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3条後段
平成30年(措)第13号
平成30年(措)第13号
排 除 措 置 命 令 書
大阪市中央区難波五丁目1番5号
株式会社髙島屋
同代表者 代表取締役 《 氏 名 》
東京都千代田区二番町5番地25
株式会社そごう・西武
同代表者 代表取締役 《 氏 名 》
名古屋市中村区名駅一丁目2番1号
株式会社名鉄百貨店
同代表者 代表取締役 《 氏 名 》
大阪市北区梅田三丁目1番3号
伊藤忠商事株式会社
同代表者 代表取締役 《 氏 名 》
東京都千代田区飯田橋二丁目10番10号
オンワード商事株式会社
同代表者 代表取締役 《 氏 名 》
公正取引委員会は,上記の者らに対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき,次のとおり命令する。
なお,主文及び理由中の用語のうち,別紙「用語」欄に掲げるものの定義は,別紙「定義」欄に記載のとおりである。
主 文
1 株式会社髙島屋(以下「髙島屋」という。),株式会社そごう・西武(以下「そごう・西武」という。),株式会社名鉄百貨店(以下「名鉄百貨店」という。),伊藤忠商事株式会社(以下「伊藤忠商事」という。)及びオンワード商事株式会社(以下「オンワード商事」という。)の5社(以下「5社」という。)は,それぞれ,次の事項を,取締役会において決議しなければならない。
(1) 全日本空輸株式会社(以下「全日空」という。)が平成25年11月1日に説明会を開催して新規に調達を開始した別表記載の全日空向け制服(以下「本件全日空向け制服」という。)について,5社及び丸紅メイト株式会社(以下「丸紅メイト」という。)の6社(以下「6社」という。)が共同して行った,受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定し,受注予定者が受注できるようにする旨の合意が消滅していることを確認すること。
(2) 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,全日空向け制服について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に販売活動を行うこと。
2 5社は,それぞれ,前項に基づいて採った措置を,自社を除く4社及び全日空に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 5社は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,全日空向け制服について,受注予定者を決定してはならない。
4 5社は,それぞれ,第1項及び第2項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
理 由
第1 事実
1 関連事実
(1) 名宛人等の概要
ア 髙島屋及び名鉄百貨店は,それぞれ,肩書地に本店を置き,全日空に対し,本件全日空向け制服を販売していた。
イ そごう・西武は,肩書地に本店を置き,他の事業者を通じて,全日空に対し,本件全日空向け制服を販売していた。
ウ 伊藤忠商事は,肩書地に本店を置き,そごう・西武に対し,本件全日空向け制服の一部の品目を販売していた。
エ オンワード商事は,肩書地に本店を置き,直接又は他の事業者を通じて,髙島屋及びそごう・西武に対し,本件全日空向け制服の一部の品目を販売していた。
オ 名宛人以外の丸紅メイトは,東京都千代田区神田錦町三丁目20番地に本店を置き,他の事業者を通じて,髙島屋に対し,本件全日空向け制服の一部の品目を販売していた。
(2) 調達方法等
ア 全日空は,本件全日空向け制服について,カテゴリー(別表記載のものをいう。以下同じ。)ごとに,次の(ア)から(オ)の方法により調達した。
(ア) 平成25年11月1日の説明会に出席した者のうち本件全日空向け制服の受注を希望する者は,同年12月10日までに,カテゴリーごとに,完成品見本,原反引受証明書及び表地の試験鑑定証明書(以下「完成品見本等」という。)並びに見積書等を提出する。
(イ) 見積書については,カテゴリーごとに,品目ごとの単価及び各単価の合計額(以下「見積価格」という。)等を記載する。
(ウ) 受注者については,カテゴリーごとに,完成品見本等の品質等が全日空の求める一定の基準を満たした複数の者のうち,価格交渉した結果,最も低い見積価格を提示した者とする。
(エ) 本件全日空向け制服の初回分の納入は,平成26年12月1日から開始し平成27年1月31日までに完了する。その後,受注者と本件全日空向け制服の継続的売買契約を締結する。契約期間については,平成27年2月1日から3年間とし,カテゴリーごとの各品目について単価契約を締結する。また,平成30年2月1日から7年間は,契約当事者による契約を終了する旨の通知がない場合,毎年,同一条件により契約期間を1年間延長する。
