公正取引委員会審決等データベース

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大成建設(株)ほか33名に対する件

独禁法7条の2(独禁法3条後段)

平成14年(判)第1号ないし第34号

課徴金の納付を命ずる審決

公正取引委員会は,上記被審人らに対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第35号)附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)に基づく課徴金納付命令審判事件について,公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号)による改正前の公正取引委員会の審査及び審判に関する規則(以下「規則」という。)第82条の規定により審判長審判官原啓一郎及び審判官中出孝典から提出された事件記録並びに規則第84条の規定により別紙3別表1記載の被審人らから提出された異議の申立書及び規則第86条の規定により別紙3別表2記載の被審人らから聴取した陳述に基づいて,同審判官らから提出された別紙4審決案を調査し,次のとおり審決する。\r\n\r\n主       文\r\n1 被審人大成建設株式会社は金5046万円を,\r\n被審人清水建設株式会社は金4410万円を,\r\n被審人三井住友建設株式会社は金4321万円を,\r\n被審人株式会社不動テトラは金3364万円を,\r\n被審人株式会社奥村組は金2986万円を,\r\n被審人安藤建設株式会社は金2940万円を,\r\n被審人株式会社みらい建設グループは金2880万円を,\r\n被審人鉄建建設株式会社は金1291万円を,\r\n被審人株式会社淺沼組は金1436万円を,\r\n被審人飛島建設株式会社は金1348万円を,\r\n被審人馬淵建設株式会社は金2266万円を,\r\n被審人株式会社大林組は金2043万円を,\r\n被審人株式会社加賀田組は金1927万円を,\r\n被審人大豊建設株式会社は金1901万円を,\r\n被審人坂田建設株式会社は金1459万円を,\r\n被審人株式会社錢高組は金1631万円を,\r\n被審人株木建設株式会社は金1641万円を,\r\n被審人戸田建設株式会社は金1640万円を,\r\n被審人株式会社CKプロパティーは金1575万円を,\r\n被審人東洋建設株式会社は金1521万円を,\r\n被審人株式会社植木組は金1549万円を,\r\n被審人JFE工建株式会社は金1270万円を,\r\n被審人佐田建設株式会社は金1461万円を,\r\n被審人株式会社松村組は金1402万円を,\r\n被審人大木建設株式会社は金1382万円を,\r\n被審人株式会社新井組は金1374万円を,\r\n被審人株式会社クボタ建設は金1369万円を,\r\n被審人青木あすなろ建設株式会社は金1307万円を,\r\n被審人小田急建設株式会社は金1133万円を,\r\n被審人西松建設株式会社は金329万円を,\r\nそれぞれ課徴金として,平成20年9月24日までに国庫に納付しなければならない。\r\n2 被審人株式会社冨士工,被審人オリエンタル白石株式会社及び被審人真柄建設株式会社並びに被審人徳倉建設株式会社に対しては,課徴金の納付を命じない。\r\n\r\n理       由\r\n1 当委員会の認定した事実,証拠,判断及び法令の適用は,いずれも別紙4審決案の理由第1ないし第5と同一であるから,これを引用する。\r\n2 よって,被審人らに対し,独占禁止法第54条の2第1項及び規則第87条第1項の規定により,主文のとおり審決する。

平成20年7月24日

公 正 取 引 委 員 会\r\n委員長 竹 島  一 彦\r\n委 員 山 田  昭 雄\r\n委 員 濱 崎  恭 生\r\n委 員 後 藤    晃\r\n委 員 神 垣  清 水

別紙1 被審人目録\r\n平成14年(判)第1号 東京都新宿区西新宿一丁目25番1号 大成建設株式会社 代表取締役 葉山 莞児\r\n同第2号 東京都港区芝浦一丁目2番3号 清水建設株式会社 代表取締役 宮本 洋一\r\n同第3号 東京都新宿区西新宿七丁目5番25号 三井住友建設株式会社 代表取締役 五十嵐久也\r\n同第4号 大阪市中央区淡路町二丁目2番14号 株式会社不動テトラ 代表取締役 高橋 昭夫\r\n同第5号 大阪市阿倍野区松崎町二丁目2番2号 株式会社奥村組 代表取締役 奥村太加典\r\n同第6号 東京都港区芝浦三丁目12番8号 安藤建設株式会社 代表取締役 山田恒太郎\r\n同第7号 東京都千代田区平河町一丁目6番15号 株式会社みらい建設グループ 代表取締役 明石 惠介\r\n同第8号 東京都千代田区三崎町二丁目5番3号 鉄建建設株式会社 代表取締役 工藤 長生\r\n同第9号 大阪市天王寺区東高津町12番6号 株式会社淺沼組 代表取締役 淺沼 健一\r\n同第10号 東京都千代田区三番町2番地 飛島建設株式会社 代表取締役 池原 年昭\r\n同第11号 横浜市南区花之木町二丁目26番地 馬淵建設株式会社 代表取締役 馬淵 圭包\r\n同第12号 大阪市中央区北浜東4番33号 株式会社大林組 代表取締役 白石  達\r\n同第13号 新潟市中央区八千代一丁目5番32号 株式会社加賀田組 代表取締役 市村  稿\r\n同第14号 東京都中央区新川一丁目24番4号 大豊建設株式会社 代表取締役 岡村 康秀\r\n同第15号 東京都墨田区緑四丁目21番2号 坂田建設株式会社 代表取締役 山上  忠\r\n同第16号 大阪市西区西本町二丁目2番11号 株式会社錢高組 代表取締役 銭高 善雄\r\n同第17号 水戸市吉沢町311番地1 株木建設株式会社 代表取締役 株木 雅浩\r\n同第18号 東京都中央区京橋一丁目7番1号 戸田建設株式会社 代表取締役 井上 舜三\r\n同第19号 札幌市中央区北六条西十六丁目1番地23ジュオ桑園1階 株式会社CKプロパティー 代表清算人 熊谷 聰\r\n同第20号 大阪市中央区高麗橋四丁目1番1号 東洋建設株式会社 代表取締役 赤井 憲彦\r\n同第21号 新潟県柏崎市新橋2番8号 株式会社植木組 代表取締役 植木 義明\r\n同第22号 横浜市鶴見区小野町88番地 JFE工建株式会社 代表取締役 嶋田 正大\r\n同第23号 前橋市元総社町一丁目1番地の7 佐田建設株式会社 代表取締役 荒木  徹\r\n同第24号 大阪市北区東天満一丁目10番20号 株式会社松村組 代表取締役 菅沼  肇\r\n同第25号 東京都台東区東上野六丁目23番5号 大木建設株式会社 清 算 人 石川  徹\r\n同第26号 兵庫県西宮市池田町12番20号 株式会社新井組 代表取締役 酒井 松喜\r\n同第27号 大阪市浪速区敷津東一丁目2番47号 株式会社クボタ建設 代表清算人 廣瀬 曜一\r\n同第28号 東京都港区芝二丁目14番5号 青木あすなろ建設株式会社 代表取締役 市木 良次\r\n同第29号 東京都品川区上大崎三丁目3番1号 株式会社冨士工 代表取締役 江利川和夫\r\n同第30号 名古屋市中区錦三丁目13番5号 徳倉建設株式会社 代表取締役 徳倉 正晴\r\n同第31号 東京都千代田区平河町二丁目1番1号 オリエンタル白石株式会社 代表取締役 柿塚 輝昭\r\n同第32号 東京都新宿区西新宿四丁目32番22号 小田急建設株式会社 代表取締役 高村 義明\r\n同第33号 金沢市彦三町一丁目13番43号 真柄建設株式会社 代表取締役 奥村 弘一\r\n同第34号 東京都港区虎ノ門一丁目20番10号 西松建設株式会社 代表取締役 國澤 幹雄\r\n\r\n別紙2\r\n代理人目録\r\n大成建設株式会社\r\n小田急建設株式会社 弁護士 石 井 成 一\r\n同        竹 内   淳\r\n復代理人弁護士  片 上 誠 之\r\n清水建設株式会社 弁護士      川 崎 隆 司\r\n同        谷 本 誠 司\r\n三井住友建設株式会社 弁護士      畠 山 保 雄\r\n同        松 井 秀 樹\r\n同        大 庭 浩一郎\r\n株式会社不動テトラ 弁護士      橋 本 副 孝\r\n同        吾 妻   望\r\n同        日 野 義 英\r\n同        笠   浩 久\r\n同        五十畑 亜紀子\r\n株式会社奥村組 弁護士      俵 谷 利 幸\r\n同        伴   義 聖\r\n同        堀 内 徹 也\r\n安藤建設株式会社 弁護士      金 森   仁\r\n同        山 田   学\r\n同        村 田   恒\r\n株式会社みらい建設グル−プ\r\n馬淵建設株式会社\r\n坂田建設株式会社 弁護士      千 石   保\r\n同        西 村 泰 夫\r\n復代理人弁護士  樽 本   哲\r\n鉄建建設株式会社 弁護士      志 田 至 朗\r\n復代理人弁護士  鈴 木 一 洋\r\n株式会社淺沼組 弁護士      宮 代   力\r\n飛島建設株式会社 弁護士      加 瀬 洋 一\r\n株式会社大林組 弁護士      上 林   博\r\n株式会社加賀田組 弁護士      若 山 正 彦\r\n大豊建設株式会社 弁護士      大 木 丈 史\r\n復代理人弁護士  清 水 保 晴\r\n株式会社錢高組 弁護士      茅 根 煕 和\r\n同        春 原   誠\r\n同        和 田 健 児\r\n\r\n別紙3\r\n別表1\r\n平成14年(判)第4号 株式会社不動テトラ\r\n同   第6号 安藤建設株式会社\r\n同   第19号 株式会社CKプロパティー\r\n同   第24号 株式会社松村組\r\n同   第26号 株式会社新井組\r\n同   第33号 真柄建設株式会社\r\n\r\n別表2\r\n平成14年(判)第1号 大成建設株式会社\r\n同   第3号 三井住友建設株式会社\r\n同   第5号 株式会社奥村組\r\n同   第7号 株式会社みらい建設グループ\r\n同   第9号 株式会社淺沼組\r\n同   第10号 飛島建設株式会社\r\n同   第11号 馬淵建設株式会社\r\n同   第12号 株式会社大林組\r\n同   第13号 株式会社加賀田組\r\n同   第14号 大豊建設株式会社\r\n同   第15号 坂田建設株式会社\r\n同   第16号 株式会社錢高組\r\n同   第18号 戸田建設株式会社\r\n同   第20号 東洋建設株式会社\r\n同   第21号 株式会社植木組\r\n同   第23号 佐田建設株式会社\r\n同   第25号 大木建設株式会社\r\n同   第27号 株式会社クボタ建設\r\n同   第28号 青木あすなろ建設株式会社\r\n同   第32号 小田急建設株式会社\r\n\r\n別紙4\r\n平成14年(判)第1号ないし第34号\r\n\r\n審   決   案\r\n\r\n被審人 別紙1被審人目録記載のとおり\r\n代理人 別紙2代理人目録記載のとおり\r\n\r\n上記被審人らに対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第35号)附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)に基づく課徴金納付命令審判事件について,公正取引委員会から独占禁止法第51条の2及び公正取引委員会の審判に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第8号)による改正前の公正取引委員会の審査及び審判に関する規則(以下「規則」という。)第31条第1項の規定に基づき担当審判官に指定された本職らは,審判の結果,次のとおり審決することが適当であると考え,規則第82条及び第83条の規定に基づいて本審決案を作成する。\r\n\r\n主       文\r\n1 別紙3の「被審人」欄記載の被審人らは,それぞれ課徴金として別紙3の「課徴金額(万円)」欄記載の金員を国庫に納付しなければならない。\r\n2 被審人株式会社冨士工,被審人オリエンタル白石株式会社及び被審人真柄建設株式会社並びに被審人徳倉建設株式会社に対しては,課徴金の納付を命じない。\r\n\r\n理       由\r\n第1 事実\r\n1 課徴金に係る違反行為\r\n(1) 多摩地区におけるゼネコン等\r\nア 多摩地区におけるゼネコン\r\n(ア) 被審人ら及び被審人らに吸収合併されたゼネコン並びにその他のゼネコン\r\na 被審人ら及び被審人らに吸収合併されたゼネコン\r\n被審人らは,それぞれ,別紙1被審人目録の「本店の所在地」欄に記載の場所に本店を置き,いずれも建設業法の規定に基づき国土交通大臣の許可を受け,国内の広い地域において総合的に建設業を営む者(以下「ゼネコン」という。)であり,東京都の区域のうち区部及び島しょ部を除く区域(以下「多摩地区」という。)においても営業所を置くなどして事業活動を行っている(以下,被審人らについては,別紙1被審人目録中「被審人」欄の括弧書きのとおり略称する。)。ただし,被審人CKプロパティーは,もと「株式会社地崎工業」との商号であったが,平成16年4月1日に会社分割の方法により建設業に関する一切の営業を他社へ譲渡し,現商号に変更したものであり,同日,建設業を廃業する旨の届出を行った。また,被審人大木建設は,平成17年3月31日,神田大木建設株式会社に営業を譲渡した上,解散を決議し,被審人クボタ建設は,平成18年8月1日,株式会社クボタ工建に営業の大半を譲渡した上,同年9月30日,解散を決議し,いずれも現在,清算手続中である。\r\n(査共第1号証,第9号証ないし第51号証,第53号証)\r\nなお,被審人三井住友建設は,もと「三井建設株式会社」との商号であったが,平成15年4月1日にゼネコンである住友建設株式会社(以下「住友建設」という。)を吸収合併し,現商号に変更した。被審人みらい建設グループは,もと「日東建設株式会社」との商号であったが,平成11年10月1日に大都工業株式会社を吸収合併して,「日東大都工業株式会社」に商号を変更し,さらに,平成14年4月1日,商号を現在のものに変更した。被審人JFE工建は,もと「日本鋼管工事株式会社」との商号であったが,平成15年7月1日に商号を現在のものに変更した。被審人青木あすなろ建設は,もと「小松建設工業株式会社」との商号であったが,平成14年10月1日に商号を「あすなろ建設株式会社」に変更した上,平成16年4月1日に株式会社青木建設を吸収合併し,現商号に変更した。被審人不動テトラは,もと「不動建設株式会社」との商号であったが,平成18年10月1日に株式会社テトラを吸収合併し,商号を現在のものに変更した。被審人オリエンタル白石は,もと「オリエンタル建設株式会社」との商号であったが,平成19年10月1日にゼネコンである株式会社白石(以下「白石」という。)を吸収合併した上,商号を現在のものに変更した。(争いがない。ただし,被審人オリエンタル白石については公知の事実。)\r\n被審人らのうち被審人三井住友建設及び同オリエンタル白石を除く32社並びに住友建設及び白石(以下「34社」という。)は,平成9年10月1日から平成12年9月27日までの間(以下「本件対象期間」という。)において,いずれも,財団法人東京都新都市建設公社(以下「公社」という。)の入札参加資格を有する者として,公社から後記(2)イ(ア)の登録を受け,土木工事のうち下水道工事及び一般土木工事の工種区分におけるランクがAとして格付けされていた。(査共第1号証,第367号証ないし第435号証)\r\nb その他のゼネコン\r\n34社以外にも,別紙4記載のゼネコン46社(以下,これら46社を総称して,又はそのうちのいずれかを示す意味で「その他のゼネコン」,「その他のゼネコン46社」又は「46社」という。なお,別紙4番号41の三井建設株式会社は,被審人三井住友建設と同一法人であるが,本件対象期間当時は34社に属する住友建設を吸収合併する前であるので,その他のゼネコンとして別紙4に重複記載し,この吸収合併前については「三井建設」と略称する。)も,本件対象期間中,公社の入札参加資格を有する者として,公社から後記(2)イ(ア)の登録を受けていた。(査共第367号証ないし第435号証)\r\n(イ) 多摩地区におけるゼネコンの事業活動の状況\r\n本件対象期間中,34社及びその他のゼネコンのほとんどは,多摩地区に営業所を置いて事業活動を行っていた。\r\nまた,これらゼネコンの多摩地区における営業所は,多摩地区において施工される公共工事のうち公社及び市町村の発注する工事を担当していた。\r\n(査共第1号証,第3号証,第4号証,第6号証ないし第51号証,第53号証,第56号証ないし第58号証,第62号証,第63号証,第68号証ないし第72号証,第75号証,第76号証,第78号証ないし第80号証,第82号証,第83号証,第85号証,第87号証,第88号証,第90号証,第91号証,第93号証,第100号証,第101号証,第103号証ないし第106号証,第111号証,第112号証,第114号証,第116号証ないし第120号証,第135号証,第137号証ないし第140号証,第142号証ないし第144号証,第148号証,第149号証,第151号証,第153号証,第155号証,第158号証,第159号証,第162号証,第163号証,第165号証,第168号証,第170号証,第174号証,第179号証,第182号証ないし第186号証,第188号証,第192号証,第201号証,第203号証ないし第206号証,第210号証,第232号証,第233号証,第235号証,第237号証,第239号証,第242号証,第245号証,第249号証,第290号証,第294号証,第296号証,第297号証,第352号証,第365号証)\r\nイ 地元業者\r\n公社が,本件対象期間において,34社及びその他のゼネコンのうち複数の者を指名し又はこれらいずれかの者を代表者とする複数の建設共同企業体(以下「JV」という。)を指名して指名競争入札の方法により発注するAランク格付の土木工事及び共同施工方式により施工する土木工事の入札には,地元業者(ゼネコンには該当しない。)が参加することがあった。本件対象期間においてこれらの入札に参加した地元業者は,別紙5の165社であり(以下,これら165社を総称して,又はそのうちのいずれかを示す意味で「165社」又は「地元業者」という。地元業者には協同組合も含まれるが,以下,協同組合も社として数える。),このうち,本件対象期間において,公社の入札参加資格を有する者として,公社から後記(2)イ(ア)の登録を受け,土木工事のうち下水道工事の工種区分におけるランクがAとして格付けされていた者は74社であった。(査共第328号証,第367号証ないし第435号証,第469号証,第470号証)\r\n(2) 公社が発注する工事\r\nア 公社の概要\r\n公社は,東京都並びに八王子市,青梅市,町田市,福生町,羽村町及び日野町(当時の市町名)により,昭和36年7月20日に設立された財団法人であり,多摩地区に所在する市町村から委託を受けるなどして,多摩地区において公共下水道の建設等の都市基盤整備事業を行う者である。(査共第60号証)\r\nイ 公社の発注方法\r\n(ア) 発注方法の概要\r\n公社は,原則として,土木工事を指名競争入札の方法により発注しており,予定価格が500万円以上である工事の発注に当たっては,工事の件名,概要,格付等を公示して,公社が入札参加資格を満たす者として登録している有資格者の中から入札参加希望者を募り,入札参加希望者の中から指名競争入札の参加者を指名していた。\r\nまた,共同施工方式により施工する土木工事の発注に当たっては,\r\n入札参加希望者の中からJVの構成員となるべき者を指名し,これらの者により結成されたJVを指名競争入札の参加者としていた。\r\n(査共第436号証,第438号証)\r\n(イ) 事業者ランク,工事の格付及び指名業者の選定基準\r\na 公社は,前記(ア)の有資格者を,その事業規模等により工種区分ごとにAからEまでのいずれかのランク(以下「事業者ランク」という。)に格付けした上,格付ごとに順位(以下「格付順位」という。)を付していた。\r\nまた,公社は,発注する土木工事を,その工事の予定価格を基準とし,これに工事の技術的な難易度等を勘案して,AからEまでのランクの1社によって施工される工事(以下「単独施工工事」という。)並びにいずれもAランク(以下「AAランク」という。)の2社,Aランク及びBランク(以下「ABランク」という。)の2社又はAランク及びCランク(以下「ACランク」という。)の2社の共同施工方式により施工される工事(以下「共同施工工事」という。)に分けて格付けしていた。その際に用いる金額基準は,予定価格を「5億6000万円以上」,「3億円以上5億6000万円未満」,「2億6000万円以上3億円未満」,「1億7000万円以上2億6000万円未満」等に分類したものであり,これらの金額基準は,それぞれAAランク,ABランク,ACランク,Aランクに対応していたが,例外的に,予定価格が当該ランクの金額基準に満たない場合であっても,工事内容等を勘案して当該工事の本来のランクよりも上位のランクに格付けすることがあった。\r\nそして,公社は,AからEまでのランクの単独施工工事について指名競争入札の参加者を指名するに当たっては,発注する工事のランクに対応する事業者ランクに格付けされた者の中から指名することを基本としていた。また,ABランク又はACランクに格付けした共同施工工事について指名競争入札の参加者を指名するに当たっては,事業者ランクがAである者をJVの構成員のうちの代表者(以下「JVのメイン」又は「メイン」という。)として指名し,事業者ランクがB又はCの者をJVのメイン以外のJVの構成員(以下「JVのサブ」という。)として指名することを基本としており,指名を受けたJVのメインとJVのサブにJVを結成させ,当該JVを指名競争入札の参加者としていた。AAランクに格付けした共同施工工事については,JVのメインとJVのサブを区別せずに,事業者ランクがAの者の中から指名することを基本としており,指名を受けた者同士にJVを結成させ,当該JVを指名競争入札の参加者としていた。\r\n(査共第436号証,第438号証,第439号証,第466号証ないし第470号証)\r\nb 公社は,工事希望票の提出者の中から指名競争入札の参加者を選定するに当たっては,以下のとおり,発注する土木工事の規模,施工・技術的難易度等を総合的に勘案していた。\r\n(a) 工事の規模\r\n公社は,前記aのとおり,単独施工工事及び共同施工工事について格付けしており,規模が大きな工事については,工事希望票を提出してきた者の中から,原則として格付順位が上位の者を優先して選定していた。(査共第439号証ないし第441号証)\r\n(b) 工法レベル\r\n公社が発注する土木工事の工法には,大きく分類すると,「シールド工法」,「推進工法」及び「開削工法」があり,公社は,これに掘削深度や施工距離を加味して,高度な施工技術が求められると判断される工事については,工事希望票を提出してきた者の中から,原則として,格付順位が上位の者を優先して選定していた。また,工法(シールド工法,推進工法)の資格を必要とする工事については,当該工法の資格を有する者を選定していた。(査共第367号証ないし第435号証,第437号証,第439号証ないし第441号証,第464号証,第465号証,第469号証,第470号証)\r\n(c) その他の要素\r\n以上のほか,公社は,地元建設業者の育成を図りつつ,当該工事の技術的困難性に応じた選定を行っており,選定する事業者がどのような分類(「地元業者」,「準地元業者」,「隣接の市の業者」,「近隣の市の業者」,「多摩の地元業者」,「多摩の業者」,「多摩の格付上位業者」,「A格格付上位業者」等)に属する事業者かを総合的に勘案していた。\r\nまた,公社は,何度も工事希望票を提出しているにもかかわらず指名されていない事業者を救済する目的で,工事希望票の提出回数,指名回数及び受注回数を考慮して選定する場合があった。\r\nさらに,公社は,事業者が,公社発注の工事を受注し施工に着手している場合には当該工事の施工が相当程度に達するまで,また,別の物件の指名競争入札の参加者として指名を受けている場合には当該入札の執行が終わるまで,指名競争入札の参加者として選定しないこととしていた。\r\n(査共第439号証ないし第441号証)\r\n(ウ) 入札参加及び指名の手続\r\n公社は,入札参加者を募り,希望者の中から入札に参加する者を指名する方法を工事希望型指名競争入札と称している。公社は,「工事発注予定表」をもって発注する工事の件名,格付等を公示して,入札参加希望者に工事希望票を提出させ,工事希望票の提出者の中から入札に参加する事業者又はJVの構成員となるべき者を選定していた。\r\n公社は,入札に参加する事業者又はJVの構成員となるべき者の選定に当たっては,単独施工工事については10社が,共同施工工事については10組のJVが,それぞれ入札に参加するように選定することを常としていた。\r\n(査共第436号証,第438号証ないし第441号証,第464号証ないし第466号証)\r\n(エ) 指名後の手続の概要等\r\na 入札に参加する事業者又はJVの構成員となるべき者を指名した後,手続は,単独施工工事の場合には,指名した事業者に対する現場説明会,入札,落札者との契約の順に進められ,また,共同施工工事の場合には,JV結成についての説明会,入札参加者によるJV結成の届出,現場説明会,入札,落札者との契約の順に進められていた。(査共第436号証,第438号証,第439号証)\r\nb 公社は,入札に当たって予定価格及び最低制限価格を設定しているところ,平成13年9月以前は,予定価格を事前に公表しておらず,各入札参加者の入札価格の全部が予定価格に達しない場合には,その場で3回まで入札を行うこととしていた。また,最低制限価格を下回る価格で入札した者は失格とし,最低制限価格以上の価格で入札した者の中で最も低い価格で入札した者を落札者としていた。(査共第328号証,第436号証)\r\nなお,公社の設定する最低制限価格は,予定価格の80パーセントに相当する額であり,このことは,ゼネコンの入札担当者に広く認識されていた。(査共第5号証,第6号証,第8号証,第54号証,第56号証,第65号証ないし第71号証,第91号証)\r\n(オ) JVの入札価格の決定\r\nJVを結成して公社の指名競争入札に参加する場合には,通常,JVのメインが入札価格を決定していた。(査共第56号証,第62号証,第66号証,第77号証,第83号証,第85号証ないし第93号証,第153号証)\r\nウ 本件の工事の特性\r\n(ア) 公社は,本件対象期間中,Aランクの格付の単独施工工事並びにAA,AB及びACのランクの格付の共同施工工事の土木工事で,入札参加者の少なくとも一部の者につき34社及びその他のゼネコンのうちの複数の者を指名し又はこれらのいずれかの者をJVのメインとする複数のJVを指名して指名競争入札の方法により発注するもの(以下「公社発注の特定土木工事」という。)について,別紙6のとおり入札を実施して72物件発注した。(査共第328号証,第463号証)\r\n(イ) 公社が発注する工事は,各物件についてみると,規模の大小があり,工法レベルも異なり,施工・技術の難度が高いものからそうでないものまで,その難易度も一様ではなかった。\r\nそして,公社は,公社発注の特定土木工事を発注するに当たり,発注する予定の工事について,工事の規模,工法レベル,地元建設業者の育成の必要性等を総合的に検討し,当該工事の難易度を判断した上,当該工事を施工する能力があると判断した事業者の中から,より適切な者を指名していた。\r\n(査共第436号ないし第441号証,第466号証ないし第468号証)\r\n(3) 違反行為等\r\nア 背景事情\r\n(ア) 多摩地区に営業所を置くゼネコンは,以前,これらの営業所において土木工事を担当する営業責任者をメンバーとする三多摩建友会と称する組織に参加していた。同会は,昭和54年ころに発足し,平成4年ころまで存続していたが,公正取引委員会が同年5月15日に同会の会員を含む埼玉県発注の土木工事の入札参加者に対して勧告を行った(いわゆる埼玉土曜会事件)のを機に解散した。(査共第6号証,第58号証,第68号証,第70号証,第94号証ないし第98号証,第100号証ないし第106号証)\r\nしかし,三多摩建友会の解散後も,旧会員らのほか,解散後に多摩地区に進出したゼネコンや多摩地区に営業所を置かずに事業活動を行っているゼネコンの営業担当者を含めて,恒例的に懇親会が開催されていた。また,同会の解散以前には,ゼネコン各社の営業担当者の名簿が作成されていたところ,解散後もほぼ同じ体裁の名簿が作成されていた。(査共第2号証,第4号証ないし第7号証,第9号証ないし第48号証,第50号証,第51号証,第53号証,第54号証,第56号証,第57号証,第87号証,第101号証,第107号証ないし第112号証,第114号証ないし第120号証)\r\n(イ) 三多摩建友会存続当時,前記(ア)の名簿に掲載されているゼネコンの間では,工事の入札に当たって,受注意欲を持つ者や,発注される工事との関連性を持つ者がある場合には,当該受注意欲や関連性を尊重することによって競争を避けることが望ましいとの認識が存しており,受注を希望する者の間の話合いが難航した場合には,同会の会長等の役員が調整に当たっていた。\r\n同会の解散後においても,多摩地区において事業活動を行うゼネコン各社は,上記と同じ認識を有していた。\r\n(査共第2号証ないし第59号証,第62号証,第63号証,第66号証,第67号証,第69号証ないし第72号証,第74号証,第78号証ないし第81号証,第85号証,第86号証,第89号証,第91号証ないし第93号証,第98号証,第99号証,第102号証ないし第106号証,第110号証,第113号証,第121号証ないし第177号証,第179号証ないし第189号証,第191号証ないし第195号証,第199号証,第201号証ないし第212号証,第244号証,第246号証)\r\nイ 本件違反行為\r\n(ア) 本件基本合意\r\n34社のうち被審人徳倉建設を除く33社(以下「33社」又は「違反行為者」という。被審人徳倉建設が本件違反行為の当事者と認められないことは,後記第4の1(2)ウにおいて述べるとおりである。)は,遅くとも平成9年10月1日以降,公社発注の特定土木工事について,受注価格の低落防止を図るため\r\na 公社から指名競争入札の参加者として指名を受けた場合(自社が構成員であるJVが指名を受けた場合を含む。)には,当該工事若しくは当該工事の施工場所との関連性が強い者若しくはJV又は当該工事についての受注の希望を表明する者若しくはJV(以下「受注希望者」という。)が1名のときは,その者を受注予定者とし,受注希望者が複数のときは,それぞれの者の当該工事又は当該工事の施工場所との関連性(以下「条件」という。)等の事情を勘案して,受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する\r\nb 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する\r\n旨合意していた(以下この合意を「本件基本合意」という。)。\r\n(査共第3号証,第5号証,第6号証,第54号証,第66号証,第69号証,第73号証,第78号証ないし第80号証,第84号証,第85号証,第98号証,第99号証,第102号証,第113号証,第135号証ないし第140号証,第143号証,第145号証,第158号証,第159号証,第161号証ないし第163号証,第165号証,第166号証,第168号証ないし第173号証,第175号証,第191号証ないし第193号証,第195号証,第201号証,第202号証)\r\n(イ) 本件基本合意の内容及び具体的実施方法\r\na 本件基本合意の対象\r\n本件基本合意の対象は,公社発注の特定土木工事であった。(査共第3号証,第5号証,第6号証,第54号証,第66号証,第69号証,第73号証,第78号証ないし第80号証,第84号証,第85号証,第98号証,第99号証,第102号証,第106号証,第138号証,第140号証,第145号証,第158号証,第163号証,第168号証ないし第170号証,第173号証,第181号証,第190号証ないし第192号証)\r\nb 個別物件において受注予定者を決定し受注予定者の受注に協力するまでの状況\r\n(a) ① 33社のうち受注希望者は,当該工事の発注が予測された時点,あるいは公社が入札の執行を公示(入札参加希望者を公募)した時点で,他の違反行為者並びに被審人徳倉建設及びその他のゼネコン又はゼネコンの多摩地区における営業担当者のうちの有力者(以下「業界の有力者」という。)に対して,自社が受注を希望していること又は自社が条件を有していることを必要に応じてアピールしていた。(査共第3号証,第5号証,第6号証,第54号証,第66号証,第68号証,第78号証,第79号証,第85号証,第99号証,第135号証,第137号証,第138号証,第140号証,第142号証,第143号証,第145号証,第146号証,第163号証,第165号証,第166号証,第168号証,第170号証ないし第173号証,第175号証,191号証ないし第193号証,第195号証,第201号証,第202号証,第219号証ないし第221号証,第231号証ないし第233号証,第235号証,第237号証,第239号証,第240号証,第290号証,第291号証,第293号証)\r\n② 受注希望者は,アピールの方法の一つとして,地図に工事予 定箇所及び近隣における自社の施工実績等を記入した資料又 は予定工事に関連する設計業務等に係る資料(以下「PR紙」 という。)を用いることがあった。PR紙は,特に,業界の有 力者に相談する際に条件を有することをアピールするための 手段として,しばしば用いられていた。\r\n業界の有力者とは,三多摩建友会の最後の会長で,被審人大 成建設多摩営業所の所長であった大木正毅(以下「被審人大成 建設の大木」という。)のほか,被審人大成建設土木営業本部 営業担当部長の中西豊(以下「被審人大成建設の中西」という。) 及び被審人大成建設の大木の部下であった多摩営業所の次長 の松本洋一(以下「被審人大成建設の松本」という。)並びに 被審人飛島建設多摩営業所の所長であった丸山正文(以下「被 審人飛島建設の丸山」という。)であった。\r\n各社の担当者は,被審人大成建設の大木に対しては,PR紙 を提出したり,口頭で受注希望を表明したりして,これに対す る同人の反応,すなわち,「受注活動を続けたらよい。」,「他 に有力な条件を持つ者がいる。」などの示唆を踏まえて,発注 される工事について受注活動を継続するか受注活動を中断す るかなどの判断をしていたが,平成12年2月29日に同人が 退職した後,公正取引委員会が同年3月29日に町田市発注工 事の入札参加者に対して立入検査を行ったことから,被審人大 成建設の中西と松本に対しては,PR紙を提出することが少な くなった。\r\n(査共第3号証ないし第6号証,第54号証,第66号証, 第68号証,第78号証,第79号証,第85号証,第98号 証,第99号証,第102号証,第110号証,第115号証, 第135号証ないし第137号証,第139号証,第140号 証,第142号証,第145号証,第146号証,第158号 証,第163号証,第165号証,第166号証,第168号 証,第170号証,第171号証,第173号証,第184号 証,第191号証,第193号証,第195号証,第199号 証,第201号証,第202号証,第216号証,第219号 証ないし第223号証,第229号証,第232号証,第23 3号証,第235号証,第237号証,第239号証,第24 0号証,第251号証,第258号証,第263号証,第26 4号証,第280号証,第289号証,第290号証,第29 2号証,第294号証,第295号証,第298号証ないし第 307号証)\r\n③ 受注希望者が他の違反行為者にアピールをした場合におい て,当該他の違反行為者も受注希望を表明したときは,アピー ルをした者とアピールを受けた者の間で,いずれの者の条件が 強いかについて話合いを行っていた。アピールを受けた他の違 反行為者すべてが受注希望を表明しなかったときは,この段階 すなわち入札指名の前の段階で,受注希望者が1社に絞り込ま れていた。(査共第6号証,第54号証,第66号証,第85 号証,第98号証,第137号証,140号証,第166号証, 第172号証,第175号証,第191号証,第193号証, 第195号証,第202号証)\r\n(b) 受注希望者は,前記(a)のアピールに代えて,又はこれと併せて,他の違反行為者並びに被審人徳倉建設及びその他のゼネコンに対して,公社に工事希望票を提出するよう依頼していた。この依頼は,他の違反行為者並びに被審人徳倉建設及びその他のゼネコンに入札に参加して自社の受注に協力してほしいという趣旨で行われるものであるが,同時に,当該入札の参加者のうち,自社の受注への協力を見込めるゼネコンが占める割合を多くすることにより,自社が受注できる可能性を高めることも目的としていた。(査共第5号証,第6号証,第54号証,第66号証,第67号証,第69号証,第72号証,第73号証,第77号証,第79号証,第80号証,第86号証,第99号証,第145号証,第158号証,第164号証,第167号証,第168号証,第171号証,第173号証,第175号証,第195号証,第238号証,第240号証,第295号証,第316号証,第319号証,第320号証,第322号証ないし第324号証)\r\n(c) ① 受注希望者は,公社の指名により入札参加者が確定した以降において,必要に応じて,相指名業者に対して,改めて,自社が受注を希望していること又は自社が条件を有していることをアピールし,自社が受注できるよう入札での協力を依頼していた。この依頼は,現場説明会のために相指名業者がそろった際に口頭で行われたり,個別訪問又は電話により行われたりしていた。この時点で,ほかにも受注希望者がいる場合には,受注希望者の間でいずれの条件が強いかを話し合うことにより,受注予定者が決定されていた。(査共第5号証,第6号証,第66号証,第85号証,第138号証,第143号証,第166号証,第170号証,第175号証)\r\n② 条件は,具体的には,i.当該工事が過去に自社が施工した工事の継続工事であること,ii.自社と特別な関係にある建設コン サルタント業者(以下「ダミコン」という。)が当該工事の調 査又は設計の入札に参加していること,iii.当該工事の施工場所 又はその近隣で施工実績があること,iv.当該工事の施工場所の 近隣に自社の資材置場や営業所等の施設があること,v.自社又は関連会社が当該工事の施工場所の地権者であること(賃借権者であること及び施工場所の近隣の土地の所有権者であることを含む。以下同じ。)等である。\r\nこれらの条件の中では,自社が施工した工事の継続工事であることや当該工事の施工場所の地権者であることがそれ以外の条件よりも強い条件であり,その他の条件については強さの順序が明確ではなく,受注希望者間で条件の強弱について話合いが行われ,その結果,受注予定者が決められていた。\r\nなお,当該工事について強い条件を持つJVのメインがいない場合においては,当該工事の施工場所の近くに事業所を有するなどの強い条件を持つ地元業者等とJVを結成したJVのメインが,強い条件を持っていると主張し得ることとなっていた。\r\n(査共第3号証ないし第6号証,第54号証,第78号証,第85号証,第98号証,第99号証,第138号証ないし第140号証,第143号証,第158号証,第159号証,第161号証ないし第163号証,第165号証ないし第168号証,第170号証,第171号証,第173号証,第175 号証,第177号証,第193号証,第195号証,第201号証,第202号証,第239号証)\r\n③ また,受注希望者間の話合いにおいて,受注希望者の受注希望ないし受注努力の強さなどが反映される場合があった。(査共第167号証,第324号証)\r\n④ さらに,発注される工事について,自社に強い条件があり,他社に条件がない場合には,他社に対して直接の受注希望の表明ないし入札における協力の依頼をしなくとも,自社に強い条件があるということを他社が認識していれば,受注予定者とされていた。したがって,当該工事を受注しようとする者は,自社に強い条件があることが他の相指名業者にも明らかであると考える場合には,その相指名業者に対し入札における協力を依頼しないこともあり,他方,自社に条件があることを相指名業者に認めてもらうことが必要と判断した場合には,その条件を相指名業者に認めてもらうよう働きかけていた。(査共第99号証,第137号証,第166号証)\r\n⑤ なお,JVを結成して入札に参加する場合には,JVの受注 への協力の依頼,受注予定者を決めるための話合いは,通常, JVのメインの間で行われていた。(査共第5号証,第66号 証,第69号証,第77号証,第80号証,第85号証,第8 6号証)\r\n(d) ① 受注予定者が決定された場合には,受注予定者が他の違反行為者並びに被審人徳倉建設及びその他のゼネコンのうち相指名業者となった者に対して,入札価格を連絡し,連絡を受けたこれらの者は,受注予定者の入札価格より高い価格で入札していた。また,相指名業者となったこれらの者は,経験的に,発注工事と同等の過去の工事の入札結果等を勘案して積算することにより予定価格を推計できることから,受注予定者から入札価格の連絡がなくても,受注予定者の受注を妨げないであろう価格を比較的容易に予測し得たので,そのような価格で入札していた。\r\nこのような入札価格の連絡を受けることにより,指名を受けた違反行為者は,受注予定者を知ることもあった。\r\n② 入札価格の連絡・確認方法は一様ではなく,i.受注予定者が相指名業者の入札価格を決めた上で連絡する方法,ii.受注予定者が相指名業者の積算価格を問い合わせて自社の入札価格より高い価格であることを確かめ,その積算価格に基づき入札するよう依頼する方法,iii.相指名業者が自社の入札価格を受注予定者に連絡し,受注予定者が異議を述べなければそのままの価格で入札する方法等がとられていた(以下,「入札価格の連絡・確認」というときは,これら等の方法によるものを指す。)。\r\n(査共第4号証,第5号証,第54号証,第66号証,第67号証,第69号証,第72号証,第73号証,第79号証ないし第81号証,第85号証,第86号証,第99号証,第110号証,第135号証,第137号証,第143号証,第145号証,第147号証,第148号証,第164号証,第168号証ないし第171号証,第173号証,第175号証,第192号証,第295号証,第316号証,第323号証,第324号証,第341号証,第349号証,第354号証)\r\n③ なお,JVを結成して入札に参加する場合には,入札価格の連絡・確認は,通常,JVのメイン間で行われていた。(査共第66号証,第69号証,第80号証)\r\n④ 公社は,予定価格を下回る入札がなかった場合には,入札日において3回まで入札を行っているため,受注予定者は,3回分の入札価格を連絡することがあった。(査共第110号証)\r\nウ 個別物件の受注調整の状況\r\n33社は,以下の(イ),(エ)ないし(ケ),(サ)ないし(メ)のとおり,31物件について,本件基本合意に基づき,公社発注の特定土木工事について,必要に応じて,業界の有力者の助言を得るなどして,受注予定者を決定し,さらに,受注予定者は,指名競争入札の参加者として指名を受けた他の違反行為者並びに被審人徳倉建設及びその他のゼネコンの協力を得て受注した。\r\nなお,別紙6の番号1の物件(後記(ア)。この物件を以下単に「番号1の物件」といい,別紙6の物件については,その番号に従い,以下同様に略称する。),番号4の物件(後記(ウ))及び番号19の物件(後記(コ))については,受注予定者が決定されたものの,後記第4の3(2)ア,ウ及びサで判断するとおり,課徴金の対象になるとは認められない。\r\n(ア) 番号1の物件\r\na 公社は,番号1の物件について,ABランクの共同施工工事として,平成9年10月16日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年11月17日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者5社(被審人冨士工,同CKプロパティー,同大木建設,同加賀田組及び同みらい建設グループ。なお,被審人CKプロパティーの本件対象期間中における商号は「株式会社地崎工業」であり,被審人みらい建設グループの商号は,平成11年9月末まで「日東建設株式会社」,同年10月1日から平成14年3月末まで「日東大都工業株式会社」であった。),その他のゼネコン1社及び地元業者4社であった。\r\n(査共第328号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人冨士工は,番号1の物件の施工場所と同じ町内において下水道築造工事を施工した実績があるため,同物件の受注を希望していた。(査共第6号証)\r\nc 被審人冨士工は,公社が番号1の物件の入札予定を公表した後,被審人大木建設,その他のゼネコンである古久根建設等約10社のゼネコンに対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,被審人冨士工が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。(査共第5号証,第6号証,第134号証,第151号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人冨士工は,JVを組んで施工した実績を持つ地元業者である南王建設とJVを組んだ。(査共第6号証,第328号証)\r\ne 被審人冨士工は,入札までに,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が番号1の物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたゼネコン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第5号証,第6号証)\r\nf 指名を受けたJVのメインであるゼネコン各社(被審人CKプロパティー,同大木建設,同加賀田組,同みらい建設グループ及び東鉄工業)は,以上の過程で被審人冨士工・南王建設JVが番号1の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。\r\nしかし,いずれも地元業者である戸田道路,イワキ工業及び坂本工業は,受注意欲を示しており,同和工営も態度を留保した。\r\n(査共第6号証,第162号証)\r\ng 指名を受けたゼネコンをメインとする5組のJVは,被審人冨士工・南王建設JVの入札価格よりも高く予定価格を上回る価格で入札した。\r\n被審人冨士工・南王建設JVは,地元業者との叩き合いになると判断し,最低制限価格である予定価格の80パーセントの金額で入札した。そして,地元業者をメインとするJVのうち,1組は最低制限価格を3万1000円下回ったため失格し,3組は最低制限価格をそれぞれ1万3000円,62万円,62万2000円上回る価格で入札をしたので,2億4020万8000円で入札した被審人冨士工・南王建設JVが落札した。その落札率は,80.0パーセントであった。\r\n(査共第5号証,第328号証,第463号証)\r\n(イ) 番号2の物件\r\na 公社は,番号2の物件について,Aランクの単独施工工事として,平成10年2月12日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10社を指名して,同年3月9日に入札を実施した。\r\n指名業者は,違反行為者7社(被審人植木組,同大豊建設,同CKプロパティー,同クボタ建設,同佐田建設,同加賀田組及び白石)及びその他のゼネコン3社であった。\r\n(査共第328号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人植木組は,平成8年に多摩営業所を開設した後,多摩地区において受注したことがなく,受注実績を作りたかったため,番号2の物件の受注を希望していた。(査共第167号証)\r\nc 被審人植木組は,公社が番号2の物件の入札予定を公表したころ,その他のゼネコンである大末建設に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝え,また,その他のゼネコンである大日本土木に対して,工事希望票の提出を依頼した。(査共第73号証,第167号証)\r\nd 公社が指名を行った後,入札までに,被審人植木組は,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が番号2の物件の受注を希望している旨を伝えた。(査共第73号証,第167号証)\r\ne 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人植木組が番号2の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第73号証,第85号証,第162号証,第167号証,第183号証,第352号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,被審人植木組の入札価格よりも高い価格で入札した結果,入札価格が予定価格を下回ったのは被審人植木組のみであったので,同社が落札した。(前記eに掲げた証拠,査共第328号証,第463号証)\r\n(ウ) 番号4の物件\r\na 公社は,番号4の物件について,Aランクの単独施工工事として,平成10年4月23日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10社を指名して,同年5月18日に入札を実施した。\r\n指名業者は,違反行為者4社(白石,被審人不動テトラ,同JFE工建及び同CKプロパティー。なお,被審人不動テトラ及び同JFE工建の本件対象期間中の商号は,それぞれ「不動建設株式会社」及び「日本鋼管工事株式会社」であった。),その他のゼネコン1社及び地元業者5社であった。\r\n(査共第328号証,第463号証,第464号証)\r\nb 白石は,番号4の物件について,特に条件を有していなかったが,受注を希望し,土質調査等をしていた。(第175号証,第307号証)\r\nc 公社が指名を行った後,入札までに,白石は,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が番号4の物件の受注を希望している旨を伝え,また,入札してもらう価格を連絡した。(査共第77号証,第91号証)\r\nd 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で白石が番号4の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第77号証,第91号証,第339号証)\r\ne 指名を受けたゼネコンのうち,2社は予定価格を上回る価格で入札し,1社は白石の入札価格よりも高い価格で入札し,被審人JFE工建は入札に参加しなかった。\r\n番号4の物件の入札には地元業者が5社指名を受けて参加したため,白石は,最低制限価格である予定価格の約80パーセントの金額で入札した。そして,地元業者のうち,3社は最低制限価格を7万6200円(2社)又は347万3200円下回ったため失格し,1社は白石の入札価格を1448万円上回る価格で入札し,1社は予定価格を上回る価格で入札をしたので,1億7052万円で入札した白石が落札した。その落札率は,80.09パーセントであった。\r\n(査共第175号証,第328号証,第463号証)\r\n(エ) 番号6の物件\r\na 公社は,番号6の物件について,ABランクの共同施工工事として,平成10年4月23日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年5月25日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者3社(被審人クボタ建設,同奥村組及び同みらい建設グループ),その他のゼネコン4社及び地元業者3社であった。\r\n(査共第328号証,第369号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人クボタ建設は,番号6の物件の施工場所の近隣において町田市発注の水道工事を施工した実績があること及びダミコンであるクリエイト設計が同物件の調査設計作業の入札参加者として指名されたことから,同物件の受注を希望していた。(査共第85号証,第173号証,第200号証)\r\nc 被審人クボタ建設は,公社が番号6の入札予定を公表した日に,被審人大成建設の大木に対して同物件の受注を希望している旨を伝えた。(査共第85号証,第173号証)\r\nd 被審人クボタ建設は,公社が番号6の物件の入札予定を公表した後,被審人奥村組及び同みらい建設グループ並びにいずれもその他のゼネコンである池田建設,日産建設,フジタ,竹中土木及び古久根建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人クボタ建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第103号証,第137号証,第151号証,第173号証,第184号証,第316号証,第319号証,第369号証)\r\ne 公社が指名を行った後,被審人クボタ建設は,番号6の物件の施工場所の近隣で施工実績を持つ株式会社曽根建設(以下「曽根建設」という。)とJVを組んだ。(査共第85号証,第173号証,第328号証)\r\nf 被審人クボタ建設は,入札までに,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が番号6の物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたゼネコン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第85号証,第103号証,第137号証,第173号証,第184号証,第316号証,第349号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人クボタ建設・曽根建設JVが番号6の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第85号証,第103号証,第137号証,第173号証,第184号証,第349号証)\r\nh 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人クボタ建設との間で入札価格の連絡・確認をしたとおり,被審人クボタ建設・曽根建設JVの入札価格よりも高い価格で入札した。(査共第85号証,第103号証,第137号証,第173号証,第184号証,第316号証,第328号証,第349号証)\r\nなお,地元業者をメインとする3組のJVは,被審人クボタ建設の依頼を受け,被審人クボタ建設・曽根建設JVの入札価格を上回った。(査共第173号証,第328号証,第463号証)\r\nこの結果,入札価格が予定価格を下回ったのは被審人クボタ建設・曽根建設JVの入札価格のみであったので,同JVが落札した。(査共第328号証,第463号証)\r\n(オ) 番号7の物件\r\na 公社は,番号7の物件について,ABランクの共同施工工事として,平成10年4月23日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年5月25日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者2社(被審人加賀田組及び同小田急建設),被審人徳倉建設,その他のゼネコン4社及び地元業者3社であった。\r\n(査共第328号証,第370号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人加賀田組は,番号7の物件の施工場所の近隣において公社発注の土木工事を施工した実績があるため,同物件の受注を希望した。(査共第162号証)\r\nc 被審人加賀田組は,公社が番号7の物件の入札予定を公表した後,被審人小田急建設及び同徳倉建設並びにいずれもその他のゼネコンである京王建設,環境建設(当時の商号は「石原建設株式会社」)及び浅野工事に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人加賀田組が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第72号証,第370号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人加賀田組は,番号7の物件の施工場所の近くに本社がある株式会社イワヲ建設(以下「イワヲ建設」という。)とJVを組んだ。(査共第162号証,第328号証)\r\ne 被審人加賀田組は,入札までに,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が番号7の物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたゼネコン各社及び地元業者との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第72号証,第144号証,第150号証,第162号証,第362号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人加賀田組・イワヲ建設JVが番号7の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第72号証,第144号証,第145号証,第150号証,第162号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人加賀田組・イワヲ建設JVの入札価格よりも高い価格で入札した。