定者と決定される場合にも,他の会員入札参加者が受注に協力することになっていたことを示す具体的な証拠はない。かえって,本件基本合意は,受注価格の低落防止等を図るため,受注希望者が複数ある場合には受注予定者を1社に絞ることを定めるのみであって,受注予定者を1社に絞れなかった場合については定めていないこと,担当者の供述(査共第28号証,第36号証)等の証拠によれば,受注予定者が1社に決定できない場合にはフリー物件として各社が自由に入札することになっており,実際に133物件のうち株式会社石川工務所が受注した「県営仙北アパート集会所他建設工事」(物件107,査共第22号証)がフリー物件になったとうかがわれることなどに照らせば,上記(1)の事実を認めることはできない。
上記(2)については,3物件について,他の会員入札参加者が各被審人と同額で入札し又はこれより低い価格で入札している事実から,受注予定者を1社に決定することができなかったことが明らかであり,その結果,3物件については,上記のとおりフリー物件となり,会員入札参加者が自由に入札することとなった可能性が十分にあったといえる。したがって,一部の会員入札参加者が高価格で入札したことをもって,これらの者が受注予定者の受注に協力したと推認することはできない。
したがって,審査官の主張は採用できない。
4 次に,被審人高光建設,被審人匠建設及び被審人タカヤ(以下「被審人3社」という。)は,異議の申立書において,継続性,地域性,関連性(以下「継続性等」という。)があるからといって本件基本合意に基づく受注調整の存在の根拠になるものではないと主張する。
ところで,継続性等は本件基本合意における受注予定者決定の要素とされているのであるから,その存否は受注調整の内容となり得るものである。しかし,審決案においては,継続性等の存否のみをもって個別物件における受注調整の存否及び各被審人が受注予定者に決定されたかどうかを認定しているわけではなく,それ以外の証拠,入札価格の状況等を総合的に勘案して判断しているのであるから,被審人3社の主張は失当である。
また,被審人3社は,各社の入札記録における「最低より○万円下げ」との記載に関し,入札価格が高度な経営判断に関わるものであり,会社内における基本的な方針を事前に記載したものであり,受注調整とは関係ない旨主張する。
しかし,仮に被審人3社の主張が正しいとすれば,最低入札価格の内容を事前に判断することが不可能な中で,最低入札価格が極めて低かった場合にも現場の判断で「○万円下げ」た形での一律の価格設定を迫ることとなり,価格設定が会社の高度な経営判断であるとの被審人3社の主張に照らして極めて不自然であるといわざるを得ないから,被審人3社の主張は失当である。
5 よって,被審人らに対し,独占禁止法第54条の2第1項及び規則第87条第1項の規定により,主文のとおり審決する。

平成25年5月22日

委員長  杉  本  和  行

委 員  濵  田  道  代

委 員  小 田 切  宏  之

委 員  幕  田  英  雄

委 員  山  﨑     恒

平成23年(判)第1号ないし第3号及び第7号

審   決   案

盛岡市上堂二丁目4番15号
被審人 株式会社高光建設
同代表者 代表取締役 高 橋 精 一
岩手県大船渡市盛町字内ノ目12番地13
被審人 株式会社匠建設
同代表者 代表取締役 中 嶋   豊
盛岡市本宮五丁目5番5号
被審人 株式会社タカヤ
同代表者 代表取締役 望 月 郁 夫
盛岡市菜園一丁目6番3号
被審人 下建設株式会社
同代表者 代表取締役  下   光
上記4名代理人弁護士 奥     毅
同          妹 尾 佳 明
同          小根山 祐 二

 上記被審人らに対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第35号。以下「改正法」という。)附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)に基づく課徴金納付命令審判事件について,公正取引委員会から独占禁止法第51条の2及び公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号)による改正前の公正取引委員会の審査及び審判に関する規則(以下「規則」という。)第31条第1項の規定に基づき担当審判官に指定された本職らは,審判の結果,次のとおり審決することが適当であると考え,規則第82条及び第83条の規定に基づいて本審決案を作成する。

主       文
 1 被審人株式会社高光建設は金412万円を,
   被審人株式会社匠建設は金2111万円を,
   被審人株式会社タカヤは金2068万円を,
  それぞれ課徴金として国庫に納付しなければならない。
 2 被審人下建設株式会社に対しては,課徴金の納付を命じない。

