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サムスン・エスディーアイ(マレーシア)・ビーイーアールエイチエーディーに対する件

独禁法66条2項(独禁法7条の2)

平成22年(判)第7号

審判請求棄却審決(課徴金納付命令に係る審判請求棄却審決)

マレーシア ネゲリ センビラン ダルール クサス 71450 スンガイ ガドゥッ カワサン ペルインドストリアン トゥアンク ジャファー ロット 635&660
被審人 サムスン・エスディーアイ(マレーシア)・ビーイーアールエイチエーディー
同代表者       チャン テ ウン
同代理人 弁 護 士 内 田 晴 康
同          伊 藤 憲 二
同          関 戸   麦
同          宇都宮 秀 樹
同          眞 鍋 佳 奈
同          池 田   毅
同          川 原 健 司
上記被審人代理人内田晴康復代理人
弁護士        横 田 真一朗
同          市 川 雅 士
同          竹 腰 沙 織

公正取引委員会は,上記被審人に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成25年法律第100号)附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)(以下「独占禁止法」という。)に基づく課徴金納付命令審判事件について,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う公正取引委員会関係規則の整備に関する規則(平成27年公正取引委員会規則第2号)による廃止前の公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号)(以下「規則」という。)第73条の規定により審判長審判官伊藤繁,審判官原一弘及び審判官多田尚史から提出された事件記録,規則第75条の規定により被審人から提出された異議の申立書並びに独占禁止法第63条及び規則第77条の規定により被審人から聴取した陳述に基づき,同審判官らから提出された審決案を調査し,次のとおり審決する。

