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(株)生田組に対する件

独禁法66条2項(独禁法7条の2)

平成25年(判)第10号

審判請求棄却審決(課徴金納付命令に係る審判請求棄却審決)

高知県高岡郡四万十町古市町7番34号
被審人 株式会社生田組
同代表者 代表取締役 生 田 嗣 夫
同代理人 弁 護 士 南     正

公正取引委員会は,上記被審人に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)に基づく課徴金納付命令審判事件について,公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号。以下「規則」という。)第73条の規定により審判長審判官伊藤繁,審判官西川康一及び審判官數間薫から提出された事件記録及び規則第75条の規定により被審人から提出された異議の申立書に基づいて,同審判官らから提出された別紙審決案を調査し,次のとおり審決する。

主       文
被審人の審判請求を棄却する。

理       由
1 当委員会の認定した事実,証拠,判断及び法令の適用は,いずれも別紙審決案の理由第1ないし第8と同一であるから,これらを引用する。
2 よって,被審人に対し,独占禁止法第66条第2項及び規則第78条第1項の規定により,主文のとおり審決する。

平成26年12月10日

公 正 取 引 委 員 会
委員長  杉  本  和  行
委 員  小 田 切  宏  之
委 員  幕  田  英  雄
委 員  山  﨑     恒
委 員  山  本  和  史

平成25年(判)第10号

審   決   案

高知県高岡郡四万十町古市町7番34号
被審人 株式会社生田組
同代表者 代表取締役 生 田 嗣 夫
同代理人 弁 護 士 南     正

上記被審人に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)に基づく課徴金納付命令審判事件について,公正取引委員会から独占禁止法第56条第1項及び公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号。以下「規則」という。)第12条第1項の規定に基づき担当審判官に指定された本職らは,審判の結果,次のとおり審決することが適当であると考え,規則第73条及び第74条の規定に基づいて本審決案を作成する。

