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㈱松下組に対する件

独禁法66条2項(独禁法3条後段 ,独禁法7条の2)

平成24年(判)第1号及び第2号

審判請求棄却審決(排除措置命令及び課徴金納付命令に係る審判請求棄却審決)

石川県輪島市釜屋谷町6字33番地3
被審人 株式会社松下組
同代表者 代表清算人 松 下 久美子
同代理人 弁 護 士 中 田 博 繁

公正取引委員会は,上記被審人に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)に基づく排除措置命令審判事件及び課徴金納付命令審判事件について,公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号。以下「規則」という。)第73条の規定により審判官原一弘及び審判官酒井紀子から提出された事件記録に基づいて,同審判官らから提出された別紙審決案を調査し,次のとおり審決する。

主       文
被審人の各審判請求をいずれも棄却する。

理       由
1 当委員会の認定した事実,証拠,判断及び法令の適用は,別紙審決案別紙1別表2(2)の番号72の本店の所在地欄を「石川県鳳珠郡穴水町字大町ロの27番地」に改めるほかは,いずれも別紙審決案の理由第1ないし第7と同一であるから,これらを引用する。
2 よって,被審人に対し,独占禁止法第66条第2項及び規則第78条第1項の規定により,主文のとおり審決する。

平成25年9月30日

公 正 取 引 委 員 会
委員長  杉  本  和  行
委 員  濵  田  道  代
委 員  小 田 切  宏  之
委 員  幕  田  英  雄
委 員  山  﨑     恒

平成24年(判)第1号及び第2号

審   決   案

石川県輪島市釜屋谷町6字33番地3
被審人 株式会社松下組
同代表者 代表清算人 松 下 久美子
同代理人 弁 護 士 中 田 博 繁

上記被審人に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)に基づく排除措置命令審判事件及び課徴金納付命令審判事件について,公正取引委員会から独占禁止法第56条第1項及び公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号。以下「規則」という。)第12条第1項の規定に基づき担当審判官に指定された本職らは,審判の結果,次のとおり審決することが適当であると考え,規則第73条及び第74条の規定に基づいて本審決案を作成する。