(査共第72号証,第144号証,第145号証,第150号証,第162号証,第328号証)\r\nなお,地元業者をメインとする3組のJVは,被審人加賀田組の依頼を受け,入札価格が被審人加賀田組・イワヲ建設JVの入札価格を上回った。(査共第72号証,第328号証)\r\nこの結果,被審人加賀田組・イワヲ建設JVが落札した。(査共第328号証)\r\n(カ) 番号9の物件\r\na 公社は,番号9の物件について,ACランクの共同施工工事として,平成10年4月16日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年5月26日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者5社(被審人鉄建建設,同大林組,同清水建設,同西松建設及び同錢高組),その他のゼネコン2社及び地元業者3社であった。\r\n(査共第328号証,第372号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人鉄建建設は,ダミコンであるニュージャパンコンサルタントが番号9の物件の施工場所の調査設計作業の入札参加者として指名されたことから,同物件の受注を希望していた。(査共第138号証,第200号証,第255号証,第350号証)\r\nc 被審人鉄建建設は,被審人大成建設の大木に対して,ニュージャパンコンサルタントから入手した調査設計作業の工事設計書など発注情報に関する資料を持参して,自社が番号9の物件の受注を希望している旨を伝えた。(査共第325号証,第350号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人鉄建建設は,指名業者の中で番号9の物件の施工場所の最も近くに所在する株式会社館建リース(以下「館建リース」という。)とJVを組んだ。(査共第325号証,第350号証)\r\ne 被審人鉄建建設は,入札までに,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が番号9の物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたゼネコン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第80号証,第181号証,第196号証,第325号証,第338号証,第350号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人鉄建建設・館建リースJVが番号9の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(前記eに掲げた証拠)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメイン(入札に参加しなかったJVのメインである被審人西松建設を除く。)は,被審人鉄建建設との間で入札価格の連絡・確認をしたとおり,被審人鉄建建設・館建リースJVの入札価格よりも高い価格で入札した。(査共第80号証,第181号証,第196号証,第325号証,第328号証,第338号証)\r\nなお,地元業者をメインとする3組のJVの入札価格は,被審人鉄建建設・館建リースJVの入札価格を上回った。(査共第328号証)\r\nこの結果,入札価格が予定価格を下回ったのは被審人鉄建建設・館建リースJVのみであったので,同JVが落札した。(査共第328号証,第463号証)\r\n(キ) 番号10の物件\r\na 公社は,番号10の物件について,ABランクの共同施工工事として,平成10年4月16日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年5月26日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者3社(被審人大木建設,同佐田建設及び同青木あすなろ建設。なお,被審人青木あすなろ建設の本件対象期間中の商号は「小松建設工業株式会社」である。),その他のゼネコン4社及び地元業者3社であった。\r\n(査共第328号証,第373号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人大木建設は,番号10の物件の施工場所の近隣において八王子市発注の下水道工事を施工した実績があるため,同物件の受注を希望していた。(査共第5号証)\r\nc 被審人大木建設は,公社が番号10の物件の設計作業を発注した後,被審人大成建設の大木に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝えた。また,被審人大木建設は,公社が同物件の入札予定を公表した後,被審人青木あすなろ建設並びにいずれもその他のゼネコンである西武建設,東鉄工業及び勝村建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,被審人大木建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。(査共第5号証,第93号証)\r\nd 被審人大木建設は,入札までに,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が番号10の物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたゼネコン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第5号証)\r\ne 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人大木建設・大城土木JVが番号10の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。\r\nしかし,いずれも地元業者である石川徳建設及び大明建設からは,受注を希望する旨被審人大木建設に意思表明がされた。\r\n(査共第5号証,第93号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメイン5社は,被審人大木建設・大城土木JVの入札価格よりも高く予定価格を上回る価格で入札した。勝村建設のみは,被審人大木建設・大城土木JVの入札価格よりも高いが,予定価格を下回る価格で入札した。(査共第328号証,第463号証)\r\ng 被審人大木建設・大城土木JVは,いずれも地元業者をメインとする石川徳建設・砂川建設JV及び大明建設・芦澤建設JVが受注を希望して入札することが予想されたことから,最低制限価格である予定価格の80パーセントの金額を200円上回る価格で入札した。そして,石川徳建設・砂川建設JV,大明建設・芦澤建設JV及び同じく地元業者をメインとする同和工営・興亜土木JVは,予定価格近辺の価格で入札をしたので,被審人大木建設・大城土木JVが落札した。その落札率は,80.00パーセントであった。\r\n(査共第5号証,第328号証,第463号証)\r\n(ク) 番号11の物件\r\na 公社は,番号11の物件について,ACランクの共同施工工事として,平成10年4月16日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年5月26日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者4社(被審人新井組,同大豊建設,同松村組及び住友建設),その他のゼネコン4社及び地元業者2社であった。\r\n(査共第328号証,第374号証,第463号証,第464号証)\r\nb 八王子市の業者である新開工業は,番号11の物件の施工場所の近くに本社を置き,また,その施工場所の近隣において施工実績を有していた。このため,被審人新井組は,新開工業とJVを組んで同物件を受注することを希望し,新開工業にJVを組むことを要請した。(査共第191号証)\r\nc 被審人新井組は,公社が番号11の物件の入札予定を公表した後,被審人大豊建設及び同松村組に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人新井組が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第84号証,第164号証,第374号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人新井組は,新開工業とJVを組んだ。(査共第191号証,第328号証)\r\ne 被審人新井組は,入札までに,指名を受けた被審人大豊建設並びにいずれもその他のゼネコンである大本組及びアイサワ工業との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第62号証,第164号証,第241号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人新井組・新開工業JVが番号11の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(前記eに掲げた証拠,査共第84号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人新井組・新開工業JVの入札価格よりも高く予定価格を上回る価格で入札した。(査共第62号証,第84号証,第164号証,第241号証,第328号証,第463号証)\r\nなお,地元業者がメインである2組のJVは,入札価格が最低制限価格を下回ったため,失格した。(査共第328号証,第463号証)\r\nこの結果,被審人新井組・新開工業JVが落札した。(査共第328号証)\r\n(ケ) 番号13の物件\r\na 公社は,番号13の物件について,AAランクの共同施工工事として,平成10年5月21日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年6月22日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者3社(住友建設,被審人大成建設及び同大豊建設)及びその他のゼネコン7社であった。\r\n(査共第328号証,第376号証,第463号証,第464号証)\r\nb 住友建設(本件対象期間終了後,被審人三井住友建設に吸収合併された。)は,番号13の物件の施工場所の近隣において施工実績があることなどから,同物件の受注を希望していた。(査共第136号証)\r\nc 住友建設は,番号13の物件について,被審人大成建設の大木に対して,自社が受注を希望している旨を伝えた。\r\nまた,住友建設は,公社が同物件の入札予定を公表した後,被審人大豊建設及び同松村組並びにいずれもその他のゼネコンである森本組及び大本組に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,住友建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第62号証,第84号証,第92号証,第136号証,第164号証,第376号証)\r\nd 公社が指名を行った後,住友建設は,被審人みらい建設グループとJVを組んだ。(査共第328号証,第349号証)\r\ne 住友建設は,入札までに,指名を受けたJVのメイン各社に対して,自社が番号13の物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたJVのメイン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第62号証,第136号証,第164号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で住友建設・被審人みらい建設グループJVが番号13の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第62号証,第74号証,第81号証,第136号証,第156号証,第164号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインが住友建設・被審人みらい建設グループJVの入札価格よりも高い価格で入札した結果,同JVが落札した。(査共第74号証,第75号証,第136号証,第164号証,第328号証,第463号証)\r\n(コ) 番号19の物件\r\na 公社は,番号19の物件について,ACランクの共同施工工事として,平成10年7月16日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年8月17日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者3社(被審人真柄建設,同小田急建設及び同馬淵建設),被審人徳倉建設,その他のゼネコン1社及び地元業者5社であった。\r\n(査共第328号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人真柄建設は,公社が番号19の物件の入札予定を公表する前に,複数のゼネコンに打診して,各社が同物件の受注を希望していないことを確認した。同被審人は,同物件について特に条件は有していなかったが,上記のような経緯で,受注を希望するようになった。(査共第54号証)\r\nc 被審人真柄建設は,公社が番号19の物件の入札予定を公表した後,被審人小田急建設,同馬淵建設及び同徳倉建設並びにその他のゼネコンである大末建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,被審人真柄建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。(査共第54号証,第66号証,第345号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人真柄建設は,地元業者である田中建設とJVを組んだ。(査共第54号証,第328号証)\r\ne 被審人真柄建設は,入札までに,指名を受けたゼネコン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第54号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人真柄建設・田中建設JVが番号19の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第54号証,第144号証,第145号証)\r\ng 指名を受けたゼネコンをメインとする4組のJVのうち,3組は予定価格を上回る価格で入札し,1組(被審人徳倉建設がメイン)は被審人真柄建設・田中建設JVの入札価格よりも9万5000円高い価格で入札した。\r\n被審人真柄建設・田中建設JVは,地元業者とは全く受注調整の話をしていなかったことから,最低制限価格を22万200円上回る2億1702万5000円で入札した。そして,地元業者をメインとする5組のJVのうち,4組は被審人真柄建設・田中建設JVの入札価格を9万4000円又は9万5000円上回る金額で入札し,1組は被審人真柄建設・田中建設JVの入札価格を1287万5000円上回る価格で入札したので,被審人真柄建設・田中建設JVが落札した。その落札率は,80.08パーセントであった。\r\n(査共第328号証,第463号証)\r\n(サ) 番号21の物件\r\na 公社は,番号21の物件について,AAランクの共同施工工事として,平成10年8月6日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年9月14日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者4社(被審人清水建設,同大林組,同西松建設及び同奥村組)及びその他のゼネコン6社であった。\r\n(査共第328号証,第384号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人清水建設は,ダミコンが番号21の物件の調査設計作業の入札参加者として指名されたこと及び同物件の施工場所の近隣において施工実績を持つことから,同物件の受注を希望していた。(査共第111号証)\r\nc 被審人清水建設又は同安藤建設は,公社が番号21の物件の入札予定を公表した後,被審人松村組及びその他のゼネコンである森本組に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人清水建設及び同安藤建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第84号証,第92号証,第384号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人清水建設と同安藤建設は,JVを組んだ。(査共第328号証)\r\ne 被審人清水建設は,入札までに,指名を受けた被審人奥村組に対して,自社が番号21の物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたJVのメイン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第137号証,第181号証,第338号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人清水建設・同安藤建設JVが番号21の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第92号証,第137号証,第147号証,第156号証,第180号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人清水建設との間で入札価格の連絡・確認をしたとおり,被審人清水建設・同安藤建設JVの入札価格よりも高く予定価格を上回る価格で入札した結果,同JVが落札した。(査共第137号証,第147号証,第156号証,第180号証,第328号証,第463号証)\r\n(シ) 番号22の物件\r\na 公社は,番号22の物件について,ABランクの共同施工工事として,平成10年8月6日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年9月14日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者4社(被審人佐田建設,同JFE工建,同株木建設及び同小田急建設。),その他のゼネコン4社及び地元業者2社であった。\r\n(査共第328号証,第385号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人佐田建設は,番号22の物件の施工場所が自社の営業所に近いため,同物件の受注を希望した。(査共第352号証)\r\nc 被審人佐田建設は,その他のゼネコンであるアイサワ工業に対して,自社が番号22の物件の受注を希望している旨を伝えた。また,同被審人は,被審人株木建設並びにいずれもその他のゼネコンである若築建設及び大本組に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人佐田建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第62号証,第81号証,第93号証,第241号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人佐田建設は,堺産業株式会社(以下「堺産業」という。)とJVを組んだ。(査共第328号証)\r\ne 被審人佐田建設は,入札までに,指名を受けた被審人小田急建設並びにいずれもその他のゼネコンである大本組及びアイサワ工業との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第62号証,第241号証,第342号証,第356号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人佐田建設・堺産業JVが番号22の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第62号証,第81号証,第93号証,第145号証,第241号証,第342号証,第352号証,第356号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人佐田建設との間で入札価格の連絡・確認をしたとおり,被審人佐田建設・堺産業JVの入札価格よりも高い価格で入札した。(査共第62号証,第81号証,第93号証,第145号証,第241号証,第328号証,第342号証,第356号証)\r\nなお,地元業者をメインとする2組のJVの入札価格は,被審人佐田建設・堺産業JVの入札価格を上回った。(査共第328号証,第463号証)\r\nこの結果,入札価格が予定価格を下回ったのは被審人佐田建設・堺産業JVのみであったので,同JVが落札した。(査共第328号証)\r\n(ス) 番号24の物件\r\na 公社は,番号24の物件について,AAランクの共同施工工事として,平成10年8月27日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年9月28日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者4社(被審人大成建設,同大豊建設,同CKプロパティー及び同戸田建設)及びその他のゼネコン6社であった。\r\n(査共第328号証,第387号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人大成建設は,番号24の物件の施工場所である残堀川の護岸等河川工事を施工した実績があるため,同物件の受注を希望していた。(査共第99号証,第323号証)\r\nc 被審人不動テトラは,番号24の物件の施工場所の近隣において施工実績を有していたため,被審人大成建設とJVを組んで同物件を受注することを希望し,同被審人の了解を得た。(査共第77号証)\r\nd 被審人大成建設は,公社が番号24の物件の入札予定を公表した後,被審人大豊建設並びにいずれもその他のゼネコンである竹中土木,古久根建設及び東急建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人大成建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第56号証,第99号証,第152号証,第164号証,第184号証,第387号証)\r\ne 公社が指名を行った後,被審人大成建設と同不動テトラは,JVを組んだ。(査共第77号証,第328号証)\r\nf 被審人大成建設は,入札までに,指名を受けたJVのメインであるゼネコン各社(被審人大豊建設,同戸田建設及び同CKプロパティー並びにいずれもその他のゼネコンである鹿島建設,東亜建設工業,鴻池組,竹中土木,日特建設及び東急建設)との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第89号証,第99号証,第152号証,第164号証,第184号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人大成建設・同不動テトラJVが番号24の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(前記fに掲げた証拠,査共第105号証)\r\nh 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人大成建設・同不動テトラJVの入札価格より高く予定価格を上回る価格で入札した結果,同JVが落札した。(前記fに掲げた証拠,査共第105号証,第328号証,第463号証)\r\n(セ) 番号26の物件\r\na 公社は,番号26の物件について,AAランクの共同施工工事として,平成10年11月26日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年12月25日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者4社(被審人大成建設,同西松建設,同奥村組及び同戸田建設)及びその他のゼネコン6社であった。\r\n(査共第328号証,第389号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人大成建設と同不動テトラは,前記(ス)のとおり番号24の物件を受注した実績があったところ,番号26の物件は番号24の物件の継続工事であったため,両社でJVを組んで番号26の物件を受注することを希望していた。(査共第77号証,第99号証)\r\nc 被審人大成建設は,公社が番号26の物件の入札予定を公表した後,被審人大豊建設並びにいずれもその他のゼネコンである日特建設,東急建設及び大本組に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人大成建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第62号証,第89号証,第99号証,第152号証,第164号証,第312号証,第313号証,第322号証,第323号証,第389号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人大成建設と同不動テトラは,JVを組んだ。(査共第77号証,第328号証)\r\ne 被審人大成建設は,入札までに,指名を受けた被審人奥村組及び同西松建設に対して,自社が番号26の物件の受注を希望している旨を伝え,また,JVのメインであるゼネコン各社(被審人西松建設,同奥村組及び同戸田建設並びにいずれもその他のゼネコンである鹿島建設,熊谷組,五洋建設,東亜建設工業,間組及び東急建設)との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第99号証,第137号証,第147号証,第152号証,第181号証,第323号証,第338号証)\r\nf 指名を受けたJVのメインであるゼネコン各社は,以上の過程で被審人大成建設・同不動テトラJVが番号26の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第62号証,第99号証,第105号証,第137号証,第147号証,第152号証,第180号証,第181号証,第338号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人大成建設との間で入札価格の連絡・確認をしたとおり,被審人大成建設・同不動テトラJVの入札価格より高く予定価格を上回る価格で入札した結果,同JVが落札した。(査共第99号証,第105号証,第137号証,第147号証,第152号証,第180号証,第181号証,第338号証,第463号証)\r\n(ソ) 番号27の物件\r\na 公社は,番号27の物件について,ABランクの共同施工工事として,平成11年2月12日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年3月23日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者5社(被審人馬淵建設,同大豊建設,同JFE工建,同松村組及び同青木あすなろ建設),被審人徳倉建設,その他のゼネコン2社及び地元業者2社であった。\r\n(査共第328号証,第390号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人馬淵建設は,平成7年ころに地元業者である石井工務店とJVを組んで公社発注の下水道工事を施工した実績があったところ,番号27の物件がこの下水道に下水管をつなげる工事であるため,同物件の受注を希望していた。(査共第66号証,第139号証)\r\nc 被審人馬淵建設は,被審人大成建設の大木や被審人飛島建設の丸山に対して,自社が番号27の物件の受注を希望している旨を伝えた。また,石井工務店と,公社が同物件の入札予定を公表する前から,同物件が発注されたら両社でJVを組もうという話をしていた。(査共第66号証,第139号証)\r\nd 被審人馬淵建設は,被審人松村組,同青木あすなろ建設,同JFE工建及び同大豊建設並びにいずれもその他のゼネコンである村本建設及び若築建設に対して,自社が番号27の物件の受注を希望している旨を伝えた上で,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人馬淵建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第66号証,第84号証,第91号証,第93号証,第164号証,第295号証)\r\ne 公社が指名を行った後,被審人馬淵建設は,石井工務店とJVを組んだ。(査共第66号証,第328号証)\r\nf 被審人馬淵建設は,入札までに,指名を受けた被審人大豊建設及び同徳倉建設に対して,自社が番号27の物件の受注を希望している旨を伝え,指名を受けたゼネコン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第66号証,第91号証,第164号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人馬淵建設・石井工務店JVが番号27の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第66号証,第69号証,第91号証,第93号証,第139号証,第144号証,第164号証)\r\nh 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人馬淵建設・石井工務店JVの入札価格より高い価格で入札した。(査共第69号証,第84号証,第91号証,第93号証,第139号証,第144号証,第164号証,第328号証)\r\nなお,地元業者をメインとする2組のJVは,被審人馬淵建設の依頼を受け,被審人馬淵建設・石井工務店JVの入札価格を上回った。(査共第66号証,第328号証,第463号証)\r\nこの結果,入札価格が予定価格を下回ったのは被審人馬淵建設・石井工務店JVのみであったので,同JVが落札した。(査共第328号証)\r\n(タ) 番号29の物件\r\na 公社は,番号29の物件について,ABランクの共同施工工事として,平成11年2月25日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年3月29日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者5社(被審人戸田建設,同西松建設,同奥村組,同CKプロパティー及び白石),その他のゼネコン1社及び地元業者4社であった。\r\n(査共第328号証,第392号証,第463号証,第464号証)\r\nb 公社が指名を行った後,被審人戸田建設は,八王子市の業者である都南建設とJVを組んだ。(査共第328号証)\r\nc 被審人戸田建設は,入札までに,指名を受けた被審人奥村組に対して,自社が番号29の物件の受注を希望している旨を伝え,また,同社との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第137号証)\r\nd 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人戸田建設・都南建設JVが番号29の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第82号証,第105号証,第137号証)\r\ne 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人戸田建設・都南建設JVの入札価格よりも高い価格で入札した。(前記dに掲げた証拠,査共第328号証)\r\nなお,地元業者をメインとする4組のJVの入札価格は,被審人戸田建設・都南建設JVの入札価格を上回った。(査共第328号証,第463号証)\r\nこの結果,入札価格が予定価格を下回ったのは被審人戸田建設・都南建設JVのみであったので,同JVが落札した。(査共第328号証)\r\n(チ) 番号30の物件\r\na 公社は,番号30の物件について,AAランクの共同施工工事として,平成11年2月25日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年3月29日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者3社(被審人飛島建設,同大林組及び同鉄建建設)及びその他のゼネコン7社であった。\r\n(査共第328号証,第393号証,第463号証,第464号証)\r\nb 番号30の物件は,立川市の業者である高松建設株式会社(以下「高松建設」という。)の所有する道路を使用しないと施工することが困難であった。このため,被審人飛島建設は,高松建設とJVを組んで同物件を受注することを希望し,高松建設に対してJVを組むことを要請した。(査共第195号証,第325号証)\r\nc 被審人飛島建設は,公社が番号30の物件の入札予定を公表した後,被審人淺沼組及びその他のゼネコンである大本組に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人飛島建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第62号証,第79号証,第393号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人飛島建設は,高松建設とJVを組んだ。(査共第195号証,第328号証)\r\ne 被審人飛島建設は,入札までに,指名を受けた被審人鉄建建設及びその他のゼネコンである熊谷組に対して,自社が番号30の物件の受注を希望している旨を伝え,また,熊谷組の入札価格を確認した。(査共第180号証,第181号証,第325号証,第326号証,第338号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人飛島建設・高松建設JVが番号30の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第62号証,第74号証,第180号証,第181号証,第195号証,第325号証,第326号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人飛島建設・高松建設JVの入札価格よりも高く予定価格を上回る価格で入札した結果,同JVが落札した。(査共第74号証,第180号証,第181号証,第325号証,第328号証,第463号証)\r\n(ツ) 番号31の物件\r\na 公社は,番号31の物件について,Aランクの単独施工工事として,平成11年3月11日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10社を指名して,同年4月5日に入札を実施した。\r\n指名業者は,違反行為者2社(被審人大豊建設及び同大木建設),その他のゼネコン4社及び地元業者4社であった。\r\n(査共第328号証,第394号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人大豊建設は,ダミコンである永代エンヂニアリングが,番号31の物件の調査設計作業の入札参加者として指名されたことから,同物件の受注を希望していた。(査共第164号証,第200号証)\r\nc 被審人大豊建設は,被審人大成建設の大木に対して,番号31の物件の設計仕様書,図面等を持参して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝えた。また,被審人大豊建設は,公社が同物件の入札予定を公表した後,被審人大木建設及びその他のゼネコンである古久根建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人大豊建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第5号証,第56号証,第164号証,第315号証,第394号証)\r\nd 公社が指名を行った後,入札までに,被審人大豊建設は,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が番号31の物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたゼネコン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第5号証,第56号証,第153号証,第164号証)\r\ne 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人大豊建設が番号31の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(前記dに掲げた証拠,査共第156号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,被審人大豊建設との間で入札価格の連絡・確認をしたとおり,被審人大豊建設の入札価格よりも高い価格で入札した。(前記dに掲げた証拠,査共第156号証,第328号証)\r\nなお,4社の地元業者の入札価格は,被審人大豊建設の依頼を受け,被審人大豊建設の入札価格を上回った。(査共第164号証,第328号証,第463号証)\r\nこの結果,被審人大豊建設が落札した。(査共第328号証)\r\n(テ) 番号34の物件\r\na 公社は,番号34の物件について,AAランクの共同施工工事として,平成11年4月1日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年5月6日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者4社(被審人大成建設,同大林組,同西松建設及び同奥村組)及びその他のゼネコン6社であった。\r\n(査共第328号証,第397号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人大成建設と同不動テトラは,前記(ス)の番号24の物件及び前記(セ)の番号26の物件をJVを組んで受注した実績があったところ,番号34の物件は番号24及び26の各物件の継続工事であったため,両社でJVを組んで番号34の物件を受注することを希望していた。(査共第77号証,第99号証)\r\nc 被審人大成建設は,被審人淺沼組及び同奥村組並びにいずれもその他のゼネコンである若築建設及び竹中土木に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人大成建設が番号34の物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第79号証,第93号証,第99号証,第184号証,第397号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人大成建設と同不動テトラは,JVを組んだ。(査共第77号証,第328号証)\r\ne 被審人大成建設は,入札までに,JVのメインであるゼネコン各社(被審人大林組,同西松建設及び同奥村組並びにいずれもその他のゼネコンである鹿島建設,五洋建設,東亜建設工業,間組,フジタ及び竹中土木)との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第99号証,第137号証,第147号証,第184号証,第346号証,第347号証,第358号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人大成建設・同不動テトラJVが番号34の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第86号証,第99号証,第137号証,第147号証,第184号証,第346号証,第347号証,第358号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人大成建設との間で入札価格の連絡・確認をしたとおり,被審人大成建設・同不動テトラJVの入札価格より高い価格で入札した結果,1回目の入札において,同JVの入札価格は最低であったが,予定価格を上回っていたところ,2回目の入札において,同JVが落札した。(前記fに掲げた証拠,査共第328号証,第463号証)\r\n(ト) 番号38の物件\r\na 公社は,番号38の物件について,AAランクの共同施工工事として,平成11年5月13日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年6月14日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者3社(被審人清水建設,同奥村組及び同鉄建建設)及びその他のゼネコン7社であった。\r\n(査共第328号証,第401号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人清水建設と同安藤建設は,前記(サ)の番号21の物件をJVを組んで受注した実績があったところ,番号38の物件は番号21の物件である立坑工事から発進するシールド工事であったため,両社でJVを組んで番号38の物件を受注することを希望していた。(査共第78号証,第111号証)\r\nc 被審人清水建設又は同安藤建設は,公社が番号38の物件の入札予定を公表した後,いずれもその他のゼネコンである若築建設,東急建設,森本組,西武建設,日産建設及び古久根建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人清水建設及び同安藤建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第56号証,第78号証,第92号証,第93号証,第187号証,第311号証,第315号証,第321号証,第360号証,第401号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人清水建設と同安藤建設は,JVを組んだ。(査共第78号証,第328号証)\r\ne 被審人清水建設及び同安藤建設は,入札までに,指名を受けた被審人鉄建建設に対して,自社が番号38の物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けた被審人奥村組との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第137号証,第325号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人清水建設・同安藤建設JVが番号38の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第86号証,第93号証,第137号証,第187号証,第325号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインが,被審人清水建設・同安藤建設JVの入札価格よりも高い価格で入札した結果,同JVが落札した。(査共第86号証,第93号証,第137号証,第187号証,第328号証)\r\n(ナ) 番号39の物件\r\na 公社は,番号39の物件について,Aランクの単独施工工事として,平成11年5月27日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10社を指名して,同年6月21日に入札を実施した。\r\n指名業者は,違反行為者5社(被審人株木建設,同大木建設,同小田急建設,同加賀田組及び同冨士工),被審人徳倉建設,その他のゼネコン2社及び地元業者2社であった。\r\n(査共第328号証,第402号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人株木建設は,番号39の物件の施工場所の近隣において下水道工事を施工した実績があるため,同物件の受注を希望していた。(査共第67号証,第81号証,第141号証)\r\nc 被審人株木建設は,平成11年4月ころに,被審人大成建設の大木に対して,自社が番号39の物件の受注を希望している旨を伝えた。また,被審人株木建設は,公社が同物件の入札予定を公表した後,被審人大木建設,同小田急建設,同加賀田組及び同冨士工並びにいずれもその他のゼネコンである福田組,東海興業,浅野工事及び古久根建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人株木建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第5号証,第6号証,第56号証,第67号証,第72号証,第141号証,第314号証,第315号証,第365号証,第402号証)\r\nd 公社が指名を行った後,入札までに,被審人株木建設は,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が番号39の物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたゼネコン各社との間で,被審人大木建設を通じて,入札価格の連絡・確認をした。(査共第5号証,第6号証,第67号証,第72号証,第141号証,第144号証,第145号証,第176号証,第341号証,第344号証,第354号証)\r\ne 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人株木建設が番号39の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(前記dに掲げた証拠)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,被審人株木建設との間で入札価格の連絡・確認をしたとおり,被審人株木建設の入札価格よりも高い価格で入札した。(前記dに掲げた証拠,査共第81号証,第328号証)\r\nなお,指名を受けた地元業者2社の入札価格は,被審人株木建設の依頼を受け,被審人株木建設の入札価格を上回った。(査共第67号証,第81号証,第328号証,第463号証)\r\nこの結果,1回目の入札において,被審人株木建設の入札価格は最低であったが,予定価格を上回ったところ,2回目の入札において,同社が落札した。(査共第328号証)\r\n(ニ) 番号40の物件\r\na 公社は,番号40の物件について,ABランクの共同施工工事として,平成11年5月27日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年6月28日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者3社(被審人大林組,同錢高組及び白石),その他のゼネコン6社及び地元業者1社であった。\r\n(査共第328号証,第403号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人大林組は,ダミコンであるツカサコンサルタントが番号40の物件の調査設計作業の入札参加者として指名されたことなどから,同物件の受注を希望していた。(査共第161号証,第200号証)\r\nc 被審人大林組は,その他のゼネコンである大本組に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けた大本組は,被審人大林組が番号40の物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第62号証,第403号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人大林組は,地元業者である殿入建設とJVを組んだ。(査共第328号証)\r\ne 被審人大林組は,入札までに,指名を受けたいずれもその他のゼネコンである大本組及び熊谷組との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第62号証,第181号証,第338号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人大林組・殿入建設JVが番号40の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第62号証,第80号証,第180号証,第181号証,第338号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人大林組との間で入札価格の連絡・確認をするなどして,被審人大林組・殿入建設JVの入札価格よりも高い価格で入札した。(前記fに掲げた証拠,査共第328号証)\r\nなお,地元業者をメインとする1組のJVの入札価格は,被審人大林組・殿入建設JVの入札価格を上回った。(査共第328号証,第463号証)\r\nこの結果,入札価格が予定価格を下回ったのは被審人大林組・殿入建設JVのみであったので,同JVが落札した。(査共第328号証)\r\n(ヌ) 番号42の物件\r\na 公社は,番号42の物件について,ACランクの共同施工工事として,平成11年6月17日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年7月19日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者4社(被審人青木あすなろ建設,同小田急建設,同加賀田組及び同みらい建設グループ),その他のゼネコン4社及び地元業者2社であった。\r\n(査共第328号証,第405号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人青木あすなろ建設は,番号42の物件の調査設計作業を受注した建設コンサルタントであるアイ・エヌ・エーからの依頼により,工法の検討書の作成を手伝ったので,同物件の受注を希望していた。(査共第240号証,第295号証)\r\nc 被審人青木あすなろ建設は,被審人加賀田組並びにいずれもその他のゼネコンである古久根建設及び池田建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人青木あすなろ建設が番号42の物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第72号証,第295号証,第316号証,第320号証,第337号証,第405号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人青木あすなろ建設は,地元業者である岡三建設とJVを組んだ。(査共第240号証,第328号証)\r\ne 被審人青木あすなろ建設は,入札までに,指名を受けた被審人加賀田組,同小田急建設及び同みらい建設グループ並びにその他のゼネコンである京王建設との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第72号証,第145号証,第150号証,第176号証,第295号証,第343号証,第349号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVが番号42の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(前記eに掲げた証拠,査共第344号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人青木あすなろ建設との間で入札価格の連絡・確認をしたとおり,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVの入札価格よりも高い価格で入札した。(前記eに掲げた証拠,査共第328号証)\r\nなお,地元業者をメインとする2組のJVの入札価格は,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVの入札価格を上回った。(査共第328号証,第463号証)\r\nこの結果,1回目の入札において,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVの入札価格は最低であったが,予定価格を上回ったところ,2回目の入札において,予定価格を下回ったのは同JVのみであったので,同JVが落札した。(査共第328号証)\r\n(ネ) 番号44の物件\r\na 公社は,番号44の物件について,ABランクの共同施工工事として,平成11年7月15日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年8月16日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者3社(被審人CKプロパティー,同錢高組及び白石),その他のゼネコン4社及び地元業者3社であった。\r\n(査共第328号証,第407号証,第440号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人CKプロパティーは,番号44の物件の施工場所の近隣において下水道築造工事を施工した実績があるため,同物件の受注を希望していた。(査共第4号証,第166号証)\r\nc 被審人CKプロパティーは,被審人大成建設の大木に対して,自社が番号44の物件の受注を希望している旨を伝えた。また,被審人CKプロパティーは,その他のゼネコンである環境建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けた環境建設は,被審人CKプロパティーが同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第4号証,第149号証,第407号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人CKプロパティーは,八王子市の業者である真上建設株式会社(以下「真上建設」という。)とJVを組んだ。(査共第4号証,第328号証)\r\ne 被審人CKプロパティーは,入札までに,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が番号44の物件の受注を希望している旨を伝え,また,入札してもらう価格を連絡した。(査共第4号証,第80号証,第149号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人CKプロパティー・真上建設JVが番号44の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第80号証,第103号証,第149号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人CKプロパティーから入札価格の連絡を受けたとおり,被審人CKプロパティー・真上建設JVの入札価格よりも高い価格で入札した。(前記fに掲げた証拠,査共第166号証,第328号証)\r\nなお,地元業者をメインとする3組のJVの入札価格は,被審人CKプロパティーの依頼を受け,被審人CKプロパティー・真上建設JVの入札価格を上回った。(査共第4号証,第328号証,第463号証)\r\nこの結果,入札価格が予定価格を下回ったのは被審人CKプロパティー・真上建設JVのみであったので,同JVが落札した。(査共第328号証)\r\n(ノ) 番号50の物件\r\na 公社は,番号50の物件について,ABランクの共同施工工事として,平成11年11月18日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年12月20日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者4社(被審人西松建設,同奥村組,同錢高組及び同加賀田組),その他のゼネコン3社及び地元業者3社であった。\r\n(査共第328号証,第413号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人西松建設は,番号50の物件の工事場所の近隣に所在する学校法人玉川学園と20年来の付き合いがあったため,同物件の受注を希望していた。(査共第177号証)\r\nc 被審人西松建設の遠藤多摩営業所長(以下「遠藤」という。)は,被審人大成建設の大木から,番号50の物件の受注を希望しているかどうか確認され,自社が同物件の受注を希望している旨の返答をした。また,被審人西松建設の遠藤と被審人奥村組の荒木多摩営業所副所長(以下「荒木」という。)は,多摩地区の営業における先輩後輩の関係にあり,公社が同物件の入札予定を公表した後,被審人奥村組の荒木は,被審人西松建設の遠藤の依頼を受け,被審人加賀田組に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n被審人西松建設の依頼を受けた被審人奥村組及び同社の依頼を受けた被審人加賀田組は,被審人西松建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第72号証,第86号証,第137号証,第177号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人西松建設は,町田市の業者である清水重機土木株式会社(以下「清水重機土木」という。)