主       文
被審人の審判請求を棄却する。

理       由
第1 審判請求の趣旨
平成24年(納)第56号課徴金納付命令のうち744万円を超えて納付を命じた部分の取消しを求める。
第2 事案の概要(当事者間に争いのない事実及び公知の事実)
1 排除措置命令(平成24年(措)第10号)
公正取引委員会は,被審人を含む別紙1の表1の(1)記載の23名及び表2記載の4名の27名が,共同して,別紙2記載の工事(以下「高知河川国道事務所発注の特定一般土木工事」という。)について,受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,高知河川国道事務所発注の特定一般土木工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,この行為は,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,特に排除措置を命ずる必要があるとして,平成24年10月17日,被審人を含む別紙1の表1記載の24名に対して,排除措置を命じた(以下,この処分を「本件排除措置命令」といい,同命令において認定された違反行為を「本件違反行為」という。)。
2 課徴金納付命令(平成24年(納)第56号)
公正取引委員会は,本件違反行為は独占禁止法第7条の2第1項第1号に規定する役務の対価に係るものであるとして,平成24年10月17日,被審人に対して,1423万円の課徴金の納付を命じた(以下,この処分を「原処分」という。)。原処分の命令書謄本は,同月18日,被審人に対して送達された。
3 本件排除措置命令の確定
被審人は,本件排除措置命令に対し,独占禁止法第49条第6項の規定による審判請求をしなかったので,被審人に対する同命令は確定した。
4 審判請求
被審人は,原処分において課徴金算定の対象とされた四国地方整備局高知河川国道事務所(以下「高知河川国道事務所」という。)発注の別紙3記載の各工事のうち「番号」欄1記載の工事(以下「本件工事」という。)の入札において受注調整をした事実はないとして,平成24年12月11日,原処分の一部の取消しを求めて審判請求をした。そして,被審人が平成25年4月24日に審判請求の趣旨の変更を行った結果,審判請求の趣旨は前記第1記載のとおりとなった。
第3 前提となる事実(末尾に括弧書きで証拠を掲記した事実は当該証拠から認定される事実であり,その余の事実は当事者間に争いのない事実又は本件排除措置命令において認定された事実である。)
1 被審人の概要
被審人は,肩書地に本店を置き,建設業法(昭和24年法律第100号)の規定に基づき高知県知事の許可を受け,建設業を営む者である。(査第25号証)
2 高知河川国道事務所の一般土木工事の発注方法等
(1) 国土交通省は,四国地方整備局において,同局が所掌することとされている工事の競争入札に参加する者又は経常建設共同企業体に必要な資格(以下「参加資格」という。)を定め,原則として2年ごとに,工事種別ごとに参加資格を有する者又は経常建設共同企業体(以下「有資格者」という。)を決定し,一般土木工事について予定価格の区分に対応する当該有資格者の等級を決定していた。この等級には,上位のものから順にA,B,C及びDがあった(以下,このうちCの等級に格付された有資格者を「C等級業者」という。)。
(2) 国土交通省は,高知河川国道事務所において,平成20年4月1日から平成23年12月5日までの間,高知河川国道事務所発注の特定一般土木工事の全てについて,次のとおり,総合評価落札方式による一般競争入札を実施していた。
ア 一般競争入札にあっては,高知県内又は高知県内の特定の地域に本店(経常建設共同企業体にあっては,代表者及び構成員の本店)を有するC等級業者(平成20年8月15日から平成22年6月30日までの間にあっては,Bの等級に格付されていた別紙1の表2の「番号」欄27記載の事業者〔以下「竹内建設」という。〕を含む。以下同じ。)のみを対象に,公告により所定の資格条件を付して入札の参加希望者を募り,参加の申込みを行わせた上で,参加希望者のうち,資格条件を満たしていると認められた有資格者を当該入札の参加者としていた。
イ 総合評価落札方式にあっては,高知河川国道事務所が,入札参加希望者から入札の参加申込みの際に提出された資料に基づき,各入札における入札書の提出締切日前までに,各入札参加者について,その技術提案,技術者及び企業の各項目につき評価した上での点数(以下「評価点」という。)を決定していた。その上で,入札価格が予定価格の制限の範囲内であるなどの一定の要件を満たした入札参加者について,評価点に加え,要求要件を満足する技術提案について与えられる点数である基礎点(標準点)及び品質確保のための体制その他の施工体制の確保状況を評価基準に基づき評価し与えられる点数である施工体制評価点を勘案した点数を算出し,原則として,当該点数を各入札参加者の入札価格(入札価格を億単位に換算した数値)で除した値(評価値)の最も高い入札参加者を落札者としていた。
