公正取引委員会審決等データベース

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カルバン錠の販売業者らに対する件

独禁法3条後段

令和2年(措)第1号

排除措置命令

東京都中央区日本橋本町三丁目4番1号
鳥居薬品株式会社
同代表者 代表取締役 《 氏  名 》

公正取引委員会は,上記の者に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき,次のとおり命令する。
なお,主文及び理由中の用語のうち,別紙「用語」欄に掲げるものの定義は,別紙「定義」欄に記載のとおりである。

主    文
1 鳥居薬品株式会社(以下「鳥居薬品」という。)は,次の事項を,取締役会において決議しなければならない。
(1) カルバン錠に関し,遅くとも平成26年3月5日以降,鳥居薬品及び日本ケミファ株式会社(以下「日本ケミファ」という。)の2社(以下「2社」という。)が共同して行っていた,仕切価を合わせる旨の合意が消滅していることを確認すること。
(2) 今後,他の事業者と共同して,カルバン錠の仕切価を決定せず,自主的に決めること。
(3) 今後,他の事業者と,カルバン錠の仕切価に関して情報交換を行わないこと。
2 鳥居薬品は,前項に基づいて採った措置を,日本ケミファに通知するとともに,自社の取引先であるカルバン錠の卸売業者に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 鳥居薬品は,今後,他の事業者と共同して,カルバン錠の仕切価を決定してはならない。
4 鳥居薬品は,今後,他の事業者と,カルバン錠の仕切価に関する情報交換を行ってはならない。
5 鳥居薬品は,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については,前2項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず,かつ,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 自社の商品の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の改定及び自社の従業員に対する周知徹底
(2) カルバン錠の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての,カルバン錠の販売に関する業務に従事する役員及び従業員に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査
6 鳥居薬品は,第1項,第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

理    由
第1 事実
1 関連事実
(1) 名宛人等の概要
ア 鳥居薬品は,肩書地に本店を置き,カルバン錠を販売していた。
イ 名宛人以外の日本ケミファは,東京都千代田区岩本町二丁目2番3号に本店を置き,カルバン錠を自社の子会社に委託して製造させ販売していた。
(2) カルバン錠の薬価等
ア 医療用医薬品が保険医療において使用されるためには,「使用薬剤の薬価(薬価基準)」(厚生労働省告示。以下「薬価基準」という。)に収載されなければならない。
イ 医療用医薬品の薬価は,保険医療機関及び保険薬局が薬剤の支給に要する単位当たりの平均的な費用の額として銘柄ごとに薬価基準により定められており,当該薬価は,厚生労働省が定期的に実施する調査の結果に基づき,全面的な改定(以下「薬価改定」という。)が行われている。平成26年3月から平成31年1月までの間においては,平成26年4月,平成28年4月及び平成30年4月に薬価改定が行われていた。
ウ カルバン錠は,平成7年5月26日以降,薬価基準に収載されていた。
(3) カルバン錠の販売状況等
ア 鳥居薬品は,日本ケミファからカルバン錠を購入し,自社商品としてカルバン錠を卸売業者に対して販売していた。
イ 日本ケミファは,自社商品としてカルバン錠を卸売業者に対して販売していた。
ウ 2社は,遅くとも平成26年3月以降,薬価改定に伴い,それぞれ,自社のカルバン錠の仕切価を改定していた。
エ 我が国において,自社商品としてカルバン錠を販売しているのは,2社のみである。
2 合意及び実施方法
2社は,かねてから,薬価改定に伴い改定するカルバン錠の仕切価に関して情報交換を行っていたところ,遅くとも平成26年3月5日以降,仕切価の低落を防止し自社の利益を確保するため,2社のカルバン錠の仕切価を合わせる旨の合意の下に,薬価改定が行われることとなった場合には2社の営業部課長級の者らによる会合を開催するなどして,カルバン錠の仕切価を同一の価格又はおおむね同一の価格とすることを決定していた。
3 実施状況
2社は,前記2の合意に基づき,卸売業者に対し,カルバン錠を同一の価格又はおおむね同一の価格で販売していた。
4 合意の消滅
日本ケミファは,平成31年1月24日,課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第7号)第1条第1項の規定に基づき,公正取引委員会に対して様式第1号による報告書を提出するとともに,カルバン錠の自社の営業担当者等に対して他の事業者とカルバン錠の仕切価を話し合って決定すること等を行わない旨の指示を行い,同日以降,前記2の合意に基づく行為を行っていない。このため,同日以降,前記2の合意は事実上消滅しているものと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば,2社は,共同して,カルバン錠の仕切価を合わせる旨を合意することにより,公共の利益に反して,我が国におけるカルバン錠の販売分野における競争を実質的に制限していたものであって,この行為は,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また,前記の違反行為は既になくなっているが,鳥居薬品については,独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり,違反行為が自主的に取りやめられたものではないこと等の諸事情を総合的に勘案すれば,特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって,鳥居薬品に対し,独占禁止法第7条第2項の規定に基づき,主文のとおり命令する。

令和2年3月5日

委員長 杉  本  和  行
委 員 山  本  和  史
委 員 三  村  晶  子
委 員 青  木  玲  子
委 員 小  島  吉  晴

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