主       文
被審人の各審判請求をいずれも棄却する。

理       由
第1 審判請求の趣旨
1 平成24年(判)第1号審判事件
平成23年(措)第11号排除措置命令の取消しを求める。
2 平成24年(判)第2号審判事件
平成23年(納)第236号課徴金納付命令の取消しを求める。
第2 事案の概要(当事者間に争いのない事実及び公知の事実)
1 公正取引委員会は,被審人を含む別紙1別表1及び別表2記載の79名(以下「79名」という。会社については,会社の種類を表す部分を除いたものを略称とする。なお,有限会社新出組は「(有)新出組」と略す。各番号欄記載の数字を用いて表すこともある。)が,別紙2記載の工事(以下「石川県発注の特定土木一式工事」という。)について,平成19年6月1日から平成22年7月13日までの間,共同して受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,石川県発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第6項の不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであるとして,平成23年10月6日,79名のうち,離脱した事業者1名(別紙1別表2(1),番号68),解散し,事業活動の全部を取りやめている事業者9名(別紙1別表2(2),番号69ないし77)及び事実上事業活動の全部を取りやめている事業者2名(別紙1別表2(3),番号78及び79)を除く67名(別紙1別表1)に対し,排除措置を命じた(平成23年(措)第11号。以下「本件排除措置命令」又は「原処分」といい,同命令中で認定された不当な取引制限に該当する行為を「本件違反行為」,上記行為期間を「本件違反行為期間」という。)。排除措置命令書の謄本は,同月7日,被審人に対して送達された。
2 公正取引委員会は,本件排除措置命令に係る違反行為は,独占禁止法第7条の2第1項第1号に規定する役務の対価に係るものであるとして,平成23年10月6日,被審人に対し,139万円の課徴金の納付を命じた(平成23年(納)第236号。以下「本件課徴金納付命令」という。)。課徴金納付命令書の謄本は,同月7日,被審人に対して送達された。
3 被審人は,平成23年11月28日,本件排除措置命令及び本件課徴金納付命令の取消しを求めて審判請求をした(平成24年(判)第1号及び第2号)。
第3 前提となる事実等(当事者間に争いのない事実又は公知の事実)
1 被審人を含む79名の概要
被審人を含む79名は,いずれも奥能登地域(石川県輪島市,珠洲市並びに鳳珠郡穴水町及び能登町の区域をいう。以下同じ。)に本店又は主たる事務所を置く建設業者であった。
2 石川県の土木一式工事の発注方法等
(1) 石川県が発注する土木一式工事
石川県は,総合的な企画,指導,調整の下に土木工作物を建設する工事(補修,改造又は解体する工事を含む。),具体的には,道路改良工事,砂防工事,河川改修工事,農地整備工事,林道・治山事業工事等を「土木一式工事」として発注していた。
なお,石川県が工種区分において「土木一式工事」として発注する工事には,作業船を使用する工事及び橋梁上部工事も含まれていたが,これらの工事は,専門技術・設備を有する事業者に対してのみ発注されていた(以下,作業船を使用する工事及び橋梁上部工事を除く,石川県が工種区分において「土木一式工事」として発注する工事を「石川県が発注する土木一式工事」という。)。
(2) 石川県が発注する土木一式工事の発注方法等
石川県は,石川県が発注する土木一式工事について,本件違反行為期間中,次のとおり発注していた。
ア 発注業務の担当部署
石川県は,石川県が発注する土木一式工事について,同県本庁の土木部又は農林水産部のほか,その関係業務を所掌する出先機関において発注業務を行っており,奥能登地域においては,石川県奥能登土木総合事務所及び石川県奥能登農林総合事務所が上記土木部又は農林水産部の出先機関として発注業務を行っていた。
奥能登地域において石川県が発注する土木一式工事のうち,予定価格が1億円以上の工事については同県本庁の土木部又は農林水産部が,同1億円未満の工事については石川県奥能登土木総合事務所又は石川県奥能登農林総合事務所が発注業務を行っていた。
イ 等級の格付等
(ア) 石川県は,石川県が発注する土木一式工事について行う同県の制限付一般競争入札又は指名競争入札(以下,これらを総称して「競争入札」という。)への参加を希望する事業者の申請を受けて,資格審査を行った上で,競争入札の参加資格を有すると認定した事業者を「請負業者有資格者名簿」(以下「有資格者名簿」という。)に登録していた(以下,石川県が有資格者名簿に登録していた事業者を「有資格者」という。)。
(イ) 石川県は,建設業法(昭和24年法律第100号)に基づき,又は自ら定める基準に基づき総合点数を算定し,点数の高い方から順にA,B,C又はDのいずれかの等級に格付してこれを有資格者名簿に登録していた。
また,同県は,有資格者の等級の見直しを毎年行っており,見直しにより等級を変更することとなった場合には,毎年6月1日付けで見直し後の等級に格付を変更していた。
(ウ) 被審人を含む79名は,本件違反行為期間の全部又は一部において,A,B又はCの等級に格付されていた。
(エ) 石川県は,指名競争入札における入札参加者の指名を,入札審査委員会の審議時点における等級に基づき行っており,等級の格付が変更された後に,見直し前の等級に基づき指名を受けた有資格者もいた。このような基準に従って,指名を受けていた事業者は,別紙1別表1及び別表2記載の事業者のうち,渡瀬建設(別紙1別表1,番号40),大東建設(同47),(有)新出組(同55),玉木運送(同57),能都左官(同58),船本建設(同59),松木産業(同62),宮田組(同64),森忠建設(同65),札木建設こと札木元(同67),新出建設(別紙1別表2,番号73)及び大西建設(同79)である。
