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(株)藤田屋に対する件

独禁法19条(一般指定10項)

平成2年(判)第2号

審判審決

大阪市西成区中開2丁目5番4号
被審人 株式会社 藤田屋
右代表者 代表取締役 廣野 泰一
右代理人 弁護士 和田 誠一郎

 公正取引委員会は、右被審人に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)違反事件について、公正取引委員会の審査及び審判に関する規則(以下「規則」という。)第66条の規定により審判官満田忠彦、同鈴木恭蔵、同山木康孝から提出された事件記録に基づいて別紙審決案を調査し、次のとおり審決する。
主文
一 被審人は、次の事項を取引先小売業者に周知徹底させなければならない。この周知徹底の方法については、あらかじめ、当委員会の承認を受けなければならない。
(一) 家庭用テレビゲーム機用のゲームソフトであるドラゴンクエストxix.xxvi.を販売する条件として、同社に在庫となっていた他の家庭用テレビゲーム機用ゲームソフトを抱き合わせて購入させていたが、この行為を取りやめたこと。
(二) 今後、右行為と同様な行為を行わないこと。
二 被審人は、今後、取引先に対して、家庭用テレビゲーム機用ゲームソフトの販売に当たり、他の家庭用テレビゲーム機用ゲームソフトを抱き合わせて購入させてはならない。
三 被審人は、第1項に基づいて採った措置を速やかに当委員会に報告しなければならない。
理由
一 当委員会の認定した事実、証拠、判断及び法令の適用は、いずれも別紙審決案と同一であるから、これを引用する。
二 よって、被審人に対し、独占禁止法第54条第2項及び規則第69条第1項の規定により、主文のとおり審決する。