とJVを組んだ。(査共第328号証)\r\ne 被審人西松建設は,入札までに,指名を受けた被審人奥村組及び同加賀田組との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第72号証,第137号証,第177号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人西松建設・清水重機土木JVが番号50の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第72号証,第137号証,第156号証,第177号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人西松建設との間で入札価格の連絡・確認をしたとおり,被審人西松建設・清水重機土木JVの入札価格より高い価格で入札した。(前記fに掲げた証拠,査共第328号証)\r\nなお,地元業者をメインとする3組のJVの入札価格は,被審人西松建設・清水重機土木JVの入札価格を上回った。(査共第328号証,第463号証)\r\nこの結果,入札価格が予定価格を下回ったのは被審人西松建設・清水重機土木JVのみであったので,同JVが落札した。(査共第328号証)\r\n(ハ) 番号51の物件\r\na 公社は,番号51の物件について,Aランクの単独施工工事として,平成11年11月25日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10社を指名して,同年12月20日に入札を実施した。\r\n指名業者は,違反行為者2社(被審人松村組及び白石),その他のゼネコン2社及び地元業者6社であった。\r\n(査共第328号証,第414号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人松村組は,ダミコンであるユニオンエンジニアリングが,番号51の物件の調査設計作業の入札参加者として指名されたこと及び同物件の施工場所の一部である中央自動車道を施工した実績があることから,同物件の受注を希望していた。(査共第170号証,第198号証,第200号証)\r\nc 被審人松村組は,公社が番号51の物件の入札予定を公表した後,その他のゼネコンである古久根建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けた古久根建設は,被審人松村組が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第56号証,第170号証,第315号証,第414号証)\r\nd 公社が指名を行った後,入札までに,被審人松村組は,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が番号51の物件の受注を希望している旨を伝えた。(査共第170号証,第198号証,第334号証)\r\ne 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人松村組が番号51の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第170号証,第198号証,第209号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,被審人松村組の入札価格よりも高い価格で入札した。(前記eに掲げた証拠,査共第328号証)\r\nなお,いずれも地元業者である早野組,大盛工業,笹島建設及び新東京建設工事業協組は,入札前に,被審人松村組から受注を希望している旨を伝えられ,入札における対応を鮮明にしなかったものの,予定価格を上回った。また,同様に,被審人松村組から受注を希望している旨を伝えられたいずれも地元業者である東京西部総合建設事業協組及び太陽西部建設業協組は,受注希望を表明したものの,予定価格を上回る価格で入札した。(査共第170号証,第328号証,第463号証)\r\nこの結果,被審人松村組が落札した。(査共第328号証)\r\n(ヒ) 番号52の物件\r\na 公社は,番号52の物件について,AAランクの共同施工工事として,平成11年11月25日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,平成12年1月6日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者3社(被審人飛島建設,同奥村組及び同鉄建建設)及びその他のゼネコン7社であった。\r\n(査共第328号証,第415号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人飛島建設は,前記(チ)の番号30の物件を高松建設とJVを組んで受注した実績があったところ,番号52の物件は番号30の物件と一体の工事であったため,両社でJVを組んで番号52の物件を受注することを希望していた。(査共第137号証,第195号証)\r\nc 被審人飛島建設は,公社が番号52の物件の入札予定を公表した後,いずれもその他のゼネコンである大本組及び若築建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人飛島建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第62号証,第93号証,第415号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人飛島建設と高松建設は,JVを組んだ。(査共第328号証)\r\ne 被審人飛島建設は,入札までに,被審人奥村組との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第137号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人飛島建設・高松建設JVが番号52の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第62号証,第93号証,第137号証,第180号証,第195号証,第326号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人飛島建設・高松建設JVの入札価格より高い価格で入札した結果,入札価格が予定価格を下回ったのは同JVのみであったので,同JVが落札した。(前記fに掲げた証拠,査共第328号証,第463号証)\r\n(フ) 番号56の物件\r\na 公社は,番号56の物件について,ABランクの共同施工工事として,平成12年3月30日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年5月1日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者3社(被審人東洋建設,同大豊建設及び同淺沼組),その他のゼネコン4社及び地元業者3社であった。\r\n(査共第328号証,第419号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人東洋建設は,番号56の物件の施工場所の近隣で施工実績を持つこと及びダミコンであるアースコンサルタンツが同物件の調査設計作業の入札参加者として指名されたことから,同物件の受注を希望していた。(査共第115号証,第156号証,第200号証)\r\nc 被審人東洋建設は,公社が番号56の物件の入札予定を公表した後,被審人大豊建設に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝えた上で,工事希望票の提出を依頼した。また,被審人東洋建設は,その他のゼネコンである鴻池組に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けた被審人大豊建設及び鴻池組は,被審人東洋建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第63号証,第164号証,第419号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人東洋建設と拓栄建設はJVを組んだ。(査共第328号証)\r\ne 被審人東洋建設は,入札までに,指名を受けた被審人大豊建設及び同淺沼組並びにいずれもその他のゼネコンである鴻池組及び三井建設(住友建設を吸収合併する前の被審人三井住友建設)に対して,自社が番号56の物件の受注を希望している旨を伝え,また,被審人大豊建設及び三井建設との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第63号証,第113号証,第156号証,第164号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人東洋建設・拓栄建設JVが番号56の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。\r\nなお,三井建設及び大日本土木は,被審人東洋建設に対し自社も同物件の受注を希望する旨を述べたものの,最終的には受注を断念した。\r\n(前記eに掲げた証拠,査共第208号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人東洋建設・拓栄建設JVの入札価格より高い価格で入札した。(前記fに掲げた証拠,査共第328号証)\r\nなお,地元業者をメインとする3組のJVの入札価格は,予定価格を上回った。(査共第328号証,第463号証)\r\nこの結果,被審人東洋建設・拓栄建設JVが落札した。(査共第328号証)\r\n(ヘ) 番号58の物件\r\na 公社は,番号58の物件について,ACランクの共同施工工事として,平成12年4月13日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年5月15日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者5社(被審人小田急建設,同JFE工建,同株木建設,同佐田建設及び同加賀田組),被審人徳倉建設,その他のゼネコン3社及び地元業者1社であった。\r\n(査共第328号証,第421号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人佐田建設は,番号58の物件の施工場所が自社の営業所に近く,同物件の施工場所の近隣において施工実績を持つため,同物件の受注を希望していた。(査共第145号証,第352号証,第355号証)\r\nc 被審人佐田建設は,公社が番号58の物件の入札予定を公表する前に,被審人株木建設及び同加賀田組並びにいずれもその他のゼネコンである森本組及び勝村建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人佐田建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第72号証,第81号証,第92号証,第317号証,第352号証,第421号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人佐田建設は,前記(シ)の番号22の物件でJVを組んで受注した実績がある堺産業とJVを組んだ。(査共第328号証,第352号証)\r\ne 被審人佐田建設は,入札までに,指名を受けた被審人加賀田組及びその他のゼネコンである森本組との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第72号証,第92号証,第352号証)\r\nf 被審人小田急建設を含む指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人佐田建設・堺産業JVが番号58の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第72号証,第81号証,第92号証,第169号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人佐田建設・堺産業JVの入札価格よりも高く予定価格を上回る価格で入札したが,被審人小田急建設は,被審人佐田建設が番号58の物件について条件を持つことを知りながら,被審人佐田建設・堺産業JVの入札価格よりも50万円低い価格で入札した。(前記fに掲げた証拠,査共第145号証,第169号証,第328号証,第352号証,第355号証)\r\nなお,地元業者をメインとする1組のJVの入札価格は,予定価格を上回った。(査共第328号証,第463号証)\r\nこの結果,被審人小田急建設・タカラヤ土木興業JVが落札した。(査共第328号証)\r\n(ホ) 番号59の物件\r\na 公社は,番号59の物件について,ABランクの共同施工工事として,平成12年4月20日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年5月29日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者5社(被審人坂田建設,同鉄建建設,同淺沼組,同クボタ建設及び同冨士工),その他のゼネコン3社及び地元業者2社であった。\r\n(査共第328号証,第422号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人坂田建設は,当時の多摩営業所長が着任した後,公社から1年程度の間指名されていなかったことから,番号59の物件の受注を希望していた。(査共第324号証)\r\nc 被審人坂田建設は,公社が番号59の物件の入札予定を公表したころ,被審人冨士工及びその他のゼネコンである若築建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人坂田建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第6号証,第93号証,第324号証,第422号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人坂田建設は,平井工業株式会社(以下「平井工業」という。)とJVを組んだ。(査共第328号証)\r\ne 被審人坂田建設は,入札までに,指名を受けた被審人淺沼組,同クボタ建設及び同冨士工に対して,自社が番号59の物件の受注を希望している旨を伝え,また,被審人冨士工並びにいずれもその他のゼネコンである若築建設及び村本建設に対して,入札してもらう価格を連絡した。(査共第6号証,第85号証,第91号証,第93号証,第113号証,第324号証,第354号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人坂田建設・平井工業JVが番号59の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(前記eに掲げた証拠)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人坂田建設から連絡を受けたとおり,被審人坂田建設・平井工業JVの入札価格よりも高い価格で入札した。(前記eに掲げた証拠,査共第328号証)\r\nなお,地元業者をメインとする2組のJVの入札価格は,被審人坂田建設・平井工業JVの入札価格を上回った。(査共第328号証,第463号証)\r\nこの結果,入札価格が予定価格を下回ったのは被審人坂田建設・平井工業JVのみであったので,同JVが落札した。(査共第328号証)\r\n(マ) 番号64の物件\r\na 公社は,番号64の物件について,Aランクの単独施工工事として,平成12年6月15日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10社を指名して,同年7月13日に入札を実施した。\r\n指名業者は,違反行為者2社(被審人浅沼組及び同安藤建設),被審人徳倉建設,その他のゼネコン5社及び地元業者2社であった。\r\n(査共第328号証,第427号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人淺沼組は,番号64の物件の施工場所において施工した実績があることから,同物件の受注を希望していた。(査共第113号証)\r\nc 被審人淺沼組は,公社が番号64の物件の入札予定を公表した後,被審人安藤建設及びその他のゼネコンである大本組に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人淺沼組が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第62号証,第78号証,第427号証)\r\nd 公社が指名を行った後,入札までに,被審人淺沼組は,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が番号64の物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けた被審人安藤建設並びにいずれもその他のゼネコンである太平工業,大本組,日特建設及び勝村建設との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第62号証,第78号証,第89号証,第113号証,第204号証,第244号証,第361号証,第366号証)\r\ne 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人淺沼組が番号64の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(前記dに掲げた証拠,査共第88号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,被審人淺沼組との間で連絡・確認をしたとおり,被審人淺沼組の入札価格よりも高い価格で入札した。(前記dに掲げた証拠,査共第88号証,第328号証)\r\nなお,地元業者2社の入札価格は,被審人淺沼組の依頼を受け,同社の入札価格を上回った。(査共第113号証,第328号証,第463号証)\r\nこの結果,入札価格が予定価格を下回ったのは被審人淺沼組のみであったので,同社が落札した。(査共第328号証)\r\n(ミ) 番号65の物件\r\na 公社は,番号65の物件について,ACランクの共同施工工事として,平成12年6月29日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年7月31日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者3社(被審人JFE工建,同大木建設及び同加賀田組),その他のゼネコン1社及び地元業者6社であった。\r\n(査共第328号証,第428号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人JFE工建は,多摩地区において長い間受注しておらず,番号65の物件の受注を希望していた。(査共第5号証,第169号証)\r\nc 被審人JFE工建は,公社が番号65の物件の入札予定を公表したころ,被審人大成建設の松本に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝え,また,受注を希望した被審人大木建設と話し合った結果,受注予定者になった。(査共第5号証)\r\nd 地元業者である東山工業は,番号65の物件の施工場所の極めて近くに事務所を有していた。このため,被審人JFE工建は,公社が指名を行った後,東山工業とJVを組んで同物件を受注することを希望し,東山工業に対して,自社とJVを組むことを要請し,東山工業とJVを組んだ。(査共第169号証,第328号証)\r\ne 被審人JFE工建は,入札までに,指名を受けた被審人大木建設との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第5号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人JFE工建・東山工業JVが番号65の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(査共第5号証,第71号証,第169号証,第335号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人JFE工建・東山工業JVの入札価格よりも高く,予定価格を上回る価格で入札した。(前記fに掲げた証拠,査共第328号証)\r\nなお,地元業者をメインとする6組のJVの入札価格は,被審人JFE工建・東山工業JVの入札価格を上回った。(査共第328号証,第463号証)\r\nこの結果,入札価格が予定価格を下回ったのは被審人JFE工建・東山工業JVのみであったので,同JVが落札した。(査共第328号証)\r\n(ム) 番号67の物件\r\na 公社は,番号67の物件について,ABランクの共同施工工事として,平成12年6月29日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年8月2日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者7社(被審人錢高組,同戸田建設,同佐田建設,同クボタ建設,同青木あすなろ建設,同冨士工及び白石),その他のゼネコン2社及び地元業者1社であった。\r\n(査共第328号証,第430号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人錢高組は,番号67の物件の施工場所の近隣において施工実績を持つため,同物件の受注を希望していた。(査共第6号証,第196号証,第202号証,第238号証)\r\nc 被審人錢高組は,公社が番号67の物件の入札予定を公表した後,被審人佐田建設,同クボタ建設,同青木あすなろ建設,同冨士工及び白石並びにいずれもその他のゼネコンであるアイサワ工業,勝村建設及び村本建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人錢高組が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第6号証,第196号証,第238号証,第318号証,第430号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人錢高組は,地元業者である南王建設とJVを組んだ。(査共第328号証,第351号証)\r\ne 被審人錢高組は,入札までに,同じく受注を希望する被審人冨士工と話し合った結果,受注予定者となることにつき了承を受け,指名を受けた被審人冨士工並びにいずれもその他のゼネコンであるアイサワ工業及び村本建設との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第6号証,第91号証,第238号証,第241号証,第332号証,第340号証,第351号証,第354号証,第364号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人錢高組・南王建設JVが番号67の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。\r\nなお,被審人冨士工は,前記eのとおり,自社も同物件の受注を希望する旨を述べたものの,最終的には受注を断念した。\r\n(査共第6号証,第85号証,第91号証,第196号証,第238号証,第241号証,第354号証,第364号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人錢高組との間で入札価格の連絡・確認をしたとおり,被審人錢高組・南王建設JVの入札価格よりも高い価格で入札した。(査共第6号証,第85号証,第91号証,第238号証,第241号証,第328号証,第364号証)\r\nなお,地元業者をメインとする1組のJVの入札価格は,被審人錢高組の依頼を受け,被審人錢高組・南王建設JVの入札価格を上回った。(査共第238号証,第328号証,第463号証)\r\nこの結果,被審人錢高組・南王建設JVが落札した。(査共第328号証)\r\n(メ) 番号71の物件\r\na 公社は,番号71の物件について,AAランクの共同施工工事として,平成12年7月21日付け工事発注予定表により入札予定を公表し,10組のJVの構成員となるべき事業者を指名して,同年8月23日に入札を実施した。\r\n指名業者によるJV結成後のメインは,違反行為者3社(被審人奥村組,同戸田建設及び同安藤建設)及びその他のゼネコン7社であった。\r\n(査共第328号証,第433号証,第463号証,第464号証)\r\nb 被審人奥村組は,番号71の物件の施工場所の近隣において八王子市発注の下水道工事の施工実績があるため,同物件の受注を希望していた。(査共第86号証)\r\nc 被審人奥村組は,公社が番号71の物件の入札予定を公表した後,被審人戸田建設,同安藤建設,同真柄建設,同松村組,同大木建設,同徳倉建設及び白石並びにいずれもその他のゼネコンである森本組,前田建設工業,フジタ,間組,三井建設,青木建設,日産建設,西武建設,アイサワ工業及び三菱建設に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝えた上で,工事希望票の提出を依頼した。\r\n依頼を受けたゼネコン各社は,被審人奥村組が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n(査共第5号証,第86号証,第92号証,第137号証,第433号証)\r\nd 公社が指名を行った後,被審人奥村組は,地元業者である都南建設とJVを組んだ。(査共第328号証)\r\ne 被審人奥村組は,入札までに,指名を受けたJVのメイン各社に対して,自社が番号71の物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたJVのメイン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。(査共第78号証,第86号証,第137号証,第329号証,第359号証)\r\nf 指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人奥村組・都南建設JVが番号71の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。(前記eに掲げた証拠,査共第75号証,第88号証,第327号証)\r\ng 指名を受けたゼネコン各社のうちJVのメインは,被審人奥村組・都南建設JVの入札価格よりも高く予定価格を上回る価格で入札した結果,同JVが落札した。(前記eに掲げた証拠,査共第75号証,第327号証,第328号証,第463号証)\r\n(4) 受注結果\r\nア 33社は,本件基本合意に基づき,本件対象期間中の公社発注の特定土木工事72物件(前記(2)ウ(ア))のうち前記(3)ウの物件中(ア),(ウ)及び(コ)を除く31物件(以下「31物件」という。)を落札・受注した。31物件は,件数では,公社発注の特定土木工事の約43.1パーセントを占め,落札金額では,合計200億7575万4000円のうち113億914万1000円(約56.3パーセント)を占める。(査共第328号証)\r\nイ 33社が本件基本合意に基づき落札・受注した本件対象期間中の公社発注の特定土木工事の全体に占める割合を工事の格付ごとにみると,次の表のとおりである。\r\n\r\n工事の格付  件 数(件)  落札金額(千円) 全体 33社落札 割合(%) 全体 33社落札  割合(%)\r\nAA 11  9 81.8 5,132,500 4,802,200 93.5\r\nAB 15 12 80.0 4,876,484 3,979,641 81.6\r\nAC 16  5 31.3 4,192,022 1,376,300 32.8\r\nA 30 5 16.7 5,874,748 1,151,000 19.6\r\n\r\n(5) 違反行為の終了\r\n平成12年9月27日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,同日,本件基本合意は事実上消滅した。(査共第5号証,第54号証,第67号証,第82号証,第231号証)\r\n(6) まとめ\r\n前記(3)ないし(5)のとおり,33社は,本件基本合意に基づき,共同して,公社発注の特定土木工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,公社発注の特定土木工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものであり,かつ,独占禁止法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係る行為である。\r\n2 課徴金納付命令\r\n34社に対し,いずれも平成13年12月14日付けで,平成13年(納)第446号ないし第479号納付命令(以下これらをまとめて「本件課徴金納付命令」という。)をもって,課徴金の納付が命じられた。その対象となったのは,別紙6の72物件のうち番号1,2,4,6ないし11,13,19,21,22,24,26,27,29ないし31,34,38ないし40,42,44,46,50ないし52,56ないし59,61,64,65,67及び71の合計38物件(以下「38物件」という。)である。\r\n3 課徴金の計算の基礎となる事実\r\n(1) 33社は,ゼネコンである。(争いがない。ただし,被審人佐田建設については,査共第100号証及び第356号証)\r\n(2) 33社が本件違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成9年10月1日以前である。また,平成12年9月27日をもって,本件基本合意は,事実上,消滅しており,その後,その実行としての事業活動はなくなっている。(争いがない。)\r\nしたがって,33社については,本件違反行為の実行としての事業活動を行った日から本件違反行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間(以下「実行期間」という。)は,平成9年10月1日から平成12年9月27日まで(すなわち,本件対象期間)である。\r\n(3) 33社の実行期間における公社発注の特定土木工事に係る売上額は,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成17年政令第318号)による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令第6条の規定に基づき算定すべきところ,この規定により算定すると,各物件については,別紙7の「実行期間内の契約金額(消費税込み,円)」欄に記載した金額となる(別紙7の当初契約日,最終変更日,契約者,実行期間内の契約金額及びJVにおける出資比率については,争いがない。別紙7の各物件の課徴金対象性については,後記「第4 審判官の判断」において判断する。)。\r\nなお,被審人冨士工,被審人真柄建設及び白石は,本件違反行為に参加していたが,これら3社については,実行期間における公社発注の特定土木工事に係る独占禁止法第7条の2第1項の売上額は認められなかった(後記「第4 審判官の判断」3(2)ア,ウ及びサにおいて認定し,判断する。)。\r\n4 課徴金額の算定\r\n前記1及び3の事実によれば,被審人ごとの売上額は,別紙3の「売上額(円)」欄記載の金額となり,住友建設を構成員とするJVが落札・受注した番号13の物件に係る同社の売上額については,独占禁止法第7条の2第5項により,被審人三井住友建設の売上額とみなされる。被審人らが国庫に納付しなければならない課徴金の額は,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,それぞれ,別紙3の売上額欄記載の金額に100分の6を乗じて得た額から,同条第4項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて算出された別紙3の「課徴金額(万円)」欄記載の金額となる。\r\n第2 本件の争点\r\n① 本件基本合意の存否\r\n② 本件基本合意による競争の実質的制限の有無\r\n③  本件課徴金納付命令の対象であった38物件に係る課徴金対象性の有無,すなわち受注調整行為の有無及び競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるか否か\r\n第3 双方の主張\r\n1 争点①(本件基本合意の存否)について\r\n(1) 審査官の主張\r\nア 本件基本合意が存在したこと\r\n34社の間に,本件基本合意が存在していた。また,その他のゼネコン46社が本件基本合意の当事者でないことは,後記エ(ア)のとおりである。\r\nイ 本件基本合意の具体的実施方法\r\n(ア) 受注希望者は,当該工事の発注が予想されている時点,あるいは公社が入札の執行を公示した時点で,ゼネコン又は業界の有力者に対して,自社が受注を希望していること又は自社が条件を有していることを必要に応じてアピールしていた。\r\n(イ) 受注希望者は,(ア)のアピールに代えて,又はこれと併せて,ゼネコンに対して,公社に対して工事希望票を提出するよう依頼していた。\r\n(ウ) 受注希望者は,公社の指名により入札参加者が確定した以降において,必要に応じて,改めて,自社が受注を希望していること又は自社が条件を有していることをアピールし,自社が受注できるよう入札での協力を依頼していた。\r\n(エ) 受注予定者が決定された場合には,受注予定者がゼネコンに対して入札価格を連絡し,ゼネコンは受注予定者の入札価格より高い価格で入札しており,また,ゼネコンは,受注予定者からの入札価格の連絡がなくても,受注予定者の受注を妨げないであろう価格で入札していた。\r\nウ 34社が違反行為者であること\r\n34社は,遅くとも平成9年10月1日までに,①自社が受注意欲や関連性を有するときは34社中の他社が協力すべきこと及び②34社中の他社が受注意欲や関連性を有するときは自社が協力すべきことを相互に認識・認容して,相互に同内容の認識をもって拘束する意思を形成し,以後,平成12年9月27日までの間,同拘束を続けていた。\r\nエ その他のゼネコン46社について\r\n(ア) その他のゼネコン46社が違反行為者でないこと\r\nその他のゼネコン46社は,他社(34社及びその他のゼネコン各社)が受注意欲や関連性を有するときは自社が協力するという認識を各社がそれぞれ有していたにとどまるものであり,34社のような認識を有していたとまでは認められない。\r\nすなわち,その他のゼネコン46社には,本件対象期間中に,①公社から一度も指名を受けたことのない者(6社),②受注予定者となろうとするゼネコンからの受注意欲の表明,工事希望票の提出依頼又は入札価格の連絡若しくは確認を受けたことのない者(4社),③本件対象期間中において,受注希望を表明して受注予定者となったことがない又は受注予定者として入札価格の連絡若しくは確認をしたことがないことや,その他の具体的状況からみて,「自社が受注意欲や関連性を有するときは他社が協力すべきこと」の認識が明白でない者など,様々な事業者が存在しており,その他のゼネコン46社は,本件対象期間中の具体的事実を総合的に勘案すると,「自社が受注意欲や関連性を有するときは他社が協力すべきこと」を相互に認識・認容していたとまで認めることができない。\r\n(イ) その他のゼネコン46社の協力\r\n多摩地区において事業活動を行うゼネコン各社は,入札に当たって,ゼネコンの受注意欲や関連性を尊重し,ゼネコン同士で競争を避けることが望ましいとの認識を有しており,遅くとも平成9年10月1日までに,その他のゼネコンの協力を期待し得るという競争回避的状況が生じ,存在していた。\r\nそして,本件対象期間中,個別物件において,その他のゼネコンは,34社の間で受注予定者となろうとする者の受注意欲や,その者と発注される工事との関連性を尊重し,その者が行う働きかけに対して異議を唱えず,又はその者の希望を受け入れ,受注予定者の受注を妨げない価格で入札していた。34社に対するその他のゼネコンの協力は,個別物件の入札における34社が決定した受注予定者に対する協力行為に加え,34社が行う受注希望者の確認の過程,あるいは受注希望者の絞込みの過程において行われていた。\r\nオ 地元業者について\r\n(ア) 本件入札に参加していた者\r\na 本件対象期間中,公社発注の特定土木工事の入札には,地元業者が165社参加しており,そのうち平成9・10年度,平成11・12年度のいずれかにおいて事業者ランクがAの格付であり,かつ,本件対象期間中に公社発注の特定土木工事について指名を受けたことがある者は74社(以下「地元業者74社」という。)であった。\r\nb 地元業者である165社の中には,AランクからEランクまで,様々なランクの事業者が存在している。この165社には,ランクそれ自体からみて,ゼネコンと同等の競争単位とは到底いえない事業者が相当数含まれている。\r\n(イ) 地元業者の受注希望等\r\na 総合的事業能力に差があること\r\n同じAランク事業者であってもゼネコンと地元業者74社とでは,その総合的事業能力に差がある。すなわち,ゼネコン(34社及びその他のゼネコン46社)と地元業者74社とは,公社発注の特定土木工事について,競争関係にあり,形式的には同等の競争単位ではあるものの,実質的には同等の競争単位とはいえない。\r\nb あえて受注することを希望しない場合でも工事希望票を提出することがあること\r\n公社は,工事の入札参加事業者を指名するための考慮要素に工事希望票の提出回数を含めている。このため,地元業者74社は,相対的に工事規模が大きく高度な施工技術を要する物件(以下「難度が高い物件」という。)であるため,あえて受注することを希望しない場合でも,提出回数の実績をあげるため,工事希望票を提出し,その結果指名を受けることがある。\r\nc 指名を受けた場合でもあえて受注を希望しないことがあること\r\n公社は,より多くの事業者に指名の機会を付与するため,ある事業者が受注した場合には,その物件の施工がある程度進ちょくするまでは,当該事業者を指名しないこととしている。したがって,地元業者74社は,ある物件を受注してしまうと,その施工期間中はそれ以外の物件について指名を受けられなくなってしまう。このため,地元業者74社は,難度が高い物件で指名を受けたとしても,その後に発注されるそれ以外の物件で指名され,入札において受注することを期待して,あえて難度が高い物件の受注を希望しないことがある。その場合には,地元業者74社はあえて低価格での入札をしないこととなる。\r\nこのことに加え,34社の間で受注予定者となった者が,地元業者に対し協力依頼を行うかどうかは,受注予定者がケースバイケースで判断することとされており,この依頼を受けて地元業者が,34社の間で受注予定者となった者の受注を妨げない価格で入札することがあった。\r\nカ 被審人らの主張に対する反論\r\n(ア) その他のゼネコン46社及び地元業者74社の位置付け\r\n「本件において談合的合意ないし認識があったとすれば,それは,その他のゼネコン46社及び地元業者165社との間の双方的認識ないしは合意でなければならない」(後記(2)イ(ア))というのは,被審人らの独自の見解であり,本件におけるその他のゼネコンの認識は,前記エ(ア)のとおりである。また,地元業者が本件基本合意の当事者であるとは認められない。\r\nまた,34社が本件基本合意の当事者であって,本件基本合意により競争の実質的制限が成立しているのであるから,その他のゼネコン46社が本件基本合意の当事者であるかどうかは,本件違反行為の成否に影響がない。\r\n(イ) 34社からのその他のゼネコン46社に対する働きかけ\r\nその他のゼネコン46社の協力を期待し得るという競争回避的状況があったことは前記エ(イ)のとおりである。\r\nこの点について,被審人らは,全くアプローチを受けていないその他のゼネコンがいることから協力がないと争うが,本件対象期間中,公社から一度も指名を受けたことがない6社については,指名がなかったので,協力の具体的現出がなかったにすぎない。また,受注予定者となろうとする34社からの受注意欲の表明等がなくても,①発注される工事について,自社に強い条件があり,他社に条件がない場合には,他社に対して直接の受注希望の表明ないし入札の協力の依頼をしなくても,自社に強い条件があるということを他社が認識していれば,自社が受注予定者とされるという形で受注予定者が決定されることがあったこと,②ゼネコンは,経験的に,発注工事と同等の過去の工事の入札結果等を勘案して積算することにより,受注予定者の受注を妨げないであろう価格を比較的容易に予測し得ることから,その他のゼネコンが協力することは可能であった。\r\n(2) 被審人らの主張\r\nア 34社とその他のゼネコン46社の行為態様に外形的な差異はなく,その他各証拠から認められるべき事実に照らせば,審査官が主張するような34社による本件基本合意は存在しない。\r\n審査官の主張における本件基本合意及びその他のゼネコンによる「協力」は,審査官が,審査の結果,本件について独占禁止法違反行為があるとして排除勧告はおろか警告も行うことができなかったにもかかわらず,当該審査において収集したものと同じ証拠に基づいて,本件課徴金納付命令の前提として恣意的に構成したものにすぎない。すなわち,審査官の主張に係る「違反行為」なるものは,審査官が事実を無視又は曲解した結果作り上げた虚構にすぎない。\r\nイ 34社が違反行為者であり,その他のゼネコンは違反行為者とは認められないとして,両者を明確に区別できるような根拠又は基準となる事実は認められないこと\r\n(ア) 本件各証拠によれば,その他のゼネコン46社の関係者の多くが,公社発注の特定土木工事について,多摩地区に営業所等を置くゼネコン間で受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように協力するというルールが存在していたことを認識している旨の供述をしている一方において,その他のゼネコン46社についても,本件基本合意の具体的実施方法であるとされる業界の有力者に対するアピール,ゼネコンに対する工事希望票の提出依頼,相指名業者に対するアピール及び入札価格の連絡等に沿うような供述もあるなど,34社の行為態様との間で有意な差は全く見出せない。審査官が主張するような,「他社が受注意欲や関連性を有するときは自社が協力すべきこと」との認識のみで継続的な談合に協力する者は存在しないのであって,本件において談合的合意ないし認識があったとすれば,それは,その他のゼネコン46社,さらには地元業者165社との間の「双方的認識」ないしは「合意」でなければならない。\r\n(イ) 審査官意見において本件対象期間中に本件基本合意に基づく工事の受注がないとされたにもかかわらず,なお本件基本合意の当事者(34社)に含まれるとされた被審人徳倉建設は,まさに本件対象期間中に受注希望を表明して受注予定者となったことがないという事情があるものとしてその他のゼネコン46社と同じ者であると考えざるを得ず,この期に及んで何故に同被審人がなお本件基本合意の当事者であると評価できるのか,全く不可解である。\r\n(ウ) 前記(ア)及び(イ)のように,本件各証拠によっては34社とその他のゼネコン46社の行為態様を明確に区別できない以上,審査官が主張するように,その他のゼネコン46社については違反行為の当事者であるとは認められないとしつつ,「34社は違反行為者である」と明確に認定することなど到底不可能である。\r\n(エ) 前記(イ)のとおり,被審人徳倉建設は,本件対象期間中に受注予定者となっていないとされたにもかかわらず,なお本件基本合意の当事者とされている。\r\nまた,本件各証拠によれば,本件対象期間中にその他のゼネコン46社に含まれるフジタ又は前田建設工業が受注予定者と決定されたものの,地元業者との競争により地元業者が受注した物件が2件ある。\r\nさらに,本件対象期間の直前にその他のゼネコン46社に含まれる勝村建設又は池田建設をメインとするJVが受注した物件が2件ある。また,本件対象期間の直後にその他のゼネコン46社に含まれる鹿島建設をメインとするJVが受注した物件がある。\r\n以上の点にかんがみれば,本件対象期間中に受注予定者となったか否かという点は,違反行為者であるとされる34社と違反行為者とは認められないというその他のゼネコン46社とを区別する基準とはなり得ない。\r\nそもそも本件対象期間は,課徴金の対象となるのが違反行為終了前の過去3年間に限られることから人為的に設定された期間にすぎず,また,後記エ(イ)のとおり審査官による本件対象期間(特に終期)の設定自体が確実な証拠に基づかないから,本件対象期間中に受注したか否かをもって,本件基本合意の当事者であるか否かの判断基準とすることは不合理である。\r\n(オ) よって,本件においては,審査官が主張するように,34社が違反行為者であり,その他のゼネコンは違反行為者とは認められないとして,両者を明確に区別すべき根拠又は基準となる事実は全く認められず,34社が違反行為の当事者であるなどとは,到底特定され得ない。\r\nウ 公正取引委員会自身が,34社の合意を否定していたこと及び公正取引委員会が,その他のゼネコン46社は本件基本合意の当事者ではないと判断している以上,34社も本件基本合意の当事者であるとはいえないこと\r\n(ア) 公正取引委員会が,34社を含むゼネコンに対し,排除勧告はもちろん警告すら行わなかったことは,独占禁止法第7条第2項ただし書により既になくなっている違反行為に対して排除勧告を行うことのできる1年の期間満了時である平成13年9月27日までに収集された証拠によっては本件について34社を含むゼネコンによる基本合意を認定できなかったことの証左にほかならない。したがって,その後実質的に収集された証拠がないままなされた本件課徴金納付命令も,不当な取引制限に関する証拠が全くないことは明らかである。\r\n(イ) その他のゼネコン46社が本件基本合意の当事者であると認定できない以上,それと証拠上差異が認められない34社についても,本件基本合意の当事者であると認定できないというのが当然の論理的帰結である。\r\nエ 34社が違反行為(本件基本合意)の当事者であり,その他のゼネコン46社は違反行為の当事者とは認められないとする審査官の主張・立証が不十分,不当かつ杜撰であること\r\n(ア) その他のゼネコン46社の認識は本件における主張・立証の命題ではないとする主張の不当性\r\nその他のゼネコン46社に,自社が受注意欲や関連性を有するときは他社が協力すべきという認識がなかったことは,34社に対して課徴金納付命令という極めて重大な不利益処分を課す前提となる違反行為(本件基本合意)の当事者が34社であると認定する上で,必要かつ不可欠な事実である。したがって,この点をあいまいにし,その他のゼネコン46社における上記認識の有無を明らかにしないまま,34社が違反行為者であると認定することは不可能である。特に,本件対象期間中に34社以外の事業者が受注した物件に関する入札状況を明らかにしないまま,その他のゼネコン46社の認識は主張・立証の命題ではないとして,その認定をあいまいにしつつ,34社が違反行為者であると認定することは,主張・立証に重大な不備があるといわざるを得ない。\r\n(イ) 本件対象期間の前後の事情を勘案せず,ほとんど専ら同期間中の状況のみを根拠に「34社が違反行為者である」とすることの不十分さ・不当性\r\n本件では,審査官は,34社は「遅くとも平成9年10月1日以降」本件基本合意をしていたと主張しており,本件基本合意が同日に形成されたものではないことは明らかである。したがって,本来,審査官としては,同日前の時期における個別物件の受注調整の有無等をできる限り調査し,その上で34社のみが本件違反行為の当事者であるかどうかを判断して,審判手続で主張・立証すべきである。実際,前記イ(エ)のとおり,本件対象期間直前の時期についても,その他のゼネコン46社に含まれる事業者をメインとするJVが工事を受注しているが,審査官は,これらの物件について本件基本合意に基づく受注調整が行われたかどうかについて何ら立証しようとせず,これらの工事の契約時期を含む本件対象期間前の時期について,安直にその他のゼネコン46社に「競争回避的状況が存在した」と主張するにとどまっている。\r\nさらに,審査官は,違反行為の終了時期についての明確な立証をしていない。しかるに,これも,前記イ(エ)のとおり,本件対象期間直後に入札が行われた工事について,その他のゼネコンをメインとするJVが受注し,相指名業者であった別のその他のゼネコンが受注業者に協力した旨の供述が存在する。要するに,審査官による違反行為の終期の認定も,十分な調査・検討を行わないままされた杜撰なものである。\r\nこのように杜撰に認定された時期を有する「本件対象期間中」の状況だけに基づいて,34社が違反行為者であり,かつ,その他のゼネコンは違反行為の当事者とは認められないとする審査官の主張も,また杜撰なものといわざるを得ない。\r\n以上のとおり,本件対象期間中に34社が受注した物件に関する受注調整状況をいくら主張立証してみても,34社以外の事業者が受注した物件を含め本件対象期間の前後において発注された物件に関する入札状況をも明確にしなければ,34社による本件基本合意を認定することは不可能である。審査官が本件対象期間中の状況だけを根拠にして,「34社が違反行為者である」と主張していることは,以上の意味においても極めて不当である。\r\n(ウ) その他のゼネコン46社が違反行為者とは認められないとする根拠及び46社による「協力」の態様についての主張の矛盾・不備\r\nそもそも本件において34社による違反行為に「協力」していたとされるのは,公社「発注の特定土木工事について,指名競争入札の参加者として指名を受けた」その他のゼネコンに限られているはずであり(審判開始決定書),審査官が本件対象期間中一度も指名を受けたことがないその他のゼネコンを問題にしたり,また,「協力」が受注希望者の確認の過程,受注希望者の絞込みの過程においても行われていたと主張するのは,明らかに審判開始決定書記載の本件違反行為に関する主張と矛盾する。\r\nまた,本件対象期間中一度も指名を受けたことがない者はもちろんのこと,受注予定者から入札価格の連絡等を受けたことがない者も,前記(1)イ(エ)のとおり「受注予定者の受注を妨げないであろう価格で入札」するなどということは通常では考えられない以上,いずれも受注予定者が受注できるように協力することすらできないことは明らかである。\r\nすなわち,その他のゼネコン46社が違反行為の当事者とは認められないとする根拠及びその他のゼネコンによる「協力」の態様に関する審査官の主張は,いずれも合理的な説明とはなっておらず,審査官がこのような矛盾した,かつ奇妙な主張を無理に行うこと自体が,46社のみならず34社についても独占禁止法違反行為を認定できないという厳然たる事実を裏付ける。\r\nオ 審査官の主張する違反行為の内容に明確性が欠如していること\r\nさらに,審査官の主張する34社による本件基本合意の具体的実施方法として主張されていることについても,「必要に応じてアピールしていた」,「工事希望票を提出するよう依頼することがある」などとされているにすぎず,いずれも合意の具体的実施方法として必須のものであるとはされていない。同じく,合意の具体的実施方法として「(入札価格の)連絡がなくても,相指名業者が受注予定者の受注を妨げないであろう価格で入札していた」などと,通常では考えられないような方法をとっていたとまで主張されている。\r\nこのように,審査官の主張する本件基本合意の具体的実施方法についても,その外延が極めてあいまいであり,仮にこれらの行動が認められたとしても,それが果たして一つの明確な「基本合意」の実施として行われたものであるかどうか,極めて疑問である。そして,このようなあいまいな実施方法しか主張できないこと自体が,審査官のいう本件基本合意が存在しないことを強く推認させる。\r\nカ まとめ−「34社が違反行為者である」とする審査官の主張は,事実に基づかない虚構にすぎないこと\r\n以上のとおり,34社のみが本件基本合意の当事者であって,その他のゼネコン46社は34社が決定した受注予定者が受注できるように一方的に協力していただけであるとの審査官の主張は,両者の行為態様に外形的な差異がないこと,その他本件証拠から認められるべき事実を無視して,本件対象期間中に受注した事業者に対して課徴金の納付を命ずるために,その他のゼネコン46社の「協力」ないし「協力を期待し得る競争回避的状況」,地元業者165社との総合的事業能力の差,個別物件の難度の差などのそれ自体意味があるとは思えない事情を取り上げて,恣意的に構成したものであって,事実を無視した虚構にほかならない。\r\nよって,審査官が主張するような,34社による本件基本合意など存在しないことは明らかである。\r\nキ 個別物件からみた本件基本合意の不存在\r\n以下のとおり,個別物件に関する34社の行動からすれば,個別物件の受注調整は本件基本合意を認定する間接事実としての意味を持たない。\r\n(ア) 本件は,34社が一定の場所に集まって談合の基本ルールを決めたものではない。したがって,本件基本合意は個別物件についてのいわゆる受注調整行為を間接事実として認定するほかはない。\r\n(イ) 受注調整行為における受注予定者の決定というのは相互拘束であるから,関係者が一つの場所に集まって合意するのが本来である。そうすると,34社の本件基本合意の間接事実となる個別物件の受注調整は,34社に属する者が集まって受注予定者を決めたと同様の評価を受ける行動が34社に属する者によってなされたといえる場合に限られるというべきである。\r\nこのように考えると,個別物件の入札参加者のうち34社に属する者全員の間で,受注予定者を誰にするかの合意がなければ合意があったといえない。\r\n(ウ) もっとも,この相互間の合意に関しては,承諾を求める際には,34社に属する他の者の承諾を得ることは当然のことであり暗黙の合意があったとの考えもあり得る。仮にその立場に立つとしても,最低限,34社に属する者全員の承諾を得ることが必要である。\r\n(エ) 後記3(2)ア及びイのとおり,代表的な2例について,いずれも,入札参加者のうち34社に属する者全員の合意が認められず,両物件とも本件基本合意の間接事実としての意味を持たないことが明らかになった。\r\nそうすると,他の個別物件について検討するまでもなく,本件基本合意は成立していないというべきである。\r\nク 本件基本合意への参加\r\n(ア) 被審人不動テトラの主張\r\n被審人不動テトラについては,証拠上の比較その他あらゆる点からみても,その他のゼネコンと別異に評価されるべき合理的根拠はない。その意味でも被審人不動テトラが本件基本合意の当事者に含まれると認められるべき理由は全くない。\r\n換言すれば,被審人不動テトラについても,まさに,審査官が,合意の当事者ではない理由の一つとして挙げている「受注希望を表明して受注予定者となったことがない,受注予定者として入札価格の連絡・確認をしたことがない」者に該当するといえる。\r\nしたがって,審査官の主張を前提としても,被審人不動テトラについて,同社が本件基本合意の当事者に含まれると認められる事実は立証されていない。\r\n(イ) 被審人大林組の主張\r\n仮に被審人らの一部で「合意」があったと認められるとしても,被審人大林組がそれに加わったと認めることはできない。\r\n(ウ) 被審人戸田建設の主張\r\n34社中,被審人戸田建設とその余の者との間には,審査官が前記(1)ウにおいて主張する,34社の合意が相互拘束性を有する根拠である①及び②の双方の認識・認容が欠けている。\r\n2 争点②(本件基本合意による競争の実質的制限の有無)について\r\n(1) 審査官の主張\r\nア 本件基本合意が競争の実質的制限を引き起こすものであったこと\r\n(ア) 競争の実質的制限の意義及びその判断方法\r\na 「競争を実質的に制限する」とは,「競争自体が減少して,特定の事業者又は事業者集団がその意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の条件を左右することができる状態をもたらすこと」をいい,裁判例(東京高等裁判所昭和26年9月19日判決・高民集4巻14号497頁)にいう「市場を支配することができる状態をもたらすこと」と同義である。\r\nb そして,上記の「左右すること」は,「ある程度自由に」で足り,「完全に自由に」である必要はなく,また,「現実にある程度自由に価格を左右したこと」まで必要となるものではない。\r\n他方,既に合意が実施されている場合には,合意を実施した結果,価格が改定されたとか,現実に受注予定者が受注したという事実をもって,合意が「競争を実質的に制限する」という効果を包蔵していることを推認することも当然できる。受注実績をみる場合,合意の対象となる物件の総数のうち合意に基づいて受注した物件の数の割合だけで判断するのではなく,本件のように,物件の規模の格差が大きく,件数では受注実績を計ることができない場合には,受注金額でもみるべきである。\r\nc また,競争の実質的制限とは,「一定の取引分野における競争」の実質的制限であり,その意味は,一定の取引分野における競争を全体としてみて,その機能を実質的に制限することである。