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積水化学工業(株)及び三菱樹脂(株)に対する件

独禁法66条2項(独禁法3条後段,独禁法7条の2),独禁法66条3項(独禁法7条の2〔独禁法3条後段〕)

平成21年(判)第6号ないし第9号

審判請求一部認容審決(排除措置命令に係る審判請求を棄却し,課徴金納付命令の一部を取り消す審決)

大阪市北区西天満二丁目4番4号
被審人 積水化学工業株式会社
同代表者 代表取締役 根 岸 修 史
同代理人 弁 護 士 長 澤 哲 也
同          吉 村 卓 輝
同          村 上   寛
同          宮 本   聡
上記被審人代理人長澤哲也復代理人
弁護士        寺 井 一 弘
同          藤 井 範 弘
同          山 口 拓 郎

東京都千代田区丸の内一丁目1番1号
被審人 三菱樹脂株式会社
同代表者 代表取締役 姥 貝 卓 美
同代理人 弁 護 士 岩 下 圭 一
同          志 田 至 朗
同          佐 藤 水 暁
上記被審人代理人岩下圭一復代理人
弁護士        森   一 生

公正取引委員会は,上記被審人らに対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成25年法律第100号)附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)(以下「独占禁止法」という。)に基づく排除措置命令審判事件及び課徴金納付命令審判事件について,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う公正取引委員会関係規則の整備に関する規則(平成27年公正取引委員会規則第2号)による廃止前の公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号)(以下「規則」という。)第73条の規定により審判官西川康一及び審判官酒井紀子から提出された事件記録に基づいて,同審判官らから提出された別紙審決案を調査し,次のとおり審決する。

主       文
1 被審人三菱樹脂株式会社に対する平成21年2月18日付けの課徴金納付命令(平成21年(納)第2号)のうち,37億1041万円を超えて納付を命じた部分を取り消す。
2 被審人三菱樹脂株式会社のその余の審判請求及び被審人積水化学工業株式会社の各審判請求をいずれも棄却する。

理       由
1 当委員会の認定した事実,証拠,判断及び法令の適用は,別紙審決案の98頁7行目から8行目にかけての「取引の実質的制限」を「競争の実質的制限」に改めるほかは,いずれも別紙審決案の理由第1ないし第7と同一であるから,これらを引用する。
2 よって,被審人らに対し,独占禁止法第66条第2項及び第3項並びに規則第78条第1項の規定により,主文のとおり審決する。

平成28年2月24日

公 正 取 引 委 員 会
委員長  杉  本  和  行
委 員  小 田 切  宏  之
委 員  幕  田  英  雄

平成21年(判)第6号ないし第9号

審   決   案

大阪市北区西天満二丁目4番4号
被審人 積水化学工業株式会社
同代表者 代表取締役 根 岸 修 史
同代理人 弁 護 士 長 澤 哲 也
同          吉 村 卓 輝
同          村 上   寛
同          宮 本   聡
上記被審人代理人長澤哲也復代理人弁護士
           寺 井 一 弘
同          藤 井 範 弘
東京都千代田区丸の内一丁目1番1号
被審人 三菱樹脂株式会社
同代表者 代表取締役 姥 貝 卓 美
同代理人 弁 護 士 岩 下 圭 一
同          志 田 至 朗
同          佐 藤 水 暁
上記被審人代理人岩下圭一復代理人弁護士
          森   一 生

上記被審人らに対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成25年法律第100号。以下「平成25年改正法」という。)附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)(以下「独占禁止法」という。)に基づく排除措置命令審判事件及び課徴金納付命令審判事件について,公正取引委員会から独占禁止法第56条第1項及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う公正取引委員会関係規則の整備に関する規則(平成27年公正取引委員会規則第2号)による廃止前の公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号)(以下「規則」という。)第12条第1項の規定に基づき担当審判官に指定された本職らは,審判の結果,次のとおり審決することが適当であると考え,規則第73条及び第74条の規定に基づいて本審決案を作成する。

主       文
1 被審人三菱樹脂株式会社に対する平成21年2月18日付けの課徴金納付命令(平成21年(納)第2号)のうち,37億1041万円を超えて納付を命じた部分を取り消す。
2 被審人三菱樹脂株式会社のその余の審判請求及び被審人積水化学工業株式会社の各審判請求をいずれも棄却する。