平成4年2月28日

委員長 梅澤 節男
委員 佐藤 徳太郎
委員 宇賀 道郎
委員 佐藤 謙一
委員 股野 景親

別紙
平成2年(判)第2号
審決案
大阪市西成区中開2丁目5番4号
被審人 株式会社 藤田屋
右代表者 代表取締役 廣野 泰一
右代理人 弁護士 和田 誠一郎
右被審人に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)違反事件について、公正取引委員会から、独占禁止法第51条の2及び公正取引委員会の審査及び審判に関する規則(以下「規則」という。)第26条の規定により、担当審判官に指定された本職らは、審判の結果、次のような審決をすることが適当であると思料し、規則第66条及び第67条の規定により、本審決案を作成する。
主文
一 被審人は、次の事項を取引先小売業者に周知徹底させなければならない。この周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(一) 家庭用テレビゲーム機用のゲームソフトであるドラゴンクエストxix.xxvi.を販売する条件として、同社に在庫となっていた他の家庭用テレビゲーム機用ゲームソフトを抱き合わせて購入させていたが、この行為を取りやめたこと。
(二) 今後、右行為と同様な行為を行わないこと。
二 被審人は、今後、取引先に対して、家庭用テレピゲーム機用ゲームソフトの販売に当たり、他の家庭用テレビゲーム機用ゲームソフトを抱き合わせて購入させてはならない。
三 被審人は、第1項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
理由
第一 事実
一(一) 被審人は、肩書地に本店を置き、主として、家庭用テレビゲーム機(携帯用コンピュータゲーム機を含む。)、家庭用テレビゲーム機用ゲームソフト(以下「ゲームソフト」という。)等の家庭用電子玩具の卸売業を営む者である。
(二) 被審人は、家庭用電子玩具を一次卸売業者から購入し、小売業者等へ販売している。
二(一) 被審人は、株式会社エニックスが平成2年2月11日から発売開始したゲームソフトであるドラゴンクエストxix.xxvi.(以下「ドラクエxix.xxvi.」という。)を、平成2年3月末までの間に、1次卸売業者である服部玩具株式会社ほか4社の卸売業者から、約7万7600本購入した。
(二) ドラクエxix.xxvi.は、ドラゴンクエスト・シリーズの前3作がいずれも人気ゲームソフトとなったところから前人気が高く、同ゲームソフトの発売時には消費者が店頭に殺到することが予想されたため、小売業者は同ゲームソフトの入荷量確保に躍起となる状況にあった。
(三) 被審人は、右のような状況において、ドラクエxix.xxvi.の販売に当たり同社に在庫となっているゲームソフトを処分することを企図し、取引先小売業者約310店に対しては過去の取引実績に応じた数量配分として約7万3300本を販売することとした上、過去の取引実績に応じた数量配分以上の購入を希望する小売業者に対しては、平成元年12月下旬以降、同社に在庫となっているゲームソフト3本を購入することを条件にドラクエxix.xxvi.1本を販売すること等を商品案内を送付する等によって通知した。
(四) 被審人は、前記(三)記載の販売条件に応じて購入を希望した小売業者25店に対し、合計でドラクエxix.xxvi.約1,700本と在庫となっている他のゲームソフト約3,500本を抱き合わせて購入させた。
三 本件について、公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づいて審査を開始したところ、被審人は、平成2年1月30日以降、前記抱き合わせ販売行為を取りやめている。
第二 証拠
第一の一、同二(一)、(二)及び(四)並びに同三の事実は、被審人が認めてこれを争わないところである。
第一の二(三)の事実のうち、被審人が、取引先小売業者約310店に対して数量配分として、ドラクエxix.xxvi.を販売したこと及び右数量配分以上の購入を希望する小売業者に対して、ゲームソフト3本を購入することを条件にドラクエxix.xxvi.1本を販売することとしたことは、被審人が認めてこれを争わないところであるが、その余の事実については、左の証拠を総合して、これを認めることができる。
一 参考人廣野泰一及び同上地嗣郎の第4回審判における各陳述並びに同長谷川正夫及び同米坂健の第5回審判における各陳述
一 査第2号証及び査第3号証の各供述聴取報告書
一 査第6号証及び査第7号証の1ないし15
第三 審判官の判断
一 「他の商品」か否かについて
ドラクエxix.xxvi.と本件抱き合わせ販売に供された他のゲームソフトとは、それぞれその内容において独自性を有し、独立して取引の対象とされているものであるから(右事実は被審人において明らかに争わない。)、右他のゲームソフトが、独占禁止法第2条第9項の規定により指定された不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号。以下「一般指定」という。)第10項に規定する「他の商品」にあたることは明らかである。
