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(株)フジクラに対する件

独禁法66条2項(独禁法7条の2)

平成24年(判)第42号

審判請求棄却審決(課徴金納付命令に係る審判請求棄却審決)

東京都江東区木場一丁目5番1号
被審人 株式会社フジクラ
同代表者 代表取締役 長 浜 洋 一
同代理人 弁 護 士 服 部   薫
同          井 本 吉 俊
同          小 川 聖 史
同          伊 藤 伸 明

公正取引委員会は,上記被審人に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)に基づく課徴金納付命令審判事件について,公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号。以下「規則」という。)第73条の規定により審判長審判官原一弘,審判官酒井紀子及び審判官多田尚史から提出された事件記録及び規則第75条の規定により被審人から提出された異議の申立書に基づいて,同審判官らから提出された別紙審決案を調査し,次のとおり審決する。

主       文
被審人の審判請求を棄却する。

理       由
1 当委員会の認定した事実,証拠,判断及び法令の適用は,別紙審決案別表の番号3の事業者名欄を「DOANH NGHIEP TUNHAN VIETNHAT」に改めるほかは,いずれも別紙審決案の理由第1ないし第7と同一であるから,これらを引用する。
2 よって,被審人に対し,独占禁止法第66条第2項及び規則第78条第1項の規定により,主文のとおり審決する。

平成26年6月9日

公 正 取 引 委 員 会
委員長  杉  本  和  行
委 員  小 田 切  宏  之
委 員  幕  田  英  雄
委 員  山  﨑     恒
委 員  山  本  和  史

平成24年(判)第42号

審   決   案

東京都江東区木場一丁目5番1号
被審人 株式会社フジクラ
同代表者 代表取締役 長 浜 洋 一
同代理人 弁 護 士 服 部   薫
同          井 本 吉 俊
同          小 川 聖 史
同          伊 藤 伸 明
         
上記被審人に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)に基づく課徴金納付命令審判事件について,公正取引委員会から独占禁止法第56条第1項及び公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号。以下「規則」という。)第12条第1項の規定に基づき担当審判官に指定された本職らは,審判の結果,次のとおり審決することが適当であると考え,規則第73条及び第74条の規定に基づいて本審決案を作成する。

