公正取引委員会審決等データベース

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アルミ電解コンデンサの製造販売業者らに対する件

独禁法3条後段

平成28年(措)第5号

排除措置命令

平成28年(措)第5号     
排 除 措 置 命 令 書

京都市中京区烏丸通御池上る二条殿町551番地
ニチコン株式会社
同代表者 代表取締役 吉 田 茂 雄

東京都品川区大崎五丁目6番4号
日本ケミコン株式会社
同代表者 代表取締役 内 山 郁 夫

長野県伊那市西箕輪1938番地1
ルビコン株式会社
同代表者 代表取締役 勝 山 修 一

公正取引委員会は,上記の者らに対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき,次のとおり命令する。

主    文
1 ニチコン株式会社(以下「ニチコン」という。),日本ケミコン株式会社(以下「日本ケミコン」という。)及びルビコン株式会社(以下「ルビコン」という。)の3社(以下「3社」という。)は,それぞれ,次の事項を,取締役会において決議しなければならない。
(1) アルミニウム箔(はく)表面に形成する酸化皮膜を誘電体とするコンデンサ(陰極に導電性ポリマーを利用するものを除く。以下「アルミ電解コンデンサ」という。)について,遅くとも平成22年2月18日までに3社及び日立エーアイシー株式会社(以下「日立エーアイシー」という。)の4社(以下「4社」という。)が共同して行った,販売価格を引き上げる旨の合意(日立エーアイシーにあっては,遅くとも同年3月2日までに参加したもの)が消滅していることを確認すること。
(2) 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,アルミ電解コンデンサの販売価格を決定せず,各社がそれぞれ自主的に決めること。
(3) 今後,相互に,又は他の事業者と,アルミ電解コンデンサの販売価格の改定に関して情報交換を行わないこと。
2 3社は,それぞれ,前項に基づいて採った措置を,自社を除く2社に通知するとともに,自社のアルミ電解コンデンサの需要者及び自社のアルミ電解コンデンサの取引先である商社等に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 3社は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,アルミ電解コンデンサの販売価格を決定してはならない。
4 3社は,今後,それぞれ,相互に,又は他の事業者と,アルミ電解コンデンサの販売価格の改定に関して情報交換を行ってはならない。
5 3社は,それぞれ,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については,前2項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず,かつ,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 自社の商品の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の改定及び自社の従業員に対する周知徹底(ルビコンにあっては当該行動指針の作成及び自社の従業員に対する周知徹底)
(2) アルミ電解コンデンサの販売活動に関する独占禁止法の遵守についての,アルミ電解コンデンサの営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査
6 3社は,それぞれ,第1項,第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

