文字サイズの変更
背景色の変更
独禁法19条(2条9項5号)
平成24年(措)第6号
平成24年(措)第6号
排 除 措 置 命 令 書
広島市中区紙屋町二丁目1番18号
株式会社エディオン
同代表者 代表取締役 久 保 允 誉
公正取引委員会は,上記の者に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第20条第2項の規定に基づき,次のとおり命令する。
なお,主文及び理由中の用語のうち,別紙1「用語」欄に掲げるものの定義は,別紙1「定義」欄に記載のとおりである。
主 文
1 株式会社エディオン(以下「エディオン」という。)は,次の事項を,取締役会において決議しなければならない。
(1) 遅くとも平成20年9月6日以降,自社と継続的な取引関係にある納入業者のうち別表1記載の者(以下「特定納入業者」という。)に対し,搬出若しくは搬入又は店作りであって当該特定納入業者の従業員等が有する販売に関する技術又は能力を要しないものを行わせるため,あらかじめ当該特定納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく,かつ,派遣のために通常必要な費用を自社が負担することなく,当該特定納入業者の従業員等の派遣をさせていた行為を取りやめている旨を確認すること
(2) 今後,前記(1)の行為と同様の行為を行わない旨
2 エディオンは,前項に基づいて採った措置を,納入業者に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 エディオンは,今後,第1項(1)の行為と同様の行為を行ってはならない。
4 エディオンは,今後,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については,第1項(1)の行為と同様の行為をすることのないようにするために十分なものでなければならず,かつ,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の改定
(2) 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての,役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者による定期的な監査
5 (1) エディオンは,第1項,第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
(2) エディオンは,前項(2)に基づいて講じた措置の実施内容を,今後3年間,毎年,公正取引委員会に報告しなければならない。
理 由
第1 事実
1 (1) エディオンは,肩書地に本店を置き,テレビ,パソコン,デジタルカメラ,エアコン,冷蔵庫等(以下「家電製品等」という。)の小売業を営む者である。また,エディオンは,平成23年3月末日現在,別紙2記載の区域において,「デオデオ」,「エイデン」,「ミドリ」又は「イシマル」と称する店舗及び「デオデオ」,「エイデン」又は「ミドリ」と称するフランチャイズ店(エディオンのフランチャイズ・チェーンに加盟する事業者が運営する店舗をいう。以下同じ。)を展開している。
(2)ア 別表2記載の事業者は,それぞれ,家電製品等の小売業を営み,「店舗名」欄記載の店舗を運営していた者であり,平成20年9月6日の時点で,エディオンにその議決権の全てを保有される子会社であったところ,「事由」欄記載のとおり商号を変更した後,エディオンに吸収合併されたことにより消滅した。
イ 別表3記載の事業者は,それぞれ,家電製品等の小売業を営み,「店舗名」欄記載の店舗を運営していた者であり,このうち番号1及び番号2記載の事業者は,平成20年9月6日の時点で,エディオンにその議決権の全てを保有される子会社であったところ,「事由」欄記載のとおり,別表2記載の事業者にそれぞれ吸収合併されたことにより消滅した。また,別表3の番号3記載の事業者は,平成20年9月6日の時点で,エディオンの子会社であったところ,同年10月1日に,番号2記載の事業者にその議決権の全てを保有され,その後,「事由」欄記載のとおり別表2記載の事業者に吸収合併されたことにより消滅した。
(3)ア エディオンは,別表2及び別表3記載の事業者(以下「事業子会社」という。)との間で,それぞれ,業務委託契約を締結し,同契約に基づき,商品政策の立案に係る業務,販促企画及び実施に係る業務,商品の仕入れ及び在庫管理に係る業務等を受託していた。
イ(ア) エディオンは,自社及び事業子会社が運営する店舗並びにフランチャイズ店(以下「エディオンの店舗」という。)で販売する商品のほとんどを納入業者から買取りの方法により仕入れており,エディオンの「マーチャンダイザー」と称する仕入担当者が,納入業者との間で商談を行い,当該商品の納入価格等の取引条件を決定していた。
(イ) 新規開店又は改装開店を実施する店舗の店長等の責任者は,仕入担当者及び店舗支援担当者が決定した棚割り(商品の展示及び陳列位置をいう。)及び装飾内容に基づいて店作りを行うこととされていた。
(ウ) エディオンの店舗で販売される商品の納入場所は,店舗に直接納入される場合を除き,エディオンの物流センターとされており,当該物流センターからエディオンの店舗への運搬については,エディオンの責任において,エディオン,事業子会社又はこれらの者との間で物流業務基本契約を締結した事業者が行っていた。
