公正取引委員会審決等データベース

文字サイズの変更

背景色の変更

本文表示content

マイナミ空港サービス株式会社に対する件

独禁法3条前段

令和2年(措)第9号

排除措置命令

東京都港区元赤坂一丁目7番8号
 マイナミ空港サービス株式会社
  同代表者 代表取締役 《 氏  名 》

公正取引委員会は,上記の者に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第1項の規定に基づき,次のとおり命令する。
なお,主文及び理由中の用語のうち,別紙「用語」欄に掲げるものの定義は,別紙「定義」欄に記載のとおりである。

主    文
1 マイナミ空港サービス株式会社(以下「マイナミ空港サービス」という。)は,八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売に関して
(1) 自社の取引先需要者に対し,《航空燃料販売業者A》(以下「《販売業者A》」という。)の航空燃料と自社の航空燃料の混合に起因する航空機に係る事故等に自社は責任を負えないなどとして,自社の取引先需要者が《販売業者A》から機上渡し給油を受けた場合には自社からの給油は継続できない旨等を通知する
(2) 《販売業者A》から機上渡し給油を受けた自社の取引先需要者からの給油に係る依頼に応じる条件として,《販売業者A》の航空燃料と自社の航空燃料の混合に起因する航空機に係る事故等が発生した場合でもマイナミ空港サービスに責任の負担を求めない旨等が記載された文書への署名又は抜油を求める
ことにより,自社の取引先需要者に《販売業者A》から機上渡し給油を受けないようにさせている行為を取りやめなければならない。
2 マイナミ空港サービスは,前項の行為を取りやめる旨及び今後,前項の行為と同様の行為を行わない旨を,取締役会において決議しなければならない。
3 マイナミ空港サービスは,前2項に基づいて採った措置を,自社の取引先需要者及び《販売業者A》に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
4 マイナミ空港サービスは,今後,第1項の行為と同様の行為を行ってはならない。
5 マイナミ空港サービスは,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については,前項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず,かつ,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 航空燃料の販売事業に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成並びに自社の役員及び従業員に対する周知徹底
(2) 航空燃料の販売事業に関する独占禁止法の遵守についての,自社の役員及び従業員に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査
6 マイナミ空港サービスは,第1項ないし第3項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