主       文
被審人の審判請求を棄却する。

理       由
第1 審判請求の趣旨
平成24年(納)第8号課徴金納付命令のうち,2億3646万円を超えて納付を命じた部分の取消しを求める。
第2 事案の概要(当事者間に争いがない事実及び公知の事実)
 1 公正取引委員会は,被審人が,他の事業者と共同して,富士重工業株式会社(以下「富士重工業」という。)が発注する別紙記載の製品(以下「自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品」という。)であって,富士重工業が見積り合わせ(以下「コンペ」という。)を実施して受注者を選定するもの(富士重工業発注の特定自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品。以下「本件対象製品」ともいう。)について,受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,富士重工業発注の特定自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の取引分野における競争を実質的に制限していたものであり,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであるとして,平成24年1月19日,被審人を含む2社に対し,平成24年(措)第5号排除措置命令書により排除措置を命じた(以下,この処分を「本件排除措置命令」という。)。
   被審人は本件排除措置命令に対して審判を請求しなかったので,本件排除措置命令は確定した。
 2 公正取引委員会は,本件排除措置命令において認定された違反行為(以下「本件違反行為」という。)について,被審人が本件対象製品の製造業を営んでいたとして,被審人に対し,小売業又は卸売業以外の課徴金算定率(独占禁止法第7条の2第1項が不当な取引制限等に係る課徴金の額を計算するに当たって,実行期間における当該商品又は役務の売上額に乗じることとしている一定の率をいう。以下同じ。)である10パーセントを適用して,課徴金を11億8232万円と計算し,平成24年1月19日,平成24年(納)第8号課徴金納付命令書により課徴金の納付を命じた(以下,この処分を「原処分」という。)。
課徴金納付命令書の謄本は,同月20日,被審人に対し送達された。
 3 被審人は,平成24年3月19日,課徴金の額を計算するに当たって,卸売業に係る課徴金算定率である2パーセントを適用すべきであるなどと主張して,原処分のうち,2億3646万円を超えて課徴金の納付を命じた部分の取消しを求めて本件審判請求をした。
第3 前提となる事実等(本件排除措置命令において認定された事実及び当事者間に争いがない事実)
 1 被審人,矢崎総業株式会社及び古河電気工業株式会社の3社(以下「3社」という。)は,いずれも自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品を自動車メーカーに対して販売していた。
 2 富士重工業による自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の発注方法等
⑴ 富士重工業は,自社が製造する自動車に搭載される自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品を調達するに当たり,既存の車種(以下「現行車種」という。)をフルモデルチェンジするなどの場合に,フルモデルチェンジ後の車種等に搭載される自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品を対象とするコンペを実施しており,コンペにおいては,自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の種類(以下「部位」という。)ごとに受注者を選定していた。
⑵ 富士重工業は,コンペを実施するに当たり,コンペの参加者(以下「サプライヤー候補」という。)に対して,見積算出用図面等を交付し,部位ごとに,見積算出用図面に基づく見積価格,原価低減のための技術提案及び合理化案(以下,単に「技術提案」という。)並びに当該技術提案を考慮した見積価格(以下「技術提案込み見積価格」という。)の提出を求め,提出された技術提案の内容及びその実現可能性を審査した上で当該技術提案により実現する原価低減額を査定し,当該査定額を技術提案込み見積価格に反映させた価格(以下「サプライヤー選定基準値」という。)が最も低いサプライヤー候補を当該部位の受注者としていた。
⑶ 富士重工業は,受注者に対し技術者の派遣及び常駐を要請するとともに(以下,この技術者を「ゲストエンジニア」という。),試作品の製作を繰り返して量産用図面を確定し,受注者のサプライヤー選定基準値に,見積算出用図面と量産用図面の仕様差を反映させることにより,受注者に対する発注価格(以下「量産価格」という。)を決定していた。