(4)ア エディオンの事業年度は毎年4月1日から始まり翌年3月31日に終わるところ,平成20年3月期から平成22年3月期までの各事業年度におけるエディオンの連結売上高は8000億円を超えて推移しており,平成23年3月期における連結売上高は,約9010億円である。これら各事業年度におけるエディオンの連結売上高は,我が国において家電製品等の小売業を営む者の中で,当該期間中,第2位の地位にある。また,平成23年3月末日現在,エディオンの店舗の数は合計1,072店舗であり,前記各事業年度において店舗数が増加している。
イ 納入業者の中には,エディオンとの取引額及び取引数量が大きくかつ安定している,当該納入業者の売上高に占めるエディオンに対する売上高の割合が高いなどの理由により,エディオンとの取引の継続を必要とする者が存在する。
ウ 納入業者の中には,他の事業者との取引を開始又は拡大することにより,エディオンに対する売上高と同程度の売上高を確保することが困難な者が存在する。
エ 前記アからウまでの事情等により,特定納入業者は,エディオンとの取引の継続が困難になれば事業経営上大きな支障を来すこととなり,このため,エディオンとの取引を継続する上で,納入する商品の納入価格等の取引条件とは別に,エディオンからの要請を受け入れざるを得ない立場にあり,その取引上の地位はエディオンに対して劣っていた。
2 (1)ア エディオン,別表2の番号2記載の事業者及び別表3の番号2記載の事業者は,かねてから,「デオデオ」,「エイデン」,「ミドリ」,「イシマル」又は「エディオン」と称する店舗に係る搬出,搬入又は店作りのため,納入業者に対し,これらを行う店舗,日程等を連絡した上,当該納入業者が派遣する従業員等の数を回答させるなどにより,当該納入業者の従業員等の派遣を要請し,提供を受けていた。
イ(ア) エディオンは,平成20年6月30日に公正取引委員会が排除措置命令(平成20年(措)第16号)を行ったことを受け,新規開店又は改装開店における納入業者の従業員等の派遣を受けた実態を調査し,同年7月中旬以降,新規開店後又は改装開店後における開店セール等に際する販売業務に関しては,あらかじめ納入業者との間で従業員等の派遣の条件について覚書により合意することとし,その旨を納入業者に通知し,併せて,自社及び事業子会社等の関係者に対して,あらかじめ納入業者の従業員等の派遣の受入れについて納入業者の事前の同意を得ておくことなど,今後留意すべき内容を取りまとめて通知した。
(イ) エディオンは,前記(ア)に基づく覚書を,平成20年10月頃までに,納入業者のうち149名と締結した。
(ウ) しかしながら,エディオンは,平成20年7月中旬以降にあっても,搬出,搬入及び店作りに関しては,前記(ア)のようにあらかじめ納入業者との間で従業員等の派遣の条件について合意することとせず,また,派遣のために通常必要な費用を自社が負担することともせず,納入業者並びに自社及び事業子会社の関係者に対しても,何ら通知を行わなかった。さらに,エディオンは,搬出,搬入及び店作りを,自社及び事業子会社の従業員等で行う体制を構築しなかった。
(2)ア(ア) エディオンは,遅くとも平成20年9月6日以降,特定納入業者に対し,搬出若しくは搬入又は店作りであって当該特定納入業者の従業員等が有する販売に関する技術又は能力を要しないものを行わせるために,あらかじめ当該特定納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく,これらを行う店舗,日程等を連絡し,もって,その従業員等を派遣するよう要請していた。
(イ) 前記(ア)の要請を受けた特定納入業者は,エディオンとの取引を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされ,従業員等を派遣していた。また,エディオンは,当該派遣のために通常必要な費用を負担していなかった。
イ 前記アの行為について,エディオンは,平成20年9月6日から平成22年11月30日までの間に,新規開店又は改装開店を実施した延べ133店舗に商品を納入する特定納入業者に対し,少なくとも延べ11,172人の従業員等を派遣させて使用していた。
3 本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,エディオンは,平成22年11月30日,自社が納入した商品の装飾等を行うために従業員等を派遣する納入業者に対して一定の金銭を負担する対策を講じたほか,同日以降,搬出及び搬入について,エディオンの従業員等でこれらに対応できるようにし,特定納入業者の従業員等に行わせないよう自社の関係者に指示するなどしていることから,同日以降,エディオンは前記2(2)の行為を取りやめていると認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば,エディオンは,自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に,継続して取引する相手方に対して,自己のために役務を提供させていたものであって,この行為は,独占禁止法第2条第9項第5号(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成21年法律第51号)の施行日である平成22年1月1日前においては平成21年公正取引委員会告示第18号による改正前の不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)の第14項)に該当し,独占禁止法第19条の規定に違反するものである。