理       由
第1 本件審判事件の概要
1 排除措置命令
公正取引委員会は,別添平成17年(判)第14号審決書(写し)記載のとおり,被審人株式会社高光建設(以下「被審人高光建設」という。),被審人株式会社匠建設(以下「被審人匠建設」という。),被審人株式会社タカヤ(以下「被審人タカヤ」という。)及び被審人下建設株式会社(以下「被審人下建設」という。)が,他の事業者と共同して,岩手県が条件付一般競争入札,受注希望型指名競争入札又は指名競争入札の方法により,同県が建築一式工事についてAの等級に格付している者のうち同県内に本店を置く者(これらの者のみを構成員とする特定共同企業体〔以下「JV」という。〕を含む。)のみを入札参加者として発注する建築一式工事(以下「岩手県発注の特定建築工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,岩手県発注の特定建築工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第6項の不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであるとして,被審人らを含む79社に対し,平成22年3月23日,審判審決にて排除措置を命じた(以下,この審決を「本案審決」といい,本案審決で認定された違反行為を「本件違反行為」という。)。
2 課徴金納付命令
公正取引委員会は,本案審決に基づき,本件違反行為は,独占禁止法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係るものであるとして,被審人らに対し,平成22年12月20日,それぞれ課徴金納付命令を発し,平成23年3月7日に同課徴金納付命令に係る審判開始決定をした。
第2 前提となる事実等(末尾に括弧書きで証拠を掲記した事実は当該証拠から認定される事実であり,その余の事実は当事者間に争いのない事実,公知の事実又は本案審決により認定された事実である。)
1 本件違反行為の概要等
(1) 被審人らの概要
ア 被審人らは,建設業を営む者であり,独占禁止法第7条の2第2項第1号に該当する事業者である。(争いがない。)
イ 被審人タカヤは,平成14年4月26日に民事再生手続の申立てを行い,同年12月2日に再生計画の認可を受けているところ,本案審決別紙7審決案(以下「本案審決案」という。)の別紙8記載の番号42の物件(以下,別紙8記載の物件について,「物件42」等という。)の入札(同年2月27日)に参加した後,物件82の入札(同年12月26日)に参加するまでの間,岩手県発注の特定建築工事の入札に参加していない。(査共第1号証,審C第1号証)
また,同社は,平成20年9月12日まで「高弥建設株式会社」との商号であったが,同日,現商号に変更した(以下,商号変更前の被審人タカヤについても「被審人タカヤ」と表記する。)。
ウ 被審人下建設は,平成14年12月19日付けで建設業の許可が失効し,同時に岩手県建築工事A級の資格を失った(審D第4号証の1ないし3,第12号証,竹鼻義徳参考人審訊速記録)ところ,被審人下建設は,これを理由に課徴金納付命令の対象とはならないと主張する。しかし,審D第4号証の4によれば,被審人下建設は,平成15年3月14日付けで,同月17日から適用される県営建設工事請負資格者名簿(指名競争入札及び条件付一般競争入札用)に登録され,証拠(査共第1号証,審D第12号証)によれば,実際に,同年5月16日に入札が行われた物件86以降の岩手県発注の特定建築工事の入札に参加していることが認められるから,一旦建設業の許可が失効した等の事情は,本件の結論に何ら影響を及ぼすものではない。
(2) 岩手県の建築一式工事の発注方法等
ア 岩手県は,同県が発注する建築一式工事の大部分を,条件付一般競争入札,受注希望型指名競争入札又は指名競争入札のいずれかの方法で発注していた。
イ 具体的発注方法
(ア) 岩手県は,条件付一般競争入札に付する工事については,入札参加資格要件を設定の上,対象工事の概要と併せて事前に公告し,入札参加希望者を募り,条件付一般競争入札参加資格確認申請書を提出した者の中から入札参加資格要件を充足する者全てを入札参加者としていた。
また,公告において,工事の設計金額が事前に公表されており,原則として設計金額が工事の予定価格とされた。そして,予定価格の範囲内で最低の価格で入札した者が落札者とされた。(査共第39号証,第136号証)
(イ) 岩手県は,指名競争入札に付する工事については,資格者の中から,施工成績,技術的適性,地理的条件,手持ち工事量等を総合的に勘案して,原則として10社を入札参加者として指名していた。
予定価格及び指名業者の入札前の公表は行われなかった。
ウ 再度入札
岩手県は,指名競争入札及び受注希望型指名競争入札において,1回目の入札で予定価格に達しない場合は,参加者に対し当該入札における最低入札価格を告知した後,原則,2回を限度として再度入札を実施し,3回目の入札で予定価格に達しない場合は,指名業者を選定し直して改めて入札を実施する,あるいは,予定価格と最低入札価格との差が少ない等の場合には,一部の入札参加者から見積書を徴した上で,随意契約に移ることとしていた。(査共第39号証,第136号証)
エ くじ引き
岩手県は,落札となるべき価格で入札した者が2社以上いる場合は,同額で入札した者にくじを引かせて落札者を決定していた。(査共第39号証)
オ 低入札価格調査制度
(ア) 岩手県は,低価格による入札への対応として,条件付一般競争入札については,全て低入札価格調査制度を適用し,入札の結果,あらかじめ設定した調査基準価格を下回る額で入札した者がいる場合は,下回った者を直ちに失格とするのではなく,落札者の決定を保留することとし,当該入札額によって契約の内容に適合した履行がなされるか否かを,最低額入札者から順次調査した上で,履行可能である者を落札者としていた。その際,履行可能な者がいないときは,調査基準価格以上で入札した者のうち入札額の一番低い者を落札者としていた。(査共第39号証,第136号証)
また,指名競争入札及び受注希望型指名競争入札については,あらかじめ最低制限価格を設定する場合があり,設定した工事については,入札の結果,最低制限価格を下回る額で入札した者がいる場合は当該入札者を失格とし,最低制限価格以上で入札した者のうち入札額の一番低い者を落札者としていた。(査共第39号証,第44号証)
(イ) なお,調査基準価格又は最低制限価格は公表されていなかったが,当時,岩手県発注の特定建築工事の入札に参加していた事業者は,経験上,調査基準価格又は最低制限価格は,設計金額又は予定価格の85パーセントに相当する価格と予想していた。(査共第6号証,高橋精一代表者審訊速記録)
(3) 本件違反行為
被審人らを含む105社(本案審決の別紙1記載の80社から大森工業株式会社を除いた79社,別紙3記載の5社,別紙4記載の10社及び別紙5記載の11社を合わせたもの。以下「105社」という。)は,いずれも建設業を営み又は営んでいた者であるが,遅くとも平成13年4月1日(本案審決の別紙6記載の事業者〔大森工業株式会社を除く。〕にあっては,遅くとも各「期日」欄記載の年月日頃)以降,岩手県発注の特定建築工事について,受注価格の低落防止及び受注機会の均等化を図るため
ア 当該工事について受注を希望する者又は受注を希望するJV(以下まとめて「受注希望者」という。)は,105社が会員となっていた「トラスト・メンバーズ」又は「TST親交会」と称する会(平成14年12月1日に前者から後者に名称が変更された。以下まとめて「TST親交会等」という。)の会長又は地区役員(以下まとめて「TST等世話役」という。)に対して,その旨を表明し
(ア) 受注希望者が1名のときは,その者を受注予定者とする
(イ) 受注希望者が複数のときは,「継続性」(主として過去に自社が施工した建築物の工事であること。),「関連性」(主として過去に自社が施工した建築物と関連する建築物の工事であること。),「地域性」(主として工事場所が自社の事務所に近いこと。)等の事情を勘案して,受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する
イ 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は受注予定者がその定めた価格で受注できるよう協力する
旨の合意(以下「本件基本合意」という。)の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,岩手県発注の特定建築工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものである。
(4) 105社の受注物件
平成13年4月1日から平成16年10月25日までの期間(以下「本件違反行為期間」という。)における岩手県発注の特定建築工事は133物件(以下「133物件」という。)あり,このうち,105社が受注した物件は118物件(以下「118物件」という。)である。
(5) 被審人らのTST親交会等への加入状況
ア トラスト・メンバーズは平成6年11月に設立されたところ,被審人らは,いずれも設立時点の会員であり,被審人らのうち被審人タカヤを除く3社は,設立時から,平成14年12月にトラスト・メンバーズの名称がTST親交会に変更され平成16年10月に同会が解散するまでの間,会員であった。(査共第5号証,第40号証,第137号証ないし第143号証,査B第7号証,査C第9号証,査D第3号証,高橋精一代表者審訊速記録,中嶋豊代表者審訊速記録,竹鼻義徳参考人審訊速記録)
イ TST親交会等の会長は,同会の設立から解散まで,被審人タカヤの従業員であった稲垣孝一(以下「稲垣」という。)が務めた。稲垣は,平成6年のトラスト・メンバーズ設立当時は被審人タカヤの取締役で,その後,平成12年4月に被審人タカヤを退職しているが,TST親交会等の会長職は継続した。(査共第40号証,審C第4号証の3)
また,被審人タカヤの従業員であった細川勉(以下「被審人タカヤの細川」という。)は,平成12年頃から,同人が被審人タカヤを退職する平成14年8月末まで,トラスト・メンバーズの副幹事長であった。(査共第5号証,第65号証,第150号証)
なお,平成14年12月にトラスト・メンバーズの名称がTST親交会に変更された際,TST親交会等の年次総会資料に含まれていた会員名簿の記載が会社名から個人名に変更されているが,平成15年度及び平成16年度総会の会員名簿(それぞれ,平成15年10月1日現在及び平成16年10月現在のものとされる。)には,被審人タカヤについては同社の常務取締役であった佐々木憲雄(以下「被審人タカヤの佐々木」という。)が記載されている。(査共第161号証ないし第163号証,査C第8号証,第9号証)
ウ 被審人高光建設の代表取締役である高橋精一(以下「被審人高光建設の高橋」という。)は,平成12年頃からTST親交会等の運営副委員長であり,平成14年頃からは同会の幹事であった。(査共第150号証,査C第7号証,第9号証)
エ 被審人下建設の取締役である竹鼻義徳は,平成10年頃から,TST親交会等が解散するまで,TST親交会等の副会長であった。(査共第65号証,第147号証,第149号証,第150号証,査C第7号証,第9号証,竹鼻義徳参考人審訊速記録)
2 課徴金の計算の基礎となる事実
(1) 被審人らが本件違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成13年10月25日以前であると認められる。また,被審人らは,平成16年10月26日以降,本件違反行為を取りやめており,同月25日にその実行としての事業活動はなくなっているものと認められる。したがって,被審人らについては,前記第1の違反行為の実行としての事業活動を行った日から当該違反行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間が3年を超えるため,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,実行期間は,平成13年10月26日から平成16年10月25日までの3年間となる(以下「本件実行期間」という。)。
(2) 被審人高光建設の受注物件
ア 被審人高光建設が,本件実行期間中に受注した岩手県発注の特定建築工事は,別紙1記載の番号50,86,122及び127の4件であり,工事名,発注方法,予定価格,落札価格,落札率,入札参加者等の詳細は,別紙1のとおりである(以下,別紙1ないし4記載の個々の物件については,別紙1ないし4の番号欄記載の番号に従って「物件50」等といい,入札参加者については,株式会社を省略して表記する。また,別紙1ないし4記載の物件を「本件物件」と総称する。)。
イ 物件50(岩手県立沼宮内病院新築〔附属棟等〕工事・指名競争入札)
(ア) 物件50の入札は,9社が参加して平成14年5月7日に行われ,被審人高光建設が,予定価格の97.26パーセントに相当する価格である7450万円で入札し,これを受注した。各入札参加者の入札価格等は別紙1-1のとおりである。
(イ) 被審人高光建設は,岩手県との間で,平成14年5月17日,前記(ア)の金額に消費税相当分を加算した金額である7822万5000円で物件50の契約を締結した。当該契約は,同年8月5日及び7日に増額変更され,契約金額は7897万6800円(税込)とされた。
(査A第1号証,第3号証)
ウ 物件86(旧岩手県立沼宮内病院解体工事・指名競争入札)
(ア) 物件86の入札は,10社が参加して平成15年5月16日に行われ,別紙1-2のとおり,被審人高光建設が,予定価格の96.49パーセントに相当する価格である5320万円で入札し,これを受注した。
(イ) 被審人高光建設は,岩手県との間で,平成15年5月22日,前記(ア)の金額に消費税相当分を加算した金額である5586万円で物件86の契約を締結した。当該契約は,同年10月17日に増額変更され,契約金額は5868万4500円(税込)とされた。
(査A第2号証,第3号証)
エ 物件122(岩手県立盛岡第二高等学校校舎改築〔建築〕工事・条件付一般競争入札)
(ア) 物件122は,JVを対象とした工事であった。被審人高光建設は,同社を代表者として阿部工務店とJVを組み入札に参加した。
(イ) 物件122の入札は,8JVが参加して平成16年5月25日に行われた。別紙1-3のとおり,同入札における1番札は東野建設工業・昭栄建設JVであり,被審人高光建設・阿部工務店JVは2番札であった(2JVの入札価格及び入札率は,それぞれ7億4056万2000円・79.33パーセント,7億5880万円・81.29パーセント)。東野建設工業・昭栄建設JVは,低入札価格調査を受けた結果,これに失格した。2番札であった被審人高光建設・阿部工務店JVも同調査の対象とされたが,調査の結果,履行可能と判断され,物件122を受注した。
(ウ) 被審人高光建設のJV出資比率は60パーセントであり,物件122に係る同被審人の売上額は,落札価格に同出資比率を乗じて消費税相当分を加算した4億7804万4000円であった。
(査A第3号証,第11号証)
オ 物件127(岩手県立盛岡工業高等学校第一体育館改築〔建築等〕工事・条件付一般競争入札)
物件127の入札は,14社が参加して平成16年8月24日に行われた。別紙1-4のとおり,同入札における1番札は大平建設であったが(入札価格1億5577万円。設計金額の83.52パーセント),同社は,低入札価格調査を受けた結果,これに失格した。2番札は被審人高光建設と中亀建設で,2社は同額であった(入札価格1億5852万5000円。設計金額の85.00パーセント)。このため,岩手県の競争入札執行事務処理基準に基づき,同2社の間でくじ引きが行われ,その結果,被審人高光建設が物件127を受注した。(査共第39号証,査A第3号証,第12号証)
(3) 被審人匠建設の受注物件
ア 被審人匠建設が,本件実行期間中に受注した岩手県発注の特定建築工事は,物件35,37,58,101及び103の5件であり,その詳細は別紙2のとおりである。
イ 物件35(岩手県立大船渡病院調乳室その他改修工事・指名競争入札)
(ア) 物件35の入札は,10社が参加して平成13年12月3日に行われ,別紙2-1のとおり,被審人匠建設が,予定価格の85.20パーセントに相当する価格である800万円で入札し,これを受注した。
(イ) 被審人匠建設は,岩手県との間で,平成13年12月11日,前記(ア)の金額に消費税相当分を加算した金額である840万円で物件35の契約を締結した。当該契約は,平成14年3月8日に増額変更され,契約金額は1077万900円(税込)とされた。
(査B第1号証,第5号証)
ウ 物件37(県営赤沢アパート4・5号棟外壁等改修工事・指名競争入札)
物件37の入札は,10社が参加して平成13年12月14日に行われ,別紙2-2のとおり,被審人匠建設が,予定価格の99.34パーセントに相当する価格である1200万円で入札し,これを受注した。(査B第5号証)
エ 物件58(岩手県立大船渡病院診療棟増築等〔建築〕工事・条件付一般競争入札)
(ア) 物件58の入札は,13社が参加して平成14年6月25日に行われ,別紙2-3のとおり,被審人匠建設が,設計金額の87.76パーセントに相当する価格である3億5万4000円で入札し,これを受注した。
(イ) 被審人匠建設は,岩手県との間で,平成14年7月8日,前記(ア)の金額に消費税相当分を加算した金額である3億1505万6700円で物件58の契約を締結した。当該契約は,同年12月16日,平成15年4月7日及び平成16年1月13日に増額変更され,契約金額は3億4168万1550円(税込)とされた。
(査B第2号証,第5号証)
オ 物件101(県営長谷堂アパート〔5号棟〕建設〔建築〕工事・条件付一般競争入札)
(ア) 物件101の入札は,12社が参加して平成15年8月6日に行われ,別紙2-4のとおり,被審人匠建設が,設計金額の95.00パーセントに相当する価格である1億5715万4000円で入札し,これを受注した。
(イ) 被審人匠建設は,岩手県との間で,平成15年8月20日,前記(ア)の金額に消費税相当分を加算した金額である1億6501万1700円で物件101の契約を締結した。当該契約は,平成16年1月14日及び同年3月5日に増額変更され,契約金額は2億494万7400円(税込)とされた。
(査B第3号証,第5号証,第10号証)
カ 物件103(県営長谷堂アパート〔6号棟〕建設〔建築〕工事・条件付一般競争入札)
(ア) 物件103の入札は,11社が参加して平成15年9月19日に行われ,別紙2-5のとおり,被審人匠建設が,設計金額の88.00パーセントに相当する価格である1億2609万4000円で入札し,これを受注した。