理       由
第1 審判請求の趣旨
1 被審人積水化学工業株式会社
⑴ 平成21年(判)第6号審判事件
平成21年(措)第1号排除措置命令の取消しを求める。
⑵ 平成21年(判)第8号審判事件
平成21年(納)第1号課徴金納付命令の取消しを求める。
2 被審人三菱樹脂株式会社
⑴ 平成21年(判)第7号審判事件
平成21年(措)第1号排除措置命令の取消しを求める。
⑵ 平成21年(判)第9号審判事件
平成21年(納)第2号課徴金納付命令の取消しを求める。
第2 事案の概要(当事者間に争いがない事実及び公知の事実)
1 排除措置命令(平成21年(判)第6号及び第7号各審判事件)
公正取引委員会は,被審人積水化学工業株式会社(以下「被審人積水化学工業」という。)及び被審人三菱樹脂株式会社(以下「被審人三菱樹脂」という。)が,平成16年1月27日頃及び同年8月25日頃に株式会社クボタ(以下「クボタ」という。),シーアイ化成株式会社(以下「シーアイ化成」という。)及びアロン化成株式会社(以下「アロン化成」という。)と,平成17年8月25日頃及び平成18年5月11日頃までにクボタシーアイ株式会社(以下「クボタシーアイ」という。)とそれぞれ共同して別紙記載の塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手(以下,両者を併せて「塩化ビニル管等」という。)の出荷価格を引き上げる旨を合意することにより,公共の利益に反して,塩化ビニル管等の販売分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであるとして,平成21年2月18日,被審人らに対し,排除措置を命じた(平成21年(措)第1号。以下,この処分を「本件排除措置命令」という。)。この排除措置命令書の謄本は,同月19日,被審人らに対し,それぞれ送達された。
これに対して,被審人積水化学工業は,同年4月13日,被審人三菱樹脂は,同月16日,それぞれ,本件排除措置命令の取消しを求めて審判請求をした。
2 課徴金納付命令
⑴ 被審人積水化学工業(平成21年(判)第8号審判事件)
公正取引委員会は,本件排除措置命令に係る違反行為は独占禁止法第7条の2第1項第1号に規定する商品の対価に係るものであるとして,平成21年2月18日,被審人積水化学工業に対し,79億6532万円の課徴金の納付を命じた(平成21年(納)第1号。以下,この処分を「本件第1号課徴金納付命令」という。)。この課徴金納付命令書の謄本は,同月19日,被審人積水化学工業に対し,送達された。
これに対して,被審人積水化学工業は,同年4月13日,本件第1号課徴金納付命令の取消しを求めて審判請求をした。
⑵ 被審人三菱樹脂(平成21年(判)第9号審判事件)
公正取引委員会は,本件排除措置命令に係る違反行為は独占禁止法第7条の2第1項第1号に規定する商品の対価に係るものであるとして,平成21年2月18日,被審人三菱樹脂に対し,37億2137万円の課徴金の納付を命じた(平成21年(納)第2号。以下,この処分を「本件第2号課徴金納付命令」という。)。この課徴金納付命令書の謄本は,同月19日,被審人三菱樹脂に対し,送達された。
これに対して,被審人三菱樹脂は,同年4月16日,本件第2号課徴金納付命令の取消しを求めて審判請求をした。
第3 前提となる事実(末尾に括弧書きで証拠を掲記した事実は当該証拠から認定される事実であり,その余の事実は当事者間に争いのない事実又は公知の事実である。)
1 被審人らの概要
⑴ 被審人積水化学工業及び積水化学北海道株式会社
被審人積水化学工業は,肩書地に本店を置き,塩化ビニル管等の製造販売業を営む者である。
積水化学北海道株式会社(以下「積水化学北海道」という。)は,北海道岩見沢市に本店を置き,塩化ビニル管等の製造販売業を営む者である。被審人積水化学工業は,積水化学北海道の議決権の全てを有している。
⑵ 被審人三菱樹脂
被審人三菱樹脂は,肩書地に本店を置き,塩化ビニル管等の製造販売業を営んでいた。しかし,被審人三菱樹脂は,平成24年12月1日,塩化ビニル管等の製造販売事業を被審人積水化学工業に譲渡した。以後,被審人三菱樹脂は,同事業を営んでいない。
⑶ クボタ,シーアイ化成及びクボタシーアイ
クボタは,大阪市に本店を置き,シーアイ化成は,東京都中央区に本店を置き,それぞれ塩化ビニル管等の製造販売業を営んでいた者であるが,平成17年4月1日,共同新設分割によりクボタシーアイを設立し,同社に対し,同日付けで塩化ビニル管等の製造販売に係る事業をそれぞれ承継させ,以後,同事業を営んでいない。
クボタシーアイは,大阪市に本店を置き,塩化ビニル管等の製造販売業を営む者である。クボタシーアイは,上記のとおり,平成17年4月1日,クボタ及びシーアイ化成による共同新設分割により設立された会社であり,同日付けでクボタ及びシーアイ化成からそれぞれ塩化ビニル管等の製造販売に係る事業を承継した。
⑷ アロン化成
アロン化成は,東京都港区に本店を置き,塩化ビニル管等の製造販売業を営む者である。
2 塩化ビニル管等
塩化ビニル管等は,塩化ビニル樹脂等を原料とする成型品である(塩化ビニル樹脂は,石油製品であるナフサ〔原油を精製して製造する石油製品の一つ〕から製造される。)。塩化ビニル管等は,流体を輸送するための水路の一部を形成するものであり,塩化ビニル管は,その直線部分に使用され,塩化ビニル管継手は,塩化ビニル管と塩化ビニル管をつないで,水路の方向を変えるなどの働きをする。その用途は,上水道,下水道,農業用水,設備等多岐にわたっており,それらの多くは日本工業規格(JIS),日本水道協会規格(JWWA),日本下水道協会規格(JSWAS)等の規格品となっている。(査第1号証,第2号証,第3号証)
3 塩化ビニル管等の製造販売業者
我が国における塩化ビニル管等の製造販売業者(以下「塩ビ管メーカー」という。)のうち,本件違反行為時である平成16年ないし平成18年頃,塩ビ管メーカーの中でも,クボタシーアイ(同社設立前はクボタ),被審人積水化学工業,被審人三菱樹脂の3社は,市場占拠率の合計がおおむね50パーセントを超えており,大手塩ビ管メーカーと認識されていた。(査第7号証,第24号証,第25号証,第32号証,第46号証,第114号証,第117号証,第118号証の2)
4 塩化ビニル管等に係る取引
塩ビ管メーカーは,それぞれ,一次店と称する販売業者,直二次店と称する販売業者又は需要者に対し,塩化ビニル管等を販売していた。
一次店は二次店と称する販売業者に,二次店及び直二次店は需要者に,それぞれ塩化ビニル管等を販売することが一般的であった。
なお,一次店に納入される際の塩化ビニル管等の価格はメーカー出荷価格であり,一次店価格と呼ばれることもあった。また,二次店に納入される際の塩化ビニル管等の価格は二次店価格と呼ばれていた。そして,直二次店に納入される際の塩化ビニル管等の価格は,メーカー出荷価格であり二次店価格であった。
(査第4号証,第5号証〔15枚目〕)
5 塩化ビニル管等の種類
塩化ビニル管等のうち,排水設備等に用いられるVU100と称する塩化ビニル管並びに下水道に用いられるSRA150及びSRA200とそれぞれ称する塩化ビニル管(以下,これら3種類の塩化ビニル管を「3管種」という。)は,ほとんどの塩ビ管メーカーが製造販売している汎用品である。
VU100は,口径が100ミリメートル,長さが4メートルの排水設備用管である。宅内マスから公共マスに至る部分に使われる配水管である。
SRA150は,口径が150ミリメートル,長さが4メートルの下水用管である。ゴム輪受口を持っており,下水道本管に使用される。
SRA200は,口径が200ミリメートル,長さが4メートルの下水用管である。SRA150とは,口径が違うだけである。
(査第3号証,第4号証)
6 塩化ビニル管等の値上げ
⑴ 平成16年2月頃の値上げ
平成16年2月頃,被審人ら,クボタ,シーアイ化成及びアロン化成は,塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げた(以下,この価格の引上げを「第1次値上げ」という。)。
⑵ 平成16年9月頃の値上げ
平成16年9月頃,被審人ら,クボタ,シーアイ化成及びアロン化成は,塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げた(以下,この価格の引上げを「第2次値上げ」という。)。
⑶ 平成17年10月頃の値上げ
平成17年10月頃,被審人ら及びクボタシーアイは,塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げた(以下,この価格の引上げを「第3次値上げ」という。)。
⑷ 平成18年5月頃の値上げ
平成18年5月頃,被審人ら及びクボタシーアイは,塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げた(以下,この価格の引上げを「第4次値上げ」という。)。
7 ポリエチレン樹脂製のガス導管等の不当な取引制限事件の調査の開始
平成18年11月14日,公正取引委員会は,平成19年(措)第13号及び同第14号により措置を命じた事件において,被審人ら及びクボタシーアイを含むポリエチレン樹脂製のガス導管等の製造販売業者の営業所等に独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行ったところ,上記の3社は,同日以降各社の本社の事業部長級の者らによる会合を行っていない。(査第154号証,増田秀樹参考人審尋速記録,小原徹也参考人審尋速記録)
第4 争点
1 被審人らは,他の事業者との間で,塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げる旨の合意をし,共同して相互にその事業活動を拘束したか(争点1)
⑴ 第1次値上げに係る合意の成否
平成16年1月27日頃,被審人らは,クボタ,シーアイ化成及びアロン化成との間で塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げる旨の合意をしたか。
⑵ 第2次値上げに係る合意の成否
平成16年8月25日頃,被審人らは,クボタ,シーアイ化成及びアロン化成との間で塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げる旨の合意をしたか。
⑶ 第3次値上げに係る合意の成否
平成17年8月25日頃,被審人らは,クボタシーアイとの間で塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げる旨の合意をしたか。
⑷ 第4次値上げに係る合意の成否
平成18年5月11日頃,被審人らは,クボタシーアイとの間で塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げる旨の合意をしたか。
(以下,第1次ないし第4次値上げに係る合意を総称して「本件合意」という。)
2 本件合意は一定の取引分野における競争を実質的に制限するか(争点2)
3 被審人らの主張する各商品は独占禁止法第7条の2第1項所定の「当該商品」に該当するか(争点3)
第5 争点についての双方の主張
1 争点1(被審人らは,他の事業者との間で,塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げる旨の合意をし,共同して相互にその事業活動を拘束したか)について
⑴ 審査官の主張
ア 第1次値上げに係る合意に至る事情
被審人ら,クボタ,アロン化成及びシーアイ化成は,かねてから,各社の本社の事業部長級の者ら(以下「中央の担当者」という。)の会合(以下⑴及び⑵において「中央の会合」という。)を開催し,塩化ビニル管等の出荷価格等について情報交換を行い,塩化ビニル管等の値上げの内容について合意した上,当該合意の実施に当たって,それぞれの社内において,地区の担当者に当該合意に基づく値上げを指示し,各地区において他の塩ビ管メーカーの地区の担当者と協議の上,当該地区の実情を踏まえて,当該地区における値上げの目標価格を決定させるなどの枠組みにより,値上げを図っていた(以下,被審人ら及びクボタ〔クボタシーアイ設立後は同社〕を「3社」といい,クボタシーアイ設立前の3社並びにアロン化成及びシーアイ化成を「5社」という。)。
イ 第1次値上げに係る合意の成否
(ア) 3社による会合
遅くとも平成16年1月上旬頃,塩化ビニル樹脂の価格が同年2月頃以降に引き上げられる見通しとなった。
また,この塩化ビニル樹脂の価格の引上げと併せて,塩化ビニル樹脂の製造販売業者(以下「塩化ビニル樹脂メーカー」という。)が,塩化ビニル樹脂の価格決定方式を,従来の「後決め方式」と称される価格決定方式(塩化ビニル樹脂メーカーから塩化ビニル樹脂の供給を受けた後に購入量等に応じて購入価格を決定する方式)から「先決め方式」と称される価格決定方式(塩化ビニル樹脂メーカーから塩化ビニル樹脂の供給を受ける前に購入価格を決定し,購入量等に応じた事後の調整は行わない方式)に変更することを要求したところ,塩ビ管メーカーとしても,塩化ビニル樹脂の安定的な供給を受ける必要性から,これを受け入れざるを得なくなった。後決め方式においては,塩ビ管メーカーは,塩化ビニル管等の販売価格を下げたとしても,その分販売量を拡大して塩化ビニル樹脂の購入量を増やすこと等によって,塩化ビニル樹脂メーカーと事後に調整してバックマージンを得ることにより,最終的には利益を確保することもできたが,先決め方式の受入れ以後は,そのような利益確保の途を閉ざされ,塩ビ管メーカーは,塩化ビニル樹脂の価格が引き上げられた場合,自社の利益を確保するためには,塩化ビニル管等の値上げを確実に実施し,値上げ後も値上げした価格を維持することが不可欠になった。
このようなことから,3社の中央の担当者である被審人積水化学工業の田頭秀雄(以下「被審人積水化学工業の田頭」という。),被審人三菱樹脂の神永正幸(以下「被審人三菱樹脂の神永」という。)及びクボタの増田秀樹(以下「クボタの増田」といい,クボタシーアイの設立後は「クボタシーアイの増田」ともいう。また,参考人としての同人を指す場合は,その状況に応じて「クボタの増田」又は「クボタシーアイの増田」という。)は,平成16年1月頃から,塩化ビニル管等の値上げについて情報交換を行い,同月21日,クボタ東京本社の応接室において3社の会合を開催した。
3社は,遅くともこのときまでには,平成16年3月1日受注分から,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から15パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく10パーセント以上引き上げること,その値上げの実施を確実にするため,3管種にあっては,1本当たりの二次店価格を,VU100は950円,SRA150は2,400円,SRA200は4,000円とすることを決定し,また,値上げの公表については,最初に被審人積水化学工業が行うこととした。
そして,被審人積水化学工業の田頭,被審人三菱樹脂の神永及びクボタの増田は,この3社による会合において決定した内容のとおり値上げすることを5社で合意するため,5社による会合を開催することとした。
(イ) 5社による会合
被審人積水化学工業の田頭,被審人三菱樹脂の神永,クボタの増田,アロン化成の田中坦(以下「アロン化成の田中」という。)及びシーアイ化成の野口秀幸(以下「シーアイ化成の野口」という。)は,平成16年1月27日,被審人積水化学工業東京本社近くの飲食店「レストラン立山」の会議室において5社による会合を開催した。そして,5社は,3社による会合で決定された内容のとおり値上げを行うことを決定し,また,値上げの公表については,最初に被審人積水化学工業が同年2月4日に行い,次いでクボタが同月9日に行うことを確認した。
ウ 第2次値上げに係る合意の成否
(ア) 3社による会合
遅くとも平成16年8月に入った頃,塩化ビニル樹脂の価格が同年9月頃以降に引き上げられる見通しとなったことから,被審人積水化学工業の田頭,被審人三菱樹脂の神永及びクボタの増田は,同年8月に入った頃から,塩化ビニル管等の値上げについて情報交換を行い,3社は,遅くとも後記(イ)の5社による会合までに,同年10月1日出荷分から,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から10パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく8パーセント以上引き上げること,その値上げの実施を確実にするため,3管種にあっては,1本当たりの二次店価格を,VU100は1,100円,SRA150は2,800円から3,000円,SRA200は4,500円とすることを決定し,また,値上げの公表については,最初にクボタが同年9月7日に行い,次いで被審人積水化学工業が同月9日に行うことを確認した。
(イ) 5社による会合
被審人積水化学工業の田頭,その後任として平成16年10月から同社の環境・ライフラインカンパニー給排水システム事業部長となり,同社の中央の担当者となることが決まっていた同社の西村章(以下「被審人積水化学工業の西村」という。),被審人三菱樹脂の神永,クボタの増田,シーアイ化成の野口及び同年3月からアロン化成の田中の後任として中央の担当者となったアロン化成の大脇久則(以下「アロン化成の大脇」という。)は,同年8月25日,被審人積水化学工業東京本社近くの飲食店「つきじ植むら虎の門賓館」において5社による会合を開催した。そして,5社は,3社による会合で決定された内容のとおり値上げを行うことを決定し,また,値上げの公表については,最初にクボタが同年9月7日に行い,次いで被審人積水化学工業が同月9日に行うことを確認した。
エ クボタシーアイの設立及び合意への参加
平成17年4月1日,クボタ及びシーアイ化成による共同新設分割によりクボタシーアイが設立され,同社は,同日付けでクボタ及びシーアイ化成から,それぞれ塩化ビニル管等の製造販売に係る事業を承継した。同日以後,クボタシーアイが,クボタ及びシーアイ化成に代わって第1次値上げに係る合意並びに第2次値上げに係る合意に参加し,クボタの増田はクボタシーアイの市場企画部長として,引き続き中央の担当者を務めた。
オ 第3次値上げに係る合意の成否
(ア) 3社による会合
遅くとも平成17年8月に入った頃,塩化ビニル樹脂の価格が同年10月頃以降に引き上げられる見通しとなったことから,被審人積水化学工業の西村,同年4月から被審人三菱樹脂の神永の後任として中央の担当者となった被審人三菱樹脂の山本和久(以下「被審人三菱樹脂の山本」という。)及びクボタシーアイの増田は,同年8月25日,クボタシーアイ東京本社の応接室において3社による会合を開催した。そして,3社は,同年10月11日頃出荷分から,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から8パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく5パーセント以上引き上げること,その値上げの実施を確実にするため,3管種にあっては,1本当たりの二次店価格を,VU100は1,200円,SRA150は3,200円,SRA200は4,800円とすることを合意し,また,値上げの公表については,最初にクボタシーアイが同年9月7日に行い,次いで被審人積水化学工業が行うことを確認した。
(イ) アロン化成が本件合意に参加しなくなったこと
被審人積水化学工業の西村,被審人三菱樹脂の山本及びクボタシーアイの増田は,平成17年8月30日,被審人積水化学工業東京本社の応接室において3社による会合を開催し,今後中央の会合にアロン化成を出席させない旨決定し,同日以後,アロン化成は本件合意に参加していない。
カ 第4次値上げに係る合意の成否
(ア) クボタシーアイにおける値上げの決定
塩化ビニル樹脂の価格が平成18年6月頃以降に引き上げられる見通しとなったことから,同年4月26日頃,同月1日からクボタシーアイの増田の後任として中央の担当者となった同社の小原徹也(以下「クボタシーアイの小原」という。)は,同社社長の卜部忠彦(以下「クボタシーアイの卜部」という。)から早急に塩化ビニル管等の値上げを検討するように指示を受けた。
そこで,クボタシーアイの小原は,同月28日,クボタシーアイの増田等の同社の役員と打合せをして,同年6月12日出荷分から値上げを実施すること,値上げの公表日を同年5月18日とすること等を決定し,同社の卜部の了解を得た。
また,クボタシーアイの小原は,同月10日に同人の前任者であった同社の増田を交えた社内打合せを行い,3管種の二次店価格や値上げの詳細を検討することとした。
(イ) 合意の成立
クボタシーアイの小原は,独占禁止法違反の疑いをかけられた場合のことを考え,少なくともクボタシーアイの値上げの公表まで3社で集まることは避け,他の方法により3社で合意するという枠組みを維持していくことにし,以下のとおり,同社の値上げ方針を被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本に個別に連絡し,平成18年5月11日頃までに,被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本からクボタシーアイの値上げの方針に沿って塩化ビニル管等の値上げを実施することの同意を得たことにより,3社は,クボタシーアイの値上げ方針に沿って値上げすることを合意した。
なお,クボタシーアイの小原は,自社の値上げ方針等を連絡する際には,被審人積水化学工業の西村に対しては被審人三菱樹脂の山本にも,被審人三菱樹脂の山本に対しては被審人積水化学工業の西村にも同じ内容を伝えた,あるいは伝える旨を話していた。
a 平成18年5月8日,クボタシーアイの小原は,被審人積水化学工業東京本社に同社の西村を訪ね,クボタシーアイの塩化ビニル管等の値上げ方針について,前記(ア)の同年4月28日の役員との打合せで決定した値上げの日程のほか,塩化ビニル管の出荷価格の上げ幅については現行価格から13パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷価格の上げ幅については同じく10パーセント以上とすることを伝えた上で,第4次値上げはクボタシーアイが先頭になって値上げを実施するので,被審人積水化学工業もクボタシーアイの値上げ方針に沿って塩化ビニル管等の値上げを実施するよう求めたところ,被審人積水化学工業の西村は,これを了承し,同社において値上げの内容を決定した場合には,これをクボタシーアイの小原に連絡する旨を述べた。
なお,前記(ア)のとおり,クボタシーアイの小原は,3管種の二次店価格や値上げの詳細について,同年5月10日の社内打合せで決定する予定であったことから,同社において3管種の二次店価格を決定した場合や,値上げ方針を変更した場合には別途連絡する旨を伝え,被審人積水化学工業の西村は,これを了承した。
b 平成18年5月10日,クボタシーアイの小原は,同社の増田らと行った社内の打合せにおいて,それまでに決定していた値上げ方針を一部変更して,同年6月21日出荷分から,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から15パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく10パーセント以上引き上げること,その値上げの実施を確実にするため,3管種にあっては,1本当たりの二次店価格を,VU100は1,400円,SRA150は3,800円,SRA200は5,200円とすることを決定するとともに,値上げの公表日も同年5月25日に変更した。
c 平成18年5月10日頃,クボタシーアイの小原は,被審人積水化学工業の西村に電話をかけ,前記bの自社の値上げ方針等を連絡したところ,西村はこれを了承した。
d 平成18年5月11日,クボタシーアイの小原は,被審人三菱樹脂本社に同社の山本を訪ね,前記bの値上げ方針等を伝え,クボタシーアイが先頭になって値上げを実施するので,被審人三菱樹脂もクボタシーアイの値上げ方針に沿って塩化ビニル管等の値上げを実施するよう求めたところ,被審人三菱樹脂の山本はこれを了承し,同社において値上げの内容を決定した場合には,これをクボタシーアイの小原に連絡する旨を述べた。
(ウ) 合意後の被審人ら及びクボタシーアイの行動
a クボタシーアイの小原は,前記(イ)の合意後,合意した3管種の二次店価格について再検討した結果,SRA150の二次店価格を3,800円から3,500円に変更することが適当であると考えるに至り,平成18年5月15日,被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本にそれぞれ電話をかけ,SRA150の二次店価格を3,500円に変更する旨を連絡し,被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本は,これを了承した。
b 被審人積水化学工業の西村は,平成18年5月22日頃,クボタシーアイの小原に電話をかけ,自社の値上げについて,同年7月3日出荷分から,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から10パーセントないし12パーセント,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく8パーセント引き上げること,3管種の二次店価格はクボタシーアイと同額とすること,第4次値上げの公表日を同年6月7日とすることを連絡した。
c 被審人三菱樹脂の山本は,平成18年6月1日頃,クボタシーアイの小原に電話をかけ,自社の値上げについて,同年7月10日出荷分から,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から12パーセントないし15パーセント,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく8パーセント引き上げること,3管種の二次店価格はクボタシーアイと同額とすること,第4次値上げの公表日を同年6月12日とすることを連絡した。
d 被審人積水化学工業の西村,被審人三菱樹脂の山本及びクボタシーアイの小原の3名は,平成18年6月7日,「レストラン立山」の会議室において3社による会合を開催し,被審人らが前記(イ)の合意に基づいて値上げすることを改めて確認するとともに,今後,継続的に3社による会合を開催して,第4次値上げの実施状況を相互に監視していくことを確認した。
キ 価格引上げについての公表
5社(第3次値上げに係る合意及び第4次値上げに係る合意においては3社)は,第1次値上げないし第4次値上げまで,それぞれ塩化ビニル管等の値上げを公表しているが,その内容は,各社とも本件合意の内容に沿ったものであった。
ク 実効性を確保するための行為
(ア) 他の塩ビ管メーカーに対する値上げの協力要請
3社の中央の担当者は,分担して,本件合意に参加していない他の塩ビ管メーカーのうち,株式会社ヴァンテック(以下「ヴァンテック」という。),日本プラスチック工業株式会社(以下「日本プラスチック工業」という。),旭有機材工業株式会社(以下「旭有機材工業」という。),前澤化成工業株式会社(以下「前澤化成工業」という。),信越ポリマー株式会社(以下「信越ポリマー」という。),ダイカポリマー株式会社(以下「ダイカポリマー」という。)及び日本ロール製造株式会社(以下「日本ロール製造」という。)の7社(第3次値上げに係る合意及び第4次値上げに係る合意においてはアロン化成を加えた8社)に対して,塩化ビニル管等の値上げに協力するよう要請していた。
(イ) 各地区における値上げ目標価格の決定
5社(第3次値上げに係る合意及び第4次値上げに係る合意においては3社)の中央の担当者は,自社の各地区の担当者に対し,本件合意に基づく値上げを指示し,各地区において,他の塩ビ管メーカーの地区の担当者と協議の上,各地区の実情を踏まえて,塩化ビニル管等の種類ごとに当該地区において目標とする二次店価格等の最低価格を決定させた。
(ウ) 二次店価格の引上げ
5社(第3次値上げに係る合意及び第4次値上げに係る合意においては3社)の地区の担当者は,それぞれ,取引先である一次店に対して,二次店への販売価格を引き上げるよう要請した。一次店の担当者に同行し,二次店を回る者もいた。
(エ) 合意後の相互監視
5社(第3次値上げに係る合意及び第4次値上げに係る合意においては3社)の中央の担当者は,おおむね月1回の割合で中央の会合を開催し,本件合意に基づく値上げの実施状況について情報交換を行い,値上げが十分に実施されていないといった問題については,互いに是正を求めて,値上げの実施を相互に監視していた。
ケ 小括
独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限が成立するためには,まず,複数事業者が対価を引き上げるに当たって,相互の間に「意思の連絡」があったと認められることが必要である。そして,ここにいう「意思の連絡」とは,複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し,これと歩調をそろえる意思があることを意味し,一方の対価引上げを他方が単に認識,認容するのみでは足りないが,事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく,相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して,暗黙のうちに認容することで足りると解するのが相当である(東京高等裁判所平成7年9月25日判決・公正取引委員会審決集第42巻393頁〔東芝ケミカル株式会社による審決取消請求事件〕)。
前記アないしキで述べたところによれば,本件合意は,共同して,塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げる旨を合意するものである。
また,本件合意は,成立後,それぞれ,平成18年11月13日まで継続していた。
したがって,第1次値上げ及び第2次値上げにあっては5社が,第3次値上げ及び第4次値上げにあっては3社が,本件合意により,共同して相互にその事業活動を拘束していた。
⑵ 被審人積水化学工業の主張
ア 第1次値上げに係る合意の不存在
(ア) 値上げは独自の判断によるものであること
被審人積水化学工業は,平成15年12月頃から懸念が広がっていた塩化ビニル樹脂の国内における需給逼迫状況への対応として,審査官の主張する平成16年1月21日の3社の会合及び同月27日の5社の会合よりも前に,塩化ビニル樹脂の安定供給を受けることを最優先とし,塩化ビニル樹脂メーカーとの良好な関係を構築するため,他社に先駆けて塩化ビニル樹脂の値上げや価格先決め方式への移行の要求に応じるとの方針を決定したものであって,被審人積水化学工業は,独自の判断で値上げを決定したものである。
なお,独自の判断で値上げを決定したことは,クボタも同様である。
(イ) 審査官が主張する平成16年1月21日の3社の合意が存在しないこと
平成16年1月21日に審査官の主張する3社の合意が行われた事実はない。実際,クボタの増田は,同月20日,地区の営業責任者等に対し,電子メールを発信して,VU100等の目標とする二次店価格に関する意見を同月23日までに寄せるよう求めており,同人は,同月21日の時点では,審査官が主張するような3管種の二次店価格等の値上げの具体的内容について合意する前提となる情報を有していなかった。
なお,審査官の主張を裏付けるクボタの増田の供述(査第15号証,第136号証,増田秀樹参考人審尋速記録)は,3社の会合の開催場所に関する供述が変遷しており,信用できない。
(ウ) 審査官が主張する平成16年1月27日の5社の合意が存在しないこと
5社は,塩化ビニル管・継手協会の企画広報委員会を運営する中核メンバーとして,人事等の機微にわたる案件を協議したり,懇親会を開催したりしていたものであり(5社の会合は「企画広報委員5社会」と称されることもあった。),平成16年1月27日に「レストラン立山」で開催された5社の会合もそのような懇親会にすぎず,第1次値上げに係る合意を行うために集まったものではない。
(エ) 原料の価格決定方式の変更が塩化ビニル管等のカルテルを誘発する要因になるわけではないこと
審査官は,塩化ビニル樹脂の価格決定方式が「後決め方式」から「先決め方式」に変更されたことを塩化ビニル管等のカルテルに結び付けて主張するが,「後決め方式」の下において,販売量に応じたボリューム・ディスカウントのごときバックマージンの制度が存在していたわけではないから,上記の価格決定方式の変更が塩化ビニル管等のカルテルを誘発する要因になるわけではない。
イ 第2次値上げに係る合意の不存在
(ア) 値上げは独自の判断によるものであること
被審人積水化学工業は,平成16年7月に台風により被害を受けた子会社の徳山積水工業株式会社からの塩化ビニル樹脂の供給の懸念や国内の塩化ビニル樹脂の需給逼迫状況への対応として,塩化ビニル樹脂の安定供給を受けることを最優先事項として,塩化ビニル樹脂メーカーとの良好な関係を構築して塩化ビニル樹脂を確保するため,他社に先駆けて塩化ビニル樹脂の値上げを受諾する方針を決定し,同年8月19日までに塩化ビニル管等の値上げ方針を決定したのであって,被審人積水化学工業は,同月25日の5社による会合よりも前に,自社の事情により,独自の判断で値上げを決定したものである。
なお,独自の判断で値上げを決定したことは,クボタも同様である。
(イ) 審査官が主張する3社の合意が存在しないこと
3社が塩化ビニル管等の値上げ率等を決定したことについて客観的証拠はない。
また,これを供述するクボタの増田の供述(査第23号証,第136号証)は,合意が成立した日時及び場所,参加者について供述の変遷又は後退があり,信用できない。
(ウ) 審査官が主張する5社の合意の不存在
a 平成16年8月25日の「つきじ植むら虎の門賓館」で開催された5社の会合は,企画広報委員5社会の懇親会(被審人積水化学工業の事業部長を同社の田頭から引き継ぐことが内定していた同社の西村の歓迎会)であり,第2次値上げに係る合意を行うために集まったものではない。
b クボタは,平成16年9月3日の営業会議において,塩化ビニル管等の値上げを社内に通知した際,値上げ率を塩化ビニル管については12パーセント,塩化ビニル管継手については10パーセントとし,公表した塩化ビニル管等の値上げの打ち出し率は,塩化ビニル管については12パーセント以上,塩化ビニル管継手については8パーセント以上となっており,これらのクボタの値上げ率の設定は,値上げ率を塩化ビニル管については10パーセント,塩化ビニル管継手については8パーセントとしていた他の4社とは異なっているから,この事実は,第2次値上げに係る合意が存在しないことを示すものである。
c 第2次値上げにおいて,シーアイ化成は,平成16年10月1日受注分から値上げする旨を公表したのに対し,他の4社は,同日出荷分から値上げする旨を公表している。受注分からの値上げは,旧値による駆け込み受注が起きやすく,値上げ実現を遅らせる方向に働く値上げ実施方法であるとされているところ,シーアイ化成のみが単独で受注分方式を取ることにより実質的に値上げの実施時期を遅らせたことは,5社の間に第2次値上げに係る合意が存在しなかったことを示している。
d したがって,審査官が主張する5社の合意は存在しない。
ウ 5社による会合の終了及びその後の3社による会合の開催の理由
(ア) 企画広報委員5社会は,クボタとシーアイ化成の統合によりクボタの増田及びシーアイ化成の野口が企画広報委員から外れることになり,また,被審人三菱樹脂の神永も平成17年3月末をもって企画広報委員から外れることになったことから,同月をもってかかる会合は消滅した。
(イ) 平成17年6月以降は,被審人積水化学工業の西村,被審人三菱樹脂の山本及びクボタシーアイの増田は,たびたび3社の会合をもったが,これらの会合は,懇親の目的があったことに加え,次のとおり,アロン化成のリブパイプ協会への入会問題やポリエチレン管の事業者団体の統合問題等の懸案事項・協議事項について協議をする必要があったことによる。
a アロン化成のリブパイプ協会への入会問題
リブパイプの事業者団体であるリブパイプ協会は,被審人ら及びクボタシーアイのみが会員であったが,アロン化成が入会を希望していたため,平成18年4月10日のリブパイプ協会の臨時理事会においてアロン化成の入会申請が却下されるまでの間,アロン化成の入会に反対する被審人らと,アロン化成に対しリブパイプのOEM供給を約束していたクボタシーアイとの間でアロン化成のリブパイプ協会への入会問題について協議をする必要があった。
b ポリエチレン管の事業者団体の統合問題等
ポリエチレン管の事業者団体は,被審人らを中心とした配水用ポリエチレン管協会とクボタシーアイを中心とした水道用ポリエチレンパイプシステム研究会(通称「ポリテック」。以下「ポリテック」という。)があり,それぞれ独自の規格を持っていた(なお,アロン化成は,ポリエチレン管及び同継手を製造販売しておらず,上記両団体のいずれにも加入していなかった。)。平成17年1月から上記各団体の統合の話が動き出したが,平成18年3月6日のポリテックの臨時理事会で被審人らの入会が承認され,同年5月 29日のポリテックの企画広報委員会で配水用ポリエチレン管協会の団体規格であった片受け管及び同継手の団体規格化が決議され,同年6月28日の臨時理事会で報告されるまで,上記両団体の統合問題等について協議をする必要があった。
エ 第3次値上げに係る合意の不存在
(ア) 値上げは独自の判断によるものであること
塩化ビニル樹脂メーカーがナフサの価格の高騰により塩ビ管メーカーに対する塩化ビニル樹脂の値上げ攻勢を強めてきたため,被審人積水化学工業は,平成17年8月17日の夕方か同月18日には,独自の判断により,他社に先駆けて塩化ビニル樹脂の値上げの受諾及び塩化ビニル管等の値上げ方針を決定した。
なお,独自の判断で値上げを決定したことは,クボタシーアイも同様である。
(イ) 審査官が主張する3社の合意が存在しないこと
3社が平成17年8月25日に審査官が主張する合意をした事実はない。ポリエチレン管の事業者団体の統合問題等について,それまで被審人積水化学工業とクボタシーアイとの間で協議をしてきたが,被審人三菱樹脂を交えて協議することになり,同日,3社の会合がもたれたものである。
なお,クボタシーアイの増田は,同日の3社の会合において第3次値上げでの値上げの打ち出し幅,3管種の二次店価格等を合意したと供述する(増田秀樹参考人審尋速記録,査第31号証,第136号証)が,会合の場所についての供述が変遷しており,信用できない。
(ウ) もっとも,平成17年8月25日の3社の会合では,ポリエチレン管の事業者団体の統合問題と併せて付随的に各社の値上げに向けた動きやVU100の二次店価格が話題となったことは考えられるが,VU100等の二次店価格は塩ビ管メーカーがコントロールできるものではないから,塩ビ管メーカーが自社の利益を確保する上で最も重視しているのは二次店価格ではなく,塩ビ管メーカーが一次店に売却する際のいわゆる「手離れ価格」である。したがって,仮に価格カルテルを行うのであれば,手離れ価格について合意するのが自然かつ合理的であるが,本件においては,手離れ価格についての合意どころか,その情報交換さえされておらず,各社が手離れ価格を秘匿しあっていたところ,このことは,手離れ価格を巡ってメーカー間に競争があったことを示している。
オ 第4次値上げに係る合意の不存在
(ア) 値上げは独自の判断によるものであること
平成18年のゴールデンウィーク頃に塩化ビニル樹脂の値上げの動きが出ていた状況の中で,クボタシーアイは,公共工事等の官公需を中心としており,官公需等の物件取引向けの塩ビ管製品の値上げを成功させるためには,発注が集中する時期より前に値上げを打ち出し,値上げを設計価格に織り込ませることが不可欠であることから,公共事業の発注が本格化する秋より前に値上げを完了させなければならないという同社特有の事情から,被審人らが値上げの具体的な検討に着手する前に独自の判断で塩化ビニル樹脂の値上げの受諾と塩化ビニル管等の値上げを決定した。
他方,被審人積水化学工業は,クボタシーアイとは異なり,代理店を通じて塩化ビニル管等の販売を行う取引を中心としているところ,代理店が多くの在庫を抱えていたから,商品の値上げをすることは非常に困難であった。そのため,平成18年のゴールデンウィーク前後の時点では,塩化ビニル管等の値上げを検討する発想すらなく,原料メーカーから値上げの要請があっても,値上げを受諾せず,原料メーカーとの交渉を継続していた。そして,同年5月25日の時点でも,塩化ビニル管等の値上げに関する検討はしていたものの,値上げの具体的な方針は決定していない状況であったが,業界最大手であるクボタシーアイが同月26日に塩化ビニル管等の値上げを発表したことにより,被審人積水化学工業としても原料値上げを受諾して塩化ビニル管等の値上げをせざるを得ないと判断し,同月末に値上げを発表した。
このように,被審人積水化学工業は,同月11日頃の時点で値上げ方針を決定できる状況になく,同月26日のクボタシーアイによる塩化ビニル管等の値上げの発表を受けてやむなく値上げせざるを得ないと判断し,これを決定したものである。
(イ) 審査官が主張する3社の合意の不存在
次のとおり,審査官が主張する3社の合意は存在しない。
a 平成18年3月6日のポリテックの臨時理事会で被審人らの入会が承認されたことによりポリエチレン管の事業者団体の統合は実現したが,被審人積水化学工業が事業者団体の統合の条件としていた片受け管及び同継手の団体規格化は,クボタシーアイの増田が根回しをしなかったために,ポリテックの同年4月18日の総会での決議が見送られ,また,クボタシーアイが望んでいたアロン化成のリブパイプ協会への入会申請が同月10日のリブパイプ協会の臨時総会で被審人らの反対で却下されたため,被審人らとクボタシーアイは対立しており,第4次値上げに係る合意をすることができる状況になかった。
b 平成18年5月8日に被審人積水化学工業の西村とクボタシーアイの小原は面談し,その際,クボタシーアイの小原は,被審人積水化学工業の西村に対し,クボタシーアイの値上げ方針に従って値上げすることを求めたが,被審人積水化学工業の西村はこれを断った。
なお,クボタシーアイの小原は,被審人積水化学工業の西村がクボタシーアイの値上げ方針に従って値上げすることを承諾した旨供述する(査第145号証,第37号証,小原徹也参考人審尋速記録)が,それらの供述では面談の場所に関する供述が変遷しており,信用できない。
c 審査官が主張するとおり,クボタシーアイの小原が被審人積水化学工業の西村に対し,平成18年5月10日頃,クボタシーアイの値上げ方針等を連絡し,同月15日,クボタシーアイの値上げ内容の一部を変更する旨連絡したという事実があるとしても,それは単に真偽不明の信用に値しない情報が一方的に伝えられたにすぎず,それに合わせて被審人積水化学工業が値上げ方針を決定したものではない。
また,同月22日に被審人積水化学工業の西村がクボタシーアイの小原に対し電話で審査官主張の連絡をした事実はない。
d 平成18年5月30日の塩化ビニル管・継手協会の定時総会後の懇親会において,被審人積水化学工業の西村は,クボタシーアイの卜部から「塩ビ管値上げを早くしろ」,「さっさとせえ」と罵倒されたが,審査官が主張するように,同月22日にクボタシーアイの小原が被審人積水化学工業の西村から同社の値上げの内容を聞いていたのであれば,クボタシーアイの卜部が上記発言をするはずがなく,むしろ,同人の上記発言は,クボタシーアイの小原が被審人積水化学工業の西村にカルテルを持ちかけたものの同人がこれを断り,同社の値上げ方針も明らかにされない状況にいらだちを覚えて行ったものと考えるのが自然である。
e 第4次値上げにおける値上げ率は,クボタシーアイが塩化ビニル管15パーセント,塩化ビニル管継手10パーセント以上であるのに対し,被審人積水化学工業は塩化ビニル管12パーセント以上,塩化ビニル管継手8パーセント以上であり,その値上げ率に開きがあることからも,第4次値上げに係る合意が存在しないことがうかがわれる。
f したがって,3社が第4次値上げに係る合意をした事実はない。
カ 小括
第1次ないし第4次値上げにおいて,被審人積水化学工業もクボタ又はクボタシーアイも,独自の判断で値上げの方針を決定していたものである。
確かに,第1次ないし第4次値上げの時期に被審人積水化学工業はクボタ(クボタシーアイ)らと情報交換を行っていたが,値上げに関する話題が出たとしても,それは,いずれ公表される性質の秘密性の低い自社の決定情報を事前に告知し合っていたにすぎず,他の事業者を拘束する趣旨のものではない。
また,平成17年4月以降,アロン化成は3社の会合に参加していないが,この事実は,アロン化成が参加していた第1次値上げ及び第2次値上げの際に存在した5社の会合において相互拘束性のある値上げの合意がされていなかったことの証左である。
⑶ 被審人三菱樹脂の主張
ア 第1次値上げに係る合意の不存在
(ア) 値上げは独自の判断によるものであること
塩化ビニル樹脂の日本から中国への輸出量が飛躍的に増大したため,日本国内における需給のバランスが逼迫し,また,塩化ビニル樹脂の輸出価格の方が国内価格よりも高くなったため,塩化ビニル樹脂メーカーが,価格の後決め方式を先決め方式に改め(先決め方式においては,塩化ビニル樹脂の値上げがそのまま塩化ビニル管等のコストの増大につながる。),塩化ビニル樹脂の供給量を絞り,塩化ビニル樹脂の値上げを強硬に打ち出したことから,被審人三菱樹脂は,塩化ビニル樹脂が手薄な状態においては,価格よりも必要量の確保を優先的に考えざるを得ないことから,塩化ビニル樹脂の値上げの受入れと塩化ビニル管等の値上げを決定した。したがって,被審人三菱樹脂は,独自の判断で値上げを決定したものである。
なお,審査官は,5社が平成16年3月1日受注分から値上げすることを合意したと主張するが,被審人三菱樹脂は同月15日出荷分から値上げしており,「出荷分」ベースで値上げを打ち出したメーカーは「受注分」ベースで値上げを打ち出したメーカーに大きくシェアを奪われる可能性があるから,第1次値上げに関する合意が存在しないことが推認され,少なくとも被審人三菱樹脂が第1次値上げの拘束を全く受けることなく値上げの意思決定をしていることは明白である。
(イ) 審査官が主張する3社の合意が存在しないこと
確かに平成16年1月21日にクボタ東京本社においてクボタの増田,被審人三菱樹脂の神永及び被審人積水化学工業の田頭が会談しているが,専ら原料動向に関する話題に終始したものであり,塩化ビニル管等の値上げについて合意した事実はない。実際,クボタの増田は,同月20日,地区の営業責任者等に対し,電子メールを発信して,VU100等の目標とする二次店価格に関する意見を同月23日までに寄せるよう求めており,同人は,同月21日の時点では,審査官が主張するような3管種の二次店価格等の値上げの具体的内容について合意する前提となる情報を有していなかった。
審査官が主張する3社の合意を裏付ける証拠は,クボタの増田の供述(査第15号証,第135号証,第136号証,増田秀樹参考人審尋速記録)だけであるが,これらの同人の供述は,課徴金減免申請を行った事業者の従業員の供述であるとともに,3社の会合の開催日時及び開催場所についての供述が変遷しており,全体として信用できない。また,仮に参考人審尋におけるクボタの増田の供述が信用できるとしても,それは,クボタが被審人積水化学工業との間で具体的な値上げの合意をしたことの証拠にはなり得ても,被審人三菱樹脂を含めた3社の間で具体的な値上げの合意をしたことの証拠にはならない。
(ウ) 審査官が主張する5社の合意が存在しないこと
平成16年1月27日の5社の会合は,専ら懇親や慰労を目的とした会食である。確かに,その際にクボタの増田から塩化ビニル管等の値上げの話題が出たことは事実であるが,5社がそれについて合意した事実はない。
審査官の主張を裏付ける証拠は,前記(イ)記載のクボタの増田の供述だけであるが,同人の供述は,課徴金減免申請を行った事業者の従業員の供述である上,同人の参考人審尋における供述の内容は,審査官の主張を認定するには不十分である。
イ 第2次値上げに係る合意の不存在
(ア) 値上げは独自の判断によるものであること
第2次値上げの際も,国内における塩化ビニル樹脂の需給バランスが逼迫する状況が続いている中,塩化ビニル樹脂メーカーが強硬な値上げを打ち出してきたことを受け,被審人三菱樹脂は,第1次値上げの際と同様に,塩化ビニル樹脂の確保を最優先に考え,塩化ビニル樹脂メーカーによる塩化ビニル樹脂の値上げの受入れと塩化ビニル管等の値上げを決定したものである。したがって,被審人三菱樹脂は,独自の判断で値上げを決定したものである。
なお,審査官は,5社が平成16年10月1日出荷分から値上げすることを合意したと主張するが,シーアイ化成は同日受注分から値上げしており,審査官が主張する第2次値上げに係る合意とは異なる値上げを行っているから,同日出荷分から値上げすることを合意したとする第2次値上げに関する合意が存在しないことが推認される。
(イ) 審査官が主張する3社の合意が存在しないこと
被審人三菱樹脂の神永は,平成16年8月25日に開催された歓送迎会に参加した以外に,同月に入ってからクボタの増田及び被審人積水化学工業の田頭と一堂に会して情報交換を行った事実はないし,同人らと個別に情報交換を行ったこともないから,審査官が主張する3社の合意は存在しない。
審査官が主張する3社の合意を裏付ける証拠は,クボタの増田の供述(査第23号証)だけであるが,同人の供述は,課徴金減免申請を行った事業者の従業員の供述であるとともに,3社の会合について具体的な日時や場所を特定することなく3社が合意したことを抽象的かつ漠然と述べるにとどまっており,信用できない。また,その点をおくとしても,クボタの増田の供述は,クボタが被審人積水化学工業との間で合意をしたことの証拠にはなり得ても,被審人三菱樹脂を含めた3社の間で合意をしたことの証拠にはならない。
(ウ) 審査官が主張する5社の合意が存在しないこと
平成16年8月25日に開催された5社の会合は,被審人積水化学工業の環境・ライフラインカンパニー給排水システム事業部長が同社の田頭から同社の西村に代わるため開催された歓送迎会であって,話題の一つとして塩化ビニル管等の値上げの話題が出たのは事実であるが,「今度の値上げはどうしようかな」などという程度の他愛もない内容であり,具体的な値上げ幅や実施時期,3管種の二次店価格について5社で合意した事実はない。
審査官の主張を裏付ける証拠は,クボタの増田の供述(査第23号証,増田秀樹参考人審尋速記録)だけであるが,これは,課徴金減免申請を行った事業者の従業員の供述である上,その内容からも第2次値上げに係る合意を立証するに足りるものではない。
ウ 第3次値上げに係る合意の不存在
(ア) 値上げは独自の判断によるものであること
ナフサの価格の大幅な上昇により,塩化ビニル樹脂メーカーが平成17年8月のお盆明けになって塩化ビニル樹脂の値上げを次々と打ち出したことから,被審人三菱樹脂は,塩化ビニル樹脂が値上げされた場合には,その値上げ分を塩化ビニル管等の販売価格に転嫁せざるを得ないと考え,塩化ビニル樹脂の価格動向等を慎重に検討した上で独自に値上げを決定した。