二 「購入させること」にあたるか否かについて
次に、本件抱き合わせ販売が、一般指定第10項に規定する「購入させること」にあたるか否かにつき判断するに、右要件にあたるというためには、ある商品の供給を受けるのに際し、客観的にみて少なからぬ顧客が他の商品の購入を余儀なくされるような抱き合わせ販売であることが必要であると解するのが相当である。
(一) 前記第一の二(二)及び後掲各証拠によれば、次の事実を認めることができる。
イ ドラクエxix.xxvi.は、ドラゴンクエスト・シリーズの前3作がいずれも人気ゲームソフトになったところから前人気が高く、ドラクエxix.xxvi.の発売時には消費者が店頭に殺到することが予想され、また右のように人気の高いドラクエxix.xxvi.をできるだけ多く確保し、顧客の要望に応えることは店舗の格、信用を高めることになり、今後の営業成績にも影響するため、各小売店はドラクエxix.xxvi.を1本でも多く確保するのに躍起となる状況であった(参考人米坂健の第5回審判における陳述)。
ロ 被審人は、ゲームソフトの二次卸売業界において約10パーセントのシェアを占めるものであるが、当初、ドラクエxix.xxvi.については入手した数量は希望の半分にも満たない状態であった。そしてこのように絶対数量が不足するような場合には、卸売業者は従前の取引実績により小売業者に対する販売数量を決めるのが通常であるため、一般の小売業者は、従前取引関係のない卸売業者からドラクエxix.xxvi.を入手することは困難であり、従前の取引先卸売業者からドラクエxix.xxvi.を希望どおり入手できなかった場合には、それを補充するため他に新規に取引先を容易に見いだせない状況にあった(参考人廣野泰一の第4回審判における陳述及び同長谷川正夫の第5回審判における陳述)。
(二) 一方、前記第一の二(一)、(三)及び(四)のように被審人は、第一次卸売業者から仕入れたドラクエxix.xxvi.約7万7600本のうち約94パーセントに相当する約7万3300本を取引先小売業者約310店に対し従前の取引実績に応じて数量配分することとし(なお、被審人は約98パーセントに相当する約7万5900本を実績配分した趣旨の主張をするが、本件全証拠によるも右事実を認定することはできない。)、右数量配分以上の購入を希望する小売業者に対し本件抱き合わせ販売の申入れをし、結局右申入れに応じた小売業者25店に対しドラクエxix.xxvi.合計約1,700本を他のゲームソフト約3,100本と抱き合わせて販売したものであるところ、被審人が本件抱き合わせ販売の申入れをした小売業者の具体的な数は、本件全証拠によるも明らかではないが、後記三(一)ロ(イ)のように25店を相当上回る数であると推認され、従って、右申込みを受けた相当数の小売業者が本件抱き合わせ販売の申込みに応じなかった事実を認めることができる。
(三) そこで、進んで右(二)の事実を考慮した上でなお本件抱き合わせ販売が「購入させること」にあたるか否かにつき検討する。
ドラクエxix.xxvi.が人気の高い商品であったことは前記のとおりであり、被審人が仕入れたドラクエxix.xxvi.の約九四パーセントを取引先業者に実績配分をしても、その需要に比し絶対数量が大きく不足しており、大多数の小売業者にとってドラクエxix.xxvi.を少しでも多く確保したいとの状況に変化はなく(参考人長谷川正夫の第五回審判における陳述)、また、現実に本件抱き合わせ販売に応じた小売業者は25店存在し、右小売業者が、他の一般通常の小売業者と比較し、本件抱き合わせ販売に応じなければならないような特別な事情の存在したことは、本件全証拠によるも認めることができない。
してみると、本件抱き合わせ販売は、前記(二)の事実を考慮しても、ドラクエxix.xxvi.の需要がその供給を大きく上回り、取引先小売業者が一本でも多く確保したいと希望し、かつ新規の取引先から容易に入手し難い状況のもとで行われたものであり、客観的にみて少なからぬ顧客が他の商品の購入を余儀なくされるものと認めることができ、一般指第10項に規定する「購入させること」にあたるものといえる。
(四) なお、被審人は、本件抱き合わせ販売は取引先小売業者からの強い要望によってなしたものであり、本件抱き合わせ販売に応じた小売業者は自己の判断により商売上の利益を考え納得のうえ発注したものである。また、右小売業者は何らの損害を被っていない。利潤を追求する小売業者と一般消費者を同列に考えることはできず、本件抱き合わせ販売は、強制されたものではなく、「購入させること」にあたらない趣旨の主張をするので、念のため判断する.