(イ) 被審人匠建設は,岩手県との間で,平成15年10月2日,前記(ア)の金額に消費税相当分を加算した金額である1億3239万8700円で物件103の契約を締結した。当該契約は,平成16年3月8日に増額変更され,契約金額は1億3393万6950円(税込)とされた。
(査B第4号証,第5号証,第8号証)
(4) 被審人タカヤの受注物件
ア 被審人タカヤが,本件実行期間中に受注した岩手県発注の特定建築工事は,物件34,88,114及び125の4件であり,その詳細は別紙3のとおりである。
イ 物件34(岩手県立黒沢尻工業高等学校産業教育施設大規模改造〔建築〕工事・条件付一般競争入札)
(ア) 物件34の入札は,11社が参加して平成13年11月20日に行われ,別紙3-1のとおり,被審人タカヤが,設計金額の96.85パーセントに相当する価格である1億2000万円で入札し,これを受注した。
(イ) 被審人タカヤは,岩手県との間で,平成13年11月27日,前記(ア)の金額に消費税相当分を加算した金額である1億2600万円で物件34の契約を締結した。当該契約は,平成14年3月1日及び同年10月4日に増額変更され,契約金額は1億3795万6350円(税込)とされた。
(査C第1号証,第5号証,第14号証)
ウ 物件88(岩手県立紫波高等学校校舎・産振棟改築〔建築〕工事・条件付一般競争入札)
(ア) 物件88は,JVを対象とした工事であった。被審人タカヤは,平野組を代表者として被審人タカヤ及び橘建設を構成員とするJVを組み(以下「平野組・被審人タカヤ・橘建設JV」という。),入札に参加した。
(イ) 物件88の入札は,6JVが参加して平成15年5月23日に行われ,別紙3-2のとおり,平野組・被審人タカヤ・橘建設JVが,設計金額の97.24パーセントに相当する価格である13億4000万円で入札し,これを受注した。
(ウ) 平野組・被審人タカヤ・橘建設JVは,岩手県との間で,平成15年6月25日,前記(イ)の金額に消費税相当分を加算した金額である14億700万円で物件88の仮契約を締結し,同契約は同年7月9日に岩手県議会の議決を得て効力を得た。当該契約は,平成16年3月23日に増額変更され,契約金額は14億2224万2850円(税込)とされた。被審人タカヤのJV出資比率は38パーセントであり,物件88に係る同被審人の売上額は,契約金額に同出資比率を乗じた5億4045万2283円であった。
(査C第2号証,第3号証,第5号証,第15号証)
エ 物件114(都南の園地震災害復旧工事・指名競争入札)
物件114の入札は,9社が参加して平成15年12月8日に行われた。同物件の予定価格は非公表で,248万8000円と設定されていたが,別紙3-3のとおり,1回目の入札以降,予定価格を下回る額での入札がなかったことから,3回目まで入札が実施された。3回の入札においては,いずれも被審人タカヤが入札参加者の中で最も低い価格であったものの,入札価格は3回目の入札においても予定価格を下回らなかったため,物件114は被審人タカヤとの随意契約に移行し,同社が予定価格の98.47パーセントに相当する価格である245万円で受注した。(査C第5号証)
オ 物件125(県立産業技術短期大学校本館塔屋ガラス屋根改修及び喫煙室設置工事・指名競争入札)
(ア) 物件125の入札は,10社が参加して平成16年8月9日に行われ,別紙3-4のとおり,被審人タカヤが,予定価格の90.15パーセントに相当する価格である760万円で入札し,これを受注した。
(イ) 被審人タカヤは,岩手県との間で,平成16年8月17日,前記(ア)の金額に消費税相当分を加算した金額である798万円で物件125の契約を締結した。当該契約は,同年9月30日及び同年10月4日に増額変更され,契約金額は859万2150円(税込)とされた。
(査C第4号証,第5号証)
(5) 被審人下建設の受注物件
ア 被審人下建設が,本件実行期間中に受注した岩手県発注の特定建築工事は,物件108の1件であり,その詳細は別紙4のとおりである。
イ 物件108(県営内丸駐車場整備工事・指名競争入札)
(ア) 物件108の入札は,10社が参加して平成15年10月7日に行われた。別紙4-1のとおり,同入札における1番札は被審人タカヤで(入札価格6222万円。予定価格の84.93パーセント),被審人下建設は2番札であった(入札価格6290万円。予定価格の85.86パーセント)。被審人タカヤは,最低制限価格(6227万1000円)を下回ったため失格し,次に低い入札価格であった被審人下建設が物件108を受注した。
(イ) 被審人下建設は,岩手県との間で,平成15年10月16日,前記(ア)の金額に消費税相当分を加算した金額である6604万5000円で物件108の契約を締結した。当該契約は,平成16年1月21日に増額変更され,契約金額は8300万400円(税込)とされた。
(査D第1号証,第2号証)
(6) 売上額
被審人らの本件実行期間における岩手県発注の特定建築工事に係る売上額は,改正法附則第2条のなお従前の例によることとする規定により,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成17年政令第318号)による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(以下「施行令」という。)第6条の規定に基づき算定すべきところ,当該規定に基づき算定すると,それぞれ下記のアないしエのとおりである。(本件物件の対価〔本件実行期間内の契約金額の増額分及び消費税相当分を含む。〕を課徴金の算定の基礎とすることを除き,本件実行期間内の各売上額についてはいずれも争いがない。)
ア 被審人高光建設
4件の契約の対価の額の合計である7億8215万6550円
イ 被審人匠建設
5件の契約の対価の額の合計である7億393万6800円
ウ 被審人タカヤ
4件の契約の対価の額の合計である6億8957万3283円
エ 被審人下建設
1件の契約の対価の額である8300万400円
第3 本件の争点
1 被審人らは本件違反行為の不存在を主張し得るか。
2 本件物件が独占禁止法第7条の2第1項所定の「当該・・・役務」に該当するものとして,課徴金算定の対象となるか。
3 本件物件のうち,実行期間内に契約が変更されて契約金額が増額されたものについて,その増額分も課徴金の算定の基礎に含まれるか。
4 消費税相当額も課徴金の算定の基礎に含まれるか。
第4 争点についての双方の主張
1 争点2について
(1) 審査官の主張
ア 受注調整事案における「当該商品又は役務」の意義等から,本件物件はいずれも課徴金の算定対象となる。
(ア) 独占禁止法第7条の2第1項にいう「当該商品又は役務」とは,違反行為の対象商品又は対象役務の範ちゅうに属する商品又は役務であって,違反行為による相互拘束を受けたものをいうところ(東京高等裁判所平成22年11月26日判決・公正取引委員会審決集第57巻第2分冊194頁等参照),本件のような受注調整事案の場合には,自由な競争を行わないという不当な取引制限に該当する意思の連絡による相互拘束たる基本合意の対象となった商品又は役務全体のうち,個別の入札において,基本合意に基づいて受注予定者が決定されるなど,基本合意の成立により発生した競争制限効果が及んでいると認められるものをいうと解されている(東京高等裁判所平成24年3月2日判決・公正取引委員会ホームページ「審決等データベースシステム」等参照)。
そして,課徴金制度の趣旨,受注調整の性質等からすれば,基本合意の対象となった商品又は役務については,当該基本合意の参加者が,明示的又は黙示的に当該基本合意の対象から除外するなど,当該商品又は役務が違反行為である相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がない限り,競争制限効果が及んだものと推定され,独占禁止法第7条の2第1項にいう「当該商品又は役務」に該当するものとして課徴金の算定対象に含まれる(公正取引委員会平成22年12月14日審決・公正取引委員会審決集第57巻第1分冊398頁等参照)。
(イ) 前記(ア)からすれば,本件において違反行為の対象となった岩手県発注の特定建築工事については,特段の事情がない限り,競争制限効果が及んでいるものと推認され,課徴金の算定対象に含まれる。
イ 本件物件のうち,本件基本合意に基づく受注調整が行われ,競争制限効果が及んでいたことが証拠上明らかな物件(物件86,101,103,34,88,114及び125。以下「認定7物件」という。)について
(ア) 本件物件のうち被審人高光建設が受注した物件86,被審人匠建設が受注した物件101及び103並びに被審人タカヤが受注した物件34,88,114及び125については,後記(イ)ないし(ク)のとおり,括弧書きで掲記した証拠により本件基本合意に基づく受注調整が行われたことが認められるから,競争制限効果が及んでいたといえる(本案審決案別紙9)。
(イ) 物件86
被審人高光建設が受注予定者となった。
被審人高光建設は,入札前に,他のTST親交会等の会員である入札参加者(以下「会員入札参加者」という。)に対し,2回分の入札価格を連絡した。
入札において,被審人高光建設以外の会員入札参加者は,同被審人が受注できるような価格で入札し,同被審人が1回目の入札で落札した。
(査共第2号証,第3号証,第42号証,査A第3号証,第5号証)
(ウ) 物件101
被審人匠建設が受注予定者となった。
被審人匠建設は,入札前に,他の会員入札参加者に対し,入札すべき価格を記載した札を渡すなどして,自社の入札価格より高い価格で入札するよう要請した。
入札において,被審人匠建設以外の会員入札参加者は,同被審人が受注できるような価格で入札し,同被審人が1回目の入札で落札した。
(査共第42号証,査B第6号証,第7号証)
(エ) 物件103
被審人匠建設に継続性があったことから,同被審人が受注予定者となった。
入札において,被審人匠建設以外の会員入札参加者は,同被審人が受注できるような価格で入札し,同被審人が1回目の入札で落札した。
(査共第4号証,第42号証)
(オ) 物件34
被審人タカヤは,あらかじめ稲垣に対し,継続性があることを理由に,受注希望を表明した。その後,同被審人は,稲垣から,受注希望者が同被審人のみである旨の電話連絡を受け,同被審人が受注予定者となった。
被審人タカヤは,入札前に,他の会員入札参加者に対し,入札価格を連絡した。
入札において,被審人タカヤ以外の会員入札参加者は,同被審人が受注できるような価格で入札し,同被審人が1回目の入札で落札した。
(査共第5号証,第6号証,第42号証)
(カ) 物件88
被審人タカヤ及び橘建設に継続性があり,橘建設には地域性もあったことから,平野組・被審人タカヤ・橘建設JVが受注予定者となった。
入札において,上記JV以外の会員入札参加者は,同JVが受注できるような価格で入札し,同JVが1回目の入札で落札した。
(査共第4号証,第42号証)
(キ) 物件114
被審人タカヤに継続性があったことから,同被審人が受注予定者となった。
入札において,被審人タカヤ以外の会員入札参加者は,同被審人が受注できるような価格で入札し,1回目ないし3回目の入札ではいずれも同被審人が一番札となったものの,同被審人の入札価格が予定価格に達しなかったため,入札は不調となった。
その後,一番札の被審人タカヤとの随意契約に移行し,同被審人が受注した。
(査共第4号証,第42号証)
(ク) 物件125
被審人タカヤに継続性があったことから,同被審人が受注予定者となった。
被審人タカヤは,入札前に,他の会員入札参加者に対し,2回分の入札価格を連絡した。
入札において,被審人タカヤ以外の会員入札参加者は,同被審人が受注できるような価格で入札し,同被審人が1回目の入札で落札した。
(査共第3号証,第4号証,第42号証,査C第6号証)
ウ 本件物件のうち,前記イの物件以外の物件(物件50,122,127,35,37,58及び108。以下「推認7物件」という。)について
(ア) 前記アに加え,本件で認められる以下の事実からも,本件物件を含む本件違反行為期間における岩手県発注の特定建築工事の全物件で受注調整が行われ競争制限効果が及んでいたことは明らかである。
a 本案審決において認定されたとおり,岩手県発注の特定建築工事133物件中,本件基本合意の当事者である105社が受注したのは118物件であり,そのうち,58物件(以下「58物件」という。)について本件基本合意に基づく受注調整が行われた。また,118物件から58物件を除いた60物件(以下「60物件」という。)の全部又は大部分においても,本件基本合意に基づく受注調整が行われていたことが推認される。
b 133物件のうち,受注調整が行われた63物件(58物件に,受注調整は行われたがアウトサイダーが受注した5件を加えたもの。以下「63物件」という。)は,条件付一般競争入札,受注希望型指名競争入札及び指名競争入札のいずれの発注方法も含み,新築工事のみならず改築工事,改修工事,増築工事,解体工事等の多様な種別の工事を含む。63物件の工事は特定の地域に偏ることなく県内全域において実施されており,実施された時期も,本件違反行為期間中の特定の時期に偏っていない。
c トラスト・メンバーズが受注調整を行っているとの情報が岩手県に寄せられ,稲垣らが岩手県の事情聴取を受けたにもかかわらず,105社は,受注調整をやめることなく,平成14年12月1日からトラスト・メンバーズの名称をTST親交会に変更する等の発覚防止のための措置を講じて受注調整を継続した。また,TST親交会等は,毎年の総会において,受注調整の継続の確認を行っていた。
d 105社は,公共工事の受注機会の均等を図るとともに,各工事を利益が得られる価格で受注するために受注調整を行っていたこと,貸し借りの関係にある者同士で受注調整を行っていたことなどからすれば,105社には,本件違反行為期間における岩手県発注の特定建築工事の全物件で受注調整を行う動機があった。
(イ) 推認7物件に係る後記の具体的事実に照らすと,推認7物件について本件基本合意に基づく受注調整が行われ,競争制限効果が及んでいたことが認められる。
(ウ) 物件50
a 物件50は本体工事として既に工事が行われていた物件9(岩手県立沼宮内病院新築〔建築〕工事)の附帯工事であり,本体工事を千田工業とJVを組んで受注していた被審人高光建設は,本体工事の進行の関係もあって,物件50の受注を強く目指していた。(高橋精一代表者審訊速記録)
b 被審人高光建設と同様に物件50について継続性又は関連性を主張できる千田工業(なお,物件9は千田工業に継続性があったことから,被審人高光建設・千田工業JVが受注調整により受注予定者となったものである〔査共第5号証,第6号証,第42号証,第47号証ないし第50号証,査A第6号証。本案審決案別紙9(7)〕。)は,物件50の入札参加者として指名されなかった。(査A第3号証)
c 物件50の入札参加申込者は10社であるところ,そのうちの9社が,63物件の入札及び60物件の入札に共に参加したことがある95社(以下「95社」という。)に属する者である。
d 物件50の入札参加者のうち吉田組が岩手県発注の特定建築工事について受注調整を行っていたことを認める旨の供述をしている。(査共第166号証)
e 実際の入札では,被審人高光建設が予定価格の97.26パーセントに相当する価格で入札し,他の入札参加者がいずれも予定価格の99パーセントに相当する額を超える価格で入札している。(査A第3号証)
f 前記のとおり物件50の本体工事である物件9は,本件基本合意に基づく受注調整により被審人高光建設・千田工業JVが受注している。
g 物件50の入札公告の翌日に入札公告がなされ,物件50の入札日から僅か2週間後に入札が行われた物件51(査共第1号証)では,本案審決でも認定されているとおり(本案審決案理由の第4の2(3)ア及び同別紙11(4)),入札前に被審人高光建設及びその他TST親交会等の会員が参加して受注予定者を決定するための研究会が開催されていた。(査共第11号証,第12号証)
(エ) 物件122
a 物件122は,岩手県において大型工事が余りなかった時期に発注されたものであり,同業者間において受注意欲が非常に高い物件であったところ,被審人高光建設も強く受注を希望していた。(高橋精一代表者審訊速記録)
b 受注希望者が複数存在したため,本案審決でも認定されているとおり(本案審決案理由の第4の2(3)ア及び同別紙11(8)),入札前の平成16年4月19日に平安閣において被審人高光建設等が参加して研究会が開催された。(査共第18号証,高橋精一代表者審訊速記録)
c 物件122の入札参加JVは8JVであるところ,そのいずれのJVも95社に属する者を構成員に含むものである。
d 物件122の入札参加JVのうち4JVは岩手県発注の特定建築工事について受注調整を行っていたことを認める旨の供述をしている者(東野建設工業〔査共第2号証,第23号証,第24号証〕,被審人タカヤ〔査共第4号証,第5号証〕,篠村建設〔査共第33号証〕,恵工業〔査共第34号証〕,石川工務所〔査共第36号証〕)を構成員に含むものであった。
e 本件違反行為期間でみれば,過去に岩手県立盛岡第二高等学校に係る建築工事は発注されておらず,強く継続性を主張できる者はいなかった。(査共第1号証)
f 実際の入札では,岩手県発注の特定建築工事について受注調整を行っていたことを認める旨の供述をしている者をそれぞれ構成員に含む菊池工務店・石川工務所JV及び大伸工業・篠村建設JVの2JVの入札価格(それぞれ設計金額の94.27パーセント,94.84パーセント)は,被審人高光建設・阿部工務店JVの入札価格(設計金額の81.29パーセント)から大きくかい離している。(査共第136号証,査A第3号証,第11号証)
g その他,会員入札参加者である田中建設・千田組JV及び佐々木組・大丸建設JVの入札価格(それぞれ設計金額の97.50パーセント,98.23パーセント)は設計金額に近接した価格である。(査A第3号証,第11号証)
(オ) 物件127
a 物件127の入札の当時,被審人高光建設は物件127の受注を希望していた。(高橋精一代表者審訊速記録)
b 物件127の入札参加者は14社であるところ,そのうちの12社が95社に属する者である。
c 物件127の入札参加者のうち5社が岩手県発注の特定建築工事について受注調整を行っていたことを認める旨の供述をしている。(被審人タカヤ〔査共第7号証,第8号証〕,タカヨ建設〔査共第5号証〕,北水建設工業〔査共第32号証〕,石川工務所〔査共第36号証〕,菱和建設〔査共第165号証〕)
d 実際の入札では,被審人高光建設は設計金額の85.00パーセントに相当する価格で入札しているのに対し,岩手県発注の特定建築工事について受注調整を行っていたことを認める旨の供述をしている被審人タカヤ,石川工務所,タカヨ建設,北水建設工業及び菱和建設の5社を含む会員入札参加者の過半の者(そのほか橘建設,被審人下建設及び大伸工業)はいずれも設計金額の90パーセントに相当する額を超える価格で入札している。(査共第136号証,査A第3号証,第12号証)