\r\n(イ) 本件の一定の取引分野の状況からみて競争の実質的制限が引き起こされていたこと\r\n本件において,合意の当事者である34社は,公社発注の特定土木工事の入札参加者の一部ではあるものの,後記イの事実に照らせば,受注予定者が受注できることをある程度見込むことができたことを推認することができ,したがって,34社の間で受注予定者を決定し受注できるように協力することにより,ある程度自由に,価格,品質,数量その他各般の条件を左右することができる状態をもたらしていたのであって,本件基本合意により公社発注の特定土木工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。\r\nイ 本件における競争の実質的制限を基礎付ける事実\r\n(ア) 本件の一定の取引分野においては,34社のほか,その他のゼネコン及び地元業者も存在し,これらの者が入札に参加していたが,以下のとおり,34社は,\r\n① その他のゼネコン46社の協力を期待し得るという競争回避的状況が存在したこと\r\n② ゼネコンが高い総合的事業能力を有していること\r\nから,本件の一定の取引分野における競争を実質的に制限していたのであり,このことは,34社が,\r\n③ 公社発注の特定土木工事のうち,件数では72件中34件(約47.2パーセント)を受注していたこと\r\n④ 同工事のうち,金額では200億7575万4000円のうち119億3689万4000円(約59.4パーセント)を受注していたこと\r\nに照らしても,明らかである。\r\n(イ) その他のゼネコン46社の協力を期待し得るという競争回避的状況が存在したこと\r\na 多摩地区において事業活動を行うゼネコン各社は,工事の入札に当たって,受注意欲を持つ者や発注される工事との関連性を持つ者がある場合には,当該受注意欲や関連性を尊重することによって各社同士で競争を避けることが望ましいとの認識を有していた。\r\nb 34社は,そのいずれかが受注した34物件すべてにおいて,その他のゼネコン46社に工事希望票の提出を依頼し,その他のゼネコン46社は,依頼を受けて工事希望票を提出していた。\r\nc 34社が工事希望票の提出を依頼する趣旨は,受注への協力を依頼することであり,また,受注する可能性を高めることを目的としていた。\r\nd そして,個別物件において指名を受けたその他のゼネコン各社は,自社又は自社を構成員とするJVの入札価格が,34社の間で受注予定者となった事業者又はJVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加していた。\r\n(ウ) ゼネコンが高い総合的事業能力を有していること\r\na 34社は,以下のとおり,ゼネコンが地元業者よりも高い総合的事業能力を有しているので,ゼネコンが個別物件において入札参加者全体を占めるということがあり得ること,また,地元業者が,あえて受注することを希望しないことをある程度見込むことができることから,受注予定者が受注することをある程度見込むことができた。\r\n(a) ゼネコンが個別物件において入札参加者全体を占めるということがあり得ること\r\n被審人のいずれかが受注した34物件のうち11物件について,ゼネコンが入札参加者(JVの場合はJVのメイン)全体を占めていた。\r\n(b) 地元業者があえて受注することを希望しないことがあり得ること\r\n① 地元業者の協力を個別に期待し得ること\r\n地元業者は,34社のいずれかが受注した34物件のうち8物件について,34社の間で受注予定者となった事業者又はJVの協力依頼に応じて当該事業者又はJVの落札・受注に協力することがあった。\r\n② 入札価格の端数処理の方法及び入札価格の水準に照らして,地元業者があえて受注することを希望していないと認められる物件があったこと\r\n地元業者は,あえて受注を希望しない場合には,入札価格が百万円単位になっているなど高い桁数で端数処理し,高い水準の入札価格で応札している。このような入札価格の端数処理の方法及び入札価格の水準に照らすと,被審人のいずれかが受注した34物件のうち10物件について,地元業者は,あえて受注を希望していなかったと認められる。\r\n(c) 地元業者が受注を希望したとしても,予定価格及び最低制限価格を地元業者よりも正確に推計できるため優位に立てる場合があり得ること\r\n① ゼネコンは,おおむね最低制限価格を読むことに成功しているが,地元業者は,おおむねこれに失敗している。したがって,地元業者が受注を希望したとしても,34社は,予定価格及び最低制限価格を地元業者よりも正確に推計できるため優位に立てる場合があり得る。\r\n② そして,34社は,地元業者が入札に参加する場合に,地元業者の入札における行動を予測して,それに対応するため予定価格及び最低制限価格を推計し,地元業者の入札価格を下回り,かつ,最低制限価格を下回らないような価格で入札するようにしていた。\r\nb ゼネコンが高い総合的事業能力を有していることが本件において競争の実質的制限を基礎付ける具体的事実となること\r\n34社の本件基本合意は,その他のゼネコン46社についてその協力を期待し得るという競争回避的状況が存在したことを前提になされたものであり,公社発注の特定土木工事について,ゼネコン間の競争を消滅させるものであるところ,ゼネコンが地元業者よりも相対的に高い総合的事業能力を有している状況の下においては,地元業者があえて受注することを希望しないことがあり得ることや地元業者の協力を個別に得られることがあり得ることのほか,地元業者が受注を希望する場合であっても,予定価格及び最低制限価格を地元業者よりも正確に推計できるため優位に立てることがあり得ることから,地元業者74社が本件の一定の取引分野に属する物件の入札に参加していたにもかかわらず,34社による本件基本合意により,ある程度自由に,価格,品質,数量その他各般の条件を左右することができる状態がもたらされていた。\r\n特に,難度が高い物件については,ゼネコンに比べて相対的に総合的事業能力の低い地元業者74社,ましてや165社があえて受注することを希望していないことが少なくないことから,これらの物件を施工する能力が十分にある,相対的に総合的事業能力の高い事業者の間の競争を消滅させる本件基本合意は,受注予定者を決定したとしても受注予定者が受注できないことがあり得ることを考慮しても,なお,そのこと自体に相当な競争制限効果があるといえる。\r\nまた,難度が高いとはいえない物件についても,入札参加者のうちに地元業者がいないことがあり得ること,工事希望票を提出して指名された地元業者があえて受注を希望しないことがあり得ること,地元業者の協力を個別に得られることがあり得ること,地元業者が受注を希望したとしても,34社は,予定価格及び最低制限価格を地元業者より正確に推計できるため優位に立てることがあり得ることから,受注予定者が受注する可能性があると見込んでいたものであり,本件基本合意による競争制限効果が及び得る。\r\n(エ) 件数及び金額からみた受注実績\r\n34社は,本件対象期間中,本件基本合意に基づき,公社発注の特定土木工事72物件のうち,件数でみれば34物件(約47.2パーセント),金額でみれば落札金額合計200億7575万4000円のうち119億3689万4000円(約59.4パーセント)を受注し,現に,ある程度自由に,価格,品質,数量その他各般の条件を左右していたのであるから,これらのことからも,本件基本合意において受注予定者が受注できることをある程度見込むことができるのであって,34社による本件基本合意が,ある程度自由に,価格,品質,数量その他各般の条件を左右することができる状態をもたらしていた。\r\n(オ) 一部の競争者間だけの合意でも競争の実質的制限が成立すること\r\na 本件の一定の取引分野においては,34社のほか,その他のゼネコン及び地元業者も存在し,これらの者が入札に参加していたが,個別の入札に参加し得る事業者すべてが合意に参加していなくても,競争を実質的に制限することになり得る。\r\nb まず,特定の発注者が競争入札の方法により発注する工事について,入札参加者間に成立する合意は,個別の入札に参加し得る事業者すべてが加わっていなければ競争を実質的に制限しないということはない。\r\nすなわち,一定の取引分野を構成する全物件でみれば,合意当事者が入札参加者の一部であったとしても,個別物件ごとにみれば,その物件の入札参加者の全部を合意当事者が占めることもあり得ることに加え,ある物件の入札に合意当事者以外の事業者が参加していたとしても,合意当事者以外の事業者の協力を期待し得る状況があるとき,又は合意当事者以外の事業者があえて受注することを希望しないことがある程度見込めるときは,合意当事者の間で受注予定者を決定し受注予定者が受注できるように協力しさえすれば,合意当事者は,受注予定者が受注できることをある程度見込むことができる。このような場合には,一部の入札参加者だけの合意でも,それによって,ある程度自由に,価格,品質,数量その他各般の条件を左右することができる状態をもたらすことになるのであって,当該合意は一定の取引分野における競争を実質的に制限するものである。\r\nそもそも,いわゆる入札談合においては,受注価格の低落防止といった一定の目的を達成する上で,受注調整を継続して行うことが必要かつ効果的であると考えるからこそ,合意当事者間でかかる受注調整を継続するものであり,いやしくも事業を行う者が,実際に受注できる見込みが全くないのにもかかわらず,労力をかけて受注調整を継続するということは到底あり得ないのであって,合意当事者は,合意当事者以外の事業者が入札に参加する可能性がある場合であっても受注予定者が受注できることをある程度見込むことができるからこそ,継続して受注調整を行うのである。合意当事者以外の事業者が入札に参加する可能性がある場合には,合意当事者の決めた受注予定者が確実に受注できる見込みまではないこととなるが,だからといって,かかる継続的な受注調整に意味がないということには決してならないのであり,受注価格の低落防止といった一定の目的を達成する上で,ある程度受注できる見込みがあれば十分である。\r\nc 前記bで述べたところを本件についてみると,本件基本合意の当事者である34社は,公社発注の特定土木工事の入札参加者の一部ではあるものの,その他のゼネコン46社についてその協力を期待し得るという競争回避的状況が存在したことに加え,ゼネコンが高い総合的事業能力を有しているので,ゼネコンが個別物件において入札参加者全体を占めるということがあり得ること,また,地元業者があえて受注することを希望しないことをある程度見込むことができることから,受注予定者が受注することをある程度見込むことができた。したがって,本件においては,34社のみによる本件基本合意によって,競争が実質的に制限されていた。\r\nウ 本件の一定の取引分野を構成する物件の特性及び入札談合の特性からみても競争の実質的制限が成立すること\r\n(ア) 本件の一定の取引分野における競争の実質的制限の成立\r\n前記イのとおり,34社の本件基本合意は,本件の一定の取引分野における競争を実質的に制限していた。\r\na これを本件の一定の取引分野を構成する各物件の特性のうち,物件の難度に応じて説明すると次のとおりである。\r\n(a) まず,難度が高い物件(29件)については,当該物件において34社及びその他のゼネコンだけが入札参加者となった場合には,34社は,その他のゼネコン46社の競争回避的状況もあって,受注予定者を決定し,受注予定者がその定めた価格で受注することができる状態にあった。\r\n現に,9物件については,指名業者のすべてを34社及びその他のゼネコンで占め,34社は,これらの物件において,受注予定者を決定し,受注予定者がその定めた価格で受注していた。\r\nその落札金額の合計(9物件)は,48億220万円であって,難度が高い物件全体(105億5064万1000円)の約45.5パーセントを占めている。\r\nまた,難度が高い物件において,時に,地元業者が入札に参加することがあったが,その数は総じて少数にとどまるものであったことに加え,ゼネコンが高い総合的事業能力を有していたことから,地元業者があえて受注することを希望しないことをある程度見込むことができたので,34社は,受注予定者を決定し,受注予定者がその定めた価格で受注することができる状態にあった。\r\n現に,17物件について,34社は,受注予定者を決定し,受注予定者がその定めた価格で受注していた。\r\n(b) 次に,難度が高いとはいえない物件(43物件)についても,難度が高い物件ほどの頻度ではないにしても,34社及びその他のゼネコンだけが入札参加者となることがあり,34社は,その他のゼネコン46社の競争回避的状況もあって,受注予定者を決定し,受注予定者がその定めた価格で受注することができる状態にあった。現に,1物件については,指名業者のすべてを34社及びその他のゼネコンで占めることとなり,34社は,これらの物件において,受注予定者を決定し,受注予定者がその定めた価格で受注していた。\r\nその落札金額は,2億4450万円であって,難度が高いとはいえない物件全体(95億2511万3000円)の約2.5パーセントである。\r\nまた,地元業者が入札に参加している物件についても,地元業者があえて受注を希望しないことがあり得ること,又は,地元業者の協力を個別に期待し得ることがあり得ることに加え,ゼネコンが高い総合的事業能力を有していたことから,地元業者よりも,予定価格及び最低制限価格を正確に推計することが可能であり,34社は,受注予定者を決定し,受注予定者がその定めた価格で受注することができる状態にあった。\r\n現に,7物件について,34社は,受注予定者を決定し,受注予定者がその定めた価格で受注していた。\r\nその落札金額の合計(7件)は,16億4605万3000円であって,難度が高いとはいえない物件全体(95億2511万3000円)の約17.2パーセントを占めている。\r\nb 本件の一定の取引分野を構成する物件の特性のうち,発注者である公社の物件の格付に応じて説明すると,以下のとおりである。\r\n公社は,指名競争入札の方法により発注する工事について,工事の規模や工事の技術的な難易度等を勘案した上で格付をしており,その上で,各工事のランクに応じて事業者を指名していることから,本件の一定の取引分野である公社発注の特定土木工事に該当する工事は,それぞれAランクの格付の単独施工工事並びにAAランク,ABランク及びACランクの各格付の共同施工工事に区分することができる。\r\n(a) 公社は,本件対象期間中,AAランクの格付の共同施工工事を11物件発注したが,34社をメインとするJVは,そのうち9物件を落札・受注していた。\r\nその落札金額の合計(9物件)は,48億220万円であって,AAランクの格付の物件全体(51億3250万円)の約93.5パーセントを占めている。\r\n(b) 公社は,本件対象期間中,ABランクの格付の共同施工工事を15物件発注したが,34社をメインとするJVは,そのうち13物件を落札・受注していた。\r\nその落札金額の合計(13物件)は,42億1984万9000円であって,ABランクの格付の物件全体(48億7648万4000円)の約86.5パーセントを占めている。\r\n(c) 公社は,本件対象期間中,ACランクの格付の共同施工工事を16物件発注したが,34社をメインとするJVは,そのうち6物件を落札・受注していた。\r\nその落札金額の合計(6物件)は,15億9332万5000円であって,ACランクの格付の物件全体(41億9202万2000円)の約38.0パーセントを占めている。\r\n(d) 公社は,本件対象期間中,Aランクの格付の単独施工工事を30物件発注したが,34社は,そのうち6物件を落札・受注していた。\r\nその落札金額の合計(6物件)は,13億4402万円であって,Aランクの格付の物件全体(58億7474万8000円)の約22.8パーセントを占めている。\r\n(イ) 指名競争入札取引における談合事件の特性からみても「一定の取引分野における競争の実質的制限」が成立すること\r\n以下の市場の特性からすれば,本件の受注実績からみても,本件の「一定の取引分野における競争の実質的制限」は十分成立している。\r\na 指名競争入札取引における市場の特性\r\n(a) 一般的な財の取引の場合の市場シェアと指名競争入札取引の場合の受注割合とはその意味合いが異なること\r\n本件のような指名競争入札取引において,一定の取引分野を構成する物件のうち,合意当事者が合意に基づき受注予定者を決定し受注予定者がその定めた価格で受注した物件の占める割合(以下「受注割合」という。)が,「一定の取引分野における競争の実質的制限」の成否の判断要素として用いられることが多いが,この「受注割合」は,あくまで合意を実施した結果の割合にすぎず,価格カルテルにおける「市場シェア」が合意形成時点での合意当事者の市場における地位を示す一つの判断要素として用いられることとは性格が異なる。つまり,「受注割合」は,価格カルテル事案における値上げの実施状況に相当する。\r\nそして,「受注割合」は,あくまで合意を実施した結果にすぎないのであるから,ある物件において合意に基づき受注できなくとも,それがゆえに,別の物件において合意に基づき受注することが困難とはならない。\r\nそれゆえ,受注予定者がその定めた価格で受注することができなかった物件が存在していたとしても,基本合意において,「一定の取引分野における競争の実質的制限」が成立していたとの評価が妨げられることはない。\r\n(b) 指名競争入札取引においては,一定の期間中,受注調整行為を継続し,ある程度「受注割合」を維持していることが,「一定の取引分野における競争の実質的制限」の重要な判断要素となること\r\n本件のような指名競争入札取引の市場で受注予定者の調整・決定をする事案においては,いやしくも事業を行う者が,実際に受注できる見込みが全くないにもかかわらず,労力をかけて受注調整を継続するということは到底あり得ないことから,受注調整の継続は,それ自体受注価格の低落防止といった一定の目的を達成する上で必要かつ効果的であったことを示しているのであり,このことは,受注調整に係る合意が「市場に対して及ぼす影響」を包蔵していたことを意味するにほかならない。\r\nそして,合意当事者が受注調整に係る合意を実施した結果,実際に合意内容に合致した取引が実現されたのであれば,その合意が包蔵する「市場に対して及ぼす影響」とは,合意当事者の見込み違いではなく,実際に生じ得るものであったことが明らかとなるところ,当該一定の取引分野における競争を実質的に制限する内容の合意をした当事者が,その合意を崩壊させることなく,継続して,合意に基づき受注予定者を決定し受注して,ある程度の「受注割合」を維持している場合には,その結果からみても,当該合意が包蔵する「市場に対して及ぼす影響」が「実質的」であった,すなわち,「一定の取引分野における競争の実質的制限」が成立していたことを基礎付けることができる。\r\n(c) 指名競争入札取引における受注調整行為は,強い競争制限効果をもたらすものであること\r\n指名競争入札取引においては,その物件において最も低い価格で入札した入札参加者が受注することを本則とするから,発注者は,原則として,当該物件で,最も低い価格で入札した事業者以外の者とは契約することはできない。\r\nしたがって,供給者が需要者の信頼を裏切り,受注調整による入札価格の吊り上げを図った場合,発注者において更に安値の可能性があると思われた場合でも,最低価格を提示した供給者又は他の供給者に対して,これよりも安い価格で入札することを交渉することは不可能なのである。\r\n競争入札制度においては,供給者側の受注調整行為が市場における価格決定に与える影響は類型的に高い,すなわち入札談合が行われた場合,その合意が対象とする一定の取引分野に与える競争制限効果は類型的に高いというべきである。\r\nb 本件の受注実績からみても,本件の一定の取引分野における競争の実質的制限が認められること\r\n本件において,34社は,約3年もの期間にわたりその合意を崩壊させることなく,継続して,実際に,本件対象期間における公社発注の特定土木工事72物件のうち34物件(約47.2パーセント),金額にして200億7575万4000円中119億3689万4000円(約59.4パーセント)について,本件基本合意に基づき受注予定者を決定し受注予定者がその定めた価格で受注していた。しかも,この34物件は,本件対象期間である平成9年10月1日から平成12年9月27日までの間に,満遍なく継続的に存在している。\r\nつまり,本件において,本件対象期間中,34社が指名競争入札取引である公社発注の特定土木工事72物件のうち上記の規模の件数及び金額を受注していたという結果からみても,34社の本件基本合意により,本件の一定の取引分野における競争の実質的制限が成立していたことは十分に明らかである。\r\nエ 被審人らの主張に対する反論\r\n(ア) 競争の実質的制限の意義及び判断方法\r\na 被審人らの①入札参加者の全部を合意当事者で占める物件と②合意当事者以外の者が参加しているが,その者が競争しなかった物件あるいは競争しないことが確実であった物件の合計数が「市場の大半を占めることが必要」との主張は,独自の見解である。\r\nb 本件においては,高い総合的事業能力を有するその他のゼネコン46社との間に競争回避的状況が存在することを前提に,高い総合的事業能力を有するゼネコンである34社は本件基本合意をしたのであって,ゼネコン80社間の競争は消滅しており,これにより,本件の一定の取引分野における競争が実質的に制限されたから,「競争単位が減少」することで,「競争自体が減少」した。\r\nc 被審人らは,「地元業者が落札した34物件」というが,34物件のうち2物件はゼネコンが落札・受注しており,前提が誤っている。\r\nまた,被審人らが主張する「大半」が「シェア80〜90パーセント」を意味し,「シェア」が「大半」となっていないので競争の実質的制限が成立していないというのであれば,それは被審人ら独自の見解である。\r\n「予定価格の80パーセント台で落札された物件」については,地元業者が入札に参加したため,34社の間で受注予定者となった者が,かような低めの価格で入札し落札・受注したとしても,それは,受注予定者が「左右した」価格の幅(価格帯)の問題にすぎないのであって,やはり本件基本合意に基づき価格を「左右した」といえる。\r\nd 価格カルテルの市場シェアの見方を用いて,入札取引における受注実績(受注割合)を評価することは,論理的に飛躍がある。入札談合事案において,合意当事者が一定の取引分野に属する物件のうち80パーセント以上に相当する物件を受注していなければ競争の実質的制限が生じていないというものではない。\r\n(イ) 競争単位の見方\r\na ランク自体からみて,ゼネコンと同等の競争単位といえるのはAランクに属する地元業者74社とみるべきであり,Aランクより下位に位置付けられるBランクに属する事業者が,ゼネコンと同レベルの総合的事業能力を有するわけではなく,ランク自体からみてもゼネコンと同等の競争単位といえない。\r\nb 本件対象期間における公社発注の特定土木工事72物件のうち地元業者が指名を受けて入札に参加した物件は60物件であり,そのうち34社が落札・受注した物件は27物件である。当該27物件中18物件は,地元業者はあえて受注を希望せず,この18物件中8物件は,地元業者が34社の間で受注予定者となった者から受注への協力依頼を受けて協力しているのであるから,「有効な競争」があったということはできない。\r\nc 地元業者が入札に参加したため,34社の間で受注予定者となった者が最低制限価格すれすれの低めの価格で落札・受注したとしても,やはり価格を「左右した」といえることは,前記(ア)cと同様である。\r\nd 被審人らは,「34社が受注した全物件について,ほとんど疑問が生じない程度に,これら地元業者が受注を希望しないこと,及び,どのようにして受注を回避したかを主張・立証しなければならない」旨主張するが,34社が,本件対象期間中に落札・受注した38物件における地元業者の入札行動については,後記3(1)のとおりであり,これにより,34社は,受注予定者が受注することをある程度見込むことができた。\r\n(ウ) 物件の入札参加業者\r\n34社は,ゼネコン46社の間に競争回避的状況があることを前提に本件基本合意をしたものであり,34社及びその他のゼネコン46社が指名業者のすべてを占めた物件は11物件ある。\r\n(エ) 物件の難度と地元業者の入札行動\r\na 審査官は,本件の発注者である公社から指名を受けた地元業者が,当該工事について施工能力がないと主張したことはない。また,前記のとおり,地元業者が,公社発注の特定土木工事について,あえて受注を希望しないことがあり得た。\r\nb 前記1(1)オ(イ)Cのとおり,地元業者が,公社発注の特定土木工事について,あえて受注を希望しないことがあり,難度が高い物件では,特にその傾向が顕著であった。\r\nc 審査官は,公社は,施工能力があると判断した事業者の中から,より適切な者を選定していると主張しているのであって,「総合的事業能力が(相対的に)低いという理由だけで,入札競争に参加しないことが(ある程度にしろ)見込めるなどという実態があるのに,それを無視ないし看過して,指名している」とは主張していない。\r\nd 審査官が主張する「総合的事業能力」は,「施工能力」だけを意味しない。\r\ne 被審人らの主張が,「地元業者は,自ら工事希望票を提出し,指名を受けて,入札に参加するのであるから,難度が高いか否かを問わず必ず受注を希望する」ということであれば,その前提が誤っている。地元業者が,あえて受注を希望しない場合でも工事希望票を提出することがあることは,前記1(1)オ(イ)bのとおりである。\r\nf 地元業者が,あえて受注することを希望しない場合には,予定価格を推計して,それを上回る価格で入札すれば足りるのであり,この場合には正確に予定価格を推計する必要はないことになる。\r\ng 審査官は,本件の一定の取引分野における競争が実質的に制限されていたことを主張しているのであって,被審人らのように本件の一定の取引分野の中から「難度が高いとはいえない」43物件のみを切り出して,本件の一定の取引分野における競争の実質的制限の成否を論じるのは誤りである。\r\nh 34社が落札・受注した物件に最低制限価格すれすれで受注した物件が若干数含まれていたとしても,34社による本件基本合意は,競争を実質的に制限するものであったといえる。\r\ni 難度が高いとはいえない物件についても,受注できる可能性があったから,34社が,これらの物件も本件基本合意の対象としたことには十分な根拠があり,この意味で,競争制限効果が及び得るものであった。\r\n(オ) 本件基本合意により入札価格の自由な決定が妨げられていたこと\r\n被審人らが主張するように,地元業者が,自社の都合で受注意欲をなくし,それに応じて自分の意思で入札価格を定めたとしても,受注予定者の受注意欲を認識した上で,受注予定者の受注を妨げないであろう入札価格を自らの意思で決定しているから,既に「各事業者が自由に入札価格を決定し入札に参加している」とはいえない。そして,かかる価格による入札は,34社に対する「協力」にほかならない。\r\n(2) 被審人らの主張\r\nア 入札談合カルテルにおける競争の実質的制限\r\n(ア) 入札談合カルテルの構造\r\n入札談合カルテルでは,通常,受注予定者や入札価格等を決定する基本的なルールを定める抽象的・概括的な合意(基本合意)に従って,入札物件ごとに受注予定者を決定していく構造になっている。\r\nまた,仮に個別調整のすべてないしほとんどすべてにおいて合意当事者間で調整行為が成功したとしても,その調整行為が入札参加者の一部の者の間で行われる場合には,直ちには独占禁止法上違法とはされない。けだし,入札談合カルテルが違法と評価されるのは,単に特定の事業者間の競争を消滅させるからではなく,これにより受注予定者を決定し受注価格を拘束し,市場の競争を実質的に制限するからである。すなわち,合意当事者の内部で最優先される者を決めても,アウトサイダー(基本合意の当事者及び基本合意への協力が一般的に見込まれる者以外の者をいう。以下同じ。)が指名業者に入ることにより,当該最優先者とアウトサイダー間で競争が起こり得る可能性がある場合には,そのような事態が起こり得る市場環境にあっても当該合意のみにより市場における競争が実質的に制限されるといえるのか否かが,別途検討されなければならない。\r\n(イ) 入札談合カルテルの特性①−1社でも競争を仕掛けてくる事業者がいると簡単に崩壊してしまうものであること,かつ,競争を行うことが極めて容易であること\r\nまず,入札談合カルテルの場合,1社でも競争を行う事業者がいると,その競争を行うという事実だけで,個別調整が簡単に崩壊するという特性がある。\r\nそして,かかる原理は,当該アウトサイダーが大規模会社であるか,小規模零細会社であるか,市場シェアが高いか,低いか,技術力や営業力が高いか,低いか等に一切関わらない。なぜなら,入札において要求される競争要素は,唯一,入札価格だけだからである。また,入札は1件1件独立し,1回で完結する競争であるため,事業者は,入札の都度,新たに同じスタートラインで競争を挑むことができる。以上のことから,入札の場合,アウトサイダーが競争を行うことは,極めて容易である。\r\nこのようにアウトサイダーが指名される可能性がある入札市場では,アウトサイダーが容易に競争を行うことができるし,かつ,競争を行うという事実それだけで個別調整を崩壊させることができるため,一部の者だけの合意により個別物件の取引先及び価格をコントロールすることは非常に難しい。\r\nよって,アウトサイダーが無視し得ない頻度で指名されている市場において競争の実質的制限が認められるためには,基本合意成立の時点及びその後の期間において,アウトサイダーのすべて,あるいは少なくともほとんどすべてが,合意当事者に協力する,あるいは競争を回避することが,審査官によって立証されなければならない。\r\n(ウ) 入札談合カルテルの特性②−アウトサイダーは,競争を仕掛ける以外に利益を得ることがないこと(フリーライドという概念が存在しないこと)\r\n入札は取るか取られるかであり,落札できなかった事業者には全く利益がもたらされないので,入札談合カルテルの場合,アウトサイダーには,合意当事者の努力によって増大する共同利潤に「ただ乗り」するということが考えられない。入札市場の場合,アウトサイダーは,自ら利益を上げようと思えば,入札において競争を行うしかなく,入札制度においてアウトサイダーが競争を行わないことは,非合理的,非生産的で,通常あり得ない異常な行動である。\r\n取り分け,指名されたアウトサイダーは,受注を望むからこそ入札に参加することや,入札価格を積算して応札することは決して無償ではなく相当に大きなコストを要することを併せ考えれば,アウトサイダーが入札に参加しつつも受注を回避することは,一層異常なことといわざるを得ない。審査官は,こういった不合理にもかかわらず,事業者があえて受注を回避したことを主張立証しなければならない。\r\nまた,そうしたアウトサイダーが不合理な行動をとること及びその相当な理由は,合意当事者にも認識されていなければならない。よって,審査官は,合意当事者が,アウトサイダーが不合理な行動をとること等について認識していることを主張立証しなければならない。\r\n(エ) 入札談合カルテルの特性③−入札談合カルテルの場合,「当事者が相互拘束を続けている以上,競争は実質的に制限されているはずである」という理屈は成り立たないこと\r\n「価格カルテルは,それが継続している事実に基づき,競争の実質的制限やその及ぶ範囲を容易に認定できる」などといわれるが,それは一般の価格カルテルに限った理屈であり,本来のような入札市場,とりわけ極めて多数のアウトサイダーがひしめく入札市場の競争状況をみるためには,原則に戻って,審査官において,行為要件と別個に,競争の実質的制限という効果要件が充足されていることを立証しなければならない。\r\nイ 本件市場におけるアウトサイダーの存在状況\r\n(ア) 本件市場におけるアウトサイダーの指名参加状況\r\nまず,本件市場における指名参加状況についてみるに,本件市場においては,\r\n① 本件対象期間中に指名されたアウトサイダーは,実数にして165社にも及んでいる。これに比して,本件基本合意の当事者とされる34社の割合は,半数にも満たない。\r\n② アウトサイダーである地元業者は,全72物件の大半を占める60物件もの物件について指名されている。\r\n③ しかも,アウトサイダーである地元業者が指名業者の半数以上を占める物件が,全72物件中30物件にも及んでいる。\r\n④ さらに,指名割合をみても,各物件に占めるゼネコンと地元業者の指名割合の総和の比は,約6対4である。\r\nこのように,本件市場において実際に指名されたアウトサイダーは,本件市場の大半の物件について,しかも合意当事者(及びその他のゼネコン46社)に比しても全く遜色ない割合で指名されているのであり,当該市場における競争上,紛うことなき実質的な競争者として位置づけられている。\r\n(イ) アウトサイダーの受注実績\r\nまた,審査官の主張によっても,本件基本合意に基づいて34社が受注したとされているのは全72物件中半数以下の34物件(47.2パーセント)である一方,アウトサイダーである地元業者は,これとほぼ同数の32物件(44.4パーセント)を受注している。\r\nこの点,指名割合において39.3パーセントの地元業者が,件数においてその指名割合を超える44.4パーセントの物件を受注していることになる。\r\nこのような実績をみると,本件入札市場において,アウトサイダーである地元業者の入札競争が回避されている事情は全くうかがわれない。\r\n(ウ) 小括\r\nよって,本件においては,アウトサイダーである地元業者は,本件市場全体において,実際に非常に強い競争力を持った競争単位として活動していたことが明らかであり,端的に競争の実質的制限は否定されることが明らかな状況が認められる。\r\nウ 「総合的事業能力」という事情について\r\n(ア) 「地元業者は協力することがあった」という主張に根拠がないこと\r\n本件市場には地元業者の協力を期待できるような状況は皆無であり,審査官が最終意見で突如として追加してきた事実,すなわち,地元業者は,「34社の間で受注予定者となった者あるいは受注予定者となったJVの落札・受注に協力することがあった」という事実は全く存在しない。\r\nよって,審査官の主張する上記の要素を,競争の実質的制限の成否の判断の上で検討の対象とすることは,適正手続の保障の観点から許されないのであり,かつ,仮に検討の対象としたところで,根拠がなく,無意味である。\r\n審査官も主張しているとおり,少なくとも,難度が高いとはいえない物件については,地元業者も受注を希望することが多く,そのような場合には実質的に競争に参加していたから,協力を個別に期待し得ることがあり得ないのであれば,到底,34社が価格等を左右することはできない。また,後記のとおり,難度が高い物件についても,個別に協力した事実など認められないのだから,34社の合意によって価格等を左右することはできない。\r\n(イ) 地元業者があえて受注することを希望しないとの主張について\r\n総合的事業能力に差異があったとしても,指名された以上は,当該指名業者は当該工事を施工する能力を有するはずであり,受注を希望しないとする理由は見出せない。\r\n(ウ) 小括\r\n難度が高いとはいえない物件について34社の合意及びその他のゼネコンの協力により「受注予定者を決定し受注予定者が受注できるようにしていた」という事実は認められず,かつ,難度が高い物件についても地元業者が「あえて受注することを希望しないことがある程度見込める」という実態も根拠も存在しない。\r\nよって,これ以上,論を進めるまでもなく,審査官の主張する本件基本合意では競争は実質的に制限されないのであり,違反行為は成立し得ない。\r\nエ 指名された事業者はすべて受注能力があること\r\n(ア) ゼネコンと地元業者を区別する基準すら不明確な主張であること\r\nそもそも,ゼネコンと地元業者の区分自体,審査官の独断によるものでしかなく,かかる区分けに何らの合理的根拠も存しない。\r\n(イ) 地元業者が実質的な競争単位であること\r\n公社は,適格性のある事業者を選定しており,公社が指名した事業者は,施工能力を有しており,入札制度における競争上の優劣において全く差異はない。当該工事を施工する能力があれば,当該工事を受注することについて,事業能力に較差がないことは明白であり,指名業者すべてが形式的にも実質的にも競争単位である。\r\n(ウ) 競争者である地元業者\r\n指名されている以上,受注能力があり,かつ競争の要素は札の金額のみであるから,競争単位として完全に同等であることはBランク事業者であっても同じであり,少なくとも,公社が格上げして指名している事業者に施工能力があることは客観的に明らかであり,地元業者は,実質的にもゼネコンと同等の競争者である。\r\n(エ) 小括\r\n地元業者(165社。少なくともAランク及びAランクに格上げされたことのあるBランク事業者105社)は,実質的にもゼネコンと同等の競争単位とみなければならない。\r\nオ 指名された事業者があえて受注を希望しないことは通常あり得ないこと\r\n(ア) 審査官の主張の不合理性(総論)\r\n事業者は指名を受けることを望んでいるからこそ工事希望票を提出するのであり,発注者から指名を受けたならば,当然に受注を目指すのであって,せっかく指名を受けたにもかかわらず,次にいつ指名を受けられるかも不明な状況において,わざわざその機会を放棄して,あえて受注することを希望せず,受注を避けるような行動に出ることはおよそ営利企業として考えられない。\r\nこの点,個別の特殊事情により,ある物件に指名されても,入札の段階に至って最終的には受注を目指さないとの経営判断をするというごく例外的なケースが,絶対にあり得ないとまではいえないかもしれない。しかし,①将来,自社が受注可能な物件が本当に発注されるのか,②発注されるとしていつごろか,③その物件に自社が指名されるのか,④その物件を自社が落札・受注できるのか,といった各事情が分からない中,そのような物件の受注を期待して,せっかく現実に指名された物件の受注を回避していたのでは,結局,永久に物件の受注などできないのであって,そのような不合理な経営判断が一般的に行われ得たなどという事実は到底認められるはずもない。\r\n(イ) 審査官の立証の不合理性\r\na 地元業者の行動を証する証拠が皆無であること\r\n「地元業者が指名を受けた場合でもあえて受注を希望しないことがある」という審査官の主張を立証するために,もっとも端的で,かつ確実な証拠は,当該地元業者の供述である。しかるに,審査官は,地元業者の供述を証拠として提出していない。\r\n審査官が地元業者の供述を提出し得なかったのは,上記主張を裏付ける供述がついに一つも入手できなかったとみるほかない。すなわち,せっかく指名されたのにあえて受注を回避するなどという不合理極まりない対応をとっていた地元業者など,存在しない。\r\nb 審査官が提出した証拠は,関連性すらないこと\r\n審査官が「指名を受けた場合でもあえて受注を希望しないことがあること」の証拠として掲げているものは,いずれも証明力がなく,実質的には要証事実との関連性も認められない。\r\n(ウ) 地元業者のアンケート結果,陳述書及び参考人審訊\r\n地元業者のアンケート結果,陳述書及び参考人審訊により,審査官のいう地元業者についても,多くの事業者において,①審査官が「難度が高い」と主張している工法や規模に係る工事を現実に受注した実績があること,②そのような工事について受注意欲を有していること,したがって,審査官の主張するような工事について,難度が高い「ゆえに」これらの事業者が受注を希望しないこと,ましてや,指名を受けて入札に参加しながら,当該物件が,工事難度が高い又は「ゼネコン向け」の物件であるというような理由により,受注をあえて希望せず落札をしないように努めることなどはあり得ないこと等が,明らかとなっている。\r\nカ 難度が高い物件の持つ意味\r\n(ア) 難度論の正体\r\n審査官による「難度が高い物件については,地元業者があえて受注を希望しないと見込むことができる」という立論に根拠がなかったことは,いみじくも審査官の主張によって明らかにされている。\r\nそして,かかる結論は,当然行き着くべきものであった。\r\n例えば,ある類型の物件についてはあえて受注を希望しなかったとか,ある類型の物件については受注を希望したという供述が多数のアウトサイダーから得られているのであれば,そうした類型なり特徴なりを捉えて物件を区分し,それぞれに,「あえて受注を希望しないことが見込まれる物件」「あえて受注を希望しないとはいえない物件」等の意味付けを与えることも可能であろうが,そのような供述もないのであれば,区分も意味付けもできない。\r\nあるいは,審査官が区分方法を編み出して行った区分けであっても,区分する際の基準に,事業者の「あえて受注を希望するか否か」を決定付ける要素が含まれていれば,これに基づいた区分にもある程度意味はあり得たかもしれない。しかし,本件で審査官が行った区分は,単に工事規模や工法等によって分類されただけのものであり,そこには,全く,本来受注を望むはずの事業者をして受注回避という経営判断を導き出せるような事情が区分要素として含まれていない。そういった受注回避の経営判断と関わりのない区分から,事業者の受注回避の経営判断を導き出そうとすることに意味があるはずはなかった。\r\nつまり,結局,審査官の持ち出してきた難度論は,「地元業者があえて受注を希望しないと見込まれる物件」というレッテル貼りをするために,自ら物件を二分し,かつ,自らその一方に上記のレッテルを付けた,というだけの循環論であり,分類の根拠や,それぞれの物件群が特定の意味を持つ根拠など探しても出てくるはずもなかった。\r\n(イ) その他の難度論の問題\r\na 区分方法に必然性がないこと\r\n審査官による物件についての難度の区別は,審査官が自ら設定した判断過程に沿って区分し,区分した後で,結論に意味付けしただけであって,区分方法に必然性がない。\r\n例えば,工法レベルが「非常に高い」とされた物件が直ちに「難度が高い」と分類されているが,これも根拠が分からない。逆にいえば,物件の規模が「非常に大きい」としたものを直ちに「難度が高い」と,また「非常に小さい」を直ちに「難度が高いとはいえない」に分類していない理由が何なのかも不明である。公社開発事業部管理課長の山田明(以下「山田」という。)は,単に工法の難度の低いものから並べると開削,推進,シールドの順になると述べているだけであるし,公社の伊藤も,ポンプ場築造工事について「通常は難度が高い」と述べているだけである。これをシールド工事やポンプ場築造工事が「非常に難度が高い」という絶対的区分があるかのように転換し,しかも発注者も述べていない「非常に」などという評価を加えて,そこに区分上特別の意味を与えることは,正に恣意的な扱いである。\r\n加えて,審査官はシールド工事について「非常に難度が高い」などという評価を加えているが,シールド工法工事に選定されるのは当該高度な工事ができる資格を有する事業者だけであり,受注回避の有無は,その有資格者内部でみなければならないはずである。しかるに,審査官は,関係のない有資格者以外の事業者が指名される推進工法や開削工法と比較して非常に高いと評価し,シールド工法資格を有する者の間での受注意欲の判断に直結させている。このような評価は全く意味不明というほかない。\r\nb 区分の基礎とした事情に誤りがあること\r\n公社の山田は,審共第9号証において,指名業者について「格付け上位から選定」の意味を,二次的な選定要素にすぎず,他に選別する要素がない場合に企業努力をしている者を優先するという趣旨で用いられることが大半であると説明している。\r\nしかるに,審査官は,この供述を曲解して,例えば地元優先等の他の要素すらも排除して,格付け上位から選定していることがあるかのような供述として用いている。\r\nキ 難度が高いとはいえない物件について\r\n審査官は,難度が高いとはいえない物件について,34社は受注する「可能性がある」にとどまることを認めるのであり,これは,取ったり取られたりの入札制度においては,当たり前のことを述べているのであって,審査官が,地元業者が実質的な競争単位としても機能していることを認めている。\r\nこのことから,本件市場の約60パーセントを占める「難度が高いとはいえない物件」については受注する可能性があるだけなのに,どうして本件市場の「全体」の競争を実質的に制限していたといえるのかという疑問が生じる。\r\n一定の取引分野の一部だけに合意当事者がある程度受注することが見込まれる状況が存在しないのに,なぜ,受注する「可能性」しか見込めない残部も含めて競争の実質的制限が肯認されるのか,審査官は全く説明していない。\r\n実際,難度が高いとはいえないとされる物件の受注実績をみると,審査官が合意によって受注したと主張しているのは,43物件中わずか9物件のみである。現実に,このようなわずかな件数しか受注する可能性がなかったのであるから,その部分を含めて,すべての物件について競争を実質的に制限していたと認める理由はない。\r\nク 入札に係る行動から遡って「あえて受注を希望しないことがある」旨を推認しようとする主張\r\n(ア) 最終意見の段階で審査官が新たに持ち出してきた主張\r\n審査官は,最終意見において,新たに,「地元業者の協力を個別に期待し得る」,「入札価格の端数処理の方法及び入札価格の水準に照らして地元業者があえて受注することを希望していない物件があった」という主張を持ち出してきた。\r\nしかし,この主張は,主張のやりとりの最後に至るまで具体的には主張しないと明言して審判手続を進めさせておきながら,この時点に及んで,突如として持ち出してきたものであり,これを競争の実質的制限の成否の判断において検討の対象とすることは,適正手続に照らして断じて許されない。\r\n(イ) 地元業者の協力を個別に期待し得ることについて\r\n審査官は,34社が受注し,かつ地元業者が入札に参加した28物件のうち,8物件について,「地元業者は,34社の間で受注予定者となった者の落札・受注に協力した」などと主張し,その根拠として,被審人各社の供述調書を提出している。しかし,かかる主張には全く根拠がない。\r\n(ウ) 入札価格の端数処理の方法及び入札価格の水準に照らして地元業者があえて受注することを希望していない物件があったとの主張について\r\n地元業者が受注した32物件のうち26物件についても,地元業者を含む指名業者全員が,審査官のいう「入札価格が百万円単位になっているなど高い桁数で端数処理し,高い水準の入札価格」で応札している。34社が受注した物件に限って,地元業者が同様の入札価格で応札していることを理由に「当該物件についてあえて受注を希望していなかったことが明らか」などと認定することは,根拠なきも甚だしい。\r\nケ 予定価格及び最低制限価格を推計する能力について\r\n審査官は,ゼネコンは,地元業者よりも最低入札価格をめぐる攻防に強いから,落札率80パーセント台の物件も合意によりコントロールした物件であるといってよいと主張しているようである。\r\nしかし,ゼネコンは,予定価格及び最低制限価格を正確に推計できるので地元業者よりも価格競争に勝つ能力を発揮することが多いというのは,競争した場合の競争力に優れていることを述べている。かかる能力を発揮して,低価格競争に実際に勝って落札したということは,まさしく能率競争の結果であって,合意によってコントロールしたものではない。ここで問われているのは34社だけの合意で市場における競争を意図的にある程度自由にコントロールできるかという問題なのであり,その自由にコントロールし得る根拠として,能率競争に優れていることを掲げるのは,明らかに誤りである。\r\nコ 仮に受注回避行動があったと仮定しても,それを含めて競争にほかならないこと\r\n地元業者が,万一,若干例,指名された物件について受注を回避した物件があったとしても,これにより競争の実質的制限の有無に関する結論が左右されるものではない。\r\nけだし,そもそも,特定の物件について受注するかどうかは,市場における競争上各社が自社にとって有利か否かという経営判断に基づいて行うから,地元業者が,ある物件について受注意欲を持たないことが原因となって被審人らが受注できたとしても,競争の結果であることに変わりがないからである。地元業者が,その自由意思に基づき競争を断念したのであれば,それは有効な競争が行われた結果なのであって,そのような行動を根拠としてまで,競争の実質的制限があったと評価することなどできない。\r\nサ 入札談合カルテルにおけるシェア\r\n(ア) 入札談合カルテルにおける一般の価格カルテルの「市場シェア」に相当するもの\r\n入札市場は,1件1件の入札の集合体であり,各入札において入札価格だけを要素とした,取るか取られるかだけの競争が行われるから,入札談合カルテルの合意当時における合意当事者の落札・受注実績のシェアは何の意味も持たず,意味を持つのは,「各物件における指名業者に占める合意当事者の割合」である。\r\nそして,入札市場は,1件1件の入札の集合体であること,違反行為とされる基本合意は,将来の各入札における競争を制限するものであることからすれば,合意当事者の割合を計る上での分母は,「合意当時に将来の入札に参加する可能性のある事業者」である。\r\nよって,入札談合カルテルについて競争の実質的制限の成否を判断する場合,一般カルテルの「合意当事者の市場シェア」に相当する判断要素は,「合意当時に将来の入札に参加する可能性のある事業者に占める合意当事者の数の割合」である。\r\n(イ) 本件における「合意当事者の数のシェア」\r\na 合意当事者の数のシェアの分母の取り方\r\n競争者の範囲は,あくまでも合意形成時点でみるべきものであり,その時点で指名される可能性がある以上,これを競争者に含めなければならない。合意形成時点が特定できない場合でも,便宜上の修正が許されるとして,せいぜい,対象期間の始期において指名される可能性のあった競争者とすべきである。\r\nそうすると,本件では,本件対象期間中,公社の競争入札参加者名簿に登載された事業者全員がシェアの分母となる。\r\nb 本件における分母\r\n本件対象期間中に実際に指名された事業者だけを分母とすれば足りるという意見に立っても,本件における競争の実質的制限の有無を判断する際の考慮要素である合意当事者のシェアは,わずか34/(34+46+165)=13.9パーセントにとどまる。仮に,地元業者のうち,競争事業者をAランク事業者とAランクに格上げされたことのあるBランク事業者に分母を限定しても,合意当事者のシェアは,34/(34+46+105)=18.4パーセントである。さらに,審査官がいうように,地元業者をAランク事業者だけに限定した場合でも,そのシェアは34/(34+46+74)=22.1パーセントである。\r\nまた,仮に,その他のゼネコンにおいて審査官が主張するような「協力」関係があったと仮定し,これを違反行為者と同列にみたとしても,合意当事者とこれに協力する者の占める割合は,上記に対応して,それぞれ,(34+46)/(34+46+165)=32.7パーセント,(34+46)/(34+46+105)=43.2パーセント又は(34+46)/(34+46+74)=51.9パーセントにとどまる。\r\nこのように,本件一定の取引分野において,競争の実質的制限を判断するための考慮要素として意味のある合意当事者のシェアは,たとえ不合理に競争者を限定して見積もっても,また,合意に協力する者を含めて考えても,極めて低率にとどまっている。\r\nシ 入札談合における「合意実施の結果」\r\n審査官は,「ある程度の『受注割合』を維持している場合には,その結果からみても,当該合意が包蔵する『市場に対して及ぼす影響』が『実質的』であった,すなわち,『一定の取引分野における競争の実質的制限』が成立していたことを基礎付けることができる」とも主張するが,結局のところその主張には何の論理性もない。\r\nス 入札談合カルテルにおける「合意実施の結果」である「受注割合」の重要性\r\n入札談合カルテルが,長期間実施されたにもかかわらず,市場の一部の物件しか受注できない状況が続いていたのであれば,当然,その合意に実効性があるのか,競争を実質的に制限するものなのかという疑問が生ずる。とりわけ,入札市場における競争は,もともと取ったり取られたりする類の競争であり,合意当事者の受注が一部にとどまる場合は,合意がない状態との間で違いが見出せない。また,受注割合が一部にとどまるのはアウトサイダーが受注していること,すなわちアウトサイダーが有効に競争原理を働かせていることを意味するから,当然,合意の実効性及び競争の実質的制限は大いに疑問視される。\r\nこのように,入札の場合において受注割合がどの程度かは,違反行為の認定に当たって極めて重要である。そして,本件のように,34社の受注割合が審査官の主張によってもわずか半数以下の件数にとどまっているという特異な事例の場合には,大いに疑問を差し挟まなければならない。\r\nセ 本件における「受注割合」\r\n(ア) 本件において捉えるべき「受注実績」とは\r\n本件における受注割合の算定に当たって捉えるべき「受注実績」は,基本合意及び協力によって受注予定者が自由に設定した価格で落札した物件ということになる。\r\nしたがって,まず,証拠によって個別調整行為が行われたと認定される物件のみが実績として考慮されることは当然のことであるし,アウトサイダーが指名されている物件については,基本合意の当事者が指名されたアウトサイダー全員の協力を取り付けてそれが履行されたことが証拠によって認定された物件のみが考慮される。逆に,結果的に基本合意の当事者間で受注予定者にした者が高い水準の価格で落札できたとしても,それはアウトサイダーとの関係でいえば,競争の結果落札したものにほかならないから,判断の基礎に含められない。\r\nかかる観点からすれば,本件において競争の実質的制限があったか否かを判断する際に捉えるべき「受注実績」は,審査官が34社の合意により受注したと主張する物件のうち地元業者が入札に参加していない10物件のうち,証拠により個別調整行為の存在が立証されているもののみである。\r\nまた,仮に,34社が合意により受注した物件のうち地元業者が34社の要請に従い協力した物件が8物件あるという審査官の主張を前提にしても,上記10物件と合計した18物件のうち証拠により個別調整行為の存在が立証されているもののみが「受注実績」となる。\r\nいずれにしても,審査官が合意により受注したと主張する物件のうち,審査官すらも地元業者が競争回避をしなかったと認定している7物件を含めることはできない。\r\n各物件について証拠上個別調整の事実が認められないことは,後記3(2)のとおりであるが,この点をおいても,本件基本合意における競争の実質的制限の成否を判定する上で基礎とされる物件数は,上記のとおり極めてわずかに限られる。このような受注実績では,「市場を支配することができる状態」をもたらしたとも,「競争自体が減少して,特定の事業者又は事業者集団がその意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の条件を左右すること」が生じたとも評価できない。\r\n(イ) 審査官意見によっても,競争の実質的制限は認められないこと\r\n審査官の主張を前提にしても,前記イ(イ)のとおり約47.2パーセントの件数しか受注できていないのでは,到底,競争の実質的制限は認められない。\r\n(ウ) 落札率80パーセント台の物件\r\n34社が落札した34物件のうち,落札率が80パーセント台の物件が6物件も存在する。一般に,アウトサイダーと低価格競争が行われた物件については,いずれの事業者がいくらで落札するかについて,受注調整がない場合と完全に同じ競争状態が生じている。したがって,上記6物件を,受注者と価格を自由に決定できた物件として,市場全体における競争の実質的制限の成否を判断する際の基礎に組み入れることはできない。\r\nソ 小括\r\n以上をみるに,結局のところ,34社が審査官のいう合意によって受注予定者を決定しその者が自由に入札価格を決めることができると仮定しても,それはアウトサイダーたる地元業者が入っていない物件に限定される。そして,これは,72物件中12物件(約16.7パーセント)にすぎず,かつ,審査官が合意により受注したとしているのは,このうち10物件(約13.9パーセント)にとどまる。そうである以上,審査官のいうように34社の何らかの合意が存在すると仮定しても,本件の一定の取引分野の競争を実質的に制限することになるはずはない。\r\n\r\n3 争点③(個別物件の課徴金対象該当性の有無)について\r\n(1) 審査官の主張\r\n以下のアないしメのとおり,本件対象期間中に34社が落札・受注した物件中34物件については,すべて,本件基本合意に基づき受注調整行為が行われ,競争制限効果が具体的に生じたものであり,課徴金の対象となる。なお,番号8の物件(平成10年5月25日入札,被審人淺沼組落札),番号46の物件(平成11年8月16日入札,被審人徳倉建設落札),番号57の物件(平成12年5月15日入札,被審人飛島建設・高松建設JV落札)及び番号61の物件(平成12年6月26日入札,被審人鉄建建設・城南興業JV落札)は,それぞれ,落札した基本合意の当事者(この者をメインとするJVを含む。)以外の指名業者が,すべてその他のゼネコン及び地元業者であり,各落札者が受注予定者となり,受注したことが本件基本合意に基づくものとはいえず,課徴金の対象とならない。\r\nア 番号1の物件\r\n(ア) 番号1の物件について,被審人冨士工は,本件基本合意に基づき,受注を希望して,同社をメインとするJVが受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。被審人冨士工は,同物件について,被審人大木建設,その他のゼネコンである古久根建設等に工事希望票の提出を依頼し,依頼を受けたゼネコンは被審人冨士工が同物件の受注を希望していることを認識した上で工事希望票を提出した。被審人冨士工は,指名を受けたゼネコン各社との間で,入札価格の連絡・確認をし,その他のゼネコンである東鉄工業を含むゼネコンは,それぞれ被審人冨士工・南王建設JVが落札・受注できるよう協力した。