当該抱き合わせ販売が、一般指定第10項に規定する「購入させること」にあたるかどうかは、個別主観的に当該個々の顧客が取引を強制されたかどうかによって決定されるものではなく、前記のとおり客観的にみて少なからぬ顧客が他の商品の購入を余儀なくされるかどうかによって決定されるべきものであるばかりでなく(本件抱き合わせ販売によって客観的にみて少なからぬ顧客である小売業者が他の商品の購入を余儀なくされたことは前記説示のとおりである。)、本件抱き合わせ販売に応じた顧客である小売業者も、本来、ドラクエxix.xxvi.のみを買い受けることを望んだものであり、ドラクエxix.xxvi.を取得するためやむを得ず自己の欲しない他のゲームソフトも買い受けたものであることが認められる(参考人長谷川正夫及び同米坂健の第5回審判における各陳述)。そして、顧客が本件抱き合わせ販売により損害を被らなかったとしても、顧客が損害を被ったことが、一般指定第10項に規定する抱き合わせ販売が成立するための要件ではないことは言うまでもない。また、一般指定第10項の規定上は、相手方が一般消費者の場合と商人である小売業者とで何ら差を設けておらず、本件抱き合わせ阪売が強制すなわち「購入させること」にあたることは前記説示のとおりである。
以上の次第であるから、被審人の右主張はいずれも失当である。
三 不当性について
(一) 本件抱き合わせ販売が不当に行われたか否かにつき判断する。
一般指定第10項に規定する不当とは、公正な競争を阻害するおそれがあることを意味すると解されるが、右公正な競争を阻害するおそれとは、当該抱き合わせ販売がなされることにより、買手は被抱き合わせ商品の購入を強制され商品選択の自由が妨げられ、その結果、良質・廉価な商品を提供して顧客を獲得するという能率競争が侵害され、もって競争秩序に悪影響を及ぼすおそれのあることを指すものと解するのが相当である。
イ 前記のように本件抱き合わせ販売は、ドラクエxix.xxvi.が人気の高い商品であることから、その市場力を利用して価格・品質等によらず他のゲームソフトを抱き合わせて販売したものであり、買手の商品選択の自由を妨げ、卸売業者間の能率競争を侵害し競争手段として公正を欠くものといわざるを得ない。
ロ そして、前記第一の二(三)の事実及び参考人廣野泰一の第4回審判における陳述によれば、次の事実を認めることができる。
(イ) 後記(ロ)のようにゲームソフト業界では、従前から抱き合わせ販売が行われることは必ずしも稀ではなく、ドラクエxix.xxvi.は人気が高く品薄であったため、被審人は、被審人自身もドラクエxix.xxvi.を他のゲームソフトと抱き合わせで買わざるを得ないことが予想され、現実に一部抱き合わせで買わざるを得なかったこともあり、ドラクエxix.xxvi.の人気による市場力を利用して自己の所有する在庫品を処分することを企図し、本件抱き合わせ販売を行った。右販売に際し、被審人は、入手したドラクエxix.xxvi.の大部分を取引先小売業者約310店に実績配分したが、その一部をあらかじめ留保し、実績配分以上のドラクエxix.xxvi.を希望する取引先小売業者に対して、平成元年12月下旬ごろから同2年1月下旬ころにかけて、被抱き合わせ商品のリストを送付し、あるいは電話で本件抱き合わせ販売の申入れをしたものであり、本件抱き合わせ販売は、たまたま個々的に希望した者のみを対象とした単発的、偶発的なものではなく、組織的、計画的な面があることは否定できない。また、ドラクエxix.xxvi.が人気の高い商品であり、一般の小売業者はドラクエxix.xxvi.を1本でも多く確保したいと思っていた状況からみれば、実績配分以上のドラクエxix.xxvi.を希望する取引先小売業者は相当数あり、被審人が本件抱き合わせ販売の申込みをした小売業者は相当数に上ると思われる。
(ロ) ゲームソフトは、現実には、人気商品は販売されるゲームソフトのうちの一部であり、原則として返品できないこともあり、その大半は流通業者が在庫として抱えることになるのが通常であるため、流通業者は、人気商品が販売された場合、在庫品を処分するため人気商品と不人気商品とを抱き合わせて販売することが必ずしも稀ではなかった。また、被審人は、ドラクエxix.xxvi.の前作であるドラゴンクエストxix.xix.xix.の販売に当たり、本件と同様の抱き合わせ販売を行い公正取引委員会から警告を受けている。
ハ 以上(イ)及び(ロ)の各事実並びに本件抱き合わせ販売は事業者の独占的地位あるいは経済力を背景にするものではなく、ドラクエxix.xxvi.の人気そのものに依存するものであるため、人気商品を入手し得る立場にある者は、容易に実行することのできる行為であることを考えると、本件抱き合わせ販売は、実際に販売されたのは、小売業者25店に対し被抱き合わせゲームソフト約3,500本であるが、その申入れは実績配分以上の数量を希望した取引先小売業者を対象に組織的、計画的になされたものであり、また前記のように本件抱き合わせ販売は、その性質上及び市場の実態からみて反復性、伝播性があり、更に広い範囲で本件の如き抱き合わせ販売が行われる契機となる危険性を有し、被抱き合わせ商品市場における競争秩序に悪影響を及ぼすおそれがあるものと認められる。