(オ) 受注者は,全日空の依頼により,広域的処理認定業者を取引に介在させた上で本件全日空向け制服を販売することとされた。このため,受注者のうち,髙島屋及び名鉄百貨店は,本件全日空向け制服を広域的処理認定業者から購入した上で全日空に対して販売し,そごう・西武は,本件全日空向け制服を広域的処理認定業者を通じて全日空に対して販売した。
イ 全日空は,本件全日空向け制服に係るデザイナーの選定,生地の検討,仕様書の企画・作成,説明会資料の作成等に関する業務について,平成24年12月1日,オンワード商事との間で「デザイナー選定に関するアドバイザリー業務等委託契約」を締結し,その際に,オンワード商事に対し,秘密保持義務を課していた。また,全日空は,前記契約の締結を理由として,オンワード商事からの本件全日空向け制服の調達を予定しておらず,平成25年11月1日の説明会に同社を参加させなかった。
2 合意の成立
6社は,遅くとも平成25年12月6日までに,本件全日空向け制服について
(1) カテゴリー1は髙島屋,カテゴリー2及びカテゴリー3はそごう・西武,カテゴリー4は名鉄百貨店をそれぞれ受注予定者とすること
(2)ア 6社のうちオンワード商事を除く者らは,カテゴリーごとの受注予定者 の見積価格がそれぞれ最も低い価格となるようにし,受注予定者以外の者 は受注予定者よりも高い見積価格を提示等すること
イ オンワード商事は,6社のうち同社を除く者らに対して本件全日空向け制服の完成品見本等を事前に提供し,特に,カテゴリーごとの受注予定者には仕様書の基準に合致した品質の完成品見本等を事前に提供すること
により受注予定者が受注できるようにすること
を合意した。
3 実施状況等
(1) 6社は,前記2の合意に基づき,次のとおり,本件全日空向け制服について,カテゴリーごとの受注予定者が受注できるようにしていた。
ア 6社のうちオンワード商事を除く者らは,カテゴリーごとの受注予定者が最も低い見積価格になるように調整するなどして,髙島屋がカテゴリー1を,そごう・西武がカテゴリー2を,名鉄百貨店がカテゴリー4を,それぞれ受注した。
イ オンワード商事は,6社のうち同社を除く者らに本件全日空向け制服の完成品見本等を提供し,特に,カテゴリーごとの受注予定者等には仕様書の基準に合致した品質の完成品見本等を提供するなどした。
(2) 受注者以外の者については,伊藤忠商事はそごう・西武に,オンワード商事は髙島屋及びそごう・西武に,丸紅メイトは髙島屋に,それぞれ本件全日空向け制服の一部の品目を直接又は他の事業者を通じて販売した。
4 合意の消滅等
(1) 伊藤忠商事は,平成28年9月13日,公正取引委員会が平成30年(措)第4号により措置を命じた事件について,同社らの営業所に独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行ったことを契機として,同日以降,社内調査を継続的に実施し,関係部門の従業員に対して本件全日空向け制服を含め独占禁止法に抵触する疑いのある行為を行わないことを周知徹底した。その後,同社は,平成29年3月27日までに,髙島屋,そごう・西武,オンワード商事,丸紅メイト等に対して法令違反の疑いを受けるおそれのある行為を行わない旨を通知した。これらにより同社は,同日以降,前記2の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を行っていないものと認められる。
(2) 平成29年5月23日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法第47条第1項第1号の規定に基づく報告命令を行ったところ,同日以降,前記2の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為は行われていない。このため,同日以降,前記2の合意は事実上消滅しているものと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば,6社は,共同して,本件全日空向け制服について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする旨を合意することにより,公共の利益に反して,本件全日空向け制服の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,この行為は,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また,前記の違反行為は既になくなっているが,5社については,いずれも,独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり,違反行為の取りやめが公正取引委員会の審査開始を契機としたものであること等の諸事情を総合的に勘案すれば,特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって,5社に対し,独占禁止法第7条第2項の規定に基づき,主文のとおり命令する。
平成30年7月12日
委員長 杉 本 和 行
委 員 山 本 和 史
委 員 三 村 晶 子
委 員 青 木 玲 子
委 員 小 島 吉 晴