e 物件127の入札公告の5日後に入札公告がなされ,物件127の約2週間前に入札が行われ,被審人高光建設も入札に参加した物件125(査共第1号証参照)は,前記第2の2(4)オ記載のとおり,本件基本合意に基づく受注調整により被審人タカヤが受注したものであって,物件127の会員入札参加者である12社のうち6社は物件125の入札にも参加した者である。(査A第10号証)
f 本件違反行為期間でみれば,過去に岩手県立盛岡工業高等学校に係る建築工事は発注されておらず,強く継続性を主張できる者はいなかった。(査共第1号証)
(カ) 物件35
a 被審人匠建設は以前にも岩手県立大船渡病院の精神科病棟の建築工事を施工した実績があった。(中嶋豊代表者審訊速記録)
b 物件35の会員入札参加者の中には,被審人匠建設以外に同物件の施工実績のある事業者はおらず,会員入札参加者の中で物件35の工事場所に一番近かったのは被審人匠建設であった。(中嶋豊代表者審訊速記録)
c 物件35の入札参加者は10社であるところ,そのうちの9社が95社に属する者である。
d 物件35の入札には岩手県発注の特定建築工事について受注調整を行っていたことを認める旨の供述をしている佐賀組が参加している。(査共第28号証)
e 被審人匠建設が以前に岩手県立大船渡病院の精神科病棟の建築工事を受注したことは気仙地区の事業者(物件35の会員入札参加者8社のうち5社が気仙地区の事業者である〔査共第1号証,本案審決別紙1の被審人目録参照〕。)において周知の事実であった。(中嶋豊代表者審訊速記録)
(キ) 物件37
a 被審人匠建設は,県営赤沢アパートを建設した実績があり,かつ,従来から同アパートについては外壁の補修工事や階段室の改修工事も施工してきた実績があり,また,物件37の工事場所から近かった。(中嶋豊代表者審訊速記録)
b 物件37の入札参加者は10社であるところ,そのうちの9社が95社に属する者である。
c 物件37の入札には岩手県発注の特定建築工事について受注調整を行っていたことを認める旨の供述をしている佐賀組が参加している。(査共第28号証)
d 県営赤沢アパートを建設したのは被審人匠建設であり,従来から同アパートについては被審人匠建設が外壁の補修工事や階段室の改修工事を施工してきたことは気仙地区の事業者(物件37の会員入札参加者8社のうち5社が気仙地区の事業者である〔査共第1号証,本案審決別紙1の被審人目録参照〕。)において周知の事実であった。(中嶋豊代表者審訊速記録)
e 実際の入札では,被審人匠建設が予定価格の99.34パーセントに相当する価格で入札し,他の入札参加者がいずれも予定価格の100パーセントに相当する額を超える価格で入札した。(査B第5号証)
(ク) 物件58
a 被審人匠建設は,岩手県立大船渡病院の精神科病棟の建築工事や調乳室等の改修工事(物件35)を施工した実績があり,また,物件58の工事場所から近かった。(中嶋豊代表者審訊速記録)
b 物件58の会員入札参加者の中には,被審人匠建設以外に同物件の施工実績のある事業者はおらず,会員入札参加者の中で物件58の工事場所に一番近かったのは被審人匠建設であった。(中嶋豊代表者審訊速記録)
c 物件58の入札参加者は13社であるところ,そのうちの11社が95社に属する者である。
d 物件58の入札には岩手県発注の特定建築工事について受注調整を行っていたことを認める旨の供述をしている佐賀組が参加している。(査共第28号証)
e 被審人匠建設が以前に岩手県立大船渡病院の精神科病棟の建築工事や調乳室等の改修工事(物件35)を受注したことは気仙地区の事業者(物件58の会員入札参加者10社のうち5社が気仙地区の事業者である〔査共第1号証,本案審決別紙1の被審人目録参照〕。)において周知の事実であった。(中嶋豊代表者審訊速記録)
f 実際の入札では,被審人匠建設が設計金額の87.76パーセントに相当する価格で入札し,アウトサイダーである日本住宅が設計金額の88.04パーセントに相当する価格で入札している一方,他の入札参加者がいずれも設計金額の97パーセントに相当する額を超える価格で入札した。(査共第136号証,査B第5号証,第11号証)
(ケ) 物件108
a 物件108は高層の建物の解体工事であり,被審人下建設は実績作りの観点から受注を希望していた。(審D第1号証)
b 物件108の工事場所は,被審人下建設及び被審人タカヤの所在地から近い距離にあり,両社に地域性があった。(竹鼻義徳参考人審訊速記録)
c 物件108の入札参加者は10社であるところ,そのうちの7社が95社に属する者である。
d 物件108の入札には岩手県発注の特定建築工事について受注調整を行っていたことを認める旨の供述をしている者が2社参加していた。(被審人タカヤ〔査共第4号証,第5号証〕,菱和建設〔査共第165号証〕)
e 本件違反行為期間でみれば,過去に県営内丸駐車場に係る建築工事は発注されておらず,強く継続性を主張できる者はいなかった。(査共第1号証)
f 実際の入札では,地域性があった被審人下建設及び被審人タカヤを除く入札参加者の入札価格(いずれも予定価格の97パーセントに相当する額を超える価格)は,被審人下建設の入札価格(予定価格の85.86パーセントに相当する価格)から大きくかい離していた。(査D第2号証)
(2) 被審人らの主張
ア 審査官の主張アは否認ないし争う。
(ア) 入札談合一般において,基本合意があれば,全物件において基本合意に基づいて受注予定者が決定される,あるいは受注調整が行われるなどという経験則は認められない。基本合意が認められるからといって,個別物件について基本合意の拘束を受け受注予定者の決定が行われたものと推定することはできない。これは,平成13年,平成14年頃以降,本件基本合意に基づく受注希望者間で調整がつかない案件,個別の案件において受注調整自体に応じない会員も出てきていたことからも裏付けられる。
(イ) 岩手県発注の特定建築工事の入札については,いずれもアウトサイダーが参加し,アウトサイダーによる牽(けん)制力が働き,アウトサイダーが受注した物件も少なくない。このような市場においては,本件基本合意の存在により,全物件について受注調整が行われたという推定は働かない。
(ウ) 受注調整が行われ,受注予定者が決定されたとしても,アウトサイダーの牽制力が働くから,具体的な競争制限効果は発生しない。
(エ) 指名競争入札であれば最低制限価格,条件付一般競争入札であれば調査基準価格をそれぞれ下回る価格競争は,個々の入札という市場においては望むべくもない。条件付一般競争入札においては,公表された設計金額と調査基準価格の間で価格競争が行われる。したがって,低入札価格調査の対象となった物件,最低制限価格に近い価格で落札された物件については,具体的な競争制限効果が発生しなかったといえる。
(オ) 課徴金制度は,不当利得との相関関係を重視して設計されたものであり,不当利得の全く発生していない取引に対してまで課徴金を及ぼすことはできない。
イ 審査官の主張イは否認ないし争う。
(ア) 審査官の挙げる認定7物件についての証拠は,いずれも証拠価値がない上,認定7物件については,後記(イ)ないし(ク)の個別の事情のほか,次の事情があるから,本件基本合意に基づく受注調整が行われたことは認められない。
a 被審人らは,独自の積算に基づいて入札し,落札したのであって,基本合意に基づいて受注調整を行っていない。
b 被審人らがアウトサイダーに協力を求めたり,アウトサイダーが協力を了承したことはない。
c 被審人らは,入札前に他の入札参加者を知ることができなかった。
(イ) 物件86について
a 審査官の主張イ(イ)は否認ないし争う。
b 物件86について,被審人高光建設に継続性,関連性,地域性はなかった。
(ウ) 物件101について
a 審査官の主張イ(ウ)は否認ないし争う。
b 物件101について,被審人匠建設に継続性,関連性,地域性はなかった。
c 被審人匠建設は,2番札の事業者より格段に低い価格で落札したこと,他の事業者の入札価格にばらつきがあることが認められる。受注調整が行われた場合には,仮に受注予定者になれなくても,受注予定者が低入札価格調査その他の何らかの理由で失格になる可能性があるから,他の事業者の中には,受注予定者の価格に近い価格で入札する事業者もあるはずであるし,また,他の事業者の入札価格にばらつきが生じるはずもない。
(エ) 物件103について
a 審査官の主張イ(エ)は否認ないし争う。
b 物件103について,被審人匠建設に継続性,関連性,地域性はなかった。
c 被審人匠建設は,2番札の事業者より格段に低い価格で落札した。また,他の事業者の入札価格にばらつきがある。
(オ) 物件34について
a 審査官の主張イ(オ)は否認ないし争う。
b 審査官が依拠する被審人タカヤの細川の供述(査共第5号証)は,同人が被審人タカヤにおいて,岩手県発注の特定建築工事を担当していなかったこと,被審人タカヤを退社後,菱和建設に就職した者であること,内容的にも具体的な資料に基づくものといえないことからすると,信用できない。
c 物件34については,株式会社小原建設及び千田工業も以前に施工しており,千田工業が一番近い位置にあり,被審人タカヤに継続性,関連性,地域性はなかった。
(カ) 物件88について
a 審査官の主張イ(カ)は否認ないし争う。
b 審査官が依拠する被審人タカヤの佐々木の供述(査共第4号証)は,同人が被審人タカヤにおいて,営業業務全般の責任者ではなかったこと,内容的にも具体的な資料に基づくものといえないことからすると,信用できない。
c 被審人タカヤは,平成14年10月頃トラスト・メンバーズを脱退しており,物件88はその7か月後に入札が行われたものであって,被審人タカヤは受注調整を行っていない。
d 被審人タカヤを含むJVは,2番札のJVより格段に低い価格で落札したこと,他のJVの入札価格にばらつきがあることが認められる。
e 物件88は,JVを対象とした物件であったところ,入札価格の決定等の入札手続は,全て平野組・被審人タカヤ・橘建設JVの代表者であった平野組が行っており,被審人タカヤは受注調整に関与していないし,平野組が受注調整することを容認したこともない。
(キ) 物件114について
a 審査官の主張イ(キ)は否認ないし争う。
b 前記(カ)bと同じ。
c 被審人タカヤは,平成14年10月頃トラスト・メンバーズを脱退しており,物件114はその1年2か月後に入札が行われたものであって,被審人タカヤは受注調整を行っていない。
d 物件114は,合計3回の入札を行ったが入札不調となり随意契約により契約に至ったものであって,受注調整があったことは考えられない。
(ク) 物件125について
a 審査官の主張イ(ク)は否認ないし争う。
b 前記(カ)bと同じ。
c 被審人タカヤは,平成14年10月頃トラスト・メンバーズを脱退しており,物件125はその1年10か月後に入札が行われたものであって,被審人タカヤは受注調整を行っていない。
ウ 審査官の主張ウは否認ないし争う。
(ア) 審査官の主張ウ(ア)は争う。
(イ) 審査官の主張ウ(イ)は争う。推認7物件については,後記(ウ)ないし(ケ)の個別の事情のほか,次の事情があるから,推認7物件について本件基本合意に基づく受注調整が行われたことは認められない。
a 被審人らは,独自の積算に基づいて入札し,落札したのであって,基本合意に基づいて受注調整を行っていない。
b 被審人らがアウトサイダーに協力を求めたり,アウトサイダーが協力を了承したことはない。
c 被審人らは,入札前に他の入札参加者を知ることができなかった。
(ウ) 物件50について
a 審査官の主張ウ(ウ)のうち,a,eの事実は認めるが,その余の事実は否認し,主張はいずれも争う。被審人高光建設は,物件9及び物件51についても受注調整をしていない。
b 物件50については,高橋建設が地域性を有しており,被審人高光建設だけに継続性,地域性,関連性があるとはいえない。
c 被審人高光建設は,2番札の事業者より格段に低い価格で落札した。また,他の事業者の入札価格にばらつきがある。
(エ) 物件122について
a 審査官の主張ウ(エ)のうち,aの事実は認めるが,その余の事実は否認し,主張はいずれも争う。
b 物件122については,被審人タカヤが最も近く,地域性を有しており,被審人高光建設に継続性,地域性,関連性があるとはいえない。
c 被審人高光建設・阿部工務店JVの落札価格は,一番札の東野建設工業・昭栄建設JVの入札価格より約1820万円も高いから,東野建設工業・昭栄建設JVが受注予定者になったはずはないし,2番札の被審人高光建設・阿部工務店JVが受注予定者になったはずもない。
d 被審人高光建設・阿部工務店JVの落札価格は調査基準価格を下回っているところ,条件付一般競争入札においては,公表された設計金額と調査基準価格の間で価格競争が行われるのであるから,調査基準価格を下回って落札した場合には,具体的な競争制限効果が生じたとはいえない。
e 入札に参加した8JVのうち,4JVが低入札価格調査の対象となり,激しく競争をしているから,受注調整があったことは考えられない。
(オ) 物件127について
a 審査官の主張ウ(オ)のうち,a,fの事実は認めるが,その余の事実は否認し,主張はいずれも争う。
b 物件127について,被審人高光建設に継続性,地域性,関連性はなかった。
c 1番札であった大平建設と2番札であった被審人高光建設及び中亀建設の落札価格には開きがあるから,大平建設が受注予定者であったはずはない。また,2番札でくじ引きとなった被審人高光建設が受注予定者になったはずもない。
d 被審人高光建設の落札価格は調査基準価格を僅かに上回る数字であり,条件付一般競争入札においては,公表された設計金額と調査基準価格の間で価格競争が行われるのであるから,本件の場合には,具体的な競争制限効果が生じたとはいえない。
(カ) 物件35
a 審査官の主張ウ(カ)の事実のうち,a,eの事実は認めるが,その余の事実は否認し,主張はいずれも争う。
b 物件35について,被審人匠建設に継続性,地域性,関連性はなかった。
c 被審人匠建設は,2番札の事業者より格段に低い価格で落札した。また,他の事業者の入札価格にばらつきがある。
d 物件35の落札率は最低制限価格ぎりぎりの85.20パーセントである。本件の予定価格は公表されていないが,被審人匠建設は,物件35のような小規模の物件の予定価格はかなり正確に予想できるのであり,受注調整ができているのであれば,最低制限価格を下回ったため失格となるリスクがあり,利益も少ないこのような価格で入札するはずがない。
(キ) 物件37
a 審査官の主張ウ(キ)の事実のうち,a,dの事実は認めるが,その余の事実は否認し,主張はいずれも争う。
b 物件37について,被審人匠建設に継続性はあったが,佐賀組が一番近い位置にあり,地域性を有する。被審人匠建設は,継続性,地域性,関連性を指標に受注調整をしていない。
(ク) 物件58
a 審査官の主張ウ(ク)の事実のうち,a,eの事実は認めるが,その余の事実は否認し,主張はいずれも争う。
b 物件58について,被審人匠建設に継続性,関連性はなかった。
c 被審人匠建設は,2番札の日本住宅と僅かの価格差で入札しており,日本住宅と激しい競争があったことが認められる。
(ケ) 物件108について
a 審査官の主張ウ(ケ)の事実のうち,a,e,fの事実は認めるが,その余の事実は否認し,主張はいずれも争う。
b 物件108について,被審人下建設に継続性,地域性,関連性はなかった。
c 2番札であった被審人下建設が受注予定者になったはずはない。
d 1番札の被審人タカヤは,最低制限価格を下回ったため失格しており,被審人タカヤと激しい競争があったことが認められる。
e 物件108の落札価格は,最低制限価格ぎりぎりである。本件の予定価格は公表されていないが,被審人下建設は,物件108のような小規模の物件の予定価格はかなり正確に予想できるのであり,受注調整ができているのであれば,最低制限価格を下回ったため失格となるリスクがあり,利益も少ないこのような価格で入札するはずがない。また,このような価格で落札した場合には,具体的な競争制限効果が生じたとはいえない。
2 争点3について
(1) 審査官の主張
課徴金算定の基礎となる売上額は,施行令第6条第1項により,「実行期間において締結した商品の販売又は役務の提供に係る契約により定められた対価の額」と規定されているところ,実行期間内に締結された変更契約によって原契約の契約金額が増減された場合には,変更後の金額が上記売上額に該当するものであり,これは,過去の審決において示されている解釈のとおりである(公正取引委員会平成18年9月21日審決・公正取引委員会審決集第53巻430頁参照)。
そして,変更契約分が当初の工事とは別の新たな変更・追加工事として発注されたことを示す事情は本件の各証拠に照らしても何らうかがえず,被審人らが当初の工事を受注することができたのは本件基本合意に基づく受注調整によるものといえる。したがって,契約の変更による増額分にも本件基本合意の効果が及んでいるとみるべきであることから,実行期間中の変更契約により定められた契約金額が課徴金算定の対象たる「対価の額」となる。
(2) 被審人らの主張
本件物件の変更契約は,いずれも岩手県が直接,当初契約を締結した事業者に対し,建設工事請負契約変更協議書を提出し,事業者において異議がなかった結果締結されたものであって,当初の工事とは別の新たな変更・追加工事が発注された結果締結され,契約金額が変更されたものといえる。
そうすると,契約の変更に係る金額は,入札価格とは別に,発注者と受注者との新たな合意によって決定されたものであって,変更分の金額にも本件基本合意の効果が及んだとはいえないから,課徴金の算定対象とすべきではない。
3 争点4について
(1) 審査官の主張
商品の購入者が支払う消費税相当額は,商品本体等の代金相当額の金員と同一の法的性質を有する金員として一体的に事業者に支払われ,事業者が,消費者から受領した金員の中から自らの義務として消費税を納付することが予定されているものである。したがって,消費税相当額は,法的には商品の販売価格の一部であり,また,当該商品の価額の一部を構成するものとして社会的に認識されている。このように,消費税相当額は,法律上も社会通念上も商品の「売上額」の一部であるというべきであるから,独占禁止法第7条の2第1項に規定する役務の売上額に該当し,課徴金の算定対象になる(最高裁判所第三小法廷平成10年10月13日判決・裁判集民事第190号1頁等参照)。
(2) 被審人らの主張