このため,エディオンは,独占禁止法第20条第2項において準用する独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者である。また,違反行為が長期間にわたって行われていたこと,違反行為の取りやめが公正取引委員会の審査開始を契機としたものであること等の諸事情を総合的に勘案すれば,特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって,エディオンに対し,独占禁止法第20条第2項の規定に基づき,主文のとおり命令する。
平成24年2月16日
公 正 取 引 委 員 会
委員長 竹 島 一 彦
委 員 後 藤 晃
委 員 神 垣 清 水
委 員 濵 田 道 代
委 員 細 川 清
別紙1
番号 用語 定義
1 納入業者 株式会社エディオン(以下「エディオン」という。)並びに別表2及び別表3記載の事業者並びにエディオンのフランチャイズ・チェーンに加盟する事業者が運営する店舗(以下「エディオンの店舗」という。)で販売する商品を,エディオンに直接販売して納入する事業者
2 新規開店 エディオンが,新たにエディオンの店舗を設置して,当該店舗の営業を開始すること
3 改装開店 エディオンが,既存のエディオンの店舗について,全面改装(一旦営業を取りやめた上で実施する売場の移動,売場面積の拡縮,設備の改修その他の改装をいう。)終了後に当該店舗の営業を再開すること又は部分改装(全面改装以外の改装をいう。)終了後に当該店舗の営業を再開すること
4 搬出 改装開店を実施するエディオンの店舗において,当該店舗内にある商品を梱包材で梱包し,又は折り畳み式のコンテナに収納して,売場から当該店舗の倉庫等のエディオンが指定する場所まで当該商品を運搬する改装開店前の作業
5 搬入 新規開店又は改装開店を実施するエディオンの店舗において,当該店舗の搬入口若しくは倉庫からエディオンが指定する売場まで,又は当該店舗の搬入口からエディオンが指定する当該店舗の倉庫まで商品を運搬する新規開店前又は改装開店前の作業
6 店作り 新規開店又は改装開店を実施するエディオンの店舗において,当該店舗の売場まで搬入された商品を開梱し,エディオンが指定する位置に当該商品の展示及び陳列を行い,エディオンが決定した装飾内容で販促物等による当該売場又は当該商品の装飾を行う新規開店前又は改装開店前の作業
7 仕入担当者 エディオンの店舗で販売する商品及び販売方針の決定並びに納入業者との間で商品の仕入れに係る商談等の業務を行うエディオンの従業員
8 店舗支援担当者 店作りに係る日程の立案,調整及び決定,助言及び指導等を行うエディオンの従業員
9 物流センター エディオン若しくは別表2若しくは別表3記載の事業者又はこれらの者との間で物流業務基本契約を締結した事業者が運営し,エディオンの店舗で販売する商品の保管並びに入荷及び出荷業務を行うための施設であり,新規開店前及び改装開店前に,納入業者から商品の納入が行われる施設
別紙2
茨城県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,長野県,岐阜県,静岡県,愛知県,三重県,滋賀県,京都府,大阪府,兵庫県,奈良県,和歌山県,鳥取県,島根県,岡山県,広島県,山口県,徳島県,香川県,愛媛県,高知県,福岡県,佐賀県,長崎県,熊本県,大分県,宮崎県,鹿児島県及び沖縄県
別表2 平成20年9月6日時点でエディオンの子会社であり,その後エディオンに吸収合併されたことにより消滅した事業者
番号 事業者 店舗名 事 由
1 株式会社デオデオ 「デオデオ」及び「ミドリ」(「ミドリ」については,平成21年10月以降に限る。) 平成21年10月1日に株式会社デオデオから株式会社エディオンWESTに商号を変更した後,平成22年10月1日にエディオンに吸収合併されたことにより消滅した。
2 株式会社エイデン 「エイデン」,「エディオン」及び「イシマル」(「エディオン」及び「イシマル」については,平成21年2月以降に限る。また,「エディオン」は,平成21年11月以降「イシマル」に変更されている。) 平成21年10月1日に株式会社エイデンから株式会社エディオンEASTに商号を変更した後,平成22年10月1日にエディオンに吸収合併されたことにより消滅した。
別表3 平成20年9月6日時点でエディオンの子会社であり,その後別表2記載の事業者に吸収合併されたことにより消滅した事業者
番号 事業者 店舗名 事 由
1 株式会社ミドリ電化 「ミドリ」 平成21年10月1日に株式会社デオデオに吸収合併されたことにより消滅した。
2 株式会社東京エディオン 「エディオン」 平成21年2月1日に株式会社エイデンに吸収合併されたことにより消滅した。
3 石丸電気株式会社 「イシマル」 平成21年2月1日に株式会社エイデンに吸収合併されたことにより消滅した。
平成24年2月16日