 3 本件違反行為
3社は,遅くとも平成12年7月頃以降,本件対象製品について,量産価格の低落防止を図るため
⑴ア 受注予定者を決定する
イ 受注予定者の技術提案込み見積価格を決定し,受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に
⑵ 現行車種における受注部位,受注シェア等を勘案して,話合いにより部位ごとに受注予定者を決定する
こと等により,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにし,もって,公共の利益に反して,本件対象製品(富士重工業発注の特定自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品)の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,この行為は,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項第1号に規定する商品の対価に係るものである。
 4 課徴金の計算の基礎
⑴ 本件違反行為の実行期間
被審人が本件違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成19年2月23日以前である。また,被審人は,平成22年2月24日以降,本件違反行為を取りやめており,同月23日にその実行としての事業活動はなくなっている。
したがって,被審人については,本件違反行為の実行としての事業活動を行った日から本件違反行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間が3年を超えるため,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,実行期間は,平成19年2月24日から平成22年2月23日までの3年間となる(以下「本件実行期間」という。)。
⑵ 被審人の売上額
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(昭和52年政令第317号)第5条第1項の規定に基づき,本件実行期間における本件対象製品に係る被審人の売上額を算定すると,168億9029万7538円となる。
⑶ 課徴金減免制度による減額
被審人は,独占禁止法第7条の2第12項の規定の適用を受ける事業者である。したがって,同法第7条の2第1項の規定により計算した課徴金の額に100分の30を乗じて得た額を,当該課徴金の額から減額することとなる。
第4 本件の争点
 1 課徴金算定率(争点1)
本件違反行為に係る取引について,被審人の業種を小売業又は卸売業以外と認定して10パーセントの課徴金算定率を適用すべきか,それとも,卸売業と認定して2パーセントの課徴金算定率を適用すべきか。
 2 平等原則違反又は裁量権の逸脱の有無(争点2)
本件対象製品と同種製品に関する不当な取引制限違反事件において,同事件の違反行為者である住友電気工業株式会社(以下「住友電気工業」という。)の業種を卸売業と認定したのに,被審人の業種を小売業又は卸売業以外と認定して,異なる課徴金算定率を適用することは,平等原則違反又は裁量権の逸脱に当たるか。
第5 争点についての双方の主張
 1 争点1(課徴金算定率)について
⑴ 審査官の主張
ア 課徴金の計算の際の業種認定に当たっては,一般的には事業活動の内容が商品を第三者から購入して販売するものであっても,実質的にみて小売業又は卸売業の機能に属しない他業種の事業活動を行っていると認められる特段の事情があるときには,当該他業種と同視できる事業を行っているものとして業種の認定を行うべきであり,また,このような特段の事情の有無は,当該事案における個別具体的な事業活動の実態に即して,実質的に判断すべきである。
イ 被審人は,米沢電線株式会社(以下「米沢電線」という。)から本件対象製品を購入した上で富士重工業に販売していたが,その実態をみると,被審人が,資本関係や役員の派遣関係を通じて事業活動を支配し,又は事業活動に係る意思決定に重要な影響を与え得る地位にあった米沢電線及びその生産拠点を自己の一部門として利用して一体として本件対象製品の製造販売事業を行うとともに,自ら製品の開発に必要な技術を有し,ゲストエンジニアを富士重工業に派遣するなどして,本件対象製品の製造事業にとって必要不可欠な本件対象製品の技術提案や開発・設計活動を行い,さらには,米沢電線を含めた被審人のグループにおいて設計及び製造する自動車用ワイヤーハーネス及び同関連商品の一元的な品質保証体制を構築し,これを実施・統括していた。
このような実態に照らすと,被審人は,自らの計算において,本件対象製品の製造事業にとって必要不可欠な事業活動の一部を自身で行いつつ,残りの製造プロセスを自己の一部門として利用する子会社若しくは関係会社又は第三者に委託し,完成品を販売するという構造で対価を得ていたと評価することが妥当であるから,実質的に製造業の事業活動を行っていたと認められる特段の事情があるといえる。