消費税は,商品等の消費者の消費に対し課税され,その商品等の提供を行った事業者が徴収・納税する間接税であり,本件の場合,被審人らは,岩手県が課税された税を徴収・納税しているだけであって,商品等の対価ということは全くできず,法律上,「売上額」の一部ということはできない。
また,岩手県の入札は税抜き価格で行われるのであって,消費税額は工事の価格には含まれておらず,さらに,会計上消費税は負債であって売上額には含めないとされている。
事業者が預かった消費税を課徴金の算定対象とすることは極めて不当であり,もとより,本件物件について,消費税額を控除して対価を算出することは極めて容易なのであって,算定対象に含める合理的理由はない。
第5 審判官の判断
1 争点1について
被審人らは,本件違反行為は存在しない旨主張する。
しかしながら,本件審判は,本件違反行為に関し,審判手続を経た上で,公正取引委員会が本件違反行為の存在を認定し,独占禁止法第54条第2項の規定により本案審決を行った後,本件違反行為について同一の被審人らに対して課徴金納付命令が発せられたことに由来する課徴金に係る審判であるところ,被審人らには,本案審決に係る審判手続において本件違反行為の存否を争う機会が与えられており,公正取引委員会は,被審人らの主張立証を踏まえて本件違反行為の存在を認定して本案審決を行ったものである。
このような場合には,課徴金に係る審判において,被審人らが重ねて本件違反行為の不存在を主張することは許されないと解するのが相当であるから,本件違反行為が存在しない旨の被審人らの主張はそれ自体失当であり,本件審判においては,本案審決の認定に係る本件違反行為の存在を前提とした上で,判断すべきこととなる(東京高等裁判所平成20年7月11日判決・公正取引委員会審決集第55巻864頁,東京高等裁判所平成24年2月17日判決・公正取引委員会ホームページ「審決等データベースシステム」等参照)。
2 争点2について
(1) 当該役務について
本件基本合意は,独占禁止法第7条の2第1項所定の「役務の対価に係るもの」に当たるものであるところ,同項所定の課徴金の対象となる「当該・・・役務」とは,本件のような入札談合の場合には,本件基本合意の対象とされた工事であって,本件基本合意に基づく受注調整等の結果,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものをいうと解される(最高裁判所第一小法廷平成24年2月20日判決・民集第66巻第2号796頁)。
(2) 岩手県発注の特定建築工事全般における受注調整について
ア 証拠によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 133物件中,63物件について,実際に本件基本合意に基づき受注調整が行われた。これら63物件は,条件付一般競争入札,受注希望型指名競争入札及び指名競争入札の全ての発注方法と新築工事,改築工事等多様な工事を含み,特定の地域や時期に偏ることなく県内全域において,本件違反行為期間全般にわたって実施された。(査共第38号証)
63物件について認定の根拠となった証拠は,別紙5及び6のとおりである。
なお,63物件のうち認定7物件については,後記(3)において改めて判断する。
(イ) 平成14年10月に稲垣らが岩手県の事情聴取を受けたにもかかわらず,105社は,平成14年12月1日から会の名称をTST親交会に変更し,対外的には役員が存在しないことにする等の発覚防止のための措置を講じて,受注調整を継続した。(査共第137号証ないし第143号証)
(ウ) TST親交会等の毎年の総会において,受注調整を継続することが確認されていた。(査共第36号証,第65号証,第144号証ないし第163号証,査C第7号証ないし第11号証)
(エ) 105社は,公共工事の受注機会の均等を図り,各工事を利益が得られる価格で受注するために受注調整を行っていたのであって(査共第2号証,第6号証,第25号証,第30号証,第33号証,第34号証),これは,岩手県発注の特定建築工事の全物件に当てはまる。また,105社は,受注調整を行うことにより相互に貸し借りを作っており(査共第25号証,第30号証),受注希望者だけでなく,他の事業者も受注調整に協力することにより何らかの見返りを期待できる関係にあったことからすると,105社には,本件違反行為期間における岩手県発注の特定建築工事の全物件について受注調整を行う動機があったといえる。
(オ) 全ての案件について受注調整を行っていたと供述している者(査共第27号証),基本合意を破れば他の事業者からの協力が得られなくなるばかりでなく,報復措置を受けるおそれがあるため基本合意を守っていかざるを得ないと供述している者(査共第35号証,第165号証)がいる。
イ 以上によれば,本件基本合意は,岩手県発注の特定建築工事の全物件を受注調整の対象とするものであったと推認されるから,岩手県発注の特定建築工事であり,かつ,105社のうちいずれかが入札に参加して受注した工事については,特段の事情がない限り,本件基本合意に基づいて受注予定者が決定され,具体的な競争制限効果が発生したものと推認するのが相当である(前掲東京高等裁判所平成24年3月2日判決参照)。
なお,被審人らは,平成13年,平成14年頃以降,本件基本合意に基づく受注希望者間で調整がつかない案件や,個別の案件において受注調整自体に応じない会員が出てきたと主張(前記第4の1(2)ア(ア))するが,上記推認を左右する事実を認めるに足りる証拠はない。
ウ 被審人らの主張について(前記第4の1(2)ア(イ))
被審人らは,岩手県発注の特定建築工事については,いずれもアウトサイダーが参加し,その牽制力が働き,アウトサイダーが受注した物件も少なからず存在し,このような市場においては,本件基本合意の存在により全物件について受注調整が行われたという推定は働かないと主張し,実際に岩手県発注の特定建築工事133物件の大部分(120件)においてアウトサイダーが入札に参加し,うち15件についてはアウトサイダーが落札したことが認められる(本案審決案別紙8,査共第42号証)。しかし,会員入札参加者の間で受注予定者を決定すれば,それだけ受注の可能性は高くなるのであり,現に,本案審決において,63物件(うち57件においてアウトサイダーが入札に参加している。)につき,現実に受注予定者が決定されたとされており(本件で被審人らが争っている認定7物件を除いても56件),この認定は正しいと認められる(前記ア(ア)参照)から,アウトサイダーが参加したことをもって,直ちに前記イの推認が妨げられるとはいえない。
(3) 認定7物件について
ア 認定7物件について,本件基本合意に基づき受注予定者が決定され,受注したと認められるかどうかを検討する。
イ 被審人高光建設の物件86(旧岩手県立沼宮内病院解体工事・指名競争入札)
(ア) 物件86の入札は,指名競争入札により行われたので,予定価格が事前に公表されておらず,1回目の入札で最低入札価格が予定価格を超えていた場合,2回目以降の入札が行われる可能性があったが,実際の入札では,1回目の入札で被審人高光建設が落札した。(査A第3号証)
(イ) 本件基本合意に基づく受注調整における価格連絡の方法として,「2回目は1回目の最も低い札の金額から○○円引き以内」等とする方法があった。(査共第26号証,第84号証)
そして,物件86に関し,東野建設工業から留置された入札記録確認書(査A第4号証)及び菱和建設から留置された引合カードと題する綴(つづ)り(査A第5号証)には,それぞれ,物件86における各自の2回目の入札価格として「最低より100万円以内下げ」又は「100万以内」との記載があり,これらは,①予定価格が公表されない物件86において,受注予定者による落札に協力するために上記の方法が採られたこと,②受注予定者から東野建設工業及び菱和建設に実際に価格連絡があったことをいずれも推認させるものといえる。
さらに,上記の文書を保持していた東野建設工業の従業員は,「最低いくらまでの入札価格であれば,会社としての採算が取れるといった程度のことは準備」するが,「『最低から○○万円以内』などといった入札会場で入札時の最低価格が分からないにもかかわらず,あらかじめ準備するようなことまでは行え」ず,仮に行っているようなことがあれば,「入札参加業者間で,あらかじめ受注予定者,つまり本命を決定し,当該本命が無事受注できるよう相指名業者としてこれに協力していた物件と言わざるを得ない」(査共第2号証)と供述し,菱和建設の従業員は,「1回目で落札業者が決まったにもかかわらず2回目の入札金額若しくは3回目の入札金額について記載した文書があったり,同じく2回目以降は『○○円以内』にするといったことを記録した文書があった際には,正に受注調整が行われていたとしか言いようがない」(査共第3号証)と供述している。
(ウ) 被審人高光建設は,別紙1-2のとおり,物件86を予定価格の96.49パーセントに相当する価格で入札し受注しているところ,他の入札参加者9社の入札価格は,全て予定価格の98パーセントを超えている。(査A第3号証)
(エ) 以上によれば,物件86については,本件基本合意に基づく受注調整が行われ,被審人高光建設が受注予定者となって受注したものと認められる。
(オ) 被審人高光建設は,東野建設工業及び菱和建設の従業員の供述調書(査共第2号証,第3号証)には,物件86に係る具体的事実は一切記載されておらず,被審人高光建設が,東野建設工業及び菱和建設に対し,それぞれどのような価格の連絡をしたのかについて具体的な供述は全くなく,信用できないと主張する。
確かに,上記の従業員の各供述は,再度入札があった場合の一般論を述べたものではあるが,前記のとおり,その一般論に当てはまる文書が各会社に存在していることが認められるのであるから,上記各供述について信用性がないとはいえない。
(カ) 被審人高光建設は,入札記録確認書(査A第4号証)の「最低より100万円以内下げ」との記載について,入札担当者が会社から指示された基準で再入札することは何ら不思議なことではなく,100万円以内程度なら仮に損失を被っても軽微なものと判断することは建設業界ではごく当たり前のことであり,引合カードと題する綴り(査A第5号証)の記載についても同様に受注調整を裏付けるものではないと主張する。
しかし,入札記録確認書等を保持していた東野建設工業及び菱和建設の従業員は,当該記載が再入札価格を会社として指示したものとはせず,前記(イ)のとおり,受注調整が行われていたことを示す旨を明確に供述しているのであるから,被審人高光建設の主張は採用できない。
(キ) 被審人高光建設は,物件86について,同被審人に継続性,関連性,地域性はなかったと主張するが,物件86は,旧岩手県立沼宮内病院の解体工事であるところ,被審人高光建設は,新沼宮内病院に係る工事である物件9や物件50を受注,施工して沼宮内に基盤ができたことから物件86の受注を目指したものである(高橋精一代表者審訊速記録)から,被審人高光建設に関連性があったことが認められる。また,被審人高光建設の高橋は,物件86の入札参加者の中に,地域性を有する事業者が存在する旨供述する(審A第2号証)。しかし,それがどの事業者かは不明である上,仮に,被審人高光建設のほかに地域性を有する事業者があったとしても,受注調整の結果,被審人高光建設が落札することは考えられるのであるから,他社が地域性等を有していたことは前記(エ)の認定を左右しない。
ウ 被審人匠建設の物件101(県営長谷堂アパート〔5号棟〕建設〔建築〕工事・条件付一般競争入札)
(ア) 平成15年7月7日に公告され,同年8月6日に入札が行われた物件101は,岩手県営長谷堂アパートの5号棟を建設する工事であった(査B第5号証,第10号証)。同県営アパートの1号棟から4号棟までは,被審人匠建設が受注していたことから(中嶋豊代表者審訊速記録),被審人匠建設は,同県営アパートについて継続性を有していたと認められる。被審人匠建設が同県営アパートを継続して受注していたことは他の事業者も認識していた。(査共第4号証,中嶋豊代表者審訊速記録)
(イ) 被審人匠建設から留置された「毎週定例役員会」と題する文書(査B第6号証)には,平成15年7月22日に開催された被審人匠建設の会議の記録として,「長谷堂AP → 数のハアク 協力対応 札廻し(内訳)」(「数のハアク」と「協力対応」については「今週中」との付記がある。)とする記載及び「1.トラスト 2. 〃 各地区世話人 3.自社(各自.他)」との記載がある。
本件基本合意に基づく受注調整において,受注予定者が,他の入札参加者に入札してもらう価格を連絡する際,被審人らは,「札」又は「協力札」と称する紙片を用いて連絡することがあったことと(査共第26号証,第29号証,第30号証,第40号証),前記第2の1(3)の本件基本合意の内容を考慮すれば,上記文書の記載は,物件101について,被審人匠建設がTST等世話役に対し受注希望を表明するとともに,他の入札参加者を把握し,それらの者に対して自社の受注に協力を求め,自社の入札価格を積算するとともに他の入札参加者に対し入札してもらう価格を連絡するという,本件基本合意に沿った一連の作業を行うことを被審人匠建設の社内で確認したものと認めるのが相当である。
(ウ) 被審人匠建設は,別紙2-4のとおり,物件101を設計金額の95.00パーセントに相当する価格で入札して受注し,他の入札参加者11社は,全て設計金額の97.00パーセントから98.85パーセントまでの範囲内の価格で入札した。(査B第5号証)
なお,被審人匠建設は,同被審人が2番札の事業者より格段に低い価格で落札したとか,他の事業者の入札価格にばらつきがあると主張するが,上記の入札状況からそのように評価することはできない。
(エ) 以上によれば,物件101については,本件基本合意に基づく受注調整が行われ,継続性を有していた被審人匠建設が受注予定者となって受注したものと認められる。
(オ) 被審人匠建設の代表取締役である中嶋豊(以下「被審人匠建設の中嶋」という。)は,前記(イ)の「毎週定例役員会」と題する文書の記載について,当該会議で自らが指示した内容を被審人匠建設の従業員がメモしたものであるとした上で,①「1.トラスト」等の記載は,他の地区の事業者が物件101の入札に参加する可能性を推測するために,稲垣から紹介を受けた各地区のTST等世話役に対し,それぞれの地区における事業者の繁忙状況等の情報収集を行うことを示したもの,②「数のハアク」は積算数量を把握する作業を,「札廻し」は物件101に係る積算を社内の担当者間で確認する作業を示したものであり,いずれも社内で必要となる対応をまとめたものにすぎない旨供述する。(中嶋豊代表者審訊速記録)
しかし,①についての被審人匠建設の中嶋の供述は,曖昧である上,岩手県内の各地区の繁忙状況についての情報収集が物件101の入札のために必要な理由が明らかではなく,信用できない。②についての被審人匠建設の中嶋の供述も,積算を社内で確認するというような通常の作業について,「札廻し」などと記載するということは到底考えられないから,信用できない。よって,「毎週定例役員会」と題する文書に係る被審人匠建設の中嶋の主張は採用できない。
エ 被審人匠建設の物件103(県営長谷堂アパート〔6号棟〕建設〔建築〕工事・条件付一般競争入札)
(ア) 物件103は,物件101と同じ県営長谷堂アパートの6号棟を建設する工事であり,物件101の入札から約1か月半後に入札が行われた(査B第5号証)。物件101と同様に,物件103について,被審人匠建設が継続性を有していたことが認められる。
(イ) 物件103の入札には被審人タカヤが参加しているところ,被審人タカヤの佐々木は,物件103について,被審人匠建設から価格連絡を受けたかどうかは定かではないが,同物件について被審人匠建設は継続性を有しており,入札前に同社が受注予定者となっていたと認識し,同社が継続性を有することを尊重して応札した旨供述している。(査共第4号証)
なお,被審人タカヤの佐々木の供述の信用性については,後記ケ(ア)で判断する。
(ウ) 被審人匠建設は,別紙2-5のとおり,物件103を設計金額の88.00パーセントに相当する価格で入札し,受注した。2番札は被審人タカヤであり,また,3番札及び4番札はアウトサイダーである日本住宅及びクロサワランデックであった(それぞれの入札価格は設計金額の91.77パーセント,94.00パーセント及び94.22パーセント)。他の入札参加者7社は,全て設計金額の97.01パーセントから99.20パーセントまでの範囲内の価格で入札した。(査B第5号証)
(エ) 以上によれば,物件103については,本件基本合意に基づく受注調整が行われ,継続性を有していた被審人匠建設が受注予定者となって受注したものと認められる。
(オ) 被審人匠建設は,物件103の落札率が設計金額の88.00パーセントであることについて,仮に受注調整を行っていれば,このような低い落札率での受注はあり得ないと主張する。
物件103のようにアウトサイダーが参加した物件については,アウトサイダーの協力を常に得られるとは限らず(査共第6号証,第36号証,第84号証,第97号証,第100号証),また,条件付一般競争入札に関しては105社の間で受注予定者が決定され,知れたるアウトサイダーの協力が得られたとしても,新たなアウトサイダーが現れる可能性を否定できなかったから,受注予定者がアウトサイダーとの間で競争をするために入札価格を低くすることが考えられる。実際にも,査共第6号証によれば,千田工業は,物件53及び物件109の入札に当たり,アウトサイダー1社及びTST親交会等の会員でありながら受注調整に協力しないと述べた事業者が入札に参加することを事前に知っていたが,受注調整を行って受注予定者になった上,アウトサイダー等と競争をするために低価格で入札したことが認められる。したがって,落札率が低いことをもって受注調整を否定する事情とはいえない。
(カ) 被審人匠建設は,物件103の同被審人の入札価格は,2番札であった被審人タカヤの入札価格より格段に低いところ,受注調整が行われた場合には,受注予定者が何らかの理由で失格になる可能性があることから,他の事業者の中には,受注予定者の価格に近い価格で入札する事業者もあるはずであると主張するが,本件基本合意によれば,受注調整が行われた場合には,他の入札参加者はこれに協力することになっているのであって,常に受注予定者の価格に近い価格で入札する事業者があるはずであるといえない。したがって,1番札の入札価格と2番札の入札価格の間に差があることをもって,受注調整があったことを否定する事情とはいえない。
また,被審人匠建設は,同被審人以外の入札参加者の入札価格にばらつきがあると主張するが,本件基本合意は,受注予定者以外の者が受注予定者の受注に協力することを定めているにすぎないから,受注予定者以外の入札価格にばらつきがあることをもって,受注調整があったことを否定する要素とはいえない。
オ 被審人タカヤの物件34(岩手県立黒沢尻工業高等学校産業教育施設大規模改造〔建築〕工事・条件付一般競争入札)