入札参加者の名称及び評価点,予定価格等は,入札書の提出締切日までに公表されることはなく,高知河川国道事務所において限られた職員しか知り得ないものとなっていた。
(3) 被審人は,平成20年4月1日から平成23年12月5日までの間,C等級業者であった。(査第19号証)
3 未公表情報の教示
高知河川国道事務所の副所長は,遅くとも平成20年4月1日以降,高知河川国道事務所発注の特定一般土木工事について,別紙1の表1の(1)の「番号」欄1記載の事業者(以下「ミタニ建設工業」という。)の代表取締役社主三谷一彦(以下「ミタニ建設工業の三谷社主」という。)の求めに応じ,同人に対し,各入札における入札書の提出締切日前に,入札参加者の名称及び評価点,予定価格等の未公表情報を教示していた。(査第4号証,第5号証,第8号証,永吉順吉参考人審尋速記録)
4 本件違反行為
被審人を含む別紙1の表1の(1)記載の23名及び表2記載の4名の27名のC等級業者(以下「27名」という。)は,遅くとも平成20年4月1日以降(別紙1の表1の(1)の「番号」欄14記載の事業者にあっては,遅くとも平成22年9月2日以降),高知河川国道事務所発注の特定一般土木工事について,受注価格の低落防止等を図るため
(1)ア 受注予定者を決定する
イ 受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意(以下「本件基本合意」という。)の下に
(2)ア 受注予定者を決定するに当たっては,ミタニ建設工業,別紙1の表1の(1)の「番号」欄2記載の事業者(以下「入交建設」という。)及び同5記載の事業者(以下「轟組」という。)の3社(以下「3社」という。)が,各工事の施工場所,過去に受注した工事との継続性,過去の受注実績,各事業者の受注の希望状況等を勘案して指定した者を受注予定者とする
イ 受注すべき価格を決定するに当たっては,受注予定者が,前記3の未公表情報を利用し,又は3社から当該未公表情報を利用した指導を受けて,受注すべき価格を定める
ウ 受注予定者以外の者は,3社若しくは受注予定者から連絡を受けた価格で入札する又は入札を辞退する
などにより,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
5 27名は,前記4により,高知河川国道事務所発注の特定一般土木工事のほとんど全てを受注していた。
6 被審人による本件違反行為の取りやめ
公正取引委員会が,平成23年12月6日,本件について,独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行ったところ,同日以降,被審人は,本件違反行為を取りやめている。
7 本件工事について
(1) 本件工事は,高知河川国道事務所発注の特定一般土木工事に該当するものである。
(2) 本件工事は,平成21年2月19日を入札書の提出締切日とするものであって,被審人,竹内建設,ミタニ建設工業並びに別紙1の表1の(1)の「番号」欄4及び15記載の各事業者(以下,順に「四国開発」,「クロシオ建設」という。)の5社が入札に参加した。
ミタニ建設工業,四国開発及びクロシオ建設が予定価格(1億4404万円)を超える価格でそれぞれ入札し,竹内建設が1億3200万円で入札し,被審人が1億2500万円(予定価格の86.8パーセントの金額)で入札した結果,被審人が本件工事を落札した。
(査第3号証,第18号証,第22号証)
(3) 被審人は,平成21年2月26日,高知河川国道事務所との間で,請負代金を前記(2)の落札額である1億2500万円に消費税相当分を加算した金額である1億3125万円として本件工事の請負契約を締結した。そして,被審人と高知河川国道事務所との間で,平成22年3月25日までに当該請負契約の請負金額等の変更が行われ,最終的な請負金額は1億6964万8500円となった。(査第18号証,第25号証,審第4号証ないし第7号証)
第4 本件の争点
本件の争点は,本件工事が独占禁止法第7条の2第1項所定の「当該・・・役務」に該当するものとして,課徴金の算定の対象となるか否かである。
第5 争点についての双方の主張
1 審査官の主張
(1) 独占禁止法第7条の2第1項にいう「当該・・・役務」とは,本件のような入札談合事案の場合には,基本合意の対象とされた工事であって,基本合意に基づく受注調整等の結果,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものをいうと解される(最高裁判所第一小法廷平成24年2月20日判決・民集第66巻第2号796頁〔株式会社新井組ほか3名による審決取消請求事件〕)。