(イ) 審査官が主張する3社の合意が存在しないこと
審査官の3社の合意を裏付けるものはクボタシーアイの増田の供述(査第26号証,第31号証,第33号証,第34号証,増田秀樹参考人審尋速記録)であるが,その供述は,3社の会合の開催場所,会合を持ちかけた者,会合で司会役を務めた者,3管種の単価について具体的な金額を提案した者に関する供述が変遷しており,信用できない。
被審人三菱樹脂は,平成17年8月25日の時点では原料の値上げ幅が見通せなかったから,塩化ビニル管等の値上げのシミュレーションは行っていたものの,値上げ幅や実施時期等の具体的な値上げの内容について何も決まっていなかった。したがって,被審人三菱樹脂の山本が,同日に塩化ビニル管等の値上げ幅に関する発言をしたり,第3次値上げに係る合意をしたりすることができる状況ではなかった。
なお,被審人三菱樹脂の山本は,平成17年4月1日から本社管材事業部長となったものであり,同部主幹であった同社の神永の後任ではなく,同人から他社との会合その他に関する引継ぎも受けていないから,同人の後任として中央の担当者になったという事実はない。被審人三菱樹脂の山本は,それまでクボタシーアイの増田と全く接点がなかったから,前任者からの引継ぎを受けずに,顔合わせもない状態で,突如として第3次値上げに係る合意をすることは不可能である。
エ 第4次値上げに係る合意の不存在
(ア) 値上げは独自の判断によるものであること
平成18年のゴールデンウィーク前後頃に塩化ビニル樹脂メーカーが相次いで塩化ビニル樹脂の値上げを打ち出したが,被審人三菱樹脂は,第3次値上げが完全な失敗に終わったばかりか損益も赤字に転落し,同年4月の販売量も2年連続して前年比80パーセントに減少するという状況にあったことから,それを受け入れられる状況ではなかった。そこで,被審人三菱樹脂は,塩化ビニル樹脂の値上げ打ち出しには徹底抗戦の方針で望むことにしたが,ゴールデンウィーク明けに市場情報として塩化ビニル管等のトップメーカーであるクボタシーアイが塩化ビニル管等の値上げの動きを見せているという情報が入ってきたことから,被審人三菱樹脂としても,塩化ビニル樹脂の値上げを受け入れざるを得なくなった最悪の事態に備えて塩化ビニル管等の値上げについて議論を社内で行っていたところ,同年5月 26日にクボタシーアイが塩化ビニル管等の値上げを公表し,市場情報として被審人積水化学工業も塩化ビニル樹脂の値上げを受け入れる方向で動いているとの情報がもたらされたことなどから,被審人三菱樹脂としても塩化ビニル樹脂の値上げを受け入れざるを得なくなり,独自の判断で塩化ビニル管等の値上げを決定したものである。
(イ) 審査官が主張する3社の合意の不存在
次のとおり,審査官が主張する3社の合意は存在しない。
a 上記合意を裏付ける証拠は,クボタシーアイの小原の供述(査第37号証)であるが,平成18年5月11日にクボタシーアイの小原が被審人三菱樹脂の山本と面談した場所及び同人に伝えた塩化ビニル管の値上げの内容,クボタシーアイの小原が被審人三菱樹脂の山本から同社の値上げの連絡を受けた日時等に関し,供述が変遷しているから,信用できない。
b クボタシーアイの小原は,参考人審尋において,平成18年5月11日の時点で,第4次値上げに係る具体的な値上げ幅と3管種の単価について合意していないことを供述している。
c 被審人三菱樹脂の神永の後任であり,第4次値上げの際に同社において塩化ビニル管等の値上げの基本的な方針を作成して全国に指示をする中心的な立場にあった荒川良平(以下「被審人三菱樹脂の荒川」という。)は,平成18年5月12日,各地の営業拠点に対し,クボタシーアイの値上げの情報が錯綜しているので,情報があれば連絡するよう求める電子メールを送信しているが,これは,同月11日に,被審人三菱樹脂の山本がクボタシーアイの小原から同社の値上げの具体的な内容を聞いた上で,その値上げ方針に沿って塩化ビニル管等を値上げすることを合意したという事実がないことを示している。
d 被審人三菱樹脂は,平成18年5月11日の時点で塩化ビニル樹脂メーカーが打ち出した塩化ビニル樹脂の値上げに徹底抗戦の方針で臨んでおり,塩化ビニル樹脂の値上げの決着がつかない状況において塩化ビニル管等の値上げを決定することはあり得ない。
e クボタシーアイは,早々に塩化ビニル管等の値上げの発表をしているにもかかわらず,被審人三菱樹脂が原料メーカーからの塩化ビニル樹脂の値上げ申し入れに徹底抗戦の方針で臨んでいる姿勢を非難し,原料メーカーからの塩化ビニル樹脂の値上げ申入れに対し,他社が値上げを受け入れるまではクボタシーアイは値上げを受け入れないという対応を採っているが,仮に審査官が主張するとおり第4次値上げに係る合意が成立していたのであれば,速やかに原料メーカーからの塩化ビニル樹脂の値上げを受け入れ,それによって塩化ビニル管等の値上げがしやすい環境を早期に整備するというのが合理的な行動であって,クボタシーアイの上記行動は,カルテル合意が成立している当事者の行動とは考えられない。
f 平成18年5月25日に開催された被審人積水化学工業の全国給排水システム営業所長会議において塩化ビニル管については10パーセント,同継手については6パーセントという値上げ幅が検討されているが,同月11日頃に塩化ビニル管については15パーセント以上,同継手については10パーセント以上というクボタシーアイの値上げ方針に従って塩化ビニル管等を値上げすることを合意していたのであればこれと明らかに矛盾する行為であり,第4次値上げに係る合意が存在しないことを端的に示すものである。
g 平成18年5月30日の塩化ビニル管・継手協会の総会後の懇親会において,クボタシーアイの卜部が被審人積水化学工業の西村に対し,衆人環視の中で「早く値上げしろ,さっさとせえ」などと強い口調で叱責,罵倒しているが,このようなクボタシーアイの卜部の発言は,第4次値上げに係る合意が成立していたとすればあり得ない。
h したがって,3社が第4次値上げに係る合意をしたとは認められない。
オ 小括
以上のとおり,3社又は5社が第1次ないし第4次値上げに係る合意をした事実はない。
2 争点2(本件合意は一定の取引分野における競争を実質的に制限するか)について
⑴ 審査官の主張
ア 本件における一定の取引分野
独占禁止法第2条第6項にいう一定の取引分野は,競争の行われる場を意味し,一定の供給者群と需要者群とから構成され,その範囲は,取引の対象・地域・態様等に応じて,違反とされる行為が対象としている取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討し,その競争が実質的に制限される範囲をもって画定されるとされている(公正取引委員会平成 15年6月27日審判審決・公正取引委員会審決集第50巻14頁〔株式会社東芝及び日本電気株式会社に対する件〕)。
これを本件について見ると,次のとおりである。
まず,第1次値上げに係る合意ないし第4次値上げに係る合意のいずれにおいても,同一の機会に,同一の当事者によって,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手の双方を対象に本件合意が行われている。
そして,供給者についてみると,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手はいずれも塩化ビニル樹脂等を原料とする成型品であり,本件違反行為の参加者らを含む主要な塩ビ管メーカーの多くは塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手のいずれも製造販売しており,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手の供給者もまた同一であり,また,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手は組み合わせて使用されるものであって,塩化ビニル管のみを使用する需要者又は塩化ビニル管継手のみを使用する需要者は一般的に観念することができないから,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手の需要者も同一であり,結局,本件において,塩化ビニル管と塩化ビニル管継手の供給者群と需要者群はそれぞれ同一である。
次いで,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手の取引の態様等をみるに,塩化ビニル管と塩化ビニル管継手は,組み合わせることで初めて社会的効用が認められ,組み合わせて使用されることが通常であるから,同一の機会において取引されることが一般的であって,塩ビ管メーカーからは,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手の双方について,それらの需要者に供給することができ,需要者においても,取引に際して塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手について同一のメーカーの商品を選定することが少なからずあることからすれば,一方の商品の需要を巡る競争の状況が他方の商品の需要を巡る競争の状況に多分に影響するものと考えられ,あえて,塩化ビニル管と塩化ビニル管継手のそれぞれに分割して一定の取引分野を画定すべき事情は見当たらない。
加えて,本件合意の参加者らを含む主要な塩ビ管メーカーが所属する塩化ビニル管・継手協会において,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手を併せた啓発促進活動,仕様に関する標準化,リサイクルの推進等の事業が行われていることも,塩ビ管メーカーが塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手を一体として捉えて事業活動を行っていたことを示すものである。
したがって,本件における一定の取引分野は「我が国における塩化ビニル管等の販売分野」であると認められる。
イ 本件合意は一定の取引分野における競争を実質的に制限するか
独占禁止法第2条第6項の「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」とは,カルテル等の事業者間の相互拘束等により,当該行為が対象とする一定の取引分野において機能する需要者群と供給者群との間の自由な競争によって価格その他の取引条件が決定される過程をゆがめ,当該取引分野(市場)を支配することができる状態(市場支配的状態の形成・維持・強化)をもたらすこと,すなわち一定の取引分野において機能する自由競争の過程が保たれている状態(自由競争経済秩序)に対して,上記のような悪影響を及ぼすことである。
本件においては,平成17年8月以前における4社(うちクボタシーアイにつき,同年3月以前にあってはクボタ及びシーアイ化成)の塩化ビニル管等の販売金額の合計は,塩ビ管メーカーの我が国における塩化ビニル管等の総販売金額の大部分を占めており,同年9月以降における被審人積水化学工業,被審人三菱樹脂及びクボタシーアイの3社の塩化ビニル管等の販売金額の合計は,塩ビ管メーカーの我が国における塩化ビニル管等の総販売金額の過半を占めていた(査第117号証)。
なお,本件違反行為の参加者の塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手のシェアを分けて算出し,また,それぞれについて販売金額によるシェア及び販売数量によるシェアを算出すると,塩化ビニル管継手の販売数量の平成18年度のシェアがわずかに過半を下回る以外は,いずれの年度においても過半を超えており(査第118号証の2),結果として,本件における一定の取引分野との関係では,本件違反行為の参加者の塩化ビニル等のシェアはいずれの年度においても過半を超えている。
したがって,本件合意の形成により,塩化ビニル管等の販売分野における競争が全体として減少し,5社又は3社が,その意思で,ある程度自由に,我が国における塩化ビニル管等の価格等の取引条件を左右することによって,塩化ビニル管等の販売分野という市場を支配することができる状態に至っていたと認められるから,本件合意が塩化ビニル管等の販売分野という「一定の取引分野における競争を実質的に制限」していたことは明らかである。
⑵ 被審人積水化学工業の主張
一定の取引分野を画定する上で前提となる最も重要な概念は,対象商品の代替性であり,合意の対象かどうかということをもって判断するべきではない。塩化ビニル管と塩化ビニル管継手との間には代替性がない。また,塩化ビニル管が採用されれば塩化ビニル管継手が自動的に採用されるという関係にはないし,塩ビ管メーカーの中には塩化ビニル管継手を専門的に取り扱うものが多数存在している。さらに,塩化ビニル管は,用途別・分野別に専門性が高く,需要者も当該塩化ビニル管を取り扱う販売店も異なることから,特定の用途の塩化ビニル管についてはその市況に合わせた適切な範囲の値上げを検討するのである。これらの事実を無視して,合意の内容をもって画一的に一定の取引分野を画定する審査官の主張は失当である。
⑶ 被審人三菱樹脂の主張
ア 本件における一定の取引分野
被審人らが行う競争とは,独占禁止法第2条第4項第1号の「同一の需要者に同種又は類似の商品又は役務を供給すること」である。
塩化ビニル管は一本の管状のパイプであり,塩化ビニル管継手はパイプを接合するために使用されるものであり,両者はその形状,製法及び価格帯が全く異なっており,その間には代替性がないから,両者は同種又は類似の商品ではない。また,その供給者をみても,塩化ビニル管を製造販売しているが塩化ビニル管継手を製造販売していない事業者がいる。他方,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手の需要者は重なっているが,独占禁止法上の競争の観点からは,全く別の商品である塩化ビニル管と塩化ビニル管継手についての独立した需要者である。
したがって,同一の需要者に対する塩化ビニル管の供給についての競争と塩化ビニル管継手の供給についての競争は,全く別のものとして存在しているのであり,塩化ビニル管等という商品についての需要者を想定し,その者に対する供給を巡る供給者間の競争を観念することはできないから,塩化ビニル管等の販売分野という取引分野を画定することは不合理である。
イ 本件合意は一定の取引分野における競争を実質的に制限するか
(ア) 審査官は,塩化ビニル管等について販売金額によるシェアを主張するが,次のとおり問題がある。
まず,審査官は塩化ビニル管等についてのシェアを主張しているが,塩化ビニル管と塩化ビニル管継手は相互に代替性のない商品であるから,これらを合わせてシェアを計算しても無意味であり,競争の実体を正確に把握することは不可能である。
また,審査官は販売金額によるシェアを主張しているが,本件において3社の商品がブランド品として他のメーカーの商品よりも比較的高値で取引されており,販売金額によりシェアを算定すると3社の競争上の地位を過大に評価してしまうから,販売金額によりシェアを算定することは相当でなく,販売数量によりシェアを算定すべきである。
また,審査官の塩化ビニル管等の販売金額によるシェアの主張は査第117号証を根拠とするものであるところ,同号証は,その前提となる関係人の販売数量に関して,販売数量の報告をしていない塩ビ管メーカーについては推定により販売数量を算出しているが,その際,メーカー間の製品の販売単価の差を考慮せずに販売数量を推定しており,不当である。
(イ) なお,特に塩化ビニル管継手については,次のとおり指摘することができる。
審査官が,塩化ビニル管と塩化ビニル管継手とに分けて,販売数量によるシェアと販売金額によるシェアを明らかにするために提出した査第118号証の2は,販売数量の報告をしていない塩ビ管メーカーの販売数量を推定する際にメーカー間の製品の販売単価の差を考慮せず,また,販売数量を報告した塩ビ管メーカーのうち一部のメーカーの販売単価が異常に高いという点で問題があるので,数値を合理的に補正して塩化ビニル管継手の販売数量によるシェアを再計算すると,3社のシェアは,平成17年度は,本件違反行為の対象商品に係るものの内訳が不明な「その他」欄記載の販売数量を控除しない場合で47.4パーセント,「その他」欄記載の販売数量を控除した場合で48.1パーセント,平成18年度は,「その他」欄記載の販売数量を控除しない場合で47.0パーセント,「その他」欄記載の販売数量を控除した場合で47.5パーセントにとどまる。このように,本件においては,塩化ビニル管継手市場において,仮に本件合意が存在したとしても,被審人ら3社が当該市場における市場支配力など到底有し得ない状況にあった。
また,本件において,塩化ビニル管継手の分野における有力な競争事業者である前澤化成工業やアロン化成がアウトサイダーであるばかりか,これらの事業者が追随して値上げを行うような状況にもなかった。
そして,第3次値上げ及び第4次値上げは全く市場に浸透しておらず,仮に3社の合意があったとしても,それによって市場における価格メカニズムが機能せず,競争の実質的制限がもたらされたと認めることはできない。
3 争点3(被審人らの主張する各商品は独占禁止法第7条の2第1項所定の「当該商品」に該当するか)について
⑴ 審査官の主張
ア 独占禁止法第7条の2第1項にいう「当該商品」とは,違反行為である相互拘束の対象である商品,すなわち,違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品であって,違反行為である相互拘束を受けたものをいうと解すべきであるが,違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品については,一定の商品につき,違反行為を行った事業者又は事業者団体が,明示的又は黙示的に当該行為の対象から除外するなど,当該商品が違反行為である相互拘束から除外されていることを示す特段の事情が認められない限り,違反行為による拘束が及んでいるものとして課徴金算定の対象となる当該商品に含まれ,違反行為者が実行期間中に違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品を引き渡して得た対価の額が課徴金の算定の基礎となる売上額となると解すべきである(東京高等裁判所平成22年11月26日判決・公正取引委員会審決集第57巻第2分冊194頁〔出光興産株式会社による審決取消請求事件〕)。
イ 本件においては,塩化ビニル樹脂等を原料とする硬質ポリ塩化ビニル管及び硬質ポリ塩化ビニル管継手のうち,電線共同溝等に設置される電線又は通信ケーブルを保護するために用いられるもの(以下「電線保護管等」という。)は,電力会社や電気通信事業者等の一定の範囲の事業者向けとして電力又は通信関係の資材を扱う専門業者を通じて販売され,価格改定は年度ごとに行われており,値上げも他の塩化ビニル管等とは別に行われていたこと等から本件合意の対象から除外されていたものの,3社又は5社は,本件合意に関するそれぞれの話合いにおいて,値上げの対象となる塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手について特段の限定を付さずに話合いをし,特に対象商品を除外することなく値上げ方針を定めていたのであるから,塩化ビニル樹脂等を原料とする硬質ポリ塩化ビニル管及び硬質ポリ塩化ビニル管継手のうち,電線保護管等を除外した,「塩化ビニル管等」が広く本件合意の対象となっていた。
したがって,本件違反行為の対象商品は塩化ビニル管等であり,その範ちゅうに属する商品は,違反行為者が明示的又は黙示的に本件違反行為の対象から除外するなど当該商品が違反行為である相互拘束から除外されていることを示す特段の事情が認められない限り,本件違反行為による拘束が及んでいるものと解される。
ウ 被審人らが主張する各商品は,いずれも塩化ビニル管等に当たるから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為である相互拘束から除外されていることを示す特段の事情も認められないから,本件違反行為による拘束が及んでいる。
したがって,被審人らが主張する各商品は,いずれも「当該商品」に該当する。
⑵ 被審人積水化学工業の主張
塩化ビニル樹脂の値上げが影響するのは,塩化ビニル樹脂を主たる原料とする塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手に限られるから,本件違反行為の対象商品である塩化ビニル管等も塩化ビニル樹脂を主たる原料とするものに限られる。また,塩化ビニル管等であっても,独立した別個の市場に属する商品,特定の需用者との関係で他の塩ビ管メーカーとの競争関係が存在しないものは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
したがって,別表1の各商品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないし,仮に本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,本件違反行為である相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,いずれも当該商品に該当しない(上記各商品についての被審人積水化学工業の個別の主張は後記第6の3記載のとおりである。)。
それらの商品の平成16年3月1日から平成18年1月3日までの期間及び同月4日から同年11月13日までの期間の売上額は別表1の当該各商品の欄に記載されたとおりであるから,それらの売上額は課徴金算定の基礎となる売上額から控除されるべきである。
⑶ 被審人三菱樹脂の主張
クボタシーアイの増田の査第138号証の質問調書における供述などからは,本件違反行為の対象商品は,「塩化ビニル樹脂を主原料とするものであること」,「一般的な流通を経ているものであること」,「旧来品であること」という3つの条件を満たすことが必要であるところ,別表2の各商品は,それらのいずれかを満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないし,仮に本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,本件違反行為である相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,いずれも当該商品に該当しない(上記各商品についての被審人三菱樹脂の個別の主張は後記第6の3記載のとおりである。)。
それらの商品の平成16年3月15日から平成18年1月3日までの期間及び同月4日から同年11月13日までの期間の売上額は別表2の当該各商品の欄に記載されたとおりであるから,それらの売上額は課徴金算定の基礎となる売上額から控除されるべきである。
第6 審判官の判断
1 争点1(被審人らは,他の事業者との間で,塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げる旨の合意をし,共同して相互にその事業活動を拘束したか)について
⑴ 認定事実
ア 第1次値上げについて
(ア) 塩化ビニル樹脂の価格の引上げ
塩化ビニル樹脂メーカーは,塩化ビニル管等の原料である塩化ビニル樹脂の原料のナフサの価格が高騰したこと,中国における塩化ビニル樹脂の需要が拡大し,輸出価格が高くなって輸出量が増大し,日本国内における塩化ビニル樹脂の需給バランスが逼迫してきたことを背景として,平成15年末から平成16年初めにかけて,塩ビ管メーカーに対し,塩化ビニル樹脂の価格の引上げを強く求め,同年1月上旬頃には,塩化ビニル樹脂の価格が同年2月頃以降に引き上げられる見通しとなった。また,塩化ビニル樹脂メーカーは,塩化ビニル樹脂の価格決定方式を後決め方式から先決め方式に変更することも要求した。これに対し,塩ビ管メーカーは,塩化ビニル樹脂の安定的な供給を受ける必要性から,塩化ビニル樹脂メーカーの要求を受け入れざるを得なくなった。
そのため,塩ビ管メーカーは,塩化ビニル樹脂の価格が引き上げられた場合,自社の利益を確保するためには,塩化ビニル樹脂の価格引上げ分を塩化ビニル管等の価格に転嫁することが必要となり,そのためには,塩化ビニル管等の値上げを確実に実施し,値上げ後の価格を維持することが必要となった。
(査第7号証,第14号証〔別紙〕,第15号証,第16号証,第17号証,審B第48号証,増田秀樹参考人審尋速記録)
(イ) 3社の担当者による会合
前記(ア)の状況を受けて,被審人積水化学工業の田頭,被審人三菱樹脂の神永及びクボタの増田は,平成16年1月頃から,塩化ビニル管等の値上げについて情報交換を行い,同月21日,クボタ東京本社の応接室において,会合を開催した。そして,3社は,遅くともこのときまでに,同年3月1日受注分から,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から15パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく10パーセント以上引き上げること,その値上げの実施を確実にするため,3管種にあっては,1本当たりの二次店価格を,VU100は950円,SRA150は2,400円,SRA200は4,000円とすることを決定し,また,値上げの公表は最初に被審人積水化学工業が行うこととした。なお,このように3社が3管種の二次店価格を決定したのは,二次店価格の値崩れが一次店価格の値崩れにつながることが多かったところ,中でも3管種は他の塩化ビニル管等と比べて値崩れを起こしやすかったことから,3管種の二次店価格を3社の会合において決定することで,塩化ビニル管等の値上げの実施を確実にするためであった。
また,被審人積水化学工業の田頭,被審人三菱樹脂の神永及びクボタの増田は,上記会合の際,5社で上記会合において決定した内容のとおり価格を引き上げることを合意するため,会合を開催することとした。
(査第7号証,第15号証,第18号証,第19号証,増田秀樹参考人審尋速記録)
(ウ) 5社の担当者による会合
前記(イ)の会合を受けて,平成16年1月27日,被審人積水化学工業の田頭,被審人三菱樹脂の神永,クボタの増田,アロン化成の田中及びシーアイ化成の野口は,被審人積水化学工業東京本社近くの飲食店「レストラン立山」の会議室において会合を開催した。
この会合において,被審人積水化学工業の田頭が,前記(イ)の決定内容について説明したところ,アロン化成の田中及びシーアイ化成の野口はこれを了承し,それぞれ,同様の内容で価格の引上げを実施する旨述べ,もって,5社は,前記(イ)の決定のとおり,平成16年3月1日受注分から,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から15パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく10パーセント以上引き上げること,その値上げの実施を確実にするため,3管種にあっては,1本当たりの二次店価格を,VU100は950円,SRA150は2,400円,SRA200は4,000円とすることを合意した。
また,5社は,第1次値上げの公表について,まず平成16年2月4日に被審人積水化学工業が行い,次に同月9日にクボタが行うことを確認した。
(査第15号証,第16号証,第20号証,第21号証,第22号証,第43号証,第127号証,第161号証の4,増田秀樹参考人審尋速記録,西村章参考人審尋速記録)
(エ) 5社の価格引上げについての公表
a 被審人積水化学工業
被審人積水化学工業は,平成16年2月5日,同年3月1日受注分から,次のとおり価格を引き上げることを公表した。
(a) 塩化ビニル管:15ないし20パーセント
(b) 塩化ビニル管継手:10パーセント
(c) 関連製品:10パーセント
(査第43号証)
b クボタ
クボタは,平成16年2月9日,同年3月1日受注分から,次のとおり価格を引き上げることを公表した。
(a) 塩化ビニル管:15パーセント以上
(b) 塩化ビニル管継手:10パーセント以上
(c) その他塩化ビニル関連製品:10パーセント以上
(査第43号証)
c アロン化成
アロン化成は,平成16年2月12日,同年3月1日受注分から,次のとおり価格を引き上げることを公表した。
(a) 塩化ビニル管:15パーセント以上
(b) 塩化ビニル管継手:10パーセント以上
(c) 塩化ビニル製マス類:10パーセント以上
(査第43号証)
d 被審人三菱樹脂
被審人三菱樹脂は,平成16年2月16日,同年3月15日出荷分から,次のとおり価格を引き上げることを公表した。
(a) 塩化ビニル管:15ないし20パーセント
(b) 塩化ビニル管継手他関連製品:10パーセント以上
(査第43号証)
e シーアイ化成
シーアイ化成は,平成16年2月16日,同年3月1日受注分から,次のとおり価格を引き上げることを公表した。
(a) 塩化ビニル管:15パーセント以上
(b) 塩化ビニル管継手:15パーセント以上
(c) 関連製品:15パーセント以上
(査第43号証)
イ 第2次値上げについて
(ア) 塩化ビニル樹脂の価格の引上げ
遅くとも平成16年8月に入った頃,塩化ビニル樹脂の価格が同年9月頃以降に引き上げられる見通しとなった(査第14号証〔別紙〕,第23号証)。
(イ) 3社の担当者による会合
そこで,被審人積水化学工業の田頭,被審人三菱樹脂の神永及びクボタの増田は,平成16年8月に入った頃から,塩化ビニル管等の値上げについて情報交換を行い,遅くとも同月25日の5社による会合の開催までに,同年10月1日出荷分から,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から10パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく8パーセント以上引き上げること,その値上げの実施を確実にするため,3管種にあっては,1本当たりの二次店価格を,VU100は1,100円,SRA150は2,800円から3,000円,SRA200は4,500円とすることを決定し,値上げの公表は,最初にクボタが同年9月7日に行い,次いで被審人積水化学工業が同月9日に行うことを確認した。
(査第23号証)
(ウ) 5社の担当者による会合
被審人積水化学工業の田頭,平成16年10月から同人の後任として同社の環境・ライフラインカンパニー給排水システム事業部長となることが決まっていた同社の西村,被審人三菱樹脂の神永,クボタの増田,シーアイ化成の野口及び同年3月からアロン化成の田中の後任となった同社の大脇は,同年8月25日,被審人積水化学工業東京本社近くの飲食店「つきじ植むら虎の門賓館」において会合を開催した。
この会合において,冒頭,被審人積水化学工業の田頭から,自らが異動し,同社の西村が後任となること,同人が同社の中央の担当者となることについて話があった。
続いて,被審人積水化学工業の田頭及びクボタの増田が中心となって,前記(イ)のとおり3社で決定した塩化ビニル管等の値上げの内容について説明したところ,アロン化成の大脇及びシーアイ化成の野口はこれを了承し,それぞれ,同様の内容で値上げを実施する旨述べ,もって,5社は,前記(イ)の決定のとおり,平成16年10月1日出荷分から,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から10パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく8パーセント以上引き上げること,その値上げの実施を確実にするため,3管種にあっては,1本当たりの二次店価格を,VU100は1,100円,SRA150は2,800円から3,000円,SRA200は4,500円とすることを合意した。
また,5社は,第2次値上げの公表について,最初にクボタが平成16年9月7日に行い,次いで被審人積水化学工業が同月9日に行うことを確認した。
(査第22号証,第23号証,第24号証,第25号証,第26号証,第27号証ないし第29号証,第43号証,増田秀樹参考人審尋速記録)
(エ) 5社の価格引上げについての公表
a クボタ
クボタは,平成16年9月7日,同年10月1日出荷分から,次のとおり価格を引き上げることを公表した。
(a) 塩化ビニル管:12パーセント以上
(b) 塩化ビニル管継手:8パーセント以上
(c) その他塩化ビニル関連製品:8パーセント以上
(査第43号証)
b シーアイ化成
シーアイ化成は,平成16年9月8日,同年10月1日受注分から,次のとおり価格を引き上げることを公表した。
(a) 塩化ビニル管:10パーセント以上
(b) 塩化ビニル管継手:8パーセント以上
(c) 関連製品:8パーセント以上
(査第43号証)
c 被審人積水化学工業
被審人積水化学工業は,平成16年9月9日,同年10月1日出荷分から,次のとおり価格を引き上げることを公表した。
(a) 塩化ビニル管:10パーセント
(b) 塩化ビニル管継手,マス他関連製品:8パーセント
(査第43号証)
d 被審人三菱樹脂
被審人三菱樹脂は,平成16年9月13日,同年10月1日出荷分から,次のとおり価格を引き上げることを公表した。
(a) 塩化ビニル管:10パーセント以上
(b) 塩化ビニル管継手,マス,接着剤等関連製品:8パーセント以上
(査第43号証)
e アロン化成
アロン化成は,平成16年9月15日,同年10月1日出荷分から,次のとおり価格を引き上げることを公表した。
(a) 塩化ビニル管:10パーセント以上
(b) 塩化ビニル管継手:8パーセント以上
(c) 塩化ビニル製マス類:8パーセント以上
(査第43号証)
ウ クボタシーアイの設立
平成17年4月1日,クボタ及びシーアイ化成による共同新設分割によりクボタシーアイが設立され,同社は,同日付けでクボタ及びシーアイ化成から,それぞれ塩化ビニル管等の製造販売に係る事業を承継した。(争いがない。)
同日以後,クボタシーアイが,クボタ及びシーアイ化成に代わって第1次値上げに係る合意並びに第2次値上げに係る合意に参加し,クボタの増田が,クボタシーアイの市場企画部長として,引き続き,中央の担当者を務めた。(査第30号証,第31号証)
エ 第3次値上げについて
(ア) 塩化ビニル樹脂の価格の引上げ
遅くとも平成17年8月に入った頃,塩化ビニル樹脂の価格が同年10月頃以降に引き上げられる見通しとなった。(査第14号証〔別紙〕,第31号証)
(イ) 3社の担当者による会合
前記(ア)の状況を受けて,被審人積水化学工業の西村,平成17年4月から被審人三菱樹脂の神永の後任として塩化ビニル管等に係る営業等の担当者となった同社の山本及びクボタシーアイの増田は,同年8月25日,クボタシーアイ東京本社の応接室において会合を開催した。
同会合においては,クボタシーアイの増田が,同社では,平成17年10月11日出荷分から,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から10パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく6パーセント以上引き上げる予定であることを説明した。これに対し,被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本も,それぞれ,クボタシーアイと同じような時期に,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から8パーセント,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく5パーセントから6パーセント引き上げる予定であると説明した。クボタシーアイの増田は,同時期に,ある水準以上の値上げ幅で足並みをそろえることができれば,塩化ビニル管等の値上げ幅について,被審人積水化学工業及び被審人三菱樹脂と2パーセント程度の差があるとしても,問題にはならないと考え,被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本の上記説明に対し,何ら異議を差し挟まなかった。
また,3管種の二次店価格について,クボタシーアイの増田が,VU100は1,200円,SRA150は3,300円,SRA200は4,800円とすることを提案したところ,被審人積水化学工業の西村からSRA150の二次店価格を3,300円とするのは高すぎるので3,200円とすべきである旨の意見があった。また,被審人三菱樹脂の山本も被審人積水化学工業の西村の上記意見に賛成する意見を述べた。そこで,クボタシーアイの増田も,これに応じ,SRA150の二次店価格を3,200円とする旨述べた。
もって,3社は,平成17年10月11日頃出荷分から,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から8パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく5パーセント以上引き上げること,その値上げの実施を確実にするため,3管種にあっては,1本当たりの二次店価格を,VU100は1,200円,SRA150は3,200円,SRA200は4,800円とすることを合意した。
また,3社は,第3次値上げの公表について,最初にクボタシーアイが平成17年9月7日に行い,次いで被審人積水化学工業が行うことを確認した。
なお,第1次値上げ及び第2次値上げの際には,3社による会合の後,5社による会合を開催していたが,シーアイ化成がクボタとともにクボタシーアイとなったため,シーアイ化成に対し改めて諮る必要がなくなったことから,残るアロン化成について,どのように扱うかが問題となったが,これについては同日には決まらなかった。
(査第26号証,第31号証,第33号証,第34号証〔3枚目〕,増田秀樹参考人審尋速記録)
(ウ) クボタシーアイからアロン化成への協力要請
平成17年8月29日,クボタシーアイの増田は,アロン化成の大脇に対し,前記(イ)の合意の内容を伝え,塩化ビニル管等の値上げに協力するよう要請した。(査第31号証,第35号証,増田秀樹参考人審尋速記録)
(エ) 5社による会合の消滅によるアロン化成の取扱い
平成17年8月30日,クボタシーアイの増田,被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本は,会合をもち,ポリエチレン管の事業者団体の統合問題を協議するとともに,第3次値上げにおけるアロン化成の取扱いについて協議した。第1次値上げに係る合意及び第2次値上げに係る合意において開催していた3社による会合はシーアイ化成がクボタに統合されたことから,事実上,4社による会合となっており,改めてアロン化成を加えて開催するまでもないことや,被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本が中期経営計画において塩化ビニル管のシェア拡大を推進していくことなどを表明したアロン化成に対する不信感があって第3次値上げの合意にアロン化成を参加させることに反対したため,アロン化成を上記合意に参加させないこととした。同日以後,アロン化成は,本件合意に参加していない。
(査第35号証,増田秀樹参考人審尋速記録)
(オ) 3社の価格引上げについての公表
a クボタシーアイ
クボタシーアイは,平成17年9月7日,同年10月11日出荷分から,次のとおり価格を引き上げることを公表した。
(a) 塩化ビニル管:10パーセント以上
(b) 塩化ビニル管継手:6パーセント以上
(c) その他塩化ビニル関連製品:6パーセント以上
(査第43号証)
b 被審人積水化学工業
被審人積水化学工業は,平成17年9月8日,同年10月3日出荷分から,次のとおり価格を引き上げることを公表した。
(a) 塩化ビニル管:8ないし10パーセント
(b) 塩化ビニル管継手,マス,他関連製品:5パーセント
(c) バルブ及び関連製品:5ないし10パーセント
(査第43号証)
c 被審人三菱樹脂
被審人三菱樹脂は,平成17年9月12日,同年10月11日出荷分から,次のとおり価格を引き上げることを公表した。
(a) 塩化ビニル管:平均10パーセント以上
(b) 塩化ビニル管継手,マス,接着剤等関連製品:平均6パーセント以上
(査第43号証)
オ 第4次値上げについて
(ア) 3社の担当者による会合
平成18年4月1日,クボタシーアイの市場企画部長が同社の増田から同社の小原に代わった。
同月10日,クボタシーアイの増田,同社の小原,被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本は,被審人積水化学工業東京本社において,同月18日に開催されるポリテックの総会について会合を開催したが,その際,クボタシーアイの増田の後任として同社の小原が同社の中央の担当者となることを確認した。
(査第36号証,増田秀樹参考人審尋速記録,小原徹也参考人審尋速記録)
(イ) 塩化ビニル樹脂の価格の引上げとクボタシーアイにおける検討等
遅くとも平成18年5月上旬頃,塩化ビニル樹脂の価格が同年6月頃以降に引き上げられる見通しとなった。
同年4月26日頃,クボタシーアイの小原は,同社の卜部から早急に塩化ビニル管等の値上げを検討するように指示を受けた。
そこで,同月28日,クボタシーアイの小原は,同社の増田等の役員と打合せをして,同年6月12日出荷分から値上げを実施すること,地区の担当者を招致して値上げを指示する営業会議を同年5月15日に開催すること,値上げの公表日を同月18日とすることを決定し,同決定内容を同社の卜部に示したところ,同人から了解を得られた。
また,クボタシーアイの小原は,値上げの詳細や3管種の二次店価格等について,同年5月10日に同人の前任者であった同社の増田を交えた社内打合せを行い,検討することとした。
(査第14号証〔別紙〕,第37号証,小原徹也参考人審尋速記録)
(ウ) 3社による合意の成立
クボタシーアイの小原は,前記(イ)の同社役員との打合せにおいて決定した塩化ビニル管等の値上げを実現するためには,従来の3社による会合の枠組みを維持し,3社の合意に基づいて値上げを実施することが不可欠であると認識していたものの,クボタシーアイの値上げの公表前に3社の担当者が集まったのでは,独占禁止法違反の疑いをかけられた場合に言い訳することができないため,少なくともクボタシーアイの値上げの公表まで3社で集まることは避け,個別に連絡を取り合うなどの方法により,3社で合意するという枠組みを維持していくことがよいと考えた。(査第37号証,小原徹也参考人審尋速記録)
そこで,以下のとおり,クボタシーアイの小原が,同社の値上げ方針を被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本に個別に連絡し,平成18年5月11日頃までに,被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本から同方針に沿って塩化ビニル管等の値上げを実施することの同意を得たことにより,3社は,クボタシーアイの値上げ方針に沿って値上げすることを合意した。
(査第37号証ないし第42号証,小原徹也参考人審尋速記録)
a 平成18年5月8日のクボタシーアイの小原と被審人積水化学工業の西村との面談
平成18年5月8日,クボタシーアイの小原は,被審人積水化学工業東京本社に同社の西村を訪ね,独占禁止法違反の疑いをかけられないよう,クボタシーアイの値上げの公表までは3社では集まらずに,1対1で会うか,電話等で連絡を取り合うという方法により,3社で合意するという従来の枠組みを維持していくことを提案したところ,西村もこれを了承した。
そして,クボタシーアイの小原は,同社の塩化ビニル管等の値上げ方針について,被審人積水化学工業の西村に対し,前記(イ)の同年4月28日の役員との打合せで決定した値上げの日程,塩化ビニル管の出荷価格の上げ幅については現行価格から13パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷価格の上げ幅については同じく10パーセント以上とすること,第4次値上げはクボタシーアイが先頭になって値上げを実施することを伝え,被審人積水化学工業もクボタシーアイの値上げ方針に沿って塩化ビニル管等の値上げを実施するよう求めた。これに対し,被審人積水化学工業の西村は,クボタシーアイの小原の要請を了承し,被審人積水化学工業において値上げの内容を決定した場合には,これをクボタシーアイの小原に連絡する旨を述べた。
なお,前記(イ)のとおり,クボタシーアイの小原は,値上げの詳細や3管種の二次店価格等について,同年5月10日の社内打合せで決定する予定であったことから,同社において3管種の二次店価格を決定した場合,あるいは,値上げ方針を変更した場合には別途連絡する旨を伝え,被審人積水化学工業の西村は,これを了承した。
(査第37号証,第38号証,第39号証〔3~4枚目〕,小原徹也参考人審尋速記録)
b 平成18年5月10日のクボタシーアイの社内打合せ
平成18年5月10日,クボタシーアイの小原は,同社の増田らと社内の打合せを行い,それまでに決定していた値上げ方針を一部変更して,同年6月21日出荷分から,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から15パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく10パーセント以上引き上げること,その値上げの実施を確実にするため,3管種にあっては,1本当たりの二次店価格を,VU100は1,400円,SRA150は3,800円,SRA200は5,200円とすることを決定するとともに,第4次値上げの公表日も同年5月25日に変更した。(査第37号証,小原徹也参考人審尋速記録)
c 平成18年5月10日頃のクボタシーアイの小原の被審人積水化学工業の西村への連絡
平成18年5月10日頃,クボタシーアイの小原は,被審人積水化学工業の西村に電話をかけ,前記bで決定した自社の値上げ方針等を連絡したところ,西村は,これを了承した。(査第37号証,第38号証,第39号証〔3枚目,5~7枚目〕,第40号証,小原徹也参考人審尋速記録)
d 平成18年5月11日のクボタシーアイの小原と被審人三菱樹脂の山本の面談
平成18年5月11日,クボタシーアイの小原は,被審人三菱樹脂本社に同社の山本を訪ね,被審人積水化学工業の西村に対して提案したのと同様に,なるべく独占禁止法違反の疑いをかけられないよう,クボタシーアイの値上げの公表までは3社では集まらずに,1対1で会うか,電話等で連絡を取り合うという方法により,3社で合意するという従来の枠組みを維持していくことを提案したところ,被審人三菱樹脂の山本も,これを了承した。
そして,クボタシーアイの小原は,被審人三菱樹脂の山本に対し,前記bで決定した自社の値上げ方針等を伝え,第4次値上げはクボタシーアイが先頭になって値上げを実施するので,被審人三菱樹脂もクボタシーアイの値上げ方針に沿って塩化ビニル管等の値上げを実施するよう求めたところ,被審人三菱樹脂の山本は,これを了承し,同社において値上げの内容を決定した場合には,これをクボタシーアイの小原に連絡する旨を述べた。
(査第33号証,第37号証,小原徹也参考人審尋速記録)
e 相互の伝達
クボタシーアイの小原は,自社の値上げ方針等を連絡する際には,被審人積水化学工業の西村に対しては被審人三菱樹脂の山本にも,被審人三菱樹脂の山本に対しては被審人積水化学工業の西村にも同じ内容を伝えた,あるいは伝える旨を話していた。(査第37号証,小原徹也参考人審尋速記録)
(エ) 合意成立後の行動
a 二次店価格の再検討
クボタシーアイの小原は,前記(ウ)の合意成立後,合意した3管種の二次店価格について再検討した結果,SRA150の二次店価格を3,800円から3,500円に変更することが適当であると考えるに至った。
そこで,平成18年5月15日,クボタシーアイの小原は,被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本にそれぞれ電話し,SRA150の二次店価格を3,500円に変更する旨を連絡したところ,被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本は,これを了承した。
(査第37号証,第38号証,第39号証〔3枚目,7枚目〕,小原徹也参考人審尋速記録)
b 被審人積水化学工業の西村からクボタシーアイの小原への連絡
被審人積水化学工業の西村は,平成18年5月22日頃,クボタシーアイの小原に電話をかけ,自社の値上げについて,同年7月3日出荷分から,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から10パーセントないし12パーセント,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく8パーセント引き上げること,3管種の二次店価格はクボタシーアイと同額とすること,第4次値上げの公表日を同年6月7日とすることを伝えた。(査第37号証,小原徹也参考人審尋速記録)
c 被審人三菱樹脂の山本からクボタシーアイの小原への連絡
被審人三菱樹脂の山本は,平成18年6月1日頃,クボタシーアイの小原に電話をかけ,自社の値上げについて,同年7月10日出荷分から,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から12パーセントないし15パーセント,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく8パーセント引き上げること,3管種の二次店価格はクボタシーアイと同額とすること,第4次値上げの公表日を同年6月12日とすることを伝えた。(査第37号証,小原徹也参考人審尋速記録)
d 平成18年6月7日の3社の担当者の会合
クボタシーアイの小原,被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本は,平成18年6月7日,「レストラン立山」の会議室において,ポリテックの臨時総会に関する協議をするとともに,被審人らが前記(ウ)の合意に基づいて値上げすることを改めて確認し,今後,継続的に3社による会合を開催して,第4次値上げの実施状況を相互に監視していくことを確認した。(査第33号証,第37号証,第41号証,第42号証,小原徹也参考人審尋速記録)
(オ) 3社の価格引上げについての公表
a クボタシーアイ
クボタシーアイは,平成18年5月25日,同年6月21日出荷分から,次のとおり価格を引き上げることを公表した。
(a) 塩化ビニル管:15パーセント以上
(b) 塩化ビニル管継手:10パーセント以上
(c) 成形メタル継手:35パーセント以上
(d) その他塩化ビニル関連製品:10パーセント以上
(査第43号証)
b 被審人積水化学工業
被審人積水化学工業は,平成18年6月7日,同年7月3日出荷分から,次のとおり価格を引き上げることを公表した。
(a) 塩化ビニル管:12パーセント以上