(ア) 被審人タカヤの細川は,本件基本合意の内容を詳しく述べるとともに,同人が退職した平成14年8月までに被審人タカヤが入札に参加した各物件における受注調整の状況について述べるところ,平成13年11月に入札が行われた物件34について,被審人タカヤに継続性があり,稲垣に対し,これを理由に受注希望を表明し,稲垣から受注予定者となった旨の連絡を受け,他の入札参加者に入札価格を連絡し,当該価格以上の価格で応札してもらうことで,被審人タカヤが確実に受注することができた物件に間違いない旨供述している。(査共第5号証)
(イ) 物件34の入札当時,TST親交会等の幹事であった千田工業の代表取締役である千田三義は,同社が入札に参加し受注調整を行い他社の受注に協力した物件について供述しているところ,物件34について,被審人タカヤに継続性があり受注予定者となったこと,価格連絡を受け応札し協力することによって,受注予定者が確実に受注できたものであることを供述している。(査共第6号証)
(ウ) 被審人タカヤは,別紙3-1のとおり,物件34を設計金額の96.85パーセントに相当する価格で入札して受注し,他の入札参加者10社は,全て設計金額の97.66パーセントから99.27パーセントまでの範囲内の価格で入札した。(査C第5号証,第14号証)
(エ) 以上によれば,物件34については,本件基本合意に基づく受注調整が行われ,継続性を有していた被審人タカヤが受注予定者となって受注したものと認められる。
(オ) 被審人タカヤは,物件34については株式会社小原建設及び千田工業も以前に施工しており,千田工業が一番近い位置にあり,被審人タカヤに継続性,地域性,関連性はないと主張し,被審人タカヤの代表取締役である望月郁夫(以下「被審人タカヤの望月」という。)の供述(審C第1号証,望月郁夫代表者審訊速記録)中にはこれに沿う部分がある。しかし,前記の被審人タカヤの細川及び千田工業の代表取締役である千田三義の供述によれば,被審人タカヤに継続性があったことは認められるのであり,前記イ(キ)のとおり,他に継続性,地域性等を有している事業者があったとしても,受注調整の結果被審人タカヤが落札することは考えられるのであるから,他社が継続性,地域性等を有していたことは前記(エ)の認定を左右しない。
(カ) 被審人タカヤは,同社において建築工事の営業を担当していたのは被審人タカヤの望月であって,被審人タカヤの細川は,平成8年10月から同社を退社するまでの間,同社の土木工事の営業を担当しており,岩手県発注の特定建築工事の受注調整に関与できたはずはないから,前記(ア)の受注調整に関する被審人タカヤの細川の供述は信用できないと主張し,被審人タカヤの望月は,これに沿う供述をする。(審C第1号証,望月郁夫代表者審訊速記録)
しかし,被審人タカヤの細川の配属先の推移等が記されている社員台帳(審C第4号証の2)には,同人が営業本部に所属していたことを示す記載はあるものの,土木工事の営業担当だったことを示す記載はなく,被審人タカヤの望月の供述は客観的な裏付けを欠く上,TST親交会等における受注調整は,事業者の適法な業務ではなく,通常の業務とは別の体制で行うことも考えられるから,仮に,被審人タカヤの細川の担当が土木工事の営業であったとしても,担当の違う建築工事の受注調整を行うことが格別不自然とはいえない。
また,被審人タカヤは,前記(ア)の被審人タカヤの細川の供述中の物件34以外の物件の受注調整に関する部分について,事実と異なると主張し,被審人タカヤの望月はこれに沿う供述をするが(審C第2号証),客観的な裏付けを欠くものであって採用できない。
かえって,被審人タカヤの細川がTST親交会等の副幹事長であったこと(前記第2の1(5)イ),同人が被審人タカヤの土木工事の営業担当だったとされる期間中の平成11年10月19日に入札が行われた建築工事について,吉武建設の代表取締役である吉田悦子は,価格連絡をした他社の営業担当者を具体的に列挙し,その中で,その建築工事の被審人タカヤの担当が,供述当時菱和建設に転職していた被審人タカヤの細川であると明確に供述している(査共第22号証)ことに照らせば,上記の被審人タカヤの望月の供述は採用できず,被審人タカヤの細川の担当分野を理由に同人の物件34の受注調整への関与を否定する主張は失当である。
また,被審人タカヤは,被審人タカヤの細川が同被審人を退社後,競争会社である菱和建設に就職した者であるから,同人の供述は信用できないと主張するが,競争会社に再就職した者の供述が一般的に信用できないとはいえず,前記(エ)の認定を左右するには足りない。
カ 被審人タカヤの物件88(岩手県立紫波高等学校校舎・産振棟改築〔建築〕工事・条件付一般競争入札)
(ア) 物件88はJVを対象とする工事であったところ,JV対象物件の入札価格の決定は,JVの代表者が行っていた。(査共第2号証,望月郁夫代表者審訊速記録)
(イ) 被審人タカヤの佐々木は,被審人タカヤの細川が退社後に同被審人が受注した物件について,自分が営業責任者となって受注したものであるとし,本件基本合意の内容を述べた上で,それら物件の受注調整の状況について述べるところ,平成15年5月23日に入札が行われた物件88については,平野組を代表者として,被審人タカヤと橘建設が構成員となってJVを組んだが,被審人タカヤと橘建設には物件88に対する継続性があり,また橘建設には地域性もあった,入札の前日頃までには他の入札参加者が分かったが,被審人タカヤと橘建設以外には継続性等を有している事業者はなかったので,平野組・被審人タカヤ・橘建設JVが受注予定者となり,他の入札参加JVの協力を得て受注することができたと認識していると供述している。(査共第4号証)
(ウ) また,吉武建設の代表取締役である吉田悦子は,同社が入札に参加したものの他社が受注した物件に係る受注調整について供述しているところ,物件88について,被審人タカヤと橘建設に施工実績があり継続性があったので,平野組・被審人タカヤ・橘建設JVが受注予定者となり,他の入札参加JVの協力を得て受注したものであることを供述している。(査共第22号証)
(エ) 平野組・被審人タカヤ・橘建設JVは,別紙3-2のとおり,物件88を設計金額の97.24パーセントに相当する価格で入札して受注し,他の5JVは,全て設計金額の98.04パーセントから98.69パーセントまでの範囲内の価格で入札した。(査C第5号証,第15号証)
なお,被審人タカヤは,同被審人を含むJVが2番札のJVより格段に低い価格で落札したとか,他のJVの入札価格にばらつきがあると主張するが,上記の入札状況からそのように評価することはできない。
(オ) 以上によれば,物件88については,本件基本合意に基づく受注調整が行われ,継続性を有していた平野組・被審人タカヤ・橘建設JVが受注予定者となって受注したものと認められる。
キ 被審人タカヤの物件114(都南の園地震災害復旧工事・指名競争入札)
(ア) 被審人タカヤの佐々木は,物件114について,補修工事であり,被審人タカヤには継続性があったので,少額の工事ではあったものの是非とも受注したいと考えていた物件であったところ,他社から,継続性を尊重してもらって被審人タカヤが受注予定者となり,受注することができたものであると認識している旨供述している。(査共第4号証)
(イ) 物件114については指名競争入札により入札が行われ,予定価格は事前に公表されなかったところ,1回目の入札の結果は別紙3-3のとおりであって,被審人タカヤの入札価格は予定価格の114.55パーセントに相当する価格,他の入札参加者8社の入札価格は全て120パーセントを超える価格であった。そして,1回目の入札で予定価格を下回る価格での入札がなかったことから3回入札が実施されたが,3回とも被審人タカヤが入札参加者9社の中で最も低い価格であった。(査C第5号証)
(ウ) 以上によれば,物件114については,本件基本合意に基づく受注調整が行われ,継続性を有していた被審人タカヤが受注予定者となって受注したものと認められる。
(エ) 被審人タカヤは,少額の改修工事で他社が以前に施工した物件である場合,施工内容が把握できないため,以前に施工した事業者以外の者が進んで受注することはなく,したがって,複数回入札において前回の最低価格入札者が再び最低価格入札者となるのは極めて自然なことであり,この事実をもって,物件114について受注調整があったと認めることはできないと主張する。
しかし,物件114について,以前に施工した事業者以外の者による受注が困難であったとの事実を認めるに足りる証拠はなく,被審人タカヤの上記主張は,前記(ウ)の認定を左右するに足りない。
ク 被審人タカヤの物件125(県立産業技術短期大学校本館塔屋ガラス屋根改修及び喫煙室設置工事・指名競争入札)
(ア) 被審人タカヤの佐々木は,物件125について,物件114と同様の供述をする。(査共第4号証)
(イ) また,物件125については,指名競争入札により入札が行われ,予定価格は事前に公表されていなかったが,1回目の入札で被審人タカヤが予定価格を下回り1番札で受注したところ,同物件について作成され菱和建設から留置された引合カードと題する綴り(査C第6号証)には,物件125における同社の3回分の入札価格がそれぞれ具体的金額で記載されており,これらは前記イ(イ)と同様に,本件基本合意に基づく価格連絡が行われたことを推認させるものといえる。
(ウ) 被審人タカヤの入札価格は,別紙3-4のとおり,予定価格の90.15パーセントに相当する価格であり,他の入札参加者9社の入札価格は予定価格の92パーセント以上であった。(査C第5号証)
(エ) 以上によれば,物件125については,本件基本合意に基づく受注調整が行われ,継続性を有していた被審人タカヤが受注予定者となって受注したものと認められる。
(オ) 被審人タカヤは,引合カードと題する綴りについて,入札参加者は,予定価格が公表されていない場合,各自積算し,予定価格とその85パーセントに相当する最低制限価格を想定して1回目ないし3回目の入札価格を決めて入札に臨むものであり,同引合カードの記載から受注調整があったものとは到底いえない旨を主張するが,1回目及び2回目の入札における最低入札価格がそれぞれ幾らとなるか分からないにもかかわらず,入札前にあらかじめ2回目及び3回目の具体的な入札価格を設定することは無意味であり,被審人タカヤの主張は採用できない。
ケ 物件88,114及び125に共通する被審人タカヤの主張について
被審人タカヤは,物件88,114及び125について,受注調整を否定する根拠として,被審人タカヤの佐々木の供述に信用性がないこと及び同被審人は民事再生手続の申立てに合わせてTST親交会等を脱退したことを挙げる。
(ア) 被審人タカヤの佐々木の供述に信用性がないとする主張について
被審人タカヤは,被審人タカヤの佐々木について,同人は,平成15年2月以降,同被審人の北上支店長の職にあったにすぎず,営業業務全般の責任者であったことはないから,物件88等について営業責任者として受注したなどとする同人の供述は全く信用できない旨主張し,被審人タカヤの望月も代表者審訊においてこれに沿う供述をし,証拠(審C第1号証,第4号証の1,第6号証,第7号証)によれば,被審人タカヤの佐々木は平成15年2月以降,同被審人の北上支店長であった事実が認められる。
しかし,前記オ(カ)のとおり,TST親交会等における受注調整は,事業者の適法な業務ではなく,通常の業務とは別の体制で行うことも考えられるから,被審人タカヤの佐々木が直接の担当ではない工事の受注調整を行うことが格別不自然とはいえない。
かえって,①前記第2の1(5)イのとおり,平成15年度及び平成16年度のTST親交会の会員名簿には被審人タカヤの佐々木が記載されていること,②東野建設工業の専務取締役である吉田耕二は,研究会に出席していた他社の者を具体的に列挙し,その中で被審人タカヤの出席者が被審人タカヤの佐々木であると供述していること(査共第24号証),③被審人タカヤの佐々木が同被審人の北上支店長に就任後である平成16年6月9日に入札が行われた物件124は,岩手県の宮古地区を施工場所とする工事で,本件基本合意に基づく受注調整により,宮古市に所在する中村建設株式会社が受注したと認められるところ,同社が被審人タカヤと受注調整をする際の交渉相手が被審人タカヤの佐々木であったこと(査共第38号証,第42号証,第113号証ないし第120号証)に照らせば,上記の被審人タカヤの望月の供述は採用できず,被審人タカヤの佐々木が北上支店長であったことを理由に同人の受注調整への関与を否定する被審人タカヤの主張は失当である。
なお,上記の被審人タカヤの佐々木の供述調書(査共第4号証)は,同社が本件違反行為に参加していたかどうかについての極めて重要な証拠であるにもかかわらず,被審人タカヤは,本案の審判においては,被審人タカヤの佐々木の役職が北上支店長であること等を理由に上記供述調書の内容の信用性を争わず,本件審判手続において被審人タカヤの望月の代表者審訊が行われた第5回審判期日の前日になって,初めて被審人タカヤの望月の陳述書(審C第2号証)を提出してこの主張を始めたものであって,被審人タカヤの主張は,この点からも不自然といわざるを得ない。
さらに,被審人タカヤは,被審人タカヤの佐々木は,審査官から入札調書を見せられて,そこに記載されている落札者が受注予定者であったと述べたにすぎず,同人の供述は具体的資料に基づくものではなく事実に反するなどと主張し,被審人タカヤの望月はこれに沿う供述をする(審C第2号証,望月郁夫代表者審訊速記録)。しかし,被審人タカヤの佐々木は,上記のとおり,特定の物件について被審人タカヤが継続性を有していたかどうか等,入札調書からでは明らかにならない事情も述べているのであるから,被審人タカヤの主張は理由がない。
(イ) TST親交会等から脱退しているとの主張について
被審人タカヤは,平成14年4月の民事再生手続申立て後,TST親交会等を脱退しており,以降再び加入したことはなく,したがって,物件88,114及び125について本件基本合意に基づく受注調整を行ったこともないと主張する。
平成14年10月16日に開催されたトラスト・メンバーズの総会資料に含まれる会員名簿に被審人タカヤは記載されていないが(査C第7号証),前記第2の1(5)イのとおり,平成15年度及び平成16年度の同総会資料に含まれる会員名簿の記載によれば,遅くとも平成15年10月1日以降,被審人タカヤがTST親交会等の会員であったことは動かし難い。この事実に,平成14年4月に被審人タカヤがトラスト・メンバーズを脱退した旨や,以後,本件基本合意に基づく受注調整を行わないこととした旨をTST親交会等の役員や他の会員に表明したことを示す証拠はないことを併せて考えれば,被審人タカヤは,前記第2の1(1)イのとおり,民事再生手続の申立てにより岩手県発注の特定建築工事の入札に参加しなかった期間はあったものの,入札に参加していた期間においては,一貫して本件基本合意に基づく受注調整に関与していたとみるのが相当である。
コ 認定7物件に共通の受注調整を否定する事情について(前記第4の1(2)イ(ア))
被審人らは,認定7物件について,①独自の積算に基づいて入札し落札した,②アウトサイダーに協力を求めたり,アウトサイダーが協力を了承したことはないと主張するが,一般に,独自の積算をした上で受注調整を行うこと,アウトサイダーに協力を要請せずに受注調整を行うことはいずれも考えられるから,これらの主張は,前記イないしクの認定を左右するものではない。
また,被審人らは,入札前に他の入札参加者を知ることができなかったと主張し,これに沿う証拠(審A第2号証,審B第1号証,審C第1号証,審D第12号証)がある。しかし,本件基本合意においては,受注希望者はTST等世話役に受注希望を表明することとされ,それを基に受注調整を行うことになっていたのであるから,上記各証拠は信用できず,被審人らが入札参加者を事前に知ることができなかったとはいえない。
サ まとめ
以上によれば,認定7物件については,いずれも本件基本合意に基づいて,各被審人が受注予定者に決定され,受注したことが認められる。
なお,前記(2)のとおり,認定7物件は,いずれも岩手県発注の特定建築工事であり,本件基本合意に基づき受注予定者が決定されたと推認され,この点からも上記認定は裏付けられる。
(4) 推認7物件のうち物件50,35,37及び58(以下「推認4物件」という。)について
推認4物件について,本件基本合意に基づき被審人らが受注予定者に決定され,受注したとの推認を覆す事情が認められるか否かを検討する。
ア 被審人高光建設の物件50(岩手県立沼宮内病院新築〔附属棟等〕工事・指名競争入札)
(ア) 物件50が物件9(岩手県立沼宮内病院新築〔建築〕工事)の附帯工事として発注されたものであること,被審人高光建設が受注を強く目指していたことは当事者間に争いがない。そして,物件9は,被審人高光建設・千田工業JVが受注したものであるから,被審人高光建設は,物件50に対し関連性を有していたと認められる。
(イ) 前記(ア)の物件9は,本件実行期間より前に,前記(2)ア(ア)のとおり,被審人高光建設・千田工業JVが本件基本合意に基づく受注調整により受注したものである。
そして,本件違反行為期間中に発注された物件9に継続し,又は関連すると認められる工事としては,物件50と物件53(岩手県立沼宮内病院合同公舎新築〔建築〕工事)(査共第6号証)があるところ,物件50を被審人高光建設,物件53を千田工業が受注した。
また,物件53の千田工業の受注は,前記(2)ア(ア)のとおり,本件基本合意に基づく受注調整によるものである。
さらに,前記(3)イのとおり,岩手県立沼宮内病院の新築後に,旧病院を解体した工事である物件86は,被審人高光建設が本件基本合意に基づく受注調整により受注したものである。
そうすると,被審人高光建設と千田工業は,JVとして受注調整により物件9を受注した後,継続性,関連性を有する物件について受注調整により受注を重ねていたといえるから,物件50についても受注調整により受注したことが推認される。
(ウ) 入札参加申込者のうち,被審人タカヤは,民事再生手続の申立てにより,入札前に入札参加資格が取り消された。別紙1-1のとおり,同被審人及び被審人高光建設を除く他の入札参加者8社は,全て,予定価格の99パーセントを超える価格で入札している。(査A第3号証)
なお,被審人高光建設は,同被審人が2番札であった高建工業より格段に低い入札価格で落札したことをもって,受注予定者が決定されたとの推定を覆す事情であると主張する。しかし,前記(3)エのとおり,1番札の入札価格と2番札の入札価格の差が大きいことをもって,受注調整があったことを否定することはできず,むしろ,上記の入札状況は,受注調整があったとの推認を強める事情であるといえる。