(2) 本件工事は,次のとおり,独占禁止法第7条の2第1項所定の「当該・・・役務」に該当するから,課徴金の算定の対象となる。
ア 被審人の代表取締役生田嗣夫(以下「被審人の生田」という。)は,本件工事の入札が公告された平成21年1月頃,入交建設の代表取締役三谷斉(以下「入交建設の三谷」という。)及びミタニ建設工業の三谷社主に対し,本件工事の受注を希望する旨をそれぞれ連絡した。3社は,被審人からの受注希望等を踏まえ,被審人を本件工事の受注予定者に指定することとし,被審人に対しその旨を伝えた。
イ その後,被審人の生田は,入交建設の三谷に対して電話を掛けた際,同人に対し,本件工事の入札に竹内建設が参加しているかを尋ねたところ,同人がこれを肯定したため,同人に対し,竹内建設との間では受注調整を行わないよう求めた。そのため,3社は,被審人の意向に従い,竹内建設との間では受注調整を行わず,それ以外の入札参加者との間で受注調整を行うこととした。
ウ そこで,ミタニ建設工業の常務取締役永吉順吉(以下「ミタニ建設工業の永吉」という。)は,被審人の営業部長武吉義光(以下「被審人の武吉」という。)に対し,前記第3の3記載の方法により入手した本件工事の入札参加者の名称及び評価点を連絡するとともに,本件工事の入札参加者である四国開発に対し予定価格を超える価格を入札価格とすることを指示し,ミタニ建設工業自身も予定価格を超える価格を自社の入札価格とし,被審人が本件工事を受注できるよう協力することとした。
なお,ミタニ建設工業の永吉は,本件工事の入札参加者のうちクロシオ建設については,同社の評価点が他の入札参加者の評価点と比較して著しく低かったため,同社に対し入札すべき価格を連絡しなくても被審人が予定どおり受注できると判断し,その連絡をしなかった。
エ 本件工事の入札結果は,前記第3の7(2)のとおりであり,ミタニ建設工業,四国開発及びクロシオ建設が予定価格を超える価格でそれぞれ入札し,もって,被審人が本件工事を受注できるよう協力するなどした結果,受注予定者である被審人が本件工事を落札した。
オ したがって,本件工事においては,本件基本合意に基づく受注調整の結果,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものであるから,本件工事は,独占禁止法第7条の2第1項所定の「当該・・・役務」に該当する。
なお,本件工事の入札においては竹内建設との間では受注調整が行われていないが,それ以外の入札参加者との間では本件基本合意に基づく受注調整が行われているのであって,公正な競争に参加する者が少なくなっているから,受注予定者である被審人と竹内建設とが価格競争を行ったとしても,それによって,既に発生した競争制限効果を消滅させることにはならない。
2 被審人の主張
(1) 平成21年当時,竹内建設は,地域性や継続性等を無視し,積極的に国土交通省発注の公共工事の入札に参加していた。そのため,被審人の生田は,竹内建設を強く嫌忌しており,本件工事の入札にも竹内建設が参加しているのではないかと懸念して,入交建設の三谷に確認したところ,同人がこれを肯定したことから,同人に対し,本件工事の入札に関して一切受注調整を行わないよう申し入れ,同人もこれを承諾した。したがって,本件工事の入札において,受注調整は一切行われていない。
(2) また,本件では次の事実があるから,本件工事の入札において受注調整が行われていないことは明らかである。
ア 被審人が竹内建設を除く他の入札参加者との間での受注調整を希望又は容認していたのであれば,3社から予定価格や他の入札参加者の名称及び評価点を聞くか又は教えられるはずであるが,被審人は,3社からこれらの事項を一切聞いていないし,教えられてもいない。
イ 被審人は,本件工事の入札に関し,他の入札参加者に対して連絡や働きかけをしていない。
ウ クロシオ建設は,本件工事の入札に関して3社から何の連絡も受けていない。
エ 被審人の入札価格は赤字を覚悟で設定した価格であり,実際にも赤字になっている。
(3) 仮に他の入札参加者との間で被審人が落札するように受注調整が行われたとしても,被審人は,入交建設の三谷に対し,本件工事の入札に関して一切受注調整を行わないよう申し入れ,同人がこれを承諾したことにより,一切の受注調整が排除されたものと認識して本件工事の入札に参加したのであり,被審人が関与して受注調整が行われたわけではない。
(4) したがって,本件工事は,独占禁止法第7条の2第1項所定の「当該・・・役務」に該当しないから,課徴金の算定の対象とはならない。
第6 審判官の判断
1 当該役務について