主       文
被審人の審判請求を棄却する。

理       由
第1 審判請求の趣旨
平成22年(納)第23号課徴金納付命令の取消しを求める。
第2 事案の概要(当事者間に争いのない事実及び公知の事実)
1 公正取引委員会は,被審人が,別紙1記載の事業者と共同して,おおむね四半期ごとに次の四半期における別紙2記載の事業者(以下「我が国ブラウン管テレビ製造販売業者」という。)が同別紙の「東南アジア地域の製造子会社,関連会社又は製造委託先会社の所在国」欄記載の国に所在する当該事業者の製造子会社,関連会社又は製造委託先会社(以下「現地製造子会社等」という。)に購入させる別紙3記載のテレビ用ブラウン管(以下「特定ブラウン管」という。)の現地製造子会社等向け販売価格の各社が遵守すべき最低目標価格等を設定する旨を合意することにより,公共の利益に反して,特定ブラウン管の販売分野における競争を実質的に制限していたものであり,これは独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項第1号に規定する商品の対価に係るものであるとして,被審人に対して,平成22年2月12日,13億7362万円の課徴金の納付を命じた(平成22年(納)第23号。以下,この処分を「本件課徴金納付命令」という。)。
2 公正取引委員会は,同日,独占禁止法第70条の18の規定に基づき,本件課徴金納付命令に係る課徴金納付命令書の謄本(以下,この命令書を「本件課徴金納付命令書」といい,その謄本を「本件課徴金納付命令書謄本」という。)につき公示送達の手続を採った(以下,この送達を「本件公示送達」という。)。
なお,公正取引委員会は,平成21年10月7日,本件課徴金納付命令と同一の事実に基づき,課徴金13億7362万円を平成22年1月8日までに納付するよう命ずる旨の被審人を名宛人にした課徴金納付命令書(平成21年(納)第65号,以下「平成21年10月7日付け課徴金納付命令書」という。)を作成したが,被審人に対し,その謄本を送達することができなかった。
3 被審人は,本件課徴金納付命令に関する手続は違法である上,本件については独占禁止法が適用されないなどと主張して,平成22年5月24日,本件課徴金納付命令の取消しを求めて本件審判請求をした。
第3 前提となる事実等(末尾に括弧書きで証拠を掲記した事実は当該証拠から認定される事実であり,その余の事実は当事者間に争いのない事実又は公知の事実である。)
1 当事者等
⑴ 被審人及びサムスンSDIの概要
ア サムスンSDIは,大韓民国に本店を置く事業者である。
イ 被審人は,サムスンSDIの子会社であり,肩書地に本店を置き,テレビ用ブラウン管の製造販売業を営む者である。
⑵ 被審人及びサムスンSDI以外のテレビ用ブラウン管製造販売業者等の概要
ア(ア) MT映像ディスプレイは,大阪府門真市に本店を置く事業者である。
(イ) MT映像ディスプレイ・インドネシアは,MT映像ディスプレイの子会社であり,インドネシア共和国に本店を置き,少なくとも後記4の日までテレビ用ブラウン管の製造販売業を営んでいた者である。
(ウ) MT映像ディスプレイ・マレーシアは,MT映像ディスプレイの子会社であり,マレーシアに本店を置き,少なくとも後記4の日までテレビ用ブラウン管の製造販売業を営んでいた者である。
(エ) MT映像ディスプレイ・タイは,MT映像ディスプレイの子会社であり,タイ王国に本店を置き,少なくとも後記4の日までテレビ用ブラウン管の製造販売業を営んでいた者である。
イ(ア) 中華映管は,台湾に本店を置く事業者である。
(イ) 中華映管マレーシアは,中華映管の子会社であり,マレーシアに本店を置き,少なくとも後記4の日までテレビ用ブラウン管の製造販売業を営んでいた者である。
ウ(ア) LGフィリップス・ディスプレイズは,大韓民国に本店を置き,少なくとも後記4の日までテレビ用ブラウン管の製造販売業を営んでいた者である。
(イ) LPディスプレイズ・インドネシアは,LGフィリップス・ディスプレイズの関連会社であり,インドネシア共和国に本店を置き,少なくとも後記4の日までテレビ用ブラウン管の製造販売業を営んでいた者である。
なお,LPディスプレイズ・インドネシアの役員や従業員のほとんどはLGフィリップス・ディスプレイズから派遣されていた。(査第32号証の1及び2)
エ タイCRTは,タイ王国に本店を置き,少なくとも後記4の日までテレビ用ブラウン管の製造販売業を営んでいた者である。
⑶ 我が国ブラウン管テレビ製造販売業者の概要
我が国ブラウン管テレビ製造販売業者は,別紙2記載のとおり,我が国に本店を置き,東南アジア地域に製造子会社,関連会社又は製造委託先会社を有して,少なくとも後記4の日までブラウン管テレビの製造販売業を営んでいた者である。
2 テレビ用ブラウン管に関する取引について
⑴ 我が国ブラウン管テレビ製造販売業者は,それぞれ,サムスンSDI,MT映像ディスプレイ,中華映管,LGフィリップス・ディスプレイズ及びタイCRT(以下「サムスンSDIほか4社」という。)ほかのテレビ用ブラウン管製造販売業者の中から一又は複数の事業者を選定し,当該事業者との間で,現地製造子会社等が購入するテレビ用ブラウン管の仕様のほか,おおむね1年ごとの購入予定数量の大枠やおおむね四半期ごとの購入価格及び購入数量について交渉していた(以下,この我が国ブラウン管テレビ製造販売業者による選定及び交渉のことを「本件交渉等」という。なお,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者の選定及び交渉への関与の程度及び内容については争いがあり,この点は後記第6の2において判断する。)。
なお,本件交渉等は,サムスンSDIが選定された場合には被審人が,MT映像ディスプレイが選定された場合にはMT映像ディスプレイ・インドネシア,MT映像ディスプレイ・マレーシア及びMT映像ディスプレイ・タイ(以下「MT映像ディスプレイ・インドネシアほか2社」という。)が,中華映管が選定された場合には中華映管マレーシアが,LGフィリップス・ディスプレイズが選定された場合には同社及びLPディスプレイズ・インドネシアが,タイCRTが選定された場合には同社が,それぞれ現地製造子会社等にテレビ用ブラウン管を販売することを前提として行われていた。
(査第2号証ないし第4号証の2,第27号証の1ないし第32号証の2,第62号証ないし第66号証)
⑵ 現地製造子会社等は,本件交渉等を経た後,主に被審人,MT映像ディスプレイ・インドネシアほか2社,中華映管マレーシア,LGフィリップス・ディスプレイズ,LPディスプレイズ・インドネシア及びタイCRT(以下「被審人ほか7社」という。)からテレビ用ブラウン管を購入していた(以下,本件交渉等を経て現地製造子会社等が購入する別紙3記載のテレビ用ブラウン管を「本件ブラウン管」という。なお,本件課徴金納付命令及び審査官の主張する「特定ブラウン管」は,前記第2の1のとおり,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が現地製造子会社等に購入させる別紙3記載のテレビ用ブラウン管と定義されているが,上記定義のうち,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が現地製造子会社等に「購入させる」との部分は後述するように当事者間に争いがある。そこで,上記認定のとおり,現地製造子会社等が本件交渉等を経て後記3の合意の対象となっている別紙3記載のテレビ用ブラウン管を購入していたことが認められるので,「本件ブラウン管」を上記のとおり定義したものであるが,後記第6の2⑶ウのとおり,「特定ブラウン管」と商品の範囲としては同一である。)。(査第2号証ないし第4号証の2,第27号証の1ないし第32号証の2,第62号証ないし第66号証,第68号証,第92号証,第93号証,第97号証,第113号証,第114号証)
⑶ 平成15年から平成19年までの5年間における現地製造子会社等の本件ブラウン管の総購入額のうち,被審人ほか7社からの購入額の合計の割合は約83.5パーセントであった。(査第36号証)
3 本件合意
⑴ サムスンSDIほか4社並びに被審人,MT映像ディスプレイ・インドネシア,中華映管マレーシア及びLPディスプレイズ・インドネシアは,本件ブラウン管の現地製造子会社等向け販売価格の安定を図るため,遅くとも平成15年5月22日頃までに,日本国外において,本件ブラウン管の営業担当者による会合を継続的に開催し,おおむね四半期ごとに次の四半期における本件ブラウン管の現地製造子会社等向け販売価格の各社が遵守すべき最低目標価格等を設定する旨合意した(以下,この合意を「本件合意」という。)。(査第2号証ないし第4号証の2,第27号証の1及び2,第39号証,第40号証,第42号証,第47号証,第49号証,第50号証の1及び2,第61号証の1及び2,第74号証)
⑵ MT映像ディスプレイ・マレーシアは遅くとも平成16年2月16日までに,MT映像ディスプレイ・タイは遅くとも同年4月23日までに,それぞれ本件合意に加わった。(査第3号証の1及び2,第4号証の1及び2,第47号証,第51号証の1及び2,第76号証,第78号証)
4 本件合意の消滅
中華映管及び中華映管マレーシアが,平成19年3月30日,競争法上の問題により本件ブラウン管の営業担当者による会合に出席しない旨表明し,その後,MT映像ディスプレイも同様の対応を採ったことなどにより,それ以降,上記会合は開催されていないことから,同日以降,本件合意は事実上消滅している。(査第3号証の1及び2,第27号証の1及び2,第50号証の1及び2,第58号証の1及び2)
第4 本件の争点
1 本件課徴金納付命令に関する手続の適法性
⑴ 本件課徴金納付命令をするに際して,事前手続が適法に行われたか否か。
⑵ア 本件課徴金納付命令は公正取引委員会委員長及び委員の合議によるものといえるか否か。
イ 本件課徴金納付命令書は独占禁止法第50条第1項の規定に違反しているか否か。
⑶ 本件課徴金納付命令は平成21年10月7日付け課徴金納付命令と重複して違法となるか否か。
⑷ 本件公示送達は適法になされたか否か。
2 本件に独占禁止法第3条後段を適用することができるか否か。
3 本件ブラウン管の売上額は独占禁止法第7条の2第1項の「当該商品の売上額」に該当し,課徴金の計算の基礎となるか否か。
第5 争点についての双方の主張
1 争点1(本件課徴金納付命令に関する手続の適法性)について
⑴ 審査官の主張
ア 事前手続について(争点1⑴)
公正取引委員会は,被審人に対し,平成21年4月7日から同年5月12日までの間に,本件課徴金納付命令について,独占禁止法第50条第6項,第49条第3項,第5項及び公正取引委員会の審査に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第5号)(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う公正取引委員会関係規則の整備に関する規則による改正前のもの。以下「審査規則」という。)第29条,第24条,第25条所定の事前通知及び事前説明(以下「事前手続」という。)を行った。
なお,公正取引委員会は,上記事前手続を経て,平成21年10月7日付け課徴金納付命令書を作成したが,事前手続は課徴金納付命令をしようとするときに行うべきものであり,同一の違反行為について納期限の異なる課徴金納付命令書を作成するごとに行わなければならないものではない。
イ 本件課徴金納付命令についての合議及び本件課徴金納付命令書の記名押印について(争点1⑵)
(ア) 公正取引委員会委員長及び委員4名は,平成21年9月28日までに,被審人に対し,本件違反行為に関し,課徴金13億7362万円を納付するよう命ずる旨合議の上決定した。この意思決定には,課徴金納付命令書謄本を交付送達できない場合には,領事送達(相手国に駐在する日本の大使,公使又は領事に嘱託してする送達(独占禁止法第70条の17,民事訴訟法〔平成8年法律第109号〕第108条。)をいう。以下同じ。)や公示送達等他の適切な方法によって送達を行い,課徴金納付命令の効力を生じさせることも当然含まれている。したがって,公正取引委員会において,本件に関する上記合議以外の合議はなされていないが,本件課徴金納付命令は上記合議による意思決定に基づくものである。
(イ) 本件課徴金納付命令書には,公正取引委員会委員長のほか,前記(ア)の合議に出席した4名の委員のうち3名の記名押印があるが,1名の委員の記名押印がない。これは,本件課徴金納付命令書作成時までに同委員が退任し,本件課徴金納付命令時には公正取引委員会委員でなくなっていたためである。したがって,課徴金納付命令書には公正取引委員会委員長及び合議に出席した委員が記名押印をしなければならないとする独占禁止法第50条第1項の規定に違反するとはいえない。
ウ 平成21年10月7日付け課徴金納付命令書との関係について(争点1⑶)
平成21年10月7日付け課徴金納付命令書謄本は被審人に対し送達されていないから,同課徴金納付命令は,外部への表示がなされておらず,行政行為として成立していないし,効力も生じていない。よって,本件課徴金納付命令と重複するとはいえない。
 エ 本件公示送達について(争点1⑷)
公正取引委員会は,平成21年10月7日付け課徴金納付命令書謄本について,外務省を通じてマレーシア政府に対し,領事送達の応諾を求めたところ,マレーシア政府はこれを許可することはできない旨明確に回答した。よって,本件課徴金納付命令書謄本についても,領事送達によって送達をすることができないといえる。
また,相手国の管轄官庁に嘱託してする送達(独占禁止法第70条の17,民事訴訟法第108条。以下「管轄官庁送達」という。)については,マレーシアとの間で送達を実施できる管轄官庁を定めた条約や取決めがないため,行うことができない。
したがって,本件課徴金納付命令書謄本については,外国においてすべき送達について,民事訴訟法第108条の規定によることができず,又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合(独占禁止法第70条の18第1項第2号)に当たるから,本件公示送達は適法である。
⑵ 被審人の主張
本件課徴金納付命令に関する手続は,以下の点で法令に違反しているから,本件課徴金納付命令は違法,無効である。
ア 事前手続が行われていないこと(争点1⑴)
公正取引委員会は,本件課徴金納付命令をするに当たって事前手続を行っていない。
審査官の主張する平成21年4月7日から同年5月12日までの間の事前手続は,本件課徴金納付命令に先立つ平成21年10月7日付け課徴金納付命令に関するものである。同課徴金納付命令と本件課徴金納付命令とは別個の行政処分であるから,同一の違反行為を対象としていても,課徴金納付命令の時期によって被審人の防御の仕方は異なり得るから,平成21年10月7日付け課徴金納付命令に関する事前手続をもって本件課徴金納付命令に関する事前手続ということはできない。
イ 本件課徴金納付命令についての合議が行われていないこと又は本件課徴金納付命令書に合議に出席した委員全員の記名押印がないこと(争点1⑵)
(ア) 公正取引委員会は,本件課徴金納付命令をするに当たり,独占禁止法第69条第1項所定の公正取引委員会委員長及び委員による合議を行っていない。
審査官の主張する平成21年9月28日までに行われた合議は,平成21年10月7日付け課徴金納付命令についてのものである。平成21年10月7日付け課徴金納付命令と本件課徴金納付命令とは別個の行政処分であり,適用された独占禁止法の条文も異なるし,時間の経過により事実関係の評価も変わり得るから,本件課徴金納付命令をする時点で改めて合議をすべきであり,平成21年10月7日付け課徴金納付命令に関する合議をもって本件課徴金納付命令についての合議と解することは許されない。
(イ) 本件課徴金納付命令書は,合議に基づくことなく,審査官が平成21年10月7日付け課徴金納付命令書を改変して作成したものということになり,審査官による文書の改変を禁じる審査規則第6条に違反する。
(ウ) 本件課徴金納付命令書には,公正取引委員会委員長及び委員3名の記名押印があるが,前記(ア)のとおり,本件課徴金納付命令に関する合議が行われていないから,上記記名押印は無効である。
(エ) 仮に,本件課徴金納付命令が平成21年9月28日までに行われた合議に基づくものであるとしても,本件課徴金納付命令書には,上記合議に出席した公正取引委員会委員4名のうちの1名の記名押印がなく,その理由の記載もないから,公正取引委員会委員長及び合議に出席した委員の記名押印を要求する独占禁止法第50条第1項に違反する。
ウ 同じ内容の課徴金納付命令を重複してすることは許されないこと(争点1⑶)
本件課徴金納付命令は,それに先立つ平成21年10月7日付け課徴金納付命令における違反行為と同一の行為について,重複して課徴金の納付を命ずるものである。送達が行われたとされる本件課徴金納付命令の他に潜在的に有効な行政処分が存在することを前提に防御をしなければならないという点で被審人の地位を不安定にすること,二重払いの危険が生じること,民事訴訟においても重複起訴が禁止されていること(民事訴訟法第142条)に照らすと,同一の違反行為について重複して課徴金の納付を命ずることは許されない。
エ 本件公示送達が適法に行われていないこと(争点1⑷)
公正取引委員会は,本件課徴金納付命令書謄本について,領事送達や管轄官庁送達を試みることなく,直ちに公示送達の手続に付した。よって,本件公示送達は,外国においてすべき送達について民事訴訟法第108条の規定によることができないという要件(独占禁止法第70条の18第1項第2号)を満たしていない。
本件のようにマレーシア政府の同意がないのに,公示送達をすることによってマレーシア領域内に所在する被審人に送達の効力を発生させることは,実質的にはマレーシア政府の同意がないのにマレーシア領域内において日本の国家管轄権を行使することと同様の結果になり,マレーシアの主権を侵害することになるから許されない。