ウ したがって,被審人の業種を製造業と認定した上で,10パーセントの課徴金算定率を適用すべきである。
⑵ 被審人の主張
ア 審査官の主張のうち,アは争わないが,イ及びウは争う。
被審人は,本件対象製品を米沢電線から購入して富士重工業に対して販売しているところ,後記イないしカのとおり,実質的にみて小売業又は卸売業の機能に属しない他業種の事業活動を行っていると認められる特段の事情はない。
上記特段の事情が認められるのは,当該事業者が主体的,積極的に行う販売と一体となった事業活動(付随するサービスを含む。)において,実質的に製造業の本来的機能を発揮しているなど特別な場合にすぎないと解すべきであるが,被審人の本件対象製品に関する事業活動についてみても,そのような特別な場合には当たらない。
したがって,課徴金の計算に当たっては,原則どおり,被審人の業種を卸売業と認定した上で,2パーセントの課徴金算定率を適用すべきである。
イ 本件対象製品については,富士重工業が作成した図面に基づき,米沢電線が,製造図面を作成した上で,自主的,独立的に製造しており,被審人は製造には一切関与していない。被審人は,富士重工業から受領した図面を米沢電線に提供するなどしているが,単なる窓口的な役割を果たしているにすぎず,これは正に卸売業としての事業活動にほかならない。
また,米沢電線の海外製造拠点に対する指示その他の製造管理は,全て米沢電線が行っており,被審人は一切関与していない。
ウ 被審人は,受注者選定の見積回答時や量産後の段階において技術提案を行っているが,それは,米沢電線からの技術提案をそのまま窓口として富士重工業に伝えているものや,本件対象製品を扱う卸売業者であれば当然持っている製品知識やデリバリーに関連するものにすぎず,被審人が本件対象製品の開発・設計を行っていると評価し得るようなものではない。
エ 被審人が富士重工業に対して派遣しているゲストエンジニアは,富士重工業の開発担当者が決定及び指示した内容を,そのとおりに図面化するという単純かつ補助的な作業をしているにすぎず,何ら高度な技術的専門性を有するものではない。また,上記ゲストエンジニアが,富士重工業に対して開発工程や量産以降に行っている技術提案は,大半が富士重工業から確認を求められた事項について,富士重工業の資料を参照すれば誰でも回答できるものを整理したり,米沢電線のアイディアを取り次いだりしているものにすぎない。
オ 本件対象製品の品質保証については,設計に関するものは含まれず,製造に関するもののみが対象とされているところ,被審人は製造に関わっていないことから,本件対象製品の不具合が発生した場合には,米沢電線の品質保証部が調査,是正処置等を行っており,富士重工業に対して提出する報告書も米沢電線が作成している。
カ 以上によれば,本件対象製品の開発,設計,製造及び品質保証の各場面において,被審人は,卸売業の範囲内で事業活動をしているにすぎず,本件対象製品に関して製造業の本来的機能を発揮したり,製造業と同視され得るような事業活動を行ったりしたことはない。
また,米沢電線による本件対象製品の製造について,これを自らの事業活動の一部門として行っていたものと同視し得るような被審人の主体的,積極的関与や実行を認め得る事情は一切ない。
 2 争点2(平等原則違反又は裁量権の逸脱の有無)について
  ⑴ 被審人の主張
本件違反行為と同時期に行われた同種製品に関するカルテル事件の違反行為者である住友電気工業に対する課徴金納付命令においては,同社の業種が卸売業と認定されているが,業種認定に当たって考慮すべき事情は住友電気工業と被審人とで実質的に差があるとは到底考えられないから,被審人の業種を小売業又は卸売業以外と認定したことは,平等原則違反又は裁量権の逸脱に当たる。
  ⑵ 審査官の主張
本件においては,前記1⑴のとおり,被審人の業種を製造業と認定すべき特段の事情があることを理由に10パーセントの課徴金算定率を適用したのであって,これは,独占禁止法第7条の2第1項の正しい解釈に基づくものである。したがって,平等原則違反又は裁量権の逸脱の有無を論じるまでもなく,原処分は適法である。
なお,被審人は,被審人と住友電気工業とは同じような状況にあると主張するが,そのような事実は認められないから,被審人の主張は前提を欠く。
第6 審判官の判断
 1 争点1(課徴金算定率)について
  ⑴ 課徴金の計算における業種の認定について
   独占禁止法第7条の2第1項が小売業又は卸売業について例外的に軽減した課徴金算定率を規定したのは,小売業や卸売業の事業活動の性質上,売上高営業利益率が小さくなっている実態を考慮したためであるから,課徴金の計算に当たっては,一般的には事業活動の内容が商品を第三者から購入して販売するものであっても,実質的にみて小売業又は卸売業の機能に属しない他業種の事業活動を行っていると認められる特段の事情(以下,単に「特段の事情」という。)があるときには,当該他業種と同視できる事業を行っているものとして業種の認定を行うべきである(東京高等裁判所平成18年2月24日判決・公正取引委員会審決集第52巻744頁〔東燃ゼネラル石油株式会社による審決取消請求事件〕参照)。