本件基本合意は,独占禁止法第7条の2第1項第1号所定の「役務の対価に係るもの」に当たるものであるところ,同項所定の課徴金の対象となる「当該・・・役務」とは,本件のような入札談合事案の場合には,基本合意の対象とされた工事であって,基本合意に基づく受注調整等の結果,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものをいうと解される(前掲最高裁判所平成24年2月20日判決参照)。
2 認定事実
前記第3の事実及び証拠(括弧書きで掲記)によれば,以下の事実が認められる。
(1) 被審人及び3社を含む27名は,前記第3の4のとおり,高知河川国道事務所発注の特定一般土木工事について,本件基本合意の下,同(2)アないしウなどにより,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
具体的には,次のとおりである。
ア 27名のうち工事の受注を希望する事業者は,通常,当該工事の発注見通しが公表された時点又は入札の公告が行われた時点で,3社(具体的にはミタニ建設工業の三谷社主及び同社の永吉,入交建設の三谷及び同社の常務取締役並びに轟組の副社長及び同社の営業部長)に対し,受注の希望を伝えていた。
イ 高知河川国道事務所では,入札参加申込締切日の後に技術審査会及び入札・契約手続運営委員会を開催して入札参加者の競争参加資格の確認及び技術点の決定をした上で,入札参加者に対し競争参加資格確認通知書を送付するが,3社は,その頃,ミタニ建設工業の三谷社主を通じて,高知河川国道事務所の副所長から競争参加資格を確認された入札参加者の名称及び評価点,予定価格等の未公表情報を入手した上で,工事の施工場所,過去に受注した工事との継続性,過去の受注実績,各事業者の受注の希望状況等を勘案して受注予定者を指定していた。
ウ 受注予定者は,3社から前記イの未公表情報を利用した指導を受ける(3社から未公表情報の提供を受けることもあった。)などして,受注すべき価格を定め,3社又は受注予定者は,他の入札参加者に対し,その入札すべき価格を連絡するなどして,受注予定者が受注できるよう協力を依頼していた。ただし,3社は,評価点が低い入札参加者に対しては,価格連絡等をしなくても,受注予定者が予定どおり受注できると判断し,その入札すべき価格の連絡等をしないこともあった。
エ 受注予定者以外の入札参加者は,3社若しくは受注予定者から連絡を受けた価格で入札する又は入札を辞退するなどにより,受注予定者が受注できるようにしていた。
(査第1号証,第4号証ないし第15号証,第17号証,第26号証,三谷斉参考人審尋速記録,永吉順吉参考人審尋速記録,生田嗣夫代表者審尋速記録)
(2) 前記第3の4のとおり,本件基本合意は高知河川国道事務所発注の特定一般土木工事を対象とするものであるところ,同7(1)のとおり,本件工事は高知河川国道事務所発注の特定一般土木工事に該当するから,本件工事は,本件基本合意の対象とされた工事である。
(3) 本件工事の入札等に関する状況は,次のとおりである。
ア 本件工事の入札については,平成21年1月19日,入札参加申込締切日を同月29日,入札書の提出期限を同年2月19日,開札日を同月20日として公告された。(査第3号証)
イ 被審人の生田は,本件工事の発注見通しが出た後頃又は本件工事の入札公告が行われた後頃,入交建設の三谷に対し,本件工事の受注を希望する旨の連絡をした。(査第16号証,第24号証,三谷斉参考人審尋速記録,永吉順吉参考人審尋速記録)
ウ 前記アのとおり,本件工事の入札参加申込締切日は平成21年1月29日であるところ,高知河川国道事務所は,その後の同年2月8日頃から同月10日頃までの間に,本件工事の入札に関し,技術審査会及び入札・契約手続運営委員会を開いて入札参加者の競争参加資格の有無の確認や評価点等の決定をし,同月10日頃,入札参加者に対し競争参加資格確認通知書を送付した。(査第1号証,第3号証)
エ ミタニ建設工業の三谷社主は,その頃,本件工事の入札について,高知河川国道事務所の副所長から競争参加資格を確認された入札参加者の名称及び評価点,予定価格等の未公表情報を入手し,これを入交建設の三谷やミタニ建設工業の永吉に伝えた。(査第8号証,第16号証,三谷斉参考人審尋速記録,永吉順吉参考人審尋速記録)
オ 3社は,前記エのとおり入手した入札参加者の評価点等の情報を確認の上,その頃,本件工事の受注予定者を被審人とすることを決定し,その旨を被審人に伝えた。(査第16号証,第23号証,第24号証,三谷斉参考人審尋速記録,永吉順吉参考人審尋速記録)
カ 平成21年2月17日,四国地方整備局土佐国道事務所発注の平成20-21年度中土佐改良第1工事の入札について開札が行われ,別紙1の表1の(1)の「番号」欄18記載の事業者が落札した。同工事の入札に関しても受注調整が行われており,被審人もこれに同調したが,竹内建設はこれに同調しなかった。(査第16号証,第23号証,第25号証,生田嗣夫代表者審尋速記録)