理    由
第1 事実
1 関連事実
(1) 名宛人等の概要
ア 3社は,それぞれ,肩書地に本店を置き,アルミ電解コンデンサを,需要者又は商社等(以下「需要者等」という。)に対して,直接販売していた。
イ 名宛人以外の日立エーアイシーは,栃木県真岡市久下田1065番地に本店を置き,アルミ電解コンデンサを,需要者等に対して,直接販売していた。
なお,日立エーアイシーは,平成21年10月1日付けで新町コンデンサ株式会社から現商号に変更するとともに,名宛人以外の日立化成エレクトロニクス株式会社(以下「日立化成エレクトロニクス」という。)からアルミ電解コンデンサの製造販売に係る事業を譲り受けた者であるが,平成24年4月1日,新神戸電機株式会社に対し,アルミ電解コンデンサの販売に係る事業等を譲渡し,同日以降,同事業等を営んでいない。
ウ 日立化成エレクトロニクスは,茨城県筑西市小川1500番地に本店を置き,アルミ電解コンデンサの製造販売に係る事業を営んでいた者であるが,平成21年10月1日付けで日立エーアイシー株式会社から現商号に変更するとともに,日立エーアイシーに対し,同事業を譲渡し,同日以降,同事業を営んでいない。
(2) アルミ電解コンデンサの取引形態等
ア 4社は,それぞれ,需要者等と直接交渉して,アルミ電解コンデンサの販売価格を定めていた。
イ アルミ電解コンデンサについて,3社の販売金額の合計は,我が国における総販売金額の大部分を占めており,また,ニチコンの販売金額は我が国における総販売金額の3割以上を占めていた。
2 合意の成立等
(1) 日本ケミコン,ルビコン及び日立化成エレクトロニクスは,遅くとも平成18年3月頃以降,マーケット研究会又はマーケティング研究会と称する会合(以下「マーケット研究会」という。)をおおむね毎月1回開催し,アルミ電解コンデンサの受注実績及びその見通し,原材料価格の動向,販売価格の引上げ等について情報交換を行っていた。また,3社及び日立化成エレクトロニクスは,遅くとも同月頃以降,営業責任者級の者らによる会合,個別の面談等を実施し,アルミ電解コンデンサの販売価格の引上げ,販売価格の改定に係る需要者等との交渉状況,原材料価格の動向等について情報交換を行うなどしていた。
(2)ア 日本ケミコン及びルビコンは,アルミ電解コンデンサの需要が増加したこと等から,アルミ電解コンデンサの販売事業に係る採算を改善するため,平成21年7月頃以降,アルミ電解コンデンサの販売価格を引き上げる必要があること,当該価格の引上げの進捗状況等を伝え合いつつ,需要者等に対し,当該価格の引上げを申し入れて交渉するなどした。
日本ケミコン及びルビコンは,同年9月頃以降,ニチコンに対し,当該価格を引き上げるかを繰り返し確認したものの,ニチコンが当該価格の引上げを開始しなかったこと等から,当該価格を十分に引き上げることができなかった。
イ(ア) 日本ケミコン及びルビコンは,平成22年1月頃,マーケット研究会,営業責任者級の者らによる連絡等を通じて,アルミ電解コンデンサの販売価格を引き上げる必要があること等を,それぞれ,3社のうち自社以外の2社に伝えるとともに,当該価格を引き上げるかをニチコンに確認した。
ニチコンは,同年2月上旬頃,自社もアルミ電解コンデンサの販売事業に係る採算を改善するため,当該価格を引き上げることとし,このことを,同月18日に開催されたマーケット研究会前までに,ニチコンは日本ケミコンに,日本ケミコンはルビコンに,それぞれ伝えた。
(イ) 平成22年2月18日,東京都豊島区に所在する豊島区民センターで開催されたマーケット研究会において,ルビコンは,アルミ電解コンデンサの販売価格を引き上げること等を日本ケミコンに伝え,日本ケミコンは,自社及びニチコンが当該価格を引き上げること等をルビコンに伝えた。
(ウ) これにより,3社は,遅くとも平成22年2月18日までに,アルミ電解コンデンサの販売価格を共同して引き上げることを合意した。
(エ) 日立エーアイシーは,遅くとも平成22年3月2日までに,日本ケミコン及びルビコンとの間で,営業責任者級の者らによる面談等を通じ,アルミ電解コンデンサの販売価格を引き上げること等を伝え合うことにより,前記(ウ)の合意に参加した。
3 実施状況等
(1) 4社は,マーケット研究会,営業責任者級の者らによる面談等を通じ,アルミ電解コンデンサの販売価格の改定に係る需要者等との交渉状況を伝え合う,需要者等に提示する見積価格を調整するなどして,前記2(2)イの合意の実効を確保していた。
(2) 4社は,前記2(2)イの合意に基づき,需要者等に対して,アルミ電解コンデンサの販売価格を引き上げる旨の申入れを行い,当該価格を引き上げるなどしていた。
4 合意の消滅
(1)ア 日本ケミコンは,平成23年3月11日に発生した東日本大震災によりアルミ電解コンデンサを製造していた自社の子会社等が被災したことに伴い,アルミ電解コンデンサの受注が減少し,その後も受注の回復が進まなかったことから,受注を確保するため,同年11月22日,アルミ電解コンデンサの販売価格を引き下げることを決定した。
イ 平成23年11月22日以降,日本ケミコンがアルミ電解コンデンサの販売価格を引き下げて他社の取引を奪う行動に出たことから,ニチコン及びルビコンも当該価格を引き下げた。
(2) このため,前記2(2)イの合意は,平成23年11月22日以降,事実上消滅しているものと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば,4社は,共同して,アルミ電解コンデンサの販売価格を引き上げる旨を合意することにより,公共の利益に反して,我が国におけるアルミ電解コンデンサの販売分野における競争を実質的に制限していたものであって,この行為は,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また,前記の違反行為は既になくなっているが,4社は,いずれも,独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり,3社については,長期にわたり違反行為を継続していたこと,かねてからアルミ電解コンデンサの販売価格の引上げ,販売価格の改定に係る需要者等との交渉状況,原材料価格の動向等に関する情報交換を行うなどの長期にわたる協調関係の下で違反行為を行っていたこと等の諸事情を総合的に勘案すれば,特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって,3社に対し,独占禁止法第7条第2項の規定に基づき,主文のとおり命令する。
平成28年3月29日

公 正 取 引 委 員 会

委員長 杉  本  和  行

委 員 小 田 切  宏  之

委 員 幕  田  英  雄

委 員 山  本  和  史

委 員 三  村  晶  子

平成28年3月29日

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