被審人は,形式的には米沢電線から購入した本件対象製品を富士重工業に販売していたものであるから,本件対象製品に係る取引について特段の事情があるか否か検討する。
⑵ 認定事実(当事者間に争いがないか又は末尾記載の証拠により認定できる事実)
ア 富士重工業における自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の調達方法
(ア) 富士重工業は,コンペを実施してサプライヤー候補を選定する際には,本件対象製品について富士重工業の品質基準を満たす技術力(品質保証能力),当該品質基準を満たす製品を遅滞なく供給できる能力(供給能力),技術提案により富士重工業が設定する目標価格を達成する能力(目標価格達成能力)及びゲストエンジニアを派遣して富士重工業と共同して本件対象製品の開発を進めていく能力(技術開発能力)を考慮していたが,取り分け,目標価格達成能力及び技術開発能力を重視していた。(査第1号証,第2号証,第4号証,第5号証)
そして,富士重工業は,前記第3の2⑵のとおり,サプライヤー候補から提出された技術提案により実現する原価低減額を査定し,サプライヤー選定基準値が最も低いサプライヤー候補を受注者としていた。
(イ) 富士重工業は,本件対象製品の受注者を選定した後,コンペの対象となった開発対象車種(以下「対象車種」という。)の量産開始に向け,約2年間,試作品の製作を繰り返して本件対象製品の量産のための開発・設計(以下「量産開発」という。)を行い,対象車種に搭載される本件対象製品の図面(以下「量産図面」という。)を確定していた。
富士重工業は,この量産開発の過程において,受注者に対し,ゲストエンジニアの派遣及び常駐を要請していた。
(ウ) 富士重工業は,量産開発の進展に伴い,本件対象製品の設計変更により新たな図面が作成されるたびに,受注者に対して,当該図面を交付して,当該図面に基づく見積価格及び同見積価格の明細書の提出を求め,これらの内容を査定し,自社の見込んだ価格と差がある場合には受注者と協議するなどしており,最終的には,受注者選定の基礎となったサプライヤー選定基準値に,コンペの際に交付した見積算出用図面と最終的に確定した量産図面の仕様差を反映させることにより,受注者に対する発注価格(量産価格)を決定していた。
イ 被審人と富士重工業との取引関係
被審人は,富士重工業との間で,本件対象製品の取引に関して,次の規定を含む取引基本契約を締結していた。
(ア) 被審人は,富士重工業が指定する仕様に合致する納入部品を製造し,納入しなければならない。
(イ) 被審人は,納入部品が富士重工業の指定する仕様に合致していることを保証し,納入部品の品質維持のために,品質保証体制を確立する。
(ウ) 被審人は,納入部品の品質管理に関する事項について,富士重工業が定める品質に関する基準を遵守しなければならない。
(エ) 被審人は,納入部品に瑕疵があったときは,富士重工業の選択に従い,代品の納入,瑕疵の補修,代金の返却その他富士重工業が指定する措置を採る。
(オ) 富士重工業が納入部品の欠陥を理由として製造物責任法上の賠償責任を負担することとなった場合には,富士重工業は,原則としてその費用を被審人に対し求償し,被審人はこれに応じるものとする。
(カ) 被審人は,納入部品を富士重工業が指定した納期及び場所に納入しなければならない。
(キ) 被審人と富士重工業は,納入部品に関わる開発,研究,設計を互いに協力して行い,新技術の開発に努めるものとする。
(ク) 被審人が納入部品の製造に当たって第三者を利用する場合には,富士重工業の事前の承認を得なければならず,また,被審人が取引基本契約で負うべき義務と同一内容の義務を第三者に負わせ,第三者の行為にかかるゆえをもって被審人が取引基本契約上の責任を免れることはできない。
ウ 被審人の生産拠点
被審人は,本件対象製品全ての製造を米沢電線に委託し,同社又は同社が製造を再委託した国内外の事業者が製造した本件対象製品を全て米沢電線から購入した上で富士重工業に販売していた。
(ア) 米沢電線
a 被審人は,本件実行期間中,米沢電線の株式の92.83パーセントを保有しており,同社の代表取締役は,被審人からの転籍者であった。また,本件実行期間のうち,平成21年6月5日から同年9月30日まで及び同年12月21日から平成22年2月23日までを除き,米沢電線の役員の半数以上は被審人からの出向者,転籍者又は兼任者であった。