ニ してみると、本件抱き合わせ販売は、公正な競争を阻害するおそれがあるものというべきである。
(二) なお、被審人は、本件抱き合わせ販売は、ドラクエxix.xxvi.の煽られた特殊人気による一過性のものであり、反復性はなく、また被審人にはドラクエxix.xxvi.の供給について支配的地位や独占力はなく、いずれの点からみても不当なものではない趣旨の主張をするので念のため判断する。
ドラクエxix.xxvi.の人気による市場力を利用した本件抱き合わせ販売が公正競争阻害性を有するものであることは前記説示のとおりであり、また、被審人が主張する一過性とは、どの程度の期間をいうものか不明であるが、参考人上地嗣郎の第四回審判における陳述によれば、平成2年の夏過ぎころからドラクエxix.xxvi.の売行きが落ちてきたことが認められるが、右事実は前記公正競争阻害性を認定することの妨げとなるものでないことも明らかである。そして、本件はドラクエxix.xxvi.それ自体の人気による市場力を利用して抱き合わせて販売をなしたことを問題とするものであり、被審人の支配的地位や独占力を問題としたものではなく、被審人の右主張はいずれも失当である。
第四 法令の適用
前記事実によれば、被審人は、その取引先小売業者に対し、不当に、ドラクエxix.xxvi.の供給に併せて他のゲームソフトを自己から購入させていたものであって、これは、一般指定第10項に該当し、独占禁止法第19条の規定に違反するものである。
よって、被審人に対し、独占禁止法第54条第2項の規定により主文のとおり審決することが相当であると思料する。
平成4年1月20日
公正取引委員会事務局
審判官 満田 忠彦
同 鈴木 恭蔵
同 山木 康孝
参考
平成2年(判)第2号
審判開始決定書
大阪市西成区中開2丁目5番4号
被審人 株式会社 藤田屋
右代表者 代表取締役 廣野 泰一
公正取引委員会は、右の者に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)違反被疑事件につき、審判手続を開始する。
第一 事実
一(一) 被審人株式会社藤田屋(以下「藤田屋」という。)は、肩書地に本店を置き、主として、家庭用テレビゲーム機(携帯用コンピュータゲーム機を含む。)、家庭用テレビゲーム機用ゲームソフト(以下「ゲームソフト」という。)等の家庭用電子玩具の卸売業を営む者である。
(二) 藤田屋は、家庭用電子玩具を一次卸売業者から購入し、小売業者等へ販売している。
二(一) 藤田屋は、株式会社エニックスが平成2年2月11日から発売開始したゲームソフトであるドラゴンクエストxix.xxvi.(以下「ドラクエxix.xxvi.」という。)を、平成2年3月末までの間に、一次卸売業者である服部玩具株式会社ほか4社の卸売業者から、代金前払で約7万7,600本を購入した。
(二) 前記(一)のドラクエxix.xxvi.は、ドラゴンクエスト・シリーズの前3作がいずれも人気ゲームソフトとなったところから前人気が高く、同ゲームソフトの発売時には消費者が店頭に殺到することが予想されたため、小売業者は同ゲームソフトの入荷量確保に躍起となる状況にあった。
(三) 藤田屋は、右のような状況において、ドラクエxix.xxvi.の販売に当たり同社に在庫となっているゲームソフトを処分することを企図し、取引先小売業者約310店に対しては過去の取引実績に応じた数量配分として約7万3,300本を販売することとした上、過去の取引実績に応じた数量配分以上の購入を希望する小売業者に対しては、平成元年12月以降、同社に在庫となっているゲームソフト3本を購入することを条件にドラクエxix.xxvi.1本を販売すること等を商品案内を送付する等して通知した。
(四) 藤田屋は、前記(三)記載の販売条件に応じて購入を希望した小売業者25店に対し、合計でドラクエxix.xxvi.約1,700本と在庫となっている他のゲームソフト約3,500本を抱き合わせて購入させた。
三 本件について、当委員会が独占禁止法の規定に基づいて審査を開始したところ、藤田屋は、平成2年1月30日以降、前記二(三)及び(四)記載の行為を取りやめている。
第二 法令の適用
前記事実によれば、藤田屋は、取引先小売業者に対し、不当に、家庭用電子玩具の供給に併せて他の家庭用電子玩具を自己から購入させていたものであって、これは、不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)の第10項に該当し、独占禁止法第19条の規定に違反するものである。
平成2年12月20日
公正取引委員会
委員長 梅澤 節男
委員 伊従 寛
委員 佐藤 徳太郎
委員 宇賀 道郎
委員 佐藤 謙一

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