\r\nそして,被審人冨士工・南王建設JVが低い価格水準で入札したのは,指名を受けたゼネコンの協力を得られることから,いずれも地元業者である同和工営,戸田道路,イワキ工業及び坂本工業がメインとなった各JVを抑えて,同物件を受注するためとみるべきである。\r\n(イ) 被審人冨士工・南王建設JVといずれも地元業者である同和工営,戸田道路,イワキ工業及び坂本工業がメインとなった各JVは低価格で入札したものの,被審人冨士工・南王建設JVは,指名を受けたゼネコンの協力を得て,結果として,番号1の物件を落札・受注しているのであるから,落札価格の水準に関係なく競争制限効果が具体的に生じたと認めることができる。\r\nイ 番号2の物件\r\n番号2の物件について,被審人植木組は,本件基本合意に基づき,受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nしたがって,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができる。\r\nウ 番号4の物件\r\n(ア) 番号4の物件について,白石(その後,被審人オリエンタル白石に吸収合併された。)は,本件基本合意に基づき,受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\n白石は,被審人不動テトラ,同CKプロパティー及びその他のゼネコンである村本建設の協力を得られることから,地元業者を抑えて落札・受注するために,事前に,予定価格及び最低制限価格を推計して入札に臨み,これを正確に推計できていたことから落札・受注したとみるべきである。\r\n(イ) 白石といずれも地元業者である戸田道路,東京西部総合建設事業協組,菱山建設及び竹下組は低価格で入札したものの,白石は,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,結果として,番号4の物件を落札・受注しているのであるから,落札価格の水準に関係なく競争制限効果が具体的に生じたと認めることができる。\r\nエ 番号6の物件\r\n被審人クボタ建設は,番号6の物件の施工場所の近隣において町田市発注の水道工事を施工した実績があること及びダミコンが同物件の調査設計作業の入札参加者として指名されたことから,同物件の受注を希望しており,公社が入札予定を公表した日に,被審人大成建設の大木に対し同物件の受注を希望している旨を伝えた。\r\n被審人クボタ建設は,公社が入札予定を公表した後,被審人奥村組及び同みらい建設グループ並びにいずれもその他のゼネコンである池田建設,日産建設,フジタ,竹中土木及び古久根建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,被審人クボタ建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人クボタ建設は,入札までに,指名を受けたゼネコン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人クボタ建設・曽根建設JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,入札において,自社の入札価格が被審人クボタ建設・曽根建設JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\nなお,地元業者は,あえて受注することを希望していなかったことから,被審人クボタ建設の依頼を受け,ことさらに低価格での入札をしなかったため,被審人クボタ建設・曽根建設JVの入札価格を上回った。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人クボタ建設・曽根建設JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nオ 番号7の物件\r\n被審人加賀田組は,番号7の物件の施工場所の近隣において公社発注の土木工事を施工した実績があるため,同物件の受注を希望しており,公社が入札予定を公表した後,被審人小田急建設及び同徳倉建設並びにいずれもその他のゼネコンである京王建設,環境建設及び浅野工事に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,被審人加賀田組が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人加賀田組は,入札までに,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたゼネコン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人加賀田組・イワヲ建設JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,入札において,自社の入札価格が被審人加賀田組・イワヲ建設JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\nなお,地元業者は,あえて受注することを希望していなかったことから,被審人加賀田組の依頼を受け,殊更に低価格での入札をしなかったため,被審人加賀田組・イワヲ建設JVの入札価格を上回った。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人加賀田組・イワヲ建設JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nカ 番号9の物件\r\n被審人鉄建建設は,ダミコンが番号9の物件の施工場所の調査設計作業の入札参加者として指名されたことから,同物件の受注を希望しており,被審人大成建設の大木に対しその旨を伝えた。\r\n被審人鉄建建設は,入札までに,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたゼネコン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人鉄建建設・館建リースJVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。\r\n指名を受けたゼネコン各社(入札に参加しなかった被審人西松建設を除く。)は,入札において,自社の入札価格が被審人鉄建建設・館建リースJVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\nなお,地元業者は,あえて受注することを希望していなかったことから,殊更に低価格での入札をしなかったため,被審人鉄建建設・館建リースJVの入札価格を上回った。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人鉄建建設・館建リースJVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社(入札に参加しなかった被審人西松建設を除く。)の協力を得て,受注した。\r\nキ 番号10の物件\r\n被審人大木建設は,番号10の物件の施工場所の近隣において八王子市発注の下水道工事を施工した実績があるため,同物件の受注を希望していた。\r\n被審人大木建設は,公社が同物件の設計作業を発注した後,被審人大成建設の大木に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝えた。また,被審人大木建設は,公社が入札予定を公表した後,被審人青木あすなろ建設及び同佐田建設並びにいずれもその他のゼネコンである西武建設,東鉄工業,勝村建設及び若築建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,被審人大木建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人大木建設は,入札までに,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたゼネコン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人大木建設・大城土木JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,自社の入札価格が被審人大木建設・大城土木JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\nなお,被審人大木建設・大城土木JVは,同物件において,いずれも地元業者をメインとする石川徳建設・砂川建設JV及び大明建設・芦澤建設JVが受注を希望して入札することも予測されたことから,最低制限価格を正確に読み入札した。しかし,地元業者をメインとするJVのうち上記2組のJV及び同和工営・興亜土木JVは,低価格での入札をしなかったため,被審人大木建設・大城土木JVの入札価格を上回った。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人大木建設・大城土木JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nク 番号11の物件\r\n(ア) 番号11の物件について,被審人新井組・新開工業JVは,本件基本合意に基づき,受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\n本件において,その他のゼネコンとの間に競争回避的状況が存在した。被審人大豊建設及び同松村組並びにその他のゼネコンである大本組は,被審人新井組が同物件の受注予定者たるJVのメインであると認識し工事希望票を提出した。また,被審人新井組が,同物件について,条件となる要素を有する地元業者である新開工業とJVを結成したことにより,指名を受けた住友建設,被審人松村組及び同大豊建設並びにいずれもその他のゼネコンである大本組,日本国土開発,三菱建設及びアイサワ工業の7社は,被審人新井組が受注を希望していることを認識し,異議を唱えることはないと認識していた。そして,被審人新井組は,指名を受けたゼネコン7社との間で入札価格の連絡・確認をした。\r\n(イ) 被審人新井組・新開工業JVといずれも地元業者である工藤建設及びイワキ工業がメインとなったJVは低価格で入札したものの,被審人新井組・新開工業JVは,指名を受けたゼネコンの協力を得て,結果として,番号11の物件を落札・受注しているのであるから,落札価格の水準に関係なく競争制限効果が具体的に生じたと認めることができる。\r\nケ 番号13の物件\r\n住友建設は,番号13の物件の施工場所の近隣において施工実績等があるため,同物件の受注を希望しており,被審人大成建設の大木に対して,同物件の受注を希望している旨を伝え,また,公社が入札予定を公表した後,被審人大豊建設及び同松村組並びにいずれもその他のゼネコンである森本組及び大本組に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,住友建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n住友建設は,入札までに,指名を受けたJVのメイン各社に対して,同物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたJVのメイン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で住友建設・被審人みらい建設グループJVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えず,入札において,自社の価格が同JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,住友建設・被審人みらい建設グループJVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nコ 番号19の物件\r\n(ア) 番号19の物件について,被審人真柄建設・田中建設JVは,本件基本合意に基づき,受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\n被審人真柄建設は,被審人小田急建設,同馬淵建設及び同徳倉建設並びにその他のゼネコンである大末建設に工事希望票の提出を依頼した。また,被審人真柄建設は,公社が入札予定を公表する前に,複数のゼネコンに受注を希望しているか打診した。\r\n同物件はACランクであり,「第2グループ」として事業者ランクがB又はCの事業者が工事希望票を提出しているが,JVのメインとして工事希望票を提出できるのはAランクの事業者だけであって,B又はCのランクの事業者は,JVのサブとなる者であり,同等の競争単位とは到底いえない事業者である。そして,JVのサブに対しては,通常,入札価格の連絡を行わない。\r\n(イ) 被審人真柄建設・田中建設JVは,番号19の物件の受注予定者として被審人徳倉建設,同馬淵建設及び同小田急建設並びに大末建設がメインとなった各JVの協力を得られることから,いずれも地元業者であるイワキ工業,大明建設,石川徳建設,住鉱開発工事及び近代建設がメインとなった各JVを抑えて,同物件を落札・受注するため,予定価格及び最低制限価格を推計して入札に臨み,これを正確に推計できたことから,1回目の入札で落札・受注できたとみるべきである。\r\n同物件について,被審人徳倉建設・東山工業JVは,2億1712万円で入札しているが,被審人真柄建設は,同JVの入札価格を確認し,その確認した価格で入札を依頼し,受注意欲がなかった被審人徳倉建設は,被審人真柄建設から依頼されたとおり概算で積算した価格で入札しているのであって,同JVの入札価格は,被審人真柄建設・田中建設JVの落札・受注に協力した価格にほかならない。\r\n(ウ) 被審人真柄建設・田中建設JVといずれも地元業者であるイワキ工業,大明建設,石川徳建設,住鉱開発工事及び近代建設がメインとなった各JVは低価格で入札したものの,被審人真柄建設・田中建設JVは,指名を受けたゼネコンの協力を得て,結果として,番号19の物件を落札・受注しているのであるから,落札価格の水準に関係なく競争制限効果が具体的に生じたと認めることができる。\r\nサ 番号21の物件\r\n被審人清水建設は,ダミコンが番号21の物件の調査設計作業の入札参加者として指名されたこと及び同物件の施工場所の近隣において施工実績があることから,同物件の受注を希望していた。被審人清水建設及び同安藤建設は,公社が入札予定を公表した後,被審人松村組及びその他のゼネコンである森本組に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,被審人清水建設及び同安藤建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人清水建設及び同安藤建設は,入札までに,指名を受けた被審人奥村組に対して,同物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたJVのメイン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人清水建設・同安藤建設JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えず,入札において,自社の入札価格が同JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人清水建設・同安藤建設JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nシ 番号22の物件\r\n番号22の物件について,被審人佐田建設・堺産業JVは,本件基本合意に基づき,受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\n被審人佐田建設は,「ISO規定に従い適切な入札をした」旨主張し,証拠を提出するが,当該証拠によって証し得るのは,あくまでもISO規定に従い適切に入札を行ったと社内手続上,報告がなされていることにすぎず,違法・不正行為を行ったことをわざわざ社内の報告書に残すはずはないから,同物件について本件基本合意に基づき受注予定者を決定する等の行為を行ったことを否定することにはならない。\r\nス 番号24の物件\r\n被審人大成建設は,番号24の物件の施工場所である残堀川の護岸等河川工事を施工した実績があるため,同物件の受注を希望しており,公社が入札予定を公表した後,被審人大豊建設並びにいずれもその他のゼネコンである竹中土木,古久根建設及び東急建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,被審人大成建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人大成建設は,入札までに,指名を受けたJVのメイン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人大成建設・同不動テトラJVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,入札において,自社の入札価格が被審人大成建設・同不動テトラJVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人大成建設・同不動テトラJVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nセ 番号26の物件\r\n被審人大成建設及び同不動テトラは,番号24の物件を,JVを組んで受注した実績があるため,その継続工事である番号26の物件についても両社でJVを組んで受注することを希望しており,被審人大成建設は,公社が入札予定を公表した後,被審人大豊建設並びにいずれもその他のゼネコンである日特建設,東急建設及び大本組に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,被審人大成建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人大成建設は,入札までに,指名を受けた被審人奥村組に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたJVのメイン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人大成建設・同不動テトラJVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,入札において,自社の入札価格が被審人大成建設・同不動テトラJVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人大成建設・同不動テトラJVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nソ 番号27の物件\r\n被審人馬淵建設は,平成7年ころに地元業者である石井工務店とJVを組んで下水道工事を施工した実績があったことから,当該下水道に下水管を繋げる工事である番号27の物件の受注を希望しており,被審人大成建設の大木や被審人飛島建設の丸山に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝え,被審人松村組,同青木あすなろ建設,同JFE工建及び同大豊建設並びにいずれもその他のゼネコンである村本建設及び若築建設に対して,自社が同物件の受注を希望していることを伝えた上で,工事希望票の提出を依頼した。\r\n被審人馬淵建設は,入札までに,指名を受けた被審人大豊建設及び同徳倉建設並びにその他のゼネコンである若築建設に対して,自社が同物件の受注を希望していることを伝え,指名を受けたゼネコン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人馬淵建設・石井工務店JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,入札において,自社の入札価格が被審人馬淵建設・石井工務店JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\nなお,地元業者は,あえて受注することを希望していなかったことから,被審人馬淵建設の依頼を受け,殊更に低価格での入札をしなかったため,被審人馬淵建設・石井工務店JVの入札価格を上回った。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人馬淵建設・石井工務店JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nタ 番号29の物件\r\n番号29の物件については,以下のとおり,被審人戸田建設・都南建設JVが,本件基本合意に基づいて,受注を希望し,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\n(ア) 被審人奥村組は,番号29の物件について,被審人戸田建設から受注への協力の依頼を受け,検討した上,同社に同物件に係る被審人奥村組の見積価格を連絡して,被審人戸田建設・都南建設JVの受注に協力した。\r\n(イ) 被審人CKプロパティーは,被審人戸田建設・都南建設JVが受注予定者であることを認識して,これに異議を唱えず,同JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で入札することにより,同JVの受注に協力した。\r\n(ウ) 番号29の物件について,白石及び東亜建設工業は,被審人戸田建設・都南建設JVの受注に協力した。\r\nチ 番号30の物件\r\n番号30の物件は,地元業者である高松建設の所有する道路を使用しないと施工することが困難な物件であったので,被審人飛島建設は,高松建設とJVを組んで同物件を受注することを希望しており,公社が入札予定を公表した後,被審人淺沼組及びその他のゼネコンである大本組に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,被審人飛島建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人飛島建設は,入札までに,指名を受けた被審人鉄建建設及びその他のゼネコンである熊谷組に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝え,また,熊谷組の入札価格を確認した。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人飛島建設・高松建設JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えず,入札において,自社の価格が同JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人飛島建設・高松建設JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nツ 番号31の物件\r\n被審人大豊建設は,ダミコンが番号31の物件の調査設計作業の入札参加者として指名されたことから,同物件の受注を希望しており,被審人大成建設の大木に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝え,公社が入札予定を公表した後,被審人大木建設及びその他のゼネコンである古久根建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,被審人大豊建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人大豊建設は,入札までに,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたゼネコン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人大豊建設が同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えず,入札において,自社の入札価格が同被審人の入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\nなお,地元業者は,あえて受注することを希望していなかったことから,被審人大豊建設の依頼を受け,殊更に低価格での入札をしなかったため,同被審人の入札価格を上回った。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人大豊建設が受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nテ 番号34の物件\r\n被審人大成建設及び同不動テトラは,番号24及び番号26の物件をJVを組んで受注した実績があるため,その継続工事である番号34の物件について両社でJVを組んで受注することを希望しており,被審人大成建設は,被審人淺沼組及び同奥村組並びにいずれもその他のゼネコンである大本組,若築建設及び竹中土木に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,公社が入札予定を公表した後,被審人大成建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人大成建設は,入札までに,指名を受けたJVのメイン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人大成建設・同不動テトラJVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,入札において,自社の入札価格が被審人大成建設・同不動テトラJVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人大成建設・同不動テトラJVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nト 番号38の物件\r\n被審人清水建設及び同安藤建設は,立坑工事である番号21の物件をJVを組んで受注した実績があるため,その立坑から発進するシールド工事である番号38の物件を両社でJVを組んで受注することを希望しており,公社が入札予定を公表した後,いずれもその他のゼネコンである若築建設,東急建設,森本組,西武建設,日産建設及び古久根建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,被審人清水建設及び同安藤建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人清水建設及び同安藤建設は,入札までに,指名を受けた被審人鉄建建設に対して,同物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けた被審人奥村組との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人清水建設・同安藤建設JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えず,入札において,自社の入札価格が同JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人清水建設・同安藤建設JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nナ 番号39の物件\r\n(ア) 番号39の物件について,被審人株木建設は,本件基本合意に基づき,受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て受注し,また,いずれも地元業者である新栄建設業協組及び坂本工業に受注への協力を依頼し,協力を受けた。\r\n(イ) 被審人株木建設は,各入札価格の予定価格に対する割合(以下「入札率」という。)が99.77パーセントから106.28パーセントの間にあることから,指名業者間に価格競争が行われたと推認できると主張するが,以下のとおり,この見解は誤りである。\r\na 番号39の物件において,入札に参加した被審人大木建設,同徳倉建設,同加賀田組,同小田急建設及び同冨士工は,被審人株木建設の受注に協力したところ,これら6社の入札価格は予定価格(2億3804万6000円)に近い水準にある。\r\nb また,入札に参加したいずれもその他のゼネコンである福田組及び東海興業は,被審人株木建設の受注に協力したところ,これら2社の入札価格も予定価格に近い水準にある。\r\nc 34社は,地元業者が受注を希望して価格競争を挑まない限りは,予定価格に近い価格で落札できるよう行動していたのであって,上記の入札価格の状況は,受注予定者が予定価格に近い価格で受注するために協力が行われたことを表している。\r\nd 被審人株木建設は,新栄建設業協組及び坂本工業が同被審人の受注に協力することを受け入れたと認識しているところ,新栄建設業協組の入札価格は2億4200万円(1回目),坂本工業の入札価格は2億4100万円(1回目)と,やはり予定価格に近い水準にある。このように,地元業者2社の入札価格が近似し,しかも予定価格の水準に固まっており,さらには,被審人株木建設の受注に協力した他の被審人及びその他のゼネコンの入札価格に似通っているのであり,このことは,本件基本合意により34社の競争が消滅していたこと,その他のゼネコンの協力を期待し得るという競争回避的状況の存在により受注への協力があったこと,地元業者があえて受注を希望していなかったか,又は受注予定者の受注に協力したことを示すものである。\r\nニ 番号40の物件\r\n被審人大林組は,ダミコンであるツカサコンサルタントが番号40の物件の調査設計作業の入札参加者として指名されたことから,同物件の受注を希望しており,その他のゼネコンである大本組に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けた大本組は,被審人大林組が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人大林組は,入札までに,指名を受けたいずれもその他のゼネコンである大本組及び熊谷組との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人大林組・殿入建設JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えず,入札において,自社の入札価格が同JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\nなお,地元業者は,あえて受注することを希望していなかったことから,殊更に低価格での入札をしなかったため,被審人大林組・殿入建設JVの入札価格を上回った。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人大林組・殿入建設JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nヌ 番号42の物件\r\n被審人青木あすなろ建設は,番号42の物件の調査設計作業を受注した建設コンサルタントの工法の検討書の作成を手伝ったため,同物件の受注を希望しており,被審人みらい建設グループ及び同加賀田組並びにいずれもその他のゼネコンである古久根建設及び池田建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けた被審人みらい建設グループ及び同加賀田組は,被審人青木あすなろ建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人青木あすなろ建設は,入札までに,指名を受けた被審人加賀田組,同小田急建設及び同みらい建設グループ並びにその他のゼネコンである京王建設との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えず,入札において,自社の入札価格が同JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\nなお,地元業者は,あえて受注することを希望していなかったことから,殊更に低価格での入札をしなかったため,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVの入札価格を上回った。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nネ 番号44の物件\r\n被審人CKプロパティーは,番号44の物件の施工場所の近隣において施工実績があるため,同物件の受注を希望しており,被審人大成建設の大木に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝え,また,その他のゼネコンである環境建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けた環境建設は,被審人CKプロパティーが同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人CKプロパティーは,入札までに,指名を受けたゼネコン各社に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝え,また,入札してもらう価格を連絡した。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人CKプロパティー・真上建設JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えず,入札において,自社の入札価格が同JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\nなお,地元業者は,あえて受注することを希望していなかったことから,被審人CKプロパティーの依頼を受け,殊更に低価格での入札をしなかったため,被審人CKプロパティー・真上建設JVの入札価格を上回った。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人CKプロパティー・真上建設JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nノ 番号50の物件\r\n被審人西松建設は,学校法人玉川学園と20年来の付き合いがあったため,玉川学園の用地を借りて行う番号50の物件の受注を希望しており,被審人大成建設の大木から同物件の受注希望の有無を確認され,自社が受注を希望している旨返答し,また,被審人奥村組を通じて同加賀田組に対し,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けた被審人奥村組及び同加賀田組は,被審人西松建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人西松建設は,入札までに,指名を受けた被審人奥村組及び同加賀田組との間で入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人西松建設・清水重機土木JVが当該物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えず,入札において,自社の入札価格が同JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\nなお,地元業者は,あえて受注することを希望していなかったことから,殊更に低価格での入札をしなかったため,被審人西松建設・清水重機土木JVの入札価格を上回った。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人西松建設・清水重機土木JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nハ 番号51の物件\r\n番号51の物件について,被審人松村組は,本件基本合意に基づき,受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nさらに,被審人松村組は,同物件について指名を受けた地元業者に対して,受注への協力依頼を行っており,地元業者は,殊更に低価格で入札せず,結果として,被審人松村組の受注に協力した。\r\nこのように,同物件については,被審人松村組が本件基本合意に基づき受注予定者に決定されることによって,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができる。\r\nヒ 番号52の物件\r\n被審人飛島建設は,高松建設とJVを組んで番号30の物件を受注した実績があるため,この物件と一体をなす工事である番号52の物件も高松建設とJVを組んで受注することを希望しており,公社が入札予定を公表した後,いずれもその他のゼネコンである大本組及び若築建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,被審人飛島建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人飛島建設は,入札までに,指名を受けた被審人奥村組及びその他のゼネコンである熊谷組との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人飛島建設・高松建設JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えず,入札において,自社の価格が同JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人飛島建設・高松建設JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nフ 番号56の物件\r\n被審人東洋建設は,番号56の物件の施工場所の近隣で施工実績を持つこと及びダミコンが同物件の調査設計作業の入札参加者として指名されたことから,同物件の受注を希望しており,公社が入札予定を公表した後,被審人大豊建設に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝えた上で,工事希望票の提出を依頼し,また,その他のゼネコンである鴻池組に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けた被審人大豊建設及び鴻池組は,被審人東洋建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人東洋建設は,入札までに,指名を受けた被審人大豊建設及び同淺沼組並びにいずれもその他のゼネコンである鴻池組及び三井建設に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝え,また,被審人大豊建設及び三井建設との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人東洋建設・拓栄建設JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えず,又は自社も受注を希望する旨を述べたものの最終的には受注を断念し,入札において,自社の入札価格が同JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\nなお,地元業者は,あえて受注することを希望していなかったことから,殊更に低価格での入札をしなかったため,その入札価格は被審人東洋建設・拓栄建設JVの入札価格を上回った。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人東洋建設・拓栄建設JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nヘ 番号58の物件\r\n被審人佐田建設は,番号58の物件の施工場所が自社の営業所に近く,当該施工場所の近隣において施工実績があるため,同物件の受注を希望しており,公社が入札予定を公表した後,被審人株木建設及び同加賀田組並びにいずれもその他のゼネコンである森本組及び勝村建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,被審人佐田建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人佐田建設は,入札までに,指名を受けた被審人加賀田組及び森本組との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n被審人小田急建設を含む指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人佐田建設・堺産業JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えず,入札において,自社の入札価格が同JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で入札に参加した。しかるに,被審人小田急建設・タカラヤ土木興業JVは,被審人佐田建設の了解の下に被審人佐田建設・堺産業JVの入札価格よりも低い価格で入札に参加した。\r\nなお,地元業者は,あえて受注することを希望していなかったことから,殊更に低価格での入札をしなかったため,被審人小田急建設・タカラヤ土木興業JVの入札価格を上回った。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人佐田建設・堺産業JVが受注を希望して受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社は,同JVの落札に協力したところ,被審人小田急建設・タカラヤ土木興業JVが,被審人佐田建設・堺産業JVの了解の下に受注予定者である同JVの入札価格よりも低い価格で入札すること,すなわち被審人小田急建設・タカラヤ土木興業JVが受注予定者となることによって,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができる。\r\nホ 番号59の物件\r\n被審人坂田建設は,公社から一年程度指名されていなかったことから,番号59の物件の受注を希望しており,公社が入札予定を公表したころ,被審人冨士工及びその他のゼネコンである若築建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,被審人坂田建設が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人坂田建設は,入札までに,指名を受けた被審人クボタ建設,同冨士工及び同淺沼組並びにその他のゼネコンである若築建設に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝え,被審人冨士工並びにいずれもその他のゼネコンである若築建設及び村本建設に対して,入札してもらう価格を連絡した。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人坂田建設・平井工業JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,入札において,自社の入札価格が被審人坂田建設・平井工業JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\nなお,地元業者は,あえて受注することを希望していなかったことから,殊更に低価格での入札をしなかったため,被審人坂田建設・平井工業JVの入札価格を上回った。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人坂田建設・平井工業JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nマ 番号64の物件\r\n被審人淺沼組は,番号64の物件の施工場所において施工実績があるため,同物件の受注を希望しており,被審人安藤建設等との間で,同物件について入札価格の連絡・確認をした。\r\nその他のゼネコンである勝村建設は,被審人淺沼組が同物件の受注への協力を求めていることを認識した上で,同被審人に対し,その受注を妨げない自社の積算価格を伝えた。\r\n被審人淺沼組は,被審人徳倉建設を含むゼネコンに受注を希望している旨伝えた。そして,被審人淺沼組は,被審人徳倉建設との間で入札価格の連絡・確認を行い,被審人徳倉建設は,被審人淺沼組が受注予定者であることを受け容れ,その受注に協力した。\r\n被審人淺沼組は,いずれも地元業者である奥村組土木興業及び笹島建設に受注の協力を依頼し,両社は,この協力依頼を受け,あえて受注することを希望せず,殊更に低価格での入札をしなかった。\r\n以上のとおり,同物件については,被審人淺沼組が本件基本合意に基づき受注予定者に決定されることによって,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができる。\r\nミ 番号65の物件\r\n被審人JFE工建は,多摩地区において長い間受注しておらず,番号65の物件の受注を希望しており,公社が入札予定を公表したころ,被審人大成建設の松本に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝えた。地元業者である東山工業は,同物件の施工場所の最も近くに事務所を有していたため,被審人JFE工建は,公社が指名を行った後,東山工業とJVを組んで同物件を受注することを希望し,東山工業にその旨要請し,JVを組んだ。\r\n被審人JFE工建は,入札までに,指名を受けた被審人大木建設との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人JFE工建・東山工業JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えず,入札において,自社の入札価格が同JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\nなお,地元業者は,あえて受注することを希望していなかったことから,殊更に低価格での入札をしなかったため,被審人JFE工建・東山工業JVの入札価格を上回った。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人JFE工建・東山工業JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nム 番号67の物件\r\n被審人錢高組は,番号67の物件の施工場所の近隣で施工実績を持つため,同物件の受注を希望しており,公社が入札予定を公表した後,被審人クボタ建設及びその他のゼネコンであるアイサワ工業に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝え,また,白石,被審人佐田建設,同クボタ建設及び同青木あすなろ建設並びにいずれもその他のゼネコンであるアイサワ工業及び村本建設に対して,工事希望票の提出を依頼した。依頼を受けたゼネコン各社は,被審人錢高組が同物件の受注を希望していることを認識した上で,工事希望票を提出した。\r\n被審人錢高組は,入札までに,指名を受けた被審人冨士工並びにアイサワ工業及び村本建設との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人錢高組・南王建設JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えず,又は自社も受注を希望する旨を述べたものの最終的には受注を断念し,入札において,自社の入札価格が同JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\nなお,地元業者は,あえて受注することを希望していなかったことから,被審人錢高組の依頼を受けて,殊更に低価格での入札をしなかったため,被審人錢高組・南王建設JVの入札価格を上回った。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人錢高組・南王建設JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\nメ 番号71の物件\r\n被審人奥村組は,番号71の物件の施工場所の近隣において八王子市発注の下水道工事を施工した実績があるため,同物件の受注を希望しており,公社が入札予定を公表した後,被審人安藤建設,同真柄建設,同戸田建設,同松村組,同大木建設及び白石並びにいずれもその他のゼネコンである森本組,前田建設工業,フジタ,間組,三井建設,青木建設,日産建設,西武建設,アイサワ工業及び三菱建設に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝えた上で,工事希望票の提出を依頼した。\r\n被審人奥村組は,入札までに,指名を受けたJVのメイン各社に対して,自社が同物件の受注を希望している旨を伝え,また,指名を受けたJVのメイン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,以上の過程で被審人奥村組・都南建設JVが同物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった。\r\n指名を受けたゼネコン各社は,入札において,自社の入札価格が被審人奥村組・都南建設JVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,入札に参加した。\r\n以上のとおり,同物件については,本件基本合意に基づき,被審人奥村組・都南建設JVが受注を希望して,受注予定者となり,指名を受けたゼネコン各社の協力を得て,受注した。\r\n(2) 被審人らの主張\r\nア 番号1の物件\r\n(ア) 審査官は,被審人冨士工が同大木建設に工事希望票の提出を依頼したとして,被審人冨士工の富安の供述調書(査共第6号証)と被審人大木建設の伊勢屋の供述調書(査共第5号証)を証拠として提出する。しかし,富安の供述調書は依頼先のゼネコンや担当者の具体名に言及していないし,伊勢屋は,供述調書において,推測であることを認めている。しかも,被審人大木建設以外に,番号1の物件に指名された被審人CKプロパティー,同加賀田組,同みらい建設グループの3社を含む34社の中で被審人冨士工から工事希望票の提出依頼を受けたと供述する関係者はいない。\r\n審査官は,「被審人冨士工は,指名を受けたゼネコン各社との間で,入札価格の連絡・確認をした」と主張して,富安の上記供述調書を提出する。しかし,富安の供述調書には概括的な記載しかなく,富安がどこの社の誰に,いくらの入札価格を連絡したのかも明らかにされていない。加えて,指名業者である上記被審人大木建設以下4社の担当者は誰も富安から入札価格の連絡を受けたとは供述していない。\r\n審査官は,指名を受けたゼネコン5社は「被審人冨士工・南王建設JVが落札・受注できるように協力した」と主張する。しかし,被審人大木建設の伊勢屋の供述調書には「冨士工が受注できるように協力しています。」と記載されているのみで,肝心の入札価格をどのように決めたかについて富安の供述調書と一致していないし,同調書の記載からすると,そもそも番号1の物件について記憶があるのかどうかもあいまいであり,同調書の信用性は認められない。被審人加賀田組の大竹の供述調書(査共第162号証)についても,同様の理由で信用性は認められない。その他,被審人CKプロパティー,同加賀田組,同みらい建設グループが被審人冨士工・南王建設JVの受注に協力したことを示す証拠はない。\r\n以上のとおり,同物件に関し,審査官の主張する受注調整行為を認めるに足りる証拠はないので,課徴金の納付を命ずることもできない。\r\n(被審人ら)\r\n(イ) 34社のうち,番号1の物件の入札に参加したのは,被審人冨士工を含む5社にすぎず,入札した10社中の過半数にも達しておらず,そもそも指名業者の構成からして,入札参加者の間で競争が行われたことが容易に推認できる。\r\n同物件の入札結果をみると,最低制限価格に当たる落札率80パーセントにほぼ等しい価格を入れた指名業者は,被審人冨士工をはじめ半数の5社に及び,その入札率についての内訳は,79.99パーセント1社(地元業者),80パーセント2社(被審人冨士工と地元業者),80.21パーセント2社(地元業者)である。最低制限価格すれすれの価格で落札が競われたことは,まさに厳しい競争の成果というべきであり,競争制限効果が具体的に生じなかったことの証左である。\r\n(被審人冨士工)\r\nイ 番号2の物件\r\n(ア) 番号2の物件における入札参加者のうち34社に属する者は7社であるが,その中で被審人植木組に協力した旨述べているのは,被審人クボタ建設,同加賀田組の2社のみであり,同佐田建設は,指名稼ぎで入札したと述べ協力したとは述べていない。そうすると,34社に属する4社については,協力したかどうか不明ということになる。なお,その他のゼネコンの3社(大末建設,西武建設,東鉄工業)は,協力したと認定できなくはない。これでは,34社に属する者が被審人植木組を受注予定者と決定したということはできないのみならず,被審人植木組が落札者となる必然性,蓋然性を認めることができない。(被審人ら)\r\n(イ) 被審人植木組は,番号2の物件の入札の際に事業者ランクがAになって間がなく,公社から受注実績がなかったので条件がなく,大末建設に対して受注意欲を表明したのみであり,同物件の受注予定者とされたことはない。また,指名業者との間で入札価格の調整を全く行っていない。(被審人植木組)\r\nウ 番号4の物件\r\n(ア) 白石の落札率は,80.09パーセントであり,最低制限価格との差はわずか0.09パーセントでしかない。このことは,白石が,最低制限価格付近で熾烈な自由競争が繰り広げられるであろうことを前提に,予想される最低制限価格ぎりぎりまで予算削減を図った上で入札に臨んだことを示している。\r\n本件入札では,上位4社が1億6685万円(入札率78.37パーセント),1億7024万7000円(2社。入札率79.96パーセント),1億7052万円(入札率80.09パーセント)と極めて近接した金額で入札している。しかも,落札した白石と東京西部総合建設事業協組と菱山建設との差は,金額にして27万3000円,入札率にして0.13パーセントとごく僅少である。\r\n地元業者3社は,たまたま最低制限価格を下回り失格となった。\r\nしたがって,白石が番号4の物件を落札したのは自由競争の結果にほかならない。\r\n(イ) 課徴金を課すためには,「違反行為」である34社間の本件基本合意と「事業活動」である物件の受注との間に因果関係が存在することが必要であるところ,番号4の物件を白石が落札したのは熾烈な自由競争の結果にほかならないから,上記因果関係が認められない。また,落札率は80.09パーセントと極めて最低制限価格に近く,基本合意の目的である「受注価格の低落防止」効果は全く図られていない。したがって,白石による同物件の受注は,違反行為の「実行としての事業活動」に該当せず,同物件は課徴金の対象にはならない。\r\n(被審人オリエンタル白石)\r\nエ 番号6の物件\r\n番号6の物件の入札には,一般的に談合に協力しない「よそ者業者」である地元業者が3社も参加しており,被審人クボタ建設は,同物件を地元業者との間の自由な価格競争により落札し,受注したから,仮に,審査官の主張する本件基本合意の存在が認められたとしても,地元業者3社に対して被審人クボタ建設が協力要請を行って協力を取り付けた事実が認められない以上,同物件については競争制限効果が具体的に生じたと認めることができず,課徴金を課すことはできない。(被審人クボタ建設)\r\nオ 番号7の物件\r\n番号7の物件について34社に属する指名業者3社(被審人加賀田組,同徳倉建設,同小田急建設)の相互の間で,被審人加賀田組をメインとするJVを受注予定者と決定した事実はなく,また,被審人加賀田組に協力するかどうか分からない者が多数(その他のゼネコン4社,地元業者3社)存在したのであるから,同JVが落札するという必然性ないし蓋然性を認めることはできない。取り分け,地元業者3社は,審査官が「『地元業者』に対する協力要請は一般的には行われていなかった」,「『地元業者』が『受注予定者の受注を妨げない価格で入札していたこと』は一般的には『協力』として行ったものではない」と主張していることからも明らかなように,厳然たる競争者として存在していた。(被審人加賀田組)\r\nカ 番号11の物件\r\n被審人新井組はゼネコン他社の入札金額を大きく下回る金額で入札していること及び被審人新井組の入札価格が新開工業とのJV結成を踏まえた慎重な見積りに基づくものであったことからすれば,番号11の物件について,被審人間に何らの合意もないことは明白である。\r\n番号11の物件に関しては,現に,地元業者2社も入札に参加し,被審人新井組をメインとするJVを下回る価格で入札して,被審人新井組が価格競争に敗れていること,その地元業者2社の入札価格は,最低制限価格すら下回るほどのものであり,価格競争が過大なまでに行われていたことからすれば,本件基本合意の存在が認められるとしても,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができず,課徴金の対象とならない。\r\n(被審人新井組)\r\nキ 番号13の物件\r\n審査官は,住友建設多摩営業所長の青木の供述調書(査共第136号証)を提出するが,土木の営業は,平成10年6月末までは繁田が担当していたから,同年6月22日に行われた番号13の物件の入札に関する業務には青木は全く関与しておらず,青木の供述は信用性に乏しい。