b 被審人は,米沢電線との間で,①本件対象製品の製造販売事業に関して,被審人が製品の開発,設計及び販売を,米沢電線が製造をそれぞれ分担し,被審人及び米沢電線の海外の生産拠点に対して,被審人は,開発,設計及び販売の支援を,米沢電線は製造技術,品質改善及びコスト改善の支援をそれぞれ行うこと,②被審人からの米沢電線に対する発注金額は,被審人が顧客から受注した金額に,あらかじめ決めておいた一定の仕切り率を乗じた金額(仕切価格)とし,被審人の顧客に対する販売価格が変更された場合は,変更後の価格を基準に仕切価格を変更すること,③被審人は,米沢電線に対し,要求する品質を仕様書,図面等の文書により提示し,米沢電線がこれに疑義がある場合又は変更を希望する場合は,被審人に速やかに申し出て,被審人の指示を受けるものとすること,④米沢電線は,本件対象製品について,被審人の要求に合わせた適正な品質と信頼性を確保することを保証し,本件対象製品の生産設備,生産方式,材料及び外注先の変更を行う場合は,事前に被審人の承諾を得ることなどについて,取決めをしていた。(査第19号証ないし第21号証,第23号証)
c 米沢電線の本件実行期間中における本件対象製品を含む自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の取引先は被審人のみであった。(査第13号証)
(イ) 米沢電線以外の生産拠点
a 被審人は,米沢電線以外にも別表記載の生産拠点を有しており,その株式保有比率及び役員関係は別表の各欄記載のとおりである。
b 前記aの生産拠点は,本件実行期間中,米沢電線から委託を受けて本件対象製品を製造し,その全てを米沢電線に販売していた。
c 前記aの生産拠点のうち,珠海藤倉電装有限公司を除く7社の本件実行期間中における本件対象製品を含む自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の取引先は米沢電線のみであった(別表「本件対象製品を含む自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品について米沢電線のみと取引していた期間」欄参照)。(査第13号証)
エ 本件対象製品に関する被審人の事業活動
(ア) 営業
被審人は,富士重工業に対し,本件対象製品の販売促進活動,見積価格の検討や提出等のコンペ対応,販売価格の交渉等を行っていた。
(イ) 開発・設計
a 先行開発からコンペによる受注者決定に至るまでの段階
被審人は,自社の自動車電装事業部電装品技術部において,富士重工業に提案すべき技術の開発を行うとともに,コンペに際して,富士重工業から提示される見積算出用図面に基づき,富士重工業に提案すべき技術提案の内容等を検討していた。被審人は,このような検討や社内の決裁を経た上で,見積価格及び技術提案込み見積価格並びに技術提案を,富士重工業に提出していた。(査第8号証)
b 受注者決定後の量産開発の段階
被審人は,本件対象製品の受注が決定した後,富士重工業の要請に従い,自社の自動車電装事業部電装品技術部太田技術センターに所属する技術者をゲストエンジニアとして,富士重工業に常時5名ないし8名程度派遣し,常駐させていた。(査第8号証)
上記ゲストエンジニアは,次のとおり,富士重工業の技術者と共同して本件対象製品の開発・設計を行っていた。(査第2号証,第7号証ないし第9号証,第13号証,第30号証)
(a) 富士重工業は,ゲストエンジニアに対し,見積算出用図面を基にして,自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の形状,寸法,コネクターの種類,電線の種類,外装の種類等についての要求仕様を提示する。
(b) ゲストエンジニアは,前記(a)の要求仕様の提示を受けて,電線の分岐の方向や位置,自動車用ワイヤーハーネス同士を接続するジョイントの位置,プロテクターと呼ばれる保護材等の自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品に採用する部材についての新規品の開発を含めた材質・形状の評価及び選定,ジョイントボックス及びメインヒューズボックスの形状,レイアウト,回路の機能の分配等について,自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の製造に関するノウハウをいかして具体的に検討し,要求仕様を満たすように量産図面を作成する。
(c) ゲストエンジニアは,前記(b)の量産図面に基づき,仮の原価(コスト)計算を行い,その結果が,富士重工業がコンペの際に目標として設定していた原価を上回る場合には,その目標の範囲内に収まるようにするための技術提案を行い,富士重工業の了承が得られれば,当該技術提案による変更を量産図面に組み入れる。
(d) 量産図面に基づいて製造された試作品に不具合がある場合には,その解決方法について,富士重工業の設計担当者とゲストエンジニアが協議し,その結果,変更することとなった点を反映させて量産図面を改訂する。
c 量産段階
前記bのゲストエンジニアは,対象車種の量産開始後も,対象車種のマイナーチェンジ等に伴う自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の仕様変更に備え,富士重工業に常駐し,富士重工業の設計担当者と共同して,当該仕様変更に必要な開発及び検討を行っていた。(査第7号証,第8号証)