(b) 塩化ビニル管継手,マス,他関連製品:8パーセント以上
(査第43号証)
c 被審人三菱樹脂
被審人三菱樹脂は,平成18年6月12日,同年7月10日出荷分から,次のとおり価格を引き上げることを公表した。
(a) 塩化ビニル管:平均12ないし15パーセント以上
(b) 塩化ビニル管継手,マス,接着剤等関連製品:平均8パーセント以上
(査第43号証)
カ 各値上げの実施
(ア) 他の塩ビ管メーカーへの協力要請
3社の中央の担当者は,各値上げの実施について,分担して,本件合意に参加していない他の塩ビ管メーカーのうち,ヴァンテック,日本プラスチック工業,旭有機材工業,前澤化成工業,信越ポリマー,ダイカポリマー及び日本ロール製造の7社(第3次値上げに係る合意及び第4次値上げに係る合意においてはアロン化成を加えた8社)に対して,塩化ビニル管等の値上げに協力するよう要請していた。(査第15号証,第23号証,第31号証,第34号証〔2枚目,4枚目〕,第37号証,第44号証,第45号証,第46号証,増田秀樹参考人審尋速記録,小原徹也参考人審尋速記録)
(イ) 地区担当者の会合等
5社(第3次値上げに係る合意及び第4次値上げに係る合意においては3社)の担当者は,自社の各地区の担当者に対し,前記第1次から第4次までの合意に基づいて値上げをするように指示し,それぞれの地区において,塩化ビニル管等の種類ごとに当該地区の二次店価格の最低価格を決定させた。
これを受けて,値上げの指示を受けた地区の担当者は,各地区において他の塩ビ管メーカーの地区の担当者と会合を開催するなどして,まず各社の値上げの指示の内容が同様であること,各社の値上げの指示が中央の担当者による本件合意に基づくものであることを確認した上で,地区のガイド価格を決定していた。
(査第6号証,第7号証,第9号証,第16号証,第18号証,第22号証,第47号証,第48号証,第49号証,第50号証,第51号証,第52号証ないし第72号証,増田秀樹参考人審尋速記録)
(ウ) 地区担当者による一次店,二次店に対する要請
5社(第3次値上げに係る合意及び第4次値上げに係る合意においては3社)の地区の担当者は,それぞれ,一次店,二次店に対し,価格の引上げを要請した。一次店の担当者に同行し,二次店を回る者もいた。(査第7号証,第50号証,第56号証,第60号証,第70号証,第73号証,第74号証,第75号証,第76号証,第77号証,第78号証,第79号証,西村章参考人審尋速記録)
キ 各値上げの実施の確認
5社(第3次値上げに係る合意及び第4次値上げに係る合意においては3社)の担当者は,おおむね月1回の割合で会合を開催し,実施状況を報告し,十分に値上げされていない場合には,指摘し,値上げするよう要請した。
(ア) 第1次値上げ
第1次値上げにおいて,平成16年2月16日,同年3月18日,同年4月21日及び同年6月11日に会合を開催し,進捗状況を確認した。(査第7号証,第25号証,第32号証)
(イ) 第2次値上げ
第2次値上げにおいて,平成16年10月20日,同年12月14日及び平成17年1月24日に会合が開催された。さらに,同年3月4日には京都の「きんなべ」という料亭において会合を開催し,進捗状況を確認した。(査第32号証,第36号証)
(ウ) 第3次値上げ
第3次値上げにおいて,平成17年9月30日,同年10月13日,同月25日,同年11月28日及び同年12月13日において3社により会合が開催された。(査第33号証)
(エ) 第4次値上げ
第4次値上げにおいて,平成18年6月7日に,「レストラン立山」C会議室で開催された会合において進捗状況を確認した。(査第33号証,第37号証,第41号証,第42号証,小原徹也参考人審尋速記録)
⑵ 被審人らの主張について
ア 第1次値上げに係る合意について
(ア) 被審人らは,一連のクボタの増田の供述は信用できないと主張するので,クボタの増田の供述及びこれと反対趣旨の被審人三菱樹脂の神永の供述の信用性について検討する(以下,質問調書及び供述調書における供述,参考人審尋における陳述,あるいは両方併せたものも含め,「供述」と記載する。なお,陳述書については,「陳述」と記載する。)。
a 第1次値上げに係る合意に関するクボタの増田の供述は,審査段階から参考人審尋に至るまで重要な点について供述内容が一貫しており(査第15号証,第127号証,第135号証,第136号証,第143号証,増田秀樹参考人審尋速記録),これは,後記bの関係人の供述等とも整合しており,クボタの増田の上記供述の信用性は高いと認められる。
なお,クボタの増田は,査第15号証において,平成16年1月21日の3社の会合の開催場所をクボタ東京本社の応接室と供述する一方,査第135号証,第136号証には,被審人積水化学工業東京本社で3社の会合を開催した旨の供述があり,参考人審尋においても被審人積水化学工業東京本社で3社の会合を開催した旨供述している(増田秀樹参考人審尋速記録)。しかしながら,クボタの増田の供述は,3社において第1次値上げの内容を決定したという重要な点については供述内容が一貫している上,数年前の事柄についての供述であって,同様の会合が複数回開催されていることからすれば,3社による会合の開催場所について,記憶の混同が生じても致し方ないと考えられることに鑑み,この点によって,特段,クボタの増田の供述全体の信用性に疑問が生じることにはならない(なお,同日午前8時47分にクボタの増田がコーヒー3杯を注文したことを示すクボタ東京本社内の喫茶室の売上伝票が存在し(査第15号証〔資料2〕),クボタの増田は,査第15号証の供述調書において,上記売上伝票に基づき,同日に3社による会合が行われた旨供述しているところ,この供述は,上記売上伝票に基づき述べられたものであり,また,その趣旨はともかく,同日早朝にクボタの応接室で3社による会合が行われたことを認める被審人三菱樹脂の神永の参考人審尋における供述とも一致していることから,同日の3社による会合はクボタの応接室で行われたものと認められる。)。
ところで,被審人三菱樹脂は,クボタの増田の供述は,課徴金減免申請を行った事業者の従業員の供述であるから信用できないと主張するが,一概にそのように解すべき理由はなく,個別具体的に判断されるべきである。
また,被審人三菱樹脂は,クボタの増田の供述は,3社の会合の開催場所だけでなく開催日についても供述の変遷があると主張する。確かに,クボタの増田は,査第15号証では平成16年1月  21日に3社の会合が開催された旨供述し,参考人審尋では同月 20日前後頃に3社の会合が開催された旨供述しているが,これをもって3社の会合の開催日についての供述が変遷したということはできない。
b また,次のとおり,クボタの増田の供述に沿う関係人の供述その他の証拠がある。
(a) 第1次値上げ及び第2次値上げの際に被審人積水化学工業の環境・ライフラインカンパニー中・四国支店給排水システム営業所長であった鳥居信宏(以下「被審人積水化学工業の鳥居」という。)は,平成16年1月14日に開催された被審人積水化学工業の給排水システム全国所長会議において,被審人積水化学工業の田頭が値上げについては各塩ビ管メーカーと協議中であると説明し,被審人積水化学工業の田頭又は同社の西村雅文ビジネスユニット長が,同社の値上げ方針として,同年4月1日出荷分から塩化ビニル管については15パーセント,塩化ビニル管継手については10パーセントそれぞれ値上げし,それを同年2月上旬に発表すること,クボタも値上げの発表を行う予定であることを説明した旨供述し(査第18号証),被審人積水化学工業の鳥居の手帳にも同様の記載がある(査第19号証)。
(b) シーアイ化成の野口及び被審人三菱樹脂の神永は,それぞれ質問調書において,第1次値上げにおいてカルテルを行ったことを認める供述をしている。(査第16号証,第22号証)
(c) 日本ロール製造のパイプ事業部取締役事業本部長であり,第1次値上げないし第4次値上げの際に同社の塩化ビニル管等の営業責任者であった畑添耕一(以下「日本ロール製造の畑添」という。)は,平成16年1月30日に被審人積水化学工業の田頭が来訪し,同社が同年3月受注分から塩化ビニル管については15ないし20パーセント,塩化ビニル管継手については10ないし15パーセントそれぞれ値上げし,それを同年2月4日に公表すること,VU100及びSRA200の二次店価格を1本当たりそれぞれ950円,4,000円とすること,クボタ及び被審人三菱樹脂も被審人積水化学工業に追随し,クボタは同月9日に値上げを公表し,被審人三菱樹脂は同月12日に値上げを公表すること,前澤化成工業が同月20日以降値上げを実施すること,信越ポリマー及びアロン化成も大手塩ビ管メーカーの値上げに歩調を合わせることになっていること,今回は各大手塩ビ管メーカーとも不退転の決意で値上げを行うことを告げて,暗に日本ロール製造の畑添に対し値上げについての協力を要請したことを供述している(査第44号証)。なお,日本ロール製造の畑添が被審人積水化学工業の田頭と行った面談に関しては,報告書が作成され,その頃日本ロール製造の社長等に報告されている。(査第44号証)
(d) 第1次値上げないし第3次値上げの際に前澤化成工業の常務取締役営業本部長として同社の塩化ビニル管等の営業責任者であった門田浩志(以下「前澤化成工業の門田」という。)は,第1次値上げに際し,同社が値上げを決定する前に,クボタの増田が来訪し,3社の値上げ率,値上げの実施日及び公表日並びに3管種の二次店価格を告げ,前澤化成工業も値上げに協力して欲しいと求め,その後,クボタの増田,被審人積水化学工業の常務取締役の中野及び同社の田頭,被審人三菱樹脂の神永の4名が前澤化成工業本社に同社代表取締役社長の石橋泉三及び同社の門田を訪ね,同社近くの喫茶店において,塩化ビニル管等の値上げに協力するよう要請したことを供述している。(査第46号証,第163号証)
(e) 第1次値上げの際に被審人積水化学工業の環境・ライフラインカンパニー給排水システム事業部一般管ビジネスユニット長であった西村の平成16年1月の手帳(査第161号証の4)には,同月30日の欄の右側にクボタが同年2月9日に値上げを公表する旨の記載とクボタの3管種の二次店価格が記載されている(査第127号証〔資料1〕,第161号証の4,西村章参考人審尋速記録)。したがって,被審人積水化学工業の西村は,同年1月30日頃,上記記載内容を知っていたことが認められる。
c 他方,被審人三菱樹脂の神永は,参考人審尋において,第1次値上げに関する合意をしたことを否定する供述をしている(神永正幸参考人審尋速記録)が,被審人三菱樹脂の神永は,当初,第1次値上げにおいてカルテルを行ったことを認める供述をしていたのであって(査第22号証),同人の参考人審尋における上記供述は,それに反するだけでなく,前記bの関係人の供述等にも反しており,信用できない。
(イ) 被審人らは,クボタの増田は,平成16年1月20日,地区の営業責任者等に対し,電子メール(査第15号証〔資料3〕)を送信して,VU100等の目標とする二次店価格に関する意見を同月23日までに寄せるよう求めており,同人は,同月21日の時点では,審査官が主張するような3管種の二次店価格等の値上げの具体的内容について合意する前提となる情報を有していなかったから,審査官の主張する3社の合意が行われた事実はないと主張する。
しかしながら,証拠(査第15号証,第127号証,増田秀樹参考人審尋速記録)によれば,クボタの増田は第1次値上げについてカルテルを行ったことが露見しないように,クボタの独自の判断で当該値上げを行ったことを示すためにダミーとして上記電子メールを発したことが認められる。
なお,被審人三菱樹脂は,クボタの増田が,参考人審尋において,「3社会で特定3管種という初めてそういう議論が出てきたので,なぜ今回から突然私どものほうでそういうのが出てくるのかというのを見せないがための,自社が独自でやったんですよと言うために地区に飛ばしたメールです。」と供述しているところ,審査官の主張によれば,3社による会合が行われたのは平成16年1月21日であったというのであるから,3社による会合で,特定3管種という議論が初めて出てきたことを受けて,同月20日に上記電子メールを送信したというクボタの増田の供述は時系列的に完全に破綻していると主張するが,審査官は,3社による会合が同月21日に開催された1回だけであるとは主張しておらず,クボタの増田も,平成16年になる頃から,被審人積水化学工業の田頭及び被審人三菱樹脂の神永とは何度か個別又はそろって話し合うなどして第1次値上げの内容を取り決めていったと供述しているのである(査第15号証)から,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
また,被審人らは,第1次値上げに関するカルテルを隠蔽するためのダミーであったというのであれば,第2次値上げ以降も同じようなダミーのメールを送信しているはずであるから,第1次値上げのときだけダミーのメールを送信したというクボタの増田の供述は信用できないと主張するが,クボタの増田は,上記電子メールがダミーであったことについて,審査段階から審判段階まで一貫して供述している(査第15号証,第127号証,増田秀樹参考人審尋速記録)上,同人がこの点についてあえて虚偽の供述をする理由もない。また,クボタの増田は,第2次値上げ及び第3次値上げの際にダミーの電子メールを送信しなかったことについて,第1次値上げについてカルテルを行ったことが露見しないように,クボタの独自の判断で当該値上げを行ったことを示すためにダミーとして電子メールを発したが,第2次値上げ及び第3次値上げの際は慣れなどがあってダミーの電子メールを送信しなかったと供述している(増田秀樹参考人審尋速記録)ところ,その供述が不合理であるとは認められない。
したがって,上記のとおり,クボタの増田は第1次値上げについてカルテルを行ったことが露見しないように,クボタの独自の判断で当該値上げを行ったことを示すためにダミーとして上記電子メールを発したことが認められるから,上記電子メールの送信を根拠に,クボタの増田が平成16年1月21日時点で3管種の二次店価格等の値上げの具体的内容について合意する前提となる情報を有していなかったということはできない。
なお,クボタの増田は,参考人審尋において,第1次値上げにおいて3管種についてどのような目標価格を設定したらよいかイメージを持っていたかとの質問に対して,全く持っていなかった旨供述している(増田秀樹参考人審尋速記録)が,上記電子メールには,「VU100については特に陥没していますので,二次店手離れベースで,700円以下のところは900円以上,現状700円以上のところは950円程度を目標にできないかと考えています。」(査第15号証〔資料3〕)と記載されており,VU100の二次店価格について,当時自らが適当と考える価格水準を記載し,さらに,その水準が,3社による会合で決まったVU100は950円以上という値上げ内容とほぼ同じであることからすれば,クボタの増田が3管種について値上げの相場感を全く有していなかったということはできないし,仮に,被審人らが主張するように,クボタの増田が3管種の相場観を持っていなかったとしても,塩化ビニル管等の値上げを検討すべき立場にある各社の事業部長級の者が集まって塩化ビニル管等の値上げについて情報交換を行った上で値上げの内容を決定しているのであるから,他社との協議の中で3管種を含む値上げの内容を決定することは可能なのであって,そのこと自体,3社による会合において第1次値上げに係る値上げ方針を決定したことを否定する事情とはならない。
(ウ) 被審人三菱樹脂は,仮にクボタの増田の参考人審尋における供述が信用できるとしても,同人は,平成16年1月21日の3社の会合において,被審人積水化学工業の田頭とクボタの増田がそれぞれの会社の値上げの案を告げ,両者に大きな違いがないことを確認したこと,被審人三菱樹脂は会社としての案ができていないようであったことを供述しているのであるから,それは,クボタが被審人積水化学工業との間で具体的な値上げの合意をしたことの証拠になり得ても,被審人三菱樹脂を含めた3社の間で具体的な値上げの合意をしたことの証拠にはならないと主張する。
確かに,クボタの増田は,参考人審尋において,被審人三菱樹脂が指摘するような供述をしているが,被審人三菱樹脂の神永が被審人積水化学工業の田頭とクボタの増田の値上げに関するやり取りについて阻止したり,異議を述べたりした形跡はなく,むしろ,クボタの増田は,参考人審尋において,被審人三菱樹脂の神永が3管種の二次店価格について議論に加わったことを供述し(増田秀樹参考人審尋速記録),また,査第15号証では,平成16年1月21日の3社の会合において,被審人三菱樹脂の神永がクボタの増田及び被審人積水化学工業の田頭とともに,シーアイ化成の野口及びアロン化成の田中を加えて値上げの合意を確認することを決めたと供述しているのであるから,同日の3社による会合において,3社が値上げの方針を決定したとの認定が妨げられるものではない。
(エ) 被審人三菱樹脂は,仮にクボタの増田の参考人審尋における供述が信用できるとしても,同人は,参考人審尋において,平成16年1月27日の5社の会合において,クボタ及び被審人積水化学工業だけが値上げ案ができあがっており,被審人三菱樹脂,シーアイ化成及びアロン化成からは値上げのスケジュールの話はなかったと供述しているのであるから,審査官の主張する5社の合意を認定することは困難であると主張する。
確かに,クボタの増田は,参考人審尋において,被審人三菱樹脂が指摘するような供述をしている。しかしながら,そもそも平成16年1月27日の5社による会合は,クボタの増田,被審人積水化学工業の田頭及び被審人三菱樹脂の神永が同月21日までに3社で合意された値上げの方針を5社で確認することを合意したことに基づいて開催されたものである(査第15号証,増田秀樹参考人審尋速記録)。そして,クボタの増田は,上記の供述をするものの,同時に,クボタの増田及び被審人積水化学工業の田頭が,過去の値上げの失敗に鑑み,「今回からは単に値上げを強調せず,販売だけに走っていくと,量に走るというふうなことをしていたら,絶対駄目になるから,お互いうまくやろうぜ」というようなことをそれぞれコメントしながら,それぞれ自社の値上げの意見及び日程を告げたことを供述しているところ,被審人三菱樹脂の神永,シーアイ化成の野口及びアロン化成の田中がそれを阻止したり,異議を述べたりした形跡はなく,むしろ,シーアイ化成の野口は,被審人積水化学工業の田頭及びクボタの増田が値上げ幅,値上げの実施時期及び公表日を発表し,これに続いて,それ以外の中央の担当者が順次値上げの方針を発表して,シーアイ化成の野口も,その時点では会社の値上げの方針は具体的に決まっていなかったが,その後に大手各社が決めた値上げの内容に即して同じレベルで決めるつもりであったので,その場では,各社が発表した内容に近い内容で当社も値上げを実施することを述べ,このようにして各社の値上げの内容に差が余りないことを確認すると同時に,各社が発表した内容でしっかり値上げを実施することを互いに約束し合ったと供述し(査第16号証),クボタの増田も,査第15号証において,アロン化成の田中とシーアイ化成の野口に今回の値上げについてどうするのか問いただしたところ,2人とも「うちも一緒です ちゃんとやらなくてはいけないと思っています 営業会議も2月初めにやります」と述べたと供述している。
したがって,被審人三菱樹脂が指摘するクボタの増田の参考人審尋における供述は,平成16年1月27日の5社による会合において,5社が第1次値上げに係る合意をしたとの認定を妨げるものではない。
(オ) 被審人三菱樹脂は,他の4社は平成16年3月1日受注分から値上げをし,他方,被審人三菱樹脂は同月15日出荷分から値上げをしているところ,「出荷分」ベースで値上げを打ち出したメーカーは「受注分」ベースで値上げを打ち出したメーカーに大きくシェアを奪われる可能性があるから,第1次値上げに関する合意が存在しないことが推認され,少なくとも被審人三菱樹脂が第1次値上げの拘束を全く受けることなく値上げの意思決定をしていることは明白であると主張する。
しかしながら,価格カルテルの合意が成立した後,社内における値上げ方針の検討過程において値上げ幅等の内容が変遷していくことは当然にあり得ることであるから,カルテルの当事者の実際の値上げがカルテルの合意の内容と異なることがあったとしても,それをもってカルテルの合意が否定されるものではないし,被審人三菱樹脂の管材事業部が作成した「塩ビレヂン値上に併なう製品値上について」と題する書面(審第32号証・2枚目)の「1.値上げ実施アクションプラン」の箇所には,「・時期 3月1日受注分より新値⇒4月1日出荷分より」との記載があり,被審人三菱樹脂が3社の決定内容及び5社の合意内容どおり,同年3月1日受注分からの値上げを検討していたことがうかがわれるところである。また,第1次値上げ当時,5社にとって,いかにして塩化ビニル樹脂の値上がり分を転嫁するか,価格を引き上げるかが重要な課題であったのであり,また,塩化ビニル樹脂が不足し,その価格が高騰している状況で,被審人三菱樹脂が塩化ビニル管等の製造量を増加し,シェアを拡大するほどの余裕があったかは疑問であるから,方式の違いが必ずしもシェアの奪い合いにつながるものではない。
したがって,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
(カ) 被審人三菱樹脂は,同社で塩化ビニル管等の値上げ幅や実施時期等について検討がされたのは平成16年1月29日の部門戦略会議であり,それに先立つ同月21日の3社による会合及び同月27日の5社による会合の時点では,塩化ビニル管等の値上げの検討は行っていたものの,値上げ幅や実施時期等の具体的な値上げの内容については何も決まっていなかったから,審査官が主張する合意をすることは不可能であると主張する。
しかしながら,仮に被審人三菱樹脂において具体的な値上げの内容について社内で決定していなくとも,塩化ビニル管等の値上げを検討すべき立場にある各社の事業部長級の者が集まって塩化ビニル管等の値上げについて情報交換を行った上で値上げの内容を決定しているのであるから,他社との協議の中で値上げ内容を決定することは可能であるし,他社の提案に同調する意思を表明することにより,3社又は5社の間で,値上げの内容を決定することも可能である。この点については,被審人三菱樹脂の神永も,「同業他社の担当者と話し合って決めた塩ビ管等の値上げ幅,値上げ実施時期,特定サイズの価格等を社に持ち帰り,これに基づいて,当社の値上げの方針案を作成しました。当社の社内においては,私が作成した値上げ方針案を,管材事業部の部内会議に上げて,事業部長の決裁を得た上で,社長に説明しておりました。」と述べているところである(査第22号証)。
したがって,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
イ 第2次値上げに係る合意について
(ア) 被審人らは,一連のクボタの増田の供述は信用できないと主張するので,クボタの増田の供述並びにこれと反対趣旨の被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の神永の供述の信用性について検討する。
a 第2次値上げに係る合意に関するクボタの増田の供述は,審査段階から参考人審尋に至るまで重要な点について供述内容が一貫しており(査第23号証,第32号証,第135号証,第136号証,第143号証,増田秀樹参考人審尋速記録),これは,後記bの関係人の供述等とも整合しており,クボタの増田の上記供述の信用性は高いと認められる。
なお,クボタの増田は,3社の情報交換の参加者について,査第23号証や参考人審尋では,クボタの増田,被審人積水化学工業の田頭及び被審人三菱樹脂の神永の3名と供述する一方(ただし,査第23号証には,第2次値上げの実施を合意していく過程において,被審人積水化学工業の西村も同席していたように記憶している旨の供述も録取されている。),査第135号証及び第136号証においては,上記3名に被審人積水化学工業の西村を含めた4名だったと供述しているが,被審人積水化学工業,被審人三菱樹脂及びクボタの担当者が出席したという点においては終始一貫している上,被審人積水化学工業の西村がこの時期においては未だ主な担当者ではなかったこと,さらには,3年前の会議の出席者について記憶に頼って供述していることを考え合わせれば,被審人積水化学工業の西村の出席の有無に関する供述の食い違いによって,特段,クボタの増田の供述全体の信用性に疑義を生じさせることにはならない。
ところで,被審人三菱樹脂は,審査官が3社の合意の根拠とするのは査第23号証のクボタシーアイの増田の供述だけであるが,それは,具体的な日時や場所を特定することなく,単に平成16年8月に入った頃から塩化ビニル管等の値上げについて情報交換を行って同月25日の5社による会合の開催までに具体的な値上げ内容を決定した旨を抽象的かつ漠然と述べるにすぎないところ,上記供述は,課徴金減免申請を行った事業者の従業員の供述であるということに加え,同人が同日の5社による会合については具体的な日時や場所を特定した上で具体的な会話の内容まで供述していることと比較しても,にわかに信用できないと主張する。
しかしながら,課徴金減免申請を行った事業者の従業員の供述は信用できないと解すべき理由がないことは前記ア(ア)aのとおりである。また,クボタの増田は,査第23号証において,3社間で情報交換を行った具体的な時期や場所が特定されるような供述はしていないものの,被審人積水化学工業の田頭や被審人三菱樹脂の神永の発言内容を具体的かつ詳細に述べた上で,平成16年8月25日の5社による会合までに,3社間で情報交換がなされ,3社で第2次値上げの内容を決定していたことを供述しており,同号証におけるクボタの増田の供述内容は,第2次値上げに向けての3社による情報交換の証拠として十分なものである。
したがって,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b また,次のとおり,クボタの増田の供述に沿う関係人の供述その他の証拠がある。
(a) 被審人三菱樹脂の神永及びシーアイ化成の野口は,それぞれ質問調書において,第2次値上げにおいてカルテルを行ったことを認める供述をしている。(査第22号証,第24号証)
(b) 日本ロール製造の畑添は,平成16年8月24日から同月31日までの間に,被審人積水化学工業の田頭が来訪し,大手メーカーが同年9月7日から同月8日の間に値上げを公表する予定であること,値上げの時期は同年10月1日であり,値上げの幅は,塩化ビニル管が10パーセント,塩化ビニル管継手が8パーセントであることを告げて,暗に日本ロール製造の畑添に対し値上げについての協力を要請したことを供述している(査第44号証)。なお,日本ロール製造の畑添が被審人積水化学工業の田頭と行った面談に関しては,報告書が作成され,その頃日本ロール製造の社長等に報告されている。(査第44号証)
(c) 前澤化成工業の門田は,第2次値上げの際に,事前にクボタの増田から,3社の値上げ率,値上げの実施日及び公表日並びに3管種の目標販売価格を告げられたことを供述している。(査第163号証)
(d) 第2次値上げに関して,シーアイ化成の野口は,第2次値上げの後の5社による会合において,被審人三菱樹脂の神永が,被審人積水化学工業の西村に対し,中国地区において被審人積水化学工業の鳥居が安値販売していることを指摘し,その是正を求めたことを供述している(査第83号証)。また,クボタの増田は,クボタの西日本営業部中国支店第一課長の幸田亨(以下「クボタの幸田」という。)から,被審人積水化学工業の鳥居が中国地区で取り決めた値上げの目標価格を守らないので,中央の問題として,同人を異動させるよう対応してほしいと依頼され,被審人積水化学工業の西村に同社の鳥居の異動を求め,これに被審人三菱樹脂の山本も同調したことを供述し(査第82号証),クボタの幸田も,これを裏付ける供述をしている(査第85号証)。そして,被審人積水化学工業の鳥居もまた,同人が中国地区で取り決めた販売価格を守らず,クボタの幸田から苦情を言われたことを認める供述をしている(査第84号証)。なお,被審人積水化学工業の西村も,参考人審尋において,クボタの増田及び被審人三菱樹脂の山本との間で被審人積水化学工業の鳥居の話題が出たことを認める供述をしている(西村章参考人審尋速記録)が,仮に被審人ら及びクボタが第2次値上げについてカルテルを行っていなかったというのであれば,そのうちの1社の地区の担当者に関することが話題に出たことは不自然である。
c 他方,被審人三菱樹脂の神永は,参考人審尋において,第2次値上げに関する合意をしたことを否定する供述をしている(神永正幸参考人審尋速記録)が,被審人三菱樹脂の神永は,当初,第2次値上げにおいてカルテルがあったことを認める供述をしていたのであって(査第22号証),同人の参考人審尋における上記供述は,それに反するだけでなく,前記bの関係人の供述等にも反しており,信用できない。
また,被審人積水化学工業の西村も,参考人審尋において,第2次値上げに関する合意をしたことを否定する供述をしている(西村章参考人審尋速記録)が,同人の上記供述は,前記bの関係人の供述等に反していることから信用できない。
(イ) 被審人らは,第2次値上げにおいて,他の4社は平成16年10月1日出荷分から値上げし,他方,シーアイ化成は同日受注分から値上げをしているから,5社の間に第2次値上げに係る合意が存在しないことが推認されると主張する。
しかしながら,前記ア(オ)のとおり,価格カルテルの合意が成立した後,カルテルの当事者の実際の値上げがカルテルの合意の内容と異なることがあったとしても,それをもってカルテルの合意が否定されるものではない。また,その当時,シーアイ化成の管工機材事業部長として塩化ビニル管等の営業を統括する立場にあった同社の野口は,第2次値上げにおいてカルテルを行ったことを認める供述をしている。(査第24号証)
したがって,被審人らの上記主張は採用できない。
(ウ) 被審人積水化学工業は,クボタは,平成16年9月3日の営業会議において,塩化ビニル管等の値上げを社内に通知した際,値上げ率を塩化ビニル管については12パーセント,塩化ビニル管継手については10パーセントとし,公表した塩化ビニル管等の値上げの打ち出し率は,塩化ビニル管については12パーセント以上,塩化ビニル管継手については8パーセント以上となっており,これらのクボタの値上げ率の設定は,値上げ率を塩化ビニル管については10パーセント,塩化ビニル管継手については8パーセントとしていた他の4社とは異なっているから,この事実は,第2次値上げに係る合意が存在しないことを示すものであると主張する。
しかしながら,前記ア(オ)のとおり,価格カルテルの合意が成立した後,カルテルの当事者の実際の値上げがカルテルの合意の内容と異なることがあったとしても,それをもってカルテルの合意が否定されるものではないから,被審人積水化学工業の上記主張は採用できない。
(エ) 被審人三菱樹脂は,仮に査第23号証におけるクボタの増田の供述の信用性を措くとしても,同証拠における同人の供述は,具体的な値上げ幅や3管種の二次店価格さらには値上げの公表日について,専ら被審人積水化学工業の田頭と話し合った内容を供述するだけで,被審人三菱樹脂の神永との間の具体的な話合いの内容については全く触れられておらず,むしろ,被審人三菱樹脂が「定まった値上げの方針を持っていないような言い振り」で,「神永さんは,三菱のプレス発表日については,いついつにするとは明言していませんでした。」と供述し,さらには「三菱の値上げは,業界紙に載るくらいのインパクトにしかならず,時期を同じくして値上げを打ち出してくれさえすればよく,我々が取り決める必要があったのは,当社が一番にプレス発表するか,あるいは積水が一番にプレス発表するかでした。」とまで述べているのであるから,このようなクボタの増田の供述は,クボタと被審人積水化学工業の間でカルテルを行ったとの証拠にはなり得ても,被審人三菱樹脂も含めた3社の間で合意したことを裏付ける証拠にはなり得ないと主張する。
しかしながら,クボタの増田は,査第23号証において,平成16年8月25日の5社による会合までに,3社の担当者が連絡を取り合い,第1次値上げと同様に値上げの実施について基本となる枠組みを決めていたこと,被審人三菱樹脂の神永は,同社が定まった値上げの方針を持っていないような言いぶりではあったが,「うちもそのくらいで考えます」とクボタ及び被審人積水化学工業に追随する内容の発言をしたこと,クボタの増田,被審人積水化学工業の田頭及び被審人三菱樹脂の神永は,第2次値上げにおいては値上げ実施日について出荷分からとすることを取り決めたこと,他の塩ビ管メーカーに対しては第1次値上げの際に取り決めた分担どおりに協力を要請することにしたことを供述しているのであるから,被審人三菱樹脂が指摘する査第23号証におけるクボタの増田の供述部分は,3社が第2次値上げに関する合意をしたことの認定を妨げるものではない。
(オ) 被審人三菱樹脂は,クボタの増田が,参考人審尋において,5社による会合について,「もう通常の飲み屋は,ふすま1枚で,もうだだ漏れになるようなところなので,詳しい話はしていませんけれども,1次値上げがもう半年前にやったばかりですから,あうんで,今度もしっかりやろうぜということは,こそこそと言い合ったと。あとは通常の飲み会みたいな形で,各社の人事情報とか,そういう値上げとは関係のない話題に終始したというふうに思います。」と供述し,また,アロン化成に事前に第2次値上げに関する話をしたかどうかは記憶にないとも供述しており,アロン化成は第2次値上げに係る合意を認識していた事実は認められないから,アロン化成も含めた5社の間で審査官の主張する合意があったと認定することはできないと主張する。
しかしながら,査第23号証によれば,クボタの増田は,5社による会合に先立ち,シーアイ化成の野口及びアロン化成の大脇に対し,第2次値上げの基本となる枠組みと3管種の二次店価格を伝えていたことが認められ,これにより5社の担当者は,5社による会合の時点で既に第2次値上げの基本となる枠組みと3管種の二次店価格を認識していたものであるし,わずか半年余り前に第1次値上げを経験済みであったから,第2次値上げの際の5社による会合において詳細な話をする必要性は乏しかったと認められるから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
ウ 第3次値上げに係る合意について
(ア) 被審人らは,一連のクボタシーアイの増田の供述は信用できないと主張するので,クボタシーアイの増田の供述並びにこれと反対趣旨の被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本の供述の信用性について検討する。
a 第3次値上げに係る合意に関するクボタシーアイの増田の供述は,審査段階から参考人審尋に至るまで重要な点について供述内容が一貫しており(査第31号証,第36号証,第129号証,第135号証ないし第137号証,第143号証,増田秀樹参考人審尋速記録),これは,後記bの関係人の供述等とも整合していることから,クボタシーアイの増田の上記供述の信用性は高いと認められる。
なお,クボタシーアイの増田は,査第31号証では,同人が被審人積水化学工業の西村に3社の会合の開催を持ちかけたこと,3社の会合がクボタシーアイで開催されたこと,3社の会合においてクボタシーアイの増田が司会を務めるなどしたことを供述する一方,査第136号証においては,被審人積水化学工業の西村がクボタシーアイの増田に3社の会合の開催を持ちかけたこと,3社の会合が被審人積水化学工業東京本社で開催されたこと,3社の会合において被審人積水化学工業の西村が司会を務めるなどしたことを供述する。しかしながら,3社において第3次値上げの内容を決定したという重要な点については供述内容が一貫している上,数年前の事柄についての供述であって,同様の会合が複数回開催されていることからすれば,3社による会合の開催経緯や開催場所について,記憶の混同が生じても致し方ないと考えられることに鑑みると,この点によって,特段,クボタシーアイの増田の供述全体の信用性に疑問が生じることにはならない。
また,クボタシーアイの増田は,参考人審尋において,平成17年7月22日に被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本と会合を持った際,アロン化成のホームページに掲載された中期経営計画に関するIRを見せられ,アロン化成のシェア拡大方針が問題にされたと供述するが,アロン化成の中期経営計画が新聞報道された同年5月23日から上記会合のあった同年7月22日にかけてアロン化成のホームページでは中期経営計画に関するIRは掲載されていない(査第35号証,審A第116号証の1及び2)から,この点でクボタシーアイの増田の上記供述には誤りがある。しかし,クボタシーアイの増田は,審査段階から,同年7月22日に被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本と会合を持った際に,アロン化成のシェア拡大方針が問題にされたことについて一貫して供述等しているのであって,実際,被審人積水化学工業の西村は,同月21日に日本ロール製造の畑添が被審人積水化学工業を訪れた際,同人に対し,その当時の懸念はアロン化成の動きであることについて3社で認識が一致している旨述べているのである(査第81号証)から,同月22日の3社の会合において,アロン化成の動きが話題に出たことは十分にあり得るところである。したがって,この点によって,特段,クボタシーアイの増田の供述の信用性に疑問が生じることにはならない。
さらに,クボタシーアイの増田の供述は,同年8月17日に被審人積水化学工業の西村との会合が開催された理由,同月30日に3社による会合が開催された理由について,各供述調書における供述や参考人審尋における供述を比較すると一致しないところがあることは否定できないが,会合の目的が一つとは限らず,その頃3社の間でポリエチレン管の事業者団体の統合問題が懸案事項とされていたことは被審人らも認めるところであるし,その時期はクボタシーアイや被審人らが第3次値上げを公表する直前の時期であったことから,同月17日の会合については,クボタシーアイの増田と被審人積水化学工業の西村がポリエチレン管の事業者団体の統合問題と第3次値上げについて協議するために会合を持ったこと,また,同月30日の会合についても,同月25日の第3次値上げの協議をした際に同月30日の会合を新たに設定し又は既に何らかの理由で設定されていた同日の会合の場を利用してアロン化成の取扱いや第3次値上げを行った後の相互監視に関することを協議することとしたことが推察されるから,クボタシーアイの増田の供述の信用性に疑問を生ずるほどのものではない。
なお,被審人三菱樹脂は,クボタシーアイの増田は,査第35号証において,被審人積水化学工業の西村に時間がなかったため,アロン化成の取扱いについては議論できず,同年8月30日に会合を行うことになったと供述するが,同月25日の会合の後に被審人積水化学工業の西村と被審人三菱樹脂の山本は東京駅構内で食事をしており,また,被審人積水化学工業の西村の手帳には同日午後の予定が記載されておらず,同人は同日午後の予定はなく,そのままアロン化成の取扱いについて議論を行う時間的な余裕は十分にあったのであり,それにもかかわらず,同日はアロン化成の取扱いについて議論せず,その5日後に急遽会合を開催してアロン化成の排除を話し合ったというクボタシーアイの増田の供述は不自然であると主張する。
しかしながら,同月25日に被審人積水化学工業の西村と被審人三菱樹脂の山本が食事をしたといっても東京駅構内のそば店で食事をしたというものであり(審B第50号証),次の場所へ移動するために東京駅に行き,そこでそばを食べたという程度のことであるから,それだけで被審人積水化学工業の西村にアロン化成の取扱いについて協議する時間的余裕があったということはできないし,同人の手帳に午後の予定が記載されていなかったからといって,仕事上のその他の用事や私的な用事がなかったともいえない。また,仮に被審人積水化学工業の西村が同日にアロン化成の取扱いについて協議する時間的余裕があったとしても,アロン化成に対する姿勢がクボタシーアイと被審人らとの間では異なっており,被審人積水化学工業の西村が,第3次値上げにおけるアロン化成の取扱いを被審人三菱樹脂の山本と協議するために,時間がないことを口実に同日の会合を切り上げた可能性も否定できないから,クボタシーアイの増田の供述の信用性に疑問を生ずるほどのものではない。
ところで,被審人三菱樹脂は,クボタシーアイの増田は,査第31号証では,同年8月17日に被審人積水化学工業の西村を訪問し,塩化ビニル樹脂の値上げを受け入れざるを得ない情勢になってきたことを踏まえ,塩化ビニル管等の値上げのための3社による会合を提案したこと,その日程が同月25日で折り合ったことを供述しているが,同月18日は塩化ビニル樹脂メーカーが塩化ビニル樹脂の値上げの動きをようやく始めた時期であるから,クボタシーアイの増田の上記供述は不自然であると主張する。
しかしながら,被審人積水化学工業は,塩化ビニル樹脂メーカーがナフサの価格の高騰により塩ビ管メーカーに対する塩化ビニル樹脂の値上げ攻勢を強めてきたため,同月17日の夕方か同月18日には,独自の判断により,他社に先駆けて塩化ビニル樹脂の値上げ受諾及び塩化ビニル管等の値上げ方針を決定した旨主張しているところであるから,クボタシーアイの増田の上記供述は不自然であるとはいえない。
また,被審人三菱樹脂は,クボタシーアイの増田は,参考人審尋において,アロン化成を出席させないことにしたのは中央の会合だけであり,地区の会合には従来どおり出席させていたと供述するが,アロン化成を中央の会合に出席させないことを決定し,アロン化成をカルテル合意から排除したというのであれば,カルテル合意を実施するために行われている地区の会合にもアロン化成を出席させないはずであり,それにもかかわらず,カルテル合意から排除したアロン化成がカルテル合意を実施するための地区の会合に出席し続けたということは,アロン化成を排除したというクボタシーアイの増田の供述と矛盾すると主張する。
しかしながら,第1次値上げ及び第2次値上げにおいても5社は中央でも地区でもそれ以外の塩ビ管メーカーに値上げについての協力を求めていたものであるし,第3次値上げも3社の合意にアロン化成を参加させなかったものの,それを実施するに当たってアロン化成の協力を得ないことまで決定したものではないし,クボタシーアイの増田が個別にアロン化成の大脇に値上げの協力を要請していたのであるから,第3次値上げの際にアロン化成が従前どおり参加していたからといって,それが第3次値上げの際に中央の会合にアロン化成を出席させないことにした旨のクボタシーアイの増田の供述の信用性に影響を与えるものではない。
b また,次のとおり,クボタシーアイの増田の供述に沿う関係人の供述その他の証拠がある。
(a) 日本ロール製造の畑添は,平成17年8月29日に被審人積水化学工業の西村が来訪し,被審人積水化学工業は同年10月3日出荷分から塩化ビニル管については8ないし10パーセント,塩化ビニル管継手については5パーセントの値上げをすること,そのことを同年9月8日に公表すること,クボタシーアイは,同年10月11日出荷分から塩化ビニル管については10パーセント,塩化ビニル管継手については6パーセントの値上げをすること,そのことを同年9月7日に公表すること,被審人三菱樹脂も同年10月1日から値上げを実施すること,3管種の二次店価格はVU100が1本当たり1,200円,SRA200が1本当たり4,800円,SRA150が1本当たり3,200円とすることを告げて,暗に日本ロール製造の畑添に対し値上げについての協力を要請したことを供述している(査第44号証)。なお,日本ロール製造の畑添が被審人積水化学工業の西村と行った面談に関しては,議事録が作成され,同年8月30日付け「事業部報告」と題する書面とともに日本ロール製造の社長等に報告されている(査第44号証)。
(b) 前澤化成工業の門田は,第3次値上げの際に,事前にクボタシーアイの増田から,3社の値上げ率,値上げの実施日及び公表日並びに3管種の目標販売価格を告げられたことを供述している(査第163号証)。
(c) 被審人積水化学工業の西村の平成17年8月の手帳(査第34号証)には,同月23日から同月25日の欄の右側に,3社それぞれの塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手の値上げ幅,値上げの実施日及び公表日と解される記載と3管種の二次店価格と解される記載がある。
なお,被審人積水化学工業は,クボタシーアイの営業会議は同年9月29日ではなく同年8月29日であること,被審人積水化学工業の値上げ実施日は同年10月1日ではなく同月3日出荷分であること,被審人三菱樹脂の値上げ実施日は同月1日ではなく同月11日出荷分であること,被審人三菱樹脂の値上げ幅は塩化ビニル管については8ないし10パーセント,塩化ビニル管継手については4ないし6パーセントではなく,塩化ビニル管については平均10パーセント以上,塩化ビニル管継手については平均6パーセント以上であることなど,メモと事実との間には大きな食い違いが複数存在していると主張する。
しかしながら,まず,クボタシーアイの営業会議と解される「9/29」の記載は,被審人らの営業会議の開催日と解される記載と対比して考えると,「8/29」とすべきところを誤って記載した可能性が高い。また,社内における値上げ方針の検討過程において,値上げ幅の内容や実施時期が変遷していくことは当然にあり得ることであるから,実際の値上げ幅や実施時期が異なっていたとしても,3社が第3次値上げに係る合意をしたことを否定する根拠とはならない。
c 他方,被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本は,第3次値上げにおけるカルテルを否認する供述をするが,前記bの関係人の供述等に反していることから,信用できない。
(イ) 被審人積水化学工業は,平成17年8月25日の3社による会合では,ポリエチレン管の事業者団体の統合問題と併せて付随的に各社の値上げに向けた動きやVU100の二次店価格が話題となったことは考えられるが,VU100等の二次店価格は塩ビ管メーカーがコントロールできるものではないから,塩ビ管メーカーが自社の利益を確保する上で最も重視しているのは二次店価格ではなく,塩ビ管メーカーが一次店に売却する際のいわゆる「手離れ価格」であって,仮に価格カルテルを行うのであれば,手離れ価格について合意するのが自然かつ合理的であるが,本件においては,手離れ価格についての合意どころか,その情報交換さえされておらず,各社が手離れ価格を秘匿しあっていたのであるから,手離れ価格を巡ってメーカー間に競争があったことを示していると主張する。
しかしながら,3社が塩化ビニル管等の値上げについて合意しているところ,その対象商品から3管種を除外したことはうかがわれないから,3管種の手離れ価格について競争があったということはできないし,また,前記(1)ア(ウ)及びイ(ウ)のとおり,3社及び5社は第1次値上げ及び第2次値上げにおいて3管種の二次店価格を決定していたのであるから,被審人積水化学工業の上記主張は採用できない。
(ウ) 被審人三菱樹脂は,平成17年8月25日の時点では原料の値上げ幅が見通せず,値上げ幅や実施時期等の具体的な値上げの内容について何も決まっていなかったから,被審人三菱樹脂の山本が,同日に塩化ビニル管等の値上げ幅に関する発言をしたり,第3次値上げに係る合意をしたりすることができる状況ではなかったと主張する。
しかしながら,査第14号証によれば,同月25日の時点で,主要な塩化ビニル樹脂メーカー5社のうち株式会社カネカ及び大洋塩ビ株式会社が値上げを公表していたことが認められ,また,被審人三菱樹脂は,同日以前に上記2社を含めて主要な塩化ビニル樹脂メーカー5社から値上げの打診を受けていたのである(これは被審人三菱樹脂が認めている。)から,被審人三菱樹脂の山本が,同日に塩化ビニル管等の値上げ幅に関する発言をしたり,第3次値上げに係る合意をしたりすることができる状況ではなかったということはできない。そして,前記ア(カ)のとおり,仮に被審人三菱樹脂において具体的な値上げの内容について社内で決定していなくとも,塩化ビニル管等の値上げを検討すべき立場にある各社の事業部長級の者が集まって塩化ビニル管等の値上げについて情報交換を行った上で値上げの内容を決定しているのであるから,他社との協議の中で値上げ内容を決定することは可能であるし,他社の提案に同調する意思を表明することにより,3社の間で値上げの内容を決定することも可能である。
したがって,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
エ 第4次値上げに係る合意について
(ア) 被審人らは,クボタシーアイの小原の供述は信用できないと主張するので,クボタシーアイの小原の供述並びにこれと反対趣旨の被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本の供述の信用性について検討する。
a 第4次値上げに係る合意に関するクボタシーアイの小原の供述は,第4次値上げに際し,①クボタシーアイの小原が,クボタシーアイの値上げの公表までは3社で集まらずに,1対1で会うか,電話等で連絡を取り合うという方法により,3社で合意するという従来の枠組みを維持していくことを被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本に提案し,両名から了承を得たこと,②クボタシーアイの小原が,被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本にクボタシーアイの値上げ内容を連絡し,これに沿って値上げを実施するよう求めたところ,両名から了承を得,被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本は自社において値上げの内容を決定した場合にはクボタシーアイの小原に連絡する旨述べたこと,③クボタシーアイの小原は変更したクボタシーアイの値上げ方針を被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本に連絡し了解を得たこと,④被審人積水化学工業の西村及び被審人三菱樹脂の山本がクボタシーアイの小原に自社の値上げ方針について連絡したこと,⑤クボタシーアイの小原は,自社の値上げ方針等を連絡する際には,被審人積水化学工業の西村に対しては被審人三菱樹脂の山本にも,被審人三菱樹脂の山本に対しては被審人積水化学工業の西村にも同じ内容を伝えたあるいは伝える旨を話していたこと,⑥平成18年6月7日に3社による会合を開催し,第4次値上げに係る合意について確認するとともに,今後,3社による会合を開催して,第4次値上げの実施状況を相互に確認していくことを確認したことについてまで,審査段階から参考人審尋まで一貫しており(査第37号証,第80号証,第145号証,小原徹也参考人審尋速記録),これは,後記bの関係人の供述等とも整合しており,クボタシーアイの小原の上記供述の信用性は高いと認められる。