2 争点2(本件に独占禁止法第3条後段を適用することができるか否か)について
⑴ 審査官の主張
ア 本件における独占禁止法の適用についての考え方
独占禁止法第3条後段の場所的適用範囲については,少なくとも,「相互にその事業活動を拘束し,又は遂行する」,「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」などの同条後段違反の不当な取引制限の成立要件の全部又は一部が日本国内で実現している場合には,同条後段を適用することが可能であると解される。
本件においては,後記イ及びウのとおり,本件合意が日本を含む特定ブラウン管の販売分野における競争を実質的に制限するものであったところ,「一定の取引分野」としての「特定ブラウン管の販売分野」に日本が含まれることを踏まえると,本件合意により,「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」という不当な取引制限の成立要件の一部が日本国内で発生していることから,本件違反行為に対して,独占禁止法第3条後段を適用することができる。
イ 本件における「一定の取引分野」
(ア) 独占禁止法第2条第6項における「一定の取引分野」の画定は,取引の対象・地域・態様等に応じて,違反者のした共同行為が対象としている取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討し,その競争が実質的に制限される範囲を画定して行うとされている(東京高等裁判所平成5年12月14日判決・高等裁判所刑事判例集第46巻第3号322頁〔トッパン・ムーア株式会社ほか3名に対する独占禁止法違反被告事件〕等参照)。
本件合意が対象とした取引及びこれにより影響を受け,その競争が実質的に制限される範囲は,日本に所在する我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が取引の数量や価格等の交渉及び決定を行い,東南アジア地域に所在する現地製造子会社等はその決定されたところに従って購入するという地域及び態様で行われていた特定ブラウン管の販売に係る取引,つまり,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者に対する関係において,被審人及び別紙1記載の10社(以下「11社」という。)がその受注獲得及び価格を競い合うという関係にあった特定ブラウン管の販売に係る取引であり,これが本件における「一定の取引分野」として画定される。したがって,本件における一定の取引分野には日本が含まれる。
(イ) また,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者は,現地製造子会社等を実質的な製造拠点として,現地製造子会社等に設計,仕様等を指示してブラウン管テレビを製造させるに当たり,主にサムスンSDIほか4社の中から選定した事業者との間で,特定ブラウン管の購入価格及び購入数量を交渉して決定し,それに従って当該事業者又はその子会社等から特定ブラウン管を購入するよう現地製造子会社等に指示して,特定ブラウン管を購入させるなどといった一定の役割分担の下に特定ブラウン管に係る一連の事業活動を行っていたものであること,本件合意は,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者との交渉の際に示されるべき最低目標価格等を設定し,競争を回避することを意図するものであったことなどに照らせば,自由競争経済秩序を直接の保護法益とする独占禁止法の目的の観点から,本件においては,現地製造子会社等のみならず,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者をも需要者として捉えることができ,この意味においても,本件における一定の取引分野には日本が含まれるといえる。
ウ 特定ブラウン管の販売分野における競争が実質的に制限されていたこと
(ア) 独占禁止法第2条第6項の「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」とは,カルテル等の事業者間の相互拘束等により,当該行為が対象とする一定の取引分野において機能する需要者群と供給者群との間の自由な競争によって価格その他の取引条件が決定される過程を歪め,当該取引分野(市場)を支配することができる状態(市場支配的状態の形成・維持・強化)をもたらすこと,すなわち一定の取引分野において機能する自由競争の過程が保たれている状態(自由競争経済秩序)に対して上記のような悪影響を及ぼすことであると解される。
(イ) 本件においては,平成15年から平成19年までの5年間における現地製造子会社等の特定ブラウン管の総購入額のうち,被審人ほか7社からの購入額の合計の割合は約83.5パーセントとその大部分を占めていた。
したがって,本件合意の形成により,特定ブラウン管の販売分野における競争が全体として減少し,11社が,その意思で,ある程度自由に,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者との間の交渉によって決定されていた特定ブラウン管の価格等の取引条件を左右することによって,特定ブラウン管の販売分野という市場を支配することができる状態に至っていたと認められる。
また,11社は,本件合意に基づき,継続的に会合を開き,おおむね四半期ごとに,日本に所在する我が国ブラウン管テレビ製造販売業者との交渉において示されるべき最低目標価格等を設定し,また,サムスンSDIほか4社は,当該最低目標価格等を踏まえた特定ブラウン管の価格交渉を日本に所在する我が国ブラウン管テレビ製造販売業者との間で日本国内外において実施していた。
以上によれば,本件合意が特定ブラウン管の販売分野という「一定の取引分野における競争を実質的に制限」していたことが明らかである。
⑵ 被審人の主張
ア 本件における独占禁止法の適用についての考え方について
(ア) 独占禁止法の究極の目的が「一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進する」ということにあることからすれば,日本市場に相応の効果・影響があって初めて独占禁止法を域外適用する必要性が認められること,また,そのような場合に限って域外適用を認めるのが,日本及び他国の実務と整合することなどに照らせば,独占禁止法を自国領域外に適用することができるのは,反競争的行為により日本の国内市場に相応の効果・影響が生じた場合に限られると解すべきである(効果主義)。そして,他国の主権(管轄権)を尊重し,域外適用による法適用の衝突を防止するとともに,行為者の権利を保障するためには,効果主義における効果とは,実質的,直接的かつ行為者にとって予見可能なものでなければならないと解すべきである。
実質的,直接的かつ行為者にとって予見可能な効果が生じたといえるか否かを判断するに当たっては,購入者の所在地,商品が供給された地,商品が加工又は消費された地を考慮すべきである。取引条件の交渉に関与した者の所在地や交渉が行われた地を考慮することは,他国の法規制との衝突や二重処罰を生じさせることになるから妥当ではない。
(イ) 本件では,本件ブラウン管の購入者は東南アジア地域に所在する現地製造子会社等であり,本件ブラウン管が供給されたのも,ブラウン管テレビへと加工されたのもいずれも東南アジア地域である。
したがって,日本の国内市場に実質的,直接的かつ行為者にとって予見可能な効果が生じたとはいえないから,本件に独占禁止法は適用されない。
イ 一定の取引分野に日本が含まれないこと
(ア) 一定の取引分野の画定は,企業結合規制においては,一定の取引の対象となる商品又は役務の範囲,取引の地域の範囲(地理的範囲)等に関して,基本的に需要者にとっての代替性という観点から判断され,また必要に応じて供給者にとっての代替性という観点も考慮された上で行われるというのが基本的かつ原則的な考え方である。不当な取引制限における一定の取引分野も企業結合規制におけるのと同様に上記考え方に基づき画定されるべきである。
そして,一定の取引分野の地理的範囲が日本である又は日本を含むといえるのは,需要者が日本に所在する場合をいうと解される。
需要者とは,商品又は役務の供給を受ける者と位置付けられていることからすれば(独占禁止法第2条第4項第2号),需要者の所在地は商品又は役務が供給される場所によって決定されると考えるべきである。
(イ) したがって,本件において,本件ブラウン管の供給を受けているのは,東南アジア地域に所在する現地製造子会社等であって,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者ではないから,本件における一定の取引分野に日本は含まれない。
(ウ) 仮に,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が本件ブラウン管の需要者であるとしても,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者の需要者としての所在地は,本件ブラウン管が供給される東南アジア地域であって,日本ではない。したがって,本件における一定の取引分野に日本が含まれることにはならない。
ウ 競争の実質的制限について
本件合意の対象となった本件ブラウン管を実際に購入し,その代金を支払っているのは東南アジア地域に所在する現地製造子会社等であるから,本件ブラウン管を巡る競争は東南アジア地域で行われている。したがって,本件合意により競争の実質的制限が生じたとしても,それは日本国内におけるものではなく,東南アジア地域におけるものである。
よって,日本における競争の実質的制限が認められないため,不当な取引制限の成立要件を満たさない。
エ 審査官の主張について
審査官は,特定ブラウン管を我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が現地製造子会社等に購入させるテレビ用ブラウン管と定義した上で,本件に独占禁止法が適用できる根拠として,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が取引条件を交渉して決定し,現地製造子会社等にその決定内容に従って購入させるなどといった一定の役割分担の下に一体となって特定ブラウン管の購入に係る事業活動を行っていたことを主張する。
しかし,必ずしも,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が取引の数量や価格等の交渉及び決定を行っていたわけではなく,また,現地製造子会社等も上記決定に従ってテレビ用ブラウン管を購入していたわけではなかったのであって,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が現地製造子会社等にテレビ用ブラウン管を購入させていたのではない。また,被審人は,審査官の主張する一定の役割分担を認識していたわけではないし,そもそも,本件合意は審査官が主張するような態様・役割分担で行われていた取引を対象とするものではない。
3 争点3(本件ブラウン管の売上額は独占禁止法第7条の2第1項の「当該商品の売上額」に該当し,課徴金の計算の基礎となるか否か)について
⑴ 審査官の主張
課徴金の額は,独占禁止法第7条の2第1項の規定に従って,実行期間中のカルテル対象商品又は役務の売上額に一定率を乗ずる方式によって機械的に算出することとされている。すなわち,独占禁止法第7条の2第1項は,不当な取引制限が成立する範囲の商品又は役務の売上額が課徴金の計算の前提となる売上額になることを明記しており,また,同項に規定する政令(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令〔昭和52年政令第317号。以下「独占禁止法施行令」という。〕)も同項の規定を前提として,その算定方法を定めるにとどまる。さらに,裁判例上も「『当該商品』とは,違反行為である相互拘束の対象である商品,すなわち,違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品であって,違反行為である相互拘束を受けたものをいうと解すべきである」(東京高等裁判所平成22年11月26日判決・公正取引委員会審決集第57巻第2分冊194頁〔出光興産株式会社による審決取消請求事件〕)とされている。このように,違反行為の拘束力を受けた商品又は役務の売上額であれば,課徴金の計算の基礎となるのであって,被審人が主張する,日本国内で具体的な競争制限効果が生じたことなどといった更に他の要件を満たす一部の商品又は役務のみに係る売上額が課徴金の算定の前提となるとはされていない。
したがって,本件合意により,特定ブラウン管の販売分野という日本を含む一定の取引分野における競争が実質的に制限されていたと認められるのであるから,特定ブラウン管の売上額はいずれも「当該商品の売上額」に該当するものとして課徴金の計算の基礎となる。
⑵ 被審人の主張
ア 審査官は,本件における「当該商品」とは,特定ブラウン管,すなわち,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が現地製造子会社等に購入させる特定サイズのテレビ用ブラウン管である旨主張しているが,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が現地製造子会社等にテレビ用ブラウン管を購入させていた事実はない。したがって,「当該商品」に該当しない特定ブラウン管の売上額を課徴金の計算の基礎とした本件課徴金納付命令は違法である。
イ 独占禁止法第7条の2第1項の「当該商品又は役務」とは,具体的な競争制限効果が日本国内で生じた取引に係る商品又は役務であることを前提としていると解すべきである。具体的な競争制限効果が日本国内で生じたか否かは,商品又は役務が日本において供給され,又は日本に向けて供給されたか,日本に所在する購入者が商品又は役務の代金を支払ったか否かにより判断されるべきである。
本件ブラウン管は,東南アジア地域で供給され,現地製造子会社等がその代金を支払ったのであるから,日本国内において具体的な競争制限効果は生じておらず,「当該商品」に該当しない。
したがって,本件ブラウン管の売上額を課徴金の計算の基礎とした本件課徴金納付命令は違法である。
第6 当委員会の判断
1 争点1(本件課徴金納付命令に関する手続の適法性)について
⑴ 認定事実
前記第2及び第3で認定した事実並びに後掲の証拠等によれば,本件課徴金納付命令に関する手続に関し,次の事実が認められる。
ア 公正取引委員会は,平成21年4月7日,被審人に対し,本件違反行為に基づき課徴金13億7362万円の納付を命ずることを予定している旨を,課徴金納付命令書案を添付した通知書を送達して通知した。この課徴金納付命令書案の課徴金納付命令の番号,納期限及び作成日は空欄であったが,その内容は,平成21年10月7日付け課徴金納付命令書と同一であった。(査第158号証の1及び2,第159号証)
イ 公正取引委員会は,同月14日及び同月20日,被審人に対し,審査規則第29条,第25条に基づく事前説明を行った。(査第160号証,第161号証)
ウ 被審人は,同年5月12日,公正取引委員会に対し,前記アの課徴金納付命令書案について,サムスンSDIと連名の意見陳述書を証拠9点とともに提出した。(査第162号証。以下「本件意見申述等」という。)
エ 公正取引委員会は,同年9月28日までに,被審人に対して課徴金13億7362万円の納付を命ずることなどについて,独占禁止法第69条第1項に基づき,委員長及び4名の委員の合議により議決した。(当事者間に争いがない。)
オ 公正取引委員会は,同月29日,被審人に対し,被審人による本件意見申述等を検討した結果を説明するとともに,被審人代理人と調整の上,同年10月7日に課徴金納付命令の申し渡しを行う予定である旨通知した。(査第165号証,第166号証)
カ 公正取引委員会は,本件違反行為と同一の事実により被審人に対して課徴金13億7362万円を平成22年1月8日までに納付するよう命ずる平成21年10月7日付け課徴金納付命令書を作成した。(査第164号証)
キ ところが,被審人が,同年10月7日,公正取引委員会に対し,被審人の当時の日本国内における代理人及び復代理人全員を同月5日付けで解任した旨の書面を提出したため,公正取引委員会は,同月7日以降,被審人の日本国内の代理人に対し,平成21年10月7日付け課徴金納付命令書謄本を送達することができなくなった。(査第166号証,第168号証の1及び2)
ク 公正取引委員会は,同月19日,我が国外務省を通じて,マレーシア政府(外務省)に対し,平成21年10月7日付け課徴金納付命令書謄本を領事送達することについて同意するよう求めたが,マレーシア政府(外務省)は,平成22年2月8日までに,我が国外務省に対し,領事送達について同意することはできない旨回答した。(査第169号証)
ケ 公正取引委員会は,同月12日,被審人に対し,課徴金13億7362万円を同年5月13日までに納付するよう命ずるとともに(本件課徴金納付命令),本件課徴金納付命令書謄本の公示送達に係る公示送達書の掲示を行った。(査第171号証,第172号証)
そして,公正取引委員会は,同年2月12日,被審人に対し,審査規則第4条に基づき,本件課徴金納付命令書謄本について公示送達をした旨の通知書と公示送達書の写しをそれぞれの英訳とともに国際郵便により送付し,これらは同月17日,被審人に到達した。(査第173号証の1ないし第175号証)
コ 本件課徴金納付命令書と平成21年10月7日付け課徴金納付命令書は,次のとおり異なる点があるほか,同一である。(査第164号証)

