文字サイズの変更
背景色の変更
独禁法19条(2条9項4号)
令和元年(措)第3号
大阪市中央区島之内一丁目13番13号
アップリカ・チルドレンズプロダクツ合同会社
同代表者 代表社員 《 氏 名 》
同代表社員職務執行者 《 氏 名 》
公正取引委員会は,上記の者に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第20条第2項の規定に基づき,次のとおり命令する。
なお,主文及び理由中の用語のうち,別紙「用語」欄に掲げるものの定義は,別紙「定義」欄に記載のとおりである。
主 文
1 アップリカ・チルドレンズプロダクツ合同会社(以下「アップリカ」という。)は,次の事項を,業務執行の決定機関において確認しなければならない。
(1) アップリカの育児用品の販売に関し,遅くとも平成28年5月頃以降行っていた,自ら又は取引先卸売業者を通じて,小売業者に,アップリカが定める「提案売価」等と称する価格(以下「提案売価」という。)で販売するようにさせる行為を行っていないこと。
(2) 今後,アップリカの育児用品の販売に関し,前記(1)の行為と同様の行為を行わないこと。
2 アップリカは,前項に基づいて採った措置を,取引先卸売業者及び小売業者に通知するとともに,一般消費者に周知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知,周知及び周知徹底の方法については,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 アップリカは,今後,アップリカの育児用品の販売に関し,第1項(1)の行為と同様の行為を行ってはならない。
4 アップリカは,卸売業者及び小売業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての,従業員に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については,前項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず,かつ,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
5 アップリカは,第1項,第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
理 由
第1 事実
1 関連事実
(1) 名宛人の概要
アップリカは,肩書地に本店を置き,育児用品の販売業等を営む者である。
(2) アップリカの育児用品の販売方法等
ア アップリカは,アップリカの育児用品を,自ら又は取引先卸売業者を通じて小売業者に販売するほか,インターネットを利用した販売により自ら一般消費者に販売していた。
イ アップリカは,アップリカの育児用品に係る提案売価について,自ら又は取引先卸売業者を通じて,小売業者に,文書を配布するなどして周知していた。
ウ アップリカの育児用品は,育児用品の中でも一般消費者からの認知度が高く,一般消費者の中にはアップリカの育児用品を指名して購入する者も少なくないことから,育児用品を販売する小売業者にとって,品ぞろえに加えておくことが重要な商品となっていた。
2 小売業者に提案売価で販売するようにさせていた行為
アップリカは,遅くとも平成28年5月頃以降,次の行為を行うことにより,小売業者にアップリカの育児用品を提案売価で販売するようにさせていた。
(1) 提案売価を下回る販売価格(以下「逸脱売価」という。)でアップリカの育児用品を販売している又は販売しようとしている小売業者を把握するため,次の行為を行っていた。
ア 小売業者のアップリカの育児用品の販売価格を自ら定期的に調査していた。
イ 小売業者のチラシの配布に先立ち,当該チラシに掲載されるアップリカの育児用品の販売価格を自ら確認し又は取引先卸売業者をして確認させていた。
ウ 取引先卸売業者及び小売業者から,逸脱売価でアップリカの育児用品を販売している小売業者に関する苦情を受け付けていた。
(2) 前記(1)の行為により,逸脱売価でアップリカの育児用品を販売している又は販売しようとしていることが判明した小売業者に,提案売価で販売するよう,自ら要請を行い又は取引先卸売業者をして要請を行わせていた。
(3) 前記(2)の要請にもかかわらず,逸脱売価でアップリカの育児用品を販売し続ける小売業者に対しては,アップリカの育児用品の出荷を停止し,又は取引先卸売業者をして当該小売業者に対するアップリカの育児用品の出荷を停止させるなどしていた。
3 実施状況
アップリカの前記2の行為により,小売業者は,アップリカの育児用品を,おおむね提案売価で販売していた。
4 前記2の行為の消滅等
(1) 平成30年4月18日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行った後も,アップリカは,同年8月頃まで,小売業者に,アップリカの育児用品を提案売価で販売するようにさせていた。
(2) アップリカの法務担当者は,平成30年8月頃に前記2の行為を行わないよう自社の営業責任者に指示したところ,それ以降,アップリカは,前記2(1)から(3)までの行為を行っていないことなどから,前記2の行為は事実上消滅しているものと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば,アップリカは,正当な理由がないのに,小売業者に,提案売価を維持させる条件を付けてアップリカの育児用品を供給し,取引先卸売業者に,当該取引先卸売業者をしてその取引先である小売業者に提案売価を維持させる条件を付けてアップリカの育児用品を供給していたものであって,この行為は,独占禁止法第2条第9項第4号イ及びロに該当し,独占禁止法第19条の規定に違反するものである。
また,前記の違反行為は既になくなっているが,アップリカは,独占禁止法第20条第2項において準用する独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり,公正取引委員会の立入検査後もなお違反行為を継続していたこと等の諸事情を総合的に勘案すれば,特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって,アップリカに対し,独占禁止法第20条第2項の規定に基づき,主文のとおり命令する。
令和1年7月1日
委員長 杉 本 和 行
委 員 山 本 和 史
委 員 三 村 晶 子
委 員 青 木 玲 子
委 員 小 島 吉 晴