(オ) また,別紙1別表2記載の事業者のうち,隅屋建設(別紙1別表2,番号69)及び淵田組(同71)については,年度途中に入札参加資格を取り下げ,入札参加資格を取り消されたことから,その前日までの期間においてA又はBの等級に格付されていた。
ウ 発注方法
(ア) 発注方法の区分
石川県は,石川県が発注する土木一式工事について
a 平成19年4月から同年9月までは,予定価格が5000万円以上の工事については制限付一般競争入札の方法により,同じく250万円超5000万円未満の工事については指名競争入札の方法により,同じく250万円以下の工事については随意契約の方法により
b 平成19年10月以降は,予定価格が3000万円以上の工事については制限付一般競争入札の方法により,同じく250万円超3000万円未満の工事については指名競争入札の方法により,同じく250万円以下の工事については随意契約の方法により
それぞれ発注していた。
(イ) 制限付一般競争入札
a 地域に関する条件
石川県は,石川県が発注する土木一式工事について主たる営業所等の所在地を条件とする旨規定していたところ,石川県発注の特定土木一式工事に当たる各工事については,いずれも奥能登地域に主たる営業所を置いていることを入札参加の条件としていた。
b 等級に関する条件
石川県は,石川県が発注する土木一式工事について有資格者名簿に定める総合点数を条件とする旨規定していたところ,石川県発注の特定土木一式工事に当たる各工事については,いずれも総合点数が一定の数値以上であることを入札参加の条件としていた。その点数は,760点以上の点数であり,工事ごとに定められていた。
総合点数が760点以上850点未満の者はBの等級の事業者(以下「B等級業者」という。)であり,850点以上の者はAの等級の事業者(以下「A等級業者」という。)であり,これらに該当する事業者が参加していた。
(ウ) 指名競争入札
a 地域に関する条件
石川県は,石川県が発注する土木一式工事に係る指名競争入札について,入札参加者の指名に当たっては,入札対象の工事に対する地理的条件について特に留意することとしており,上記工事のうち,予定価格が2億円未満の「一般工事」に係る指名競争入札については,地域性又は安定的施工に配慮することを定め,実際に,奥能登地域に施工場所のある工事については,同地域に主たる営業所を置いていることを入札参加の条件としていた。
b 等級に関する条件
石川県は,石川県が発注する土木一式工事に係る指名競争入札について,平成19年4月から同年9月末までの間は,原則として,予定価格が4000万円以上5000万円未満の工事はA等級業者を,同じく1500万円以上4000万円未満の工事はB等級業者をそれぞれ指名し,同年10月以降は,原則として,予定価格が3000万円以上の工事はA等級業者を(ただし,同月以降は,予定価格が3000万円以上の工事は制限付一般競争入札の方法によることともされていた。),同じく1500万円以上3000万円未満の工事はB等級業者を指名することとしていた。
エ 入札情報の公表
(ア) 予定価格
石川県は,入札方法にかかわらず,石川県が発注する土木一式工事の予定価格を入札の実施前に公表していた。
(イ) 入札参加者の名称
石川県は,石川県が発注する土木一式工事を制限付一般競争入札の方法で発注する場合における入札参加者又は指名競争入札の方法で発注する場合における指名業者の名称を落札者との契約締結後に公表していた。
(ウ) 入札結果
石川県は,入札方法にかかわらず,石川県が発注する土木一式工事の入札結果を落札者との契約締結後に公表していた。
3 入札結果
本件違反行為期間中に発注された石川県発注の特定土木一式工事は,別紙3記載の634件であり,各工事の工事名,発注方法の種類,入札年月日,予定価格,落札価格,落札者,入札参加者等は,別紙3の各該当欄記載のとおりである。
4 被審人の落札受注物件
被審人が,平成19年7月14日から平成22年7月13日までの間に受注した石川県発注の特定土木一式工事は,別紙4記載の2物件(以下「本件2物件」といい,別紙3一連番号200の物件を「物件1」,同61の物件を「物件2」という。)である。
本件2物件の契約額の合計は,上記2件の契約により定められた対価の額を合計した3492万6150円である。
第4 本件の争点
1 被審人は不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)に該当する行為を行ったか。(争点1)
2 被審人に対し排除措置を特に命ずる必要があるか。(争点2)
3 被審人の受注した本件2物件は独占禁止法第7条の2第1項所定の「当該役務」に該当するか。(争点3)
第5 争点についての双方の主張
1 争点1(被審人は不当な取引制限〔独占禁止法第2条第6項〕に該当する行為を行ったか。)
(1) 審査官の主張
ア 本件違反行為
被審人を含む79名は,遅くとも平成19年6月1日以降(別紙1別表3記載の事業者にあっては,それぞれ,遅くとも同表の「期日」欄記載の年月日以降),石川県発注の特定土木一式工事について,受注価格の低落防止等を図るため
(ア) a 受注予定者を決定する
b 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意(以下「本件基本合意」という。)の下に
(イ) a 受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)が1名のときは,その者を受注予定者とする
b 受注希望者が複数名のときは,当該工事の施工場所,過去に受注した工事との継続性等を勘案して,受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する