※表省略。

⑵ 事前手続について(争点1⑴)
独占禁止法第50条第6項,第49条第3項,第5項は,公正取引委員会が課徴金納付命令をしようとするときは,その名宛人となるべき者に対し,納付を命じようとする課徴金の額,課徴金の計算の基礎及び課徴金に係る違反行為を書面により通知した上で,意見を述べ,及び証拠を提出する機会を付与しなければならない旨規定し,さらに,審査規則第29条,第25条は,上記通知を受けた者等から申出があったときその他必要があるときは,上記通知事項及び課徴金の計算の基礎又はその課徴金に係る違反行為を基礎付けるために必要な証拠について説明するものとする旨規定する。この趣旨は,課徴金納付命令が不利益処分であることに鑑み,名宛人に対し,事実関係等について弁明の機会を与えてその防御権を保障するとともに,公正な行政を確保することにあると解される。
前記認定のとおり,公正取引委員会が平成21年4月7日に被審人に通知した課徴金納付命令書案は,課徴金納付命令番号,納期限及び作成日付が空欄であり,課徴金の額に1万円未満の端数があるときは,その端数を切り捨てることを定めた独占禁止法の条文が本件課徴金納付命令書と異なるが,名宛人の名称,所在地及び代表者名,納付すべき課徴金の額,課徴金に係る違反行為並びに課徴金の計算の基礎(上記の端数切捨てに関する条文を除く。)は本件課徴金納付命令書と同一である。公正取引委員会は,この課徴金納付命令書案を前提に,被審人に意見陳述及び証拠提出の機会を与え,更に被審人の申出に基づいて事前説明を行った上で本件課徴金納付命令をしたのであるから,事前手続制度の趣旨に照らしても,本件課徴金納付命令について所定の事前手続を経たものといえる。したがって,本件課徴金納付命令についての事前手続が行われなかったことを前提とする被審人の主張は採用できない。
⑶ 本件課徴金納付命令についての合議及び本件課徴金納付命令書の記名押印について(争点1⑵ア及びイ)
ア 課徴金納付命令書には,違反行為のほかに納期限を記載しなければならないとされているところ(独占禁止法第50条第1項),課徴金の納期限は,課徴金納付命令書の謄本を発する日から3月を経過した日とされていることから(同条第3項),本件のように平成21年10月7日付け課徴金納付命令書謄本を即日発することができなかった場合には,改めて,課徴金納付命令書の謄本を発する日を前提とする課徴金の納期限を記載した課徴金納付命令書を作成することとなる。
前記⑴エのとおり,公正取引委員会委員長及び委員4名は,平成21年9月28日までに,被審人に対し,本件違反行為により課徴金13億7362万円を納付するよう命ずる旨合議の上決定したものであるが,この合議による意思決定は,被審人に対して,本件違反行為を理由に課徴金13億7362万円を納付するよう命ずることと,課徴金納付命令書の謄本を発する日から3月を経過した日を課徴金の納期限とすることを決定したものであるから,平成21年10月7日付け課徴金納付命令と違反行為及び課徴金額が同一で,実質的には納期限のみを変更したものといえる本件課徴金納付命令は,上記の合議による意思決定に基づいてなされたものということができる。
なお,前記⑵のとおり,平成21年10月7日付け課徴金納付命令書と本件課徴金納付命令書とでは,課徴金の額から端数を切り捨てることの根拠となる条文が異なっているが,これは独占禁止法の平成21年法律第51号による改正により,同法第7条の2の中の項の番号が変更されたことによるものであり,実質的に同一の条文を適用したものであるから,この点を理由に,本件課徴金納付命令について公正取引委員会委員長及び委員が改めて合議をする必要があったとはいえない。
以上によれば,本件課徴金納付命令についての合議がないことを理由とする被審人の主張(前記第5の1⑵イ(ア)ないし(ウ))は前提を欠き,採用できない。
イ 前記⑴コのとおり,本件課徴金納付命令書には,平成21年9月28日までに行われた合議に出席した委員のうち1名の記名押印がない。しかし,独占禁止法には,合議に参加した審判官が審決案に署名押印することに支障がある場合に他の審判官が審決案にその事由を付記して署名押印すべきことを定める規則第74条第3項のような規定がないことに鑑みると,合議に出席した公正取引委員会委員が課徴金納付命令書作成時までに退任した場合には,これに記名押印できないのはやむを得ないことであり,また,その旨の付記も要求されていないのであるから,これらのことをもって,課徴金納付命令の効力に影響を及ぼすような瑕疵があるとはいえない。実質的にみても,命令書に公正取引委員会委員長及び委員の記名押印が必要とされている趣旨は,合議の出席者がそれぞれ命令書の内容と合議の内容の一致を確認することにより命令の正確性を担保するとともに,当該委員の合議への関与を確認することにあると考えられるところ,本件課徴金納付命令書に前記⑴エの合議に出席した5名のうち4名が記名押印することで,本件課徴金納付命令書の内容の正確性は担保されていると考えられるし,この4名は,5名による合議が成立したことを前提に4名の記名押印のみで本件課徴金納付命令書を作成することを了承しており,1名の委員が決定には関与していたが,退任したために記名押印できないことを確認していると考えられるからである。
したがって,この点に関する被審人の主張(前記第5の1⑵イ(エ))も採用できない。
⑷ 平成21年10月7日付け課徴金納付命令書との関係について(争点1⑶)
前記⑵のとおり,本件課徴金納付命令は,平成21年10月7日付け課徴金納付命令と納付すべき課徴金の額,課徴金に係る違反行為及び課徴金の計算の基礎が同一であり(前記⑶アのとおり,課徴金の額に1万円未満の端数があるときは,その端数を切り捨てることを定めた独占禁止法の条文も実質的には同一である。),実質的に納期限のみを異にするものである。被審人は,この事実をもって,本件課徴金納付命令は平成21年10月7日付け課徴金納付命令と同一の行為について重複して課徴金の納付を命ずるものであって,違法であると主張するが,平成21年10月7日付け課徴金納付命令書は被審人に送達されておらず,効力が発生していないから,被審人には具体的な不利益は生じていない。よって,これを理由に本件課徴金納付命令が違法であるとはいえず,被審人の主張は理由がない。
⑸ 本件公示送達について(争点1⑷)
ア 独占禁止法第50条第4項の規定による審判請求に基づく審判手続は,原処分の適法性及び相当性を再審査する手続である。
被審人は,本件公示送達が違法である旨主張するが,原処分に係る命令書謄本の送達が適法になされたか否かは原処分の効力発生の有無に関する問題であって,原処分自体の適法性や相当性には関係がないから,本件審判手続において本件公示送達の違法性を主張することは失当というほかない。
イ ただし,念のため,本件公示送達の適法性について検討する。
前記(1)クのとおり,マレーシア政府は,本件課徴金納付命令書と実質的には同じ内容の平成21年10月7日付け課徴金納付命令書謄本の領事送達に同意することはできない旨回答していることが認められる。そうすると,本件課徴金納付命令書謄本についても,マレーシア政府が領事送達に同意することは考え難いから,本件課徴金納付命令書謄本を領事送達によって送達することができない場合に当たると認めることができる。また,管轄官庁送達については,マレーシアにおいて,これを実施する権限のある管轄官庁を定めた条約等がないため実施することができない(公知の事実)。
したがって,マレーシアにおいてすべき本件課徴金納付命令書謄本の送達について,独占禁止法第70条の17の規定により読み替えて準用される民事訴訟法第108条の規定によることができず,又はこれによっても送達することができないと認めるべき場合(独占禁止法第70条の18第1項第2号)に該当する。
なお,本件公示送達により,マレーシアに所在する被審人に対して送達の効力が生じたとしても,マレーシアの領域内において我が国の公権力を行使するものではないから,マレーシアの主権を侵害しないことは明らかである。
よって,本件公示送達は適法になされたものと認められる。
2 争点2(本件に独占禁止法第3条後段を適用することができるか否か)について
⑴ 本件は,東南アジア地域に所在する我が国ブラウン管テレビ製造販売業者の現地製造子会社等向けテレビ用ブラウン管の販売価格について,被審人を含む11社が最低目標価格等を設定する旨合意した価格カルテルの事案である。
 本件では,被審人が外国事業者である上,本件合意が日本国外において形成され,本件合意の対象となったテレビ用ブラウン管(本件ブラウン管)の直接の購入者である現地製造子会社等も日本国外に所在することから,このような場合にも独占禁止法第3条後段を適用することができるか否かが争点となっている。
⑵ 本件における独占禁止法の適用についての基本的な考え方
事業者が日本国外において独占禁止法第2条第6項に該当する行為に及んだ場合であっても,少なくとも,一定の取引分野における競争が我が国に所在する需要者をめぐって行われるものであり,かつ,当該行為により一定の取引分野における競争が実質的に制限された場合には,同法第3条後段が適用されると解するのが相当である。
なぜならば,独占禁止法は,我が国における公正かつ自由な競争を促進するなどして,一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とするところ(第1条),同法第3条後段は,不当な取引制限行為を禁止して,我が国における自由競争経済秩序を保護することをその趣旨としていることからすれば,同法第2条第6項に該当する行為が我が国でなされたか否か,あるいは,当該行為を行った事業者が我が国に所在するか否かに関わりなく,少なくとも,一定の取引分野における競争が我が国に所在する需要者をめぐって行われるものであり,かつ,当該行為により一定の取引分野における競争が実質的に制限された場合には,我が国における自由競争経済秩序が侵害されたということができ,同法第3条後段を適用するのがその趣旨に合致するからである。
以上を前提にして,まず,本件における一定の取引分野を画定した上で,当該一定の取引分野における競争が我が国に所在する需要者をめぐって行われるものであったか,また,当該一定の取引分野における競争が実質的に制限されたかを検討する。
⑶ 本件における一定の取引分野について
ア 独占禁止法第2条第6項における「一定の取引分野」は,原則として,違反行為者のした共同行為が対象としている取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討して画定すれば足りるものと解される(前記東京高等裁判所平成5年12月14日判決参照)。
本件合意は,前記第3の3のとおり,本件ブラウン管の現地製造子会社等向け販売価格について,各社が遵守すべき最低目標価格等を設定する旨の合意であり,11社のした共同行為が対象としている取引は,本件ブラウン管の販売に関する取引であり,それにより影響を受ける範囲も同取引であるから,本件ブラウン管の販売分野が一定の取引分野であると認められる。
イ ところで,被審人は,本件における一定の取引分野の画定は,企業結合規制におけるのと同様に,一定の取引の対象となる商品又は役務の範囲,取引の地域の範囲(地理的範囲)等に関して,基本的には需要者にとっての代替性という観点から判断され,必要に応じて供給者にとっての代替性という観点も考慮された上で行われるべき旨主張する。
しかし,独占禁止法第2条第6項における「一定の取引分野」は,そこにおける競争が共同行為によって実質的に制限されているか否かを判断するために画定するものであるところ,不当な取引制限における共同行為は,特定の取引分野における競争の実質的制限をもたらすことを目的及び内容としているのであるから,通常の場合,その共同行為が対象としている取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討して,一定の取引分野を画定すれば足りると解される。
一方,企業結合規制においては,企業結合が通常それ自体で直ちに特定の取引分野における競争を実質的に制限するとはいえない上,特定の商品又は役務を対象とした具体的な行為があるわけではないから,企業結合による市場への影響等を検討する際には,商品又は役務の代替性等の客観的な要素に基づいて一定の取引分野を画定するのが一般的となっている。
このように企業結合規制と具体的な行為によって既に生じている競争の実質的制限が問題となる不当な取引制限とでは性質上の違いがあるのであるから,企業結合規制及び不当な取引制限における一定の取引分野は,それぞれにふさわしい方法で画定すれば足りると解される。
ウ なお,本件課徴金納付命令では,「特定ブラウン管」について,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が現地製造子会社等に購入させる別紙3記載のテレビ用ブラウン管と定義しているところ,これは,その定義表現の中には含まれていないものの,その理由説示から,現地製造子会社等が購入するテレビ用ブラウン管の範囲について,本件交渉等を経たものを前提としていることが明らかである。したがって,「本件ブラウン管」を本件交渉等を経て現地製造子会社等が購入する別紙3記載のテレビ用ブラウン管と定義したことにより,「特定ブラウン管」と「本件ブラウン管」は商品の範囲としては同一であるから,審査官が本件における一定の取引分野であると主張している特定ブラウン管の販売分野と本件ブラウン管の販売分野は同一のものである(被審人が争っている「購入させた」ものであるか否かについては,後記⑷の中で判断する。)。
⑷ 本件の一定の取引分野における競争が我が国に所在する需要者をめぐって行われるものであったかについて
ア 以上を前提に,まず我が国ブラウン管テレビ製造販売業者各社ごとに本件ブラウン管の取引の実態を検討する。
(ア) オリオン電機
a 認定事実
後掲各証拠並びに査第230号証及び第231号証(後二者は平成22年(判)第2号ないし第5号事件〔以下「第2号ないし第5号事件」という。〕及び同第6号事件〔以下「第6号事件」といい,両事件を併せて「第2号ないし第5号事件等」という。〕における丹羽順一の参考人審尋速記録写し)によれば,次の事実が認められる。
(a) 製造委託先会社との関係
ⅰ WORLD ELECTRIC (THAILAND) LTD.は昭和63年に,KORAT DENKI LTD.は平成7年に,オリオン電機の海外におけるブラウン管テレビの製造拠点としてタイ王国において設立されたブラウン管テレビの製造販売を業とする会社である(以下,上記2社を併せて「ワールド等」という。)。
オリオン電機は,ワールド等に出資することはしなかったが,ワールド等を自社の製品を製造するグループ企業と位置付け,ワールド等と技術援助契約を締結した上,ワールド等の設立以来,自社の従業員をワールド等の会社代表者,役員及び従業員として派遣している。
(査第1号証,第62号証,第83号証ないし第86号証,第88号証,第89号証,第153号証の1及び2,第154号証の1及び2,第176号証ないし第183号証)
ⅱ オリオン電機は,かつては同社の国内工場においてブラウン管テレビを製造していたが,遅くとも平成7年頃以降は行っておらず,専ら,ワールド等といった製造委託先会社に設計や仕様を指示してブラウン管テレビの製造を委託していた。
なお,オリオン電機は,ブラウン管テレビの製造販売について,量販店の卸売業者や相手先商標製品製造(OEM)の相手先等からの注文を受けてから,製造委託先会社に製造を委託する受注生産方式を採っていた。
(査第1号証,第62号証,第83号証ないし第85号証,第88号証,第89号証,第176号証ないし第181号証,第186号証の1及び2)
ⅲ オリオン電機は,価格交渉力を向上させることや受注したブラウン管テレビの販売価格を管理することを目的として,企画部等の部署において,原価計算をした上,ワールド等に製造委託するブラウン管テレビに使用するブラウン管等の部品の選定やその購入価格及び購入数量の決定等の購買業務等を行っていた。(査第62号証,第178号証,第179号証,第183号証,第186号証の1及び2,第187号証)
なお,前記ⅰの技術援助契約の第1条において,ワールド等は必要な資材についてオリオン電機を通じて購入することに協力する旨定められている。(査第88号証,第89号証,第153号証の1及び2,第154号証の1及び2)
ⅳ オリオン電機は,ワールド等が本件ブラウン管を用いて製造したブラウン管テレビの全てを購入し,北米,欧州及び日本など国内外に販売していた。
なお,ワールド等はオリオン電機以外からも委託を受けるなどして製品を製造していたが,その割合は売上げの1割にも満たない程度であった。
(査第62号証,第87号証,第178号証ないし第181号証,第183号証ないし第185号証)
(b) 平成15年5月22日頃から平成19年3月29日までの本件ブラウン管に関する取引
ⅰ オリオン電機は,主にサムスンSDIほか4社の中から一又は複数の事業者を選定し,その事業者との間で,本件ブラウン管の仕様を交渉して決定するとともに,おおむね1年ごとに本件ブラウン管の購入予定数量の大枠を,また,それを踏まえて,おおむね四半期ごとに本件ブラウン管の購入価格及び購入数量を交渉して決定していた。(査第2号証,第3号証の1及び2,第5号証ないし第8号証の2,第28号証,第31号証,第62号証,第90号証ないし第93号証の2,第178号証,第179号証)