(エ) 被審人高光建設は,物件50については高橋建設が地域性を有しており,被審人高光建設だけに継続性,地域性,関連性があるとはいえないと主張し,被審人高光建設の高橋の陳述書(審A第2号証)中にはこれに沿う記載がある。しかし,前記(3)イ(キ)のとおり,他に継続性,地域性等を有している事業者があったとしても,受注調整の結果被審人高光建設が落札することは考えられるのであるから,他社が継続性,地域性等を有していたことは,物件50について被審人高光建設が受注予定者に決定されて受注したことを否定する事情とはいえない。
(オ) 以上のとおり,物件50について,本件基本合意に基づき被審人高光建設が受注予定者に決定されて受注したとの推認を強める事情が認められ,この推認を覆すに足りる特段の事情を認めることはできない。
イ 被審人匠建設の物件35(岩手県立大船渡病院調乳室その他改修工事・指名競争入札)
(ア) 被審人匠建設は,岩手県立大船渡病院の関連工事を施工した実績があり,そのことが気仙地区の事業者に認識されていたことについては,当事者間に争いがない。したがって,被審人匠建設は,物件35につき関連性を有していたといえる。
(イ) 物件35の入札参加者のうち佐賀組は,被審人匠建設が受注した前記(3)ウの物件101及び同エの物件103の入札にも参加し,同被審人の受注に協力したと認められるところ,佐賀組は,被審人匠建設が所在する大船渡地区において受注希望を取りまとめる役割等を果たしていたTST等世話役であり,さらに,佐賀組の代表取締役社長である金野勇一は,TST親交会等の副会長も務めていた。(査共第28号証,第65号証,査B第5号証,査C第7号証,第9号証,中嶋豊代表者審訊速記録)
(ウ) 被審人匠建設は,別紙2-1のとおり,物件35を予定価格の85.20パーセントに相当する価格で落札し,他の入札参加者9社(うち8社が会員であった。)は,予定価格の86.26パーセントから89.99パーセントまでの範囲内の価格で入札した。(査B第5号証)
なお,被審人匠建設は,同被審人が2番札の事業者より格段に低い価格で落札したとか,他の事業者の入札価格にばらつきがあると主張するが,上記の入札状況をそのように評価することはできない。
(エ) 被審人匠建設の入札価格は,別紙2-1のとおり,予定価格の85.20パーセントに相当する低いものであるところ,被審人匠建設は,本件の予定価格は公表されていないが,物件35のような小規模の物件の予定価格は正確に予想でき,受注調整ができているのであれば,最低制限価格を下回って失格となるリスクがあるから,利益も少ないこのような価格で入札するはずがないと主張し,被審人匠建設の中嶋はこれに沿う供述をする(中嶋豊代表者審訊速記録)。しかし,同人は,物件35は小規模の物件であるから,がむしゃらに取りに行く物件ではないと供述しており,そうすると,予定価格の予想が正確にできるのであれば,予定価格に近い数字で入札するのが合理的であると考えられるが,現実には,被審人匠建設も含めて入札率は80パーセント台となっていること,同様に指名競争入札で入札が行われ予定価格が公表されていない物件37については,全ての入札参加者の入札率が99パーセント以上でほとんどが予定価格を超えていることに照らすと,被審人匠建設が予定価格を正確に予想できたとする上記供述部分は採用できず,他に被審人匠建設が予定価格を正確に予想できたことを認めるに足りる証拠はない。したがって,予定価格が公表されない指名競争入札の物件については,入札価格が予定価格と比べて低いことは,受注調整があったことを否定する事情とはいえない。
(オ) 以上のとおり,物件35について,本件基本合意に基づき被審人匠建設が受注予定者に決定されて受注したとの推認を強める事情が認められ,この推認を覆すに足りる特段の事情を認めることはできない。
ウ 被審人匠建設の物件37(県営赤沢アパート4・5号棟外壁等改修工事・指名競争入札)
(ア) 被審人匠建設は,県営赤沢アパートの関連工事を施工した実績があり,そのことが気仙地区の事業者に認識されていたことについては当事者間に争いがない。したがって,被審人匠建設は,物件37につき関連性を有していたといえる。なお,被審人匠建設は,佐賀組の事務所は物件37に一番近い位置にあり,佐賀組が物件37について地域性を有していたと主張し,被審人匠建設の中嶋の供述によれば,物件37について,被審人匠建設と佐賀組の双方が地域性を有していたことが認められるが,前記(3)イ(キ)のとおり,両者が受注調整をして被審人匠建設が受注予定者となったことは十分考えられるから,佐賀組が地域性を有していたことは,受注調整が行われたことを否定する事情とはいえない。
(イ) 物件37の入札には,佐賀組が参加しているところ,佐賀組については,前記イ(イ)の事情が認められる。
(ウ) 被審人匠建設の入札価格は,別紙2-2のとおり,予定価格の99.34パーセントに相当する価格であり,他の入札参加者9社(うち8社が会員であった。)の入札価格は,全て予定価格を超えるものであった。(査B第5号証)
(エ) 以上のとおり,物件37について,本件基本合意に基づき被審人匠建設が受注予定者に決定されて受注したとの推認を強める事情が認められ,この推認を覆すに足りる特段の事情を認めることはできない。
エ 被審人匠建設の物件58(岩手県立大船渡病院診療棟増築等(建築)工事・条件付一般競争入札)
(ア) 被審人匠建設は,岩手県立大船渡病院の関連工事を施工した実績があり,そのことが気仙地区の事業者に認識されていたことについては,当事者間に争いがない。したがって,被審人匠建設は,物件58につき関連性を有していたといえる。
(イ) 物件58の入札には,佐賀組が参加しているところ,佐賀組については,前記イ(イ)の事情が認められる。
(ウ) 被審人匠建設の入札価格は,別紙2-3のとおり,設計金額の87.76パーセントに相当する価格であり,2番札であったアウトサイダーの日本住宅の入札価格は設計金額の88.04パーセントに相当する価格であった。これらの2社以外の入札参加者11社(うち10社が会員であった。)の入札価格は,全て設計金額の97パーセントに相当する価格を超えていた。(査B第5号証)
この入札状況によれば,被審人匠建設以外の会員入札参加者10社は被審人匠建設の受注に協力したことがうかがわれる。また,被審人匠建設の入札価格は相当低いが,これは,アウトサイダーである日本住宅との競争が理由であると考えられるから,この事実をもって,受注調整が行われたことを否定する事情とはいえない(前記(3)エ(オ)参照)。
(エ) 以上のとおり,物件58について,本件基本合意に基づき被審人匠建設が受注予定者に決定されて受注したとの推認を強める事情が認められ,この推認を覆すに足りる特段の事情を認めることはできない。
オ 推認7物件に共通の受注調整を否定する事情について(前記第4の1(2)ウ(イ))
被審人らは,推認7物件について,①独自の積算に基づいて入札した,②アウトサイダーに協力を求めるなどしていない,③入札前に他の入札参加者を知ることができなかった,と主張するが,いずれの主張も,推認4物件についての前記アないしエの認定を左右するものではないことは,前記(3)コのとおりである。
(5) まとめ
ア 以上によれば,認定7物件及び推認4物件については,本件基本合意に基づく受注調整により被審人らが受注予定者に決定され,受注したことが認められる。よって,これらの物件については,前記(2)イのとおり,特段の事情がない限り,具体的な競争制限効果が発生したものと推認されることになる。
イ 被審人らの主張について検討する。
(ア) 被審人らは,受注調整が行われ,受注予定者が決定されたとしても,アウトサイダーの牽制力が働くから,具体的な競争制限効果は発生しないと主張する(前記第4の1(2)ア(ウ))。
a 基本合意の当事者間で受注予定者が決定された物件については,アウトサイダーが入札に参加した場合でも,特段の事情がない限り,競争単位の減少により具体的な競争制限効果が発生したということができる(前掲東京高等裁判所平成24年3月2日判決,公正取引委員会平成22年11月10日審決・公正取引委員会審決集第57巻第1分冊366頁参照)。
b 認定7物件及び推認4物件のうち,アウトサイダーが入札に参加している物件は,物件50,86,35,37,58,101,103,34,114及び125の10件であり,物件50について,アウトサイダーが1社(競争的な行動をとっていない。)(別紙1-1),物件86について,アウトサイダーが1社(競争的な行動をとっていない。)(別紙1-2),物件35について,アウトサイダーが1社(競争的な行動をとっていない。)(別紙2-1),物件37について,アウトサイダーが1社(競争的な行動をとっていない。)(別紙2-2),物件58について,アウトサイダーが2社(うち1社が競争的な行動をとった。)(別紙2-3),物件101について,アウトサイダーが3社(いずれも競争的な行動をとっていない。)(別紙2-4),物件103について,アウトサイダーが2社(いずれも競争的な行動をとっていない。)(別紙2-5),物件34について,アウトサイダーが5社(いずれも競争的な行動をとっていない。)(別紙3-1),物件114について,アウトサイダーが1社(競争的な行動をとっていない。)(別紙3-3),物件125について,アウトサイダーが2社(いずれも競争的な行動をとっていない。)(別紙3-4),それぞれ入札に参加していることが認められる。
c 前記のいずれの物件についても,この程度のアウトサイダーの参加の状況によって,競争単位の減少による具体的な競争制限効果の発生を覆すに足りる特段の事情があるということはできない。
(イ) 被審人らは,受注調整が行われ,受注予定者が決定されたとしても,指名競争入札であれば最低制限価格,条件付一般競争入札であれば調査基準価格をそれぞれ下回る価格競争は期待されていないから,低入札価格調査の対象となった物件,最低制限価格に近い価格で落札された物件(物件35がこれに当たると考えられるほか,調査基準価格に近い価格で落札されたものとして物件58及び103がある。)については,具体的な競争制限効果が発生したとはいえないと主張する(前記第4の1(2)ア(エ))。
しかし,条件付一般競争入札においては,調査基準価格を下回る価格帯においても,低入札価格調査に堪えられる事業者の間における公正な競争は期待されているというべきであるから,その価格帯において基本合意に基づいて受注予定者が決定された場合に,具体的な競争制限効果が発生しないとはいえない。また,指名競争入札においては,最低制限価格を下回れば失格となるが,これを上回る価格帯においては,公正な競争が期待されているのであるから,結果的に最低制限価格に近い価格で落札された場合であっても,具体的な競争制限効果の発生を認めることができる。
(ウ) 被審人らは,不当利得の発生していない取引に対して課徴金の支払を命ずることはできないと主張する(前記第4の1(2)ア(オ))。
しかし,課徴金制度は,不当な取引制限により経済的利得が現実に生じているか否かなど個別の事情を一切問うことなく,実行期間の不当な取引制限の対象役務の売上額に一定率を乗じた額を不当な取引制限による経済的利得と擬制し,これを徴収することとするものであり,また,民法における不当利得と異なり,発注者側に損害が生じたことも要しないというべきであるから,課徴金賦課の要件である当該役務の該当性の判断に当たり,落札価格の高低を考慮する必要はない(最高裁判所第三小法廷平成17年9月13日判決・民集第59巻第7号1950頁,東京高等裁判所平成21年10月23日判決・公正取引委員会審決集第56巻第2分冊399頁,公正取引委員会平成20年6月2日審決・公正取引委員会審決集第55巻129頁参照)。
(エ) 物件88について
被審人タカヤは,物件88がJVを対象とした物件であったところ,同物件に対する入札価格の決定等の入札手続は全て平野組・被審人タカヤ・橘建設JVの代表者であった平野組が行っており,少なくとも被審人タカヤは受注調整に関与していないし,平野組が受注調整することを容認したこともないから課徴金の支払を命じられるべきではないと主張し(前記第4の1(2)イ(カ)),被審人タカヤの望月はこれに沿う供述をする。(審C第1号証)
しかし,被審人タカヤは本件基本合意に参加していた者であるところ,物件88は,本件基本合意の下に受注調整が行われ,受注予定者となった平野組・被審人タカヤ・橘建設JVが受注したことで具体的な競争制限効果が生じ,課徴金の対象となるものであるから,被審人タカヤは,直接受注調整を行わなかったとしても,課徴金の納付義務を負う。
なお,①被審人タカヤは,物件88の入札金額の決定等の入札手続をJVの代表者であった平野組に委ねていたことは認めており,受注調整をすることまでは容認していなかったと主張しているにすぎないこと,②被審人タカヤ,平野組及び橘建設はいずれも本件基本合意の当事者であり(平野組及び橘建設に対する本案審決及び課徴金納付命令はいずれも確定している。),岩手県発注の特定建築工事について一般に受注調整が行われていることを当然に知っていたと認められること,③被審人タカヤは,被審人高光建設が千田工業とJVを組んで入札に参加し,本件基本合意に基づく受注調整により落札したと認められる物件9(査共第6号証,第42号証,第47号証ないし第50号証,査A第6号証)についての研究会に参加し,受注調整に加わっていたことが認められ(査共第5号証),JVの構成員が代表者に受注調整を任せることを知っていたと認められることを考慮すれば,被審人タカヤは,物件88の入札に当たり,自ら受注調整に関与しなかったが,平野組に対し,金額の決定等の入札手続のみならず,受注調整を任せていたことが認められ,これに反する上記の被審人タカヤの望月の供述は採用できない。よって,被審人タカヤは,この点からも,課徴金の納付義務を負う(東京高等裁判所平成20年9月12日判決・公正取引委員会審決集第55巻872頁,公正取引委員会平成20年1月23日審決・公正取引委員会審決集第54巻402頁参照)。
(オ) 物件114について
被審人タカヤは,物件114は,合計3回の入札で予定価格を下回らず随意契約に移行した物件であり,なぜ随意契約により受注した物件について具体的な競争制限効果が生じたとされるのか理解できないと主張する(前記第4の1(2)イ(キ))。
しかし,前記(3)キのとおり,被審人タカヤが物件114の受注予定者となったと認められるのであり,被審人タカヤは,他の入札参加者の協力を得ることで1番札の立場を継続し,最終的に岩手県との間で物件114の受注契約を締結する機会を獲得したのであるから,同物件について受注調整による具体的な競争制限効果が生じたといえる。
ウ 以上のとおり,被審人らの主張する事情は,いずれも受注予定者の決定により具体的な競争制限効果が発生したとの推認を覆すに足りる特段の事情と認められるものではない。
(6) 推認7物件のうち,物件122,127及び108について
ア 被審人高光建設の物件122(岩手県立盛岡第二高等学校校舎改築〔建築〕工事・条件付一般競争入札)
(ア) ①物件122は,岩手県で大型工事が余りなかった時期に発注されたため,多くの事業者が受注を強く希望すると考えられる物件であり,被審人高光建設も受注を強く希望していたことについては当事者間に争いがなく,証拠によれば,②受注希望者が複数存在したため,入札前の平成16年4月19日に平安閣において研究会が開催され,被審人高光建設その他のTST親交会等の会員が参加して受注予定者を決定するための研究会が開催されたこと(査共第18号証),③本件違反行為期間でみれば,過去に岩手県立盛岡第二高等学校に係る建築工事は発注されておらず,強い継続性を主張できる者がいなかったこと(査共第1号証),④5番札以降の入札参加者4JVの入札価格は,設計金額の94.27パーセントから98.23パーセントまでであり,1番札から4番札までの入札価格から大きく(10パーセント以上)かい離していたこと(別紙1-3)が認められる。
なお,被審人高光建設の高橋は,上記②について,5,6社が平安閣に集まったのは事実であるが,それは,JVを対象とする物件122についてJVの組合せ相手を探すためであって,受注調整を行うためではなかったと供述する。しかし,被審人高光建設の高橋が所持していた「2000-2004年版ダイアリー」の平成16年4月19日の欄には,「二高研(平安閣)」との記載がみられるところ(査共第18号証),本件基本合意において,受注調整のための集まりを「研究会」と呼んでいたことは証拠(査共第26号証,第27号証,第29号証,第30号証,第32号証,第36号証,第40号証)から明らかであり,JVを組んで入札に参加する意向を持つ複数の事業者が集まったのであるから,その場で物件122についての受注調整も行われたものと認めることができ,上記の被審人高光建設の高橋の供述は採用できない。
(イ) 前記(2)イのとおり,物件122は岩手県発注の特定建築工事であり,被審人高光建設が入札に参加して受注した工事であるから,特段の事情がない限り,本件基本合意に基づいて被審人高光建設が受注予定者になったことが推認されるほか,前記(ア)②及び④は,この推認を強める事情である。
しかし,物件122の入札結果は,別紙1-3のとおりであって,入札参加者8JVのうち,1番札であった東野建設工業・昭栄建設JVが設計金額の79.33パーセントに相当する価格で入札して低入札価格調査の結果失格し,2番札であった被審人高光建設・阿部工務店JVが設計金額の81.29パーセントに相当する価格で入札して受注したこと,3番札の被審人タカヤ・恵工業JV及びアウトサイダーである日本住宅が代表者である4番札の日本住宅・千葉匠建設JVの入札価格も,それぞれ設計金額の82.00パーセント及び82.06パーセントに相当する低い価格であったことが認められる。
本件基本合意によれば,受注予定者を決定し,他の会員入札参加者は受注予定者が受注できるように協力することになっているのであるから,本件基本合意に従って被審人高光建設・阿部工務店JVが受注予定者に決定されたのであれば,会員入札参加者である東野建設工業・昭栄建設JVは,被審人高光建設・阿部工務店JVの入札価格より高額で入札する,入札を辞退するなどの方法で被審人高光建設・阿部工務店JVによる落札に協力したはずであるが,実際には同JVの入札価格より低額で入札し,低入札価格調査の結果失格になっている。このように,物件122について,東野建設工業・昭栄建設JVは,本件基本合意の当事者でありながらこれに反する行動をとっており,会員入札参加者が全員協力して受注予定者が落札するという本件基本合意の想定している状況とは異なる入札状況となっている。これは,本件基本合意に基づき受注予定者が決定されたという推認を揺るがす重要な事実といえる。
