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独禁法3条後段
令和元年(措)第1号
山形市若葉町13番45号
コーアイセイ株式会社
同代表者 代表取締役 《 氏 名 》
公正取引委員会は,上記の者に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき,次のとおり命令する。
なお,主文及び理由中の用語のうち,別紙「用語」欄に掲げるものの定義は,別紙「定義」欄に記載のとおりである。
主 文
1 コーアイセイ株式会社(以下「コーアイセイ」という。)は,次の事項を,取締役会において決議しなければならない。
(1) 炭酸ランタン水和物口腔内崩壊錠の後発医薬品(以下「後発炭酸ランタンOD錠」という。)に関し,遅くとも平成30年8月上旬までに,コーアイセイ及び日本ケミファ株式会社(以下「日本ケミファ」という。)の2社(以下「2社」という。)が共同して行った,仕切価について,日本ケミファが同年7月20日にコーアイセイに対して提示した価格を目途とする旨の合意が消滅していることを確認すること。
(2) 今後,他の事業者と共同して,後発炭酸ランタンOD錠の仕切価を決定せず,自主的に決めること。
(3) 今後,他の事業者と,後発炭酸ランタンOD錠の仕切価に関して情報交換を行わないこと。
2 コーアイセイは,前項に基づいて採った措置を,日本ケミファに通知するとともに,自社の取引先である後発炭酸ランタンOD錠の卸売業者に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 コーアイセイは,今後,他の事業者と共同して,後発炭酸ランタンOD錠の仕切価を決定してはならない。
4 コーアイセイは,今後,他の事業者と,後発炭酸ランタンOD錠の仕切価に関する情報交換を行ってはならない。
5 コーアイセイは,第1項及び第2項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
理 由
第1 事実
1 関連事実
(1) 名宛人等の概要
ア コーアイセイは,肩書地に本店を置き,後発炭酸ランタンOD錠を製造していた。
イ 名宛人以外の日本ケミファは,東京都千代田区岩本町二丁目2番3号に本店を置き,後発炭酸ランタンOD錠をコーアイセイに委託し製造させていた。
(2) 医療用医薬品に係る規制
ア 医療用医薬品が保険医療において使用されるためには,「使用薬剤の薬価(薬価基準)」(厚生労働省告示。以下「薬価基準」という。)に収載されなければならない。
イ 医療用医薬品の製造販売業者は,保険医療機関及び保険薬局(以下「保険医療機関等」という。)に対し,薬価基準に収載された医療用医薬品を継続して供給することとされており,特に,後発医薬品については,その使用促進を図るために,原則として,少なくとも5年間,継続して製造販売し,保険医療機関等からの注文に迅速に対応できるよう必要な在庫を確保するなど安定供給に努めることとされている。
(3) 後発炭酸ランタンOD錠の販売開始準備
ア 2社の間で,平成29年2月17日,後発炭酸ランタンOD錠に関する共同開発契約が締結され,日本ケミファが自社製品とする後発炭酸ランタンOD錠の全量について,コーアイセイに製造委託されることとなった。
イ 2社は,平成29年8月以降,後発炭酸ランタンOD錠の販売に向けて打合せを行っており,後発炭酸ランタンOD錠について,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)の規定に基づく製造販売についての厚生労働大臣の承認(以下「製造販売承認」という。)を受けた平成30年2月15日以降は,日本ケミファに対する後発炭酸ランタンOD錠の納入数量等に関して頻繁に打合せを行うようになった。
ウ 2社が自社製品とする後発炭酸ランタンOD錠は,それぞれ,平成30年6月15日,薬価基準に収載された。同日から同年10月24日までの間,薬価基準には2社が自社製品とする後発炭酸ランタンOD錠のみが収載されていた。
2 合意の成立
(1)ア 2社は,平成30年6月20日,後発炭酸ランタンOD錠について安売りはしない旨を相互に確認した。
イ 日本ケミファは,平成30年7月20日,コーアイセイに対して,自社製品とする後発炭酸ランタンOD錠の仕切価を提示した上,これを目途にコーアイセイが自社製品とする後発炭酸ランタンOD錠の仕切価を合わせるよう依頼した。
ウ コーアイセイは,前記イの依頼に応じ,平成30年8月上旬,日本ケミファに対し,自社製品とする後発炭酸ランタンOD錠の仕切価を前記イにより日本ケミファから提示された価格を目途とする旨を回答した。
(2) 前記(1)により,2社は,遅くとも平成30年8月上旬までに,後発炭酸ランタンOD錠の仕切価について,低落を防止し自社の利益の確保を図るため,日本ケミファが同年7月20日にコーアイセイに対して提示した価格(以下「日本ケミファ提示価格」という。)を目途とする旨を合意した。
3 実施状況等
(1) コーアイセイは,前記2(2)の合意に基づき,卸売業者に対し,後発炭酸ランタンOD錠をおおむね日本ケミファ提示価格で販売していた。
(2) 日本ケミファは,前記2(2)の合意に基づき,平成30年9月下旬頃,卸売業者に対し,後発炭酸ランタンOD錠を日本ケミファ提示価格で販売することとしていたが,コーアイセイから安定供給に必要な量の後発炭酸ランタンOD錠の供給を受けられなかったことから,後発炭酸ランタンOD錠の販売を開始しなかった。
4 合意の消滅
日本ケミファは,平成30年10月24日,課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第7号)第1条第1項の規定に基づき,公正取引委員会に対して様式第1号による報告書を提出するとともに,後発炭酸ランタンOD錠の自社の営業担当者等に対して他の事業者と後発炭酸ランタンOD錠の仕切価を話し合って決定すること等を行わない旨の指示を行い,同日以降,前記2(2)の合意に基づく行為を行っていない。このため,同日以降,前記2(2)の合意は事実上消滅しているものと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば,2社は,共同して,後発炭酸ランタンOD錠の仕切価について,日本ケミファ提示価格を目途とする旨を合意することにより,公共の利益に反して,我が国における後発炭酸ランタンOD錠の販売分野における競争を実質的に制限していたものであって,この行為は,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また,前記の違反行為は既になくなっているが,コーアイセイについては,独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり,違反行為が自主的に取りやめられたものではないこと等の諸事情を総合的に勘案すれば,特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって,コーアイセイに対し,独占禁止法第7条第2項の規定に基づき,主文のとおり命令する。
令和1年6月4日
委員長 杉 本 和 行
委 員 山 本 和 史
委 員 三 村 晶 子
委 員 青 木 玲 子
委 員 小 島 吉 晴