ⅱ オリオン電機は,ワールド等に対し,テレビ用ブラウン管の仕様,購入価格,購入数量等を記載した部品表若しくは仕様書を送付し,又はそれらのデータを送信することにより,本件ブラウン管を含むテレビ用ブラウン管を前記ⅰのとおり選定した事業者又はその子会社等から購入するよう指示していた。(査第62号証,第88号証ないし第90号証,第153号証の1及び2,第154号証の1及び2,第178号証,第179号証,第187号証)
ⅲ ワールド等は,前記ⅱの指示に従い,オリオン電機により選定された事業者又はその子会社等(被審人ほか7社の関係では,MT映像ディスプレイ・マレーシア,MT映像ディスプレイ・タイ,中華映管マレーシア,LGフィリップス・ディスプレイズ及びタイCRT)に対して,本件ブラウン管を発注し,購入していた。(査第2号証,第32号証の1及び2,第63号証,第178号証,第179号証,第187号証)
b 前記認定事実によれば,オリオン電機は,ワールド等に製造委託するブラウン管テレビに使用するブラウン管等の部品の選定やその購入価格,購入数量等の決定等の業務を行っており,サムスンSDIほか4社の中から選定した事業者と交渉した上で,本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の取引条件を決定してそれをワールド等に伝え,ワールド等は,それに従ってオリオン電機が決定した購入先から本件ブラウン管を購入していたことが認められる。そうすると,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等といった重要な取引条件を実質的に決定していたのはオリオン電機であって,ワールド等はオリオン電機の指示に従っていたにすぎず,本件ブラウン管の購入先及び重要な取引条件の決定について実質的に関与していたとは認められない。すなわち,オリオン電機は,その選定した事業者との間で交渉し,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の重要な取引条件を決定した上,ワールド等に対し指示して本件ブラウン管を購入させていたということができる。
これに対し,被審人は,オリオン電機が本件ブラウン管の購買業務に関与していたことについて,法的な又は契約上の根拠はなかったし,オリオン電機とワールド等との間を規律する唯一の契約である技術援助契約(査第88号証,第89号証,第153号証の1及び2,第154号証の1及び2)をみても,ワールド等が上記価格交渉の結果やオリオン電機の指示に拘束されるという条項もなかったから,オリオン電機が本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の取引条件を交渉の上,決定し,ワールド等に指示して本件ブラウン管を購入させていたとはいえない旨主張する。
しかし,前記a(a)ⅲのとおり,オリオン電機において,ワールド等が製造するブラウン管テレビの原価計算をして販売価格を管理していたことなどに照らせば,オリオン電機がブラウン管の調達からブラウン管テレビの製造及び販売について実質的に決定していたと認められるのであって,本件ブラウン管の取引条件の交渉や価格の決定方法等について,明確な定めがないことは上記認定の妨げとなるものではない。むしろ,技術援助契約第1条(前記a(a)ⅲ)をみれば,オリオン電機が本件ブラウン管の取引条件の交渉や決定に関与することも同契約で想定されている範囲内であるといい得る。
したがって,前記のとおり,オリオン電機は,その選定した事業者との間で交渉し,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の重要な取引条件を決定した上,ワールド等に対し指示して本件ブラウン管を購入させていたということができる。
(イ) 三洋電機
a 認定事実
後掲各証拠並びに査第223号証及び第224号証(後二者は第2号ないし第5号事件等における古賀一路の参考人審尋速記録写し)によれば,次の事実が認められる。
(a) 現地製造子会社との関係
ⅰ 三洋電機は,かつては同社の国内工場においてブラウン管テレビを製造していたが,平成8年にインドネシア共和国にP.T. SANYO Electronics Indonesia(以下「三洋電子インドネシア」という。)を設立し,同社にブラウン管テレビの製造業務を移管した。(査第190号証)
なお,三洋電子インドネシアの議決権については,三洋電機の完全子会社でシンガポール共和国に所在するSANYO Asia Pte. Ltd.が,平成14年4月から平成16年3月まではその82パーセントを,同年4月以降はその全てを保有していた。(査第1号証,第63号証,第67号証,第189号証)
ⅱ 三洋電機は,平成18年9月30日まで,「マルチメディアカンパニー」,「AVソリューションズカンパニー」又は「AVカンパニー」(時期により名称が異なる。)の中の専門部署(例えば「AVカンパニー」のときは「テレビ統括ビジネスユニット」)において,三洋電子インドネシアを含む現地製造子会社(以下「三洋電子インドネシア等」という。)が使用するテレビ用ブラウン管の仕様,製造するブラウン管テレビの仕様,製造方法等に関する規格や検査基準を設定したり,毎年の事業計画,四半期ごとの確認,月次の報告等を通じて三洋電子インドネシア等に対して事業上の指示及び管理を行うなど,三洋電機及び三洋電子インドネシア等が行うブラウン管テレビに係る事業を統括していた。また,三洋電機は,上記各カンパニー内の購買部門において,同社及び三洋電子インドネシア等が使用するテレビ用ブラウン管について,購買業務の効率性を高めるとともにボリューム・ディスカウントによるスケール・メリットの獲得等を目的として,まとめて購買業務を行い,一括して交渉を行っていた。(査第63号証,第67号証,第188号証ないし第191号証)
ⅲ 三洋電子インドネシアには,製造したブラウン管テレビを顧客に直接販売するための販売部門がなかったため,三洋電子インドネシアが本件ブラウン管を用いて製造したブラウン管テレビは,三洋電機が承認した事業計画に従い,同社の販売子会社である三洋セールスアンドマーケティング株式会社及びP.T. Sanyo Sales Indonesiaに販売され,これらの会社により国外向けに販売されていた。(査第63号証,第67号証,第189号証)
(b) 平成15年5月22日頃から平成19年3月29日までの本件ブラウン管に関する取引
ⅰ 三洋電機は,平成18年9月30日まで,主にサムスンSDI,MT映像ディスプレイ及びLGフィリップス・ディスプレイズの中から一又は複数の事業者を選定し,その事業者から仕様書の提出を受けるなどした上で,本件ブラウン管の仕様を交渉して決定するとともに,おおむね1年ごとに本件ブラウン管の購入予定数量の大枠を,また,それを踏まえて,おおむね四半期ごとに本件ブラウン管の購入価格及び購入数量を交渉して決定していた。(査第2号証,第10号証の1及び2,第28号証,第31号証,第63号証,第67号証,第92号証及び同枝番2,第93号証及び同枝番2,第97号証及び同枝番2,第98号証の1及び2,第188号証ないし190号証,第192号証)
ⅱ 三洋電機は,決定した本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の取引条件を,三洋電子インドネシアの担当者に電子メールで伝え,前記ⅰのとおり選定した事業者又はその子会社等から本件ブラウン管を購入するよう指示していた。(査第29号証,第63号証,第189号証,第190号証)
ⅲ 三洋電子インドネシアは,三洋電機が決定した取引条件に従い,同社により選定された事業者又はその子会社等(被審人ほか7社の関係では,被審人,MT映像ディスプレイ・インドネシア,MT映像ディスプレイ・タイ,LGフィリップス・ディスプレイズ及びLPディスプレイズ・インドネシア)に対して,本件ブラウン管の発注書を送付し,本件ブラウン管の納入を受け,請求書を受領し,代金を支払っていた。(査第2号証,第32号証の1及び2,第63号証,第67号証,第189号証,第190号証)
b 前記認定事実によれば,三洋電機は,三洋電機及び三洋電子インドネシア等が行うブラウン管テレビに係る事業を統括しており,サムスンSDI,MT映像ディスプレイ及びLGフィリップス・ディスプレイズの中から選定した事業者と交渉した上で,本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の取引条件を決定してそれを三洋電子インドネシアに伝え,同社は,それに従って三洋電機が決定した購入先から本件ブラウン管を購入していたことが認められる。そうすると,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等といった重要な取引条件を実質的に決定していたのは三洋電機であって,三洋電子インドネシアは三洋電機の指示に従っていたにすぎず,本件ブラウン管の購入先及び重要な取引条件の決定について実質的に関与していたとは認められない。すなわち,三洋電機がその選定した事業者との間で交渉し,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の重要な取引条件を決定した上,三洋電子インドネシアに対し指示して本件ブラウン管を購入させていたということができる。
これに対し,被審人は,三洋電機が本件ブラウン管の購買業務に関与していたことについて根拠となる契約書や規則等がないこと,三洋電機は価格交渉の際に三洋電子インドネシアの意向を確認しながら進めていたこと,被審人と三洋電子インドネシアとの間で,それぞれの親会社が関与しないで本件ブラウン管の価格が決められたこともあった旨被審人の当時の担当者である李大儀が供述していることなどからすれば,三洋電機が本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の取引条件を交渉の上,決定し,三洋電子インドネシアに指示して本件ブラウン管を購入させていたとはいえない旨主張する。
しかし,三洋電機が交渉の当事者として最終的に取引条件を決定するに当たり,その過程において,三洋電子インドネシアや他の子会社等の意向を集約し,集中購買によるグループ全体の利益を図りつつ,三洋電子インドネシアや他の子会社等の個々の意向に沿うように配慮あるいは調整することは,むしろ,最終的に取引条件の決定を行う三洋電機としては当然のことであるといえる。また,被審人が指摘する李大儀の供述内容(査第229号証及び審第7号証)は,単に被審人と三洋電子インドネシアとの間で本件ブラウン管の価格を決めたこともあった旨供述するにすぎず,具体性に乏しく信用することはできない上,前記認定事実を裏付ける掲記の証拠に照らして採用できない。
なお,三洋電機が本件ブラウン管の取引条件の交渉に関与することについて,三洋電子インドネシアとの関係で何らかの契約や規則等がないことは,前記認定を妨げる事情とは認められない。
したがって,前記認定事実に照らせば,三洋電機がその選定した事業者との間で交渉し,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の重要な取引条件を決定した上,三洋電子インドネシアに対し指示して本件ブラウン管を購入させていたということができる。
(ウ) シャープ
a 認定事実
後掲各証拠及び査第225号証(第6号事件における川口泰弘の参考人審尋速記録写し)によれば,次の事実が認められる。
(a) 現地製造子会社又は関連会社との関係
ⅰ シャープは,かつては同社の国内工場においてブラウン管テレビを製造していたが,遅くとも平成13年頃以降は行っておらず,専ら,後記①ないし⑤の現地製造子会社又は関連会社5社(以下「SREC等」という。)においてブラウン管テレビを製造していた。
なお,シャープは,自社又は子会社の役員又は従業員をSREC等の役員等として派遣していた。
① マレーシア所在のSharp-Roxy Electronics Corporation (M) Sdn.Bhd.(シャープが議決権の50パーセントを保有していた。)
② フィリピン共和国所在のSharp (Philippines.) Corporation(シャープが議決権の過半数を保有していた。)
③ タイ王国所在のSharp Manufacturing Thailand Co., Ltd.(シャープが,平成17年3月末までは議決権の33パーセントを保有し,同年4月以降は議決権の全てを保有していた。)
④ インドネシア共和国所在のP.T. Sharp Electronics Indonesia(シャープが議決権の過半数を保有していた。)
⑤ マレーシア所在のSharp Electronics (Malaysia) Sdn.Bhd.(以下「SEM」という。シャープが議決権の全てを保有していた。)
(査第1号証,第64号証,第100号証の1ないし3,第193号証)
ⅱ シャープは,「AVシステム事業本部液晶デジタルシステム第4事業部」等の部署において,同社の連結子会社等である現地製造子会社又は関連会社が策定する,主要部品の調達数量を含む生産計画,販売計画,人員及び在庫についての計画等を含む,現地製造子会社又は関連会社の経営計画に事前の承認を与えていた。また,シャープは,価格交渉力の向上を目的に,現地製造子会社又は関連会社が製造するブラウン管テレビの製造に必要なテレビ用ブラウン管について,取引先を選定し,購入価格,購入数量等の取引条件についてのテレビ用ブラウン管メーカーとの間の交渉を取りまとめ,テレビ用ブラウン管の購入を統括して一元管理するなどして,シャープ,SREC等並びにその他の製造子会社及び関連会社が行うブラウン管テレビに係る事業を統括していた。(査第64号証,第150号証,第193号証ないし第195号証)
ⅲ シャープ及び同社の国外の販売子会社等は,SREC等が本件ブラウン管を用いて製造したブラウン管テレビの大部分を購入して国内外に販売していた。(査第64号証,第68号証)
(b) 平成15年5月22日頃から平成19年3月29日までの本件ブラウン管に関する取引
ⅰ シャープは,サムスンSDIほか4社等からテレビ用ブラウン管の価格トレンド(テレビ用ブラウン管のインチサイズ別,シャープの現地製造子会社又は関連会社別及びテレビ用ブラウン管の管種別の売買価格及び売買台数並びに貿易条件〔TRADE TERM〕等)の情報を収集し,当該情報とテレビ用ブラウン管業界の動向やテレビ用ブラウン管の新規開発状況等の情報を基に,SEMの設計・開発部門及びSREC等と協議し,その結果を踏まえて,主にサムスンSDIほか4社との間で,テレビ用ブラウン管の仕様や翌半期のテレビ用ブラウン管の価格トレンド等の調整を行い,これらの事業者の中から選定した事業者との間で,毎年1月から2月頃と毎年7月から8月頃にかけて,それぞれ各年度の上期(4月から9月)及び下期(10月から翌年3月)において取引される本件ブラウン管のSREC等全体の購入価格,購入数量等について,交渉の相手方である事業者から仕様等の技術情報を収集しつつ,自ら交渉して,取引条件の取りまとめを行っていた。(査第2号証,第3号証の1及び2,第11号証ないし第18号証の2,第28号証,第64号証,第92号証及び同枝番2,第93号証及び同枝番2,第97号証及び同枝番2,第105号証ないし第109号証,第193号証ないし第195号証)
ⅱ シャープは,SREC等に対し,前記ⅰの交渉により調整されたSREC等全体の価格トレンドを伝達するとともに,SREC等に対し,SREC等が,固有の貿易条件,支払条件等を加味して更に前記ⅰのとおり選定された事業者又はその子会社等と交渉するか,又は,当該価格トレンドの購入価格に従って本件ブラウン管をそれらの者から購入するか確認していた。(査第64号証,第195号証)
ⅲ SREC等は,シャープから伝達された前記ⅰの交渉により調整済みのSREC等全体の価格トレンドが,既に貿易条件を加味したものであったことから,前記ⅱの確認を受けて更に前記ⅰのとおり選定された事業者又はその子会社等と交渉する場合であっても,多くは支払通貨等の支払条件について交渉するのみで,基本的には,シャープから伝達された前記ⅰの交渉により調整済みの価格トレンドどおりの価格を本件ブラウン管の購入価格としていた。(査第195号証)
ⅳ シャープは,前記ⅰのとおり選定した事業者に対し,前記ⅰの交渉及び前記ⅱの確認を受けて更に調整された価格トレンドに従って,本件ブラウン管の購入価格を記載した正式な価格見積書をSREC等に発行するよう依頼していた。(査第195号証,第196号証)
ⅴ SREC等は,シャープにより選定された事業者又はその子会社等(被審人ほか7社の関係では全社)から正式な価格見積書を入手し,当該価格見積書の記載に基づきこれらの者に対し本件ブラウン管を発注し,納品,検収及び支払という購買発注及び納入進度管理業務を行っていた。(査第2号証,第32号証の1及び2,第64号証,第195号証)
b 前記認定事実によれば,シャープはSREC等との協議の結果を踏まえてサムスンSDIほか4社との交渉に臨んでいること,SREC等は貿易条件や支払条件については,個別に被審人ほか7社と交渉する余地があったことが認められるものの,シャープは,シャープ,SREC等並びにその他の製造子会社及び関連会社が行うブラウン管テレビに係る事業を統括しており,サムスンSDIほか4社の中から選定した事業者と交渉した上で,本件ブラウン管の購入価格,購入数量等を決定していたこと,SREC等はシャープの指示に基づき,上記交渉を経て決定された価格トレンド(購入価格,購入数量等)に従ってシャープが決定した購入先から本件ブラウン管を購入していたことが認められる。そうすると,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等といった重要な取引条件を実質的に決定していたのはシャープであったと認められるのであって,同社がその選定した事業者との間で交渉し,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の重要な取引条件を決定した上,SREC等に対し指示して本件ブラウン管を購入させていたということができる。   