\r\nまた,大本組の近藤(査共第62号証),被審人大豊建設の浅間(査共第164号証),被審人松村組の内田(査共第84号証),森本組の野地(査共第92号証)の各供述調書には,多数の工事のうち受注意欲のない物件について,本命の業者から,工事希望票の提出依頼があり,札の連絡もあり,その価格で応札して本命の業者の落札に協力した旨が記載されているにすぎず,各供述人が個々の物件についてどこまで明確に認識して供述したのか甚だ疑問である。番号13の物件については,大本組の近藤は,工事希望票の提出依頼や札の連絡をしてきたのは誰か記憶がないことを認めており,森本組の野地も工事希望票の提出依頼が大日本土木と住友建設のどちらかからあったのか特定できていないから,両者の供述は価値が極めて乏しい。\r\nまた,「入札」という市場における競争を制限したというには,自ら受注意欲があるにもかかわらず,受注意欲を有する他社に譲歩して,本来であれば当該他社に勝てるような価格で入札したはずのところ,あえて当該他社の入札価格を上回ることによって,他社の落札に協力したといえなければならない。仮に,自ら受注意欲のない物件について,強い受注意欲を有する業者から札の連絡があり,そのような価格で応札したとしても,そもそも受注意欲がない物件であるから,そもそも強い受注意欲を有する業者に勝てるような価格で入札をするはずがないため,そのような行為によっては競争制限効果は生じる余地はない。そして,大本組の近藤,被審人大豊建設の浅間,被審人松村組の内田,森本組の野地の各供述は,いずれも自ら受注意欲がない物件についてのものであるから,競争制限効果の根拠にはなり得ない。\r\n被審人大成建設の大木(査共第110号証),佐藤工業の吉元(査共第72号証),西武建設の五十嵐(査共第75号証)の各供述も,番号13の物件に関して,そのような入札価格の連絡や協力依頼,協力を行ったことを供述しているわけではない。\r\n以上のとおり,各供述調書はいずれも信用性がなく,それらの供述によっても,番号13の物件について,競争制限効果が具体的に生じたとは認めることができないから,同物件は課徴金の対象とならない。\r\n(被審人三井住友建設)\r\nク 番号19の物件\r\n番号19の物件の入札には,地元業者が実質的な競争単位として指名業者の半数も参加しており,ゼネコン間で受注予定者を決定することなどは不可能であるし,受注予定者が落札価格を定めて,当該価格で落札しようとしても不可能である。現実にも実質的な競争が行われたことは,各入札参加JVの入札価格からも明白であり,予定価格の80.12パーセントで入札したJVのメインが,34社の中の1社である被審人徳倉建設であることからも明らかである。(被審人真柄建設)\r\nケ 番号21の物件\r\n(ア) 審査官は,被審人清水建設が工事希望票の提出依頼をした証拠として,被審人松村組の内田の供述調書(査共第84号証)及び森本組の野地の供述調書(査共第92号証)を提出する。しかし,被審人松村組の内田の供述は,記憶があいまいであることを自認しており,もちろん具体性も迫真性もなく信用性に欠ける。また,森本組の野地の供述は,依頼された状況があいまいであるばかりか,そもそも被審人清水建設の行為を述べていない。\r\n(イ) 審査官が,入札価格の連絡の証拠として提出する被審人奥村組の山本の供述調書(査共第137号証),熊谷組の中村の供述調書(査共第181号証)においては,被審人清水建設及び同安藤建設が,自社のJVの入札価格を被審人奥村組及び熊谷組に対して連絡したなどとは全く述べられていない。\r\n(ウ) 被審人奥村組の山本は,上記供述調書において「清水建設・安藤建設JVの落札に結果的に協力した物件であった」とあえて「結果的に」という文言を付している。これは,「意図的に」協力したものではないこと,すなわち協力要請に応じて協力したものではないことを明確に示している。\r\n前田建設工業の福本(査共第59号証),佐藤工業の吉元(査共第74号証),三井建設の大貫(査共第159号証)は,各供述調書において番号21の物件について,各社が被審人清水建設・同安藤建設JVの受注に協力したことは述べていない。\r\n被審人西松建設の遠藤(査共第147号証)は,被審人清水建設・同安藤建設JVが,予定価格を超える可能性を視野に入れて,高水準価格で落札することを目指していた旨供述しているが,かかる行動は,紛れもない競争である。\r\nしかも,相指名業者である被審人大林組,五洋建設及びフジタが,被審人清水建設・同安藤建設JVが番号21の物件を希望していることを認識し,これに異議を唱えなかったという証拠は皆無である。被審人大林組等は,競争回避行動をとらなかった,すなわち競争行為を行ったと評価される。\r\nまた,被審人清水建設が受注予定者として行動した事実を証明する証拠はない。\r\n以上,同物件について,本件基本合意に基づく個別調整行為によって受注予定者が決定された証拠は存在しない。\r\n(エ) 被審人清水建設・同安藤建設JVが相指名業者に対して入札価格の連絡をしていないことは,証拠が一切ないこと,逆に,価格連絡がなかったことを積極的に証明する被審人西松建設の遠藤の前記(ウ)の供述から明らかであるところ,同人が供述するとおり,ゼネコンの予定価格を読む能力には限界があり,そのことはゼネコンにおいて理解されていた。すなわち,入札価格の連絡がない限り,仮に受注予定者がいたとしても,その者が落札できる見込みがあったとはいえない。\r\nまた,仮に入札価格の連絡をしない方法で入札談合を実施する場合があると仮定しても,そのような場合,相指名業者が正確に予定価格を算出する保証はないので,受注予定者は,想定予定価格よりもある程度低い金額での入札を行わなければならない。しかるに,被審人清水建設・同安藤建設JVは,番号21の物件において,結果的に予定価格の99.83パーセントの金額で入札したが,入札価格を連絡・確認しない方法で受注しようと考えるのであれば,このように予定価格ぎりぎりの金額で入札することは,あり得ない行動である。実際,入札価格の連絡がされた事実がないのに,同JVの入札価格の2パーセント以内に2JV,約3パーセント以内に合計4JVが入るほどに接近した金額で入札されており,2パーセント以内の事業者の中には,受注を目指したと明言している被審人西松建設も入っている。このような結果からみても,被審人清水建設・同安藤建設JVが落札・受注を逃した可能性があった。被審人清水建設は,自らが受注予定者に決定されていれば,あり得ない入札行動をとっており,同被審人が受注調整に関与していないことは明白である。\r\nもちろん,予定価格に近い金額での受注を目指すことも,独占禁止法が保護する「競争」にほかならず,同物件は,かかる競争の結果,被審人清水建設・同安藤建設JVが落札・受注したのであり,被審人清水建設において,本件基本合意の下に個別調整行為が行われたという事実は認められない。\r\n(被審人清水建設,同安藤建設)\r\nコ 番号22の物件\r\n被審人佐田建設は,同社が受注した番号22の物件について,ISO規定に従い,適切な入札により落札するに至ったものであって,その間,同被審人の営業担当者が他社に落札について協力依頼をした事実は全くない。(被審人佐田建設)\r\nサ 番号29の物件\r\n審査官が主張する①被審人戸田建設が,入札までに,指名を受けた被審人奥村組及び東亜建設工業に対し自社が番号29の物件の受注を希望している旨伝え,また,被審人奥村組の間で入札価格の連絡・確認をした事実,②上記事実に基づいてゼネコンが被審人戸田建設の同物件に対する受注意欲を認識し,それに異議を唱えなかった事実,③被審人戸田建設は,本件基本合意に基づき受注予定者となり,指名を受けたゼネコンの協力を得て,受注した事実,④指名を受けたゼネコンは,入札において,自社の入札価格が被審人戸田建設をメインとするJVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,又は受注する可能性がないと思われる価格で入札に参加した事実,及び⑤同物件に入札した地元業者はゼネコンと実質的に同等の競争単位とはいえず,これら地元業者は,あえて同物件を受注することを希望していなかったことから,ことさらに低価格での入札をしなかったため,同JVの入札価格を上回った事実は,いずれも存在しなかった。(被審人戸田建設)\r\nシ 番号30の物件\r\n番号30の物件は,被審人飛島建設がJVを組んだ高松建設の所有する道路を使用しないと施工できず,施工できるのは,入札実施時において被審人飛島建設・高松建設JVのみであったので,ほかに施工できる事業体が存在せず,実質的競争関係が客観的に存在しなかった。また,このことは,工事業者であれば立地を見れば分かり,関係者も認識しており,主観的にも実質的競争関係は存在しなかった。したがって,番号30の物件には,競争制限は行われ得ない。\r\n番号30の物件については,受注予定者を決めるための調整行為や,依頼行為が行われたことに関する証拠はなく,むしろ34社に含まれる事業者も受注を目指し活動したこと,調整行為をしていないこと,依頼連絡もないこと,独自の見積りをして入札に参加したことという調整行為の不存在を示す証拠がある。\r\nしたがって,同物件は課徴金の対象とならない。\r\n(被審人飛島建設)\r\nス 番号31の物件\r\n被審人大豊建設の浅間は,本件基本合意の当事者のうち,わずかに被審人大木建設に対してのみ工事希望票の提出を依頼したというのであるから,入札参加者10社のうちのわずか2社だけにしか受注調整の効果は及んでいない。これに受注への協力が見込まれたとして古久根建設を加えても,その受注調整の効果は入札参加者10社のうちの3社だけにしか及んでいない。これでは,本件基本合意に基づく受注調整の効果は極めて限られたものとなってしまい,浅間が真摯に本件基本合意に基づいて番号31の物件を受注しようと考えていたとは認め難い。\r\nさらに,被審人大豊建設の浅間は,他の入札参加者の南海辰村建設,三井建設,東海興業,協和エクシオ,伊藤組土建,大盛工業及び松尾工務店へも受注意欲を伝えたり,入札価格の連絡をした旨その供述調書に記載があるが,もし,それが事実とすれば,この入札において被審人大豊建設が受注できるよう受注調整の活動をしたのは,本件基本合意に基づくものではなく,むしろ,本件基本合意の当事者でない入札参加者8社との個別の交渉,連絡が中心となるのであり,受注の結果も,被審人大木建設を除くそれら入札参加者8社との個別交渉によってもたらされたというべきである。\r\n以上,番号31の物件は,本件基本合意に基づいて被審人大豊建設が受注したとはいえず,それとは別個の原因によるということになるから,課徴金の納付を命じることはできない。\r\n(被審人大豊建設)\r\nセ 番号38の物件\r\n被審人清水建設又は同安藤建設が工事希望票の提出依頼に関与したことを立証する証拠はほとんどない。また,相指名業者である五洋建設,間組及びフジタが,被審人清水建設・同安藤建設JVから協力を求められたとの証拠は皆無である。\r\n審査官の主張によっても,被審人奥村組をメインとするものを除く8JVは,被審人清水建設・同安藤建設JVの入札価格を知らずして入札に参加しているところ,被審人清水建設・同安藤建設JVは,予定価格の99.37パーセントの札を入れている。かかる入札行動は,受注調整行為をしていたとすればあり得ない行動である。入札価格の連絡がされた事実がないのに,被審人清水建設・同安藤建設JVの入札価格の1パーセント以内に2JV,3パーセント以内に合計9JV(全JV)が入るほどに接近した金額が入札されており,このような結果からみても,被審人清水建設・同安藤建設JVが落札・受注を逃した可能性が現実にあり得た。被審人清水建設・同安藤建設JVが基本合意の下個別調整行為を行っていたのであれば,なにゆえ,失注する可能性が高いにもかかわらず,入札価格の連絡を行わず,かつ,予定価格に近い金額で入札したのか,全く不合理である。被審人清水建設のかかる入札行動は,同被審人が自社が受注予定者に決定されていると認識していないことを証明している。番号38の物件について,受注調整行為が行われた事実はない。\r\n(被審人清水建設,同安藤建設)\r\nソ 番号39の物件\r\n被審人株木建設は,約20年前に番号39の物件の施工場所の近隣において下水道工事を施工したにすぎないから,本件基本合意によって同被審人が受注予定者に決定されたとは認められない。また,仮に同被審人が受注意欲を他社に示したとしても,そのことのみによって,同被審人を受注予定者に決定することはできない。\r\n同物件は,多数の事業者が受注希望票を提出する難度が高いとはいえない物件であり,仮に難度が高い物件であるとしても,被審人ら以外の多数の事業者との競争の存在は否定し得ず,本件基本合意によっても入札の結果を左右することはできない。\r\n同物件について,審査官の主張を前提としても,入札段階において,被審人株木建設は,いずれも地元業者である坂本工業及び新栄建設業協組から,自社に受注意欲があることの了解を得られなかったから,自社が受注できる可能性があると見込んでいなかった。\r\nさらに,同物件の入札参加者である全事業者の入札率をみても,99.8から106.3パーセントの間に収まっていることをみれば,指名業者は,いずれも,予定価格を正確に推計し,ゼネコンである被審人株木建設らと十分競争可能な価格をもって対応し,熾烈な価格競争を行っていたことが推認される。このような入札率の状況は,審査官が本件基本合意の結果ではないと自認する38物件と同様であるから,これらの物件に係る入札結果と対比して番号39の物件の入札状況をみれば,結局入札談合なるものと関係なく生じた,まさに競争の結果であることは否定し得ない。\r\n以上のとおり,同物件について,課徴金を課す理由はない。\r\n(被審人株木建設)\r\nタ 番号40の物件\r\n被審人大林組が受注を希望していたことは事実であるとしても,それはツカサコンサルタントが調査設計作業の入札に参加したためではない。この入札には,ツカサコンサルタント以外の複数者が参加しており,ツカサコンサルタントが参加したことをもって受注予定者あるいは有力候補者となるものではない。\r\n被審人大林組が他の入札参加者に対して工事希望票の提出依頼を行ったことを認める証拠は皆無である。\r\n被審人大林組が入札までに相指名業者である大本組及び熊谷組との間で入札価格の連絡・確認をした事実はない。\r\n被審人大林組が受注希望していることの認識があったことが認められる大本組の供述調書に,錢高組及び熊谷組の供述調書を加えたとしても,これらのみをもって,指名を受けた「各社」が被審人大林組の受注希望を認識し,それに異議を唱えなかったとまで認定することはできない。\r\n相指名業者が,自社の入札価格が被審人大林組・殿入建設JVの入札価格より高い価格となるという認識を有して入札に参加したことを裏付ける証拠はない。\r\n入札に参加した地元業者を構成員とする大盛工業・八洲建設JVがあえて受注を希望しなかったと認めるに足りる証拠はない。\r\n以上のとおり,結局番号40の物件について受注調整が行われたこと,被審人大林組が受注調整に関与したことを認めるに足りる証拠はない。\r\n(被審人大林組)\r\nチ 番号42の物件\r\n相指名JVのメインである東海興業,環境建設及び浅野工事が,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVから協力を求められたとの証拠は皆無である。東海興業等は,競争回避行動をとらなかった,すなわち競争行為を行ったと評価される。\r\n審査官の主張によっても,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVが入札価格の連絡・確認をした相指名JVのメインは,わずか4社であり,相指名JVのすべてに対して入札価格の連絡なき限り,仮に受注予定者がいたとしても,その者が落札できる見込みがあるとはいえない。また,仮に入札価格の連絡をしない方法で入札談合を実施する場合があると仮定しても,そのような場合,相指名JVが正確に予定価格を算出する保証はないので,受注予定者は,想定予定価格よりもある程度低い金額での入札を行わなければならない。しかるに,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVは,番号42の物件の1回目の入札において,結果的に,予定価格の100.96パーセントの金額で入札した。もし,入札価格を連絡・確認しない方法で受注しようと考えるのであれば,このように予定価格ぎりぎりの落札を目指して入札することは,あり得ない行動である。実際,入札価格の連絡がされた事実がないのに,同JVの入札価格の1パーセント以内に2JV,約2パーセント以内に合計3JVが入るほどに接近した金額が入札されており,このような結果からみても,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVが落札・受注を逃した可能性があった。被審人青木あすなろ建設は,自らが受注予定者に決定されていれば,あり得ない入札行動をとっており,同社が受注調整に関与していないことは明白である。\r\n予定価格に近い金額での受注を目指すことも,独占禁止法が保護する「競争」にほかならず,同物件は,競争の結果,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVが落札・受注した。被審人青木あすなろ建設が,本件基本合意の下に個別調整行為を行ったという事実はない。また,アウトサイダーである地元業者が被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVの落札・受注に協力した事実はなく,同JVは競争により同物件を落札・受注した。\r\n(被審人青木あすなろ建設)\r\nツ 番号44の物件\r\n被審人CKプロパティーの墨井の供述調書(査共第4号証)には「8月初めころに,・・・東京都23区内と多摩地区に本社を置く坂本工業などゼネコンではないA級業者3社くらいに協力方の挨拶をしております。」と記載されているが,かかる供述においては,一体どのような内容の協力方法を依頼したのか,また,応札金額の連絡の有無などの具体的なやりとりが一切なく,かかる具体性を欠く供述は信用性に乏しい。\r\nさらに,同調書には「前週の金曜日くらいに,私から各スポンサー業者の担当者へ電話を架け」との記載があるが,かかる供述の「スポンサー業者」とは,同一調書に「メインとなる『スポンサー』のゼネコンさん」とあることからすれば,ゼネコンを指すと考えられる。よって,同調書は,被審人CKプロパティーが地元業者へ受注協力の依頼を行ったことの証拠とならない。したがって,被審人CKプロパティーが地元業者へ受注協力の依頼を行った旨の審査官の主張については,何ら証拠がない。\r\n番号44の物件は難度が高いものではなく,地元業者も当然に競争事業者となるところ,審査官も認めるとおり,被審人CKプロパティーと地元業者との間で何らの合意も存在しないから,被審人CKプロパティーが落札できる必然性はなく,同物件の入札において,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができない。\r\n(被審人CKプロパティー)\r\nテ 番号50の物件\r\n番号50の物件の入札には,一般的に談合に協力しない「よそ者業者」である地元業者が3社も参加しており,被審人西松建設は,同物件を地元業者との間の自由な価格競争により落札し,受注したから,仮に,本件基本合意が存在していたとしても,地元業者3社に対して同被審人が協力要請を行って協力を取り付けた事実が認められない以上,同物件においては競争制限効果が具体的に生じたと認めることができず,課徴金を課すことはできない。(被審人西松建設)\r\nト 番号51の物件\r\n番号51の物件については,ゼネコンはもとより,地元業者もその受注獲得に積極的に参加したことは証拠上明白であるから,被審人松村組がゼネコン各社の協力を得て受注したとの審査官の主張は失当である。\r\n白石並びにいずれもその他のゼネコンである東海興業及び大日本土木に係る供述調書等には,同物件に関する記述はないので,これらの事業者は,同物件に関する受注予定者の決定に何ら関与していなかった。このことは,被審人松村組が,同物件の受注について,競争者を排除したり減少させたりする行為を全く行っていなかったことを裏付け,また,同物件の入札に参加した地元業者6社が,いずれも同被審人の競争者であることは審査官が自認するから,同物件について同被審人が受注できる必然性は全くなく,本件基本合意に基づく受注予定者の決定は存在しなかったから,同物件は課徴金の対象にならない。\r\n(被審人松村組)\r\nナ 番号52の物件\r\n番号52の物件が課徴金の対象にならないことは,番号30の物件について前記シで主張したところと同様である。(被審人飛島建設)\r\nニ 番号56の物件\r\n番号56の物件の入札には,一般的に談合に協力しない「よそ者業者」である地元業者が3社も参加しており,被審人東洋建設は,同物件を地元業者との間の自由な価格競争により落札し,受注したから,仮に,審査官の主張する本件基本合意の存在が認められたとしても,地元業者3社に対して被審人東洋建設が要請を行って協力を取り付けた事実が認められない以上,同物件については競争制限効果が具体的に生じたと認めることができず,課徴金を課すことはできない。(被審人東洋建設)\r\nヌ 番号58の物件\r\n被審人小田急建設は,自社をメインとするJVの入札価格を設定するに当たり,必要な積算を行って,その結果から入札価格を決定しており,また,他の入札参加者から,受注意欲や入札価格の連絡を一切受けておらず,他の入札参加者に入札価格の連絡を行うという受注調整行為も全く行っていない。さらに,そもそも,同被審人は,他の入札参加者間で受注調整が行われていたことを認識していなかった。\r\nすなわち,同被審人に関しては,番号58の物件に関し,直接的にも間接的にも受注調整に関与したという証拠は全くなく,審査官が主張するごとく,同被審人が被審人佐田建設の了解の下に,自らの入札価格を設定し,当該金額で入札し落札した事実など全く認められない。\r\nしたがって,仮に,他の入札参加者が被審人佐田建設をメインとするJVを「本命」と認識し,同JVの落札に協力していた事実があったとしても,被審人小田急建設が,生じた競争制限効果を自己のために利用する行為をせず,受注調整に関与していなかった以上,被審人小田急建設に対する関係では,他の入札参加者が競争を回避したことは,反射的な競争制限効果(東京高等裁判所平成16年2月20日判決・公正取引委員会審決集第50巻708頁。以下この判決を「土屋企業高裁判決」という。)にすぎない。\r\n以上のとおり,被審人小田急建設に対する関係では,同物件について同被審人が直接又は間接に関与した受注調整手続の結果競争制限効果が具体的に生じたと認めることができないから,課徴金の納付を命じられる理由はない。\r\n(被審人小田急建設)\r\nネ 番号64の物件\r\n被審人淺沼組が受注した番号64の物件について,同被審人の行動は,審査官の主張のとおりとしても一方的な協力依頼であって,34社に属する被審人淺沼組,同安藤建設及び同徳倉建設の3社間に被審人淺沼組を落札予定者とする合意は認められない上,地元業者2社という競争業者が存在して被審人淺沼組が落札できる必然性や蓋然性も存在せず,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができない。したがって,同物件を課徴金の対象とすることはできない。(被審人淺沼組)\r\nノ 番号65の物件\r\n審査官が番号65の物件において受注調整が成立したと主張するのであれば,被審人大木建設をメインとするJV及びそれ以外の2JVに対して被審人JFE工建が自らの優位性を理由として受注予定者となることを主張してその承認を得るとともに,「受注調整の仲間」ではないそれ以外の地元業者をメインとする6JVに対しても個別に被審人JFE工建が受注予定者となることを承認させた上で,さらに,合計9JVに対して入札価格を連絡したことについて,行為を特定して具体的に主張立証する必要がある。\r\nしかるに,審査官はこれらの点について具体的主張を欠いているから,同物件について個別談合の成立を認定することはできない。\r\n(被審人JFE工建)\r\nハ 番号67の物件\r\n被審人錢高組の依頼によって工事希望票を提出したことが証拠上うかがわれるのはアイサワ工業のみであり,それ以外のゼネコン各社についてはこのことを認定できるだけの証拠は存しない。\r\n審査官は,被審人錢高組は,入札までに指名を受けた被審人冨士工並びにいずれもその他のゼネコンであるアイサワ工業及び村本建設との間で入札価格の連絡・確認をしたと主張するが,それ以外のゼネコンとの間の入札価格の連絡・確認の事実について触れていない。そして,審査官は,被審人錢高組の吉永,アイサワ工業の土屋,被審人冨士工の富安及び村本建設の高橋の各供述調書を証拠として提出するが,吉永の供述はどの業者に,いつ連絡したか明確ではなく具体性に欠けるし,上記供述以外にも,ゼネコンとの入札価格の連絡・確認の事実を具体的に証する証拠は提出されていない。\r\n被審人錢高組が番号67の物件の受注を希望していることを指名を受けたゼネコン各社が認識し,それに異議を唱えなかった旨の審査官の主張を証する証拠は,被審人クボタ建設,白石,アイサワ工業及び村本建設の4社以外のゼネコンに関しては存在しない。\r\n同物件の落札率は88.48パーセントであり,指名業者のうち被審人戸田建設は91.11パーセント,アイサワ工業も92.31パーセントの応札をしており,これらの率は極めて近接している。被審人錢高組は本件基本合意に基づいてゼネコン各社の協力を得られなかったからこそ,80パーセント台で落札したのである。\r\n(被審人錢高組)\r\n第4 審判官の判断\r\n1 争点①(本件基本合意の存否)について\r\n(1) 本件基本合意の存在\r\n下記アのとおり,本件基本合意に沿う供述という直接証拠があるほか,下記イのとおり,33社が,本件対象期間中,34物件について,現に,本件基本合意に沿って,受注予定者を決定し,かつ,受注予定者として他の違反行為者の協力を受け,又は受注予定者が受注できるよう協力していた事実が認められる。これらによれば,33社は,①自社が受注意欲や関連性を有するときは他の違反行為者が協力すべきこと及び②他の違反行為者が受注意欲や関連性を有するときは自社が協力すべきことを相互に認識・認容していたことを優に認めることができ,本件基本合意の存在が認められる。\r\nア 直接証拠\r\n前記第1の1(3)イに掲げた証拠には,遅くとも平成9年10月1日以降,少なくとも33社の間で,条件又は受注希望を有する者を受注予定者として決定し,受注予定者以外の者は受注予定者が受注できるように協力する旨の合意をしていたとの,本件基本合意に沿う多くの供述がある。この供述について,信用性に疑いを差し挟むべき事情は特にうかがわれない。\r\nイ 間接事実(個別物件における受注調整)\r\n(ア) 33社のうち被審人冨士工及び同真柄建設並びに白石を除く30社は,本件対象期間中,前記第1の1(3)ウのとおり,31物件について,条件又は受注希望を有する者を受注予定者として決定し,自社が受注予定者に決定された物件については,指名された33社に属する業者及びその他のゼネコンの協力を得て受注するとともに,自社が指名されたものの受注予定者とならなかった物件については,33社のうちの受注予定者が受注できるよう協力しており,本件基本合意に符合する受注調整を行っていたことが認められる。\r\n(イ) 被審人冨士工及び同真柄建設並びに白石については,以下のとおり認められる。\r\na 被審人冨士工をメインとするJVは,番号1の物件について,本件基本合意に基づき受注予定者に決定された。(前記第1の1(3)ウ(ア))\r\nまた,被審人冨士工は,31物件のうち自社が単独で又はJVのメインとして指名された番号39,59及び67の各物件について,受注予定者が受注できるよう協力した。(前記第1の1(3)ウ(ナ),(ホ)及び(ム))\r\nb 白石は,番号4の物件について,本件基本合意に基づき受注予定者に決定された。(前記第1の1(3)ウ(ウ))\r\nまた,白石は,31物件のうち自社が単独で又はJVのメインとして指名された番号2,29,40,44,51及び67の各物件について,受注予定者が受注できるよう協力した。(前記第1の1(3)ウ(イ),(タ),(ニ),(ネ),(ハ)及び(ム))\r\nc 被審人真柄建設をメインとするJVは,番号19の物件について本件基本合意に基づき受注予定者に決定された。(前記第1の1(3)ウ(コ))\r\n(ウ) 以上の(ア)及び(イ)の33社の受注調整の事実については,関係者の供述(例えば,番号2の物件に関する査共第73号証及び第167号証),受注を希望し,後に受注予定者とされた者から他の指名業者に交付されたPR紙(例えば,番号4の物件に関する査共第307号証),入札価格の連絡・確認の記録(例えば,番号40の物件に関する査共第338号証),受注予定者とされ,その後落札できた者から他の違反行為者が受けたお礼の電話の記録(例えば,番号39の物件に関する査共第344号証)等,具体的かつ明瞭な証拠の裏付けがあり,これら34物件について前記(ア)及び(イ)(前記第1の1(3)ウ)のとおり受注調整が行われたことは,証拠上明らかというべきである。\r\n(2) 本件基本合意の当事者\r\nア 前記(1)のとおり,本件基本合意の当事者は33社である。\r\nなお,被審人冨士工及び白石が本件対象期間中にそれぞれ受注した物件については,後に判断するとおり,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができない。しかし,これら2社は,前記(1)イ(イ)a及びbのとおり,本件違反行為の内容を認識した上で,他の違反行為者が受注予定者とされた物件については,受注予定者が受注できるよう協力し,また,各社が受注した物件について,他の違反行為者に対して,受注意欲の表明,工事希望票の提出依頼,入札価格の連絡・確認を行い,受注予定者に決定されているから,本件基本合意に沿った行動を行い,前記(1)柱書の①及び②についての相互の認識・認容を有していたと認められる。したがって,上記各物件について競争制限効果が具体的に生じたと認めることができないことは,これら2社が本件違反行為の当事者であると認めることの妨げとなるものではない。\r\nまた,被審人真柄建設については,前記34物件のうち,自社が落札した番号19の物件を除き,指名を受けた物件がない。しかし,同被審人は,前記第1の1(3)ウ(コ)のとおり,他社の協力を得て同物件の受注予定者に決定されているのであって,このような行動からすると,仮に同被審人が公社発注の特定土木工事について指名され,他の違反行為者が受注予定者に決定された場合には,同被審人は当該受注予定者が受注できるように協力すると見込まれるのであって,やはり,同被審人についても,前記(1)柱書の①のみならず,②についても相互の認識・認容が認められる(番号19の物件についても,後に判断するとおり競争制限効果が具体的に生じたと認めることができないが,このことをもって上記①及び②についての相互の認識・認容を否定すべきでないことは,前記被審人冨士工及び白石について述べたところと同様である。)。\r\nイ その他のゼネコン46社について\r\nその他のゼネコン46社については,前記第1の1(3)ウの34物件における受注調整への関与状況からみると,一部の者が,受注予定者とされた違反行為者からの協力依頼に応じて受注予定者の受注に協力しているのみであって,本件対象期間中,公社発注の特定土木工事でその他のゼネコン46社が本件基本合意に基づいて落札・受注したと認められる物件はなく,他に,その他のゼネコン46社について,自社が受注意欲や関連性を有するときは他の違反行為者が協力すべきことについての相互の認識・認容を認めるに足りる証拠はない。したがって,その他のゼネコン46社は,本件基本合意の当事者であるとまでは認めることができない。\r\n被審人らは,本件対象期間中に,その他のゼネコンに属するフジタ及び前田建設工業が受注予定者に決定された物件があると主張する。確かに,フジタは,番号15の物件について,熊谷組との間で入札価格の連絡・確認をしたと認められる(査共第181号証)が,フジタが受注予定者に決定された事情は証拠上不明であるし,前田建設工業が受注予定者に決定されたとされる番号36の物件についても同様である。そうすると,フジタ及び前田建設工業が,それぞれ番号15及び36の各物件について受注予定者に決定されたことは,両社が本件基本合意の当事者であることの根拠に必ずしもならないというべきである。\r\nウ 被審人徳倉建設について\r\n審査官は,被審人徳倉建設も本件基本合意の当事者であると主張する。\r\n被審人徳倉建設は,番号46の物件を受注しており,また,前記第1の1(3)ウ(オ),(コ),(ソ),(ナ),(ヘ),(マ)及び(メ)のとおり,番号7,19,27,39,58,64及び71の各物件について,他の受注予定者が受注できるように協力している。\r\nしかし,別紙6のとおり,被審人徳倉建設が受注した番号46の物件について,他の違反行為者は入札に参加していないので,同被審人が本件基本合意に基づいて同物件の受注予定者に決定され,他の違反行為者の協力を得て同物件を受注したとは認められず,他に本件対象期間中に同被審人が落札・受注した公社発注の特定土木工事はない。\r\nそうすると,同被審人について,自社が受注意欲や関連性を有するときは他の違反行為者が協力すべきことについての相互の認識・認容を認めるに足りない。したがって,同被審人は,その他のゼネコン46社と同様,本件基本合意の当事者であるとまでは認めることができない。\r\n(3) 本件基本合意の存在に係る被審人らの主張について\r\nア 公正取引委員会がゼネコンの合意を否定していたという被審人らの主張について\r\n被審人らは,本件について,公正取引委員会が,34社を含むゼネコンに対し,排除勧告はもちろん警告すら行わなかったことは,独占禁止法第7条第2項ただし書により排除勧告を行うことのできる1年の期間満了時である平成13年9月27日までに収集された証拠によっては34社を含むゼネコンによる基本合意を認定できなかったことの証左にほかならず,その後実質的に収集された証拠がないままなされた本件課徴金納付命令も,不当な取引制限に関する証拠が全くないと主張する。\r\nしかし,33社による本件基本合意の存在が直接証拠及び間接事実から優に認められることは,前記(1)のとおりであって,被審人らの主張は失当である。なお,本件のような入札談合の証拠の収集には多数の関係者に対する事情聴取等を積み重ねる必要がある上,証拠が収集できた後も,勧告に至るまでには公正取引委員会内部において十分な検討を行うとともに所定の手続を経る必要があるので,公正取引委員会が,本件について,上記期間内に勧告又は警告を行わなかったからといって,本件違反行為を立証するに足る証拠がなかったことにはならない。\r\nイ 審査官が主張する違反行為の明確性に係る被審人らの主張について\r\n被審人らは,審査官の主張する本件基本合意の具体的実施方法は,「必要に応じてアピールしていた」などと,その外延があいまいであり,仮にこれらの行動が認められたとしても,それが一つの明確な「基本合意」の実施として行われたものであるかどうか疑問であり,このようなあいまいな実施方法しか主張できないこと自体が,審査官のいう本件基本合意が存在しないことを強く推認させると主張する。また,被審人らは,審査官が主張する合意の具体的実施方法としての「(入札価格の)連絡がなくても,相指名業者が受注予定者の受注を妨げないであろう価格で入札していた」ことは,通常では考えられないと主張する。\r\nしかし,前記第1の1(3)イ(イ)の本件基本合意の具体的実施方法の実行により,31物件について,受注予定者が決定され,受注予定者は指名された他の違反行為者及びその他のゼネコンの協力を得て受注しているのであって,本件基本合意の具体的実施方法は明確性を欠くものではない。また,公社発注の特定土木工事は,そのほとんどが下水道工事に該当する定型性,類似性の高いものであって,通常の建設業者であれば,公刊されている積算資料及びソフトウェアを用いることにより,予定価格の推計を比較的正確に行うことができると考えられ,前記第1の1(3)ウのとおり,34物件について,受注予定者以外の違反行為者及びその他のゼネコンが,おおむね,予定価格を超える価格で入札していることに照らすと,たとえ受注予定者から入札価格の連絡がなかったとしても,そのような価格での入札は容易であったと認められる。したがって,被審人らの主張は採用できない。\r\nウ 個別物件に係る被審人らの主張について\r\n被審人らは,本件基本合意は個別物件の受注調整行為を間接事実として認定するほかなく,また,受注予定者の決定に当たっては個別物件の入札参加者のうち34社に属する者全員の間で受注予定者についての合意がなければならないところ,番号1及び2の物件について,入札参加者で34社に属する者全員の合意は認められず,両物件は本件基本合意の間接事実としての意味を持たないから,他の物件について検討するまでもなく,本件基本合意は成立していないというべきであると主張する。\r\nしかし,前記(1)のとおり,本件基本合意は,直接証拠及び個別物件34物件に係る受注調整行為の事実を総合して認定できる。また,前記第1の1(3)ウ(ア)のとおり,番号1の物件について,入札参加者のうちいずれも33社に属する被審人CKプロパティー,同大木建設,同加賀田組及び同みらい建設グループは,被審人冨士工・南王建設JVが受注予定者であると認識していた。さらに,前記第1の1(3)ウ(イ)のとおり,番号2の物件について,入札参加者のうちいずれも33社に属する被審人大豊建設,同CKプロパティー,同クボタ建設,同佐田建設及び同加賀田組並びに白石は,被審人植木組が受注予定者であると認識していた。したがって,被審人らの主張は採用できない。\r\n(4) 本件基本合意の当事者に係る被審人らの主張について\r\nア 34社とその他のゼネコン46社の行為態様に外形的な差異がないという被審人らの主張について\r\n被審人らは,①その他のゼネコン46社も,ゼネコン間で受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように協力するというルールを認識し,相指名業者に対する入札価格の連絡等の本件基本合意の具体的実施方法を実行していること,②被審人徳倉建設は,本件対象期間中に受注予定者となったことがなく,その他のゼネコン46社と同じ立場であるにもかかわらず,本件基本合意の当事者とされていることから,34社とその他のゼネコン46社の行為態様に外形的な差異がなく,34社による本件基本合意は存在しないと主張する。\r\nしかし,その他のゼネコン46社は,本件対象期間中,公社発注の特定土木工事を本件基本合意に基づいて全く落札・受注していないのであって,33社のうちの受注予定者が受注できるよう協力していたことがあるにすぎず,自社が受注意欲や関連性を有するときは他の違反行為者が協力すべきことについての相互の認識・認容までは認められないことは,前記(2)イで述べたとおりである。また,被審人徳倉建設は,前記(2)ウのとおり,そもそも,本件基本合意の当事者とまでとは認められない。これに対して,33社は,前記(1)のとおり,証拠上,明確に本件基本合意の当事者であると認められる。このように,33社とその他のゼネコン46社及び被審人徳倉建設とは,行為態様等その他の点で明確に異なるのであって,被審人らの主張は採用できない。\r\nイ 本件基本合意の当事者であるか否かの判断基準に係る被審人らの主張について\r\n被審人らは,本件対象期間は課徴金の対象が違反行為の終了前の3年間に限られることから人為的に設定されたものにすぎず,また,本件違反行為の終期も証拠に基づかないから,本件対象期間中に受注したか否かをもって,本件基本合意の当事者であるか否かの判断基準とすることは不合理であると主張する。\r\nしかし,前記(1)のとおり,本件基本合意の根拠として,直接証拠のほか,本件対象期間中の個別物件に関する受注調整の事実のみが審判廷に現われているという制約の下で,本件対象期間中に受注予定者として他の違反行為者の協力を得たか否かという事実を本件基本合意の当事者であるか否かの認定根拠の一つとすることは,不合理であるとはいえない。さらに,本件違反行為の終期の認定は,前記第1の1(5)のとおり,証拠に基づくものである。したがって,被審人らの主張は採用できない。\r\nウ 本件基本合意の当事者か否かを認定する証拠が不十分であるという被審人らの主張について\r\n被審人らは,34社が本件基本合意の当事者であり,その他のゼネコンが当事者とは認められないとの審査官の主張・立証が不十分であると主張し,本件対象期間中に34社以外の事業者が受注した物件の入札状況及び平成9年10月1日よりも前の時期の個別物件の受注調整の有無等を調査して,本件基本合意の当事者の範囲を認定すべきであると主張する。\r\nしかし,本件基本合意の当事者が33社であると認められ,被審人徳倉建設及びその他のゼネコンが当事者であるとまでは認めることができないことの根拠は,前記(1)及び(2)イ,ウのとおりである。公正取引委員会としては,本件のような不当な取引制限に対して,排除措置の執行及び課徴金の賦課に必要な範囲で審査をすれば足りるのであり,本件対象期間中に34社以外の事業者が受注した物件や平成9年10月1日より前の個別物件について審査しなかったからといって,不当であるとはいえない。したがって,被審人らの主張は採用できない。\r\nエ 特定の被審人の本件基本合意への参加に係る被審人らの主張について\r\n(ア) 被審人不動テトラの参加について\r\n被審人不動テトラは,自社は受注希望の表明や入札価格の連絡・確認をしておらず,本件基本合意の当事者ではないと主張する。\r\nしかし,被審人不動テトラの従業員は,本件基本合意に加わっていたと供述している(査共第158号証)。そして,本件対象期間中,同被審人が受注した公社発注の特定土木工事は,いずれもJVのサブとして受注した番号24,26及び34の物件のみであったところ,前記第1の1(3)イ(イ)b(c)⑤及び同(d)③のとおり,本件において受注希望の表明や入札価格の連絡・確認は通常JVのメインが行うこととされており,JVのサブである同被審人がこれらの行為を行わなかったとしても,このことは,同被審人が本件基本合意の当事者であると認めることの妨げとなるものではない。\r\n(イ) 被審人大林組の参加について\r\n被審人大林組は,証拠上,自社が本件基本合意に参加したと認めることはできないと主張する。\r\nしかし,被審人大林組のもと従業員は,本件基本合意に加わっていたと供述している(査共第161号証)。そして,同被審人をメインとするJVは,本件基本合意に基づき,前記第1の1(3)ウ(ニ)のとおり,番号40の物件について,受注予定者に決定され,指名された違反行為者及びその他のゼネコンの協力を得て落札・受注し,また,同(カ),(サ),(チ)及び(テ)のとおり,自社が指名された4物件(番号9,21,30及び34)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように協力した。したがって,同被審人が本件基本合意の当事者であることは明らかであり,同被審人の主張は採用できない。\r\n(ウ) 被審人戸田建設の参加について\r\n被審人戸田建設は,自社と他の被審人らとの間には,審査官主張の認識(前記(1)柱書の①及び②)を欠くと主張する。\r\nしかし,被審人戸田建設をメインとするJVは,本件基本合意に基づき,前記第1の1(3)ウ(タ)のとおり,番号29の物件について,受注予定者に決定され,指名された違反行為者及びその他のゼネコンの協力を得て落札・受注し,また,同(ス),(セ),(ム)及び(メ)のとおり,自社が指名された4物件(番号24,26,67及び71)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように協力した。したがって,同被審人が本件基本合意の当事者であることは明らかであり,同被審人の主張は採用できない。\r\n2 争点②(本件基本合意による競争の実質的制限の有無)について\r\n(1) 基本合意による競争の実質的制限の意義及び考え方\r\n独占禁止法第2条第6項の「競争を実質的に制限する」とは,「競争自体が減少して,特定の事業者又は事業者集団がその意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の条件を左右することによって,市場を支配することができる状態をもたらすこと」をいう(東京高等裁判所昭和28年12月7日判決・高民集6巻13号868頁)。\r\nそして,いわゆる談合の基本合意による競争の実質的制限の有無は,基本合意の当事者及び基本合意への協力が一般的に見込まれる者(以下「協力者」という。)の数,その当該市場における全事業者の数に占める割合等に照らして,当該市場における競争自体が減少して,基本合意の当事者たる事業者集団がその意思で,ある程度自由に,受注予定者及び価格を左右することができる状態をもたらしているか否かによって判断するのが相当である。\r\nなお,市場において,基本合意の当事者及び協力者以外の者(アウトサイダー)が多い等の場合には,アウトサイダーの入札行動等も,上記の判断に当たって勘案する必要があり得るというべきである。\r\n(2) 本件基本合意についての検討\r\nア 前記1のとおり,本件基本合意の当事者の数は33である。\r\nイ 多摩地区において事業活動を行う被審人徳倉建設及びその他のゼネコン46社は,違反行為者とともに,かつては三多摩建友会に属して受注調整を行っていた者がほとんどであり,同会解散後も,引き続き,入札に当たって,条件又は受注希望を有する者がある場合には,当該条件又は受注希望を尊重することによって,違反行為者を含むゼネコン同士で競争を避けることが望ましいとの認識を有していた(前記第1の1(3)ア)。実際にも,被審人徳倉建設及びその他のゼネコン46社は,34物件について,工事希望型指名競争入札において入札参加者のうちゼネコンが占める割合を多くすることも目的として,受注予定者とされた違反行為者からの依頼に応じて工事希望票を公社に提出し,あるいは,受注予定者とされた違反行為者から受注希望の表明を受けるなどし,受注予定者から入札価格の連絡・確認をされ,又は入札価格の連絡・確認をされずに,受注予定者が受注できるよう受注予定者よりも高い価格で入札することによって,受注予定者が受注できるよう協力していた(前記第1の1(2)イ(ウ)並びに(3)イ(イ)b(b)及び前記1(2)イ及びウ)。\r\nそうすると,協力者の数は,少なくとも47であるということになる。\r\nウ 本件基本合意の当事者数に協力者の数を加えた数の全事業者数に占める割合をみるに当たって,地元業者については,Aランクの格付を受けている者のみが,通常,公社発注の特定土木工事のうち,単独施工工事について指名を受けることができ,共同施工工事についてJVのメインとなることができる(前記第1の1(2)イ(イ)a)のであるから,地元業者74社のみを全事業者数に算入すべきである。そうすると,上記の割合は,(33+47)/(33+47+74)=51.9パーセントとなる。なお,被審人徳倉建設及びその他のゼネコンのうち下水道工事について公社からAランクの格付を受けている者は35社であり(査共第367号証ないし第385号証,第387号証ないし第410号証,第412号証ないし第435号証),これを基礎に上記の割合を算定しても,(33+35)/(33+35+74)=47.9パーセントとなる。\r\nエ そして,後記3で判断するとおり,本件対象期間中の公社発注の特定土木工事72物件のうち本件基本合意により競争制限効果が具体的に生じたと認めることができる物件は,31物件あり,その落札金額の合計は上記72物件についての合計200億7575万4000円中113億914万1000円(56.3パーセント)を占める。この31物件の全体に占める割合等を工事格付別にみると前記第1の1(4)のとおりであって,規模の大きい工事ほど33社が落札した件数の割合が高い上,落札金額でみるとその割合はより高くなっている。\r\nオ しかも,地元業者の入札行動についてみるに,公社が,工事の入札参加事業者を指名するための考慮要素として,工事希望票の提出回数を勘案していることから,地元業者を含め,公社発注の特定土木工事の入札に参加する業者は,いわゆる指名稼ぎのために,受注を希望しない場合であっても工事希望票を提出して指名を受けることが少なくないこと(査共第79号証,第91号証,第176号証,第203号証,第327号証,第352号証,第439号証),番号6の物件(前記第1の1(3)ウ(エ)参照)のように,受注予定者の有する条件について地元業者も認識し得る物件があったこと,番号11の物件(前記第1の1(3)ウ(ク)参照)のように,地元業者が受注予定者の要請によりJVを組むことにより,受注の恩恵にあずかることがあったことに照らせば,地元業者は,違反行為者とともに入札に参加する場合であっても,常に落札を目指して受注予定者とされた違反行為者に対して競争を挑んでくるとは限らず,受注予定者の依頼に応じて協力したり,自主的に高めの価格で入札して,競争を回避することがある程度期待できる状況にあったと認められる(なお,このように認定することが,被審人らが前記第3の2(2)ウ(ア)及びク(ア)で主張するように適正手続の保障に反するものでないことは明らかである。)。実際にも,次の(ア),(イ)のとおり,本件対象期間中少なくとも20物件についてそのような行動がみられた。\r\n(ア) 受注予定者からの協力依頼に応じることがあったこと\r\n地元業者は,前記第1の1(3)ウのとおり,少なくとも8物件(ABランクである番号6,7,27,44,67の各物件,Aランクである番号31,39,64の各物件)について,受注予定者とされた違反行為者からの協力依頼に応じて,受注予定者の入札価格よりも高い価格で入札することによって,受注予定者が受注できるよう協力していた。\r\n(イ) 高めの価格で入札して競争を回避することがあったこと\r\n地元業者は,自主的に入札価格を決定する場合であっても,前記第1の1(3)ウのとおり,少なくとも12物件(ABランクである番号10,22,29,40,50,56,59の各物件,ACランクである番号9,42,58,65の各物件,Aランクである番号51の物件)について,予定価格を超える価格あるいは予定価格に近い価格で入札した。そして,非ゼネコンである地元業者であっても,公社発注の特定土木工事についての予定価格の推計を比較的容易かつ正確に行うことができると考えられる(前記1(3)イ)ことに照らすと,地元業者の上記のような入札行動の多くは,ゼネコンとの競争を回避したものと推認される。\r\nカ 以上のとおり,公社発注の特定土木工事については,本件基本合意の当事者及び協力者(これらはいずれもゼネコンであって,地元業者に比べて少なくとも同等以上の事業遂行能力を有すると考えられ,しかも,査共第3ないし第5号証,第7号証,第8号証によれば,多摩地区において営業活動を行っているゼネコンのほとんどすべてを占めていたと認められる。)の数が,市場への全参加者数のうち相当程度を占めていた上,地元業者が多数いたとはいえ,その協力や競争回避もある程度期待できたのであって,前記エの実際の落札状況にもかんがみると,本件基本合意によって,公社発注の特定土木工事の市場における競争自体が減少して,本件基本合意の当事者である33社がその意思で,ある程度自由に,受注予定者及び価格を左右することができる状態がもたらされていたと認めるに十分というべきである。なお,そのような状態がもたらされているというためには,必ずしも,基本合意の当事者ないし協力者が当該市場における全事業者のすべて又は大部分を占め,あるいは,発注が予想される物件のすべて又は大部分について基本合意に基づき受注予定者及び価格を左右する状況になっている必要はないと解される(基本合意に基づいて受注予定者及び価格を左右し得ることが見込まれる物件が,発注の予想される物件のすべて又は大部分でなくても,相当程度の割合を占めている場合に,そのような基本合意を違法と評価できないことは不合理といわざるを得ない。)。\r\nしたがって,本件基本合意による競争の実質的制限があったと認められる。\r\n(3) 被審人らの主張について\r\nア 入札談合カルテルにおける競争の実質的制限に係る被審人らの主張\r\n(ア) 被審人らは,アウトサイダーが無視し得ない頻度で指名されている市場において競争の実質的制限が認められるためには,基本合意の時点において及びその後も引き続いて,アウトサイダーのすべて,あるいは少なくともほとんどすべてが,合意当事者に協力する,あるいは競争を回避することが,審査官において立証されなければならないと主張する。\r\nまた,被審人らは,指名されたアウトサイダーは,受注を望むからこそ入札に参加することや,入札価格の積算には相当に大きなコストを要することを併せ考えれば,アウトサイダーが入札に参加しつつも受注を回避することは,異常なことといわざるを得ず,審査官は,こういった不合理にもかかわらず,事業者があえて受注を回避したことを主張立証しなければならないと主張する。\r\n(イ) しかし,まず,競争の実質的制限の有無の判断についての考え方は前記(1)で述べたとおりであって,競争の実質的制限があったというためには,違反行為者がある程度自由に市場を支配することができる状態がもたらされていれば足り,アウトサイダーのすべて又はほとんどすべてが,違反行為者に協力する,あるいは競争を回避するというように違反行為者が物件のほぼすべてを支配することまでは要しない(前記(2)カ)。そして,本件においては,アウトサイダーすなわち地元業者が受注予定者とされた違反行為者からの依頼に応じて協力し,あるいは,依頼がなくても競争を回避することがある程度期待できたのである。\r\nしたがって,被審人らの主張は採用できない。\r\nイ 本件市場におけるアウトサイダーの存在状況に係る被審人らの主張について\r\n被審人らは,本件においては,アウトサイダーである地元業者は,本件市場全体において,非常に強い競争力を持った競争単位として活動しており,競争の実質的制限は否定されると主張する。そして,証拠(審共第2号証の1ないし6,第4,第5号証,第6号証の1及び2,第8号証の1ないし4,村山伸二参考人,岡野三男参考人)によれば,少なくとも一部の地元業者は,事業遂行能力及び受注意欲の点でゼネコンに劣らないことが認められる。\r\nしかし,本件において,地元業者の競争力が,ゼネコンに優っていたとまでは認められないところ,地元業者の入札行動や,本件基本合意の当事者及び協力者が多摩地区で営業活動を行うゼネコンのほとんどを占めていたこと等にも照らし,本件基本合意による競争の実質的制限があったと認められることは前記(2)カのとおりである。被審人らによる上記立証はこのことを何ら覆すものではなく,被審人らの主張は採用できない。\r\nウ 「総合的事業能力」という事情に関する被審人らの主張について\r\n被審人らは,難度が高いとはいえない物件について34社の合意及びその他のゼネコンの協力により「受注予定者を決定し受注予定者が受注できるようにしていた」という事実が認め得ず,かつ,難度が高い物件についても地元業者が「あえて受注することを希望しないことがある程度見込める」という実態も根拠も存在しないので,審査官の主張する「合意」では競争は実質的に制限されないと主張する。\r\nしかし,本件においては,前記(2)のとおり,工事の難度について検討することなく,競争の実質的制限があったと認定できるので,被審人らの主張は採用できない。\r\nエ 指名された事業者はすべて受注能力があるとの被審人らの主張について\r\n被審人らは,地元業者(165社。少なくともAランク及びAランクに格上げされたことのあるBランク事業者105社)は,実質的にも同等の競争単位とみなければならないと主張する。\r\nしかし,被審人らの主張が採用できないことは,前記イで述べたところと同様である。\r\nオ 指名された事業者があえて受注を希望しないことは通常あり得ないとの被審人らの主張について\r\n被審人らは,発注者から指名を受けたならば,当然に受注を目指すのであって,せっかく指名を受けたにもかかわらず,次にいつ指名を受けられるかどうかも不明な状況において,わざわざ当該チャンスを放棄して,あえて受注することを希望せず,受注を避けるような行動に出ることはおよそ営利企業として考えられないと主張する。\r\nしかし,前記(2)オのとおり,公社発注の特定土木工事の入札に参加する業者は,指名稼ぎのために,受注を希望しない場合であっても工事希望票を提出して指名を受けることがあるのであり,被審人らの主張は失当である。\r\nカ 仮に受注回避行動があったと仮定しても,それを含めて競争にほかならないとの被審人らの主張について\r\n被審人らは,第三者である地元業者の自由意思に基づき競争を断念したのであれば,それは有効な競争が行われた結果なのであって,当該地元業者の行動を根拠として,競争の実質的制限があったということはできないと主張する。\r\nしかし,ゼネコンとともに地元業者も指名された物件について,違反行為者間で受注予定者を決定した場合には,本件のようにその他のゼネコンが受注予定者が受注できるように協力するという競争回避的行動をとるとき,ゼネコン間の競争は消滅し,残る競争の可能性は受注予定者と地元業者の間に限られるところ,地元業者が自主的に高めの価格で入札すれば,本件基本合意による受注予定者の決定は効果を発揮し,当該物件についての競争は全く生じないこととなるのであって,そのような場合になお競争の実質的制限があったことを否定する被審人らの主張は誤りといわざるを得ない。\r\nキ 入札談合カルテルにおける「シェア」に係る被審人らの主張について\r\n被審人らは,入札談合カルテルの場合,一般カルテルの「合意当事者の市場シェア」に相当する競争の実質的制限の有無の判断要素は,「合意当時に将来の入札に参加する可能性のある事業者に占める合意当事者の数の割合」であるが,本件において,合意当事者の数の割合は,たとえ不合理に競争者を限定して見積もっても,また,協力者を含めて考えても,せいぜい51.9パーセントと極めて低率にとどまっていると主張する。