(ウ) 品質保証
被審人は,自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品を顧客の要求に適合する品質で提供するための品質システムについて明確にすることを目的として,米沢電線を含めた被審人のグループで扱う自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の設計及び製造に適用する「自動車電装事業部品質マニュアル」を作成し,新製品の設計,試作,量産試作,監督,量産体制までの品質の作り込みの手順と各ステップにおける各部門の役割を明確にするとともに,被審人の自動車電装事業部長を品質管理に関わる統括責任者と位置付けて,米沢電線を含む被審人のグループにおいて設計及び製造する自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の品質保証体制を構築し,実施していた。(査第12号証,第27号証,第28号証)
⑶ 事実認定の補足説明
被審人は,前記⑵エ(イ)(本件対象製品の開発・設計)に関し,被審人が行う技術提案は,製造業に要求される高度の技術力に基づくものではないし,また,被審人の派遣したゲストエンジニアの業務は単純作業であり,設計図面作成の補助をしているにすぎないから,本件対象製品の開発・設計を行っていたとはいえない旨主張する。
しかし,被審人の自動車電装事業部長菅生正人(以下「菅生」という。)は,「自動車用ワイヤーハーネスは技術提案を行う余地が大きい部品であり,自動車メーカーに対してどのような技術提案ができるか,また,先行的な取組を行うことができるかが重要であること,高度の専門性を必要とするため,フジクラの教育をしっかりと受けた者でなければ任せられないこと等の事情から,自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の設計及び研究開発は被審人において行っている」旨,また,「ゲストエンジニアは,受注後量産開始までの段階において設計開発を行うことを前提に富士重工業に常駐している」旨それぞれ供述していること(査第8号証)などからすれば,前記⑵エ(イ)のとおり,被審人において,本件対象製品の開発を行うとともに,被審人の派遣したゲストエンジニアが富士重工業に常駐して,富士重工業の技術者と共同して本件対象製品の開発・設計を行っていたことが認められる。
なお,菅生は,上記供述の後に作成した陳述書(審第13号証)において,上記供述は,マツダ株式会社向けの自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品を念頭に置いてしたものであり,富士重工業向けである本件対象製品にそのまま当てはまるものではないなどと供述する。
しかし,査第8号証における菅生の供述をみれば,本件対象製品について供述していることが明らかである。また,その供述内容が富士重工業の関係者の供述(査第1号証,第2号証,第7号証,第30号証)や報告命令に対する被審人の報告(査第13号証)とも符合していることなどにも照らせば,査第8号証における菅生の供述の信用性は高く,これに反する審第13号証における同人の供述は信用できない。
⑷ 検討
ア 前記⑵の認定事実によれば,被審人は,本件対象製品のコンペの際に,自ら技術提案の内容や見積価格等を検討し,その結果を富士重工業に対して提出していたこと,本件対象製品を受注することが決定した後には,自社の技術者をゲストエンジニアとして派遣していたこと,上記ゲストエンジニアは,富士重工業の技術者と共同して本件対象製品の開発・設計を行い,量産図面を作成していたことなどが認められ,被審人自らが,本件対象製品の製造に不可欠な開発・設計に関する事業活動を行っていたといえる。
イ(ア) 被審人は,本件対象製品の製造そのものについては米沢電線に委託していたが,米沢電線の支配的な株主として,本件対象製品の製造等を含む米沢電線の事業に関する意思決定に関し主導的立場で関与し得るとともに,同社に生じた利益が実質的に帰属する地位にあったと認められる。さらに,米沢電線は,被審人から委託を受けた製品に関しては,その要求する品質を確保すべきとされているところ,本件対象製品については,被審人の派遣したゲストエンジニアと富士重工業の技術者において作成した量産図面に従って自ら製造し,又は,別表記載の生産拠点に製造を委託していたものである。その上,製品の販売価格を決める際には,利益や製造費用等を勘案し,販売先と交渉するのが通常であるのに,米沢電線の被審人に対する本件対象製品の販売価格については,富士重工業の被審人に対する発注金額を前提に,あらかじめ決めておいた仕切り率を乗じた額とされていたのであるから,米沢電線には,本件対象製品の販売価格について,個別又は具体的に決定する権限が無かったことが認められる。これらの事情からすれば,本件対象製品の製造及び販売に関して,米沢電線の独立性は認め難く,被審人の一部門ということができる。