これに対し,被審人は,シャープの担当者であった川口泰弘の供述(査第225号証)によれば,本件ブラウン管の取引条件の最終的な決定権はSREC等にあったこと及びシャープは,本件ブラウン管の購入先の選定や購入価格等について,SREC等の意向を踏まえて,価格交渉に関与していたことが認められ,これらによれば,シャープが本件ブラウン管の購入価格等の取引条件を交渉の上,決定し,SREC等に指示して本件ブラウン管を購入させていたとはいえない旨主張する。
確かに,シャープの子会社又は関連会社とはいえ,SREC等はシャープとは別個の法人格を有するものであることや,SREC等の名義で本件ブラウン管を発注していたことなどからすれば,形式的には,SREC等に本件ブラウン管の取引条件の決定権があることは否定し難いものの(川口泰弘が本件ブラウン管の取引条件の最終的な決定権がSREC等にある旨供述している点も,他の供述部分を含めて全体としてみれば,このような趣旨をいうものと解される。),前記認定事実によれば,シャープは,SREC等に必要なテレビ用ブラウン管の購入等を一元管理していたのであるから,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等といった重要な取引条件の実質的な決定権はシャープにあったと認められる。また,シャープがサムスンSDIほか4社との交渉の際,価格トレンドの情報について,SREC等と協議していたとしても,飽くまで,SREC等の意向を踏まえ,調整を図っていたにすぎないと認められるのであって,その結果,SREC等の意向どおりに本件ブラウン管を購入することがあったとしても,そのことをもってSREC等が本件ブラウン管の取引条件について実質的に決定していたとみることはできない。
したがって,前記認定事実に照らせば,シャープがその選定した事業者との間で交渉し,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の重要な取引条件を決定した上,SREC等に対し指示して本件ブラウン管を購入させていたということができる。
(エ) 日本ビクター
a 認定事実
後掲各証拠及び査第226号証(第6号事件における宮﨑孝志の参考人審尋速記録写し)によれば,次の事実が認められる。
(a) 現地製造子会社又は関連会社との関係
ⅰ 日本ビクターは,自社又は自社の子会社若しくは関連会社である販売会社が販売するブラウン管テレビを製造するために,直接又は間接的に出資して,タイ王国にJVC Manufacturing (Thailand) Co., Ltd.(以下「JMT」という。)及びJVC Electronics (Thailand) Co., Ltd.(以下「JET」という。)を,ベトナム社会主義共和国にJVC Vietnam Limited(以下「JVL」という。)をそれぞれ設立し,設計や仕様等を指示してブラウン管テレビを製造させていた。
なお,JMTは,日本ビクターの完全子会社であり,JETは,JVC Sales and Service (Thailand) Co., Ltd.(日本ビクターの完全子会社でシンガポール共和国に所在するJVC ASIA Pte. Ltd.〔以下「JVCアジア」という。〕が50パーセントの議決権を保有している。)が議決権の99パーセントを保有し,JVLは,JVCアジアが議決権の70パーセントを保有していた。
また,日本ビクターの完全子会社でシンガポール共和国に所在するJVC Electronics Singapore Pte. Ltd.(以下,JMT,JET及びJVLと併せて「JMT等」という。)は,音響機器の製品開発等を事業内容としていたが,その外に,自社の一部門であるJVC Procurement Asia(A Division Company of JVC Electronics Singapore Pte. Ltd.)において日本ビクターのブラウン管テレビ製造子会社が使用するテレビ用ブラウン管の一部を調達していた。
(査第1号証,第65号証,第70号証,第111号証の1ないし第114号証,第197号証,第198号証)
ⅱ 日本ビクターは,「AV&マルチメディアカンパニーディスプレイ統括カテゴリー」等の部署において,各地の販売拠点からの注文を取りまとめ,それに基づいてJMT等に生産の指示を出し,完成したブラウン管テレビを上記販売拠点から販売するなどして,ブラウン管テレビの生産,販売及び在庫に関する管理をしていたほか,価格交渉力の向上を目的として,JMT等が使用するテレビ用ブラウン管の調達業務を行うなど,日本ビクター,JMT等並びにその他の製造子会社及び関連会社が行うブラウン管テレビに係る事業を統括していた。(査第65号証,第197号証)
ⅲ JVLは製造していたブラウン管テレビを自らベトナム社会主義共和国内において販売していたが,JMT及びJETにはブラウン管テレビを販売するための営業部門が存在しなかったため,JMTが製造したブラウン管テレビのほとんど全てを日本ビクターが買い上げて国内外に販売し,また,JETが製造したブラウン管テレビの全量を日本ビクターのタイ王国所在の販売子会社であるJVC Sales and Service (Thailand) Co., Ltd.が買い上げて同国において販売していた。このように,JMT等が本件ブラウン管を用いて製造したブラウン管テレビは,日本ビクターが取りまとめた事業計画に沿って,国内外に販売されていた。(査第65号証,第70号証,第197号証,第199号証)
(b) 平成15年5月22日頃から平成19年3月29日までの本件ブラウン管に関する取引
ⅰ 日本ビクターは,平成17年4月30日まで,同社の設計部門が設計したブラウン管テレビに適合する仕様のテレビ用ブラウン管について,性能及び品質面,テレビ用ブラウン管メーカーの生産ラインの状況,引渡しに要する時間,価格,それまでの取引状況等を総合的に勘案し,主にサムスンSDIほか4社の中から一又は複数の事業者を選定し,当該事業者との間で,JMT等の各地の製造拠点におけるブラウン管テレビの生産台数に応じたテレビ用ブラウン管を確保するため,年間の購入予定数量の大枠を交渉して決定していた。(査第198号証,第200号証の1及び2)
なお,日本ビクターは,サムスンSDI及びLGフィリップス・ディスプレイズとの間で,JMT等を含む現地製造子会社及び関連会社が購入するテレビ用ブラウン管について,年間の購入量の目標とそれを達成した場合の報奨金(インセンティブ)についての合意を交わしていた。(査第198号証,第200号証の1及び2)
ⅱ 日本ビクターは,前記ⅰのとおり選定した事業者との間で,おおむね四半期ごとに本件ブラウン管の購入価格等の取引条件について交渉して,決定していた。(査第2号証,第3号証の1及び2,第19号証の1ないし第24号証,第28号証,第65号証,第92号証及び同枝番2,第93号証及び同枝番2,第198号証)
ⅲ 日本ビクターは,JMT等に対し,前記ⅰ及びⅱのとおり決定した本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の取引条件を,電話,電子メール,ファクシミリ等で伝え,それに従って,前記ⅰのとおり選定した事業者又はその子会社等から本件ブラウン管を購入するよう指示した。(前記ⅰ及びⅱの各事実と査第65号証を総合すれば当該事実が認められる。)
ⅳ JMT等は,前記ⅲの取引条件に従い,日本ビクターにより選定された事業者又はその子会社等(被審人ほか7社の関係では,被審人,MT映像ディスプレイ・マレーシア,MT映像ディスプレイ・タイ,中華映管マレーシア,LGフィリップス・ディスプレイズ,LPディスプレイズ・インドネシア及びタイCRT)に対して,本件ブラウン管の発注書を送付し,本件ブラウン管の納入を受け,請求書を受領し,代金の支払を行っていた。(査第2号証,第23号証の1及び2,第32号証の1及び2,第65号証,第113号証及び同枝番2,第114号証,第198号証)
b 前記認定事実によれば,日本ビクターは,日本ビクター,JMT等並びにその他の製造子会社及び関連会社が行うブラウン管テレビに係る事業を統括しており,サムスンSDIほか4社の中から選定した事業者と交渉した上で,本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の取引条件を決定してそれをJMT等に伝え,JMT等は,それに従って日本ビクターが決定した購入先から本件ブラウン管を購入していたことが認められる。そうすると,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等といった重要な取引条件を実質的に決定していたのは日本ビクターであって,JMT等は日本ビクターの指示に従っていたにすぎず,本件ブラウン管の購入先及び重要な取引条件の決定について実質的に関与していたとは認められない。すなわち,日本ビクターがその選定した事業者との間で交渉し,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の重要な取引条件を決定した上,JMT等に対し指示して本件ブラウン管を購入させていたということができる。
これに対し,被審人は,日本ビクターが関与して交渉する価格は,目標にすぎず,その後,JMT等が被審人ほか7社と交渉して本件ブラウン管の具体的な価格が決定されていたのであって,日本ビクターが本件ブラウン管の購入価格等の取引条件を交渉の上,決定し,JMT等に指示して本件ブラウン管を購入させていたとはいえない旨主張する。
確かに,日本ビクターの担当者であった宮﨑孝志の供述(査第226号証)によれば,本件ブラウン管について,日本ビクターがサムスンSDIほか4社と交渉した後に,JMT等が更に被審人ほか7社と価格交渉をしていたことがうかがわれる。しかし,宮﨑孝志の供述によれば,上記価格交渉は,日本ビクターがサムスンSDIほか4社と交渉して決定した購入価格を前提に,更に若干の値引きを求めるといった程度のものであったと認められる。
したがって,JMT等が,本件ブラウン管の仕様,購入数量及び購入先について日本ビクターの決定に従っていたことや,上記のとおり,購入価格についても日本ビクターの決定したものを前提としていたことなどに照らせば,日本ビクターがその選定した事業者との間で交渉し,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の重要な取引条件を決定した上,JMT等に対し指示して本件ブラウン管を購入させていたということができる。
(オ) 船井電機
a 認定事実
後掲各証拠並びに査第227号証及び第228号証(後二者は第2号ないし第5号事件等における井土周次の参考人審尋速記録写し)によれば,次の事実が認められる。
(a) 現地製造子会社との関係
ⅰ 船井電機は,かつては同社の国内工場においてブラウン管テレビを製造していたが,遅くとも平成5年頃以降は行っておらず,専ら,完全子会社であるマレーシアに所在するFUNAI ELECTRIC (MALAYSIA) SDN.BHD.及びタイ王国に所在するFUNAI (THAILAND) CO., LTD.(以下,上記2社を併せて「船井電機マレーシア等」という。)においてブラウン管テレビを製造していた。(査第1号証,第66号証,第201号証,第202号証)
ⅱ 船井電機は,前記ⅰのとおり,船井電機マレーシア等にブラウン管テレビの製造業務を移管した後も,引き続き,「テレビ事業本部」等の下の「テレビ事業部」等の部署において,ブラウン管テレビの製造以外の研究開発,技術・生産管理,品質管理,品質保証,マーケティング,営業,購買等の業務を管轄,運営するなど,船井電機並びに船井電機マレーシア等の現地製造子会社及びその他の子会社が行うブラウン管テレビに係る事業を統括していた。(査第66号証,第149号証,第156号証の1及び2,第157号証の1及び2,第202号証,第203号証)
ⅲ 船井電機は,船井電機マレーシア等が製造するブラウン管テレビの製品仕様書や製造指導書等を作成し,船井電機マレーシア等に送付していた。(査第116号証の2,第117号証,第202号証,第203号証)
ⅳ 船井電機は,船井電機マレーシア等が本件ブラウン管を用いて製造したブラウン管テレビを全て購入し,自社の完全子会社であるフナイ販売株式会社,DXアンテナ株式会社及びFUNAI CORPORATION INC.を通じて,国内外の顧客に販売していた。(査第66号証,第201号証ないし203号証)
(b) 平成15年5月22日頃から平成19年3月29日までの本件ブラウン管に関する取引
ⅰ 船井電機は,価格及び供給の安定を目的として,主にサムスンSDIほか4社の中から選定した事業者との間で,翌年1年間において取引される本件ブラウン管の仕様及び購入予定数量の大枠を交渉して,決定し,おおむね四半期ごとに,翌四半期に実際に適用される本件ブラウン管の購入価格及び購入数量について交渉して,決定していた。(査第2号証,第3号証の1及び2,第25号証,第26号証,第28号証,第66号証,第92号証及び同枝番2,第93号証及び同枝番2,第97号証及び同枝番2,第201号証,第202号証,第204号証)
なお,船井電機は,MT映像ディスプレイとの間で,本件ブラウン管の購入数量の大枠について,管種ごとに,事業年度単位で交渉していた。(査第118号証)
ⅱ 前記ⅰの交渉の相手方は,船井電機に対して製品仕様書の案を提出し,船井電機の技術部門は,当該仕様書の案を確認及び承認して,当該仕様書を完成させていた。(査第119号証の1ないし第121号証の2,第202号証,第203号証)
ⅲ 船井電機は,船井電機マレーシア等に対し,前記ⅰのとおり決定した本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の取引条件を,電話や電子メールによって伝え,前記ⅰのとおり選定した事業者又はその子会社等から本件ブラウン管を購入するよう指示していた。(査第66号証,第202号証)
ⅳ 船井電機マレーシア等は,前記ⅲのとおり船井電機から伝達及び指示された本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の取引条件に従い,船井電機により選定された事業者又はその子会社等(被審人ほか7社との関係では,被審人,MT映像ディスプレイ・インドネシアほか2社,中華映管マレーシア,LPディスプレイズ・インドネシア及びタイCRT)に対して,本件ブラウン管の発注書を送付し,本件ブラウン管の納入を受け,請求書を受領し,代金の支払を行っていた。(査第2号証,第32号証の1及び2,第66号証,第201号証ないし第203号証)
b 前記認定事実によれば,船井電機は,船井電機並びに船井電機マレーシア等の現地製造子会社及びその他の子会社が行うブラウン管テレビに係る事業を統括しており,サムスンSDIほか4社の中から選定した事業者と交渉した上で,本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の取引条件を決定してそれを船井電機マレーシア等に伝え,船井電機マレーシア等は,それに従って船井電機が決定した購入先から本件ブラウン管を購入していたことが認められる。そうすると,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等といった重要な取引条件を実質的に決定していたのは船井電機であって,船井電機マレーシア等は船井電機の指示に従っていたにすぎず,本件ブラウン管の購入先及び重要な取引条件の決定について実質的に関与していたとは認められない。すなわち,船井電機がその選定した事業者との間で交渉し,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の重要な取引条件を決定した上,船井電機マレーシア等に対し指示して本件ブラウン管を購入させていたということができる。
これに対し,被審人は,本件ブラウン管の購入先の選定に関して船井電機マレーシア等の意向が尊重されていたほか,本件ブラウン管の品質や納期に関しては船井電機マレーシア等と被審人ほか7社との間で独自にやり取りがされていた旨主張する。
しかし,本件ブラウン管の購入先について,船井電機マレーシア等の意向を尊重することと,船井電機が交渉の当事者として最終的に取引条件を決定することは矛盾しない。また,本件合意は,本件ブラウン管の現地製造子会社等向け販売価格に関するものであるから,価格以外の品質や納期について,船井電機マレーシア等と被審人ほか7社との間で交渉があったとしても,船井電機がその選定した事業者との間で交渉し,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の重要な取引条件を決定した上,船井電機マレーシア等に対し指示して本件ブラウン管を購入させていたということができることは明らかである。