なお,クボタシーアイの小原は,査第37号証においては,平成18年5月8日の被審人積水化学工業の西村との会合の開催場所を被審人積水化学工業東京本社と供述する一方,査第145号証には,クボタシーアイ東京本社であった旨の供述があり,参考人審尋においてもクボタシーアイ東京本社で被審人積水化学工業の西村と面会した旨供述している。(小原徹也参考人審尋速記録)
しかしながら,クボタシーアイの小原の供述は,クボタシーアイの小原が被審人積水化学工業の西村に対し,クボタシーアイの値上げ方針を伝えた上で,第4次値上げについてはクボタシーアイが先頭になって値上げを実施するので,被審人積水化学工業もクボタシーアイの値上げ方針に沿って塩化ビニル管等の値上げを実施するよう求めたところ,被審人積水化学工業の西村がこれを了承し,同社において値上げの内容を決定した場合には,これをクボタシーアイの小原に伝える旨を述べたという重要な点については供述内容が一貫している上,数年前の事柄についての供述であって,同様の会合が複数回開催されていることからすれば,会合の開催経緯や開催場所について,記憶の混同が生じても致し方ないと考えられることに鑑みれば,この点によって,特段,クボタシーアイの小原の供述の信用性に疑問が生じることにはならない。
また,クボタシーアイの小原が被審人三菱樹脂の山本に伝えたクボタシーアイの塩化ビニル管の値上げの内容について,査第37号証においては15パーセント以上と供述する一方,査第145号証には「私が,西村さんや山本さんに伝えた当社の値上げ案は,確か,・・・(中略)・・・値上げ幅はパイプ類13パーセント・・・(中略)・・・であり」との記載があるが,前記(1)オ(ウ)bのとおり,クボタシーアイでは同年5月10日に社内の打合せを行い,塩化ビニル管については15パーセント以上の値上げを行うことを決定したのであるから,クボタシーアイの小原は,その翌日に面談した被審人三菱樹脂の山本に対してもその内容を伝えたと考えるのが自然であり,査第145号証の上記供述のうち被審人三菱樹脂の山本に伝えた内容に関する部分は誤りであると思われるが,これはクボタシーアイの小原が被審人積水化学工業の西村との面談と被審人三菱樹脂の山本との面談の間にクボタシーアイでの上記打合せがあったことを失念していたためであるとも考えられるから,特段,クボタシーアイの小原の供述の信用性に疑問が生じることにはならない。
b また,次のとおり,クボタシーアイの小原の供述に沿う関係人の供述その他の証拠がある。
(a) 被審人積水化学工業の西村は,参考人審尋において,平成18年5月8日にクボタシーアイの小原が来訪し,被審人積水化学工業の西村に対し,クボタシーアイにおいて値上げを行うので被審人積水化学工業も値上げしてほしいと要請したことを認める供述をし,被審人三菱樹脂の山本も,参考人審尋において,同月  11日,クボタシーアイの小原が来訪し,被審人三菱樹脂の山本に対し,クボタシーアイにおいて値上げを行うので被審人三菱樹脂も値上げしてほしいと要請したことを認める供述をしている。
(b) 被審人積水化学工業の西村の手帳(査第38号証)の平成18年5月8日欄には「17 KC」,同月13日欄及び同月14日欄には「KC6/21 発 パ 15 ツ 10」,同月8日の週の右側のページメモ欄には上から「KC ② S 手離」,「200 4800 4500」,「3200 3500 1200」,「150 3500 3800 3000」,「100 上→上25円」という記載をした上で消したことが認められる(査第39号証の鑑定書)。これらのうち,まず,「17 KC」との記載については同月8日午後5時にクボタシーアイに関する予定があったことがうかがわれる。次に,「KC6/21 発 パ 15 ツ 10」については,同月10日にクボタシーアイの小原が同社の増田との社内打合せを経て被審人積水化学工業の西村に連絡した値上げ方針の内容,すなわち,クボタシーアイは,同年6月21日出荷分から,塩化ビニル管の出荷価格については現行価格から15パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷価格については同じく10パーセント以上引き上げることと一致しており,しかも,これらが同年5月8日の週の欄に記載されていることからして,そのころ,被審人積水化学工業の西村がこれらを聞いて書き込んだと考えられる。このことは,3管種,すなわち,VU100,SRA200及びSRA150について,クボタシーアイから得た情報を被審人積水化学工業の手離れ価格を比較したかのような右側のページのメモ欄の記載からもうかがわれるところである。
(c) 被審人積水化学工業の西村が平成18年5月12日に発した電子メールには,クボタシーアイが同月15日に課長会議を行うこと,同月25日又は同月26日に値上げを公表すること,値上げは同年6月21日出荷分から実施されること,値上げ幅は10ないし15パーセントであることが記載されている。(査第40号証)
(d) 日本ロール製造の畑添は,平成18年5月11日に,同社の木下営業部長とともに被審人積水化学工業東京本社を訪れ,同社の西村と打合せを行った際,同人は,クボタシーアイが値上げを早く行いたいと述べていること,被審人積水化学工業もクボタシーアイに追従しようと考えていること,第4次値上げについて,クボタシーアイが先頭に立ち,被審人らが同時に行動を起こせば成功すると思うと述べたことを供述している(査第81号証)。なお,日本ロール製造の畑添が被審人積水化学工業の西村と行った面談に関しては,議事録が作成され,その頃日本ロール製造の社長等に報告されている(査第81号証)。
c 他方,被審人積水化学工業の西村は,参考人審尋において,平成18年5月8日にクボタシーアイの小原と面談した際に,クボタシーアイの小原から,クボタシーアイにおいて値上げを行うので被審人積水化学工業も値上げしてほしいとの話があったことは認めつつ,その要請を断ったことや,自社の値上げの内容を事前にクボタシーアイの小原に伝えていないことを供述しているが,前記b(d)の日本ロール製造の畑添の供述や面談の内容を記した議事録の内容に反しており,また,被審人積水化学工業の西村の手帳に前記b(b)の記載があること,これが消されたことについて合理的な説明をしておらず,被審人積水化学工業の西村の上記供述は信用できない。
d また,被審人三菱樹脂の山本も,参考人審尋において,平成18年5月11日にクボタシーアイの小原と面談した際に,クボタシーアイの小原から,クボタシーアイにおいて値上げを行うので被審人三菱樹脂も値上げしてほしいとの話があったことは認めつつ,その要請を断ったことや,自社の値上げの内容を事前にクボタシーアイの小原に伝えていないことを供述している。しかし,そもそも,被審人三菱樹脂の山本は,その陳述書(審B第50号証)において,平成18年5月11日にクボタシーアイの小原と値上げの話は一切していないことを明確に陳述していたにもかかわらず,上記のとおり,参考人審尋においては,同日にクボタシーアイの小原と面談した際に,クボタシーアイの小原から,クボタシーアイにおいて値上げを行うので被審人三菱樹脂も値上げしてほしいとの話があったことを認める供述をしているところ,同業他社の担当者からカルテルの要請を受け,これを断ったというのであれば,それは非常に印象的な出来事であったはずであり,しかも,被審人三菱樹脂の山本が供述するとおり,同日の時点で同社が塩化ビニル樹脂メーカーの値上げに徹底的に抵抗する方針であったとすれば,同人はクボタシーアイの小原の話に強く反発するはずであり,その意味においても,クボタシーアイの小原の話は,被審人三菱樹脂の山本にとって非常に印象的な出来事であったはずであり,かつ,本件においては,まさに第4次値上げに係る合意の存否が争われているのであるから,被審人三菱樹脂の山本が上記のとおり陳述書と参考人審尋とで供述等を変遷させたことは不合理であり,同人がそのように供述等を変遷させたのは,同人に先行して行われた被審人積水化学工業の西村に対する参考人審尋において,同人が,同月8日にクボタシーアイの小原と面談した際に,クボタシーアイの小原から,クボタシーアイにおいて値上げを行うので被審人積水化学工業も値上げしてほしいとの話があったことは認める供述をしたことから,これと齟齬が生じないように上記陳述書における陳述を翻したものと考えるのが自然である。
したがって,被審人三菱樹脂の山本の供述等は信用できない。
(イ) 被審人積水化学工業は,平成18年5月11日頃の時点では値上げ方針を決定できる状況ではなかったと主張する。
しかしながら,審A第64号証の電子メール(同月8日送信)には「まだ未定ではありますが,現状の原油価格,ナフサ価格を鑑みますと かなり強気で強硬な申し入れがあると予想されます」,「今回 値上げを受け入れた場合,きっちり 取り幅を確保できるよう,準備願います」と記載されており,塩化ビニル樹脂の値上げを受け入れざるを得ない状況にあることを認識していたと考えるのが自然である。そして,被審人積水化学工業の西村は,日本ロール製造の畑添に対し,同月11日に面談した際に,前記(ア)b(d)のとおり述べており,被審人積水化学工業の西村は,クボタシーアイが先頭に立って値上げを実施し,被審人らが追随することで,第4次値上げが成功すると考えていたのであるから,被審人積水化学工業の主張は事実に反する。
(ウ) 被審人積水化学工業は,プラスチックリブパイプ協会(以下「リブパイプ協会」という。)へのアロン化成の入会問題やポリエチレン管の事業者団体の統合問題を巡って被審人らとクボタシーアイは対立していたから,第4次値上げに係る合意をすることができる状況ではなかったと主張するが,仮にリブパイプ協会へのアロン化成の入会問題やポリエチレン管の事業者団体の統合問題を巡って被審人らとクボタシーアイは対立していたとしても,塩化ビニル管等の値上げの問題はそれとは別の問題であり,利害関係も異なっているのであるから,クボタシーアイと被審人らが第4次値上げに係る合意をすることができる状況でなかったということはできない。
(エ) 被審人らは,平成18年5月30日の塩化ビニル管・継手協会の定時総会後の懇親会において,被審人積水化学工業の西村は,クボタシーアイの卜部から「塩ビ管値上げを早くしろ」,「さっさとせえ」と罵倒されたが,このようなクボタシーアイの卜部の発言は,第4次値上げに係る合意が成立していたとすればあり得ないと主張する。
しかしながら,被審人らが主張するように,第4次値上げに係る合意が存在しておらず,値上げを実施するか否かや,値上げを実施するとした場合の実施日や値上げ幅等の値上げの具体的な内容を,各塩ビ管メーカーが自社の判断に基づいて決定していたというのであれば,クボタシーアイの卜部が競争者の値上げ方針に介入するかのような発言をするはずはなく,早く値上げを発表するよう詰め寄るというのは考え難い。実際に,被審人らの主張するような内容の発言がクボタシーアイの卜部からあったというのであれば,その事実はむしろ,クボタシーアイの方針に沿って値上げをするという第4次値上げに係る合意が存在したからこそ,そのような発言をしたと考えるのが自然である。
したがって,クボタシーアイの卜部から被審人積水化学工業の西村に対して値上げの追随を求めるような発言があったとしても,かかる発言があったことは第4次値上げに係る合意が存在していなかったことの根拠とはならないから,被審人らの上記主張は採用できない。
(オ) 被審人積水化学工業は,第4次値上げにおける値上げ率は,クボタシーアイが塩化ビニル管15パーセント,塩化ビニル管継手10パーセント以上であるのに対し,被審人積水化学工業は塩化ビニル管12パーセント以上,塩化ビニル管継手8パーセント以上であり,その値上げ率に開きがあることからも,第4次値上げに係る合意が存在しないことがうかがわれると主張する。
しかしながら,社内における値上げ方針の検討過程において,値上げ幅等の内容が変遷していくことは当然にあり得ることであるから,実際の値上げ幅が異なっていたとしても,3社が第4次値上げに係る合意をしたことを否定する根拠とはならない。
(カ) 被審人三菱樹脂は,クボタシーアイの小原は,参考人審尋において,平成18年5月11日の時点で,第4次値上げに係る具体的な値上げ幅と3管種の単価について合意していないことを供述していると主張する。
しかしながら,本件排除措置命令は,3社はクボタシーアイの方針に沿って出荷価格を引き上げることを合意したとしており,本件審判手続における審査官の主張も同様であって,3社が第4次値上げに係る具体的な値上げ幅と3管種の単価について合意したとしているものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は反論となっていない。
(キ) 被審人三菱樹脂は,被審人三菱樹脂の荒川は,平成18年5月12日,各地の営業拠点に対し,クボタシーアイの値上げの情報が錯綜しているので,情報があれば連絡するよう求める電子メールを送信しているが,これは,同月11日に,被審人三菱樹脂の山本がクボタシーアイの小原から同社の値上げの具体的な内容を聞いた上で,その値上げ方針に沿って塩化ビニル管等を値上げすることを合意したという事実がないことを示していると主張する。
しかしながら,前記(1)オ(ウ)dのとおり,クボタシーアイの小原は,平成18年5月11日,被審人三菱樹脂の山本に対し,クボタシーアイの値上げの内容を伝えているのであるから,被審人三菱樹脂の荒川は,そのことを同社の山本から聞かされていないか,聞かされていながらあえて上記電子メールを発信したとしか解されず,いずれにせよ,被審人三菱樹脂の荒川が上記電子メールを送信しているからといって,それが被審人三菱樹脂の山本が上記合意をした事実がないことを示すものではない。
したがって,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
(ク) 被審人三菱樹脂は,審B第37号証を引用しながら,平成18年5月11日の時点で塩化ビニル樹脂メーカーが打ち出した塩化ビニル樹脂の値上げに徹底抗戦の方針で臨んでおり,塩化ビニル樹脂の値上げの決着がつかない状況において塩化ビニル管等の値上げを決定することはあり得ないと主張する。
しかしながら,審B第37号証の電子メール(同年5月1日送信)内には,塩化ビニル樹脂メーカーの値上げについて「必至の状況」としつつ,「今後の<客>との価格折衝については上記背景を念頭に置いた上で交渉願いたく…特に前回秋の値上げ積み残し分については早急に値上げの完遂をお願いします。」と社内に指示した上で,対顧客に対する説明として「『第4次値上の可能性は否定できないが,値上時期や幅については未定である』と回答願いたく」と記載しているところ,塩化ビニル樹脂の値上げを受け入れる際には,顧客に対し,再度の値上げ(すなわち第4次値上げ)という形で転嫁する必要があることから,第4次値上げを行う前に,第3次値上げの積み残しを完遂する必要があり,これを指示したと考えるのが自然であり,塩化ビニル樹脂メーカーとの価格交渉が継続していたにせよ,同メールを発した時点において,塩化ビニル樹脂メーカーの値上げを受け入れざるを得ないと予測していたからこそ,第3次値上げの完遂を「早急に」と急がせたと考えるのが合理的である。また,対顧客への説明ぶりについても,第4次値上げについて含みを持たせたものとなっていることからも,同年5月1日時点においても,被審人三菱樹脂が主張するような「徹底抗戦」の方針とはいえず,既に第4次値上げを行うことを視野に入れた社内検討が行われていたことは明らかである。
また,被審人三菱樹脂は,ゴールデンウィーク明けになって,市場情報として塩化ビニル管等のトップメーカーであるクボタシーアイが塩化ビニル管等の値上げの動きを見せているという情報が入ってきたと主張しているところ,そうであるならば,むしろ,被審人三菱樹脂は,ゴールデンウィーク明けの段階では,既に,塩化ビニル樹脂の値上げを受け入れざるを得ない状況を想定していたと考えるのが自然であり,実際,審B第38号証のとおり,同年5月12日の時点で値上げの時期,値上げ幅,仮需の受付期限等を含む具体的値上げ方針が検討されている。このことからすれば,同月11日の時点で,塩化ビニル樹脂の値上げに対して「徹底抗戦」の方針で臨んでいたとはいえないし,そもそも,塩化ビニル樹脂メーカーとの値上げ交渉が継続していることと,その値上げを原因とする塩化ビニル管等の値上げについて想定し,3社による第4次値上げに係る合意の議論に臨むに十分な値上げ方針の検討をし得たこととは矛盾しないというべきであって,塩化ビニル樹脂の値上げの決着がつかなければ塩化ビニル管等の具体的な値上げの方針について3社で合意を行うことが不可能であったという主張は理由がない。
(ケ) 被審人三菱樹脂は,クボタシーアイは,早々に塩化ビニル管等の値上げの発表をしているにもかかわらず,被審人三菱樹脂が原料メーカーからの塩化ビニル樹脂の値上げの申入れに徹底抗戦の方針で臨んでいる姿勢を非難し,原料メーカーからの塩化ビニル樹脂の値上げの申入れに対し,他社が値上げを受け入れるまではクボタシーアイは値上げを受け入れないという対応をとっているが,仮に審査官が主張するとおり第4次値上げに係る合意が成立していたのであれば,速やかに原料メーカーからの塩化ビニル樹脂の値上げを受け入れ,それによって塩化ビニル管等の値上げがしやすい環境を早期に整備するというのが合理的な行動であって,クボタシーアイの上記行動は,カルテル合意が成立している当事者の行動とは考えられないと主張する。
しかしながら,被審人三菱樹脂が主張するクボタシーアイの値上げ発表後の行動を裏付けるとする証拠は,被審人三菱樹脂の山本の陳述ないし供述(審B第50号証,山本和久参考人審尋速記録)並びに審B第39号証及び第54号証であるが,被審人三菱樹脂の山本の陳述は前記(ア)dのとおり信用できず,また,審B第39号証及び第54号証も誰が作成したいかなる文書であるかも明らかでなく,上記各証拠から被審人三菱樹脂の主張するクボタシーアイの値上げ発表後の行動を認めることはできないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
(コ) 被審人三菱樹脂は,平成18年5月25日に開催された被審人積水化学工業の全国給排水システム営業所長会議において塩化ビニル管については10パーセント,同継手については6パーセントという値上げ幅が検討されているが,同月11日頃に塩化ビニル管については15パーセント以上,同継手については10パーセント以上というクボタシーアイの値上げ方針に従って塩化ビニル管等を値上げすることを合意していたのであればこれと明らかに矛盾する行為であり,第4次値上げに係る合意が存在しないことを端的に示すものであると主張する。
しかしながら,社内における値上げ方針の検討過程において,値上げ幅等の内容が変遷していくことは当然にあり得ることであるから,実際の値上げ幅が異なっていたとしても,3社が第4次値上げに係る合意をしたことを否定する根拠とはならない。
⑶ 結論
前記(1)の認定事実によれば,被審人らが他の事業者との間で塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げる旨を合意したこと(本件合意をしたこと)が認められる。
そして,本件合意により,合意参加者の事業活動が事実上拘束される結果となることは明らかであるから,本件合意は,独占禁止法第2条第6項の「その事業活動を拘束し」の要件を充足する。
また,本件合意の成立により,合意参加者の間に,本件合意の内容に基づいた行動をとることを互いに認識し認容して歩調を合わせるという意思の連絡が形成されたものといえるから,本件合意は,同項の「共同して・・・相互に」の要件も充足する。
なお,被審人積水化学工業は,平成17年4月以降,アロン化成が各社の事業部長級の者が集まる会合に参加していないことを捉え,第1次及び第2次値上げの合意の拘束力を否定するが,前記(1)ア及びイのとおり,5社は上記合意に沿って価格を引き上げていたこと,クボタシーアイの設立により3社による会合が事実上4社による会合となったことから,改めて5社で合意するまでもなくなったが,アロン化成には合意内容を連絡していることがうかがわれ,また,前記(1)カのとおり主要な塩ビ管メーカーは協力的であり,アロン化成も協力していることからすると,5社の合意の拘束力を否定することにはならない。
したがって,被審人らは,他の事業者との間で,塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げる旨の合意をし,共同して相互にその事業活動を拘束したと認められる。
2 争点2(本件合意は一定の取引分野における競争を実質的に制限するか)について
⑴ 独占禁止法第2条第6項にいう「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」とは,当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいい,本件のような価格カルテルの場合には,その当事者である事業者らがその意思で,当該市場における価格をある程度自由に左右することができる状態をもたらすことをいうと解される(最高裁判所平成24年2月20日判決・公正取引委員会審決集第58巻第2分冊148頁〔株式会社新井組ほか3名による審決取消請求事件〕参照)。
⑵ 本件における一定の取引分野
ア 「一定の取引分野」は,そこにおける競争が共同行為によって実質的に制限されているか否かを判断するために画定するものであるところ,不当な取引制限における共同行為は,特定の取引分野における競争の実質的制限をもたらすことを目的及び内容としているものであるし,また,行政処分の対象として必要な範囲で市場を画定するという観点からは,共同行為の対象である商品役務の相互の代替性について厳密な検証を行う実益は乏しいから,通常の場合,その共同行為が対象としている取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討して,一定の取引分野を画定すれば足りると解される(東京高等裁判所平成5年12月14日判決・公正取引委員会審決集第40巻776頁〔トッパン・ムーア株式会社ほか3名に対する独占禁止法違反被告事件〕参照)。
本件合意は,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手の販売価格の引上げに関するものであり,本件合意が対象としている取引は,それらの販売に関する取引であり,それにより影響を受ける範囲も同取引であるから,塩化ビニル管等の販売分野という一定の取引分野を画定し,このような取引分野において競争が実質的に制限されているかを検討するのが相当であり,かつ,それで足りるというべきである。
イ これに対し,被審人らは,塩化ビニル管と塩化ビニル管継手との間には代替性がないから,これらを合わせた塩化ビニル管等の販売分野という取引分野を画定することは不合理であると主張する。
しかしながら,本件においては,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手は,いずれも塩化ビニル樹脂等を原料とするものであるところ,3社又は5社は,塩化ビニル樹脂の価格が高騰したことから,その費用を製品の販売価格に転嫁する目的で,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手の販売価格を引き上げる旨の本件合意を行ったものである。そして,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手は,いずれも塩化ビニル樹脂等を原料とする成型品であり,原料及び製造方法において共通する部分が多いこと,本件違反行為の参加者らを含む主要な塩ビ管メーカーの多くは塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手のいずれも製造販売しており,また,上記のとおり原料及び製造方法において共通する部分が多く,また,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手が金型を使用した成型品であり,金型を変えることにより他の製品を製造することが可能であること(査第5号証)からすれば,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手のいずれか一方だけを製造販売しているメーカーも他方の製品を製造販売することは比較的容易であり,潜在的な競争を考えると,その供給者は同一であるということができること,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手は組み合わせて使用されるものであって,塩化ビニル管のみを使用する需要者又は塩化ビニル管継手のみを使用する需要者は一般的に観念することができないから,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手の需要者も同一であること,塩化ビニル管と塩化ビニル管継手は組み合わせることで初めて社会的効用が認められ,組み合わせて使用されることが通常であるから,同一の機会において取引されることが一般的であって(査第101号証及び第102号証),塩ビ管メーカーからは,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手の双方について,それらの需要者に供給することができ,需要者においても,取引に際して塩化ビニル管と塩化ビニル管継手とで同一のメーカーの商品を選定することが少なからずある(査第3号証,小原徹也参考人審尋速記録)から,一方の商品の需要を巡る競争の状況が他方の商品の需要を巡る競争の状況に多分に影響するものと考えられることを考慮すれば,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手は,相互に需要の代替性がないものであるとしても,それらを1個の取引分野として画定することについて,特に不都合は見当たらない。むしろ,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手を1個の取引分野として画定することにより,両者に共通する値上げ要因である塩化ビニル樹脂の高騰を原因として本件合意が行われたという本件の社会的実態に即した形で,取引の実質的制限の判断が可能になるものである。
したがって,塩化ビニル管等の販売分野という1個の取引分野は成立し得るのであり,この点に関する審査官の主張は相当である。
⑶ 本件合意は一定の取引分野における競争を実質的に制限するか。
ア 本件においては,平成17年8月以前における4社(うちクボタシーアイにつき,同年3月以前にあってはクボタ及びシーアイ化成)の塩化ビニル管等の販売金額の合計は,塩ビ管メーカーの我が国における塩化ビニル管等の総販売金額の大部分を占めており,同年9月以降における被審人積水化学工業,被審人三菱樹脂及びクボタシーアイの3社の塩化ビニル管等の販売金額の合計は,塩ビ管メーカーの我が国における塩化ビニル管等の総販売金額の過半を占めていた。(査第117号証)
また,3社とその他の塩ビ管メーカーとの間には,生産規模や販売体制において格差があり,3社以外の塩ビ管メーカーは,それぞれ市場におけるシェアも小さい状況であって(査第7号証),さらに,本件合意の成立以前から,塩化ビニル管等の値上げに際して,中堅以下の塩ビ管メーカーは,塩ビ管メーカーの大手3社であるクボタ及び被審人2社により,塩化ビニル管等の値上げに協力するよう要請を受けて値上げに動き,塩ビ管メーカー全体が一丸となって値上げを実施していくという流れにあった(査第15号証,第24号証,第46号証)のであり,大手の塩ビ管メーカーの値上げに他の塩ビ管メーカーが追随する状況であり,実際,3社の中央の担当者は,本件合意の際も,本件合意に参加していない他の塩ビ管メーカーに対し,塩化ビニル管等の値上げに協力するよう要請している。
したがって,本件合意の成立により,塩化ビニル管等の販売分野における競争が全体として減少し,5社又は3社が,その意思で,ある程度自由に,我が国における塩化ビニル管等の価格等の取引条件を左右することによって,塩化ビニル管等の販売分野という市場を支配することができる状態に至っていたと認められるから,本件合意が塩化ビニル管等の販売分野という一定の取引分野における競争を実質的に制限していたことは明らかである。
イ なお,被審人三菱樹脂は,販売数量によるシェアでなければ,競争の実質的制限がもたらされたことの根拠たり得ないかのような主張をするが,違反行為者の市場シェアが競争の実質的制限の有無の判断に当たり考慮されるのは,一般的に,違反行為者の市場シェアが大きい場合には,違反行為者の価格引上げに対する競争者の牽制力は弱くなると考えられるからであり,このような意味においては,違反行為者と他の競争者との有意なシェアの格差を立証するに足りるものであれば,販売金額によるものも販売数量によるものも,競争の実質的制限がもたらされたことを根拠付ける証拠たり得る。そして,査第117号証をみれば,本件違反行為の参加者らのシェアが最も低くなる平成18年度においても,そのシェアは59.4パーセントであり,これに対して,他の競争者は,そのうち最も高いシェアを有するアロン化成においても8.7パーセントのシェアを有するにすぎない。
このように,販売金額によるシェアの数値であったとしても,本件違反行為の参加者らと他の競争者との間で,少なくとも有意な格差が存在することは明らかとなるのであって,本件違反行為の参加者らが本件合意に基づいて価格を引き上げることとした際に,他の競争者の牽制力が強く働く状況にあるとは考えられない。
この点,被審人三菱樹脂は,販売数量によるシェアの方がより市場の実態を正確に反映すると主張するものと思われるが,上記のとおり販売数量によるシェアを算出しなければ,競争の実質的制限の有無が判断できないわけではなく,販売金額によるシェアに証明力が無いことにはならない。また,一定の推計を経たものではあるが,査第118号証の2の別紙1-5及び同1-6によれば,販売数量によるシェアの数値も査第117号証の数値と大きく異なるものではなく,その点からも,本件において,本件違反行為の参加者らのシェアを販売数量により算出しなければならない事情はうかがえない。
ウ 被審人三菱樹脂は,本件における一定の取引分野は塩化ビニル管と塩化ビニル管継手とにそれぞれ画定されることを前提に,塩化ビニル管継手の販売分野においては,3社の塩化ビニル管継手の販売数量シェアは過半を下回っている旨主張して,本件合意により競争の実質的制限がもたらされていたことを否定する。
しかし,本件違反行為の参加者らの塩化ビニル管継手の販売数量によるシェアは,アロン化成が本件合意に参加していた間においては明らかに過半であるし(査第118号証の2),アロン化成が本件合意に参加しなくなった後において,仮に被審人三菱樹脂が主張する販売数量によるシェアを前提としても,被審人2社及びクボタシーアイの3社のシェアの合計は50パーセントに近い高い水準である。これに対し,その他の塩ビ管メーカーは高くても10パーセント程度であり,シェア数パーセント程度の小規模の者が多く,3社に対抗し得るような牽制力を有する競争事業者の存在を認める状況にはないし,他の塩ビ管メーカーは,前記イのとおり,大手の塩ビ管メーカーの値上げに追随する状況にあり,実際,3社の中央の担当者は,本件合意の際も,本件合意に参加していない他の塩ビ管メーカーに対し,塩化ビニル管等の値上げに協力するよう要請している。
したがって,仮に塩化ビニル管継手の市場に限ったとしても,本件合意により,市場支配的状態が形成・維持・強化され,当該市場における競争の実質的制限がもたらされていたことは明らかである。
3 争点3(被審人らの主張する各商品は独占禁止法第7条の2第1項所定の「当該商品」に該当するか)について
⑴ 当該商品について
独占禁止法の定める課徴金の制度は,昭和52年法律第63号による独占禁止法改正において,カルテルの摘発に伴う不利益を増大させてその経済的誘因を小さくし,カルテルの予防効果を強化することを目的として,既存の刑事罰の定めやカルテルによる損害を回復するための損害賠償制度に加えて設けられたものであり,カルテル禁止の実効性確保のための行政上の措置として機動的に発動できるようにしたものである(最高裁判所平成17年9月13日第三小法廷判決・最高裁判所民事判例集第59巻7号1950頁・公正取引委員会審決集第52巻723頁〔東京海上日動火災保険株式会社ほか13名による審決取消請求事件〕)。
独占禁止法第7条の2第1項は,事業者が商品の対価に係る不当な取引制限をしたときに,当該行為の実行期間における「当該商品」の政令で定める方法により算定した売上額に法定の比率を乗じて得た額に相当する額の課徴金の納付を命じることとしており,これを受けた私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(昭和52年政令第317号。以下「独占禁止法施行令」という。)は,第5条第1項において,その売上額の算定方法を,いわゆる引渡基準により,実行期間において引き渡した商品の額を合計する方法によることとするとともに,売上額から控除が認められる場合として,同条第1項第1号ないし第3号のみを掲げている。また,独占禁止法施行令第6条は,引渡基準によって売上額を算定すると締結した契約により定められた商品の対価の額の合計額と著しい差異を生じる事情があると認められるときは,例外として,売上額の算定方法を,いわゆる契約基準により,実行期間において締結した契約により定められた対価の額を合計する方法とすると定めるが,その場合の売上額から控除が認められる場合として同施行令第5条第1項第3号だけを準用している。
以上によれば,独占禁止法は,課徴金の算定方法を具体的な法違反による現実的な経済的不当利得そのものとは切り離し,売上額に一定の比率を乗じて一律かつ画一的に算出することとして,カルテル禁止の実効性確保のための行政上の措置として機動的に発動できることを図ったものと解すべきである。
そして,独占禁止法第7条の2第1項にいう「当該商品」とは,違反行為である相互拘束の対象である商品,すなわち,違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品であって,違反行為である相互拘束を受けたものをいうと解すべきであるが,上記のような課徴金制度の趣旨及び課徴金の算定方法に照らせば,違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品については,一定の商品につき,違反行為を行った事業者又は事業者団体が,明示的又は黙示的に当該行為の対象から除外するなど,当該商品が違反行為である相互拘束から除外されていることを示す特段の事情が認められない限り,違反行為による拘束が及んでいるものとして,課徴金算定の対象となる当該商品に含まれ,違反行為者が,実行期間中に違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品を引き渡して得た対価の額が,課徴金の算定の基礎となる売上額となると解すべきである(前記東京高等裁判所平成22年11月26日判決参照)。
⑵ 本件における当該商品
ア 本件において,第1次値上げ及び第2次値上げにおいては,被審人積水化学工業,被審人三菱樹脂,クボタ,アロン化成及びシーアイ化成の5社が,第3次値上げ及び第4次値上げにおいては,被審人積水化学工業,被審人三菱樹脂及びクボタシーアイの3社が値上げに関する合意を行ったものであるところ,前記1(1)で認定したとおり,3社又は5社は,本件合意に関するそれぞれの話合いにおいて,値上げの対象となる塩化ビニル管等について特段の限定を付さずに話合いをし,特に対象商品を除外することなく値上げ方針を定めていたことが認められる。
もっとも,クボタシーアイの増田の質問調書(査第138号証)には,本件合意の対象商品が,被審人三菱樹脂が主張するようなものであったかのような記載があるが,他方において,上記質問調書には,本件合意に含まれていなかったものは塩ビマス・塩ビマンホールとC.C.BOXなどの電力・通信管であったとの記載もあり,また,クボタシーアイの増田は,査第107号証の供述調書においても,塩ビマス・塩ビマンホールと電力・通信管を除く全ての塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手が本件合意による値上げの対象となっていたこと,他の製品のメーカーに部品として販売する塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手についても本件合意による値上げの対象となっていたことを供述しているのであって,むしろ,クボタシーアイの増田としては,塩ビマス・塩ビマンホールと電力・通信管を除く全ての塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手が本件合意の対象であるとの認識を有していたものと認められる。そして,上記のとおり,3社又は5社は,本件合意に関するそれぞれの話合いにおいて,値上げの対象となる塩化ビニル管等について特段の限定を付さずに話合いをし,特に対象商品を除外することなく値上げ方針を定めていたのである上,塩化ビニル樹脂が値上がりすれば,それを原料とする製品の販売価格を引き上げる必要があることは,「塩化ビニル樹脂を主原料とするものであること」,「一般的な流通を経ているものであること」,「旧来品であること」という被審人三菱樹脂が主張する3条件が満たされた製品であるか否かによって違いがあるわけではなく,また,本件において,これらの3条件を満たすことが必要であるとの認識が3社又は5社の間に存在していたことを認める証拠はないから,この3条件を満たすことが対象商品の要件として必要であるとする被審人三菱樹脂の主張は採用できない。
イ したがって,塩化ビニル樹脂等を原料とする硬質ポリ塩化ビニル管及び硬質ポリ塩化ビニル継手のうち,電線保護管等は除外されていたものの(査第3号証,第107号証,増田秀樹参考人審尋速記録,小原徹也参考人審尋速記録),それ以外の塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手(すなわち塩化ビニル管等)は広く本件合意の対象となっていたと認められる。
ウ よって,本件違反行為の対象商品は塩化ビニル管等であり,その範ちゅうに属する商品は,違反行為者が明示的又は黙示的に本件違反行為の対象から除外するなど当該商品が違反行為である相互拘束から除外されていることを示す特段の事情が認められない限り,本件違反行為による拘束が及んでいるものと解される。
⑶ 被審人らが当該商品に該当しないと主張する各商品について
ア インサート継手(金属インサート継手)(別表1の1番の商品,別表2の42番及び43番の商品)
(ア) 被審人らの主張
インサート継手(金属インサート継手ともいう。以下「インサート継手」という。)は,銅合金と塩化ビニル樹脂を原料とするものであるが,銅合金は,重量比において半分又はそれ以上を占め,コスト比においては塩化ビニル樹脂を大きく超えるものである(具体的には,被審人積水化学工業は,銅合金の重量比は平均してほぼ半分を占め,その単価は塩化ビニル樹脂の単価の4倍以上であると主張し,被審人三菱樹脂は,代表的な製品であるバルブ用ソケットのHI継手の場合,銅合金の重量比は約78パーセント,コスト比は約71パーセントであり,同じく給水栓用ソケットのHI継手の場合,銅合金の重量比は約60パーセント,コスト比は約62パーセントであると主張している。)から,インサート継手は,銅合金を主たる原料とする継手である。そのため,インサート継手の値上げを検討するに際しても,一般の塩化ビニル管等とは異なり,原価構成において最大の比重を占める銅合金の価格が最も重要な考慮要素とされていた。また,インサート継手については,アロン化成及び前澤化成工業が大きなシェアを有しており,一般の塩化ビニル管等とは競争環境が大きく異なっていた。実際,平成18年のインサート継手の値上げの際には,被審人積水化学工業においても,被審人三菱樹脂においても,銅合金の高騰により,塩化ビニル管等に先駆けてインサート継手の値上げを打ち出しており,その値上げ幅も塩化ビニル管等に比べ大幅なものであった。
したがって,インサート継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないし,仮にこれが肯定されるとしても,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 認定事実
a インサート継手は,住宅の給水用途向けに塩化ビニル管を止水栓などの金属バルブや水道蛇口等の給水栓等と接続する際に使用される塩化ビニル管継手(一般の塩化ビニル管と接続する場合はTS継手が,より耐衝撃性に優れたHI管と接続する場合にはHI継手がそれぞれ使用される。)のうち,水道蛇口等の給水栓を接合するねじの部分に銅合金製のねじ(金属インサート)を使用した継手である。住宅の給水向け用途に使用される継手は,相当な水圧がかかることから,特に水撃圧の変動が激しい水道蛇口等の給水栓を接合するねじの部分に金属を使用したインサート継手が使われることが多い。
インサート継手は,銅合金と塩化ビニル樹脂を原料として製造されており,銅合金は,コスト比において通常塩化ビニル樹脂を超える。
(査第157号証,審A第27号証,審B第59号証)
b 値上げの状況
3社は,第1次ないし第3次値上げの際,インサート継手を値上げの対象としていた。(クボタシーアイにつき査第107号証〔別紙〕,第128号証〔資料1〕,第129号証〔資料1〕,増田秀樹参考人審尋速記録,被審人積水化学工業につき査第92号証ないし第94号証,被審人三菱樹脂につき審第59号証)
しかし,3社は,第4次値上げの際には,次のとおり,他の塩化ビニル管等の値上げに先立って,インサート継手単独で値上げの公表ないし検討を行った。なお,クボタシーアイは,③のとおりインサート継手単独での値上げを検討したものの,その後,インサート継手の値上げを公表し,それに続いて塩化ビニル管等の第4次値上げを公表することはインサート継手の顧客の理解を得られないとして,それらの値上げを同時に行うこととした。(査第157号証,審A第3号証,審B第59号証)
① 被審人積水化学工業
公  表:平成18年5月
値上げ幅:20ないし30パーセント
実施時期:平成18年5月22日出荷分から
② 被審人三菱樹脂
公  表:平成18年5月
値上げ幅:25パーセント以上
実施時期:平成18年6月12日出荷分から
③ クボタシーアイ
検討時期:平成18年4月20日
値上げ幅:35パーセント以上
実施時期:平成18年5月22日出荷分から
c 銅合金と塩化ビニル樹脂の価格の変動の状況
銅合金と塩化ビニル樹脂のコストの変動について比較すると,銅合金のコストは,平成16年1月を基準として,同年8月(第2次値上げ時)には約1.21倍,平成17年8月(第3次値上げ時)には約1.58倍,平成18年5月には約3.20倍になっているのに対し,塩化ビニル樹脂のコストは,平成16年1月を基準として,同年8月(第2次値上げ時)には約1.08倍,平成17年8月(第3次値上げ時)には約1.26倍,平成18年5月には約1.35倍となっていた(審A第27号証)。
(ウ) 当該商品該当性
a インサート継手は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
前記(イ)で認定したとおり,インサート継手は,原材料のうち銅合金のコスト比が塩化ビニル樹脂に対して高いといっても,塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管継手であるから,塩化ビニル管等に当たる。したがって,インサート継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,インサート継手は「塩化ビニル樹脂を主原料とするものであること」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b 特段の事情の有無
前記(イ)aのとおり,インサート継手におけるコスト比は,銅合金が通常塩化ビニル樹脂を超えるが,個々の製品によって異なるものであり(審A第27号証),仮にコスト比に関する被審人らの主張を前提としたとしても,塩化ビニル樹脂のコストも決して無視できるものではなく,塩化ビニル樹脂の値上げがあれば,製品の販売価格を値上げする必要性が出てくることは一般の塩化ビニル管等と同様である。また,前記(イ)bのとおり,実際に,第1次ないし第3次値上げの際,3社はインサート継手を値上げの対象としていた。
他方,第4次値上げにおいては,3社とも他の塩化ビニル管等の値上げに先立ってインサート継手単独で値上げの公表ないし検討しており,その値上げ幅も他の塩化ビニル管等より大幅に大きかったのであるが,これは銅合金の価格の高騰という別の値上げ要因が原因となっているからにすぎず,これによって,3社が,インサート継手について,本件合意による相互拘束から解放されて自由に価格を決定したとは認められない。
したがって,インサート継手が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,インサート継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
イ ホームセンターに対する販売品(別表1の21番及び22番の商品,別表2の40番及び41番の商品)
(ア) 被審人積水化学工業の主張
被審人積水化学工業は,ホームセンターを営む株式会社コメリ(以下「コメリ」という。)及びコーナン商事株式会社(以下「コーナン商事」といい,コメリとコーナン商事を合わせて「コメリ等」という。)に対し,VPパイプや継手等を販売していたが,管の長さは一般の塩化ビニル管よりも短い特注品であり,他の塩化ビニル管等とは品番を区別して販売管理するとともに,バーコードを貼り付けて出荷したり,梱包仕様を小分けにするなど,一般流通向けの商品にはない特別な対応をしていた。また,ホームセンター向け特殊仕様商品は,被審人積水化学工業とコメリ等が直接価格交渉を行って販売価格を決定していたが,ホームセンター業界では低価格競争が激しいことから,コメリ等に値上げを受諾させることは容易でなかった。
このように,ホームセンター向け特殊仕様商品は,ホームセンターの意向に沿った特別仕様のものであり,販売価格も被審人積水化学工業とコメリ等が直接交渉して決定しており,被審人積水化学工業の顧客向け値上げの通知文書や社内周知文書でもホームセンター向け特殊仕様商品の値上げに関する記載はなく,値上げの時期及び幅についても本件違反行為との間には連動性がなかった。
したがって,ホームセンター向け特殊仕様商品は,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 被審人三菱樹脂の主張
ホームセンターに販売する塩化ビニル管は,一般の塩化ビニル管とは異なり,長さが1メートルないし2メートルの製品があり,また,ホームセンターに販売する塩化ビニル管等は,バーコードを印字又は貼付しているなど,一般に流通することのない特殊な商品であり,「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に,ホームセンターに販売する塩化ビニル管等が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,ホームセンターに販売する塩化ビニル管等は,一般の塩化ビニル管等の販売とは異なりベンダーを通じての販売となるため,毎年定期的な値下げ要求はあっても,よほどの市場環境の変化がない限り値上げは行われず,平成16年頃からは毎年値下げを要求されていたものであるから,ホームセンターに販売する塩化ビニル管等が本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(ウ) 当該商品該当性
a ホームセンターに対する販売品は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人積水化学工業がコメリ等に販売していたものは,硬質ポリ塩化ビニル管(VP管,VU管)及び水道用ポリ塩化ビニル管(VPW管,HI-VPW管)並びにこれらに対応する継手であるから,塩化ビニル管等に当たる(査第2号証,審A第21号証,第22号証)。また,被審人三菱樹脂も,ホームセンターに対する販売品が特殊品であると主張するものの,塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手であることは争っていない。したがって,被審人らのホームセンターに対する販売品は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,ホームセンターに販売する塩化ビニル管等は一般に流通することのない特殊な商品であり,「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b 特段の事情の有無
被審人らは,ホームセンターに対する販売品は特殊な商品であり,また,直接又はベンダーを通じて販売価格の交渉を行うが,容易に値上げをすることができなかったと主張する。
しかし,ホームセンターに対する販売品は特殊な商品であるといっても,長さを短くし,バーコードシールを貼付し,小分けに梱包する程度の仕様にすぎないし,また,実際の値上げの状況も個々の価格交渉の結果にすぎないから,これが本件違反行為の対象外であったという根拠にはならない。
また,被審人積水化学工業の顧客向け値上げの通知文書や社内周知文書でもホームセンターに販売する商品の値上げに関する記載はないと主張するが,ホームセンターに限定しないものは記載されており(査第91号証ないし第93号証,審A第23号証),また,そもそも被審人積水化学工業は,第1次値上げないし第4次値上げにおいて,対象を一切限定せずに値上げを行う旨を公表しているのである(査第43号証〔資料3,同8,同12及び同15〕)から,本件違反行為の対象外であったという根拠にはならない。
むしろ,他の塩ビ管メーカーもホームセンター向けに販売する塩化ビニル管等を製造販売しているところ,クボタシーアイの本件合意に基づく値上げに関する社内の通知文書等からも,対象商品にホームセンター向けに販売する塩化ビニル管等が含まれていたことは明らかであり(査第129号証,第158号証),また,被審人三菱樹脂もホームセンターに販売する塩化ビニル管等をその他の塩化ビニル管等と同様に値上げの対象としていたことが明らかであって(査第165号証),ホームセンター向けに販売する塩化ビニル管等が本件違反行為の対象であったことは明らかである。
したがって,ホームセンター向け販売品が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,ホームセンターに対する販売品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
ウ リブパイプ及びリブパイプ継手(別表1の25番及び26番の商品,別表2の1番及び2番の商品)
(ア) 被審人積水化学工業の主張