\r\nしかし,入札談合カルテルにおける基本合意による競争の実質的制限があったというためには,必ずしも,基本合意の当事者及び協力者が市場参加者の全部ないし大部分を占める必要はなく,本件基本合意による競争の実質的制限があったと認められることは前記(2)カのとおりである。したがって,被審人らの主張は採用できない。\r\nク 本件における「受注割合」に係る被審人らの主張について\r\n(ア) 被審人らは,本件において競争の実質的制限があったか否かを判断する際に捉えるべき受注実績は,審査官が34社の合意により受注したと主張する物件のうち地元業者が入札に参加していない10物件(仮に,34社が合意により受注した物件のうち地元業者が被審人らの要請に従い協力した物件が8物件あるという審査官の主張を前提にしても18物件にすぎない。)のうち,証拠により個別調整行為の存在が立証されているもののみであり,いずれにしても,審査官が合意により受注したと主張する物件のうち,審査官すらも地元業者が競争回避をしなかったと認定している7物件を含めることはできず,各物件について証拠上個別調整が認められるか否かの点をおいても,本件において,競争の実質的制限の成否を判定する上で基礎とされる物件数は極めてわずかに限られ,このような受注実績では,「市場を支配することができる状態」をもたらしたとも,「競争自体が減少して,特定の事業者又は事業者集団がその意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の条件を左右すること」が生じたとも評価できないと主張する。\r\n(イ) また,被審人らは,34社が本件基本合意によって受注予定者を決定しその者が自由に入札価格を決めることができると仮定しても,それはアウトサイダーの地元業者が入っていない物件に限定され,これは,72物件中12物件(約16.7パーセント)にすぎず,かつ,審査官が合意により受注したとしているのは,このうち10物件(約13.9パーセント)にとどまり,審査官のいう合意によって支配できるのが,上記のようにわずかにすぎない以上,本件基本合意が存在すると仮定しても,本件の一定の取引分野の競争を実質的に制限することになるはずはないと主張する。\r\n(ウ) しかし,基本合意による競争の実質的制限の有無は,前記(1)で述べた諸要素を勘案して判断されるべき性質のものであるところ,本件での個別物件において競争制限効果が具体的に生じたと認めることができる状況は前記(2)エのとおりであって,この状況からも,本件基本合意による競争の実質的制限があったことが十分裏付けられるというべきである。\r\nしたがって,被審人らの主張は採用できない。\r\n3 争点③(個別物件の課徴金対象性の有無)について\r\n(1) 課徴金の対象についての基本的考え方\r\n独占禁止法第7条の2第1項は,事業者が商品又は役務の対価に係る不当な取引制限をしたときは,公正取引委員会は,事業者に対し,当該行為の実行としての事業活動が行われた期間における当該商品又は役務の売上額を基礎として算定された額の課徴金の納付を命ずる旨規定している。本件のような受注調整による違反行為の場合においては,基本合意に基づいて受注予定者が決定されることによって,競争制限効果が具体的に生じたものは,ここにいう「当該商品又は役務」に該当すると解すべきである。また,受注予定者が決定されたものの,当該受注予定者以外の違反行為者が落札・受注した物件も,その者との関係で「当該商品又は役務」に該当するというべきである。\r\nそして,基本合意の当事者及び協力者以外の者(アウトサイダー)が入札に参加している物件であっても,基本合意の当事者間で受注予定者が決定されたことにより競争単位が減少したものについては,原則として,競争単位の減少それ自体をもって上記の競争制限効果が具体的に生じたことになるというべきである。ただ,入札参加者に占めるアウトサイダーの数が比較的多い場合には,当該アウトサイダーが競争的行動をとったか否か等の事情も勘案して,当該物件を上記の競争制限効果が生じなかったものとして課徴金の対象から除外すべきか否かを判断するのが相当である。\r\n(2) 本件課徴金納付命令の対象物件についての課徴金対象性\r\n上記(1)の基準に照らして本件課徴金納付命令の対象物件である38物件について検討すると,以下のとおり,番号8,57及び61の各物件については,違反行為者のうち入札に参加したのは,それぞれ被審人淺沼組,同飛島建設及び同鉄建建設の1社のみであり,また,番号46の物件についても,被審人徳倉建設以外の入札参加者に違反行為者は含まれておらず,上記被審人らによる各物件の落札・受注が本件基本合意に基づく受注調整によるものでないことは明らかであることから,これら物件は課徴金の対象にはならず,番号1,4及び19の各物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができないことから,課徴金の対象にはならない。その余の31物件については,本件基本合意に基づいて受注予定者が決定されることによって競争制限効果が具体的に生じたと認めることができ,課徴金の対象となる。\r\nア 番号1の物件\r\n番号1の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ア)のとおりであって,JVのメインとして,違反行為者5社,その他のゼネコン1社及び地元業者4社が入札に参加した。\r\nこのように,同物件については地元業者(アウトサイダー)が比較的多数といえるところ,地元業者が受注予定者の落札に協力したことを認めるに足りる証拠はない。また,JVのメインとして落札した被審人冨士工の落札率は80.00パーセントであったところ,地元業者をメインとするJVの入札率は,坂本工業が79.99パーセント,戸田道路が80.00パーセント,イワキ工業が80.21パーセント,同和工営が80.21パーセントであり(査共第328号証,第463号証),このことに照らすと,地元業者は競争的行動をとったものと認められる。\r\nそうすると,同物件については競争制限効果が具体的に生じたと認めることができず,同物件は課徴金の対象にはならないというべきである。\r\nイ 番号2の物件\r\n(ア) 番号2の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(イ)のとおりであって,違反行為者7社及びその他のゼネコン3社が入札に参加した。\r\nそうすると,同物件については,入札参加者がすべて本件基本合意の当事者又は協力者で占められており,本件基本合意に基づいて被審人植木組が受注予定者に決定され,同被審人の受注に違反行為者及びその他のゼネコンが協力することにより,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) 被審人らは,番号2の物件について,審査官の主張によれば,入札参加者のうち34社に属する者は7社であるが,その中で被審人植木組に協力した旨述べているのは,被審人クボタ建設,同加賀田組の2社のみであり,同佐田建設は,指名稼ぎで入札したと述べるのみで,協力したとは述べておらず,協力したかどうか不明なのが,34社に属する4社となるので,34社に属する者が被審人植木組を受注予定者と決定したということはできないと主張する。さらに,被審人植木組は,自社は,公社から受注実績がなかったので条件がなく,大末建設に対して受注意欲を表明したのみであり,同物件の受注予定者とされたことはなく,また,指名業者と全く入札価格の調整を行っていないと主張する。\r\nしかし,被審人植木組の多摩営業所長であった廣瀬純一(以下「廣瀬」という。)は,指名されたゼネコン数社に受注希望を表明したところ,他社から受注希望の表明を受けず,同被審人のみが受注希望を有していたことは明らかであると認識しており,また,指名された違反行為者及びその他のゼネコンの協力を得て落札したと供述している(査共第73号証)。したがって,番号2の物件について,受注希望者が同被審人のみであったので,同被審人が受注予定者に決定され,指名された他の違反行為者及びその他のゼネコンは,同被審人が受注予定者であると認識して,同被審人の受注に協力したと認められる。\r\nまた,被審人植木組が指名された違反行為者及びその他のゼネコンとの間で入札価格の連絡・確認をしたことを認めるに足りる証拠はないものの,指名された違反行為者及びその他のゼネコンはすべて予定価格を上回る価格で入札するという競争回避的行動をとっており(査共第328号証,第463号証),そのような価格での入札は,前記1(3)イで述べたとおり入札価格の連絡・確認がなくても十分可能であって,現に,同被審人の廣瀬も指名された違反行為者及びその他のゼネコンは自社の受注を妨げない価格で入札するであろうと予想していた(査共第167号証)。\r\nしたがって,同物件については競争制限効果が具体的に生じたと認めることができ,被審人らの主張及び被審人植木組の主張は採用できない。\r\nウ 番号4の物件\r\n番号4の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ウ)のとおりであって,違反行為者4社,その他のゼネコン1社及び地元業者5社が入札に参加した。\r\nこのように,同物件については地元業者が比較的多数といえるところ,地元業者が受注予定者の落札に協力したことを認めるに足りる証拠はない。また,白石の落札率は80.09パーセントであったところ,地元業者の入札率は,東京西部総合建設事業協組が79.96パーセント,黒須建設が104.74パーセント,竹下組が86.89パーセント,菱山建設が79.96パーセント,戸田道路が78.37パーセントであり(査共第328号証,第463号証),このことに照らすと,黒須建設を除き,地元業者は競争的行動をとったものと認められる。\r\nそうすると,同物件については競争制限効果が具体的に生じたと認めることができず,同物件は課徴金の対象にはならないというべきである。\r\nエ 番号6の物件\r\n(ア) 番号6の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(エ)のとおりであって,違反行為者3社,その他のゼネコン4社及び地元業者3社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nそして,この地元業者3社が,いずれも被審人クボタ建設の依頼を受け,被審人クボタ建設・曽根建設JVの落札に協力したことは,前記第1の1(3)ウ(エ)hのとおりであり,同物件については競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) 被審人クボタ建設は,番号6の物件の入札には,一般的に談合に協力しない「よそ者業者」が3社も参加しており,自社は,同物件を地元業者との間の自由な価格競争により落札し,受注したから,地元業者3社に対して同被審人が協力要請を行って協力を取り付けた事実が認められない以上,同物件においては競争制限効果が具体的に生じたと認めることができないと主張する。\r\nしかし,上記(ア)に照らせば,この主張が採用できないことは明らかである。\r\nオ 番号7の物件\r\n(ア) 番号7の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(オ)のとおりであって,違反行為者2社,被審人徳倉建設,その他のゼネコン4社及び地元業者3社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nそして,この地元業者3社が,いずれも被審人加賀田組の依頼を受け,被審人加賀田組・イワヲ建設JVの落札に協力したことは,前記第1の1(3)ウ(オ)gのとおりであり,同物件については競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) 被審人加賀田組は,番号7の物件について,34社に属する指名業者3社(被審人加賀田組,同徳倉建設,同小田急建設)の相互間で被審人加賀田組を受注予定者と決定した事実はなく,また,同被審人に協力するかどうか分からない者が多数(その他のゼネコン4社,地元業者3社)存在したのであるから,同被審人が落札するという必然性ないし蓋然性を認めることはできず,とりわけ地元業者3社については,厳然たる競争者として存在していたと主張する。\r\nしかし,前記1(2)ウのとおり被審人徳倉建設は本件基本合意の当事者ではなく,同物件について,指名業者による結成後のJVのメインのうち違反行為者は被審人加賀田組及び同小田急建設のみであるところ,被審人加賀田組の多摩営業所長の笠原三司(以下「笠原」という。)は,被審人小田急建設に対し工事希望票の提出依頼と入札価格の連絡を行っており(査共第72号証),被審人小田急建設は被審人加賀田組の依頼に応じて工事希望票を提出し,被審人加賀田組が受注できるような価格で入札しているので,被審人小田急建設は被審人加賀田組が受注予定者となることを承認したと認められる。さらに,査共第72号証によれば,被審人加賀田組の笠原は,指名業者によるJV結成後のメインであるその他のゼネコン4社及び被審人徳倉建設との間で入札価格の連絡・確認を行い,被審人加賀田組は,これらの者の協力を得て同物件を落札・受注したと認められる。\r\nなお,査共第72号証によれば,被審人加賀田組の笠原は,地元業者3社との間でも入札価格の連絡・確認を行い,これらの者の協力も得られたことが認められる。\r\nしたがって,被審人加賀田組の主張は採用できない。\r\nカ 番号8の物件\r\n違反行為者のうち番号8の物件の入札に参加したのは,別紙6のとおり被審人淺沼組1社のみであり,同被審人による同物件の落札・受注が本件基本合意に基づく受注調整によるものでないことは明らかであって,同物件は課徴金の対象にはならない。なお,審査官も,同物件が課徴金の対象にならない旨意見を述べていることは,前記第3の3(1)のとおりである。\r\nキ 番号9の物件\r\n番号9の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(カ)のとおりであって,違反行為者5社,その他のゼネコン2社及び地元業者3社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nこの地元業者3社が被審人鉄建建設の依頼により被審人鉄建建設・館建リースJVの落札に協力したことを認めるに足りる証拠はないが,前記第1の1(3)ウ(カ)gのとおり,地元業者をメインとする3組のJVの入札価格は予定価格を上回っており,これらのJVが競争的行動をとったものとは認められない。そうすると,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\nク 番号10の物件\r\n番号10の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(キ)のとおりであって,違反行為者3社,その他のゼネコン4社及び地元業者3社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nこの地元業者3社が被審人大木建設の依頼により被審人大木建設・大城土木JVの落札に協力したことを認めるに足りる証拠はないが,前記第1の1(3)ウ(キ)gのとおり,地元業者をメインとする3組のJVは,予定価格に近い価格で入札しており,地元業者が,いずれも競争的行動をとったものとは認められない。そうすると,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\nケ 番号11の物件\r\n(ア) 番号11の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ク)のとおりであって,違反行為者4社,その他のゼネコン4社及び地元業者2社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nこの物件については,アウトサイダーたる地元業者は2社とかなり少数であり,これら地元業者の行動のいかんにかかわらず,本件基本合意に基づく受注予定者の決定及びこれに対する他の違反行為者及びその他のゼネコンの協力による競争単位の減少それ自体をもって競争制限効果が具体的に生じたというべきである。したがって,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) 被審人新井組は,自社がゼネコン他社の入札金額を大きく下回る金額で入札していること及び自社の入札価格が新開工業とのJV結成を踏まえた慎重な見積りに基づくものであったことからすれば,番号11の物件について,違反行為者間に何らの合意もなく,また,同物件に関しては,現に,地元業者2社も入札に参加し,自社を下回る価格で入札していること,その入札価格は,最低制限価格すら下回るほどのものであって,価格競争が過大なまでに行われていたと認められ,このことからすれば,競争制限効果が具体的に生じたと認めることはできないと主張する。\r\nしかし,被審人新井組の畑崇之は,同物件の施工場所付近は,住民意識が極めて高く,ダンプカー1台通行させるのも困難という土地柄であるところ,同被審人とJVを組んだ新開工業は同物件の施工場所の近くに本社を置き,その施工場所の近隣において施工実績があるという条件を有しており,付近の土地柄にも通じていると目されていたので,指名業者による結成後のJVのメインである同被審人を除くゼネコン各社は,被審人新井組・新開工業JVが条件を有する旨を認識し,戦意を喪失したであろうと供述しており(査共第191号証),この供述に照らせば,指名業者による結成後のJVのうち同被審人を除く違反行為者及びその他のゼネコンをメインとするJV7組は,被審人新井組・新開工業JVが受注予定者となることを承認していたと認められる。\r\nまた,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができることについての考え方は前記(ア)のとおりであって,地元業者をメインとするJV2組が予定価格の80パーセントである最低制限価格を下回って失格したことは,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができることを妨げるものではない。\r\nしたがって,被審人新井組の主張は採用できない。\r\nコ 番号13の物件\r\n(ア) 番号13の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ケ)のとおりであって,違反行為者3社及びその他のゼネコン7社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nそうすると,同物件については,入札参加者がすべて本件基本合意の当事者又は協力者で占められており,本件基本合意に基づいて住友建設・被審人みらい建設グループJVが受注予定者に決定され,同JVの受注に違反行為者及びその他のゼネコンが協力することにより,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) a 被審人三井住友建設は,次のとおり,住友建設及び相指名業者の\r\n従業員の各供述はいずれも信用性がなく,それらの供述によっても,番号13の物件について,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができないと主張する。\r\n(a) まず,住友建設多摩営業所における土木の営業は,平成10年6月末までは繁田が担当していたから,同年6月22日に行われた同物件の入札に関する業務には青木は全く関与しておらず,青木の供述(査共第136号証)は信用性に乏しい。\r\n(b) 大本組の近藤(査共第62号証),被審人大豊建設の浅間(査共第164号証),被審人松村組の内田(査共第84号証)及び森本組の野地(査共第92号証)は,多数の工事のうち受注意欲のない物件について,本命の業者から,工事希望票の提出依頼があり,札の連絡もあり,その価格で応札して本命の業者の落札に協力した旨を供述したにすぎず,個々の物件についてどこまで明確に認識して供述したのか疑問である。同物件については,大本組の近藤は,工事希望票の提出依頼や札の連絡をしてきたのは誰か記憶がないことを認めており,森本組の野地も工事希望票の提出依頼が大日本土木と住友建設のどちらかからあったのか特定できていないから,両者の供述は価値が極めて乏しい。\r\n(c) 仮に,自ら受注意欲のない物件について,強い受注意欲を有する業者から札の連絡があり,そのような価格で応札したとしても,そもそも受注意欲がない物件であるから,強い受注意欲を有する業者に勝てるような価格で入札をするはずがないため,そのような行為によっては競争制限効果は生じる余地はない。よって,大本組の近藤,被審人大豊建設の浅間,被審人松村組の内田及び森本組の野地の各供述は,いずれも自ら受注意欲がない物件についてのものであるから,競争制限効果の根拠にはなり得ない。\r\n(d) 被審人大成建設の大木(査共第110号証),佐藤工業の吉元(査共第72号証)及び西武建設の五十嵐(査共第75号証)の各供述も,番号13の物件に関して,そのような入札価格の連絡や協力依頼,協力を行ったことを供述しているわけではない。\r\nb しかし,住友建設の青木は,番号13の物件について公社が入札予定を公表した平成10年5月及び6月には,多摩営業所長の地位にあり,同物件について,繁田とともに,被審人大成建設の大木に対して,受注意欲を表明している(査共第136号証)ので,同物件に関する受注調整について十分承知していると認められ,青木の供述は信用できる。そして,青木は,住友建設が,入札までに指名業者による結成後のJVのメインである各ゼネコンに対し,受注意欲を表明するとともに,住友建設の受注に協力するような価格で入札するよう依頼し,その結果,指名業者による結成後のJVのメインである各ゼネコンの協力を得て受注したことを認めている。したがって,住友建設・被審人みらい建設グループJVは,同物件について,本件基本合意に基づき受注予定者に決定され,指名された他の違反行為者及びその他のゼネコンの協力を得て,落札し受注したのであるから,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができる。\r\nさらに,以上のとおり,住友建設・被審人みらい建設グループJVが,違反行為者の間で受注予定者に決定され,かつ,指名された他の違反行為者及びその他のゼネコンの協力を得て,落札し受注した以上,他の違反行為者及びその他のゼネコンにもともと受注意欲があったかどうかは,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるとの判断に当たり,関係がない。\r\nしたがって,被審人三井住友建設の主張は採用できない。\r\nサ 番号19の物件\r\n番号19の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(コ)のとおりであって,違反行為者3社,被審人徳倉建設,その他のゼネコン1社及び地元業者5社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nこのように,同物件については地元業者が多数といえるところ,地元業者が受注予定者の落札に協力したことを認めるに足りる証拠はない。また,被審人真柄建設をメインとするJVの落札率は80.08パーセントであったところ,地元業者の入札率は,イワキ工業が80.12パーセント,大明建設が80.12パーセント,石川徳建設が80.12パーセント,住鉱開発工事が84.83パーセント,近代建設が80.12パーセントであり(査共第328号証,第463号証),このことに照らすと,地元業者は競争的行動をとったものと認められる。\r\nそうすると,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができず,同物件は課徴金の対象にならないというべきである。\r\nシ 番号21の物件\r\n(ア) 番号21の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(サ)のとおりであって,違反行為者4社及びその他のゼネコン6社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nそうすると,同物件については,入札参加者がすべて本件基本合意の当事者又は協力者で占められており,本件基本合意に基づいて被審人清水建設・同安藤建設JVが受注予定者に決定され,同JVの受注に違反行為者及びその他のゼネコンが協力することにより,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) a 被審人清水建設及び同安藤建設は,次のとおり,番号21の物件について,本件基本合意に基づく個別調整行為によって受注予定者が決定された証拠は存在しないと主張する。\r\n(a) 被審人奥村組の山本(査共第137号証)は,「清水建設・安藤建設JVの落札に結果的に協力した物件であった」と「結果的に」という文言を付しており,これは,「意図的に」協力したものではないこと,すなわち協力要請に応じて協力したものではないことを明確に示している。\r\n(b) 前田建設工業の福本(査共第59号証),佐藤工業の吉元(査共第74号証)及び三井建設の大貫(査共第159号証)は,番号21の物件について,各社が被審人清水建設・同安藤建設JVの受注に協力したことは述べていない。\r\n(c) 被審人西松建設の遠藤(査共第147号証)は,被審人清水建設・同安藤建設JVが,予定価格を超える可能性を視野に入れて,高水準価格で落札することを目指していた旨供述しているが,かかる行動は,紛れもない競争である。\r\n(d) 相指名業者である被審人大林組,五洋建設及びフジタが,被審人清水建設・同安藤建設JVが番号21の物件を希望していることを認識し,これに異議を唱えなかったという証拠は皆無であり,被審人大林組等は,競争回避行動をとらなかった,すなわち競争行為を行ったと評価される。\r\n(e) 被審人清水建設が受注予定者として行動した事実を証明する証拠はない。\r\nb また,被審人清水建設及び同安藤建設は,被審人清水建設・同安藤建設JVが相指名業者に対して入札価格の連絡をした証拠がなく,入札価格の連絡がない限り,仮に受注予定者がいたとしても,その者が落札できる見込みがあるとはいえないと主張する。\r\nc さらに,被審人清水建設及び同安藤建設は,次のとおり主張する。すなわち,仮に入札価格の連絡をしない方法で入札談合を実施する場合があると仮定しても,そのような場合,相指名業者が正確に予定価格を算出する保証はないので,受注予定者は,想定予定価格よりもある程度低い金額での入札を行わなければならない。しかるに,被審人清水建設・同安藤建設JVは,番号21の物件において,結果的に予定価格の99.83パーセントの金額で入札した。もし,入札価格を連絡・確認しない方法で受注しようと考えるのであれば,このように予定価格ぎりぎりの金額で入札することは,あり得ない行動である。実際,入札価格の連絡がされた事実がないのに,同JVの入札価格の2パーセント以内に2JV,約3パーセント以内に合計4JVが入るほどに接近した金額で入札されており,2パーセント以内の事業者の中には,受注を目指したと明言している被審人西松建設も入っている。このような結果からみても,被審人清水建設・同安藤建設JVが落札・受注を逃した可能性があった。このように,被審人清水建設は,自らが受注予定者に決定されていれば,あり得ない行動をとっており,同被審人が受注調整に関与していないことは明白である。\r\nd 加えて,被審人清水建設及び同安藤建設は,予定価格に近い金額での受注を目指すことも,独占禁止法が保護する「競争」にほかならず,番号21の物件は,かかる競争の結果,被審人清水建設・同安藤建設JVが落札・受注したと主張する。\r\ne しかし,被審人清水建設は,番号21の物件の施工場所から300メートルから500メートル離れた場所で施工実績を有するほか,同物件の施工場所のすぐ近くに同社のグラウンドを有しており(査共第111号証),同物件について強い条件を持っていたところ,指名された被審人奥村組及び同西松建設は,上記のような被審人清水建設の条件を知っていた(査共第137号証,第147号証)。そして,このような被審人清水建設の条件について,多摩地区において事業活動を行う被審人大林組及びその他のゼネコンも認識していたと推認できる。したがって,このような条件を持つ被審人清水建設・同安藤建設JVは,被審人奥村組,同西松建設及び同大林組の間で,受注予定者に決定され,更にその他のゼネコンの協力も得て受注したと認められる。\r\nさらに,被審人清水建設は熊谷組との間で入札価格の確認を行っていること(査共第181号証),指名業者の入札価格をみると,被審人清水建設・同安藤建設JVのみが1億6300万円で入札し,他のJVは,予定価格を上回る1億6500万円から1億7200万円の範囲で入札し,しかも1億6500万円から1億6800万円(2組のJVが同額)までの5組のJVの入札価格は整然と100万円刻みの人為的な配列となっている(査共第328号証)ことからすれば,被審人清水建設は,指名されたゼネコン各社と入札価格の連絡・確認を行ったと認められる。\r\nしたがって,被審人清水建設及び同安藤建設の主張は採用できない。\r\nス 番号22の物件\r\n(ア) 番号22の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(シ)のとおりであって,違反行為者4社,その他のゼネコン4社及び地元業者2社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nこの地元業者2社が被審人佐田建設の依頼により被審人佐田建設・堺産業JVの落札に協力したことを認めるに足りる証拠はないが,前記第1の1(3)ウ(シ)gのとおり地元業者をメインとする2組のJVの入札価格は予定価格を上回っており,地元業者が,いずれも競争的行動をとったものとは認められない。そうすると,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) 被審人佐田建設は,番号22の物件について,ISO規定に従い,適切な入札により落札するに至ったものであって,自社の営業担当者が他社に落札について協力依頼をした事実はないと主張する。\r\nしかし,被審人佐田建設・堺産業JVが,受注調整の結果同物件を落札・受注するに至ったことは,前記第1の1(3)ウ(シ)に掲記した各証拠により明らかであり,被審人佐田建設の主張は採用できない。\r\nセ 番号24の物件\r\n番号24の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ス)のとおりであって,違反行為者4社及びその他のゼネコン6社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nそうすると,同物件については,入札参加者がすべて本件基本合意の当事者又は協力者で占められており,本件基本合意に基づいて被審人大成建設・同不動テトラJVが受注予定者に決定され,同JVの受注に違反行為者及びその他のゼネコンが協力することにより,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\nソ 番号26の物件\r\n番号26の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(セ)のとおりであって,違反行為者4社及びその他のゼネコン6社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nそうすると,同物件については,入札参加者がすべて本件基本合意の当事者又は協力者で占められており,本件基本合意に基づいて被審人大成建設・同不動テトラJVが受注予定者に決定され,同JVの受注に違反行為者及びその他のゼネコンが協力することにより,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\nタ 番号27の物件\r\n番号27の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ソ)のとおりであって,違反行為者5社,被審人徳倉建設,その他のゼネコン2社及び地元業者2社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nそして,この地元業者2社が,いずれも被審人馬淵建設の依頼を受け,被審人馬淵建設・石井工務店JVの落札に協力したことは,前記第1の1(3)ウ(ソ)hのとおりであり,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\nチ 番号29の物件\r\n(ア) 番号29の物件についての落札・受注に至る経緯は前記1の1(3)ウ(タ)のとおりであって,違反行為者5社,その他のゼネコン1社及び地元業者4社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nこの地元業者4社が受注予定者の落札に協力したことを認めるに足りる証拠はない。しかし,被審人戸田建設をメインとするJVの落札率は99.9パーセントであった(査共第328号証,第463号証)ところ,前記1の1(3)ウ(タ)eのとおり,地元業者をメインとするJVの入札価格は,いずれも予定価格を上回ったのであり,地元業者が競争的行動をとったものとは認められない。\r\nしたがって,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができ,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) 被審人戸田建設は,審査官が主張する①同被審人が,入札までに,指名を受けた被審人奥村組及び東亜建設工業に対し番号29の物件の受注を希望している旨伝え,また,被審人奥村組との間で入札価格の連絡・確認をした事実,②この事実に基づいてゼネコンが同物件に対する被審人戸田建設の受注意欲を認識し,それに異議を唱えなかった事実,③同被審人が,本件基本合意に基づき受注予定者となり,指名を受けたゼネコンの協力を得て,受注した事実,④指名を受けたゼネコンが,入札において,自社の入札価格が被審人戸田建設をメインとするJVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で,又は受注する可能性がないと思われる価格で入札に参加した事実,及び⑤同物件について入札した地元業者はゼネコンと実質的に同等の競争単位とはいえず,これら地元業者は,あえて同物件を受注することを希望していなかったことから,ことさらに低価格での入札をしなかったため,被審人戸田建設をメインとするJVの入札価格を上回った事実は,いずれも存在しなかったと主張する。\r\nしかし,指名された被審人奥村組が,被審人戸田建設から受注希望の表明を受け,同被審人との間で入札価格の確認をしたことは査共第137号証により,被審人CKプロパティーが,入札までのゼネコン同士の情報交換により被審人戸田建設が受注予定者であることを知り,同被審人の落札を妨げない価格である3億7500万円で入札したことは査共第82号証により,それぞれ明らかである上,被審人戸田建設以外の違反行為者をメインとするJVはすべて予定価格を上回る価格である3億7000万円から3億8300万円の範囲で入札し,被審人戸田建設・都南建設JVのみが予定価格を下回る3億6600万円で入札した(査共第328号証)ことからすれば,被審人西松建設及び白石も,被審人戸田建設から受注希望の表明を受けるなどして同被審人のみが受注を希望していることを知ったと推認できる。これらによれば,同JVは受注予定者に決定され,他の違反行為者がこれに協力したと認められる。また,その他のゼネコンである東亜建設工業をメインとするJVも予定価格を上回る価格である4億円で入札した(査共第328号証)ことから,被審人戸田建設の受注に協力したと認められる。さらに,地元業者4社をメインとするJVも,被審人戸田建設以外の違反行為者をメインとするJVの入札価格とほぼ同水準の3億7800万円から3億9000万円の範囲で入札した(査共第328号証)ので,被審人戸田建設・都南建設JVとの間で競争が生じなかった。したがって,同物件について,同JVが,本件基本合意に基づき受注予定者に決定され,地元業者が競争を挑んでこない状況の下,他の違反行為者4社及びその他のゼネコン1社の協力を得て受注したのであって,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるというべきであり,被審人戸田建設の主張は採用できない。\r\nツ 番号30の物件\r\n(ア) 番号30の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(チ)のとおりであって,違反行為者3社及びその他のゼネコン7社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nそうすると,同物件については,入札参加者がすべて本件基本合意の当事者又は協力者で占められており,本件基本合意に基づいて被審人飛島建設をメインとするJVが受注予定者に決定され,同JVの受注に違反行為者及びその他のゼネコンが協力することにより,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) 被審人飛島建設は,番号30の物件は,同被審人がJVを組んだ高松建設の所有する道路を使用しないと施工できず,施工できるのは,入札実施時において被審人飛島建設・高松建設JVのみであったので,競争関係が客観的に存在せず,また,同物件について,受注予定者を決めるための調整行為や,依頼行為が行われたことに関する証拠はなく,むしろ34社に含まれる事業者も受注を目指し活動をしたこと,調整行為をしていないこと,依頼連絡もないこと,独自の見積りをして入札に参加したことという調整行為の不存在を示す証拠があると主張する。\r\nしかし,同物件が高松建設の所有する道路を使用しないと資材搬入ができず施工できない(査共第325号証)としても,高松建設以外の事業者は,高松建設から道路の使用許諾を得るなどすれば,施工は可能であるので,競争関係は存在したと認められる。\r\nまた,被審人鉄建建設は,同物件は高松建設の所有する道路を使用しないと資材搬入ができないので施工できず,被審人飛島建設・高松建設JVが強い条件を有していることを知っていた(査共第325号証)ので,指名業者による結成後のJVのメインである被審人大林組もこのような事情を知っていたと推認でき,被審人鉄建建設及び同大林組をメインとするJVが予定価格を上回る価格で入札した(査共第328号証)ことも考え合わせると,両被審人は被審人飛島建設・高松建設JVが受注予定者となることを承認していたと認められる。さらに,指名業者による結成後のJVのメインのうちその他のゼネコンである熊谷組の担当者は,被審人飛島建設から受注希望の表明を受けるとともに同社との間で入札価格の確認をし,被審人飛島建設・高松建設JVの受注に協力したことを供述調書(査共第180号証,第181号証)において認め,かつ,入札価格の確認についての明確な証拠(査共第338号証)もあり,また,多摩地区において事業活動を行うゼネコンであれば,発注物件の情報収集をしており,同物件が高松建設の所有する道路を使用しないと施工できないことを知っていたと考えられるから,指名業者による結成後のJVのメインである熊谷組以外のその他のゼネコン6社も,被審人飛島建設・高松建設JVが強い条件を有していることを知っていたと推認でき,この6社をメインとするJVが,予定価格を上回る価格で入札した(査共第328号証,第463号証)ことも考え合わせると,この6社も同JVの受注に協力したと認められる。そうすると,同JVは,同物件について,本件基本合意に基づき受注予定者に決定され,また,指名業者による結成後のJVのメインである違反行為者2社及びその他のゼネコン7社の協力を得て落札・受注したこととなり,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるというべきである。\r\nしたがって,被審人飛島建設の主張は採用できない。\r\nテ 番号31の物件\r\n(ア) 番号31の物件についての落札・受注に至る経緯は前記1の1(3)ウ(ツ)のとおりであって,違反行為者2社,その他のゼネコン4社及び地元業者4社が入札に参加した。\r\nしかし,前記1の1(3)ウ(ツ)fのとおり,地元業者4社は,いずれも被審人大豊建設の依頼を受けて,その落札に協力しているのであるから,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができ,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) a 被審人大豊建設は,次のとおり,番号31の物件は,本件基本合意により自社が受注したとはいえないと主張する。\r\n(a) 被審人大豊建設の浅間は,本件基本合意の当事者のうち,わずかに被審人大木建設に対してのみ工事希望票の提出を依頼し,入札参加者10社のうちのわずか2社だけにしか受注調整の効果は及んでいない。これに受注への協力が見込まれたとして古久根建設を加えても,その受注調整の効果は入札参加者10社のうちの3社だけにしか及んでおらず,これでは,本件基本合意に基づく受注調整の効果は極めて限られたものとなってしまい,浅間が真摯に本件基本合意に基づいて同物件を受注しようと考えていたとは認め難い。\r\n(b) さらに,被審人大豊建設の浅間は,他の入札参加者の南海辰村建設,三井建設,東海興業,協和エクシオ,伊藤組土建,大盛工業及び松尾工務店へも受注意欲を伝えたり,入札価格の連絡をした旨その供述調書に記載があるが,もし,それが事実とすれば,この入札において被審人大豊建設が受注できるよう受注調整の活動をしたのは,本件基本合意に基づくものではなく,むしろ,本件基本合意の当事者でない入札参加者8社への個別の交渉,連絡が中心となるのであり,受注の結果も,被審人大木建設を除くそれら入札参加者8社への個別交渉によってもたらされたというべきである。\r\nb しかし,被審人大豊建設の浅間は,本件基本合意の内容を認識した(査共第163号証)上で,同物件について,被審人大木建設に対し,工事希望票の提出を依頼するとともに,同社との間で入札価格の連絡・確認をした(査共第5号証,第164号証)のであって,被審人大豊建設は,本件基本合意に基づき,被審人大木建設との間で,受注予定者に決定されたと認められる。そして,前記1の1(3)ウ(ツ)のとおり,被審人大豊建設は,同物件について,指名を受けたその他のゼネコン4社に対し,受注希望を表明するとともに,指名を受けたその他のゼネコン4社との間で入札価格の連絡・確認をし,さらに,指名を受けた地元業者4社に対しても依頼の上,受注への協力を受けた。このように,同被審人は,本件基本合意に基づき受注予定者に決定され,指名された違反行為者1社,その他のゼネコン4社及び地元業者4社の協力を得て同物件を受注したのであり,このことは,本件基本合意に基づく受注であることは明らかであって,同被審人の主張は採用できない。\r\nト 番号34の物件\r\n番号34の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(テ)のとおりであって,違反行為者4社及びその他のゼネコン6社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nそうすると,同物件については,入札参加者がすべて本件基本合意の当事者又は協力者で占められており,本件基本合意に基づいて被審人大成建設・同不動テトラJVが受注予定者に決定され,同JVの受注に違反行為者及びその他のゼネコンが協力することにより,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\nナ 番号38の物件\r\n(ア) 番号38の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ト)のとおりであって,違反行為者3社及びその他のゼネコン7社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nそうすると,同物件については,入札参加者がすべて本件基本合意の当事者又は協力者で占められており,本件基本合意に基づいて被審人清水建設・同安藤建設JVが受注予定者に決定され,同JVの受注に違反行為者及びその他のゼネコンが協力することにより,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) a 被審人清水建設及び同安藤建設は,次のとおり,番号38の物件について,受注調整行為が行われた事実はないと主張する。\r\n(a) 被審人清水建設又は同安藤建設が工事希望票の提出依頼に関与したことを立証する証拠はほとんどなく,相指名業者である五洋建設,間組及びフジタが,被審人清水建設・同安藤建設JVから協力を求められたとの証拠もない。\r\n(b) 審査官の主張によっても,被審人奥村組をメインとするものを除く8JVは,被審人清水建設・同安藤建設JVの入札価格を知らずに入札に参加しているところ,被審人清水建設・同安藤建設JVは,予定価格の99.37パーセントの札を入れている。かかる入札行動は,受注調整行為をしていたとすればあり得ない行動である。入札価格が連絡された事実がないのに,被審人清水建設・同安藤建設JVの入札価格の1パーセント以内に2JV,3パーセント以内に合計9JV(全JV)が入るほどに接近した金額が入札されており,このような結果からみても,被審人清水建設・同安藤建設JVが落札・受注を逃した可能性が現実にあった。被審人清水建設のかかる入札行動は,同被審人が自社が受注予定者に決定されていると認識していないことを証明している。\r\nb しかし,被審人清水建設及び同安藤建設は,同物件について,指名を受けた被審人鉄建建設に対して,受注希望を表明し,また,指名を受けた被審人奥村組との間で,入札価格の連絡・確認をした(査共第137号証,第325号証)ので,被審人鉄建建設及び同奥村組から被審人清水建設・同安藤建設JVが本件基本合意に基づき受注予定者となることについて了承を得たと認められる。さらに,被審人清水建設又は同安藤建設は,後に指名された業者により結成されたJVのメインのうちいずれもその他のゼネコンである若築建設,東急建設及び日産建設に対して,工事希望票の提出を依頼した(査共第78号証,第93号証,第187号証,第311号証,第360号証)ので,それら3社は被審人清水建設・同安藤建設JVが受注予定者であることを認識していたと認められる。そして,同物件は,被審人清水建設・同安藤建設JVが受注した番号21の物件である立坑から発進するシールド工事であり(査共第78号証),このような条件は,多摩地区で事業活動を行うゼネコンであれば,発注物件の情報収集をしており,当然知っていると考えられるので,番号38の物件について指名業者による結成後のJVのメインのうちいずれもその他のゼネコンである五洋建設,間組,フジタ及び大日本土木も,そのような条件を知っていたと推認でき,被審人清水建設・同安藤建設JVが受注予定者であることを認識していたと認められる。\r\nまた,同物件について,予定価格を下回って入札したのは,被審人清水建設・同安藤建設JV及び被審人奥村組・同松村組JVのみであり,それ以外の違反行為者又はその他のゼネコンをメインとするJVは,すべて予定価格を上回った価格で入札した(査共第328号証,第463号証)ところ,被審人清水建設及び同安藤建設は,被審人奥村組との間で,入札価格の連絡・確認をしていた(査共第137号証)し,被審人清水建設及び同安藤建設が被審人奥村組・同松村組JV以外のJVのメインとの間で入札価格の連絡・確認をしたことを認めるに足りる証拠はないものの,入札価格の連絡・確認がなかったとしても,公社発注の特定土木工事の入札に参加する業者であれば,通常,予定価格を上回った価格での入札は容易であると考えられる(前記1(3)イ)ので,被審人奥村組・同松村組JV以外のJVのメインである違反行為者及びその他のゼネコンは,被審人清水建設・同安藤建設JVが受注予定者であることを認識しながら,予定価格を上回った価格で入札することにより,同JVの受注に協力したと認められる。\r\nしたがって,被審人清水建設及び同安藤建設の主張は採用できない。\r\nニ 番号39の物件\r\n(ア) 番号39の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ナ)のとおりであって,違反行為者5社,被審人徳倉建設,その他のゼネコン2社及び地元業者2社が入札に参加した。\r\nそして,この地元業者2社が,いずれも被審人株木建設の依頼を受け,同被審人の落札に協力したことは,前記第1の1(3)ウ(ナ)fのとおりであり,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) a 被審人株木建設は,次のとおり,番号39の物件について,受注予定者の決定はなく,また,入札段階において,指名業者10社間で熾烈な価格競争が行われたと主張する。\r\n(a) 被審人株木建設は,約20年前に番号39の物件の施工場所の近隣において下水道工事を施工したにすぎないから,本件基本合意に基づいて同被審人が受注予定者に決定されたとは認められない。また,仮に同被審人が受注意欲を他社に示したとしても,そのことのみによって,同被審人を受注予定者と決定することはできない。\r\n(b) 同物件について,被審人ら以外の多数の事業者との競争の存在は否定し得ず,本件基本合意によっても入札の結果を左右することはできない。\r\n(c) 同物件について,審査官の主張を前提としても,入札段階において,被審人株木建設は,地元業者である坂本工業及び新栄建設業協組から,自社に受注意欲があることについての了解を得られなかったから,自社が受注できる可能性があると見込んでいなかった。\r\n(d) さらに,同物件の入札参加者の入札率が99.8から106.3パーセントまでの間に収まっていることをみれば,被審人株木建設を除く指名業者は,いずれも,予定価格を正確に推計し,同被審人と十分競争可能な価格をもって対応し,熾烈な価格競争を行っていたことが推認される。このような入札率に係る状況は,審査官が本件基本合意の結果ではないと自認する38物件と同様であるから,これらの物件に係る入札結果と対比して番号39の物件の入札率をみれば,結局入札談合なるものと関係なく生じた,まさに競争の結果であることは否定し得ない。\r\nb しかし,被審人株木建設は,番号39の物件について,被審人大木建設,同加賀田組及び同小田急建設に対して工事希望票の提出を依頼し(査共第5号証,第67号証,第72号証),被審人冨士工には受注希望を表明し,同社との間で入札価格の連絡・確認をした(査共第6号証,第67号証,第341号証,第354号証)ところ,受注希望者が被審人株木建設のみであったため,上記4社は被審人株木建設が受注予定者となることについて了解したと認められる。そして,被審人株木建設多摩営業所長の田中穂積は,指名された「ゼネコン7社は,現説のときにも条件を主張したりということがありませんでしたので,当然,当社が本命と認められたものと認識しました。」と供述(査共第67号証)し,自社が受注予定者となったことを認めている。\r\nまた,同被審人は,指名を受けたゼネコン各社との間で,入札価格の連絡・確認をし,指名を受けたゼネコン各社は,これを受けて,同被審人の入札価格より高い価格で入札した(査共第5号証,第6号証,第67号証,第72号証)。\r\nさらに,同被審人からの依頼により,地元業者も同被審人の落札・受注に協力したことは,前記第1の1(3)ウ(ナ)fのとおりである。このように,違反行為者4社,被審人徳倉建設及びその他のゼネコン2社並びに地元業者2社の協力を得て被審人株木建設が落札・受注した以上,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができることは明らかというべきである。\r\nしたがって,同被審人の主張は採用できない。\r\nヌ 番号40の物件\r\n(ア) 番号40の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ニ)のとおりであって,違反行為者3社,その他のゼネコン6社及び地元業者1社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nこの地元業者が被審人大林組の依頼により被審人大林組・殿入建設JVの落札に協力したことを認めるに足りる証拠はないが,この地元業者をメインとするJVの入札価格が予定価格を上回ったことは前記第1の1(3)ウ(ニ)gのとおりであり,この地元業者が競争的行動をとったものとは認められない。そうすると,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) a 被審人大林組は,次のとおり,番号40の物件について受注調整が行われたこと,被審人大林組が受注調整に関与したことを認めるに足りる証拠はないと主張する。\r\n(a) 被審人大林組が受注を希望していたことは事実であるとしても,それはツカサコンサルタントが調査設計作業の入札に参加したためではない。当該入札には,ツカサコンサルタント以外の複数者が参加しており,ツカサコンサルタントが参加したことをもって受注予定者あるいは有力候補者となるものではない。\r\n(b) 被審人大林組が他の入札参加者に対して工事希望票の提出依頼を行ったことについて証拠は皆無である。\r\n(c) 被審人大林組が入札までに相指名業者である大本組及び熊谷組との間で入札価格の連絡・確認をした事実はない。\r\n(d) 被審人大林組が受注希望していることの認識があったことが認められる大本組の供述調書に錢高組及び熊谷組の供述調書を加えたとしても,これらのみをもって,指名を受けた「各社」が同被審人の受注希望を認識し,それに異議を唱えなかったとまで認定することはできない。\r\n(e) 相指名業者が自社の入札価格が被審人大林組・殿入建設JVの入札価格より高い価格となるという認識を有して入札に参加したことを裏付ける証拠はない。\r\n(f) 入札に参加した地元業者である大盛工業・八洲建設JVがあえて受注を希望しなかったと認めるに足りる証拠はない。\r\nb しかし,その他のゼネコンである大本組は,被審人大林組から工事希望票の提出依頼があったので同被審人をメインとするJVが受注予定者であったと認識し,同被審人から入札価格の連絡も受け(査共第62号証),また,その他のゼネコンである熊谷組は,同被審人から入札価格の確認を受けたので,同被審人をメインとするJVが受注予定者であったと認識していたこと(査共第181号証)に加え,同被審人八王子事務所長の真下英明は番号40の物件を是非受注したいと考えていたこと(査共第161号証)及び被審人大林組・殿入建設JV以外のゼネコンをメインとするJVはすべて予定価格を上回る価格で入札していること(査共第328号証,第463号証)は,各括弧内掲記の証拠により明らかであり,これらに照らせば,被審人大林組は,被審人錢高組,白石並びに大本組及び熊谷組以外のその他のゼネコン4社に対しても,自社の受注希望の表明ないしは相手方の受注希望の有無の確認を行ったと推認でき,被審人大林組・殿入建設JVが唯一の受注希望者であり,前記のとおり地元業者が競争を挑んでこない状況の下,被審人錢高組及び白石との間で,本件基本合意に基づき受注予定者に決定され,違反行為者2社及びその他のゼネコン6社の協力を得て,同物件を落札・受注したと認められる。\r\nしたがって,被審人大林組の主張は採用できない。\r\nネ 番号42の物件\r\n(ア) 番号42の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ヌ)のとおりであって,違反行為者4社,その他のゼネコン4社及び地元業者2社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nこの地元業者2社が被審人青木あすなろ建設の依頼により被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVの落札に協力したことを認めるに足りる証拠はないが,この地元業者をメインとする2組のJVの入札価格が予定価格を上回ったことは前記第1の1(3)ウ(ヌ)gのとおりであり,地元業者が,いずれも競争的行動をとったものとは認められない。そうすると,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) a 被審人青木あすなろ建設は,次のとおり主張する。\r\n(a) 相指名業者である東海興業,環境建設及び浅野工事が,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVから協力を求められたとの証拠はなく,東海興業等は,競争回避行動をとらなかった,すなわち競争行為を行ったと評価される。\r\n(b) 審査官の主張によっても,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVが入札価格の連絡・確認をした相指名業者は,わずか4社であり,相指名業者のすべてに対して入札価格の連絡がない限り,仮に受注予定者がいたとしても,その者が落札できる見込みがあるとはいえない。また,仮に入札価格を連絡しない方法で入札談合を実施する場合があると仮定しても,そのような場合,相指名業者が正確に予定価格を算出する保証はないから,受注予定者は,想定予定価格よりもある程度低い金額での入札を行わなければならない。しかるに,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVは,番号42の物件の1回目の入札において,結果的に,予定価格の100.96パーセントの金額で入札した。