などにより,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
イ 被審人が本件違反行為に参加していたこと
(ア) 本件2物件について,本件基本合意に基づいて受注予定者となり,他の入札参加者の協力を得て受注した。
(イ) 被審人が入札に参加し,受注予定者とならなかった物件について,本件基本合意に基づき受注予定者となった者が受注できるよう協力をした。
(2) 被審人の主張
ア 審査官の主張はいずれも否認する。
イ 被審人の専務取締役であった川端隆一(以下「川端」という。)は,供述調書(査第86号証)において,受注調整を行った旨供述しているが,これは,過去のことを述べたのであって,本件違反行為期間中に現実に受注調整をした旨述べているわけではない。また,川端が被審人の落札した工事について述べた部分も,被審人がなぜ当該工事の入札にこだわったのか,その地域性や実績について述べたにすぎず,供述調書の記載の仕方がおかしいと抗議したが,審査官が訂正に応じなかったものであって,記載内容は信用性に欠ける。
また,被審人において,100万円を超える価格の工事の入札について決定権限を有していたのは代表者であった松下文雄であって,川端ではなかったから,川端の供述をもって被審人が本件基本合意に参加したことや受注調整を行ったことを認定することはできない。
ウ 被審人は,地域性や実績に照らし,どの工事がどの事業者に最も関連が深いか考慮し,これを尊重する意思はあるが,他の事業者を拘束する意思はなく,尊重されることを期待しているにすぎない。これは,他の事業者についても同じであるから,79名は,相互に拘束する意思を有していたとはいえず,不当な取引制限に該当するような基本合意は存在しない。
エ 被審人は,過去の入札結果を工業新聞の記事から分析した結果,予定価格のおよそ95パーセントで落札していることが判明したことから,落札を望む物件について,公表された予定価格の96パーセント程度で入札していた。他方,被審人は,入札に参加したが落札を望まない場合には,予定価格に近い価格で入札していた。
このように,被審人は,入札価格を独自に決定していたのであり,他の事業者との合意により決定していたわけではない。他の事業者の利益率もほとんど同じであるから,他の事業者も,合意によらず,独自の判断で被審人と同様の入札行動をしていたと考えられる。
オ 79名のうち,その半数以上は名前を聞いたことがあるだけで,代表者や営業担当者について全く知らない事業者であるから,79名の間で本件基本合意をすることはできなかった。
2 争点2(被審人に対し排除措置を特に命ずる必要があるか。)
(1) 審査官の主張
ア 入札談合行為は,受注価格の低落防止という当事者相互の利益に合致するものであり,長期間にわたり,継続的・恒常的に行われるという性質から,協調的関係が強固に形成されるものであり,一旦終了しても,当事者間に形成された競争回避的意識や協調的関係が直ちには解消されず,再び同様の行為が行われる可能性が高い。加えて,本件については,少なくとも3年以上にわたって本件違反行為が行われていたこと,本件違反行為の取りやめは,公正取引委員会が立入検査を実施したことを契機とするものであって,被審人の自発的意思によるものではないこと,隣接する地域で刑事事件が摘発されたにもかかわらず,できるだけ会合を開くのを避けて電話でやりとりをするなどの方策を講じて違反行為を継続していたことが認められる。したがって,排除措置を命ずることが特に必要と認められる。
イ 被審人の主張に対する反論
被審人の主張する事情のうち,廃業届の提出,株主総会における解散決議の事実は,平成23年10月6日の本件排除措置命令の後に生じたものであり,原処分の当時には,被審人は,引き続き石川県における入札参加資格を有していたのであるから,特に必要と認められるとの要件を満たしていたことは明らかである。
(2) 被審人の主張
ア 被審人は,実質的には,代表者であった松下文雄の個人企業であったところ,同人が平成23年5月に死亡した後は新たな営業活動を行っておらず,同年7月までには受注済みの工事を完成させ,以後,会社としての業務をほぼ行わず,同年8月10日に従業員を解雇した。したがって,原処分が行われた同年10月6日の段階で,被審人は競争秩序に関与しておらず,将来再び談合行為を行うおそれもなかった。
イ 実際に,被審人は,平成23年11月25日に石川県に廃業届を提出し,平成24年1月20日に株主総会で解散決議をし,この旨の登記をしたのであり,今後,事業活動を行うことはないから,排除措置を命ずることが特に必要と認められるとの要件は満たさない。
3 争点3(被審人の受注した本件2物件は独占禁止法第7条の2第1項所定の「当該役務」に該当するか。)
(1) 審査官の主張
被審人が受注した本件2物件は,いずれも,本件基本合意に基づく受注調整手続の結果,競争制限効果が発生したものと推認され,かかる推認を妨げる特段の事情も見受けられないから,当該役務に該当するものである。
(2) 被審人の主張
被審人は,本件違反行為を行っておらず,本件2物件は,本件基本合意に基づく受注調整の結果,受注したものではないから,当該役務には該当しない。
被審人は,個別の入札において,代表者や営業担当者の名前も知らない事業者との間で受注調整を行うことはできなかった。
第6 審判官の判断
1 認定事実
(1) 平成19年5月以前の状況
奥能登地域に本店又は主たる事務所を置く建設業者は,平成19年5月以前から,石川県が発注する土木一式工事について,受注調整を行っていた。(査第35号証,第46号証,第48号証,第52号証,第58号証,第78号証,第86号証,第93号証)
(2) 平成19年6月以降の受注調整の状況