リブパイプ及びリブパイプ継手(以下「リブパイプ・同継手」という。)は,一般の塩化ビニル管等と比べて軽量かつ高剛性なものであり,形状・仕様・価格設定も一般の塩化ビニル管等とは大きく異なる。また,リブパイプ・同継手は,海外で特許を有するウポノール社から技術ライセンスを受けた被審人ら及びクボタシーアイ(クボタ)の3社だけが製造販売しており,製品の規格制定,普及活動等も,塩化ビニル管・継手協会ではなく,リブパイプ協会が行っている。また,リブパイプ・同継手は,値上げの際も一般の塩化ビニル管との間に連動性はない。
したがって,リブパイプ・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないし,仮にこれが肯定されるとしても,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 被審人三菱樹脂の主張
リブパイプ・同継手は,旧来品であるSRAの代替品として,海外で特許を有するウポノール社から技術ライセンスを受けた被審人ら及びクボタシーアイ(クボタ)だけが製造販売している新しい製品であり,規格制定,普及活動等も,塩化ビニル管・継手協会ではなく,リブパイプ協会が行っている。リブパイプ・同継手は,SRAと比べて軽量かつ高剛性なものであり,仕様・価格設定も一般の塩化ビニル管等とは大きく異なっている。したがって,リブパイプ・同継手は,「旧来品であること」という要件を満たさない。
また,審査官は,電線保護管等を除外したものが本件違反行為の対象であったと主張するところ,リブパイプは,①塩化ビニル管・継手協会とは別の業界団体の製品であること,②製造業者が被審人ら,クボタシーアイ等の限られた会社であること,③流通及び価格が決定される過程等の点において,本件違反行為の対象から除外されているC.C.BOXと同じ事実関係にあるから,C.C.BOXが本件違反行為の対象から除外されていたというのであれば,リブパイプも本件違反行為の対象から除外されていたというべきである。
したがって,リブパイプ・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に,リブパイプ・同継手が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,リブパイプ・同継手の販売価格は,一般の塩化ビニル管等の値上げとの連動性がなく,原料である塩化ビニル樹脂の製品単価に占める割合に応じて塩化ビニル樹脂の値上げ分を反映させる方法によって決定されており,これは前記東京高等裁判所平成22年11月26日判決におけるナフサリンク方式に相当するものであるから,相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(ウ) 認定事実
リブパイプ・同継手は,管等の周囲にリブと呼ばれる突起を等間隔で付けることにより,管等の厚さを増すことなく剛性を高めることが可能な塩化ビニル管等であり,形状が一般の塩化ビニル管等とは異なる。そして,リブパイプ・同継手は,塩化ビニル管・継手協会ではなく,リブパイプ協会において規格が制定されている(査第3号証)。
リブパイプ・同継手は,被審人積水化学工業の顧客向け通知や社内の営業担当者向け連絡文書に値上げ対象商品として記載され(査第92号証ないし第94号証,審A第23号証),被審人三菱樹脂においても,社内の通知文書等に値上げ対象商品として記載され(査第134号証,審B第52号証,第55号証,第56号証),クボタシーアイにおいても,値上げ方針の検討案に値上げ対象商品として記載されている(査第144号証)。
(エ) 当該商品該当性
a リブパイプ・同継手は塩化ビニル管等に該当するか
被審人らは,リブパイプ・同継手が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手であることを争っていない。したがって,リブパイプ・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,リブパイプ・同継手は「旧来品であること」という要件を満たさないから本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
また,被審人三菱樹脂は,C.C.BOXが本件違反行為の対象から除外されていたというのであれば,リブパイプも本件違反行為の対象から除外されていたというべきであると主張するが,前記(2)のとおり,電線保護管等は,電力会社や電気通信事業者等の一定の範囲の事業者向けとして電力又は通信関係の資材を扱う専門業者を通じて販売され,価格改定は年度ごとに行われており,値上げも他の塩化ビニル管等とは別に行われていたことから,電線保護管等は本件違反行為の対象から除外されていたものであって,本件違反行為の対象から電線保護管等が除外されていたからといって,リブパイプ・同継手も同様に本件違反行為の対象から除外されていたと認めることはできない。
b 特段の事情の有無
被審人らは,リブパイプ・同継手の形状・仕様・価格設定が一般の塩化ビニル管等とは大きく異なること,リブパイプ・同継手はウポノール社から技術ライセンスを受けた被審人ら及びクボタシーアイ(クボタ)の3社だけが製造販売していること,製品の規格制定,普及活動等をリブパイプ協会が行っていること,リブパイプ・同継手の販売価格が一般の塩化ビニル管との間に連動性はないことを,リブパイプ・同継手が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情として主張する。
しかし,塩化ビニル樹脂の値上げがあれば,製品の販売価格を値上げする必要性が生じることは他の塩化ビニル管等と同様であり,実際,リブパイプ・同継手は,被審人ら及びクボタシーアイにおいて値上げの対象商品とされていたものである。また,社内の検討において製品によって値上げの幅が異なってくることもあり得ることである。したがって,リブパイプ・同継手が本件違反行為の対象でなかったとはいえない。
また,被審人三菱樹脂は,リブパイプ・同継手の販売価格の値上げの決定方法は前記東京高等裁判所平成22年11月26日判決におけるナフサリンク方式に相当するから,リブパイプ・同継手には本件違反行為の拘束力が及んでいないと主張するが,上記判決の事案においては,違反行為者が需要者との間であらかじめ契約により原料価格に連動して一定の算式の下に自動的に製品の販売価格が設定される方式によることを合意していたことから違反行為の対象から除外されていたものであるが,本件では被審人三菱樹脂がリブパイプ・同継手の販売価格について需用者との間でこれと同様の契約を締結していたことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,リブパイプ・同継手が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,リブパイプ・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
⑷ 被審人積水化学工業が当該商品に該当しないと主張する各商品について
ア HTパイプ及びHTパイプ継手(別表1の2番及び3番の商品)
(ア) 被審人積水化学工業の主張
HTパイプ及びHTパイプ継手(以下「HTパイプ・同継手」という。)は,塩素化塩化ビニル樹脂を主たる原料とするものであり,耐熱性に優れているため,主として給湯用に用いられる管及び継手であるところ,塩素化塩化ビニル樹脂は,塩化ビニル樹脂を原料として塩素重合して製造される化合物であり,単なる塩化ビニル樹脂とは,構造,製法,主原料,平均単価等が大きく異なる別の化合物であるから,これを主原料とするHTパイプ・同継手は,一般の塩化ビニル管等とは別の商品であり,本件違反行為の影響を受けていない。
したがって,HTパイプ・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないし,仮にこれが肯定されるとしても,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 認定事実
HTパイプ・同継手は,塩素化塩化ビニル樹脂を主たる原料とするものであり,耐熱性に優れているため,主として給湯用に用いられる(争いがない。)。塩素化塩化ビニル樹脂は,塩化ビニル樹脂を原料として塩素重合して製造される化合物であり,単なる塩化ビニル樹脂とは構造,製法等が異なる(審A第12号証)。
HTパイプ・同継手は,日本工業規格の規格名称が「耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管」及び「耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管継手」である(査第2号証)。
なお,HTパイプ・同継手は,塩ビ管メーカーの商品案内にも掲載され(査第99号証,第103号証,第110号証),また,被審人積水化学工業の顧客向け通知や社内の営業担当者向け連絡文書にも値上げ対象商品として記載されている(査第92号証,第94号証,審A第23号証)。
(ウ) 当該商品該当性
a HTパイプ・同継手は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
前記(イ)のとおり,HTパイプ・同継手は,塩素化塩化ビニル樹脂を主たる原料とするものであり,塩素化塩化ビニル樹脂は,塩化ビニル樹脂とは構造,製法等が異なるものの,塩化ビニル樹脂を塩素重合して製造されるものであり,塩化ビニル樹脂から派生したものにすぎないもので,塩化ビニル樹脂の一種である(査第157号証)。また,前記(イ)のとおり,HTパイプ・同継手は,日本工業規格の規格名称が「耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管」及び「耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管継手」であり,塩ビ管メーカーの商品案内においても塩化ビニル管等の一管種として記載されている。したがって,HTパイプ・同継手は,塩化ビニル管等にほかならないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
b 特段の事情の有無
被審人積水化学工業は,前記(ア)のとおり主張するが,HTパイプ・同継手は,塩化ビニル管等に当たり,しかも,日本工業規格の規格品であることや塩ビ管メーカーの商品案内に記載されていることからすれば,塩化ビニル管等を対象とする本件違反行為の典型的対象商品であると認められ,実際,前記(イ)のとおり,被審人積水化学工業の顧客向け通知や社内の営業担当者向け連絡文書にも値上げ対象商品として記載されているのであって,本件違反行為の影響を受けていないということはできない。
したがって,HTパイプ・同継手が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,HTパイプ・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
イ 東レ用特注品(別表1の4番の商品)
(ア) 被審人積水化学工業の主張
東レ株式会社(以下「東レ」という。)は,ろ過膜付きの特殊な塩化ビニル管内に海水を流し込み,それをろ過して浄化・淡水化したものを産業用水や生活用水として利用できるようにする逆浸透膜装置という装置の開発を行い,海水淡水化プラント事業を展開しており,被審人積水化学工業は,上記逆浸透膜装置に使用するための塩化ビニル管(東レ用特注品)を販売している。
東レ用特注品は,淡水化された水が飲料水にも使用されることから,安定剤には鉛等の金属を使用してはならない,美観を保った商品でなければならない等,東レが定める仕様に従わなければならず,他の塩化ビニル管との間に代替性はない。
また,東レ用特注品は,被審人積水化学工業が製造し,近畿セキスイ商事株式会社(以下「近畿セキスイ商事」という。)及び丸善管工器材株式会社(以下「丸善管工器材」という。)の2社を介して村角株式会社(以下「村角」という。)に販売され,村角は,それにろ過用装置を取り付けるなどして東レに販売しているが,被審人積水化学工業は,村角との間で直接交渉して,村角が丸善管工器材から購入する価格を決定している。なお,その際,被審人積水化学工業は,被審人積水化学工業から近畿セキスイ商事への販売価格,近畿セキスイ商事から丸善管工器材への販売価格を決定し,それぞれ仲介業者が一定の利益を得られるように配慮している。
このような状況において,被審人積水化学工業は,村角との直接交渉の結果を踏まえ,近畿セキスイ商事への東レ用特注品の販売価格を平成17年6月に14.6パーセント,平成18年3月に2.1パーセント,同年11月に5.2パーセント引き上げたが,この時期には,一般の塩化ビニル管について値上げが行われていないことからすれば,東レ用特注品の販売価格は本件違反行為と連動していない。
このように,東レ用特注品の商流,価格決定に至る過程,値上げ時期等に鑑みれば,被審人積水化学工業から近畿セキスイ商事への販売価格は本件違反行為の影響を受けていない。
したがって,東レ用特注品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないし,仮にこれが肯定されるとしても,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 当該商品該当性
a 東レ用特注品は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
東レ用特注品が塩化ビニル管のうちVP200に分類される管であることは被審人積水化学工業も認めている(なお,VP管は,塩化ビニル管の代表的な管種である〔査第2号証,第3号証〕。)。したがって,東レ用特注品は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
b 特段の事情の有無
被審人積水化学工業は,東レ用特注品の商流,価格決定に至る過程,値上げ時期等に鑑みれば,東レ用特注品の近畿セキスイ商事への販売価格は本件合意の影響を受けないと主張する。
確かに,東レ用特注品には被審人積水化学工業の主張するとおり仕様が定められ,また,被審人積水化学工業と村角が直接交渉して村角の東レ用特注品の仕入価格を決定している。(審A第25号証,第26号証の1ないし3,第27号証)
しかし,そもそも上水道用途は塩化ビニル管等の主要用途の一つであり(査第1号証,第2号証),東レ用特注品も,東レの要望に応じてVP管の一部の仕様を変更したものにすぎず,被審人積水化学工業以外の塩ビ管メーカーがこれと競合する製品を供給することが可能であったことは明らかであるから,被審人積水化学工業が主張する東レ用特注品の商流は,東レ用特注品が本件違反行為の対象外であったという根拠にはならない。
また,被審人積水化学工業が,村角との間で,その仕入価格について直接交渉を行うことにより決定される価格は,近畿セキスイ商事に対する販売価格及び仲介業者の得るべき一定の利益が考慮されたものとなるのが当然であり,東レ用特注品の販売価格の決定方法が被審人積水化学工業の主張するようなものであることは,東レ用特注品が本件違反行為の対象外であったという根拠にはならない。
さらに,販売価格の引上げの状況が前記アのとおりであったとしても,それは個々の価格交渉の結果にすぎず,東レ用特注品が本件違反行為の対象外であったという根拠にはならない。
したがって,東レ用特注品が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,東レ用特注品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
ウ エスロンランケイカンEGP(別表1の5番の商品)
(ア) 被審人積水化学工業の主張
エスロンランケイカンEGPは,被審人積水化学工業が開発した低勾配地や少流量でも優れた掃流性を発揮するという特殊な下水道用管材であり,一時期は他の塩ビ管メーカーも製造していたが撤退し,平成16年以降は,そのほとんどを被審人積水化学工業が製造している。
このように,エスロンランケイカンEGPは,他の塩化ビニル樹脂を主たる原料とする一般の塩化ビニル管等と異なる特殊性を有し,それらとの間に代替性はなく,また,他の塩ビ管メーカーとの間に競争が存在せず,それ自体として別個独立の市場を形成している。
したがって,エスロンランケイカンEGPは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないし,仮にこれが肯定されるとしても,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 認定事実
エスロンランケイカンEGPは,下水道用硬質塩化ビニル卵形管(以下「卵形管」という。)の一つである。
卵形管は,下水用途に使用される切断面が卵の形をした塩化ビニル管であって,日本下水道協会規格(JSWAS)及び塩化ビニル管・継手協会において塩化ビニル管の一類型として規格されているものである(規格番号は,前者がK-3,後者がAS36である。)。卵形管は,低勾配地や少流量でも優れた掃流性を発揮する。
(査第2号証,審A第27号証,第28号証)
(ウ) 当該商品該当性
a エスロンランケイカンEGPは本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
エスロンランケイカンEGPは,卵形管の一つであり,塩化ビニル管に当たるから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
b 特段の事情の有無
被審人積水化学工業は,エスロンランケイカンEGPは一般の塩化ビニル管との代替性がなく,また,遅くとも平成16年以降は,卵形管のほとんどを被審人積水化学工業が製造販売しており,他の塩ビ管メーカーとの間に競争が存在しないから,エスロンランケイカンEGPは別個独立の市場を形成していると主張する。
しかし,確かに,エスロンランケイカンEGPは低勾配地や少流量でも優れた掃流性を発揮するものであるが,それは一般の下水道用硬質塩化ビニル管と比較して低勾配地や少流量での掃流性について機能的に優れているというだけのことであって,一般の下水道用硬質塩化ビニル管と代替性が全くないわけではない。また,被審人積水化学工業は,平成16年以降の卵形管の製造販売の状況を主張するが,それを認定できるだけの証拠はない。さらに,卵形管は日本下水道協会及び塩化ビニル管・継手協会の規格品であり,また,被審人積水化学工業は,かつてクボタやシーアイ化成などの塩ビ管メーカーが卵形管を製造販売していたことを認めているのであるから,仮に平成16年以降卵形管のほとんどを被審人積水化学工業が製造していたとしても,同被審人のみにしか製造できないという理由はなく,他の塩ビ管メーカーが卵形管の製造販売に参入することは可能であると解されるから,卵形管だけに着目したとしても,潜在的な競争は存在したということができる。したがって,卵形管が別個独立の市場を形成しているという被審人積水化学工業の主張は前提を欠く。
したがって,エスロンランケイカンEGPが本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,エスロンランケイカンEGPは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
エ エスロン温泉用HTベルパイプ及びエスロン温泉用HTベル継手(別表1の6番及び7番の商品)
(ア) 被審人積水化学工業の主張
エスロン温泉用HTベルパイプ及びエスロン温泉用HTベル継手(以下「エスロン温泉用HTベルパイプ・同継手」という。)は,温泉地での埋設引湯配管用として使用される温泉引湯埋設管用耐熱性塩化ビニル管及び同継手であり,金属管にはない耐食性,耐熱性を有していること,「ベル受口加工」による地盤変状への追従性を有していること,パイプ内の流水の温度が低下しないよう保温材を使用し,保温性を高めていること等の特殊性を有している。エスロン温泉用HTベルパイプ・同継手は,このような特殊性を有するため,一般の塩化ビニル管等とは代替性がない上,製造販売しているのは被審人積水化学工業だけであり,他の塩ビ管メーカーとの間に競争が存在せず,それ自体として別個独立の市場を形成している。
したがって,エスロン温泉用HTベルパイプ・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないし,仮にこれが肯定されるとしても,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 認定事実
エスロン温泉用HTベルパイプ・同継手は,温泉地での埋設引湯配管用として使用される温泉引湯埋設管用耐熱性塩化ビニル管及び同継手であり,①金属管にはない耐食性を有していること,②高温でも使用可能な耐熱性を有していること,③パイプ内の流体物の温度が下がらないように保温材を使用して保温性を高めていること,④管の受口をゴム輪受口としたことによる地盤変状への追従性を有していること等の特徴を有するが,これは,日本工業規格の規格品である耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管(HT管)に受口をゴム輪受口とする加工を施したものである。(査第2号証,審A第27号証,第31号証)
(ウ) 当該商品該当性
a エスロン温泉用HTベルパイプ・同継手は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
エスロン温泉用HTベルパイプ・同継手は,HT管及び同継手に一定の加工を施したものであるから,塩化ビニル管等である。したがって,上記商品は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
b 特段の事情の有無
温泉引湯埋設管用耐熱性塩化ビニル管及び同継手を被審人積水化学工業だけが製造販売していることを認定できるだけの証拠はない。また,エスロン温泉用HTベルパイプ・同継手は,HT管及び同継手に一定の加工を施したものであるが,そのようなものを被審人積水化学工業のみしか製造できないことをうかがわせるものはなく,他の事業者が全く参入できないわけではないから,競争がないとはいえない。
したがって,エスロン温泉用HTベルパイプ・同継手が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,エスロン温泉用HTベルパイプ・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
オ エスロンHI継手透明ブルー(別表1の8番の商品)
(ア) 被審人積水化学工業の主張
エスロンHI継手透明ブルーは,塩化ビニル製の青色半透明の素材で製造されているため,管の接続部分を目視でき,被審人積水化学工業製の接着剤(エスロン接着剤NO.83ホワイト)を併せて使用することにより,接着剤の塗布状況が目視で確認できる。また,本件の当時,半透明で耐衝撃性を有する塩化ビニル製品を製造するのは技術的に容易でなく,半透明のHI継手を製造販売していたのは被審人積水化学工業だけであり,他の塩化ビニル管との代替性もなく,他の塩ビ管メーカーとの間に競争がなかった。また,その販売価格は本件違反行為との間に連動性はなかった。
したがって,エスロンHI継手透明ブルーは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないし,仮にこれが肯定されるとしても,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 当該商品該当性
a エスロンHI継手透明ブルーは本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
通常のHI継手は,日本工業規格の規格品(K6743 水道用硬質ポリ塩化ビニル管継手)であり(査第2号証),エスロンHI継手透明ブルーはそれを青色半透明にしたものであるから,塩化ビニル管継手に当たる。したがって,エスロンHI継手透明ブルーは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
b 特段の事情の有無
被審人積水化学工業は,本件の当時,半透明のHI継手を製造販売していたのは被審人積水化学工業だけであり,他の塩化ビニル管継手との代替性もなく,他の塩ビ管メーカーとの間に競争が存在しなかったと主張するが,半透明のHI継手を製造販売していたのは被審人積水化学工業だけであったことを認定できるだけの証拠はなく,また,仮にそうであったとしても,エスロンHI継手透明ブルーは,被審人積水化学工業製の白色接着剤と併用することにより接続部分が目視で確認できるという特徴があるとはいえ,一般的な規格品として他の塩ビ管メーカーも製造販売しているHI継手と用途は同様であるから,他の塩ビ管メーカーとの競争関係が否定されるものではない。
また,被審人積水化学工業は,北九州地区におけるエスロンHI継手透明ブルーの販売価格は本件違反行為と連動していないと主張し,その販売価格の証拠として北九州地区の1社の取引先に対する販売価格を記載した表(審A第27号証〔添付資料2〕)を提出する。しかし,エスロンHI継手透明ブルーは,HI継手の一種であるところ,HI継手は社内の社内営業担当者向け連絡文書において値上げ対象商品として記載されているから,エスロンHI継手透明ブルーもその対象となっていたと考えられる。なお,上記取引先に対する販売価格は,被審人積水化学工業と上記取引先との間の実際の価格交渉の結果にすぎず,合意どおりの価格の引上げが実現しなかったとしても,それをもって本件違反行為の対象外であったということはできない。
したがって,エスロンHI継手透明ブルーが本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,エスロンHI継手透明ブルーは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
カ フネンアクロス向け塩化ビニル管等(別表1の9番及び10番の商品)
(ア) 被審人積水化学工業の主張
フネンアクロス株式会社(以下「フネンアクロス」という。)は,VUパイプ及びVPパイプを内管とし,外管に繊維混入モルタル管を使用するという二重構造を採用することにより耐火性に優れたパイプ及び継手(以下「耐火二層管等」という。)を製造販売しているところ,被審人積水化学工業は,フネンアクロスに対し,耐火二層管等の原管となる塩化ビニル管等を販売している。フネンアクロス向け塩化ビニル管は,一般の塩化ビニル管よりも短い特注品であり,また,フネンアクロス向け塩化ビニル管等の販売価格は,被審人積水化学工業がフネンアクロスとの間で直接交渉を行って決定しているため,本件違反行為との間に連動性がないから,別個独立の市場を形成している。
したがって,フネンアクロス向け塩化ビニル管等は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないし,仮にこれが肯定されるとしても,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 認定事実
被審人積水化学工業は,耐火二層管等を製造販売しているフネンアクロスに対し,耐火二層管等の原材料となる塩化ビニル管等を販売している。フネンアクロスの製造する耐火二層管の長さは,規格品の塩化ビニル管よりも短いため,被審人積水化学工業は,フネンアクロスの定める仕様に従って,規格品よりも短い塩化ビニル管を販売している。
フネンアクロス向け塩化ビニル管は,VU管及びVP管であり,いずれも日本工業規格における規格品(K6741 硬質ポリ塩化ビニル管)である。
(査第2号証,審A第27号証,第34号証)
(ウ) 当該商品該当性
a フネンアクロス向け塩化ビニル管等は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人積水化学工業は,フネンアクロス向け塩化ビニル管等が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手であることを争っていない。したがって,フネンアクロス向け塩化ビニル管等は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
b 特段の事情の有無
被審人積水化学工業は,フネンアクロス向け塩化ビニル管は,フネンアクロスからの特注品であり,その販売価格も被審人積水化学工業がフネンアクロスとの間で直接交渉を行って決定しているから,本件違反行為との間に連動性がなく,別個独立の市場を形成していると主張する。
しかし,フネンアクロス向け塩化ビニル管が特注品であるとしても,それは通常のVU管及びVP管であり,汎用品と長さが違うだけのことであるし,被審人積水化学工業だけでなくクボタ(クボタシーアイ)及びアロン化成も同様に販売しており(査第107号証,第108号証,第127号証),また,フネンアクロス向け塩化ビニル管等の販売価格は被審人積水化学工業がフネンアクロスとの間で直接交渉を行って決定していることは,売買契約の当事者として当然のことである。したがって,フネンアクロス向け塩化ビニル管等が本件違反行為の対象外であったという根拠にはならない。
したがって,フネンアクロス向け塩化ビニル管等が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,フネンアクロス向け塩化ビニル管等は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
キ 67品種の加工品(別表1の11番の商品)
(ア) 被審人積水化学工業の主張
被審人積水化学工業は,商品カタログや設計積算価格表に記載のない特殊品を受注することがあり,平成16年3月1日から平成18年11月13日までの間においても67品種の特殊加工品を受注し,それぞれ製造販売を行ったが,これらの商品は,他の一般の塩化ビニル管等とは異なり,特定の需用者との間で製造される独自の特殊な商品であり,価格交渉も注文者との間で都度行われていたものであるから,他の一般の塩化ビニル管等の価格推移とは何ら連動せず,別個独立の市場を形成している。
したがって,67品種の加工品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないし,仮にこれが肯定されるとしても,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 当該商品該当性
a 67品種の加工品は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人積水化学工業は,67品種の加工品が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手であることを争っていない。したがって,上記商品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
b 特段の事情の有無
被審人積水化学工業は,67品種は特殊加工品であると主張するが,その具体的な内容が明らかでない。また,仮に67品種の加工品が需用者の依頼に基づき製造販売される特殊なものであるとしても,塩化ビニル樹脂の値上げがあれば,製品の販売価格にその値上げ分を転嫁する必要性が出てくることは一般の塩化ビニル管等と同様であるし,需用者の依頼に基づき製造販売する製品の売買について他の塩ビ管メーカーが参入できないことをうかがわせる事情も認められないから,競争がないとも認められない。
したがって,被審人積水化学工業の主張する67品種の加工品が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,被審人積水化学工業の主張する67品種の加工品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
ク マスマンホールの付属品(マスマンホールの立ち上がり管に使用する塩化ビニル管及びマスマンホール用の塩化ビニル管継手)(別表1の12番及び13番の商品)
(ア) 被審人積水化学工業の主張
マスマンホールの立ち上がり管として使用される塩化ビニル管(以下「マスマンホール用パイプ」という。)及びマスマンホール用継手(以下「マスマンホール用継手」といい,マスマンホール用パイプと合わせて「マスマンホール用パイプ・同継手」という。)は,いずれもマスマンホールの付属品として製造された特殊品であり,マスマンホール以外の用途に使用することは想定されていないし,一般の塩化ビニル管等をマスマンホール用パイプ・同継手の代替品として使用することもできない。そして,マスマンホール用パイプ・同継手は,マスマンホール本体とともに一体として値上げがなされ,その販売価格はマスマンホール本体の定価に掛け率を乗じて算出される。
このようにマスマンホール用パイプ・同継手は,マスマンホール本体と一体として別個独立の市場を形成している。
したがって,マスマンホール用パイプ・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないし,仮にこれが肯定されるとしても,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 認定事実
マスマンホールは,地中に設置した塩化ビニル製マス(汚水等を一時的に貯める容器)部分,地表面の塩ビ製や鋳鉄製の防護ハット部分及びマスとハットをつなぐ「立ち上がり管」という塩化ビニル管(マスマンホール用パイプ)から構成される。これに,マスマンホール専用の塩化ビニル管継手(マスマンホール用継手)を使用し,流入管や流出管として,市販されているVU管,VP管を接続するという構造である。
マスマンホール用パイプは,管の長さが0.8メートル又は2メートルと,規格品の塩化ビニル管よりも短く,口径も比較的大きいという特徴を有している。また,マスマンホール用継手は,マスマンホール用の部品として特別に製造されたものであって,それ以外の用途に使用されることは想定されていない。なお,マスマンホール用パイプ・同継手は,排水管等に使用される一般的な規格品であるVU管及びVU継手の仕様を一部変更したものである。
(査第2号証,第3号証,第111号証,審A第27号証,第35号証)
(ウ) 当該商品該当性
a マスマンホール用パイプ・同継手は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
マスマンホール用パイプ・同継手は,排水管等に使用される一般的な規格品であるVU管及びVU継手の仕様を一部変更したものであり,塩化ビニル管等である。したがって,マスマンホール用パイプ・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
b 特段の事情の有無
被審人は,マスマンホール用パイプ・同継手は,マスマンホールの付属品であり,その販売価格の値上げは,マスマンホール本体の値上げに連動するものであると主張する。
しかし,マスマンホール本体も,マスマンホール用パイプ・同継手も,その原料は塩化ビニル樹脂であるから,塩化ビニル樹脂の価格が上がれば,それに対応して価格を引き上げることになり得るし,そして,被審人積水化学工業の顧客向け通知や社内の営業担当者向け連絡文書においても,マスマンホール本体とマスマンホール用パイプ・同継手が含まれるVU管及びVU継手が値上げの対象とされている(査第92号証ないし第94号証,審A第23号証)から,マスマンホール用パイプ・同継手の値上げがマスマンホール本体の値上げに連動するとしても,それは本件違反行為の対象外であったという根拠にはならない。
したがって,マスマンホール用パイプ・同継手が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,マスマンホール用パイプ・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する(なお,マスマンホール本体は,マンホールであって,塩化ビニル管又は塩化ビニル管継手ではないから,本件課徴金納付命令においてその売上額は課徴金算定の基礎となっていない。)。
ケ SVLパイプ(別表1の14番の商品)
(ア) 被審人積水化学工業の主張
被審人積水化学工業は,炭素鋼管や水道用亜鉛メッキ鋼管の内側に塩化ビニル管をライニング(被覆)した複合管である給水用硬質塩化ビニルライニング鋼管を製造販売している新日本製鐵株式会社及び日鉄鋼管株式会社(以下「新日鐵等」という。)に対し,その内側に組み込まれる硬質塩化ビニル管であるSVLパイプをヴァンテックから購入して販売していたところ,このSVLパイプは,給水用硬質塩化ビニルライニング鋼管の原管として製造されたもので,品質や性能等について細かく仕様が決められており,また,完成品である給水用硬質塩化ビニルライニング鋼管の口径より小さく製造されている上,SVLパイプと他の管を接続することは予定されておらず,SVLパイプに使用可能な継手が存在しないため,給水用硬質塩化ビニルライニング鋼管以外の用途に使用することができないこと,特定のユーザー向けの商品であって一般には流通しておらず,他に競合する塩ビ管メーカーは存在しないことから,一般的な塩化ビニル管等とは異なる別個独立の市場を形成している。
したがって,SVLパイプは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないし,仮にこれが肯定されるとしても,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 当該商品該当性
a SVLパイプは本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
SVLパイプは,新日鐵等により品質及び仕様が決められているとはいえ,日本工業規格の規格品である水道用硬質ポリ塩化ビニル管(規格番号K6742)をベースとするものである(査第2号証,審A第36号証)から,塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管に当たる。したがって,SVLパイプは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
b 特段の事情の有無
SVLパイプは,前記aのとおり,一般的な規格品である水道用硬質ポリ塩化ビニル管をベースとするものであることからすれば,SVLパイプと他の塩化ビニル管とが相互に代替的に使用することができないとしても,他の塩ビ管メーカーとの競争関係が否定されるものではない(現に,後記(5)セのとおり,被審人三菱樹脂も給水用硬質塩化ビニルライニング鋼管の内面被覆に使用されている塩化ビニル管を製造販売している。)。
したがって,SVLパイプが本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,SVLパイプは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
コ 被審人三菱樹脂向けHT-SVLパイプ(別表1の15番の商品)
(ア) 被審人積水化学工業の主張
被審人積水化学工業は,被審人三菱樹脂に対し,配管用炭素鋼管の内側に耐熱性硬質塩化ビニル管を耐熱接着剤でライニングした複合管である水道用耐熱性硬質塩化ビニルライニング鋼管の製造委託を行っているところ,被審人三菱樹脂が使用する耐熱性硬質塩化ビニル管(HT-SVLパイプ)を製造しているのは被審人積水化学工業だけである。そのため,販売価格については,値上げの必要性が生じた際に,被審人三菱樹脂との間でその都度個別の交渉を行い決定している。このように,HT-SVLパイプは,被審人ら間の製造委託契約に基づき個別の交渉を行い取引されていたのであるから,他の塩ビ管メーカーとの間に競争はなく,本件行為との間には何ら関連性はない。
したがって,被審人三菱樹脂向けHT-SVLパイプは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないし,仮にこれが肯定されるとしても,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 当該商品該当性
a HT-SVLパイプは本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
HT-SVLパイプは,日本工業規格の規格品である耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管(規格番号K6776)をベースとするもの(査第2号証)であるから,塩化ビニル管である。したがって,HT-SVLパイプは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
b 特段の事情の有無
本件違反行為の時点で,被審人三菱樹脂が製造する水道用耐熱性硬質塩化ビニルライニング鋼管の原管を製造販売していたのが被審人積水化学工業のみであったことを認定できるだけの証拠はなく,また,仮にそうであったとしても,HT-SVLパイプは一般的な規格品である耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管をベースとするものであり,他の事業者が参入することができないわけではないから,競争がないとはいえない。また,被審人積水化学工業が被審人三菱樹脂との間でHT-SVLパイプの販売価格について個別の交渉を行い決定しているとしても,それは被審人積水化学工業による価格の決定方法を述べるにすぎず,同製品の販売価格が本件違反行為の対象となっていないことの根拠とはならない。
したがって,HT-SVLパイプが本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,HT-SVLパイプは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
サ 積水ハウス向け販売品(別表1の16番及び17番の商品)
(ア) 被審人積水化学工業の主張
被審人積水化学工業は,資本関係を有する積水ハウス株式会社(以下「積水ハウス」という。)との間で覚書を締結し,同社が被審人積水化学工業の指定するシステム配管(以下「指定材」という。)を購入した場合,積水ハウスの購入した数量に応じて積水ハウスに販売奨励金を支払っている。この取引は,形式的には,被審人積水化学工業がその指定する管材店(以下「指定管材店」という。)に指定材を販売し,積水ハウスが指定管材店から購入するものであるが,上記取引に指定管材店を介在させているのは,指定管材店の物流を利用するためにすぎず,積水ハウスの購入価格は被審人積水化学工業と積水ハウスが直接交渉して決定し,被審人積水化学工業から積水ハウスに対して直接販売奨励金が支払われているから,この取引は,実態としては,被審人積水化学工業から積水ハウスへの直接の販売と同視できるものである。なお,販売奨励金を考慮した実質的な販売価格は,通常の取引先と比べて大幅に割安に設定され,定価の40ないし60パーセント程度であり,価格交渉の際には双方の事情が考慮され,被審人積水化学工業の事情を踏まえ値上げがされることもあったが,積水ハウスの事情を踏まえ値下げがされるときもあった。このように,被審人積水化学工業と積水ハウスとの間の覚書に基づく指定材の取引は,塩化ビニル管等の値上げに伴って自動的に値上げされる関係にないから,本件違反行為に基づく価格変動と連動していない。
したがって,積水ハウス向け販売品は,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 認定事実
被審人積水化学工業は,積水ハウスとの間で覚書を締結し,積水ハウスが被審人積水化学工業の製造販売する指定材を採用した場合,被審人積水化学工業が積水ハウスに対し,その数量に応じて毎月販売奨励金を支払うことが合意されていた。
指定材は,被審人積水化学工業から指定管材店に販売され,当該指定管材店から積水ハウスに販売されており,実際にこの流れによって商品が供給されていた。
被審人積水化学工業と積水ハウスが直接交渉をして積水ハウスの指定材の実質的購入価格を決定していたが,それは販売奨励金を考慮した後の価格であった。
(審A第16号証,第17号証,第37号証)
(ウ) 当該商品該当性
a 積水ハウス向け販売品は本件違反行為の対象商品に該当するか
被審人積水化学工業は,積水ハウス向け販売品が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手であることを争っていない。したがって,積水ハウス向け販売品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
b 特段の事情の有無
被審人積水化学工業は,積水ハウス向け販売品の取引に指定管材店を介入させているのは,指定管材店の物流を利用するためであると主張するが,そもそも管材店は,塩ビ管メーカーから商品を仕入れてそれを販売し,商品を流通させるものであり,被審人積水化学工業も管材店のその機能を利用するものであって,通常の取引と変わるところはない。
また,被審人積水化学工業は,積水ハウスの指定材の購入価格は被審人積水化学工業と積水ハウスが直接交渉して決定しており,その際,双方の事情が考慮され,値上げされることもあったが値下げされることもあったと主張するが,前記(イ)のとおり,被審人積水化学工業と積水ハウスが決定していたのは販売奨励金を考慮した後の価格であり,結局のところ,それは被審人積水化学工業から積水ハウスに対して支払われる販売奨励金の水準に係る事情にすぎないから,被審人積水化学工業から指定管材店への積水ハウス向け販売品の販売価格と本件違反行為に基づく価格変動との連動性を否定する根拠とはならない。むしろ,被審人積水化学工業の従業員は,その陳述書(審A第37号証)において,「製品について値上げがなされると,当社から指定管材店への販売価格も値上がりしていましたが,当社の支払う販売奨励金の額は変動しなかったので,積水ハウスが指定管材店から購入する価格は一定のことが多かったようです。」と,被審人積水化学工業の製品価格が値上げされると,同被審人が指定管材店に販売する指定材の販売価格も値上げしていたことを認める陳述をしているところである。
したがって,積水ハウス向け販売品が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,積水ハウス向け販売品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
(エ) 販売奨励金は割戻金に該当するか
ところで,被審人積水化学工業は,積水ハウスが指定管材店から指定材を購入するようにしていたのは,販売店の物流機能を利用するためにすぎず,価格交渉や販売奨励金の支払が積水ハウスと直接行われていたことからすれば,実態としては被審人積水化学工業から積水ハウスへの直接の販売と同視できるものであること,指定材の価格交渉に際しては,積水ハウスとの間で被審人積水化学工業及び積水ハウスのそれぞれが抱える事情を考慮して個別に決定しており,塩化ビニル管等の値上げに伴って積水ハウス向けの指定材の販売価格が自動的に値上げされる関係にないことから,別表1の27番及び28番の販売奨励金は,実質的には独占禁止法施行令第5条第1項第3号にいう割戻金に該当すると主張する。
しかし,同号に定める「割戻金」が課徴金の算定に当たり控除されるのは,「割戻金」が対価そのものの修正ないしこれに準じるものと評価できるからであり,そのような対価の修正と評価できるのは,直接の販売先に対して支払われたものに限られるのであって,再販売先などの間接の相手方に対するものは対象とならない。
本件において,積水ハウス向け販売品は,商流においても物流においても被審人積水化学工業から指定管材店へ,指定管材店から積水ハウスへと移転しており,被審人積水化学工業の会計上も指定管材店に対する売上額として処理されていたのである(審A第37号証)から,被審人積水化学工業の売上げは指定管材店に対する売上げとみるべきであり,積水ハウスへ支払われた販売奨励金は,課徴金算定の対象となった売上額の割戻金とは認められないから,独占禁止法施行令第5条第1項第3号に定める「割戻金」に該当せず,課徴金算定の対象となる売上額から控除されるべきではない。
したがって,被審人積水化学工業の上記主張は採用できない。
シ シーシーアイ向け販売品(別表1の18番及び19番の商品)
(ア) 被審人積水化学工業の主張
シーシーアイ株式会社(以下「シーシーアイ」という。)は,日本工業規格に沿ったVU管,VP管等に防音材を被せて排水音を低減する防音材一体型のパイプや継手を製造販売しているが,被審人積水化学工業は,シーシーアイに対し,その原管となるVU管,VP管等の塩化ビニル管等を販売している。被審人積水化学工業は,そのエンドユーザーが積水ハウスであることに鑑み,市価とは異なる特別な販売価格を設定するなどしており,本件違反行為との間に連動性はない。
したがって,シーシーアイ向け販売品は,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 当該商品該当性
a シーシーアイ向け販売品は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人積水化学工業は,シーシーアイ向け販売品が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手であることを争っていない。したがって,シーシーアイ向け販売品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
b 特段の事情の有無
被審人積水化学工業は,シーシーアイに対し,市価とは異なる特別な販売価格を設定していると主張するが,価格設定の状況については何ら証拠がない。また,被審人積水化学工業の上記主張は,特定の製品について,特定の取引先と価格交渉していたという主張にすぎないのであって,シーシーアイ向け販売品の価格が本件違反行為の影響を受けなかったことの根拠となるものではない。
したがって,シーシーアイ向け販売品が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,シーシーアイ向け販売品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
ス 積水ホームテクノ向け販売品(別表1の20番の商品)
(ア) 被審人積水化学工業の主張