キ 被審人の生田は,前記カの開札後,竹内建設が受注調整に同調しなかったことを知り,竹内建設とは話合いができないと考え,入交建設の三谷に対し電話を掛けて,本件工事の入札参加者に竹内建設が含まれているか否かを尋ねた(以下,この電話連絡を「本件電話連絡」という。)。
入交建設の三谷は,ミタニ建設工業の三谷社主からの情報により竹内建設が本件工事の入札参加者であることを知っていたため,被審人の生田に対してその旨伝えたところ,被審人の生田は,入交建設の三谷に対し,竹内建設との間では受注調整を行わないよう求めた。
(査第16号証,第23号証,第25号証,三谷斉参考人審尋速記録,生田嗣夫代表者審尋速記録)
ク そのため,入交建設の三谷は,被審人の前記キの意向に従い,竹内建設との間では受注調整を行わないこととした。そして,入交建設の三谷は,ミタニ建設工業の永吉に対し,本件工事の入札に関し,竹内建設との間では受注調整ができないという趣旨の連絡をした。(査第16号証,第24号証,三谷斉参考人審尋速記録,永吉順吉参考人審尋速記録)
ケ 四国開発の常務執行役員山本俊也(以下「四国開発の山本」という。)は,本件工事には受注予定者がいることを認識していたが,ミタニ建設工業の永吉から本件工事の入札価格に関する連絡がまだ来ていなかったことから,前記クの入交建設の三谷からミタニ建設工業の永吉への連絡があった後の時期に,同人に電話を掛けて,予定価格を超える程度の金額で入札したい旨述べて具体的な入札金額を告げた。これに対し,ミタニ建設工業の永吉は,上記入札金額が本件工事の予定価格を超えていたことから,四国開発の山本に対し,その金額で入札することでよい旨告げた。(査第14号証,第22号証,第24号証,永吉順吉参考人審尋速記録)
コ また,ミタニ建設工業の三谷社主及び同社の永吉も,被審人が本件工事を受注できるように,予定価格を超える金額で入札することとした。(査第22号証,第24号証,第30号証,永吉順吉参考人審尋速記録)
サ なお,3社は,クロシオ建設に対しては,同社の評価点が他の入札者の評価点と比べて著しく低かったため,同社に対し入札すべき価格を連絡しなくても,受注予定者である被審人が予定どおり受注できると判断し,その連絡をしなかった。(査第16号証,第22号証,第24号証,三谷斉参考人審尋速記録,永吉順吉参考人審尋速記録)
他方,クロシオ建設の代表取締役常徳祐一(以下「クロシオ建設の常徳」という。)は,本件工事に関して3社及び受注予定者から何の連絡も受けていなかったが,本件工事が総合評価落札方式による入札であることからクロシオ建設の積算価格の100パーセント前後の金額で入札すれば同社が落札することはないと考え,同社が本件工事を落札することがないよう,そのような金額で入札した。(審第2号証)
シ 平成21年2月20日,本件工事の入札について開札が行われた。
本件工事の入札には被審人,ミタニ建設工業,四国開発,クロシオ建設及び竹内建設の5社が参加したが,ミタニ建設工業,四国開発及びクロシオ建設が予定価格(1億4404万円)を超える価格でそれぞれ入札し,竹内建設が1億3200万円で入札し,被審人が1億2500万円(予定価格の86.8パーセントの金額)で入札した結果,被審人が本件工事を落札した。
(査第3号証,第18号証,第22号証)
3 認定事実に対する補足説明
前記2(3)キについては,被審人の生田が,本件電話連絡をした際に,入交建設の三谷に対し,竹内建設との間では受注調整を行わないよう求めたと認定したが,この認定に関する直接証拠は,入交建設の三谷の陳述等(査第16号証,三谷斉参考人審尋速記録)だけであるところ,被審人の生田は,審第1号証,第11号証及び被審人代表者審尋において,「竹内建設との間では」との限定を付さずに,本件工事には一切触らんとってくれと述べたと陳述等する。しかし,入交建設の三谷は,本件違反行為の審査段階でなされた事情聴取においても,参考人審尋においても,一貫して,本件電話連絡の際に,被審人の生田から竹内建設との間では受注調整を行わないよう求められたことを述べている(なお,参考人審尋においては,「竹内建設との間では」との限定を付けずに陳述している部分もあるが,被審人の生田から受注調整を行わないよう求められた範囲を改めて確認されて,明確に竹内建設との間では受注調整を行わないよう求められたことを陳述している。)。そして,本件において,3社が被審人を受注予定者とする決定を撤回して本件工事を受注予定者のないいわゆるフリー物件にした事実はうかがわれず,かえって,ミタニ建設工業の三谷社主及び同社の永吉,入交建設の三谷,四国開発の山本並びにクロシオ建設の常徳は,前記2(3)のとおり,本件工事の入札において本件基本合意に沿った競争制限的な行動をしており,かつ,竹内建設に対しては何の働きかけもされていないのであるから,これらの事実は,入交建設の三谷の陳述等と整合している。したがって,被審人の生田は,入交建設の三谷に対し,竹内建設との間では受注調整を行わないよう求めたものと認めるのが相当であり,これに反する上記被審人の生田の陳述等(審第1号証,第11号証,生田嗣夫代表者審尋速記録)は採用できない。