ア 平成19年6月1日以降,79名は,石川県発注の特定土木一式工事について,受注価格が低落することを防止するため,受注予定者を決定し,受注予定者となった者は,自社の入札価格等を決定し,受注予定者以外の入札参加者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する旨合意し,これに基づき個別の物件について受注予定者を決定し,受注予定者以外の入札参加者は,受注予定者が受注できるよう協力した。(査第35号証ないし第122号証,第143号証,第144号証)
イ 具体的な状況は,以下のとおりである。
(ア) 奥能登地域における工事の指名競争入札に際しては,奥能登地域という地域性だけではなく,合併前の市町村を前提とする輪島地区,珠洲地区,穴水地区,門前地区,能都地区,柳田地区及び内浦地区の7つの地区を考慮して,事業者の指名が行われていた。
このため,指名される事業者は,当該工事が存在する地区の事業者であることが多かったが,工事金額等によって当該工事が存在する地区の事業者だけでは10に満たない場合などには,他の地区の事業者が指名されることもあった。
(査第45号証,第49号証,第56号証,第58号証,第73号証,第75号証,第123号証)
(イ) 制限付一般競争入札で発注される工事については,導入後間もないことから経験を積む必要があること,入札参加者が少ないと他の地域から参入するおそれがあることから,資格を有する事業者の多くは,入札に参加していた。(査第36号証,第38号証,第75号証,第91号証)
(ウ) 79名の間で,前記(ア)の7地区のうち,自らの所在する地域以外を施工場所とする石川県発注の特定土木一式工事については,原則として受注しないこととしていた。(査第35号証,第38号証,第40号証,第41号証,第46号証ないし第49号証,第70号証,第73号証,第74号証,第84号証,第93号証,第117号証)
(エ) 受注を希望する事業者は,それぞれが所在する地域の建設業協会,協同組合等(以下「協会等」という。)に照会し,又は自ら他の事業者に電話で照会をするなどの方法で,入札参加者を把握した。(査第43号証,第44号証,第46号証,第47号証,第49号証,第54号証ないし第57号証,第63号証,第64号証,第67号証,第69号証,第71号証,第73号証,第74号証,第77号証,第81号証,第83号証,第84号証,第86号証ないし第88号証,第94号証,第99号証,第102号証ないし第107号証,第111号証,第115号証ないし第118号証,第120号証,第121号証)
(オ) 79名は,入札参加者又は受注希望者同士の話合い,電話連絡等により受注予定者を決定した。(査第36号証ないし第39号証,第41号証,第42号証,第46号証,第47号証,第49号証ないし第52号証,第54号証ないし第57号証,第60号証,第62号証,第64号証ないし第67号証,第69号証ないし第76号証,第78号証,第79号証,第83号証,第84号証,第86号証ないし第94号証,第99号証,第101号証,第103号証ないし第108号証,第110号証,第114号証,第116号証,第117号証,第121号証,第122号証,第143号証,第144号証)
(カ) 79名は,当該工事の施工場所,過去に受注した工事との継続性等から受注予定者が明らかに定まる場合には,受注希望者同士の話合いや連絡を行わないこともあった。(査第39号証,第42号証,第50号証,第51号証,第63号証,第73号証,第78号証,第86号証,第92号証,第99号証,第107号証)
(キ) 受注予定者は,他の入札参加者に対し,その入札すべき価格を記載した「札」と呼ばれる短冊状の紙片等を渡す,又は電話等によって口頭で伝えるなどの方法で,価格を連絡した。(査第36号証,第39号証,第40号証,第42号証,第43号証,第45号証ないし第47号証,第49号証,第50号証,第52号証,第54号証ないし第58号証,第60号証,第62号証ないし第66号証,第69号証ないし第78号証,第81号証,第83号証ないし第90号証,第92号証ないし第94号証,第99号証ないし第104号証,第106号証ないし第111号証,第114号証,第116号証ないし第118号証,第121号証,第124号証ないし第126号証,第131号証,第133号証,第134号証)
(ク) 受注予定者は,価格連絡を行わない場合もあった。その場合でも,受注予定者は予定価格(消費税抜きの価格。以下同じ。)の95パーセント程度,他の入札参加者は予定価格の97から98パーセント程度の価格で入札することが多かったため,受注予定者以外の事業者は,これらの価格を目安として入札していた。(査第35号証,第36号証,第38号証ないし第40号証,第44号証ないし第50号証,第52号証,第53号証,第55号証,第56号証,第58号証ないし第60号証,第62号証ないし第81号証,第84号証,第86号証ないし第97号証,第99号証ないし第108号証,第110号証,第113号証,第114号証,第116号証,第118号証,第120号証,第121号証,第144号証)
(3) 入札結果
本件違反行為期間中に発注された石川県発注の特定土木一式工事は,別紙3記載の634件であり,このうち,被審人を含む79名が本件違反行為により受注した工事は,別紙3の工事名欄に網掛けのある15件を除く619件であって,634件中97.6パーセント(小数点以下第2位を四捨五入。以下同じ。)を占めており,その平均落札率(予定価格に対する落札者の入札価格の割合の平均値。以下同じ。)は,94.6パーセントである。(査第123号証)
(4) 輪島地区の入札状況
ア 輪島地区に所在する被審人,上野組,上田組及び玉木運送の間では,この4名のうちの1名が受注予定者になった場合,万一,受注予定者が誤入札等により落札できなくなった際に,次に低い価格(二番札)で入札した者が受注し,受注予定者に下請に出すことができるように,4名のうちの残りの3名のいずれかが,受注予定者の入札価格より僅かに高い価格で入札することがあった。