被審人積水化学工業は,100パーセント子会社である積水ホームテクノ株式会社(以下「積水ホームテクノ」という。)との間で覚書を締結し,同社が三和鋼管株式会社(以下「三和鋼管」という。)を通じて被審人積水化学工業のバスユニット配管部品用の硬質塩化ビニル管を購入した場合,積水ホームテクノの購入した数量に応じて同社に価格調整金を支払っている。上記硬質塩化ビニル管は,被審人積水化学工業から三和鋼管を経由して積水ホームテクノに販売されているが,三和鋼管は物流機能を利用するために介在させているにすぎず,取引の実態としては,被審人積水化学工業から積水ホームテクノへの直接の販売と同視できるものであり,100パーセント子会社への部材の供給である。なお,価格調整金を考慮した実質的な販売価格は通常の取引先に比べて大幅に割安に設定されていた。このように,被審人積水化学工業と積水ホームテクノとの間の覚書に基づく硬質塩化ビニル管の取引については,一般の塩化ビニル管の値上げに伴って自動的に値上げされる関係にはなく,本件違反行為に基づく価格変動と連動していない。また,積水ホームテクノは,被審人積水化学工業の住宅設備機器の製造販売部門を含む複数の同種部門が分社化されて法人となり,被審人積水化学工業の100パーセント子会社となったものであり,このような積水ホームテクノの沿革,被審人積水化学工業と積水ホームテクノとの間の資本関係,上記覚書の存在等からして,積水ホームテクノが被審人積水化学工業と競合するメーカーから商品を購入することは実際上あり得ないのであるから,積水ホームテクノ向けの販売品について競争が生じる余地はなかった。
したがって,積水ホームテクノ向け販売品は,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 認定事実
被審人積水化学工業は,積水ホームテクノとの間で覚書を締結し,積水ホームテクノが三和鋼管から購入する硬質塩化ビニル管のうち別途指定する製品について市価とは異なる販売価格を指定した上で,これと積水ホームテクノの実際の購入価格との差額を購入数量に応じて毎月価格調整金として積水ホームテクノに支払うこととしていた。
上記覚書の対象商品は,被審人積水化学工業がそれに必要な塩化ビニル管等を三和鋼管に販売し,同社がこれを加工した上で積水ホームテクノに販売していた。
(審A第18号証ないし第21号証,第27号証。三和鋼管が被審人積水化学工業から購入した塩化ビニル管を加工した上で積水ホームテクノに販売していたことは争いがない。)
(ウ) 当該商品該当性
a 積水ホームテクノ向け販売品は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人積水化学工業は,積水ホームテクノ向け販売品が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手であることを争っていない。したがって,積水ホームテクノ向け販売品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
b 特段の事情の有無
被審人積水化学工業は,積水ホームテクノ向け販売品の取引に三和鋼管を介在させているのは,三和鋼管の物流を利用するためであるからにすぎず,取引の実態としては,被審人積水化学工業から積水ホームテクノへの直接の販売と同視できると主張するが,前記覚書の対象商品は,商流においても物流においても被審人積水化学工業から三和鋼管へ,三和鋼管から積水ホームテクノへと移転しており,しかも,三和鋼管は,被審人積水化学工業から購入した塩化ビニル管を加工した上で積水ホームテクノに販売しているのであるから,取引の実態が被審人積水化学工業から積水ホームテクノへの直接の販売と同視できるものであったということはできない。
また,被審人積水化学工業が前記覚書の対象商品の価格を決定することは,結局のところ,被審人積水化学工業から積水ホームテクノに対して支払われる価格調整金の水準に係る事情にすぎず,積水ホームテクノ向け販売品の販売価格と本件違反行為による価格変動との連動性を否定する根拠にはならない。むしろ,被審人積水化学工業の従業員は,その陳述書(審A第27号証)において,「製品について値上げがなされると,当社から三和鋼管への販売価格も値上がりしていましたが,当社の支払う販売奨励金の額は変動しませんでしたので,積水ホームテクノが三和鋼管から購入する価格は一定のことが多かったようです。」と,被審人積水化学工業の製品価格が値上げされると,同被審人が三和鋼管に販売する商品の販売価格も値上げしていたことを認める陳述をしているところである。
したがって,積水ホームテクノ向け販売品が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,積水ホームテクノ向け販売品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
(エ) 価格調整金は割戻金に該当するか
ところで,被審人積水化学工業は,積水ホームテクノが三和鋼管からバスユニット配管部品用の硬質塩化ビニル管を購入するようにしていたのは,販売店の物流機能を利用するためにすぎず,実態としては被審人積水化学工業から積水ホームテクノへの直接の販売と同視できるものであるから,別表1の29番の価格調整金は,実質的には独占禁止法施行令第5条第1項第3号にいう割戻金に該当すると主張する。
しかし,同号に定める「割戻金」が課徴金の算定に当たり控除されるのは,「割戻金」が対価そのものの修正ないしこれに準じるものと評価できるからであり,そのような対価の修正と評価できるのは,直接の販売先に対して支払われたものに限られるのであって,再販売先などの間接の相手方に対するものは対象とならない。
本件において,積水ホームテクノ向け販売品は,商流においても物流においても被審人積水化学工業から三和鋼管へ,三和鋼管から積水ホームテクノへと移転しており,また,積水ハウス向け販売の場合と同様に,被審人積水化学工業の会計上も三和鋼管に対する売上額として処理されていたと推認されるから,被審人積水化学工業の売上げは三和鋼管に対する売上げとみるべきであり,積水ホームテクノへ支払われた価格調整金は,課徴金算定の対象となった売上額の割戻金とは認められないから,独占禁止法施行令第5条第1項第3号に定める「割戻金」に該当せず,課徴金算定の対象となる売上額から控除されるべきではない。
したがって,被審人積水化学工業の上記主張は採用できない。
セ 給排水システム事業部以外が販売した塩化ビニル管等(別表1の23番及び24番の商品)
(ア) 被審人積水化学工業の主張
被審人積水化学工業では,給排水システム事業部だけでなく建材事業部においても他の商品に付随して一般の塩化ビニル管等を販売することがあるが,その販売価格は建材事業部が独自の利益計算のもとに決定しており,また,給排水システム事業部と建材事業部とでは需用者も価格決定方法も異なり,さらに,給排水システム事業部の指揮命令系統は建材事業部に及ばないため,仮に給排水システム事業部において塩化ビニル管等の値上げを行うこととしても,それに従うよう建材事業部に指示することはできないから,給排水システム事業部以外が販売した塩化ビニル管等については本件違反行為に基づく価格変動との間に連動性がない。
したがって,給排水システム事業部以外が販売した塩化ビニル管等は,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるから,当該商品には該当しない。
(イ) 当該商品該当性
a 給排水システム事業部以外が販売した塩化ビニル管等は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人積水化学工業の主張は,給排水システム事業部以外の部門が販売した塩化ビニル管等についてのものであるから,その製品が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属することは明らかである。
b 特段の事情の有無
被審人積水化学工業は,販売先や対象商品を限定せず,かつ,特定の事業部門としてではなく「積水化学工業株式会社」として値上げを打ち出しており(査第43号証〔資料3,同8,同12及び同15〕),また,第1次値上げと同時期である平成16年4月1日付けで被審人積水化学工業のプラント資材事業部長より発出されたプラント管材製品の値上げに係る社内向け文書には,「AW群で販売している塩ビパイプ,継手についても給排水システム事業部指示のとおり値上げ実施を徹底のこと」と記載されており(査第109号証),給排水システム事業部が他事業部に対して塩化ビニル管等の値上げを指示していたことが認められるから,給排水システム事業部以外の事業部が販売する塩化ビニル管等については本件違反行為に基づく価格変動との間に連動性はないということはできない。
したがって,給排水システム事業部以外が販売した塩化ビニル管等が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,給排水システム事業部以外が販売した塩化ビニル管等は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
⑸ 被審人三菱樹脂が当該商品に該当しないと主張する各商品について
ア コップスシステム用パイプ及びコップスシステム用継手(別表2の3番及び4番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
コップスシステム用パイプ及びコップスシステム用継手(以下「コップスシステム用パイプ・同継手」という。)は,被審人ら及び株式会社パディ研究所(以下「パディ研究所」という。)が開発した製品であり,水田に給水するためのパイプラインとして使用されるものであるが,これは一体のシステムとして販売されており,一般の農業分野において単体で販売されている塩化ビニル管等とは販売方法及び価格設定方法が全く異なる。したがって,コップスシステム用パイプ・同継手は,一般的に流通することのない特殊な商品であり,「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
また,コップスシステム用パイプ・同継手の売上げの中に含まれているボックスユニットは,被審人三菱樹脂の社内においてコップスシステム用継手として区分されていたが,これは,ポリプロピレンを原料とする商品であるし,その形状,機能等からして継手ではないから,コップスシステム用継手は,この点からも,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮にコップスシステム用パイプ・同継手が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,被審人三菱樹脂はパディ研究所に対してコップスシステムの加工委託を行い,その原材料として塩化ビニル管等を有償支給し(被審人三菱樹脂はその対価を経理上売上げとしている。),有償支給の際の販売金額に加工委託料を上乗せして買い戻しており,経済的には,パディ研究所に対する販売金額と買戻し金額の差額をパディ研究所に加工委託手数料として支払っているにすぎないから,パディ研究所に対する売上げのうち被審人三菱樹脂が買い戻している分については,本件違反行為の相互拘束を受けていない。
(イ) 認定事実
a コップスシステムは,水田における水位管理のための装置であり,主にコップスユニットという給排水装置と個々のコップスユニットをつなぐパイプライン(用水パイプライン,排水パイプライン)を組み合わせ構築されている。
コップスユニットは,ユニット用ボックス,排水接続管・用水接続管,用水弁,水位調整管等から構成されているが,ユニット用ボックスはポリプロピレン製であり,排水接続管・用水接続管は塩化ビニル管(VP管,VU管)及び塩化ビニル管継手(DV継手)である。また,パイプライン(用水パイプライン,排水パイプライン)も塩化ビニル管である。
被審人三菱樹脂は,コップスシステムの注文を受けると,そのうちコップスユニットの製造をパディ研究所へ委託し,その原材料であるコップスユニット用ボックス,塩化ビニル管等(VP管,VU管及びDV継手)及び接着剤を同社に有償で供給していた。そして,コップスユニットが完成すると,パディ研究所からそれを購入していた。
なお,被審人三菱樹脂がパディ研究所に有償で供給していたコップスユニットの原材料は,同社が他社から製造委託を受けたユニット設備の原材料としても用いられていたため,被審人三菱樹脂の経理上は売上額として処理されていた。
そして,被審人三菱樹脂は,コップスシステムの注文者に対し,自ら製造したパイプライン(用水パイプライン,排水パイプライン)とパディ研究所から購入したコップスユニットをコップスシステムとして販売していた。
(審B第1号証ないし第3号証,第16号証ないし第18号証,第30号証,第41号証,第43号証)
b ところで,被審人三菱樹脂は,公正取引委員会に対し,本件実行期間中の売上額として「コップスシステム用パイプ」及び「コップスシステム用継手」の売上額を含めて報告している(争いがない。)。
このうち,「コップスシステム用パイプ」は,被審人三菱樹脂がコップスシステムの需要者に対して販売したパイプラインの売上額である(審B第43号証)。
他方,「コップスシステム用継手」については,被審人三菱樹脂がパディ研究所に対して有償支給したコップスユニット用ボックスの売上額であるのか,被審人三菱樹脂がコップスシステムの需要者に対して販売したコップスユニットの売上額であるのか証拠上明らかでない(コップスシステムに関しては,審B第30号証,第41号証,第43号証の各陳述書が順次提出されているが,審B第30号証の説明が一部不正確であるとして最後に提出された審B第43号証には,「『コップスシステム』の販売成果は,当社内の売上管理上の処理としては,コップスユニットはコップスシステム用継手として,パイプラインはコップスシステム用パイプとして,それぞれ計上されております。」と,コップスシステムの需用者に対して販売されたコップスシステムのうち完成されたコップスユニットの売上額がコップスシステム用継手として管理されていたかのような記載がある一方で,「パディ研究所に対する有償支給を売上額として計上していた時期の当社内の売上管理上の処理としては,ユニット用ボックスはコップスシステム用継手として,塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手はVP管・VU管・DV継手として,それぞれ計上されておりました。」と,被審人三菱樹脂がパディ研究所に対して有償支給したコップスユニットの部品としてのユニット用ボックスの売上額がコップスシステム用継手として管理されていたかのような記載もあり,証拠上,そのいずれであるか明らかでない。なお,被審人三菱樹脂も,コップスシステム用継手について,コップスシステムの需用者に対して販売される完成品としてのコップスユニットであることを前提に主張する場合と,パディ研究所にコップスユニットの部品として有償支給されるユニット用ボックスであることを前提に主張する場合とがあり,コップスシステム用継手の内容が統一されていない。)。
(ウ) 当該商品該当性
a コップスシステム用パイプ・同継手は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
コップスシステム用パイプは,コップスシステムのうちのパイプラインの部分であるから,塩化ビニル管に当たる。したがって,コップスシステム用パイプは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
他方,コップスシステム用継手は,前記(イ)bのとおり,コップスシステムの需用者に対して販売される完成品としてのコップスユニットをいうのか,パディ研究所にコップスユニットの部品として有償支給されるユニット用ボックスをいうのか証拠上明らかでないが,仮に後者であるとすれば,ユニット用ボックスはポリプロピレン製であるし,継手でもないから,塩化ビニル管継手に当たらないし,仮に前者であるとしても,完成品としてのコップスユニットは,その形状等からみて継手ではないから,塩化ビニル管継手に当たらない。したがって,コップスシステム用継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
なお,コップスシステムはシステムとして販売されているが,コップスシステム用パイプ(すなわちパイプライン)は,コップスユニットと組み合わせる前は独立した存在であり,被審人三菱樹脂も経理処理上コップスシステム用パイプの売上額を独立して管理していたものであり,本件合意に従ってコップスシステム用パイプ部分の値上げを図ることは可能であったから,コップスシステム用パイプを本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと解さなければならない理由はない。
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,同被審人がパディ研究所に対して有償支給した塩化ビニル管等のうち買い戻している分は本件違反行為の相互拘束を受けていないと主張するが,コップスシステム用パイプ(すなわちパイプライン)はそれに該当しない(審B第43号証)。
そして,他にコップスシステム用パイプが本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情は認められない。
c 小括
以上のとおり,コップシステム用パイプは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。他方,コップシステム用継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないから,当該商品に該当しない。
イ タイカパイプ用原管及びタイカパイプ用継手(別表2の5番及び6番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
被審人三菱樹脂は,耐火二層管(消防法〔昭和23年法律第186号〕による防火区画貫通に適合するように塩化ビニル管等の外面を繊維モルタルで被覆して耐火性能を持たせたパイプ)のメーカーである株式会社エーアンドエーマテリアル(以下「エーアンドエーマテリアル」という。)に対し,その製造販売する耐火二層管(タイカパイプ)の加工用部材として塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手(タイカパイプ用原管及びタイカパイプ用継手。以下「タイカパイプ用原管・同継手」という。)を販売しているが,それは,同社が指定する特殊な長さであり,一般に流通する塩化ビニル管等とは仕様も価格設定も異なっている。また,エーアンドエーマテリアルが塩化ビニル管継手を耐火二層管継手に加工する際に使用する成型機は被審人三菱樹脂の塩化ビニル管継手の規格をベースに製造されているから,エーアンドエーマテリアルは,被審人三菱樹脂以外のメーカーから塩化ビニル管継手を購入して耐火二層管継手を加工することが事実上できない。したがって,タイカパイプ用原管・同継手は,「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に,タイカパイプ用原管・同継手が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,被審人三菱樹脂は,タイカパイプ用原管・同継手の販売価格について,原料である塩化ビニル樹脂の値上がりがあった場合にその値上がり分だけの値上げを打ち出していたのであり,これは前記東京高等裁判所平成22年11月26日判決におけるナフサリンク方式に相当するものであり,一般の塩化ビニル管等の値上げとの連動性はないから,タイカパイプ用原管・同継手が本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(イ) 認定事実
耐火二層管及び耐火二層管継手は,塩化ビニル管等に耐火性能を持たせた管及び継手であり,その原材料となる塩化ビニル管等は,VU管,VP管及びそれらの継手であり,汎用品と比べて管の長さが短い。
耐火二層管及び耐火二層管継手は,フネンアクロス,エーアンドエーマテリアルなど数社が製造している。
(査第107号証)
(ウ) 当該商品該当性
a タイカパイプ用原管・同継手は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,タイカパイプ用原管・同継手が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手であることを争っていない。したがって,タイカパイプ用原管・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,タイカパイプ用原管・同継手は「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,タイカパイプ用原管・同継手は仕様が異なる,エーアンドエーマテリアルは,その成型機の関係で,被審人三菱樹脂以外のメーカーから塩化ビニル管継手を購入して耐火二層管継手を加工することが事実上できないと主張するが,前者については汎用品と比べて管の長さが短いという程度のことであるし,後者についてはこれを認めるに足りる証拠がなく,また,仮に被審人三菱樹脂の主張するとおりであったとしても,エーアンドエーマテリアルが成型機を変更することによって他の塩ビ管メーカーの塩化ビニル管等に対応することは可能であるから,競争がないとはいえない。
また,被審人三菱樹脂は,タイカパイプ用原管・同継手の販売価格について,原料である塩化ビニル樹脂の値上がりがあった場合にその値上がり分だけの値上げを打ち出していたのであり,これは前記東京高等裁判所平成22年11月26日判決におけるナフサリンク方式に相当すると主張するが,被審人三菱樹脂の上記主張は,実際の値上げの結果を述べるものであって,被審人三菱樹脂とエーアンドエーマテリアルとの間であらかじめ契約により原料価格に連動して一定の算式の下に自動的にタイカパイプ用原管・同継手の販売価格が設定される方式によることを合意していたことの主張とは解されないし,仮にそのような主張であったとしても,被審人三菱樹脂とエーアンドエーマテリアルがそのような契約を締結していたことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,タイカパイプ用原管・同継手が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,タイカパイプ用原管・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
ウ 遮音配水管用原管及び遮音配水管用継手(別表2の7番及び8番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
被審人三菱樹脂は,遮音配水管(流水音が外に漏れるのを防止するために外面を特殊な防音のための部材で被覆した塩化ビニル管等)のメーカーであるシーシーアイに対し,遮音配水管用の加工部材としての塩化ビニル管等(遮音配水管用原管及び遮音配水管用継手。以下「遮音配水管用原管・同継手」という。)を販売しているが,それは同社が指定する特殊な長さのものであり,一般の塩化ビニル管等とは仕様も価格設定も異なる特殊品であって,一般に流通することはないから,遮音配水管用原管・同継手は,「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさず,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に,遮音配水管用原管・同継手が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,被審人三菱樹脂は,遮音配水管用原管・同継手の販売価格について,原料である塩化ビニル樹脂の値上がりがあった場合にその値上がり分だけの値上げを打ち出していたのであり,これは前記東京高等裁判所平成22年11月26日判決におけるナフサリンク方式に相当するものであり,一般の塩化ビニル管等の値上げとの連動性はないから,遮音配水管用原管・同継手が本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(イ) 当該商品該当性
a 遮音配水管用原管・同継手は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,遮音配水管用原管・同継手が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手であることを争っていない。したがって,遮音配水管用原管・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,遮音配水管用原管・同継手は「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,遮音配水管用原管・同継手は特殊品であると主張するが,一般の塩化ビニル管等とは管の長さが違うだけであるし,前記(4)シのとおり,被審人積水化学工業もシーシーアイに対して同様の塩化ビニル管等を販売しているのであるから,競争がないわけではない。
また,被審人三菱樹脂は,遮音配水管用原管・同継手の販売価格について,原料である塩化ビニル樹脂の値上がりがあった場合にその値上がり分だけの値上げを打ち出していたのであり,これは前記東京高等裁判所平成22年11月26日判決におけるナフサリンク方式に相当すると主張するが,被審人三菱樹脂の上記主張は,実際の値上げの結果を述べるものであって,被審人三菱樹脂とシーシーアイとの間であらかじめ契約により原料価格に連動して一定の算式の下に自動的に遮音配水管用原管・同継手の販売価格が設定される方式によることを合意していたことの主張とは解されないし,仮にそのような主張であったとしても,被審人三菱樹脂とシーシーアイがそのような契約を締結していたことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,遮音配水管用原管・同継手が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,遮音配水管用原管・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
エ 水栓柱用パイプ並びに水栓柱用原管及び水栓柱用継手(別表2の9番ないし11番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
被審人三菱樹脂は,水栓柱(住宅の外回りで水道の蛇口を立ち上げるための支柱となる製品であり,その外面は御影石製,ステンレス製,塩化ビニル製等がある。)のメーカーである有限会社アカシ(以下「アカシ」という。)に対し,水栓柱用の加工部材として被審人三菱樹脂独自規格の特殊な四角い塩化ビニル管を販売し,また,水栓柱内部に使用する配管部材として,塩化ビニル管等を販売しているが,他方で,被審人三菱樹脂は,上記の塩化ビニル管等を使用して製造された水栓柱をアカシから購入し,「三菱樹脂の水栓柱」として販売している。このように,水栓柱用角パイプ並びに水栓柱用原管及び水栓柱用継手(以下「水栓柱用パイプ等」という。)は,一般に流通することはない特殊な商品であるから,「一般的な流通を経ているもの」という要件を満たさず,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に水栓柱用パイプ等が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,被審人三菱樹脂は,水栓柱用パイプ等の販売価格について,原料である塩化ビニル樹脂の値上がりがあった場合にその値上がり分だけの値上げを打ち出していたのであり,これは前記東京高等裁判所平成22年11月26日判決におけるナフサリンク方式に相当するものであり,一般の塩化ビニル管等の値上げとの連動性はないから,水栓柱用パイプ等が本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(イ) 認定事実
水栓柱用パイプ等は,住宅の外周りで水道の蛇口を立ち上げるための支柱となる水栓柱の加工部材である。
被審人三菱樹脂は,水栓柱メーカーであるアカシに対して,直接又は販売店を通じて水栓柱用パイプ等を加工部材として販売している。このうち水栓柱用原管及び水栓柱用継手(以下「水栓柱用原管・同継手」という。)は,VPW(VP管のうち水道用のもの),HI-VPW(耐衝撃性塩化ビニル管であるHI-VP管のうち水道のもの)又は塩化ビニルライニング鋼管及びその継手を素材としたものである。
そして,被審人三菱樹脂は,同社が販売した水栓柱用パイプ等を使用して製造された水栓柱をアカシから購入し,他に販売している。
(審B第4号証,第8号証,第19号証,第30号証)
(ウ) 当該商品該当性
a 水栓柱用角パイプ及び水栓柱用原管・同継手は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
水栓柱用角パイプの中には塩化ビニル管でないものもある(審B第8号証,第30号証)が,被審人三菱樹脂は,本件で売上額を報告した水栓柱用角パイプが塩化ビニル管であることを争っていない。したがって,本件で問題となっている水栓柱用角パイプは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
他方,被審人三菱樹脂が販売した水栓柱用原管・同継手の中には,前記(イ)のとおり,塩化ビニルライニング鋼管及びその継手を原材料としたものが含まれているところ,審査官は,塩化ビニルライニング鋼管は塩化ビニル管を構成部材として製造された鋼管であり,塩化ビニル管には含まれないことを認めているから,塩化ビニルライニング鋼管は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。また,塩化ビニルライニング鋼管継手は塩化ビニルライニング鋼管と同様にして製造され,同様の特性を有することからすれば,塩化ビニルライニング鋼管と同様に,塩化ビニルライニング鋼管用の継手も塩化ビニル管継手には含まれないと認められる。したがって,上記の塩化ビニルライニング鋼管及びその継手は当該商品に該当しないというべきである。
ところで,被審人三菱樹脂の水栓柱用原管・同継手の売上額のうち塩化ビニルライニング鋼管及びその継手とそれ以外の商品の売上額の内訳は不明である。そうすると,仮に,水栓柱用原管・同継手のうち塩化ビニルライニング鋼管及びその継手以外の商品が当該商品に該当したとしても,その売上額がいくらとなるかの立証はないことになる。
したがって,水栓柱用原管・同継手の全部を課徴金算定の基礎となる当該商品から除くべきである。
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,水栓柱用角パイプ(及び水栓柱用原管・同継手)の販売価格について,原料である塩化ビニル樹脂の値上がりがあった場合にその値上がり分だけの値上げを打ち出していたのであり,これは前記東京高等裁判所平成22年11月26日判決におけるナフサリンク方式に相当すると主張するが,被審人三菱樹脂の上記主張は,実際の値上げの結果を述べるものであって,被審人三菱樹脂とアカシとの間であらかじめ契約により原料価格に連動して一定の算式の下に自動的に水栓柱用角パイプ及び水栓柱用原管・同継手の販売価格が設定される方式によることを合意していたことの主張とは解されないし,仮にそのような主張であったとしても,被審人三菱樹脂とアカシがそのような契約を締結していたことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,本件で売上額を報告した水栓柱用角パイプが本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
オ 不凍水栓用パイプ(別表2の12番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
被審人三菱樹脂は,不凍水栓(寒冷地における水栓柱として冬季に凍らない工夫がされた製品)のメーカーである株式会社竹村製作所(以下「竹村製作所」という。)に対し,不凍水栓の加工部材として竹村製作所が指定するベージュ色の特殊な塩化ビニル管(不凍水栓用パイプ)を販売しているが,それは一般に流通することはなく,一般の塩化ビニル管等とは仕様も価格設定も異なるから,不凍水栓用パイプは,「一般的な流通を経ているもの」という要件を満たさず,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に,不凍水栓用パイプが本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,被審人三菱樹脂は,平成18年4月から竹村製作所と取引を開始したばかりであったため,同社に対して販売していた不凍水栓用パイプを第4次値上げの対象としておらず,全く値上げ活動をしていないのであって,実際,不凍水栓用パイプの販売価格は取引開始当初から全く変わっていないから,不凍水栓用パイプが本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(イ) 認定事実
不凍水栓用パイプは,寒冷地における水栓柱として冬季に凍結しない工夫がされた不凍水栓用の加工部材として販売される塩化ビニル管である。
被審人三菱樹脂は,平成18年4月から,代理店である小松物産株式会社を通じて不凍水栓メーカーである竹村製作所に対し,不凍水栓用パイプを販売しているが,その不凍水栓用パイプは,日本工業規格の「K6741 硬質塩化ビニル管」に規定される硬質塩化ビニル管「VP40」に準拠するものであり,納入仕様書により色,長さ及び梱包仕様が決められている。
(審B第20号証,第30号証)
(ウ) 当該商品該当性
a 不凍水栓用パイプは本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,不凍水栓用パイプが塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管であることを争っていない。したがって,不凍水栓用パイプは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,不凍水栓用パイプは「一般的な流通を経ているもの」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,竹村製作所とは平成18年4月から取引を開始したばかりであったため,竹村製作所に販売している不凍水栓用パイプを第4次値上げの対象としておらず,同社に対して全く値上げ活動を行っていないのであって,実際,不凍水栓用パイプの販売価格は取引開始当初から全く変わっていないから,この点を見る限りでは,不凍水栓用パイプが本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があると主張する。
しかし,被審人三菱樹脂が上記主張事実の証拠として提出する審B第30号証(被審人三菱樹脂の従業員の陳述書)によれば,被審人三菱樹脂は平成18年4月に取引を開始したばかりであるので,第4次値上げに伴う値上げを行うと失注することを懸念して値上げの申入れをしなかったことがうかがわれるのであって,被審人三菱樹脂は,そのような懸念から値上げの申入れをしなかったにすぎないと考えられるから,不凍水栓用パイプが本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,不凍水栓用パイプは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
カ ユニットバス裏配管用の塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手(別表2の13番及び14番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
被審人三菱樹脂は,TOTO株式会社(以下「TOTO」という。)及び株式会社日立ハウステック(現商号・株式会社ハウステック)に対してユニットバス裏配管用の塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手(以下「ユニットバス用配管部材」という。)を販売しているが,TOTOに販売しているベンド(塩化ビニル管を熱加工して指定の角度に曲げた継手)は,TOTOの指定規格品であり,一般の塩化ビニル管とは仕様も価格設定も大きく異なる特殊品であり,また,その他TOTO及び株式会社日立ハウステックに販売しているユニットバス用配管部材は,いずれも一般に流通することはなく,値上げの方法,内容,結果のいずれも一般の塩化ビニル管等の値上げとは異なっている。このように,ユニットバス用配管部材は,一般に流通することのない特殊な商品であるから,「一般的な流通を経ているもの」という要件を満たさず,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
(イ) 当該商品該当性
a ユニットバス用配管部材は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,ユニットバス用配管部材が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手であることを争っていない。したがって,ユニットバス用配管部材は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,ユニットバス用配管部材は「一般的な流通を経ているもの」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,ユニットバス用配管部材が一般に流通することのない特殊な商品であると主張するが,何らこれを立証する証拠はなく,また,仮に被審人三菱樹脂の主張を前提としたとしても,他の事業者が参入できない事情もうかがえないから,競争がないとはいえない。
したがって,ユニットバス用配管部材が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,ユニットバス用配管部材は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
キ ミズトール用パイプ(別表2の15番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
被審人三菱樹脂は,朝日産業株式会社を通じて株式会社東建ジオテック(以下「東建ジオテック」という。)に対し,ミズトールパイプの加工部材として塩化ビニル管(ミズトール用パイプ)を販売しているが,ミズトール用パイプは,東建ジオテックが指定する特殊な長さであり,一般に流通することなく,他社との競争が存在していない製品であって,一般の塩化ビニル管とは仕様も価格設定も異なる特殊品である。このように,ミズトール用パイプは,一般に流通することのない特殊な商品であるから,「一般的な流通を経ているもの」という要件を満たさず,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に,ミズトール用パイプが本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,上記のとおり,ミズトール用パイプは被審人三菱樹脂だけが製造販売している独自商品であるから,ミズトール用パイプが本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(イ) 当該商品該当性
a ミズトール用パイプは本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,ミズトール用パイプが塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管であることを争っていない。したがって,ミズトール用パイプは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,ミズトール用パイプは「一般的な流通を経ているもの」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,ミズトール用パイプが一般に流通しない特殊品であると主張するが,何らこれを立証する証拠はなく,また,仮にミズトール用パイプが特殊品であるとしても,他の事業者が参入できない事情もうかがえないから,競争がないとはいえない。
したがって,ミズトール用パイプが本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,ミズトール用パイプは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
ク OEMに準じて販売した製品(別表2の16番及び17番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
被審人三菱樹脂は,競合他社に対し,在庫や納期,製造ロット等の理由により,相手先ブランドでなく自社ブランドのまま塩化ビニル管等を融通する場合がある。これは,OEM供給ではない(なお,本件課徴金納付命令において,OEM供給に係る商品の売上額は課徴金算定の基礎となる売上額に含まれていない。)が,それに準じて販売するものであって(以下,このような製品を便宜的に「準OEM供給製品」という。),①準OEM供給製品においては,最初から決まった販売価格があるわけではなく,その都度見積りをして価格交渉をすることが多いから,汎用品である塩化ビニル管等の値上げを行っても,それが当然に準OEM供給製品の販売価格に及ぶものではないこと,②準OEM供給製品は,競合他社に対し販売している商品であるから,本件違反行為が販売業者又は需要者に対して塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げる旨の申入れを行うなどして塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げていたという審査官の主張を前提とする以上,本件違反行為の拘束力が及んでいないことは明らかであること,③準OEM供給製品は,違反行為者(及びその協力者)との間で相互に融通しあっていた商品となるが,そのようなカルテル当事者(及びその協力者)間で売買する商品をカルテルの対象外とすることはカルテル当事者間の当然の共通認識であることからすると,準OEM供給製品は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に準OEM供給製品が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,OEM供給したものとの違いは相手先ブランドで供給するか自社ブランドで供給するかだけであり,それ以外の取引条件は異ならないから,準OEM供給製品が本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(イ) 当該商品該当性
a 準OEM供給製品は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,準OEM供給製品が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手であることを争っていない。したがって,準OEM供給製品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,準OEM供給製品に本件違反行為の拘束力が及んでいない理由として前記(ア)①ないし③の点を主張する。
しかし,そもそも,OEM供給に係る製品は製造委託契約に基づいて供給されるのに対し,準OEM供給製品は売買契約によって供給されるものであって,その取引の形態が異なっているから,それらを同列に考えることはできない。そして,被審人三菱樹脂が主張する前記(ア)①の理由については,準OEM供給製品がその都度見積りをして価格交渉をすることが多いとしても,それによって上記商品に本件違反行為の拘束力が及んでいることが否定される理由はない。次に,被審人三菱樹脂が主張する前記(ア)②の理由については,本件合意は「塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げる旨の合意」(本件排除措置命令書「理由」第2参照)であって,販売先によって合意の対象を限定しているものではないから,同じく理由がない。さらに,被審人三菱樹脂が主張する前記(ア)③の理由については,これをうかがわせる証拠はない。
したがって,準OEM供給製品が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,準OEM供給製品は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
ケ ダクト管及びダクト継手(別表2の18番及び29番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
被審人三菱樹脂は,ダクト管及びダクト継手(建物の排気に使用するための塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手。以下「ダクト管・同継手」という。)を独自に開発した。ダクト管・同継手は,塩化ビニル管・継手協会の会員メーカーの中では被審人三菱樹脂だけが製造販売しており(塩化ビニル管・継手協会の会員メーカー以外では東都積水株式会社〔以下「東都積水」という。〕が製造販売している。),販売価格も一般の塩化ビニル管と比べて高く設定され,限られた顧客にだけに販売される特殊品であって,一般的に流通することはないから,ダクト管・同継手は,「一般的な流通を経ているもの」という要件を満たさず,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。なお,審査官が作成した塩化ビニル管等の販売シェアに関する報告書(査第90号証)の事業者名欄に東都積水が記載されていないから,審査官もダクト管・同継手が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに含まれないと理解していることは明らかである。
仮に,ダクト管・同継手が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,ダクト管・同継手は塩化ビニル管・継手協会の会員メーカーの中では被審人三菱樹脂だけが製造販売している独自製品であり,他社との競争がないから,ダクト管・同継手が本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(イ) 当該商品該当性
a ダクト管・同継手は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,ダクト管・同継手が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手であることを争っていない。したがって,ダクト管・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,ダクト管・同継手は「一般的な流通を経ているもの」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
また,査第90号証の事業者名欄に東都積水が記載されていないからといって,ダクト管・同継手が本件違反行為の対象商品の範ちゅうから除外される理由はない。
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,ダクト管・同継手を独自に開発した旨主張するものの,その特殊性を何ら具体的に明らかにしていないし,証拠もない。また,被審人三菱樹脂は,塩化ビニル管・継手協会の会員の中では同製品を製造販売しているのは被審人三菱樹脂だけであると主張するが,同協会の会員以外では東都積水が製造しているというのであるし,他の塩ビ管メーカーが製造販売できない事情もうかがわれないから,競争がないとはいえない。
したがって,ダクト管・同継手が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,ダクト管・同継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
コ YR管及びYS管(特殊販売先のリサイクル管及び特殊管)(別表2の19番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
YR管及びYS管は,薬剤注入専用の特殊なパイプ(YR管は特殊な配合をしたリサイクル管であり,YS管は土中で壊れやすくするために特殊な配合をした管である。)として被審人三菱樹脂が独自に開発し,特定の顧客に対してだけ販売している塩化ビニル管であって,一般に流通することはなく,他社との競争が存在せず,一般の塩化ビニル管とは仕様も価格設定も異なる特殊品である。このようにYR管及びYS管は,一般的に流通することのない特殊な商品であるから,「一般的な流通を経ているもの」という要件を満たさず,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に,YR管及びYS管が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,被審人三菱樹脂は顧客に対して値上げ活動を行ったことはなく,第1次値上げから第4次値上げのいずれにおいても,被審人三菱樹脂の社内の営業会議等の資料にも値上げの対象商品としてYR管及びYS管の記載はなく,実際,YR管の販売価格は平成16年以降全く変わらず,YS管の販売価格は平成17年9月から値下げしているから,YR管及びYS管が本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(イ) 認定事実
YR管及びYS管は,薬剤注入専用のパイプであり,YR管はリサイクル原料を使用していることを特徴とする管であり,YS管は衝撃に対して割れやすいことを特徴とする管である。(審B第21号証)
(ウ) 当該商品該当性
a YR管及びYS管は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,YR管及びYS管が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管であることを争っていない。したがって,YR管及びYS管は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,YR管及びYS管は「一般的な流通を経ているもの」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b 特段の事情の有無
YR管は,リサイクル原料を使用していることを特徴とする管であるが,割れやすい特徴を有しておらず(審B第21号証),また,一般の塩化ビニル管も広範囲の耐薬品性に優れているとされているのである(査第106号証)から,一般の塩化ビニル管との競争も完全には否定できない。