4 判断
前記2(2)のとおり,本件工事は,本件基本合意の対象とされた工事である。
そして,同(3)の認定事実によれば,被審人は,3社に対して本件工事の受注を希望する旨の連絡をし,これを受けて,3社は,本件工事の受注予定者を被審人とすることを決定したこと,本件工事の入札参加者のうちミタニ建設工業及び四国開発は,受注予定者である被審人が本件工事を落札できるよう予定価格を超える金額で入札したこと,クロシオ建設は,3社及び受注予定者から連絡がなく,受注予定者の具体的事業者名等を認識していなかったものの,本件工事を受注することがないと考える金額で入札することにより,本件基本合意に基づく受注予定者が落札できるように協力したことがそれぞれ認められるから,本件工事の入札において,本件基本合意に基づく受注調整が行われ,その結果,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものと認められる。
なお,本件工事の入札においては竹内建設との間では受注調整が行われていないが,それ以外の入札参加者との間では本件基本合意に基づく受注調整が行われ,その結果,競争単位の減少により具体的な競争制限効果が発生するに至っているといえる。
したがって,本件工事は,独占禁止法第7条の2第1項所定の「当該・・・役務」に該当するから,課徴金算定の対象となる。
5 被審人の主張について
(1) 被審人は,3社から予定価格や他の入札参加者の名称及び評価点を聞いていないことを受注調整が行われていないことの根拠として主張する(前記第5の2(2)ア)。
確かに,被審人が3社から予定価格や他の入札参加者の名称及び評価点を聞いていたことを認めるに足りる証拠はない。しかし,まず,予定価格については,被審人は受注調整がされた他の事案でも予定価格を聞いていないのである(永吉順吉参考人審尋速記録,生田嗣夫代表者審尋速記録)から,被審人が予定価格を聞いていないことは,本件工事の入札において受注調整が行われたとの認定を妨げるものではないし,入札参加者の名称及び評価点についても,本件基本合意に基づく受注調整においては,前記2(1)ウのとおり,受注予定者以外の入札参加者に対する入札価格等の連絡等を,受注予定者ではなく3社が行う形も採られていたのであるから,被審人が入札参加者の名称及び評価点を聞いていないことは,本件において受注調整が行われたとの認定を何ら妨げるものではない。
(2) 被審人は,本件工事に関し他の入札参加者に対して連絡や働きかけをしていないことを受注調整が行われていないことの根拠として主張する(前記第5の2(2)イ)。
しかし, 本件基本合意に基づく受注調整においては,受注予定者以外の入札参加者に対する入札価格等の連絡等を,受注予定者ではなく3社が行う形も採られていたのであるから,被審人が他の入札参加者に対して自ら連絡や働きかけをしていないことは,本件工事の入札において受注調整が行われたとの認定を妨げるものではない。
(3) 被審人は,クロシオ建設が本件工事の入札に関して3社から何の連絡も受けていないことを受注調整が行われていないことの根拠として主張する(前記第5の2(2)ウ)。
しかし,前記2(3)サのとおり,3社は,クロシオ建設の評価点が他の入札参加者の評価点と比べて著しく低かったため,同社に対し入札すべき価格を連絡しなくても,受注予定者である被審人が予定どおり受注できると判断し,その連絡をしなかったものであり,このような場合も通常あった(前記2(1)ウ)のであるから,クロシオ建設に対して連絡がなされてないことは,本件工事の入札において受注調整が行われたとの認定を妨げるものではない。
(4) 被審人は,被審人の入札価格が赤字を覚悟で設定した価格であり,実際に赤字になっていることを受注調整が行われていないことの根拠として主張する(前記第5の2(2)エ)。
しかし,武吉義光参考人審尋速記録及び生田嗣夫代表者審尋速記録によれば,被審人が本件工事の入札において赤字を出さないように入札金額を決定したことが認められるから,被審人の入札価格が赤字を覚悟で設定した価格であるということはできないし,仮に被審人が実際に本件工事において赤字を出したとしても,それは結果論であって,本件工事の入札において受注調整が行われたとの認定を妨げるものではない。