上野組は,別紙3一連番号5,同16,同18,同28,同34,同35,同51,同74,同92,同106,同131及び同166の各工事について受注予定者になり,被審人は,このうち同5,同16,同28,同34,同51,同74,同92,同106及び同166の各工事について,上田組は,このうち同18及び同35の各工事について,玉木運送は,このうち同131の工事について,いずれも上野組の依頼を受けて,上野組の入札金額より僅かに高い価格で入札した。
(査第45号証,第123号証)
イ 河内建設は,別紙3一連番号232について受注予定者になり,被審人に対してこの物件の工事の経費の内訳書(石川県に提出することを求められたもの)を交付して,入札すべき価格を連絡した。被審人は,河内建設から連絡を受けた価格で入札した。(査第52号証,第123号証,第141号証,第142号証)
(5) 被審人による本件2物件の受注等
ア 物件1(入札年月日:平成19年8月2日)
物件1は,指名競争入札の方法により発注されたものであり,指名された事業者はいずれも本件基本合意の当事者であり,そのうち,被審人及び田中組が輪島地区の事業者,それ以外の8名が門前地区の事業者であった。(査第123号証)
物件1の指名通知書上の工事場所は「門前町浦上地内」となっており,門前地区の工事のように記載されているが,実際の施工場所は石川県輪島市上山町地内であり,輪島地区の工事であった。被審人は,施工場所である輪島市上山町地内付近において施工実績があったことから受注を希望した。
被審人は,物件1が輪島地区にあることを門前地区の入札参加者は知っていると考えていたが,なお,門前地区の入札参加者が物件1を受注しようとしないように,門前地区の宮下建設に対し,「この工事,輪島側なんやけど」などと,物件1の実際の施工場所が輪島地区にある旨伝えるなどして,門前地区の入札参加者に対し,自らの地域性を主張した。
物件1については,他の入札参加者がいずれも受注を希望しなかったことから,被審人が受注予定者となった。
被審人は,予定価格の96.2パーセントに相当する2100万円で入札し,被審人以外の全ての入札参加者は,被審人が物件1を受注できるように,予定価格の96.4パーセント以上の価格で入札した。その結果,被審人は,物件1を落札した。
(査第46号証,第47号証,第67号証,第69号証,第74号証ないし第76号証,第86号証,第90号証,第108号証,第111号証,第123号証,第143号証,第144号証)
イ 物件2(入札年月日:平成20年3月25日)
物件2は,指名競争入札の方法により発注されたものであり,被審人のほか10名が指名業者となり,入札に参加した。指名された事業者は,いずれも本件基本合意の当事者であり,輪島地区の事業者であった。(査第123号証)
物件2の施工場所は輪島市杉平町であり,被審人は施工場所付近において施工実績があったことから受注を希望した。
そこで,被審人は,他の事業者に対して物件2について指名を受けたかどうかを尋ねて自社以外の入札参加者を自ら確認するなどした。
物件2については,他の入札参加者がいずれも受注を希望しなかったことから,被審人が受注予定者となった。
被審人は,予定価格の96.2パーセントに相当する1170万円で入札し,被審人以外の全ての入札参加者は,被審人が物件2を受注できるように,予定価格の96.6パーセント以上の価格で入札した。その結果,被審人は,物件2を落札した。
(査第40号証,第45号証,第49号証,第64号証,第75号証,第76号証,第78号証,第83号証,第86号証,第92号証,第96号証,第100号証,第123号証)
ウ 被審人においては,従業員の川端が被審人の担当者として,本件違反行為期間中,石川県発注の特定土木一式工事について,被審人を除く78名の事業者の代表者又は従業員との間で,入札前に受注予定者をあらかじめ決めた上で入札に臨み,現実に入札行為をするなどしていた。
川端は,平成5年に被審人に入社し,平成10年頃から,営業を担当し,平成18年頃から,被審人の専務取締役として営業活動を行っていたものであり,当初は,代表取締役であった松下文雄と共に公共工事の入札に参加していたが,徐々に一人で参加するようになった。入札に参加するに当たって,100万円未満の工事は自ら入札価格を決定することもあったが,100万円を超える工事は代表取締役であった松下文雄に相談の上,決定していた。
(査第86号証,第143号証,第144号証)
(6) 本件違反行為の終了
平成22年7月14日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく調査を開始したところ,同日以降,本件違反行為は行われていない。
2 争点1(被審人は不当な取引制限〔独占禁止法第2条第6項〕に該当する行為を行ったか。)
(1) 判断
ア ①被審人を含む79名のうち77名の役員又は従業員(川端を含む。)が,本件基本合意が存在し,本件基本合意に基づく受注調整を行っていたことを認める旨の供述をしていること(査第35号証ないし第122号証,第143号証,第144号証),②①の供述は,自社の受注した物件について受注の経緯等と他社の受注した物件についての協力の内容等を具体的に述べたものであること,③本件排除措置命令を受けた67名のうち,被審人を除く66名は審判請求をしていないことに照らせば,前記1(2)アのとおり,本件基本合意が存在し,前記1(3)のとおり,本件違反行為期間中に発注された634件の石川県発注の特定土木一式工事のうち619件が本件基本合意に基づき落札されたことが認められる。
イ 前記1(4)アで認定したとおり,被審人は,9件の物件について,上野組の依頼を受けて,二番札となるような価格で入札し,別紙3一連番号232について,河内建設から入札すべき価格について連絡を受け,この金額で入札しており,かつ,前記アのとおり,77名の役員又は従業員は,本件基本合意に被審人が含まれることを前提とした供述をしており,被審人が本件基本合意に参加していないと述べる者はいないことを総合すれば,被審人は本件基本合意の当事者であることが認められる。