もし,入札価格を連絡・確認しない方法で受注しようと考えるのであれば,このように予定価格ぎりぎりの落札を目指して入札することは,あり得ない行動である。実際,入札価格の連絡がされた事実がないのに,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVの入札価格の1パーセント以内に2JV,約2パーセント以内に合計3JVが入るほどに接近した金額が入札されており,このような結果からみても,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVが落札・受注を逃した可能性があった。被審人青木あすなろ建設は,自らが受注予定者に決定されていれば,あり得ない入札行動をとっており,同社が受注調整に関与していないことは明白である。\r\n(c) 予定価格に近い金額での受注を目指すことも,独占禁止法が保護する「競争」にほかならず,同物件は,競争の結果,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVが落札・受注した。被審人青木あすなろ建設において,審査官のいう「合意」の下,個別調整行為が行われたという事実はない。また,アウトサイダーである地元業者が被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVの落札・受注に協力した事実はなく,同JVは競争により落札・受注した。\r\nb しかし,被審人青木あすなろ建設は,被審人加賀田組に対して,工事希望票の提出を依頼するとともに,入札価格を連絡し(査共第72号証),指名された被審人小田急建設に受注希望を表明するとともに,同社に対し3回分の入札価格を連絡し,落札後にお礼を述べており(査共第145号証,第176号証,第343号証,第349号証),指名された被審人みらい建設グループに受注希望を表明するとともに,同社との間で入札価格の確認を行った(査共第349号証)ことは,各括弧内掲記の証拠から明らかである。したがって,以上の経過により,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVが唯一の受注希望者であり,同JVが受注予定者となることについて,上記の違反行為者3社から了解を得たと認められる。\r\nそして,被審人青木あすなろ建設は,その他のゼネコンである京王建設との間でも入札価格の連絡・確認をした(査共第150号証)。 以上のように,同被審人が違反行為者3社及び京王建設との間でも入札価格の連絡・確認をしたことに加えて,同被審人から留置した「平成11年度営業活動状況について」と題する平成11年12月6日付けの多摩営業所作成の文書(査共第337号証)の公社発注の工事件名「町田,山崎汚水枝線」すなわち番号42の物件の欄に「新都市は業界的に4年のブランクが有りそろそろ順番であった。(略)指名メンバーセットが成功した。」と記載されていることに照らせば,被審人青木あすなろ建設は,京王建設以外のその他のゼネコン3社との間においても入札価格の連絡・確認をしたと推認できる。\r\nしたがって,被審人青木あすなろ建設・岡三建設JVは,同物件について,本件基本合意に基づき違反行為者3社との間で受注予定者に決定され,前記のとおり地元業者が競争を挑んでこない状況の下,違反行為者3社及びその他のゼネコン4社の協力を得て,落札・受注したと認められ,被審人青木あすなろ建設の主張は採用できない。\r\nノ 番号44の物件\r\n(ア) 番号44の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ネ)のとおりであって,違反行為者3社,その他のゼネコン4社及び地元業者3社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nそして,この地元業者3社が,いずれも被審人CKプロパティーの依頼を受け,被審人CKプロパティー・真上建設JVの落札に協力したことは前記第1の1(3)ウ(ネ)gのとおりであり,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) 被審人CKプロパティーは,自社が地元業者へ受注協力の依頼を行った旨の審査官の主張は,何ら証拠に基づかず,番号44の物件は難度が高いものではなく,地元業者も当然に競争事業者となるところ,審査官も認めるとおり,同被審人と地元業者との間で何らの合意も存在しないから,同被審人が落札できる必然性は存在せず,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができないと主張する。\r\nしかし,同物件については,同被審人の多摩営業所長の墨井が,指名された坂本工業等地元業者3社に協力方を依頼したと認めており(査共第4号証),坂本工業等地元業者3社をメインとするJVは,予定価格を上回り,ゼネコン各社をメインとするJVよりも高い価格で入札している(査共第328号証,第463号証)から,坂本工業等地元業者3社は,同被審人の受注への協力依頼に応じて高めの価格で入札したことが明らかであり,同被審人の主張は採用できない。\r\nハ 番号46の物件\r\n34社のうち番号46の物件の入札に参加したのは,別紙6のとおり被審人徳倉建設1社のみであり,同被審人による同物件の落札・受注が本件基本合意に基づく受注調整によるものでないことは明らかであって,同物件は課徴金の対象にはならない。\r\nなお,審査官も,同物件が課徴金の対象にならない旨意見を述べていることは,前記第3の3(1)のとおりである。\r\nヒ 番号50の物件\r\n(ア) 番号50の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ノ)のとおりであって,違反行為者4社,その他のゼネコン3社及び地元業者3社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nこの地元業者3社が被審人西松建設の依頼により被審人西松建設・清水重機土木JVの落札に協力したことを認めるに足りる証拠はないが,この地元業者をメインとする3組のJVの入札価格が予定価格を上回ったことは前記第1の1(3)ウ(ノ)gのとおりであり,地元業者が,いずれも競争的行動をとったものとは認められない。そうすると,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) 被審人西松建設は,番号50の物件の入札には,一般的に談合に協力しない「よそ者業者」が3社も参加しており,自社は,同物件を地元業者との間の自由な価格競争により落札し,受注したから,仮に,審査官の主張する本件基本合意の存在が認められたとしても,地元業者3社に対して同被審人が協力要請を行って協力を取り付けた事実が認められない以上,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができないと主張する。\r\nしかし,同物件については,前記(ア)のとおり,地元業者3社が競争的行動をとったものとは認められないから,同被審人の主張は採用できない。\r\nフ 番号51の物件\r\n(ア) 番号51の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ハ)のとおりであって,違反行為者2社,その他のゼネコン2社及び地元業者6社が入札に参加した。\r\n同物件において,地元業者が被審人松村組の依頼により同被審人の落札に協力したことを認めるに足りる証拠はない。しかし,被審人松村組の落札率は99.5パーセントであった(査共第328号証,第463号証)ところ,地元業者6社は,いずれも同被審人から受注を希望している旨告げられ,うち2社は自社も受注を希望する旨述べ,4社は態度を鮮明にしなかったものの,地元業者6社の入札価格は,いずれも予定価格を上回った(前記第1の1(3)ウ(ハ)f)のであり,地元業者が,いずれも競争的行動をとったものとは認められない。\r\nしたがって,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができ,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) 被審人松村組は,番号51の物件について,ゼネコンはもとより,地元業者もその受注獲得に積極的に参加したことは証拠上明白であるから,ゼネコン各社の協力を得て受注したとの審査官の主張は失当であり,また,白石並びにいずれもその他のゼネコンである東海興業及び大日本土木に係る供述調書等に同物件に関する供述はなく,このことは,これらの事業者が同物件に関する受注予定者の決定に何ら関与しておらず,同被審人が,同物件の受注について,競争者を排除したり減少させたりする行為を全く行っていなかったことを裏付け,さらに,同物件の入札に参加した地元業者6社が,いずれも被審人の競争者であることは審査官が自認するから,同物件について同被審人が受注できる必然性は全くなく,本件基本合意に基づく受注予定者の決定はなかったと主張する。\r\nしかし,同被審人の多摩営業所長の内田は,多摩営業所12月定例打合せと題する文書(査共第334号証)に,平成11年12月2日の打合せ事項として「楢原町下水道工事は,当社本命の為,色々と人の出入り,連絡等があるので要注意。」と記載し,平成11年上期目標達成評価表と題する文書(査共第198号証)に,目標設定項目として「中央業者の業界内の関係強化」を挙げ,これに対応する具体的成果として「業界内での人間関係もほぼ出来,色々と情報が入手しやすくなり,相互協力が出来る様になった。<例>楢原町工事」と記載しており,上記の「楢原町下水道工事」及び「楢原町工事」は平成11年12月20日入札の「八王子市楢原町251番地先外下水道築造45−公10工事」という件名の番号51の物件であることが明らかであるので,同被審人は指名された白石から受注予定者となることについて了解を得たと認められる。また,同被審人の内田が指名されたその他のゼネコンである大日本土木に対し受注希望を表明したことを認めている(査共第170号証)ことと上記2つの文書の記載を併せてみれば,同被審人は,指名されたその他のゼネコンである東海興業に対しても,受注希望を表明して,受注への協力を得たと推認できる。さらに,地元業者6社が競争的行動をとったとは認められないことは,前記(ア)のとおりである。このように,同被審人は,同物件について,本件基本合意に基づき受注予定者に決定され,地元業者6社が競争を挑んでこない状況の下,指名された違反行為者1社及びその他のゼネコン2社の協力を得て落札・受注したのであるから,同物件は,本件基本合意に基づき受注予定者が決定されることによって,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるというべきであり,同被審人の主張は採用できない。\r\nヘ 番号52の物件\r\n(ア) 番号52の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ヒ)のとおりであって,違反行為者3社及びその他のゼネコン7社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nそうすると,同物件については,入札参加者がすべて本件基本合意の当事者又は協力者で占められており,本件基本合意に基づいて被審人飛島建設をメインとするJVが受注予定者に決定され,同JVの受注に違反行為者及びその他のゼネコンが協力することにより,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) 被審人飛島建設は,番号52の物件について,番号30の物件に係る前記ツ(イ)と同様に,競争関係及び受注調整行為がなかったと主張する。\r\nしかし,番号52の物件についても競争関係が存在したと認められることは,前記ツ(イ)で述べたところと同様である。\r\nまた,被審人奥村組は,番号52の物件は被審人飛島建設・高松建設JVが受注した番号30の物件と一体の工事であるので,同JVが番号52の物件についても受注予定者であると認識しており(査共第137号証),被審人鉄建建設は,番号30の物件は高松建設の所有する道路を使用しないと資材搬入ができないので同JVが強い条件を有していることを知っていた(査共第325号証)ので,これらによれば,被審人奥村組及び同鉄建建設は同JVが受注予定者となることを承認したと認められる。そして,被審人奥村組は被審人飛島建設との間で入札価格の確認をした価格で入札したことを認めており(査共第137号証),また,被審人鉄建建設は予定価格を上回る価格で入札した(査共第328号証,第463号証)。さらに,多摩地区において事業活動を行うゼネコンであれば,発注物件の情報収集をしており,番号52の物件が番号30の物件と一体の工事であることを知っていたと考えられるから,指名業者による結成後のJVのメインであるその他のゼネコン7社も被審人飛島建設・高松建設JVが強い条件を有していることを知っていたと推認でき,指名業者による結成後のJVのメインであるその他のゼネコンは,このような認識の下,予定価格を上回る価格で入札した(査共第328号証,第463号証)ことから,被審人飛島建設・高松建設JVの受注に協力したと認められる。したがって,同JVは,番号52の物件について,本件基本合意に基づき受注予定者に決定され,指名業者による結成後のJVのメインである違反行為者2社及びその他のゼネコン7社の協力を得て落札・受注したのであるから,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるというべきである。\r\nしたがって,被審人飛島建設の主張は採用できない。\r\nホ 番号56の物件\r\n(ア) 番号56の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(フ)のとおりであって,違反行為者3社,その他のゼネコン4社及び地元業者3社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nこの地元業者3社が被審人東洋建設の依頼により被審人東洋建設・拓栄建設JVの落札に協力したことを認めるに足りる証拠はないが,地元業者をメインとする3組のJVの入札価格が予定価格を上回ったことは前記第1の1(3)ウ(フ)gのとおりであり,地元業者が,いずれも競争的行動をとったものとは認められない。そうすると,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) 被審人東洋建設は,番号56の物件の入札には,一般的に談合に協力しない「よそ者業者」が3社も参加しており,自社は,同物件を地元業者との間の自由な価格競争により落札し,受注したから,地元業者3社に対して被審人東洋建設が協力要請を行って協力を取り付けた事実が認められない以上,同物件においては競争制限効果が具体的に生じたと認めることができないと主張する。\r\nしかし,地元業者3社をメインとするJVが,予定価格を上回る価格で入札し競争的行動をとったものとは認められないことは前記(ア)のとおりであり,同被審人の主張は採用できない。\r\nマ 番号57の物件\r\n違反行為者のうちJVのメインとして番号57の物件の入札に参加したのは,別紙6のとおり被審人飛島建設のみであり,同被審人をメインとするJVによる同物件の落札・受注が本件基本合意に基づく受注調整によるものでないことは明らかであって,同物件は課徴金の対象にはならない。\r\nなお,審査官も,同物件が課徴金の対象にならない旨意見を述べていることは,前記第3の3(1)のとおりである。\r\nミ 番号58の物件\r\n(ア) 番号58の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ヘ)のとおりであって,違反行為者5社,被審人徳倉建設,その他のゼネコン3社及び地元業者1社がJVのメインとして入札に参加し,違反行為者5社間で被審人佐田建設・堺産業JVが受注予定者と決定されたものの,被審人小田急建設・タカラヤ土木興業JVは,被審人佐田建設・堺産業JVの入札価格を50万円下回る価格で入札し,落札した。\r\nこの地元業者が被審人佐田建設の依頼により被審人佐田建設・堺産業JVに落札させるべく協力したことを認めるに足りる証拠はないが,この地元業者をメインとするJVの入札価格が予定価格を上回ったことは前記第1の1(3)ウ(ヘ)gのとおりであり,この地元業者が競争的行動をとったものとは認められない。そうすると,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができる。\r\nそして,上記のとおり,被審人小田急建設・タカラヤ土木興業JVは,受注予定者と決定された被審人佐田建設・堺産業JVの入札価格をわずかに50万円下回る価格で入札したのであるから,この受注調整の結果を利用して落札したと推認され(この落札が被審人佐田建設の承諾の下に行われたことを認めるに足りる証拠はない。),被審人小田急建設・タカラヤ土木興業JVによる同物件の落札・受注は,やはり,上記のとおり競争制限効果が具体的に生じたことによるものというべきである。\r\nなお,仮に,被審人小田急建設・タカラヤ土木興業JVが上記のような価格で入札したことが,予定価格の推計ミス等の過失によるものであったとしても,同JVの落札率は99.14パーセント,被審人佐田建設・堺産業JVの入札率は99.33パーセントであり,その他のJVの入札率はいずれも100パーセントを上回った(査共第328号証,第463号証,前記第1の1(3)ウ(ヘ)g)ことに照らすと,本件基本合意に基づく受注調整及びこれに対する協力により具体的に生じた競争制限効果は,やはり上記の落札に及んでいるというべきである。\r\nしたがって,同物件は,課徴金の対象となる。\r\n(イ) 被審人小田急建設は,番号58の物件について,直接的にも間接的にも受注調整に関与せず,他の入札参加者間で被審人佐田建設をメインとするJVを受注予定者とする受注調整が行われていたことを認識しておらず,受注調整により生じた競争制限効果を自己のために利用する行為をしなかったのであるから,被審人小田急建設に対する関係では,他の入札参加者が競争を回避したことは,土屋企業高裁判決の判示する反射的な競争制限効果にすぎず,同被審人との関係では競争制限効果は具体的に生じたと認められないと主張する。\r\nしかし,被審人小田急建設が本件基本合意の当事者であることは前記1のとおり明らかであり,特段の反証等のない限り,受注調整に関与したものと推認されるところ,本件ではそのような反証はない。土屋企業高裁判決の事案は,受注した原告(土屋企業株式会社)が,他の受注希望者1社からの要請に応じて個別的な話合いの席には着いたものの,自社も受注を希望する旨の一点張りで応じてこれを決裂させ,受注調整自体には一切関わっていないというものであり,本件とは事案を異にする。したがって,被審人小田急建設・タカラヤ土木興業JVとの関係でも競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるというべきであり,同被審人の主張は採用できない。\r\nム 番号59の物件\r\n番号59の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ホ)のとおりであって,違反行為者5社,その他のゼネコン3社及び地元業者2社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nこの地元業者2社が被審人坂田建設の依頼により被審人坂田建設・平井工業JVの落札に協力したことを認めるに足りる証拠はないが,この地元業者をメインとする2組のJVの入札価格が予定価格を上回ったことは前記第1の1(3)ウ(ホ)gのとおりであり,地元業者が,競争的行動をとったものとは認められない。そうすると,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\nメ 番号61の物件\r\n違反行為者のうちJVのメインとして番号61の物件の入札に参加したのは,別紙6のとおり被審人鉄建建設のみであり,同被審人をメインとするJVによる同物件の落札・受注が本件基本合意に基づく受注調整によるものでないことは明らかであって,同物件は課徴金の対象にはならない。\r\nなお,審査官も,同物件が課徴金の対象にならない旨意見を述べていることは,前記第3の3(1)のとおりである。\r\nモ 番号64の物件\r\n(ア) 番号64の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(マ)のとおりであって,違反行為者2社,被審人徳倉建設,その他のゼネコン5社及び地元業者2社が入札に参加した。\r\nそして,この地元業者2社が,いずれも被審人淺沼組の依頼を受け,同被審人の落札に協力したことは,前記第1の1(3)ウ(マ)fのとおりである。そうすると,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) 被審人淺沼組は,番号64の物件について,被審人淺沼組の行動は,審査官の主張のとおりとしても一方的な協力依頼であって,34社に属する被審人淺沼組,同安藤建設及び同徳倉建設の3社間に被審人淺沼組を落札予定者とする合意が認められず,地元業者2社という競争業者が存在して被審人淺沼組が落札できる必然性はもちろん蓋然性も存在せず,競争制限効果を具体的に生ぜしめるものではなかったと主張する。\r\nしかし,被審人淺沼組は,同物件について,被審人安藤建設に対して,工事希望票の提出を依頼し,同被審人との間で入札価格の連絡・確認をしたことは,証拠(査共第78号証)に照らし明らかであり,被審人淺沼組は,被審人安藤建設から自社が受注予定者となることについて了解を得たと認められる。\r\nまた,指名を受けたいずれもその他のゼネコンである太平工業,大本組,日特建設及び勝村建設との間で被審人淺沼組が入札価格の連絡・確認をしたことも,証拠(査共第62号証,第89号証,第204号証,第244号証,第361号証,第366号証)上明らかであり,このことに照らせば,被審人淺沼組は被審人徳倉建設及び日産建設に対しても受注への協力依頼又は入札価格の連絡・確認をしたと推認できる。\r\nそして,地元業者2社が被審人淺沼組の依頼を受けて協力したと認められることは,前記(ア)のとおりである。そうすると,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができることは明らかであり,被審人淺沼組の主張は採用できない。\r\nヤ 番号65の物件\r\n(ア) 番号65の物件についての落札・受注に至る経緯は前記1の1(3)ウ(ミ)のとおりであって,違反行為者3社,その他のゼネコン1社及び地元業者6社がJVのメインとして入札に参加した。\r\n同物件において,地元業者が被審人JFE工建の依頼を受け,被審人JFE工建・東山工業JVの落札に協力したことを認めるに足りる証拠はない。しかし,同JVの落札率は99.0パーセントと,予定価格にごく近い価格であった(査共第328号証,第463号証)ところ,地元業者6社をメインとするJVの入札価格は,前記1の1(3)ウ(ミ)gのとおりいずれも予定価格を上回ったものであり,地元業者がいずれも競争的行動をとったものとは認められない。\r\nしたがって,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができ,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) 被審人JFE工建は,審査官が番号65の物件において個別談合が成立したと主張するのであれば,被審人大木建設をメインとするJV及びそれ以外の2JVに対して被審人JFE工建が自らの優位性を理由として受注予定者となることを主張してその承認を得るとともに,「受注調整の仲間」ではないそれ以外の地元業者ら6JVに対しても個別に被審人JFE工建が受注予定者のメインとなることを承認させた上で,さらに,合計9JVに対して入札価格を連絡したことについて,行為を特定して具体的に主張立証する必要があるが,審査官はこれらの点について具体的主張を欠いているから,同物件について個別談合の成立を認定することはできないと主張する。\r\nしかし,個別の受注調整については,その経緯の詳細に至るまで関係者の行為を特定して主張する必要はないというべきである。そうであるところ,同物件の受注を希望した被審人JFE工建は,同様に受注を希望した被審人大木建設と話し合って,受注予定者とされた(査共第5号証)。そして,被審人JFE工建は,同物件の工事場所から約300メートルの場所に所在する東山工業とJVを組んだことから,被審人JFE工建・東山工業JVは強い条件を備え,被審人JFE工建の多摩営業所長の中里慎吾は,同JVがこのような強い条件を持つことは指名メンバーには当然分かると考えた(査共第169号証)ので,指名業者による結成後のJVのメインである被審人加賀田組及びその他のゼネコン1社も被審人JFE工建・東山工業JVが受注予定者であると認識したと推認できる。そこで,同JVは,本件基本合意に基づき被審人大木建設及び同加賀田組との間で受注予定者に決定され,これら違反行為者2社及びその他のゼネコン1社から受注への協力を得たと認められる。そして,地元業者をメインとする6組のJVも,前記(ア)のとおり,予定価格を上回る価格で入札した。したがって,同物件について,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができ,被審人JFE工建の主張は採用できない。\r\nユ 番号67の物件\r\n(ア) 番号67の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(ム)のとおりであって,違反行為者7社,その他のゼネコン2社及び地元業者1社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nそして,この地元業者が,被審人錢高組の依頼を受け,被審人錢高組・南王建設JVの落札に協力したことは,前記第1の1(3)ウ(ム)gのとおりである。そうすると,同物件については,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n(イ) a 被審人錢高組は,次のとおり主張する。\r\n(a) アイサワ工業以外のゼネコン各社については被審人錢高組の希望によって工事希望票を提出したことを認定できるだけの証拠はない。\r\n(b) 審査官は,被審人錢高組が入札までに指名を受けた被審人冨士工並びにいずれもその他のゼネコンであるアイサワ工業及び村本建設との間で入札価格の連絡・確認をした証拠として,被審人錢高組の吉永,アイサワ工業の土屋,被審人冨士工の富安及び村本建設の高橋の各供述調書を提出するが,吉永の供述は,どの業者にいつ連絡したか明確ではなく,具体性に欠けるし,上記供述以外にゼネコンとの入札価格の連絡・確認の事実を具体的に証する証拠はない。\r\n(c) 指名を受けたゼネコン各社が,被審人錢高組が番号67の物件の受注を希望していることを認識し,それに異議を唱えなかった旨の審査官の主張を証する証拠は,被審人クボタ建設,白石,アイサワ工業及び村本建設の4社以外のゼネコンに関しては存在しない。\r\n(d) 番号67の物件の落札率は88.48パーセントであり,指名業者のうち被審人戸田建設は91.11パーセント,アイサワ工業も92.31パーセントの応札をしており,極めて近接している。被審人錢高組は,本件基本合意に基づいてゼネコン各社の協力を得られなかったからこそ,80パーセント台で落札したのである。\r\nb しかし,被審人錢高組が白石,被審人佐田建設,同クボタ建設,同冨士工及び同青木あすなろ建設並びにいずれもその他のゼネコンであるアイサワ工業及び村本建設に対して,工事希望票の提出を依頼したと認められることは,前記第1の1(3)ウ(ム)cのとおりである。また,被審人錢高組が番号67の物件の施工場所の近隣において施工実績を持つことは,多摩地区で事業活動を行うゼネコンは知っていたと考えられるから,被審人戸田建設も知っていたと推認できる。したがって,指名を受けた被審人錢高組以外のJVのメインであるゼネコン8社は,同被審人が同物件について受注希望を有していたことを認識していたと認められる。\r\nこのように,被審人錢高組・南王建設JVは,同物件について,本件基本合意に基づき違反行為者6社との間で受注予定者に決定され,違反行為者6社及びその他のゼネコン2社の協力を得,さらに前記(ア)のとおり地元業者の協力も得て落札・受注したのであるから,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができることは明らかというべきである。\r\nまた,同JVの落札率が88.48パーセントであるとはいえ,被審人戸田建設も前記のとおり被審人錢高組の条件を知っていたと認められる上,被審人戸田建設をメインとするJVの91.11パーセントという入札率は,被審人錢高組と入札価格の連絡・確認を行ったアイサワ工業をメインとするJVの入札率である92.31パーセントとほぼ同じであり,被審人錢高組をメインとするJVとも2.63パーセントの差があるので,被審人戸田建設も被審人錢高組の受注に協力したと認められ,競争制限効果が具体的に生じたと十分認めることができる。\r\nしたがって,被審人錢高組の主張は採用できない。\r\nヨ 番号71の物件\r\n番号71の物件についての落札・受注に至る経緯は前記第1の1(3)ウ(メ)のとおりであって,違反行為者3社及びその他のゼネコン7社がJVのメインとして入札に参加した。\r\nそうすると,同物件については,入札参加者がすべて本件基本合意の当事者又は協力者で占められており,本件基本合意に基づいて被審人奥村組をメインとするJVが受注予定者に決定され,同JVの受注に違反行為者及びその他のゼネコンが協力することにより,競争制限効果が具体的に生じたと認めることができるから,同物件は課徴金の対象となる。\r\n第5 法令の適用\r\n以上によれば,33社の行為は,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係るものである。ただし,被審人冨士工,同オリエンタル白石及び同真柄建設については,本件違反行為に基づく売上額を認めることができないことから,独占禁止法第7条の2第1項の規定に基づき課徴金の納付を命じることはできない。\r\nまた,被審人徳倉建設については,本件違反行為の当事者とは認めることができず,課徴金の納付を命じることはできない。\r\nよって,同法第7条の2第1項及び第4項の規定を適用して,被審人らに対し,同法第54条の2第1項の規定により,主文のとおり審決することが相当であると判断する。\r\n\r\n平成20年4月11日\r\n\r\n公正取引委員会事務総局\r\n\r\n審判長審判官    原   啓一郎\r\n\r\n審判官    中 出 孝 典\r\n\r\n審判官高橋省三は,異動につき署名押印できない。\r\n\r\n審判長審判官    原   啓一郎\r\n\r\n別紙1\r\n被審人目録\r\n平成14年(判)第1号 東京都新宿区西新宿一丁目25番1号 大成建設株式会社(被審人大成建設) 代表取締役 葉山 莞児\r\n同第2号 東京都港区芝浦一丁目2番3号 清水建設株式会社(被審人清水建設) 代表取締役 宮本 洋一\r\n同第3号 東京都新宿区西新宿七丁目5番25号 三井住友建設株式会社(被審人三井住友建設) 代表取締役 五十嵐久也\r\n同第4号 大阪市中央区平野町四丁目2番16号 株式会社不動テトラ(被審人不動テトラ) 代表取締役 高橋 昭夫\r\n同第5号 大阪市阿倍野区松崎町二丁目2番2号 株式会社奥村組(被審人奥村組) 代表取締役 奥村太加典\r\n同第6号 東京都港区芝浦三丁目12番8号 安藤建設株式会社(被審人安藤建設) 代表取締役 山田恒太郎\r\n同第7号 東京都千代田区平河町一丁目6番15号 株式会社みらい建設グループ(被審人みらい建設グループ) 代表取締役 明石 惠介\r\n同第8号 東京都千代田区三崎町二丁目5番3号 鉄建建設株式会社(被審人鉄建建設) 代表取締役 工藤 長生\r\n同第9号 大阪市天王寺区東高津町12番6号 株式会社淺沼組(被審人淺沼組) 代表取締役 浅沼 健一\r\n同第10号 東京都千代田区三番町2番地 飛島建設株式会社(被審人飛島建設) 代表取締役 池原 年昭\r\n同第11号 横浜市南区花之木町二丁目26番地 馬淵建設株式会社(被審人馬淵建設) 代表取締役 馬淵 圭包\r\n同第12号 大阪市中央区北浜東4番33号 株式会社大林組(被審人大林組) 代表取締役 野間 暎史\r\n同第13号 新潟市中央区八千代一丁目5番32号 株式会社加賀田組(被審人加賀田組) 代表取締役 市村  稿\r\n同第14号 東京都中央区新川一丁目24番4号 大豊建設株式会社(被審人大豊建設) 代表取締役 岡村 康秀\r\n同第15号 東京都墨田区緑四丁目21番2号 坂田建設株式会社(被審人坂田建設) 代表取締役 山上  忠\r\n同第16号 大阪市西区西本町二丁目2番11号 株式会社錢高組(被審人錢高組) 代表取締役 錢高 善雄\r\n同第17号 水戸市吉沢町311番地1 株木建設株式会社(被審人株木建設) 代表取締役 株木 雅浩\r\n同第18号 東京都中央区京橋一丁目7番1号 戸田建設株式会社(被審人戸田建設) 代表取締役 井上 舜三\r\n同第19号 札幌市中央区北六条西十六丁目1番地23ジュオ桑園1階 株式会社CKプロパティー(被審人CKプロパティー) 代表清算人 熊谷  聰\r\n同第20号 大阪市中央区高麗橋四丁目1番1号 東洋建設株式会社(被審人東洋建設) 代表取締役 赤井 憲彦\r\n同第21号 新潟県柏崎市新橋2番8号 株式会社植木組(被審人植木組) 代表取締役 植木 義明\r\n同第22号 横浜市鶴見区小野町88番地 JFE工建株式会社(被審人JFE工建) 代表取締役 嶋田 正大\r\n同第23号 前橋市元総社町一丁目1番地の7 佐田建設株式会社(被審人佐田建設) 代表取締役 市ヶ谷隆信\r\n同第24号 大阪市北区東天満一丁目10番20号 株式会社松村組(被審人松村組) 代表取締役 菅沼  肇\r\n同第25号 東京都台東区東上野六丁目23番5号 大木建設株式会社(被審人大木建設) 清 算 人 石川  徹\r\n同第26号 兵庫県西宮市池田町12番20号 株式会社新井組(被審人新井組) 代表取締役 上山 秀夫\r\n同第27号 東京都中央区日本橋室町三丁目1番3号 株式会社クボタ建設(被審人クボタ建設) 代表清算人 廣瀬 曜一\r\n同第28号 東京都港区芝二丁目14番5号 青木あすなろ建設株式会社(被審人青木あすなろ建設) 代表取締役 市木 良次\r\n同第29号 東京都品川区上大崎三丁目3番1号 株式会社冨士工(被審人冨士工) 代表取締役 江利川和夫\r\n同第30号 名古屋市中区錦三丁目13番5号 徳倉建設株式会社(被審人徳倉建設) 代表取締役 徳倉 正晴\r\n同第31号 東京都千代田区平河町二丁目1番1号 オリエンタル白石株式会社(被審人オリエンタル白石) 代表取締役 柿塚 輝昭\r\n同第32号 東京都新宿区西新宿四丁目32番22号 小田急建設株式会社(被審人小田急建設) 代表取締役 雪竹 正英\r\n同第33号 金沢市彦三町一丁目13番43号 真柄建設株式会社(被審人真柄建設) 代表取締役 真柄 宏司\r\n同第34号 東京都港区虎ノ門一丁目20番10号 西松建設株式会社(被審人西松建設) 代表取締役 國澤 幹雄\r\n\r\n別紙2\r\n代理人目録\r\n被審人大成建設\r\n被審人小田急建設\r\n弁護士      石 井 成 一\r\n同        竹 内   淳\r\n復代理人弁護士  片 上 誠 之\r\n被審人清水建設\r\n弁護士      川 崎 隆 司\r\n同        谷 本 誠 司\r\n被審人三井住友建設\r\n弁護士      畠 山 保 雄\r\n同        松 井 秀 樹\r\n同        大 庭 浩一郎\r\n被審人不動テトラ\r\n弁護士      坂 野   滋\r\n同        橋 本 副 孝\r\n同        吾 妻   望\r\n同        日 野 義 英\r\n同        笠   浩 久\r\n同        五十嵐 亜紀子\r\n被審人奥村組\r\n弁護士      俵 谷 利 幸\r\n同        伴   義 聖\r\n同        堀 内 徹 也\r\n被審人安藤建設\r\n弁護士      金 森   仁\r\n同        山 田   学\r\n同        村 田   恒\r\n被審人みらい建設グル−プ\r\n被審人馬淵建設\r\n被審人坂田建設\r\n弁護士      千 石   保\r\n同        西 村 泰 夫\r\n被審人鉄建建設\r\n弁護士      志 田 至 朗\r\n復代理人弁護士  鈴 木 一 洋\r\n被審人淺沼組\r\n弁護士      宮 代   力\r\n被審人飛島建設\r\n弁護士      加 瀬 洋 一\r\n被審人大林組\r\n弁護士      上 林   博\r\n被審人加賀田組\r\n弁護士      若 山 正 彦\r\n被審人大豊建設\r\n弁護士      大 木 丈 史\r\n復代理人弁護士  清 水 保 晴\r\n被審人錢高組\r\n弁護士      茅 根 煕 和\r\n同        春 原   誠\r\n同        和 田 健 児\r\n被審人株木建設\r\n弁護士      西   迪 雄\r\n同        向 井 千 杉\r\n同        富 田 美栄子\r\n復代理人弁護士  佐久間   学\r\n被審人戸田建設\r\n弁護士      牧 野 利 秋\r\n同        大 平   茂\r\n同        下 田 憲 雅\r\n同        磯 田 直 也\r\n同        小 林 邦 聡\r\n被審人CKプロパティー\r\n弁護士      河 合 弘 之\r\n同        町 田 弘 香\r\n同        泊   昌 之\r\n同        松 村 昌 人\r\n同        松 尾 慎 祐\r\n同        望 月 賢 司\r\n復代理人弁護士  洞     敬\r\n被審人東洋建設\r\n被審人クボタ建設\r\n被審人西松建設\r\n弁護士      寺 上 泰 照\r\n同        岩 下 圭 一\r\n同        佐 藤 水 暁\r\n被審人植木組\r\n弁護士      西 村 寿 男\r\n同        中 田 成 徳\r\n復代理人弁護士  岡 田 修 一\r\n同        高 橋 良 裕\r\n同        林     毅\r\n被審人JFE工建\r\n弁護士      奥     毅\r\n同        妹 尾 佳 明\r\n同        楠 森 啓 太\r\n同        石 川 一 成\r\n被審人佐田建設\r\n弁護士      萩 原   剛\r\n同        萩 原 克 虎\r\n被審人松村組\r\n弁護士      宮 川 典 夫\r\n被審人大木建設\r\n弁護士      二 神 俊 和\r\n同        小 林   實\r\n復代理人弁護士  二 神 俊 昭\r\n被審人新井組\r\n弁護士      青 木 武 男\r\n同        千 葉 睿 一\r\n同        森   葉 子\r\n同        関   聡 介\r\n同        渡 辺 智 子\r\n復代理人弁護士  今 田 健太郎\r\n同        杉 森 洋 平\r\n被審人青木あすなろ建設\r\n弁護士      川 崎 隆 司\r\n同        川 合 竜 太\r\n同        谷 本 誠 司\r\n被審人冨士工\r\n弁護士      清 木 尚 芳\r\n同        松 本   岳\r\n被審人徳倉建設\r\n弁護士      佐 藤 謙 一\r\n被審人オリエンタル白石\r\n弁護士      堤   義 成\r\n同        田 宮 武 文\r\n同        依 田 修 一\r\n同        柳 澤   泰\r\n被審人真柄建設\r\n弁護士      厚 谷 襄 児\r\n同        加 瀬 洋 一\r\n\r\n別紙3\r\n被審人ごとの売上額及び課徴金額\r\n被審人 課徴金算定対象物件(注) 売上額(円) 課徴金額(万円)\r\n被審人大成建設 番号24,26,34 841,108,590  5046\r\n被審人清水建設 番号21,38 735,071,400  4410\r\n被審人三井住友建設 番号13 720,209,070 4321\r\n被審人不動テトラ 番号24,26,34 560,739,060  3364\r\n被審人奥村組 番号71 497,700,000  2986\r\n被審人安藤建設 番号21,38 490,047,600  2940\r\n被審人みらい建設グループ 番号13 480,139,380  2880\r\n被審人鉄建建設 番号9  215,246,955  1291\r\n被審人淺沼組 番号64  239,400,000  1436\r\n被審人飛島建設 番号30,52  224,719,740  1348\r\n被審人馬淵建設 番号27  377,773,830  2266\r\n被審人大林組 番号40  340,535,055  2043\r\n被審人加賀田組 番号7  321,175,890  1927\r\n被審人大豊建設 番号31  316,863,750 1901\r\n被審人坂田建設 番号59  243,285,000  1459\r\n被審人錢高組 番号67  271,950,000  1631\r\n被審人株木建設 番号39  273,611,100 1641\r\n被審人戸田建設 番号29  273,406,770  1640\r\n被審人CKプロパティー 番号44  262,581,690  1575\r\n被審人東洋建設 番号56  253,575,000  1521\r\n被審人植木組 番号2  258,260,100  1549\r\n被審人JFE工建 番号65  211,680,000  1270\r\n被審人佐田建設 番号22  243,636,330  1461\r\n被審人松村組 番号51  233,791,950 1402\r\n被審人大木建設 番号10  230,469,540 1382\r\n被審人新井組 番号11  229,069,365  1374\r\n被審人クボタ建設 番号6  228,278,505  1369\r\n被審人青木あすなろ建設 番号42  217,912,065  1307\r\n被審人小田急建設 番号58  188,895,000  1133\r\n被審人西松建設 番号50   54,850,110   329\r\n\r\n(注)「課徴金算定対象物件」欄には,別紙6及び別紙7の物件に係る番号を記載した。\r\n\r\n別紙4\r\nその他のゼネコン46社\r\n番号 名   称 本店所在地 略 称\r\n1 アイサワ工業株式会社 岡山市表町一丁目5番1号 アイサワ工業\r\n2 株式会社青木建設 大阪市北区大淀南一丁目4番15号 青木建設\r\n3 株式会社淺川組 和歌山市小松原通三丁目69番地 −\r\n4 浅野工事株式会社 東京都中央区日本橋本町四丁目9番11号 浅野工事\r\n5 池田建設株式会社 東京都港区赤坂四丁目9番24号 池田建設\r\n6 株式会社大本組 岡山市内山下一丁目1番13号 大本組\r\n7 鹿島建設株式会社 東京都港区元赤坂一丁目2番7号 鹿島建設\r\n8 勝村建設株式会社 東京都台東区根岸一丁目2番13号 勝村建設\r\n9 環境建設株式会社(注1) 東京都新宿区新宿四丁目3番17号 環境建設\r\n10 株式会社神崎組 兵庫県姫路市北条口三丁目22番地 −\r\n11 北野建設株式会社 長野市県町524番地 −\r\n12 株式会社熊谷組 福井市中央2丁目6番8号 熊谷組\r\n13 京王建設株式会社 東京都府中市府中町2丁目1番地の14 京王建設\r\n14 株式会社鴻池組 大阪市此花区伝法四丁目3番55号 鴻池組\r\n15 古久根建設株式会社 東京都千代田区飯田橋三丁目3番1号 古久根建設\r\n16 五洋建設株式会社 東京都文京区後楽二丁目2番8号 五洋建設\r\n17 佐藤工業株式会社 富山市桜木町1番11号 佐藤工業\r\n18 三平建設株式会社 東京都台東区元浅草一丁目1番1号 −\r\n19 白石建設株式会社 東京都杉並区高円寺南4丁目15番11号 −\r\n20 西武建設株式会社 東京都豊島区南池袋一丁目16番15号 西武建設\r\n21 太平工業株式会社 東京都中央区新川一丁目23番4号 太平工業\r\n22 大末建設株式会社 大阪市中央区南船場二丁目2番11号 大末建設\r\n23 大日本土木株式会社 岐阜市宇佐南一丁目6番8号 大日本土木\r\n24 株式会社竹中土木 東京都中央区銀座八丁目21番1号 竹中土木\r\n25 東亜建設工業株式会社 東京都千代田区四番町5番地 東亜建設工業\r\n26 東海興業株式会社 東京都千代田区神田小川町三丁目10番地 東海興業\r\n27 東急建設株式会社 東京都渋谷区渋谷一丁目16番14号 東急建設\r\n28 東鉄工業株式会社 東京都新宿区市谷砂土原町二丁目7番地 東鉄工業\r\n29 株式会社巴コーポレーション 東京都中央区銀座六丁目2番10号 −\r\n30 株式会社ナカノコーポレーション 東京都千代田区九段北四丁目2番28号 −\r\n31 南海辰村建設株式会社 大阪市浪速区難波中三丁目5番19号 南海辰村建設\r\n32 日産建設株式会社 東京都港区南青山一丁目2番6号 日産建設\r\n33 日特建設株式会社 東京都中央区銀座八丁目14番14号 日特建設\r\n34 日本国土開発株式会社 東京都港区赤坂四丁目9番9号 日本国土開発\r\n35 株式会社間組 東京都港区北青山二丁目5番8号 間組\r\n36 株式会社長谷工コーポレーション 東京都港区芝二丁目32番1号 長谷工コーポレーション\r\n37 株式会社福田組 新潟市一番堀通町3番地10 福田組\r\n38 株式会社フジタ 東京都渋谷区千駄ヶ谷四丁目25番2号 フジタ\r\n39 前田建設工業株式会社 東京都千代田区富士見二丁目10番26号 前田建設工業\r\n40 松井建設株式会社 東京都中央区新川一丁目17番22号 −\r\n41 三井建設株式会社(注2) 東京都千代田区大手町一丁目2番3号 三井建設\r\n42 三菱建設株式会社 東京都中央区日本橋本町三丁目3番6号 三菱建設\r\n43 村本建設株式会社 奈良県北葛城郡広陵町大字平尾11番地の1 村本建設\r\n44 名工建設株式会社 名古屋市中村区名駅一丁目1番4号JRセントラルタワーズ34階 −\r\n45 株式会社森本組 大阪市天王寺区夕陽丘町4番11号 森本組\r\n46 若築建設株式会社 北九州市若松区浜町一丁目4番7号 若築建設\r\n\r\n(注1)当時の商号は石原建設株式会社である。\r\n(注2)被審人三井住友建設と同一法人である。\r\n\r\n別紙5\r\n地元業者の概要\r\n番号 名  称 略  称 公社の格付(下水道)\r\n1 会津工業株式会社      −     A\r\n2 芦澤建設株式会社 芦澤建設     A\r\n3 株式会社新井組      −     A\r\n4 石川徳建設株式会社 石川徳建設     A\r\n5 伊田テクノス株式会社      −     A\r\n6 伊藤組土建株式会社 伊藤組土建     A\r\n7 井上工業株式会社      −     A\r\n8 イワキ工業株式会社 イワキ工業     A\r\n9 内田建設株式会社      −     A\r\n10 株式会社エヌシー      −     A\r\n11 株式会社大久保組      −     A\r\n12 大林道路株式会社      −     A\r\n13 大峰建設株式会社      −     A\r\n14 株式会社大盛工業 大盛工業     A\r\n15 奥村組土木興業株式会社 奥村組土木興業     A\r\n16 長田組土木株式会社      −     A\r\n17 株式会社ガイアートクマガイ      −     A\r\n18 片倉建設株式会社      −     A\r\n19 株本建設工業株式会社      −     A\r\n20 株式会社関電工      −     A\r\n21 株式会社協和エクシオ 協和エクシオ     A\r\n22 近代建設株式会社 近代建設     A\r\n23 工藤建設株式会社 工藤建設     A\r\n24 黒須建設株式会社 黒須建設     A\r\n25 五栄土木株式会社      −     A\r\n26 国正建設事業協同組合      −     A\r\n27 小雀建設株式会社      −     A\r\n28 佐伯建設工業株式会社      −     A\r\n29 株式会社坂本興業      −     A\r\n30 坂本工業株式会社 坂本工業     A\r\n31 笹島建設株式会社 笹島建設     A\r\n32 三幸建設工業株式会社      −     A\r\n33 三ツ和総合建設業協同組合      − A\r\n34 株式会社清水組      −     A\r\n35 住鉱開発工事株式会社 住鉱開発工事     A\r\n36 新栄建設業協同組合 新栄建設業協組     A\r\n37 新東京建設工事業協同組合 新東京建設工事業協組     A\r\n38 新日本工業株式会社      −     A\r\n39 住石扶桑工業株式会社      −     A\r\n40 住建道路株式会社      −     A\r\n41 大成ロテック株式会社      −     A\r\n42 大明株式会社      −     A\r\n43 大明建設株式会社 大明建設 A\r\n44 太陽西部建設業協同組合 太陽西部建設業協組     A\r\n45 株式会社竹下組 竹下組     A\r\n46 株式会社竹中道路      −     A\r\n47 立石建設株式会社      −     A\r\n48 多摩ふるさと建設業協同組合      −     A\r\n49 坪井工業株式会社      −     A\r\n50 東京三多摩建設業協同組合      −     A\r\n51 東京西部総合建設事業協同組合 東京西部総合建設事業協組 A\r\n52 東京南多摩建設事業協同組合      −     A\r\n53 同和工営株式会社 同和工営     A\r\n54 戸田道路株式会社 戸田道路     A\r\n55 中里建設株式会社      −     A\r\n56 奈良建設株式会社      −     A\r\n57 西多摩流域建設事業協同組合      −     A\r\n58 西東京総合建設業協同組合      −     A\r\n59 日本水道株式会社      −     A\r\n60 株式会社早野組 早野組     A\r\n61 常陸建設株式会社      −     A\r\n62 前田道路株式会社      −     A\r\n63 株式会社松尾工務店 松尾工務店     A\r\n64 松庫工業株式会社      −     A\r\n65 松本建設株式会社      −     A\r\n66 丸磯建設株式会社      −     A\r\n67 丸政建設株式会社      −     A\r\n68 丸紅建設株式会社      −     A\r\n69 三井不動産建設株式会社      −     A\r\n70 三橋建設株式会社      −     A\r\n71 株式会社森組      −     A\r\n72 山岸建設株式会社      −     A\r\n73 吉川建設株式会社      −     A\r\n74 りんかい建設株式会社      −     A\r\n75 株式会社朝見工務店      −     B\r\n76 株式会社石井工務店 石井工務店     B\r\n77 石上建設株式会社      −     B\r\n78 岩浪建設株式会社      −     B\r\n79 宇路建設株式会社      −     B\r\n80 小原建設株式会社      −     B\r\n81 株式会社加藤工務店      −     B\r\n82 株式会社クリエート      −     B\r\n83 興亜土木株式会社 興亜土木     B\r\n84 佐久間建設株式会社      −     B\r\n85 産興建設株式会社      −     B\r\n86 塩崎建設株式会社      −     B\r\n87 新栄興業株式会社      −     B\r\n88 新開工業株式会社 新開工業     B\r\n89 末広建設株式会社      −     B\r\n90 株式会社鈴木土木興業      −     B\r\n91 砂川建設株式会社 砂川建設     B\r\n92 大日土木株式会社      −     B\r\n93 拓栄建設株式会社 拓栄建設     B\r\n94 立川開発工業株式会社      −     B\r\n95 多摩住宅保全株式会社      −     B\r\n96 田村建設工業株式会社      −     B\r\n97 東亜道路工業株式会社      −     B\r\n98 戸倉工業株式会社      −     B\r\n99 土志田建設株式会社      −     B\r\n100 殿入建設株式会社 殿入建設     B\r\n101 南王建設株式会社 南王建設     B\r\n102 株式会社新潟工業      −     B\r\n103 日鋪建設株式会社      −     B\r\n104 日産工業株式会社 日産工業     B\r\n105 萩原造園土木株式会社      −     B\r\n106 畠山建設株式会社      −     B\r\n107 林建設株式会社      −     B\r\n108 株式会社ハラコウジ      −     B\r\n109 東神建設工業株式会社      −     B\r\n110 東康工業株式会社      −     B\r\n111 株式会社東辰工業 東辰工業     B\r\n112 菱山建設株式会社 菱山建設     B\r\n113 株式会社日野大野      −     B\r\n114 株式会社広洋建設      −     B\r\n\r\n115 株式会社フジオ工業      −     B\r\n116 森屋建設株式会社      −     B\r\n117 ロード建設株式会社      −     B\r\n118 青山国土建設株式会社      −     C\r\n119 旭建設株式会社      −     C\r\n120 旭土木株式会社      −     C\r\n121 株式会社上坂重機開発      −     C\r\n122 株式会社植村組 植村組     C\r\n123 岡三建設株式会社 岡三建設     C\r\n124 株式会社岡部組      −     C\r\n125 雄宝建設工業株式会社      −     C\r\n126 桂建設株式会社      −     C\r\n127 加藤設備工業株式会社      −     C\r\n128 株式会社加藤鉄建      −     C\r\n129 有限会社金子土建      −     C\r\n130 株式会社北神建設      −     C\r\n131 篠崎土建株式会社      −     C\r\n132 株式会社城南興業 城南興業     C\r\n133 株式会社新和      −     C\r\n134 高尾建設株式会社      −     C\r\n135 株式会社滝沢建設      −     C\r\n136 株式会社辰建      −     C\r\n137 株式会社田中建設 田中建設     C\r\n138 土屋企業株式会社      −     C\r\n139 東京機工土木株式会社      −     C\r\n140 東邦建設工業株式会社      −     C\r\n141 株式会社東洋プラント 東洋プラント     C\r\n142 有限会社壌創工業      −     C\r\n143 利根地下技術株式会社      −     C\r\n144 都南建設株式会社 都南建設     C\r\n145 株式会社夏山組      −     C\r\n146 株式会社生沼組      −     C\r\n147 日工建設株式会社      −     C\r\n148 株式会社野口組      −     C\r\n149 有限会社浜興業      −     C\r\n150 原田工業株式会社      −     C\r\n151 株式会社ハンシン建設      −     C\r\n152 東山工業株式会社 東山工業     C\r\n\r\n153 日の出興業株式会社      −     C\r\n154 株式会社フジコーワ      −     C\r\n155 株式会社ホープ      −     C\r\n156 町田建設株式会社      −     C\r\n157 株式会社松興業      −     C\r\n158 八洲建設株式会社 八洲建設     C\r\n159 安田建設株式会社      −     C\r\n160 ユウコウ建設株式会社      −     C\r\n161 株式会社建興      −     D\r\n162 志磨企業株式会社      −     D\r\n163 株式会社大同工業      −     D\r\n164 株式会社オガワ      −     E\r\n165 株式会社小川土建      −     E\r\n\r\n※別紙6及び7省略

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