(5) 被審人は,仮に他の入札参加者との間で被審人が落札するように受注調整が行われたとしても,被審人は,入交建設の三谷に対し,本件工事の入札に関して一切受注調整を行わないよう申し入れ,入交建設の三谷がこれを承諾したことにより,一切の受注調整が排除されたものと認識して本件工事の入札に参加したのであり,被審人が関与して受注調整が行われたわけではないから,本件工事は独占禁止法第7条の2第1項所定の「当該・・・役務」に該当しないと主張する(前記第5の2(3)及び(4))。
しかし,被審人の生田は,入交建設の三谷に対し,前記認定事実(前記2(3)イ及びキ)のとおりの申入れをしており,それに基づき実際に受注調整が行われているのであるから,被審人は本件の受注調整に関与していると認められるのであって,結局被審人の上記主張は前提を欠き採用できない。
なお,被審人の生田の認識が,その主張のとおり,入交建設の三谷に対し,竹内建設との間にとどまらず一切の受注調整を行わないように申し入れたというものであった(ただし,入交建設の三谷の参考人審尋における陳述及び本件工事の入札において実際に竹内建設以外の入札参加者との間で受注調整が行われたことを総合すれば,入交建設の三谷は,被審人の生田の申入れが竹内建設との間では受注調整を行わないことを求める趣旨のものであると認識したことは明らかである。)としても,本件基本合意に基づく受注調整においては,受注予定者以外の入札参加者に対する入札価格等の連絡等を,受注予定者ではなく3社が行う形も採られており,被審人の生田もその形式を受容して本件基本合意に参加しているのであり,かつ,本件工事について,被審人の受注希望の連絡を契機として3社による受注調整が被審人を受注予定者として開始され,現実に竹内建設以外の入札参加者との間では受注調整が行われ,その結果,本件工事の入札においては競争単位の減少による具体的な競争制限効果が発生するに至っていることからすると,被審人の生田の上記認識にかかわらず,本件工事は,上記の「当該・・・役務」に該当すると認めることに妨げはないというべきである。
第7 被審人が納付すべき課徴金の額
1 被審人が高知河川国道事務所発注の特定一般土木工事について平成20年4月1日以降最初に入札に参加した工事は本件工事である(査第25号証)ところ,被審人が本件工事の入札に参加した日は平成21年2月19日である(査第3号証,第18号証)から,被審人が本件違反行為の実行として事業活動を行った期間の始期は同日であると認められる。また,前記第3の6のとおり,被審人は,平成23年12月6日以降本件違反行為を取りやめており,同月5日にその実行としての事業活動はなくなっているものと認められる。したがって,被審人については,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,実行期間は,平成21年2月19日から平成23年12月5日までとなる。
2 前記1の実行期間における高知河川国道事務所発注の特定一般土木工事に係る被審人の売上額は,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(昭和52年政令第317号)第6条第1項及び第2項の規定に基づき算定すべきところ,これらの規定に基づき算定すると,別紙3記載の物件に係る3億5581万3500円である(うち,本件工事に係る売上額は1億6964万8500円であり,平成21年度八田堤防護岸外1件工事の売上額は1億8616万5000円である。)。(争いがない。)
3 被審人は,前記1の実行期間を通じ,資本金の額が3億円以下の会社であって,建設業に属する事業を主たる事業として営んでいた者である。したがって,被審人は,独占禁止法第7条の2第5項第1号に該当する事業者である。(争いがない。)
4 したがって,被審人が国庫に納付すべき課徴金の額は,独占禁止法第7条の2第1項及び第5項の規定により,前記2の被審人の売上額3億5581万3500円に100分の4を乗じて得た額から,同条第23項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて算出された1423万円である。
第8 法令の適用
以上によれば,被審人に対し,原処分のとおり課徴金の納付を命ずるべきであり,被審人の本件審判請求は理由がないから,独占禁止法第66条第2項の規定により,主文のとおり審決することが相当であると判断する。
   
平成26年10月22日

公正取引委員会事務総局

審判長審判官  伊 藤   繁

審判官  西 川 康 一

審判官  數 間   薫

※ 審決案別紙1ないし3は省略。

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