ウ 本件基本合意は,受注予定者を決定し受注予定者が受注できるよう協力するというものであるところ,前記1(3)のとおり,本件基本合意の当事者である79名は,本件違反行為期間中に発注された634件の石川県発注の特定土木一式工事のうち,619件を本件基本合意に基づき受注したこと,その平均落札率は94.6パーセントであったことが認められるから,本件基本合意は,79名がその意思で石川県発注の特定土木一式工事の取引分野において,受注者及び受注価格をある程度自由に左右することができる状態をもたらしていたということができる(最高裁判所第一小法廷平成24年2月20日判決・民集第66巻第2号796頁参照)。
エ 以上によれば,被審人は,他の78名の事業者と共同して相互にその事業活動を拘束し,公共の利益に反して,石川県発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していたと認められる。
(2) 被審人の主張について
ア 被審人は,川端の供述調書(査第86号証)について,川端は受注調整を行った旨供述しているが,これは,過去のことを述べたのであって,本件違反行為期間中に現実に受注調整をした旨述べているわけではない,また,同供述調書中の被審人が落札した工事について述べた部分は,被審人が当該工事の入札にこだわった理由等について述べたにすぎないと主張し,川端の陳述書(審第11号証)中にはこれに沿う部分がある。しかし,川端は,上記供述調書において物件1及び物件2の受注について具体的に述べていること,同人の供述調書(査第86号証及び第144号証)の供述を総合すれば,当該各供述部分は,過去の事実や当該工事の入札へのこだわりを述べただけとみることは到底できないことからすると,上記陳述書の記載は信用できず,被審人の主張は採用できない。
さらに,被審人は,川端は,100万円を超える工事の入札について決定権限を有していなかったから,川端の供述をもって被審人が本件基本合意に参加したことや受注調整を行ったことを認定することはできないと主張する。しかし,前記認定事実(1(5)ウ)のとおり,川端は,被審人を代表して入札に参加しており,その結果,被審人が受注しているのであり,また,100万円を超える工事の入札価格を代表取締役に相談して決めていたというのであるから,川端の供述から上記認定をすることに何らの妨げもない。
イ 被審人は,①地域性や実績により関連性が高いと認められる事業者による受注を尊重するが,他の事業者を拘束する意思はなく,他の事業者も同様であるから,本件基本合意は存在しない,②工業新聞の記事を分析した結果,落札価格が予定価格のおよそ95パーセントであることが判明したことから,落札を希望する物件については公表された予定価格の96パーセント程度の価格,落札を希望しない物件については予定価格に近い価格で入札したのであって,他の事業者との合意により入札価格を決定したものではなく,他の事業者も同様であると主張する。
しかし,前記アのとおり,川端は,本件基本合意が存在し,それに基づく受注調整を行った旨の供述をしていること,前記1(4)のとおり,被審人は,他の事業者の依頼を受けて入札価格を決定したことが認められる上,前記(1)アのとおり,他の事業者の役員又は従業員は,本件基本合意に基づいて受注調整を行ったことを認める供述をしているのであるから,被審人の主張は採用できない。
ウ 被審人は,被審人を除く78名の半数以上の事業者の代表者や営業担当者を知らないから,79名間で本件基本合意をすることはできなかったと主張する。
しかし,本件基本合意は,石川県発注の特定土木一式工事の入札に参加する資格を有する事業者の間で,受注予定者を決定し,その受注予定者による受注に協力する旨の合意であるところ,前記1(2)のとおり,合意の当事者とされる79名は,当該合意に基づいて受注調整を行い,当該合意に拘束されて事業活動を行っていたのであるから,79名の間で合意が成立したことが認められるのであり,また,この合意が成立するためには,各社が,他の78名との間で個別に意思の連絡をする必要はないから,被審人が被審人を除く78名の半数以上の事業者の代表者や営業担当者を知らなかったとしても,本件基本合意が成立したとの認定が妨げられるものではない。
3 争点2(被審人に対し排除措置を特に命ずる必要があるか。)
(1) 独占禁止法第7条第2項は,違反行為が既になくなっている場合においても,特に必要があると認めるときは,事業者に対し,当該行為が既になくなっている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができると規定しているところ,同項の「特に必要があると認めるとき」とは,既に違反行為はなくなっているが,当該違反行為が繰り返されるおそれがある場合や,当該違反行為の結果が残存しており競争秩序の回復が不十分である場合などをいうものと解される(東京高等裁判所平成20年9月26日判決・公正取引委員会審決集第55巻910頁参照)。
(2) 前記1(2)のとおり,本件違反行為は,少なくとも3年以上にわたって,継続的・恒常的に行われたものであるから,当事者間に強固な協調的関係が形成されており,一旦終了しても,この関係は容易に解消されず,再び同様の行為が行われる誘因となる可能性が高いと認められることに加え,本件違反行為終了後,石川県において入札制度が変更された事実はうかがえないこと,前記1(6)のとおり,本件違反行為の取りやめは,公正取引委員会が立入検査を実施したことを契機とするものであって,被審人の自発的意思によるものではないこと,79名は,隣接する地域で刑事事件が摘発されたにもかかわらず,できるだけ会合を開くのを避けて電話でやりとりをするなどの方策を講じて違反行為を継続していたこと(査第48号証,第102号証,第136号証)を総合すれば,被審人は同様の違反行為を繰り返すおそれがあると認められるから,被審人に対しては,特に排除措置を命ずる必要がある。