イ(ア) 前記アの認定事実によれば,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者は,現地製造子会社等が製造したブラウン管テレビを自社又は販売子会社を通じて販売していたほか,現地製造子会社等が製造するブラウン管テレビの生産,販売及び在庫等の管理等を行うとともにブラウン管テレビの基幹部品であるテレビ用ブラウン管について調達業務等を行い,自社グループが行うブラウン管テレビに係る事業を統括するなどしていたことが認められる。
(イ) また,前記(ア)に加え,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者は,必要に応じて現地製造子会社等の意向を踏まえながらも,サムスンSDIほか4社との間で交渉し,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の重要な取引条件を決定した上で,現地製造子会社等に対して上記決定に沿った購入を指示して,本件ブラウン管を購入させていたことが認められ,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者による交渉・決定及びそれに基づく指示なくしては,現地製造子会社等が本件ブラウン管を購入し,受領することはできなかったといえる。
そうすると,直接に本件ブラウン管を購入し,商品の供給を受けていたのが現地製造子会社等であるとしても,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者の果たしていた上記役割に照らせば,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者と現地製造子会社等は一体不可分となって本件ブラウン管を購入していたということができる。
(ウ) さらに,本件合意がサムスンSDIほか4社が我が国ブラウン管テレビ製造販売業者との交渉の際に提示すべき本件ブラウン管の現地製造子会社等向け販売価格の最低目標価格等を設定するものであることも併せて考えれば,11社は,そのグループごとに,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者との関係において,自社グループが購入先として選定されること及び購入価格,購入数量等の重要な取引条件を競い合う関係にあったということができ,購入先や重要な取引条件の決定者である我が国ブラウン管テレビ製造販売業者は,11社に対し,そのような競争を期待し得る地位にあったということができる。
(エ) これらの点を考慮すれば,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者は本件ブラウン管の需要者に該当するものであり,本件ブラウン管の販売分野における競争は,主として我が国に所在する需要者をめぐって行われるものであったということができる。
(オ) これに対し,被審人は,需要者とは商品又は役務の供給を受ける者と解すべきところ,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者は本件ブラウン管の供給を受けていないから,本件ブラウン管の需要者に該当しない旨主張する。
しかし,本件においては,実際に商品の供給を受ける者とは別に,商品の購入先を選定し,商品の価格や数量等の重要な取引条件について交渉し,決定している主体が存在するのであるから,当該商品の供給に係る競争が行われる取引の実態を踏まえて需要者について検討する必要があるところ,前記アで認定した本件ブラウン管の供給に係る競争が行われる取引の実態をみれば,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が本件ブラウン管の需要者であると認めるべきことは,前記説示のとおりである(なお,このことは,たとえ商品の供給を受ける現地製造子会社等もまた需要者に該当し得るとしても,変わるものではない。)。
したがって,被審人の上記主張は採用できない。
⑸ その余の被審人の主張について
ア 被審人は,仮に,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が本件ブラウン管の需要者であるとしても,需要者である我が国ブラウン管テレビ製造販売業者の所在地は商品である本件ブラウン管が供給される東南アジア地域であると考えるべきであるから,本件における一定の取引分野に日本が含まれることにはならない旨主張する。
しかし,需要者の所在地を商品が供給される場所によって決するとの考え方は,結局のところ,需要者とは商品の供給を直接受ける者であるとの見解と同旨であって,前記のとおり,採用できない。
イ また,被審人は,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が本件ブラウン管の取引条件を決定し,現地製造子会社等に指示して購入させていたことを被審人が認識していたわけではないから,本件合意は特定ブラウン管に係る取引を対象としていたとはいえない旨主張する。
しかし,本件においては,本件合意が対象としていた取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討して一定の取引分野を画定した上,当該一定の取引分野における競争を実質的に制限していたかどうかが問題なのである。したがって,本件合意が本件ブラウン管の取引を対象としており,そのことを被審人が認識していれば足りるのであって(前記認定事実によれば,本件合意が本件ブラウン管の取引を対象としており,そのことを被審人が認識していたことは明らかである。),それ以上に,特定ブラウン管の定義に用いられている,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が取引条件を決定し,現地製造子会社等に指示して購入させていたことまでを被審人が認識していることが必要であるとはいえない。
よって,被審人の上記主張は失当である。
⑹ 競争の実質的制限について
ア 独占禁止法第2条第6項にいう「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」とは,当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいい,本件のような価格カルテルの場合には,その当事者である事業者らがその意思で,当該市場における価格をある程度自由に左右することができる状態をもたらすことをいうと解される(最高裁判所第一小法廷平成24年2月20日判決・民集第66巻第2号796頁〔株式会社新井組ほか3名による審決取消請求事件〕参照)。
イ 前記第3の2⑶のとおり,平成15年から平成19年までの5年間における現地製造子会社等の本件ブラウン管の総購入額のうち,被審人ほか7社からの購入額の合計の割合は,約83.5パーセントとその大部分を占めていたこと,本件違反行為者である被審人を含む11社は本件合意に基づき設定された最低目標価格等を踏まえて,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者との間で,本件ブラウン管の価格交渉をしていたこと等に照らせば,本件合意により,本件ブラウン管の価格をある程度自由に左右することができる状態をもたらしたといえるから,11社は,本件合意により,本件における一定の取引分野である本件ブラウン管の販売分野における競争を実質的に制限したと認めることができる。 
⑺ まとめ
以上検討したところによれば,一定の取引分野である本件ブラウン管の販売分野における競争が主として我が国に所在する需要者をめぐって行われるものであったと認められ,かつ,本件合意により当該一定の取引分野における競争が実質的に制限されたと認められる。
被審人は,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が実際に本件ブラウン管の供給を受けていないとして,需要者に当たらないことを前提に,本件には独占禁止法第3条後段を適用することができないと主張するが,以上説示したとおり,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者は需要者であると認められるのであるから,その主張は前提を欠くものであるし,また,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が実際に本件ブラウン管の供給を受けていなかったとしても,その事実は,当該事業者が被審人に対して独占禁止法違反を理由に損害賠償請求訴訟等を提起した場合に考慮されるべき事情になることがあり得るのは格別,本件のように,一定の取引分野における競争が主として我が国に所在する需要者をめぐって行われるものであり,かつ,そこにおける競争が実質的に制限された場合には,我が国における自由競争経済秩序が侵害されたということができるから,これに対して自由競争経済秩序の回復を図る観点から独占禁止法を適用することができるのは当然である。
したがって,本件に独占禁止法第3条後段を適用することができるものというべきである。
なお,被審人は,いわゆる効果主義の観点から,本件において,日本の国内市場に実質的,直接的かつ行為者にとって予見可能な効果が生じたとはいえないから,独占禁止法は適用されない旨主張する。
しかし,前記のとおり,少なくとも,一定の取引分野における競争が我が国に所在する需要者をめぐって行われるものであり,かつ,当該一定の取引分野における競争が実質的に制限された場合には,同法第3条後段を適用することができると解され,実際,本件においてはそれが肯定されるから,本件において被審人の主張するような効果の存否に関する検討をする必要性は認められない。
3 争点3(本件ブラウン管の売上額は独占禁止法第7条の2第1項の「当該商品の売上額」に該当し,課徴金の計算の基礎となるか否か)について
⑴ 独占禁止法第7条の2第1項にいう「当該商品」とは,違反行為である相互拘束の対象である商品,すなわち,違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品であって,違反行為である相互拘束を受けたものをいうと解される(前記東京高等裁判所平成22年11月26日判決)。
本件ブラウン管が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品であって,違反行為である相互拘束を受けたものであることは明らかである。したがって,本件ブラウン管は「当該商品」に当たるから,独占禁止法施行令第5条に基づき算定された本件ブラウン管の売上額が課徴金の計算の基礎となる。
⑵ 被審人の主張について
ア 被審人は,審査官が主張する「当該商品」とは,特定ブラウン管,すなわち,「我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が現地製造子会社等に購入させる」別紙3記載のテレビ用ブラウン管ということになるが,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が現地製造子会社等にテレビ用ブラウン管を購入させていた事実はないから,特定ブラウン管の売上額を課徴金の計算の基礎にした本件課徴金納付命令は違法である旨主張する。
しかし,前記2⑷のとおり,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が現地製造子会社等に本件ブラウン管を購入させていたと認めることができるのであるから,被審人の前記主張は前提を欠くものといわざるを得ない。
イ 被審人は,本件ブラウン管は,東南アジア地域で供給され,代金の支払も同地域で行われており,日本国内において具体的な競争制限効果が生じていないから,「当該商品」に該当しない旨主張する。
しかし,課徴金の計算に関しては,独占禁止法第7条の2第1項が,事業者が不当な取引制限をし,それが商品の対価に係るものである場合には,実行期間における当該商品の政令で定める方法により算定した売上額に同項所定の課徴金算定率を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない旨規定し,独占禁止法施行令第5条及び第6条が売上額の算定方法について規定するのみである。
前記⑴のとおり,「当該商品」とは違反行為である相互拘束の対象である商品をいうと解されるが,上記規定をみても,商品の供給や代金の支払が外国において行われた場合にその売上げを課徴金の計算の基礎から除くべきと解することはできない。
なお,被審人は,入札談合事案に関する最高裁判所判例(前記平成24年2月20日判決)を挙げて,課徴金の計算の基礎となる「当該商品」とは具体的な競争制限効果が発生するに至った取引に係る商品であると解される旨主張する。しかし,入札談合事案では,いわゆる基本合意が不当な取引制限行為に該当し,対象となる商品又は役務が特定されるが,その後に個別の入札が行われるため,基本合意の対象となった商品又は役務の全てに違反行為の拘束力が及ぶとは限らないため,個々の入札物件ごとに違反行為の拘束力が及んでいるか判断する必要があるが,本件のようなカルテル事案においては,違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品であれば,原則として違反行為による拘束を受けたものと認められるのであるから,入札談合事案と同様に具体的な競争制限効果が要件になるとは解し難い。
以上によれば,前記2⑺のとおり,本件においては,本件ブラウン管の販売分野という一定の取引分野における競争が主として我が国に所在する需要者をめぐって行われるものであったと認められ,かつ,本件違反行為により当該一定の取引分野における競争が実質的に制限されたと認められるのであるから,本件ブラウン管を「当該商品」に該当するとして,その売上額を課徴金の計算の基礎とすることに何ら不当な点はない。
4 結論
⑴ 違反行為
被審人は,前記第3の3のとおり他の事業者と共同して本件合意をすることにより,公共の利益に反して,一定の取引分野である本件ブラウン管の販売分野,すなわち特定ブラウン管の販売分野における競争を実質的に制限していたものであるから,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項第1号に規定する商品の対価に係るものであると認められる。
⑵ 課徴金の計算の基礎
ア 被審人は,本件ブラウン管,すなわち特定ブラウン管の製造販売業を営む者である。(当事者間に争いがない。)
イ 被審人が前記⑴の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成16年3月29日以前であると認められる。また,被審人は,平成19年3月30日以降,当該違反行為を取りやめており,同月29日にその実行としての事業活動はなくなっているものと認められる。
したがって,被審人については,前記⑴の違反行為の実行としての事業活動を行った日から当該違反行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間が3年を超えるため,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第35号。以下「平成17年改正法」という。)附則第5条第2項及び第3項(平成25年法律第100号による改正前のもの)の規定により変更して適用される独占禁止法第7条の2第1項の規定により,実行期間は,平成16年3月30日から平成19年3月29日までの3年間となる。
ウ 前記実行期間における本件ブラウン管,すなわち特定ブラウン管に係る被審人の売上額は,独占禁止法施行令第5条第1項の規定に基づき算定すべきところ,当該規定に基づき算定すると,前記⑴の違反行為のうち平成17年改正法の施行日である平成18年1月4日(以下「平成17年改正法施行日」という。)前に係るものは98億1042万7304円,前記⑴の違反行為のうち平成17年改正法施行日以後に係るものは78億5002万576円である(査第217号証,第218号証)。
エ 被審人が国庫に納付しなければならない課徴金の額は
(ア) 前記⑴の違反行為のうち平成17年改正法施行日前に係るものについては,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,前記98億1042万7304円に,平成17年改正法附則第5条第2項の規定(平成25年法律第100号による改正前もの)によりなお従前の例によることとされる平成17年改正法による改正前の独占禁止法第7条の2第1項に規定する売上額に乗ずる率である100分の6を乗じて得た額
(イ) 前記⑴の違反行為のうち平成17年改正法施行日以後に係るものについては,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,前記78億5002万576円に100分の10を乗じて得た額
を合計した額から,独占禁止法第7条の2第23項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて算出された13億7362万円である。
⑶ したがって,被審人に対してこれと同額の課徴金の納付を命じた本件課徴金納付命令は適法である。
⑷ なお,被審人の規則第75条に基づく審決案に対する異議の申立て並びに独占禁止法第63条及び規則第77条の規定に基づく当委員会に対する陳述の趣旨は,実質的に審判手続における主張の繰り返しであり,上記の結論を左右するものではない。
第7 法令の適用
以上によれば,被審人の審判請求は理由がないから,独占禁止法第66条第2項及び規則第78条第2項の規定により,主文のとおり審決する。
なお,委員小田切宏之の補足意見がある。