(イ) 米沢電線は,自ら本件対象製品を製造するほか,別表記載の生産拠点に本件対象製品の製造を委託していたが,被審人及び米沢電線と当該生産拠点とは,別表記載のとおり,番号3及び7を除く6社と資本関係及び役員の派遣関係を有していたこと,番号1を除く7社の本件実行期間中における本件対象製品を含む自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品の取引先が米沢電線のみであったこと,被審人は番号1ないし4の生産拠点に対して開発・設計等の支援を行い,米沢電線は製造技術等の支援を行うとされていたこと(前記⑵ウ(ア)b①)が認められるのであって,これらの事情を踏まえれば,別表記載の生産拠点についても,米沢電線と同様に被審人の一部門ということができる(なお,別表記載の事業者が被審人の生産拠点であることについて,被審人は争っておらず,査第8号証その他の関係証拠によっても明らかである。)。
ウ 以上に加え,被審人が米沢電線を含む被審人のグループで製造する自動車用ワイヤーハーネス及び同関連製品に関して,被審人の自動車電装事業部長を統括責任者とする一元的な品質保証体制を構築していることも併せ考慮して,被審人の本件対象製品に関する事業活動の実態をみれば,被審人が自ら及び自らの一部門である米沢電線等の生産拠点において本件対象製品の製造事業を行っていたといえるから,特段の事情が存在すると認めることができる。
⑸ 被審人の主張について
ア 被審人は,米沢電線には有力な少数株主がおり,その意向等を重視していたのであるから,米沢電線の経営に関しては,独立性及び公正性が確保されている旨主張する。
しかし,仮に,被審人の主張する有力な少数株主がいたとしても,被審人が米沢電線の9割以上の株式を保有する支配的な株主であることは否定できず,米沢電線における事業に関する意思決定に主導的立場で関与し得るとともに,米沢電線に生じた利益が実質的に帰属する地位にあったといえることは明らかである。
したがって,被審人の主張する上記事情を考慮しても,本件対象製品の製造及び販売に関して米沢電線の独立性を認めることはできない。
イ 被審人は,被審人が富士重工業との関係で本件対象製品の品質保証責任を負うのは売主として当然であるし,実際には,米沢電線が品質保証に関する対応を行っていた旨主張する。
しかし,被審人は,富士重工業に対して負う本件対象製品の品質保証責任(なお,設計に関するものは除かれている。査第27号証)に関して,前記⑵エ(ウ)のとおり,一元的な体制を構築して対応することとしていたのであるから,米沢電線が何らかの対応をしていたとしても,被審人の一部門として行っていたものと評価することができる。
⑹ 結論
以上によれば,本件対象製品に係る取引について特段の事情があると認められることから,被審人に対する課徴金の計算に当たっては,被審人が小売業又は卸売業以外の業種に係る事業活動を行っているものとして,10パーセントの課徴金算定率を適用すべきこととなる。
 2 争点2(平等原則違反又は裁量権の逸脱の有無)について
本件で問題となっているのは,被審人に対する課徴金の計算に当たり,被審人の業種を小売業又は卸売業以外と認定した原処分の当否であって,これは,被審人の本件対象製品に関する事業活動の実態に即して,個別に判断されるべきものであり,別事件における他の事業者に対する業種認定を考慮して判断すべきものではない。したがって,本件とは関係がない住友電気工業の業種認定を理由に原処分が平等原則に違反する,又は,裁量権の逸脱に当たるとの被審人の主張は失当である。
 3 被審人が納付すべき課徴金の額
以上を前提にすると,被審人が国庫に納付すべき課徴金の額は,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,被審人の本件実行期間における本件対象製品の売上額である168億9029万7538円(前記第3の4⑵)に,100分の10(小売業又は卸売業以外の業種に係る課徴金算定率)を乗じて得た額から,同条第12項の規定により同額に100分の30を乗じて得た額を減額し(前記第3の4⑶),同条第23項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて算出した11億8232万円となる。
第7 法令の適用
以上によれば,原処分は適法かつ相当であり,被審人の本件審判請求は理由がないから,独占禁止法第66条第2項の規定により,主文のとおり審決することが相当であると判断する。

平成26年3月31日

公正取引委員会事務総局

審判長審判官  原   一 弘

審判官  酒 井 紀 子

審判官  多 田 尚 史

※ 別紙省略。

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