(3) 被審人は,原処分が行われた平成23年10月6日の時点で,再び談合行為を行うおそれはなかったと主張し,審第11号証によれば,被審人は,実質的に,代表者であった松下文雄の個人企業であったところ,同人が同年5月に死亡したため,同年7月までには受注済みの工事を完成させ,以後,会社としての業務をほぼ行わず,同年8月10日に従業員を解雇したことが認められる。
しかし,原処分が行われた時点では,被審人は石川県における入札参加資格を有していたのであるから,上記の事情をもってしても,被審人が同様の違反行為を繰り返すおそれがあったとの前記(2)の認定判断を左右するには足りない。なお,被審人が石川県に廃業届を提出したこと,解散決議をしたことは,いずれも原処分後の事情であるから,本件排除措置命令の必要性の判断に当たって考慮すべき事情とはいえない。
4 争点3(被審人の受注した本件2物件は独占禁止法第7条の2第1項所定の「当該役務」に該当するか。)
(1) 判断
ア 本件基本合意は,独占禁止法第7条の2第1項第1号所定の「役務の対価に係るもの」に当たるものであるところ,同項所定の課徴金の対象となる「当該・・・役務」とは,本件のような入札談合の場合には,本件基本合意の対象とされた工事であって,本件基本合意に基づく受注調整等の結果,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものをいうと解される(前掲最高裁判所第一小法廷平成24年2月20日判決)。
イ 前記1(1)ないし(5)において認定した事実によれば,本件2物件を含む石川県発注の特定土木一式工事全般は本件基本合意の対象となっており,かつ,本件2物件は,この基本合意に基づき,被審人が地域性や受注希望を主張して受注調整を行った結果,受注予定者となり落札して受注したものであったことが認められる。
(2) 被審人の主張について
被審人は,個別の入札において,代表者や営業担当者の名前も知らない事業者との間で受注調整を行うことはできなかったと主張する。しかし,本件基本合意においては,個別の入札において指名された者又は入札参加希望者の間で受注調整を行うものとされていたのであって,被審人を除く78名との間で受注調整を行うものとされていたわけではない。そして,被審人が受注した物件1及び物件2の入札に参加した事業者が輪島地区及び門前地区の事業者のみであったことからすると,被審人がその代表者や営業担当者の名前を知らなかったことは考え難い。さらに,前記1(2)イ(カ)及び(ク)のとおり,本件基本合意に基づく個別物件の受注調整において,受注希望者は,必ずしも他の入札参加者と連絡を取らなくても,受注予定者に決定され,他の入札参加者の協力を得て受注することができたことが認められる。以上によれば,被審人の主張は理由がない。
(3) 以上によれば,本件2物件は,本件基本合意に基づき,被審人が受注予定者となった結果,具体的な競争制限効果が発生したものといえる。よって,本件2物件は,独占禁止法第7条の2第1項所定の「当該役務」に該当し,課徴金算定の対象となる。
5 課徴金の計算の基礎となる事実
(1) 被審人が前記2の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成19年7月13日以前である(前記第3の3)。また,被審人は,平成22年7月14日,当該違反行為を取りやめており,その後,その実行としての事業活動を行っていない。(争いがない。)
したがって,被審人については,前記2の違反行為の実行としての事業活動を行った日から当該違反行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間が3年を超えることとなるため,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,実行期間は,平成19年7月14日から平成22年7月13日までの3年間となる。
(2) 被審人は,前記実行期間を通じ,資本金の額が3億円以下の会社であり,建設業に属する事業を主たる事業として営んでいた。したがって,被審人は,独占禁止法第7条の2第5項第1号に該当する事業者である。(争いがない。)
(3) 被審人の前記実行期間における売上額は,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令第6条第1項及び第2項の規定に基づき算定すると,別紙4の2物件の契約により定められた対価の額を合計した3492万6150円である。
6 被審人が納付しなければならない課徴金の額
被審人が国庫に納付しなければならない課徴金の額は,独占禁止法第7条の2第1項及び第5項の規定により,前記3492万6150円に100分の4を乗じて得た額から,同条第23項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて算出された139万円である。
第7 法令の適用
以上によれば,被審人に対し,原処分のとおり排除措置及び課徴金の納付を命ずるべきであり,被審人の本件各審判請求はいずれも理由がないから,独占禁止法第66条第2項の規定により,主文のとおり審決することが相当であると判断する。

平成25年5月31日

公正取引委員会事務総局

                 審判官  原   一 弘

                 審判官  酒 井 紀 子

審判長審判官後藤健は転任のため署名押印できない。
 
審判官  原   一 弘

※ 別紙省略。

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