また,YS管も,耐薬品性の観点から一般の塩化ビニル管との競争が完全には否定できないことはYR管と同様である。他方,YS管は,衝撃に対して割れやすいという点において一般の塩化ビニル管にない特徴を有すると思われるが,薬剤注入の用途に支障が生じないのであれば,その販売価格次第では需用者が一般の塩化ビニル管を選択する場合もあり得ると考えられるから,YS管が衝撃に対して割れやすいという特徴を有していることに着目しても,一般の塩化ビニル管との競争は完全には否定できない。
そして,他の塩ビ管メーカーがYR管及びYS管と同等又は類似のものを製造販売しているか否かも明らかでなく,また,他の事業者が参入できない事情もうかがえないから,結局は,YR管及びYS管について他社との競争がないとは認められない。
また,被審人三菱樹脂は,第1次値上げないし第4次値上げにおいて,対象を一切限定せずに値上げを行う旨を公表しているのである(査第43号証〔資料4,同9,同13及び同16〕)から,第1次値上げないし第4次値上げにおいて被審人三菱樹脂の社内資料に値上げ対象商品としてYR管及びYS管の記載がないとしても,また,実際に値上げをしていないとしても,直ちに本件違反行為の対象商品ではないということにはならない。
したがって,YR管及びYS管が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,YR管及びYS管は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
サ Qパイプ(別表2の20番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
Qパイプは,被審人三菱樹脂が応用地質株式会社(以下「応用地質」という。)向けに販売している地質調査用の特殊な塩化ビニル管(被審人三菱樹脂独自の規格)であり,一般に流通することはなく,他社との競争も存在しない製品であって,一般の塩化ビニル管とは仕様も価格設定も異なる特殊品であり,過去に値上げしたこともない。このように,Qパイプは,一般的に流通することがない特殊な商品であるから,「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさず,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に,Qパイプが本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,被審人三菱樹脂は応用地質に対して値上げ活動を行ったことはなく,第1次値上げから第4次値上げのいずれにおいても,被審人三菱樹脂の社内の営業会議等の資料にも値上げの対象商品としてQパイプの記載はなく,実際,Qパイプの販売価格は平成16年以降全く変わっていないし,Qパイプは被審人三菱樹脂だけが製造販売している独自製品であり,他社との競争がないから,Qパイプが本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(イ) 認定事実
Qパイプは,被審人三菱樹脂が製造し,旭日産業株式会社を通じて応用地質に販売している地質調査用のケーシングパイプである。Qパイプは,塩化ビニル管の内側に縦に4箇所の凹部を設け,この凹部をレール代わりとして滑車つきの測定器を下ろすことができるように作成されている。(審B第22号証の1ないし3)
(ウ) 当該商品該当性
a Qパイプは本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,Qパイプが塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管であることを争っていない。したがって,Qパイプは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,Qパイプは「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,Qパイプは,被審人三菱樹脂が独自に製造販売している特殊な管であると主張するが,他の塩ビ管メーカーがQパイプと同等又は類似のものを製造販売しているか否か明らかでなく,また,他の事業者が参入できない事情もうかがえないから,結局は,Qパイプについて他社との競争がないとは認められない。
また,被審人三菱樹脂は,第1次値上げないし第4次値上げにおいて,対象を一切限定せずに値上げを行う旨を公表しているのである(査第43号証〔資料4,同9,同13及び同16〕)から,第1次値上げないし第4次値上げにおいて被審人三菱樹脂の社内資料に値上げ対象商品としてQパイプの記載がないとしても,また,実際に値上げやその交渉を行ったことがないとしても,直ちに本件違反行為の対象商品ではないということにはならない。
したがって,Qパイプが本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,Qパイプは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
シ シュート管(別表2の21番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
シュート管は,塩化ビニル管を半割りした加工製品であり,コンクリート等を流す用途で使用されている。シュート管は,便宜上その名称に「管」という字が含まれているが,「管」とは気体や液体などの輸送に用いる中空の円筒を指すのであるから,シュート管は,塩化ビニル「管」に該当しない。また,シュート管は,一般的に流通することのない特殊な商品であるから,「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさず,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に,シュート管が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,シュート管は,受注生産が原則であり,原管加工賃がサイズ・ロットにより変わるため,販売価格はその都度見積りをして価格交渉の上で決定することが多く,一般の塩化ビニル管等の値上げを行っても,それが当然にシュート管の販売価格に及ぶものではないから,シュート管が本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(イ) 当該商品該当性
シュート管は,塩化ビニル管を半割りした加工製品である(争いがない。)ところ,シュート管は,その名称の中に「管」という字が含まれているが,中空の円筒ではないから,シュート管を塩化ビニル管ということには疑義がある。もちろん,シュート管は,塩化ビニル管継手でもない。したがって,シュート管が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとは認められないから,シュート管は当該商品に該当しない。
ス 消雪用原管(別表2の22番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
被審人三菱樹脂は,消雪管のメーカーである株式会社ミヤシゲ(以下「ミヤシゲ」という。)に対して消雪管用の加工部材として塩化ビニル管(消雪用原管)を販売しているが,その消雪用原管は,ミヤシゲから貸与された金型を使用して製造を請け負っている特殊な製品であり,一般に流通することはなく,一般の塩化ビニル管とは仕様も価格設定も異なるものである。このように,消雪用原管は,一般的に流通することのない特殊な商品であるから,「一般的な流通を経ているもの」という要件を満たさず,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
(イ) 当該商品該当性
a 消雪用原管は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,消雪用原管が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管であることを争っていない。したがって,消雪用原管は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,消雪用原管は「一般的な流通を経ているもの」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,消雪用原管は被審人三菱樹脂がミヤシゲから貸与された金型を使用して製造を請け負っている特殊な製品であると主張するが,何ら証拠はなく,また,仮に被審人三菱樹脂が主張する事実が認められるとしても,他の事業者もミヤシゲから金型の貸与を受ければ消雪用原管を製造販売することは可能なのであるから,競争が否定されるものではない。
また,被審人三菱樹脂は,消雪用原管は一般の塩化ビニル管とは価格設定が異なると主張するが,その具体的な内容も明らかでなく,証拠もない。
したがって,消雪用原管が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,消雪用原管は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
セ E管及びS管(別表2の23番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
E管及びS管(以下「E管・S管」という。)は,塩化ビニルライニング鋼管のメーカーに対して,その加工部材として販売される特殊な塩化ビニル管である。E管は,ライニング鋼管の内面被覆に使用されるものであり,熱を加えて膨張させることによって鋼管の内面に被覆させるため,製造段階でその外面に接着剤を塗布した特殊な管であって,S管は,ライニング鋼管の外面被覆に使用されるものであり,熱を加えて収縮させることによって鋼管の外面に被覆させるため,製造段階でその内面に接着剤を塗布した特殊な管であって,いずれも他社が販売していない被審人三菱樹脂独自の製品であり,重量当たり単価は一般の塩化ビニル管の約2倍となっている。このように,E管・S管は,特定のユーザー向けに製造販売されている製品であり,一般に流通することはなく,一般の塩化ビニル管とは仕様も価格設定も異なる特殊品であるから,「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさず,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に,E管・S管が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,次のとおり,本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
a 日建産業株式会社向け商品
被審人三菱樹脂は,日建産業株式会社(以下「日建産業」という。)に対し,原材料となるE管・S管を有償で支給して塩化ビニルライニング鋼管に加工してもらい,加工製品である塩化ビニルライニング鋼管の全てを買い戻しているところ,被審人三菱樹脂の日建産業に対するE管・S管の売上げは経理上売上げとなっているが,その実態は被審人三菱樹脂が販売金額に加工委託手数料を上乗せして買い戻しているものにほかならず,経済的には日建産業に対する販売金額と買戻し金額の差額を日建産業に対する加工委託手数料として支払っているにすぎない。
また,被審人三菱樹脂の日建産業に対するE管・S管の販売価格は,契約上,原料である塩化ビニル樹脂の値上げ分を有償支給価格にスライドして乗せることによって決定されるから,これは前記東京高等裁判所平成22年11月26日判決におけるナフサリンク方式に相当する。
したがって,日建産業向け商品については,本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
b JFEスチール株式会社向け商品
被審人三菱樹脂は,JFEスチール株式会社(旧商号・日本鋼管株式会社。以下「JFEスチール」という。)に対し,原材料となるE管・S管を有償で支給して塩化ビニルライニング鋼管に加工してもらい,加工製品である塩化ビニルライニング鋼管を買い戻しているところ,被審人三菱樹脂のJFEスチールに対するE管・S管の売上げのうち加工製品である塩化ビニルライニング鋼管として買い戻している分については,経理上売上げとなっているが,その実態は被審人三菱樹脂が販売金額に加工委託手数料を上乗せして買い戻しているものにほかならず,経済的にはJFEスチールに対する販売金額と買戻し金額の差額をJFEスチールに対する加工委託手数料として支払っているにすぎない。
また,被審人三菱樹脂のJFEスチールに対するE管・S管の販売価格は,契約上,原料である塩化ビニル樹脂の値上げ分を有償支給価格にスライドして乗せることによって決定されるから,これは前記東京高等裁判所平成22年11月26日判決におけるナフサリンク方式に相当する。
したがって,JFEスチール向け商品については,本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
c 菱琵テクノ株式会社向け商品
菱琵テクノ株式会社(旧商号・虎姫プラスチック株式会社。以下「菱琵テクノ」という。)は,被審人三菱樹脂の塩化ビニル管等の加工製品の製造部門として被審人三菱樹脂の全額出資により設立された会社であり,塩化ビニルライニング鋼管の原材料となるE管・S管の全てを専ら被審人三菱樹脂から支給により調達し,加工製品である塩化ビニルライニング鋼管の全てを被審人三菱樹脂に販売しているから,被審人三菱樹脂の菱琵テクノに対するE管・S管の販売は,同一企業内における加工部門への物資の移動と同視し得るものである。
したがって,菱琵テクノ向け商品については,本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
d 被審人積水化学工業向け商品
被審人三菱樹脂は被審人積水化学工業に対してE管・S管を販売しているが,それは本件違反行為の当事者間の売買であり,そのような商品を本件違反行為の対象外とすることは,その当事者間において当然の共通認識であった。なお,被審人積水化学工業は,被審人三菱樹脂から購入したE管・S管を更に硬質塩化ビニルライニング鋼管のメーカーである住友金属工業株式会社などに販売しているが,仮に,被審人積水化学工業のE管・S管の売上げをも課徴金の対象にしているとすれば,全く同一の商品について二重に課徴金を課していることになり不当な行政処分といわざるを得ない。
したがって,被審人積水化学工業向け商品については,本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(イ) 認定事実
被審人三菱樹脂は,日建産業,JFEスチール及び菱琵テクノに塩化ビニルライニング鋼管の製造を委託し,その原材料であるE管・S管を有償で供給していた(ただし,JFEスチールに対してはJFE商事鋼管管材株式会社を通じて供給していたものであり,また,被審人三菱樹脂が完成品を買い戻す分以外にも供給していた。)。被審人三菱樹脂は,その有償供給品の対価を経理上売上げとしていた。
また,被審人三菱樹脂は,被審人積水化学工業に対し,E管・S管を販売していた。
(審B第5号証ないし第7号証,第9号証の1及び2,第10号証ないし第13号証,第23号証ないし第30号証)
(ウ) 当該商品該当性
a E管・S管は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,E管・S管が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管であることを争っていない。したがって,E管・S管は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,E管・S管は「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b 特段の事情の有無
(a) 被審人三菱樹脂は,E管はライニング鋼管の内面被覆に使用される塩化ビニル管で,製造段階で塩化ビニル管の外面全体に接着剤を塗布した特殊な管であり,S管はライニング鋼管の外面被覆に使用される塩化ビニル管で,製造段階で塩化ビニル管の内面全体に接着剤を塗布した特殊な管であって,いずれも他社が販売していない被審人三菱樹脂独自のもので,特定のユーザー向けに製造販売されている製品であり,一般の塩化ビニル管とは仕様も価格設定の異なる特殊品であると主張するが,それを立証する証拠はなく,また,仮にそのような事実があったとしても,被審人三菱樹脂の主張によれば,ヴァンテックがその表面に接着剤が塗布されていないE管を製造販売しているということであるし,他の塩ビ管メーカーが参入できない事情もうかがえない。
そして,被審人三菱樹脂は,第1次値上げから第4次値上げにおいて,対象を一切限定せずに値上げを行う旨を公表し(査第43号証〔資料4,同9,同13及び同16〕),第3次値上げや第4次値上げの際の値上げ目標の一覧表にはE管・S管が挙げられていること(審B第52号証,第57号証)からすれば,E管・S管も値上げの対象であったことは明らかである。
(b) 被審人三菱樹脂は,同被審人が日建産業に対して支給しているE管・S管は,加工製品である塩化ビニルライニング鋼管として同被審人が全量を買い戻しており,また,同被審人がJFEスチールに対して支給しているE管・S管は,加工製品である塩化ビニルライニング鋼管として同被審人がその一部を買い戻しているから,同被審人の日建産業に対するE管・S管の売上げ及び同被審人のJFEスチールに対するE管・S管の売上げのうち買戻しに係る分は,経理上売上げという形式が立っているものの,その実態は同被審人が販売金額に加工委託手数料を上乗せして買い戻しているものにほかならず,経済的には日建産業及びJFEスチールに加工委託の手数料として支払っているにすぎないから,課徴金算定の基礎となる売上げには当たらないと主張する。
しかし,被審人三菱樹脂は,日建産業及びJFEスチールに対し,塩化ビニルライニング鋼管の原材料であるとはいえ,塩化ビニル管をあえて有償で供給しており,被審人三菱樹脂もその対価を経理処理上売上としていたのであるから,課徴金算定の基礎となる売上げであることが否定される理由はない。
(c) 被審人三菱樹脂は,同被審人の日建産業及びJFEスチールに対するE管・S管の販売価格は,契約上,原料である塩化ビニル樹脂の値上げ分を有償支給価格にスライドして乗せることによって決定されるから,これは前記東京高等裁判所平成22年 11月26日判決におけるナフサリンク方式に相当し,本件違反行為の拘束を受けるものではないと主張し,上記の販売価格の決定の方法につき審B第13号証(日建産業の従業員の陳述書)及び第30号証(被審人三菱樹脂の従業員の陳述書)を引用する。
しかし,被審人三菱樹脂が日建産業及びJFEスチールとの間であらかじめ契約により原料価格に連動して一定の算式の下に自動的にE管・S管の販売価格が設定される方式によることを合意していたことを認めるに足りる証拠はなく,むしろ,審B第30号証の陳述書には,「当社から支給する塩化ビニル管の値上げは,基本的には,三菱樹脂が原料値上げを受け入れたkg当たりの塩ビ原料アップ分を有償支給価格にスライドして乗せることにより決まりますので,私が知る限りの一般の値上げとは全く違う形で決着致します。」と記載されており,E管・S管の販売価格について実際に価格交渉が行われ,その結果原料値上げ分の値上げで合意されることが多いという程度のことであることがうかがわれるから,被審人三菱樹脂の日建産業及びJFEスチールに対するE管・S管の販売価格が本件違反行為の拘束を受けていないと認めることはできない。
(d) 被審人三菱樹脂は,菱琵テクノは,被審人三菱樹脂の塩化ビニル管等の加工製品の製造部門として被審人三菱樹脂の全額出資により設立された会社であり,塩化ビニルライニング鋼管の原材料となるE管・S管の全てを専ら被審人三菱樹脂からの支給により調達し,加工品である塩化ビニルライニング鋼管の全量を被審人三菱樹脂に販売しているのであるから,被審人三菱樹脂の菱琵テクノに対するE管・S管の売上げは,同一企業内における加工部門への物資の移動と同視できると主張する。
しかし,菱琵テクノの会社案内(審B第7号証)によれば,同社は被審人三菱樹脂向けの合成樹脂製品の製造のみならず,それ以外の取引先に販売することを目的とした合成樹脂製品の製造を行っていることがうかがわれる。また,菱琵テクノが被審人三菱樹脂の他の販売先と比べE管・S管の取引条件において優遇されていたことをうかがわせる事情や被審人三菱樹脂が菱琵テクノに対して本件合意に基づくE管・S管の値上げができない事情も認められない。さらに,菱琵テクノが被審人三菱樹脂以外の事業者からE管・S管を購入することができないという事情も認められないから,菱琵テクノ向けのE管・S管の販売について競争が行われる余地がないともいえない。したがって,菱琵テクノが被審人三菱樹脂の同一企業内における加工部門と同視し得るような事情があったとまでは認められない。
(e) 被審人三菱樹脂は,被審人積水化学工業に対するE管・S管の販売は,本件違反行為の当事者間の売買であり,そのような商品を本件違反行為の対象外とすることは,その当事者間において当然の共通認識であったこと,被審人積水化学工業は,被審人三菱樹脂から購入したE管・S管を更に塩化ビニルライニング鋼管のメーカーに販売しているが,仮にその被審人積水化学工業のE管・S管の売上げをも課徴金対象にしているとすれば,全く同一の商品について二重に課徴金を課していることになり不当な行政処分といわざるを得ないのであって,被審人積水化学工業に対して販売しているE管・S管が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情が認められ,本件課徴金算定の基礎となる売上げから除外されるべきであると主張する。
しかし,本件違反行為の当事者間の売買に係る商品を本件違反行為の対象外とすることがその当事者間において当然の共通認識であったことを認めるに足りる証拠はなく,また,独占禁止法は,個々の事業者ごとに課徴金を算定するものとしているのである(独占禁止法第7条の2)から,同一の商品が流通することによって複数の事業者に売上げが計上された場合であっても,各事業者の売上げについて課徴金算定の基礎とすることができるものというべきである(なお,違反行為者間の取引に係る売上げが課徴金の対象となることについて,東京高等裁判所平成24年2月24日判決・公正取引委員会審決集第58巻第2分冊166頁参照)。したがって,被審人積水化学工業に対して販売したE管・S管が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
(f) 被審人三菱樹脂が日建産業,JFEスチール,菱琵テクノ及び被審人積水化学工業以外の事業者に対して販売したE管・S管が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情を認めるに足りる証拠はない。
c 小括
以上のとおり,E管・S管は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
ソ ブローパイプ(別表2の24番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
ブローパイプは,ブロー成型により加工される主に便槽用の原管であるところ,ブローパイプは,ユーザーである特定の便槽メーカーの仕様に合わせてオーダーメイドで規格を決定する製品であり,一般に流通することもなく,一般の塩化ビニル管とは仕様も価格設定も異なる被審人三菱樹脂の特殊品であり,また,他の塩ビ管メーカーはブローパイプを販売しておらず,他社との競争が存在しない製品である。このように,ブローパイプは,一般的に流通することのない特殊な商品であるから,「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさず,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に,ブローパイプが本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,ブローパイプは被審人三菱樹脂だけが製造販売している独自製品であり,他社との競争がないから,ブローパイプが本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(イ) 当該商品該当性
a ブローパイプは本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,ブローパイプが塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管であることを争っていない。したがって,ブローパイプは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,ブローパイプは「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,ブローパイプは被審人三菱樹脂だけが製造販売している独自製品であり,他社との競争がないと主張するが,何ら証拠はなく,また,他の事業者が参入できない事情もうかがえないから,競争がないとはいえない。
したがって,ブローパイプが本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,ブローパイプは本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
タ バット継手(別表2の25番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
バット継手は,特殊配合で製造したパイプを切断し,切り口の端面を付き合わせ融着させることにより継手として成型した製品であり,農業用水分野でのみ使用される被審人三菱樹脂独自の加工技術により製造している塩化ビニル管継手であり,他社との競争が存在しない製品であって,一般の塩化ビニル管継手とは仕様も価格設定も異なる特殊品である。このように,バット継手は,一般的に流通することのない特殊な商品であるから,「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさず,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に,バット継手が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,バット継手は被審人三菱樹脂だけが製造販売しており,他社との競争がないから,バット継手が本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(イ) 当該商品該当性
a バット継手は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,バット継手が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管継手であることを争っていない。したがって,バット継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,バット継手は「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,バット継手は被審人三菱樹脂だけが製造販売している独自製品であり,他社との競争がないと主張するが,何ら証拠はなく,また,他の事業者が参入できない事情もうかがえないから,競争がないとはいえない。
したがって,バット継手が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,バット継手は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
チ DV-RR(別表2の26番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
DV-RRは,被審人三菱樹脂独自の規格に基づく排水用伸縮継手であり,他社との競争が存在していない製品であって,一般の塩化ビニル管継手とは仕様も価格設定も異なる特殊品である。このように,DV-RRは,被審人三菱樹脂独自の規格に基づく特殊な商品であるから,「旧来品であること」という要件を満たさず,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に,DV-RRが本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,DV-RRは被審人三菱樹脂だけが製造販売している独自商品であり,他社との競争がないから,DV-RRが本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(イ) 当該商品該当性
a DV-RRは本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,DV-RRが塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管継手であることを争っていない。したがって,DV-RRは,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,DV-RRは「旧来品であること」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,DV-RRは被審人三菱樹脂だけが製造販売している独自製品であり,他社との競争がないと主張するが,何ら証拠はなく,また,他の事業者が参入できない事情もうかがえないから,競争がないとはいえない。
したがって,DV-RRが本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,DV-RRは本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
ツ 三層管類及び三層下水継手(別表2の27番及び30番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
三層管類は,リサイクル原料を使用し内外面をバージン原料で挟んだ塩化ビニル管であり,三層下水継手は,同様の塩化ビニル管継手であり,いずれも,被審人三菱樹脂独自の技術により製品化した特殊な商品であるところ,これらの製品は,被審人三菱樹脂が関係官庁に対して採用活動の働きかけを積極的に行っている戦略製品であり,一般の塩化ビニル管等とは異なり,利益よりも普及を優先した価格設定をしている特殊品であり,また,他社はこれを販売しておらず,他社との競争が存在しない。このように,三層管類及び三層下水継手(以下「三層管類・三層下水継手」という。)は,被審人三菱樹脂の独自技術により製品化した特殊な商品であるから,「旧来品であること」という要件を満たさず,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に,三層管類・三層下水継手が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,三層管類・三層下水継手は被審人三菱樹脂だけが製造販売している独自商品であり,他社との競争がないから,三層管類・三層下水継手が本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(イ) 当該商品該当性
a 三層管類・三層下水継手は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,三層管類・三層下水継手が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手であることを争っていない。したがって,三層管類・三層下水継手は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,三層管類・三層下水継手は「旧来品であること」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,三層管類・三層下水継手は被審人三菱樹脂だけが製造販売している独自製品であり,他社との競争がないと主張するが,何ら証拠はなく,また,仮にそれが被審人三菱樹脂の独自技術により製品化した特殊な商品であるとしても,その機能は一般の塩化ビニル管等と異ならないようであるから,競争がないとはいえない。
したがって,三層管類・三層下水継手が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,三層管類・三層下水継手は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
テ スライド曲管(別表2の28番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
スライド曲管は,敷設後の補修等において使用される被審人三菱樹脂独自の規格による下水道用の継手であり,他社との競争が存在しない製品であって,一般の塩化ビニル管継手とは仕様も価格設定も異なる特殊品である。このように,スライド曲管は,被審人三菱樹脂独自の規格による下水道用の特殊な商品であるから,「旧来品であること」という要件を満たさず,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
仮に,スライド曲管が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するとしても,スライド曲管は被審人三菱樹脂だけが製造販売しており,他社との競争がないから,スライド曲管が本件違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情がある。
(イ) 当該商品該当性
a スライド曲管は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,スライド曲管が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管継手であることを争っていない。したがって,スライド曲管は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,スライド曲管は「旧来品であること」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,スライド曲管は被審人三菱樹脂だけが製造販売している独自製品であり,他社との競争がないと主張するが,何ら証拠はなく,また,他の事業者が参入できない事情もうかがえないから,競争がないとはいえない。
したがって,スライド曲管が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,スライド曲管は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
ト SU管,VM管,VM管用継手,VT管,VT管用継手,VS管,VH管,VH管用継手及び鉛HI管(別表2の31番ないし39番の商品)
(ア) 被審人三菱樹脂の主張
SU管,VM管,VM管用継手,VT管,VT管用継手,VS管,VH管,VH管用継手及び鉛HI管(以下「SU管等」という。)は,限られたメーカーが製造し,用途,販売量及び販売ルートも極めて限定された特殊な塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手であって,価格も高く市況に影響されず,過去においてもほとんど値上げを実施していない製品であり,一般の塩化ビニル管等の販売価格が原料の値上げにより改定する際も値上げ時期や値上げ幅は基本的に連動していないから,SU管等は,「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさす,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さない。
(イ) 当該商品該当性
a SU管等は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属するか
被審人三菱樹脂は,SU管等が塩化ビニル樹脂等を原料とする塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手であることを争っていない。したがって,SU管等は,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する。
なお,被審人三菱樹脂は,SU管等は「一般的な流通を経ているもの」及び「旧来品であること」という要件を満たさないから,本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属さないと主張するが,前記(2)アのとおり,そのような要件を要するものではないから,被審人三菱樹脂の上記主張は採用できない。
b 特段の事情の有無
被審人三菱樹脂は,SU管等が一般的に流通するものではなく,特殊品であると主張するが,これを立証する証拠はない。また,仮にSU管等が特殊品であったとしても,それだけで競争関係が否定されるわけではないし,仮にこれまで一般の塩化ビニル管等の価格変動と連動していなかったとしても,それは実際の価格交渉の結果にすぎないから,SU管等が本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められない。
c 小括
以上のとおり,SU管等は本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属し,かつ,本件違反行為の相互拘束から除外されていることを示す特段の事情があるとは認められないから,当該商品に該当する。
4 被審人らの課徴金算定の基礎となる売上額
⑴ 被審人積水化学工業
本件第1号課徴金納付命令において,公正取引委員会は,被審人積水化学工業宛て報告命令により同被審人が提出した報告書に基づいて課徴金算定の基礎となる売上額を,平成16年3月1日から平成18年1月3日までに係るものが594億6546万8699円,同月4日から同年11月13日までに係るものが293億1595万6452円と認定したところ,上記各金額から除外すべきものはないから,上記各金額が課徴金算定の基礎となる売上額となる。
⑵ 被審人三菱樹脂
ア 本件第2号課徴金納付命令において,公正取引委員会は,被審人三菱樹脂宛て報告命令により同被審人が提出した報告書(以下「被審人三菱樹脂報告書」という。)に基づいて課徴金算定の基礎となる売上額を,平成16年3月15日から平成18年1月3日までに係るものが286億9632万5316円,同月4日から同年11月13日までに係るものが133億3063万0347円と認定した。
イ 前記3(5)ア(ウ)及び3(5)シ(イ)のとおり,コップスシステム用継手及びシュート管は,いずれも当該商品に該当しないから,それらの売上額は課徴金算定の基礎となる売上額から除外され,水栓柱用原管及び同継手も,前記3(5)エ(ウ)のとおり,その一部に当該商品に該当しないものが含まれており,その内訳が不明であるから,水栓柱用原管の売上額及び同継手の売上額の全部が課徴金算定の基礎となる売上額から除外されることになる。
ウ 平成16年3月15日から平成18年1月3日までの売上額
上記期間の売上額については,コップスシステム用継手の売上額1億2169万2165円,シュート管の売上額5万7015円,水栓柱用原管の売上額461万3970円及び水栓柱用継手の売上額478万9953円の合計1億3115万3103円が課徴金算定の基礎となる売上額から除外されることになる。
他方,被審人三菱樹脂は,被審人三菱樹脂報告書に記載された上記期間の売上額にE管・S管の合計6464万3607円の売上げが漏れていたことを認めているから,その金額は課徴金算定の基礎となる売上額に加算されることになる。
したがって,被審人三菱樹脂に対する課徴金算定の基礎となる上記期間の売上額は,本件第2号課徴金納付命令の認定した286億9632万5316円から上記1億3115万3103円を控除し,それに上記6464万3607円を加算した286億2981万5820円である。
エ 平成18年1月4日から同年11月13日までの売上額
上記期間の売上額は,次のとおりである。
コップスシステム用継手の4442万2350円,シュート管の4万3260円が除外されることになる。
水栓柱用原管については,前記イのとおり,その全体の額を課徴金算定の基礎から除外すべきであり,当該商品に該当する水栓柱用角パイプの被審人三菱樹脂の認める売上額である758万4570円のみが課徴金算定の基礎となるものである。なお,当初の被審人三菱樹脂報告書においては,アカシに対する売上額を水栓柱用角パイプ及び水栓柱用原管の内訳が不明なまま703万8155円とされており,本件第2号課徴金納付命令はこれを前提として課徴金の金額を算定しているので,一旦,これを除外し,上記認定の水栓柱用角パイプの758万4570円をその基礎とすることになる(差額は54万6415円となる。)
水栓柱用継手については,前記イのとおり,ライニング鋼管継手の売上額の部分は課徴金の対象とならない。被審人三菱樹脂は,被審人三菱樹脂報告書において上記期間におけるアカシに対する売上額を254万7930円と報告しており(争いがない。),本件第2号課徴金納付命令は,その金額を前提に課徴金の金額を決定しているところ,その中には,塩化ビニルライニング鋼管継手とそれ以外の管の売上額が含まれており,その内訳は明らかでないのでその全額を算定の基礎となる売上額から控除すべきである。
したがって,被審人三菱樹脂に対する課徴金算定の基礎となる平成 18年1月4日から同年11月13日までの期間の売上額は,本件第2号課徴金納付命令の認定した133億3063万0347円から上記4442万2350円,4万3260円及び254万7930円を控除し,それに上記54万6415円を加算した132億8416万3222円である。
5 結論
⑴ 本件排除措置命令について
被審人らは,前記1及び2のとおり,他の事業者と共同して,塩化ビニル管等の出荷価格を引き上げる旨を合意することにより,公共の利益に反して,我が国における塩化ビニル管等の販売分野における競争を実質的に制限していたものであるから,これは独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものと認められる。
また,本件違反行為は既に消滅しているが,違反行為が長期間にわたって行われていたこと,被審人らを含む塩ビ管メーカーは長年にわたり協調的関係を継続していたこと,被審人らは自主的に本件違反行為をやめたものでないこと等の事情が認められ,これらの事情を総合的に勘案すれば,本件排除措置命令の時点において,被審人らが本件違反行為と同様の違反行為を繰り返すおそれがあったと認められる。
したがって,本件排除措置命令は適法であるから,被審人らの本件排除措置命令に係る各審判請求はいずれも理由がない。
⑵ 本件第1号課徴金納付命令について
ア 前記(1)の違反行為が独占禁止法第7条の2第1項第1号に規定する商品の対価に係るものであることは本件合意の内容から明らかである。
イ 課徴金の計算の基礎となる事実
(ア) 被審人積水化学工業は,塩化ビニル管等の製造販売業を営む者である。(争いがない。)
(イ) 被審人積水化学工業が,前記(1)の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,第1次値上げに係る合意に基づき被審人積水化学工業が最初に出荷価格の引上げを実施することとした平成16年3月1日であると認められる。また,被審人積水化学工業は,平成18年11月14日以降,当該違反行為を取りやめており,同月13日にその実行としての事業活動はなくなっているものと認められる。したがって,被審人積水化学工業については,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第35号。以下「平成17年改正法」という。)附則第5条第2項及び第3項の規定(平成21年法律第51号による改正前のもの)により変更して適用される独占禁止法第7条の2第1項の規定により,実行期間は,平成16年3月1日から平成18年11月13日までとなる。
(ウ) 前記(イ)の実行期間における塩化ビニル管等に係る被審人積水化学工業の売上額は,独占禁止法施行令第5条第1項の規定に基づき算定すべきところ,当該規定に基づき算定すると,前記4のとおり,前記(1)の違反行為のうち平成17年改正法の施行日である平成18年1月4日(以下「平成17年改正法施行日)という。)前に係るものについては594億6546万8699円,前記(1)の違反行為のうち平成17年改正法施行日以後に係るものについては293億1595万6452円である。
(エ) 被審人積水化学工業は,公正取引委員会による調査開始日である平成19年7月10日から遡り10年以内に独占禁止法第7条の2第1項の規定による命令を受けており,当該命令について審判を請求することなく独占禁止法第50条第4項に規定する期間を経過しているので,当該命令は確定している(争いがない。)。したがって,被審人積水化学工業は,独占禁止法第7条の2第6項第1号(平成21年法律第51号による改正前のもの)に該当する事業者である。
(オ) 以上によれば,被審人積水化学工業が国庫に納付すべき課徴金の額は,
a 前記(1)の違反行為のうち平成17年改正法施行日前に係るものについては,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,前記594億6546万8699円に,平成17年改正法附則第5条第2項の規定(平成21年法律第51号による改正前のもの)によりなお従前の例によることとされる平成17年改正法による改正前の独占禁止法第7条の2第1項に規定する売上額に乗ずる率である100分の6を乗じて得た額
b 前記(1)の違反行為のうち平成17年改正法施行日以後に係るものについては,独占禁止法第7条の2第1項及び第6項(平成21年法律第51号による改正前のもの)の規定により,前記293億1595万6452円に100分の15を乗じて得た額
を合計した額から,独占禁止法第7条の2第18項(平成21年法律第51号による改正前のもの)の規定により1万円未満の端数を切り捨てて算出された79億6532万円である。
ウ よって,被審人積水化学工業に対してこれと同額の課徴金の納付を命じた本件第1号課徴金納付命令は適法であるから,被審人積水化学工業の上記命令に係る審判請求は理由がない。
⑶ 本件第2号課徴金納付命令について
ア 前記(1)の違反行為が独占禁止法第7条の2第1項第1号に規定する商品の対価に係るものであることは本件合意の内容から明らかである。
イ 課徴金の計算の基礎となる事実
(ア) 被審人三菱樹脂は,塩化ビニル管等の製造販売業を営む者である。(争いがない。)
(イ) 被審人三菱樹脂が,前記(1)の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,第1次値上げに係る合意に基づき被審人三菱樹脂が最初に出荷価格の引上げを実施することとした平成16年3月15日であると認められる。また,被審人三菱樹脂は,平成18年11月14日以降,当該違反行為を取りやめており,同月13日にその実行としての事業活動はなくなっているものと認められる。したがって,被審人三菱樹脂については,平成17年改正法附則第5条第2項及び第3項の規定(平成21年法律第51号による改正前のもの)により変更して適用される独占禁止法第7条の2第1項の規定により,実行期間は,平成16年3月15日から平成18年11月13日までとなる。
(ウ) 前記(イ)の実行期間における塩化ビニル管等に係る被審人三菱樹脂の売上額は,独占禁止法施行令第5条第1項の規定に基づき算定すべきところ,当該規定に基づき算定すると,前記4のとおり,前記(1)の違反行為のうち平成17年改正法施行日前に係るものについては286億2981万5820円,前記(1)の違反行為のうち平成17年改正法施行日以後に係るものについては132億8416万3222円である。
(エ) 被審人三菱樹脂は,公正取引委員会による調査開始日である平成 19年7月10日から遡り10年以内に独占禁止法第7条の2第1項の規定による命令を受けており,当該命令についての審判を請求することなく独占禁止法第50条第4項に規定する期間を経過しているので,当該命令は確定している(争いがない。)。したがって,被審人三菱樹脂は,独占禁止法第7条の2第6項第1号(平成21年法律第51号による改正前のもの)に該当する事業者である。
(オ) 以上によれば,被審人三菱樹脂が国庫に納付すべき課徴金の額は,
a 前記(1)の違反行為のうち平成17年改正法施行日前に係るものについては,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,前記286億2981万5820円に,平成17年改正法附則第5条第2項の規定によりなお従前の例によることとされる平成17年改正法による改正前の独占禁止法第7条の2第1項に規定する売上額に乗ずる率である100分の6を乗じて得た額
b 前記(1)の違反行為のうち平成17年改正法施行日以後に係るものについては,独占禁止法第7条の2第1項及び第6項(平成21年法律第51号による改正前のもの)の規定により,前記132億8416万3222円に100分の15を乗じて得た額
を合計した額から,独占禁止法第7条の2第18項(平成21年法律第51号による改正前のもの)の規定により1万円未満の端数を切り捨てて算出された37億1041万円である。
(カ) よって,本件第2号課徴金納付命令は,被審人三菱樹脂に37億1041万円の納付を命じた限度で適法であり,それを超えて納付を命じた部分は違法である。
第7 法令の適用
以上によれば,被審人三菱樹脂の本件第2号課徴金納付命令に係る審判請求は,被審人三菱樹脂に37億1041万円を超えて納付を命じた部分の取消しを求める限度で理由があるから,独占禁止法第66条第3項の規定により,主文1のとおり審決することが相当であり,被審人三菱樹脂のその余の審判請求及び被審人積水化学工業の各審判請求はいずれも理由がないから,同条第2項の規定により,主文2のとおり審決することが相当であると判断する。

平成27年9月24日

公正取引委員会事務総局

審判官  西 川 康 一

審判官  酒 井 紀 子

審判長審判官伊藤繁は転任のため署名押印できない。

審判官  西 川 康 一

別紙
塩化ビニル樹脂等を原料とする硬質ポリ塩化ビニル管及び硬質ポリ塩化ビニル管継手(電線共同溝等に設置される電線又は通信ケーブルを保護するために用いられるものを除く。)
(別表1及び2の添付は省略)

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