(ウ) この場合でも,研究会等において,①被審人高光建設・阿部工務店JV若しくは他のJVが受注予定者として決定され,その他の会員入札参加者が受注予定者の受注に協力することになったこと(このような場合として,被審人高光建設・阿部工務店JVが受注予定者に決定され,東野建設工業・昭栄建設JVが本件基本合意に反して受注目的で被審人高光建設・阿部工務店JVより低額で入札したが,低入札価格調査の結果失格したため,被審人高光建設・阿部工務店JVが落札した場合と,東野建設工業・昭栄建設JVが受注予定者に決定されたが,低入札価格調査の結果失格したため,被審人高光建設・阿部工務店JVが落札した場合が考えられる。),又は,②複数のJV(被審人高光建設・阿部工務店JV及び東野建設工業・昭栄建設JVのほか,被審人タカヤ・恵工業JVも含まれ得る。)の間で競争をすること及び他の会員入札参加者はこの競争に協力することが決定されたこと等が認められれば,物件122について具体的な競争制限効果が発生したといえる場合がある。
(エ) 物件122については,前記(ア)②のとおり,被審人高光建設が参加して研究会が開かれたことが認められ,また,前記(ア)④のとおり,5番札以降の4JVの入札価格が設計金額の94.27パーセントから98.23パーセントまでで,1番札から4番札までの入札価格から大きく(10パーセント以上)かい離していたことが認められ,これは,5番札以降の4JVが本件基本合意に従って受注予定者の受注に協力したことをうかがわせる事実である。しかし,前記(イ)のとおり,被審人高光建設・阿部工務店JV,東野建設工業・昭栄建設JV,被審人タカヤ・恵工業JV及び日本住宅・千葉匠建設JVの4JVが価格競争をしていること,前記(ア)①及び③のとおり,物件122は,多くの事業者が受注を希望する物件でありながら,強い継続性を主張できる者がいない物件であったことに照らせば,上記研究会において物件122について合意に至ることができず,いわゆるフリー物件(各事業者が基本合意に拘束されず,自社の判断で入札価格を決める物件)になった可能性も十分にあったというべきである。そうすると,物件122については,上記研究会等において,会員入札参加者の間で,被審人高光建設・阿部工務店JV,東野建設工業・昭栄建設JV及び被審人タカヤ・恵工業JVないしその一部が物件122を受注することに他の事業者が協力することに合意した事実(前記(ウ)の①,②)を認めることはできない。
(オ) したがって,物件122については,本件基本合意に基づいて被審人高光建設が受注予定者になったとの推認を覆すに足りる特段の事情があり,具体的な競争制限効果が発生したとはいえない。
イ 被審人高光建設の物件127(岩手県立盛岡工業高等学校第一体育館改築〔建築等〕工事・条件付一般競争入札)
(ア) ①物件127の入札の当時,被審人高光建設は,他の仕事との兼ね合いで社員の配置について余裕があったため,物件127の受注を希望していたことについては当事者間に争いがなく,証拠によれば,②本件違反行為期間でみれば,過去に岩手県立盛岡工業高等学校に係る建築工事は発注されておらず,強い継続性を主張できる者がいなかったこと(査共第1号証),③6番札以降の会員入札参加者8社の入札価格は,設計金額の90パーセントを超えていることが認められる。
(イ) 前記(2)イのとおり,物件127は岩手県発注の特定建築工事であり,被審人高光建設が入札に参加して受注した工事であるから,特段の事情がない限り,本件基本合意に基づいて被審人高光建設が受注予定者になったことが推認されるほか,前記(ア)③は,この推認を強める事情である。
しかし,物件127の入札結果は,別紙1-4のとおりであって,入札参加者14社のうち,1番札であった大平建設が設計金額の83.52パーセントに相当する価格で入札したが低入札価格調査の結果失格したこと,設計金額の85.00パーセントちょうどの価格で入札した被審人高光建設と中亀建設が同額の2番札であり,くじ引きの結果,被審人高光建設が受注したこと,4番札の阿部工務店と5番札の日本住宅(アウトサイダー)の入札価格がそれぞれ設計金額の88.04パーセント,89.00パーセントであったことが認められる。
本件基本合意に従って被審人高光建設が受注予定者に決定されたのであれば,会員入札参加者である大平建設及び中亀建設は,被審人高光建設による落札に協力をしたはずであるが,実際には大平建設は被審人高光建設の入札価格より低額で入札して失格になり,中亀建設は被審人高光建設の入札価格と同額で入札してくじ引きになった。このように,物件127について,大平建設及び中亀建設は,本件基本合意の当事者でありながらこれに反する行動をとっており,会員入札参加者が全員協力して受注予定者が落札するという本件基本合意の想定している状況とは異なる入札状況となっている。これは,本件基本合意に基づき受注予定者が決定されたという推認を揺るがす重要な事実といえる。
(ウ) この場合でも,①被審人高光建設若しくは他の事業者が受注予定者として決定され,その他の会員入札参加者が受注予定者の受注に協力することになったこと(このような場合として,大平建設が受注予定者に決定されたが,低入札価格調査の結果失格したため,被審人高光建設が落札した場合が考えられる。また,被審人高光建設と中亀建設が同額で入札しており,受注予定者とならなかった者があえて受注予定者と同額で入札する理由はないから,そのいずれか一方が受注予定者となっていたことは考えがたい。),又は,②複数の事業者(被審人高光建設,大平建設及び中亀建設のほか,阿部工務店も含まれ得る。)の間で競争をすること及び他の会員入札参加者はこの競争に協力することが決定されたこと等が認められ,かつ,③被審人高光建設が受注調整に直接又は間接に関与したことが認められれば,物件127について具体的な競争制限効果が発生したといえる場合がある。
(エ) 物件127については,前記(ア)③のとおり,6番札以降の会員入札参加者8社の入札価格は,設計金額の90パーセントを超えていることは認められ,これは,6番札以降の会員入札参加者が受注予定者の受注に協力したことをうかがわせる事実ではあるが,前記(イ)のとおり,大平建設,被審人高光建設,中亀建設等が価格競争をしていること,前記(ア)②のとおり,物件127について強い継続性を主張できる者がいなかったことに照らせば,物件127については,そもそも研究会の開催等による受注調整が行われなかった可能性や,受注調整を行ったが合意に至ることができず,フリー物件になった可能性も十分にあったというべきである。そうすると,物件127については,会員入札参加者の間で,被審人高光建設,大平建設及び中亀建設ないしその一部が物件127を受注することに他の事業者が協力することに合意した事実(前記(ウ)①,②)を認めることはできない。
(オ) また,物件127については,被審人高光建設が受注調整に関与したこと(前記(ウ)③)を認めるに足りる証拠もない。
(カ) したがって,物件127については,本件基本合意に基づいて被審人高光建設が受注予定者になったとの推認を覆すに足りる特段の事情があり,具体的な競争制限効果が発生したとはいえない。
ウ 被審人下建設の物件108(県営内丸駐車場整備工事・指名競争入札)
(ア) ①物件108は高層の建物の解体工事であり,被審人下建設は実績作りの観点から受注を希望していたことについては当事者間に争いがなく,証拠によれば,②物件108の工事場所は,被審人下建設及び被審人タカヤの所在地から近い距離にあり,両社に地域性があったこと(竹鼻義徳参考人審訊速記録),③本件違反行為期間でみれば,過去に県営内丸駐車場に係る建築工事は発注されておらず,強く継続性を主張できる者がいなかったこと(査共第1号証),④上記の地域性を有していた1番札の被審人タカヤ及び2番札の被審人下建設を除く3番札以降の会員入札参加者5社及びアウトサイダー3社の入札価格は,いずれも予定価格の97.46パーセント以上であり,被審人タカヤ及び被審人下建設の入札価格から大きく(10パーセント以上)かい離していたことが認められる。
(イ) 前記(2)イのとおり,物件108は岩手県発注の特定建築工事であり,被審人下建設が入札に参加して受注した工事であるから,特段の事情がない限り,本件基本合意に基づいて被審人下建設が受注予定者になったことが推認されるほか,前記(ア)②及び④は,この推認を強める事情である。
しかし,物件108の入札結果は,別紙4-1のとおりであって,入札参加者10社のうち,1番札であった被審人タカヤが予定価格の84.93パーセントに相当する価格で入札したが最低制限価格未満のため失格したこと,2番札であった被審人下建設が予定価格の85.86パーセントで入札して受注したことが認められる。
本件基本合意に従って被審人下建設が受注予定者に決定されたのであれば,会員入札参加者である被審人タカヤは,被審人下建設による落札に協力したはずであるが,実際には,被審人タカヤは被審人下建設の入札価格より低額で入札して失格になった。このように,物件108について,被審人タカヤは,本件基本合意の当事者でありながらこれに反する行動をとっており,会員入札参加者が全員協力して受注予定者が落札するという本件基本合意の想定している状況とは異なる入札状況となっている。これは,本件基本合意に基づき受注予定者が決定されたという推認を揺るがす重要な事実といえる。
(ウ) この場合でも,①被審人下建設若しくは他の事業者が受注予定者として決定され,その他の会員入札参加者が受注予定者の受注に協力することになったこと(このような場合として,被審人下建設が受注予定者に決定され,被審人タカヤが本件基本合意に反して受注目的で被審人下建設より低額で入札したが,最低制限価格未満であったことから失格したため,被審人下建設が落札した場合と,被審人タカヤが受注予定者に決定されたが,最低制限価格未満であったことから失格したため,被審人下建設が落札した場合が考えられる。),又は,②複数の事業者(被審人下建設及び被審人タカヤ)の間で競争をすること及び他の会員入札参加者はこの競争に協力することが決定されたこと等が認められ,かつ,③被審人下建設が受注調整に直接又は間接に関与したことが認められれば,物件108について具体的な競争制限効果が発生したといえる場合がある。
(エ) 物件108については,前記(ア)④のとおり,3番札以降の会員入札参加者5社及びアウトサイダー3社の入札価格は,いずれも予定価格の97.46パーセント以上であり,被審人下建設及び被審人タカヤの入札価格から大きく(10パーセント以上)かい離していたことが認められ,これは,3番札以降の会員入札参加者が受注予定者の受注に協力したことをうかがわせる事実ではあるが,前記(イ)のとおり,被審人下建設と被審人タカヤが価格競争をしていること,前記(ア)③のとおり,物件108について強い継続性を主張できる者がいなかったことに照らせば,物件108については,そもそも研究会の開催等による受注調整が行われなかった可能性や,受注調整を行ったが合意に至ることができず,フリー物件になった可能性も十分にあったというべきである。そうすると,物件108については,会員入札参加者の間で,被審人下建設及び被審人タカヤ又はそのいずれかが物件108を受注することに他の事業者が協力することに合意した事実(前記(ウ)①,②)を認めることはできない。
(オ) また,物件108については,被審人下建設が受注調整に関与したこと(前記(ウ)③)を認めるに足りる証拠もない。
(カ) したがって,物件108については,本件基本合意に基づいて被審人下建設が受注予定者になったとの推認を覆すに足りる特段の事情があり,具体的な競争制限効果が発生したとはいえない。
3 争点3について
(1) 本件物件のうち,被審人高光建設が受注した物件50及び86,被審人匠建設が受注した物件35,58,101及び103並びに被審人タカヤが受注した物件34,88及び125の計9物件については,当初契約後,本件実行期間中に,前記第2の2(2)ないし(4)のとおり契約金額の増額変更がそれぞれなされている。
これら9物件が,いずれも当該役務に該当し,課徴金の算定対象となることについては,前記2で判断したとおりである。
(2) これら9物件の売上額について,施行令第6条は,「契約により定められた対価の額」をもって課徴金の基礎とすべき売上額を算定すべきことを定めているところ,当該役務に該当する工事について実行期間内において契約金額が変更された場合には,違反行為の実行期間中の事業活動の結果を反映させることを図る施行令第6条の趣旨に照らし,変更後の契約金額をもって,契約により定められた対価の額に該当すると解するべきである(公正取引委員会平成16年5月19日審決・公正取引委員会審決集第51巻43頁,公正取引委員会平成22年11月10日審決・公正取引委員会審決集第57巻第1分冊303頁等参照)。
したがって,前記(1)の9物件に係る本件実行期間中の契約金額の増額分は,いずれも課徴金の算定の基礎となる売上額に含まれるべきものである。
(3) 被審人らは,前記(1)の9物件については,当初の工事とは別の新たな変更・追加工事が発注され,その代金について契約の変更がなされたものであり,この契約金額の変更は,岩手県が直接,当初契約を締結した事業者との間で締結されるものであり,これを本件違反行為の結果とみることはできず,課徴金の算定対象とすべきではないと主張する。
しかし,前記(1)の各物件の建設工事請負契約変更請書等(査A第1号証,第2号証,査B第1号証ないし第4号証,査C第1号証ないし第4号証)によれば,各物件の契約の変更について,岩手県と各被審人との間で協議がされていることは認められるものの,その変更は,被審人らが,前記2(3)及び(4)のとおり受注した当初の工事の契約の変更であり,変更・追加後の工事は,当初の工事があって初めて発注されたものであって,当初の工事と一体となるものと認められるから,当初の工事の受注が本件基本合意に基づく受注調整によってなされたものである以上,当初の工事の変更に係る契約金額に本件違反行為の効果が及んでいるといえる。そして,前記(1)の各物件の契約の変更は,上記各証拠によれば,いずれも本件実行期間内にされたものであるから,これらの各物件における変更に係る契約金額は,前記(2)のとおり,全てが課徴金の算定の基礎となる売上額に含まれる。
4 争点4について
(1) 被審人らは,消費税は,商品等の消費者の消費に対し課税され,その商品等の提供を行った事業者が徴収・納税する間接税であり,商品等の対価ということはできず,法的性質上,「売上額」の一部ということはできない,また,岩手県の入札は税抜き価格で行われるのであって,消費税額は工事の価格には含まれておらず,さらに,会計上,消費税は負債であって売上額には含まれないと主張する。
(2) 役務の「対価」とは,一般に請負代金や委託代金を指すと考えられるところ,消費税法は,役務の提供等の資産の譲渡等について当該役務の提供を行った事業者を消費税の納税義務者としており(消費税法第2条第1項,第5条第1項),役務の提供を受ける側は消費税相当額を経済的に転嫁されて負担する立場にとどまり,法的には納税義務者ではない。役務の受益者が支払う消費税相当額は請負等の代金相当額の金員と同一の法的性質を有する金員として一体的に事業者に支払われ,事業者が,当該受益者から受領した金員の中から,自らの義務として消費税を納付することが予定されているのである。したがって,消費税相当額は,法的には役務に対する対価の一部であり,また,当該役務の対価の一部を構成するものとして社会的に認識されている。このように,消費税相当額は,法律上も社会通念上も役務の売上額の一部であるといえるから,施行令第6条にいう役務の「対価」に含まれ,独占禁止法第7条の2第1項の「売上額」の一部に含まれると解するべきである(前掲最高裁判所平成10年10月13日判決,東京高等裁判所平成18年2月24日判決・公正取引委員会審決集第52巻744頁,前掲公正取引委員会平成22年11月10日審決等参照)。消費税を売上額の一部ということはできない旨の被審人らの主張は根拠を欠き採用できない。
また,本件物件の入札は消費税抜きの価格で行われていても,同物件の工事請負契約は,前記3(3)掲記の各証拠のとおり,請負代金額に消費税を含み契約が締結されているのであるから,被審人らの主張には理由がなく,本件物件における消費税相当額は,いずれも課徴金の算定の基礎となる売上額に含まれることとなる。
第6 被審人らの課徴金の算定
1 被審人高光建設について
(1) 被審人高光建設の本件実行期間における岩手県発注の特定建築工事に係る売上額で本件違反行為に基づくものは,前記第2の2(2)イ(イ)の物件50の契約金額7897万6800円と,同ウ(イ)の物件86の契約金額5868万4500円を合計した1億3766万1300円である。
(2) 被審人高光建設が国庫に納付しなければならない課徴金の額は,独占禁止法第7条の2第1項及び第2項の規定により,前記1億3766万1300円に100分の3を乗じて得た額から,同条第4項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて算出された412万円である。
2 被審人匠建設について
(1) 被審人匠建設の本件実行期間における岩手県発注の特定建築工事に係る売上額は,前記第2の2(6)イのとおり,7億393万6800円である。
(2) 被審人匠建設が国庫に納付しなければならない課徴金の額は,独占禁止法第7条の2第1項及び第2項の規定により,前記7億393万6800円に100分の3を乗じて得た額から,同条第4項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて算出された2111万円である。
3 被審人タカヤについて
(1) 被審人タカヤの本件実行期間における岩手県発注の特定建築工事に係る売上額は,前記第2の2(6)ウのとおり,6億8957万3283円である。
(2) 被審人タカヤが国庫に納付しなければならない課徴金の額は,独占禁止法第7条の2第1項及び第2項の規定により,前記6億8957万3283円に100分の3を乗じて得た額から,同条第4項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて算出された2068万円である。
4 被審人下建設について
被審人下建設については,前記第5の2(6)ウのとおり,物件108は,独占禁止法第7条の2第1項所定の「当該・・・役務」に該当せず,本件実行期間において,本件違反行為に基づく売上額を認めることができない。
第7 法令の適用
以上によれば,被審人下建設に対しては,課徴金の納付を命ずることができず,その余の被審人らに対しては,独占禁止法第7条の2第1項,第2項及び第4項の規定を適用して,同法第54条の2第1項の規定により,主文のとおり審決することが相当であると判断する。

平成25年1月30日

公正取引委員会事務総局

審判長審判官  後 藤   健

審判官  原   一 弘

審判官  多 田 尚 史

※ 別紙は省略。

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