委員小田切宏之の補足意見は,次のとおりである。
私は,被審人の行為が独占禁止法でいう不当な取引制限に該当するとの認定については多数意見と同意見であるが,同行為に基づいて商品が供給され,あるいは消費された場所が日本国内に限定されないことから,課徴金算定の基礎となる売上額として何を含めるべきかについて異なった意見を持つ。このため,最終的には多数意見に賛成するものの,補足意見を述べる。
1 独占禁止法は不当な取引制限として,事業者が,他の事業者と共同して対価を決定するなどして「公共の利益に反して,一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」(独占禁止法第2条第6項)を禁止する。そして,最高裁判所は,「『公共の利益に反して』とは,原則としては同法の直接の保護法益である自由競争経済秩序に反することを指す」とする(最高裁判所昭和59年2月24日判決・刑集第38巻第4号1287頁〔出光興産株式会社ほか25名に対する独占禁止法違反被告事件〕)。その後の判決でも,例えば,「独禁法は(中略)国内における自由経済秩序を維持・促進するために制定された経済活動に関する基本法である」(東京高等裁判所平成5年12月14日判決・高等裁判所刑事判例集第46巻第3号322頁〔トッパン・ムーア株式会社ほか3名に対する独占禁止法違反被告事件〕)とするなど,この考え方が踏襲されている。本審決多数意見もこれに倣い,「少なくとも,一定の取引分野における競争が我が国に所在する需要者をめぐって行われるものであり,かつ,当該行為により一定の取引分野における競争が実質的に制限された場合には,我が国における自由競争経済秩序が侵害されたということができ,同法第3条後段を適用するのがその趣旨に合致する」(第6の2⑵)とする。
2 ただし,これら判決において,どのような場合に自由競争経済秩序が侵害されたとするかの基準が明確に示されているわけではない。特に前記東京高等裁判所判決は「国内における自由経済秩序」という言葉を用いているが,どのような場合に国内における自由経済秩序が侵害されたとするかの基準を示してはいない。これは,前記最高裁判所判決及び東京高等裁判所判決の対象とされた2事件のように,問題とされた一定の取引分野における全てあるいはほとんどの取引が日本に居住する供給者と日本に居住する需要者の間で日本において行われる場合には,この基準を明確にする必要がなかったためであろう。しかし,本件のような国際取引及び国際分業に係る事件の場合には,どのような場合に日本国内の自由競争経済秩序が侵害されたとみなすかについての基準を明確化する必要がある。
3 また,前記東京高等裁判所判決は,「一定の取引分野」の画定に関連し,「取引は,一定の商品あるいは役務の需要と供給を巡ってなされる二面的・双方的な経済活動である」と記しており,需要者あるいは供給者に日本に居住する者が含まれるときには一定の取引分野が日本国内に成立し,このため,独占禁止法第3条に違反する行為があれば日本における自由競争経済秩序が侵害されたとみなすという考え方があり得る。需要者・供給者基準と呼ぶことができよう。
4 しかし,需要者や供給者にはそれぞれ少なくとも3つの側面があり,本件のように国際取引や国際分業が行われている場合には,需要者あるいは供給者のどの側面に着目するかで需要者・供給者基準による判断も変わる。すなわち,需要者には通常次の3つの側面がある。
① 意思決定者(価格に応じて需要量を決定し,あるいは,売り手と価格及び数量を交渉・決定する者)
② 商品受領者(商品を受領する者,以下では対価の支払いもこの商品受領者が行う場合に限定する。)
③ 余剰獲得者(当該商品から得られる効用又は利益から対価支払いの不効用又は費用を差し引いた余剰を獲得する者。この余剰とは,消費者についていえば消費者余剰,生産者についていえば生産者余剰に当たる。)
供給者についても同様に,意思決定者,商品引渡者,余剰獲得者の3つの側面がある。輸出入のない消費財の場合,需要者の3つの側面の全てが国内の消費者により,また,供給者の3つの側面の全てが国内の製造販売会社によってなされるから,需要者・供給者基準による自由競争経済秩序への侵害の有無を判断するには,国内の消費者に及ぼす効果及び国内の製造販売会社に及ぼす効果を考えればよい。
5 ところが,本件のように,対象商品が消費財ではなくブラウン管テレビ製造のための生産要素であるブラウン管という中間財であり,しかも,需要者の3つの側面も供給者の3つの側面も全てが日本に居住するのではない場合には,どの側面に需要者・供給者基準を当てはめるべきかが問題となる。最も広範に当てはめ可能な需要者・供給者基準の解釈(以下「広義の解釈」という。)は,需要者,供給者いずれかのどれか1つの側面でも日本に居住する者が関わっているのであれば日本における自由競争経済秩序に対する影響があり,よって独占禁止法の適用が可能であるというものであろう。こうした広義の解釈によれば,例えば需要者側に限ってみても,意思決定者がA国に居住し,商品受領者がB国に居住し,余剰獲得者がC国に居住すれば,A国,B国,C国のいずれも自国の自由競争経済秩序が侵害されたとして,それぞれの国の独占禁止法を適用することは当然となる。
6 しかしながら,1つの行為に対して3か国が自国の独占禁止法を適用し,それぞれの国において不当利益没収や制裁のために課徴金,罰金,制裁金等の不利益処分を課すとすれば,重複し,過大な不利益処分であるとの批判が起きることは避けられない。この重複を避けるためには,需要者ないし供給者の複数の側面のうち最も適切な者が居住する国が法的措置を採り他の国は国際礼譲により法的措置を見送るか,いずれの国も自国の独占禁止法違反と認定するとしても不利益処分の決定に当たっては最も適切な需要者ないし供給者が居住する国以外の国は処分を見送るなど,不利益処分の国際重複を避けるべく配慮されることが望ましい。
7 それでは,不利益処分の国際重複を避ける前提として,最も適切な需要者ないし供給者が居住する国を決定するに当たり,どの側面が重視されるべきか。独占禁止法の目的が「公正且つ自由な競争を促進し,事業者の創意を発揮させ,事業活動を盛んにし,雇傭及び国民実所得の水準を高め,以て,一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進すること」(同法第1条)であり,一般消費者の利益に言及していることに鑑みれば,需要者と供給者の間では需要者を,また,需要者の3つの側面のうちでは余剰獲得者としての需要者を重視しており,この意味での需要者が正しく余剰を獲得できていないときに独占禁止法を適用すべきとしていると解釈するのが自然である。
8 すると,余剰獲得者としての需要者の多数が日本に居住する時には,またその時に限り,我が国が優先して独占禁止法に基づいた不利益処分を課すべきであることになる。これを以下で「狭義の解釈」というが,余剰獲得者としての需要者は,本件のようなカルテル事件においては,それによる価格上昇に伴い余剰減少という被害を受ける者である。これは,需要者の3つの側面のうち③を意味するが,直接的にカルテル対象製品を購入する者(②)は,通常は,同時に③にも該当すると考えられる。そこで次に,本件のブラウン管の場合には誰がこれに該当し,どの国に居住するかを検討する。
9 本件ブラウン管は,現地製造子会社等が購入し,ブラウン管テレビ製造に使用される。製造されたブラウン管テレビはそのまま現地で販売される場合もあり,また日本を含む海外の販売会社に販売される場合もある。そして,これら販売会社はブラウン管テレビを当該販売会社の所在国に居住する消費者に販売する場合も,第三国の消費者に販売する場合もある。一定の取引分野と認定された本件ブラウン管の販売分野とは,要するに,東南アジア地域に所在する我が国ブラウン管テレビ製造販売業者の現地製造子会社等向けテレビ用ブラウン管の販売分野であり,商品受領者・対価支払者は現地製造子会社等であるから,直接的にはこれら現地製造子会社等が②に該当すると同時に③にも該当するものである。ただし,カルテルによるブラウン管価格上昇をブラウン管テレビ販売会社への販売価格,また販売会社から消費者への小売価格に転嫁できていたとすれば,ブラウン管テレビ販売会社やブラウン管テレビ消費者もカルテルにより余剰減少という被害を受ける者,すなわち③に該当する者であるといえる。本件の場合に,この転嫁がどれだけできたかは不明である。また,仮に転嫁できていたとしても,現地製造子会社等で製造されたブラウン管テレビのうち,商流として日本に入っているもの(すなわち,日本国内所在のブラウン管テレビ製造販売業者が契約上一旦購入し対価を支払っているもの)は存在するが,全てではない。最終的なブラウン管テレビ消費者のうち日本に居住する者の比率は更に小さく,正確には不明であるが,半数を大きく下回ることに疑いがない。つまり,ブラウン管テレビ販売会社をカルテルの被害を受けた者とみなすとしても日本に居住する者の被害は本件ブラウン管の一部に係るものに限定され,ブラウン管テレビ消費者とみなすときはその被害は更に限られた一部に限定される。
したがって,本件においては,②及び③に該当する直接的なブラウン管購入者である現地製造子会社等をカルテルの主たる被害を受けた者とみなし,不利益処分を課すことにつき最も適切な国を判断する基準とすることが妥当である。そして,このように現地製造子会社等を基準とするとき,これは日本に所在しないことになる。
10 結論すれば,不利益処分である課徴金を課すかどうかは狭義の解釈に従うべきであるという私の考え方によれば,本件ブラウン管の販売分野を一定の取引分野として独占禁止法第3条違反を認定するとしても,商品受領者が日本国内に居住しないことをもって課徴金を課さないこととするか,転嫁を認めた上で本件ブラウン管を使用して製造販売されたブラウン管テレビの流通先に基づいて一部のブラウン管売上額に限定して課徴金を課す等の配慮をすべきであり,このような場合にも本件ブラウン管の全売上額に法定の率を乗じて得た額を課徴金として支払いを命じるという多数意見は過剰な不利益処分になるというべきである。このことは,余剰獲得者の1つである現地製造子会社等が所在する国が制裁金の賦課等の不利益処分をしているか,又は相当な確度をもって不利益処分をすることが予見される場合には顕在化する。
11 ただ,現行独占禁止法及びそれに係るこれまでの判決を見る限り,こうした解釈は認められていないと考えざるを得ない。これは以下の理由による。
独占禁止法第7条の2第1項は「当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額」に規定の率を乗じて得た額を課徴金とすることを定めている。そして,東京高等裁判所平成22年11月26日判決は「独占禁止法7条の2第1項にいう『当該商品』とは,違反行為である相互拘束の対象である商品,すなわち,違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品であって,違反行為である相互拘束を受けたものをいうと解すべきである」,また,「違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品については,一定の商品につき,違反行為を行った事業者又は事業者団体が,明示的又は黙示的に当該行為の対象から除外するなど当該商品が違反行為である相互拘束から除外されていることを示す事情が認められない限り,違反行為による拘束が及んでいるものとして,課徴金算定の対象となる当該商品に含まれ」るとする(東京高等裁判所平成22年11月26日判決・公正取引委員会審決集第57巻第2分冊194頁〔出光興産株式会社による審決取消請求事件〕)。この判決に従えば,違反行為による拘束が及んでいる限り,当該商品を組み込んだ製品の製造販売地域にかかわらず,課徴金算定の対象となる当該商品に含まれることになる。
12 このことを踏まえて,多数意見は「我が国ブラウン管テレビ製造販売業者の果たしていた上記役割に照らせば,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者と現地製造子会社等は一体不可分となって本件ブラウン管を購入していたということができる」(第6の2⑷イ(イ))として,需要者の3つの側面のうちの①(我が国ブラウン管テレビ製造販売業者)と②及び③(現地製造子会社等)を一体と認定することによって,①の所在国である日本が本件ブラウン管全てを対象として独占禁止法を適用し課徴金を課すことを是としている。しかし,繰り返すが,これは②や③が所在する国も法的措置を採った場合,不利益処分の重複が起きる可能性を残す。
13 他方,本件に関しては,現地製造子会社等が所在する国やブラウン管テレビを最終的に購入した消費者が居住する国が制裁金を課す等の法的措置を採ることがなかったため,我が国においても課徴金を課さないこととした場合には,被審人の競争制限行為にもかかわらず,どの国も不利益処分を課すことがなく,競争制限行為が制裁を受けずに終わるおそれが残る。
14 このことを憂慮し,また,現時点まででは諸外国が本件について法的措置を採っていないことで不利益処分の重複が発生していないことに鑑みて,本件については多数意見に賛成する。ただし,今後,同様の案件が発生し,他国の法的措置により不利益処分が既に課されているか,課されることが相当の確度をもって予見されている場合には,課徴金の算定に当たって不利益処分の重複が起きないよう,公正取引委員会が配慮することができるような制度設計がなされることが求められると考える。

平成27年5月22日

公 正 取 引 委 員 会

委員長  杉  本  和  行

委 員  小 田 切  宏  之

委 員  幕  田  英  雄

委 員  山  﨑     恒

※審決書別紙1ないし3は省略。

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