理    由
第1 事実
1 関連事実
(1) 名宛人の概要等
ア マイナミ空港サービスは,肩書地に本店を置き,航空燃料の販売業を営む者であり,成田国際空港,東京国際空港,中部国際空港,関西国際空港,大阪国際空港,新千歳空港,広島空港,八尾空港,名古屋飛行場,東京都東京ヘリポート及び広島ヘリポート(以下これらの空港等を総称して「11空港等」という。)において,国内の石油元売会社から仕入れた航空燃料を給油会社として販売している。
イ マイナミ空港サービスは,航空燃料の継続的な売買に係る契約(以下「継続売買契約」という。)を締結するなどした需要者に対して,航空燃料を販売している。
ウ マイナミ空港サービスは,11空港等以外の一部の空港等に所在する給油会社(以下「提携先給油会社」という。)等に対して自社の取引先需要者への機上渡し給油に係る業務を委託するなどしている。これにより,マイナミ空港サービスと継続売買契約を締結した取引先需要者は,11空港等において給油を行うマイナミ空港サービスに加えて提携先給油会社からも給油を受けることができるなど,かかる仕組みは当該取引先需要者にとって利便性が高いものである。
エ 平成28年12月以降令和元年11月までの間,11空港等のうち,名古屋飛行場及び広島ヘリポートにおける給油会社はマイナミ空港サービスのみである。
(2) 《販売業者A》の概要等
ア 《販売業者A》は,《所在地》に本店を置き,航空事業,航空燃料の販売業等を営む者であり,八尾空港,佐賀空港等において,給油会社として航空燃料を販売している。
イ 《販売業者A》は,平成24年8月頃から,国外の石油精製業者から輸入した航空燃料を需要者に対して販売している。
ウ 《販売業者A》は,八尾空港等において販売する航空燃料について,当該航空燃料の輸出元である国外の石油精製業者から,当該航空燃料が後記(5)の国際的な標準規格に適合することを示す品質証明書の発行を受けており,また,輸入した航空燃料について,その成分の分析を国内の石油製品分析会社に依頼し,その結果の報告を受けている。《販売業者A》は,発行された品質証明書等を自社の取引先需要者に配布するなどしている。
(3) 八尾空港の概要等
ア 八尾空港は,大阪府八尾市に所在し,国土交通大臣によって設置され管理される空港である。
イ 八尾空港における給油会社は,平成28年11月1日より前はマイナミ空港サービスのみであったが,同日,《販売業者A》が同空港での航空燃料の販売を開始し,それ以降は,マイナミ空港サービス及び《販売業者A》の2社である。
ウ 八尾空港においてマイナミ空港サービス及び《販売業者A》がそれぞれ販売する航空燃料の油種・等級は,ジェット燃料であるJet A-1及び航空ガソリンであるAVGAS100LLである。
エ 八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の総供給量のうち,マイナミ空港サービスの機上渡し給油による航空燃料の供給量が占める割合は,平成29年度及び平成30年度(平成30年4月1日から平成31年1月31日までをいう。以下同じ。)のいずれも8割を超えていた。
(4) 《団体B》の概要等
ア 《団体B》は,八尾空港において航空事業等を営む法人等を会員とする任意団体である。
イ 《団体Bの構成員》(以下「《団体B構成員》」という。)のうち,後記2(2)アの通知を受けた11名(以下「《団体B構成員11名》」という。)は,全て八尾空港の給油会社から機上渡し給油を受ける需要者である。
八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の総供給量に占める《団体B構成員11名》に対する機上渡し給油による航空燃料の供給量の割合は,平成29年度及び平成30年度のいずれも約8割であった。
(5) 同油種・同等級の航空燃料の混合等
Jet A-1及びAVGAS100LLについては,国際的な標準規格が存在する。また,Jet A-1については,国際的な標準規格に準拠して作成された国内の規格が存在する。
航空機が使用すべき航空燃料の油種・等級については,航空法施行規則(昭和27年運輸省令第56号)に基づき,個々の航空機について作成され国土交通省航空局が承認した飛行規程において指定されているところ,航空法(昭和27年法律第231号),同法施行規則等には,同油種・同等級の航空燃料の混合を禁止又は制限する規定は存在しない。
また,通常,航空機を飛行させる者は,各地の空港等を利用しており,必要に応じて,それら空港等における給油会社から機上渡し給油を受けている。そのため,航空機の燃料タンク内では,異なる給油会社から給油を受けた同油種・同等級の航空燃料の混合が生じているが,運輸安全委員会(平成13年9月30日以前は航空事故調査委員会を,また,同年10月1日から平成20年9月30日までは航空・鉄道事故調査委員会をいう。)による航空事故調査が開始された昭和49年以降,同委員会が公表した事故調査報告書には,令和2年1月31日時点において,同油種・同等級の航空燃料が混合したことに起因した航空事故等に係る記載はない。
2 マイナミ空港サービスによる自社の取引先需要者に対する行為等
(1) 後記(2)の行為前におけるマイナミ空港サービスの対応等
マイナミ空港サービスは,平成27年6月中旬頃,《販売業者A》が八尾空港における航空燃料の販売事業に参入する旨の情報に接したことから,《団体B構成員》等に対し,八尾空港における航空燃料の需要は自社からの供給により既に満たされており,《販売業者A》の参入によって,その供給を巡り自社との間で過当競争を引き起こすこととなるとして,その参入に反対である旨伝えていた。
また,平成27年9月頃には,マイナミ空港サービスは,《団体B構成員》に対し,《販売業者A》の参入に反対する理由として,更に同社の航空燃料の品質管理等に係る問題点についての自社の見解を伝えるとともに,《販売業者A》と自社の航空燃料が混合した航空機で事故が起こった場合,当該事故の原因として自社の航空燃料も疑われるおそれがあるなどとして,《販売業者A》から機上渡し給油を受けた航空機には自社は給油を行えない旨伝えていた。
(2) マイナミ空港サービスによる自社の取引先需要者に対する行為
平成28年11月1日,《販売業者A》が八尾空港における給油会社として航空燃料の販売を開始したところ,マイナミ空港サービスは,八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売に関して,次のとおり,自社の取引先需要者に《販売業者A》から機上渡し給油を受けないようにさせている。
ア マイナミ空港サービスは,平成28年12月7日,《団体B構成員11名》に対して,《販売業者A》のように国内の石油元売会社から航空燃料を仕入れていない給油会社はその取扱いに係る知識及び理解が不足していることが多いとした上で,《販売業者A》の航空燃料と自社の航空燃料の混合に起因する航空機に係る事故等に自社は責任を負えないなどとして,《販売業者A》から機上渡し給油を受けた場合,自社からの給油の継続はできない旨及び提携先給油会社からの給油の継続は困難になる旨を同日付けの文書により通知している。
イ マイナミ空港サービスは,《団体B構成員11名》のうちの1名が八尾空港における航空燃料の買入れ契約の相手方を《販売業者A》に決定したことを受けて,その者に対して,平成29年2月10日,《販売業者A》の航空燃料は自社が国内の石油元売会社から仕入れている航空燃料と同等の品質管理を経ているとはいえず,《販売業者A》の航空燃料と自社の航空燃料が混合した場合,航空機に係る事故が発生した際の原因の追究が困難になるなどとして,自社が契約の相手方となれない期間においては,八尾空港,名古屋飛行場,広島ヘリポート等における機上渡し給油による航空燃料の販売を停止する旨を同日付けの文書により通知している。
ウ マイナミ空港サービスは,平成29年3月15日頃,《団体B構成員11名》を含む約250名の自社の取引先需要者に対して,《販売業者A》の航空燃料と自社の航空燃料の混合に起因する航空機に係る事故等に自社は責任を負えないなどとして,《販売業者A》から機上渡し給油を受けた場合,自社からの給油の継続はできない旨を同日付けの文書により通知している。
エ マイナミ空港サービスは,平成29年5月中旬頃以降,《販売業者A》から機上渡し給油を受けた需要者からの給油に係る依頼に応じる条件として,当該需要者に対し,《販売業者A》の航空燃料と自社の航空燃料が混合したことに起因した航空機に係る事故等が発生した場合でも自社に責任の負担を求めない旨等が記載された文書への署名を求め,これに応じない場合には,抜油を求めている。
3 前記2(2)の行為による影響等
(1) マイナミ空港サービスの取引先需要者の中には,同社の前記2(2)の行為により,前記1(1)ウの仕組みを利用した機上渡し給油を受けられなくなることなどを懸念して,《販売業者A》から機上渡し給油を受けることを回避している者等がいる。
(2) 前記2(2)イの通知を受けた者は,それ以降,名古屋飛行場,広島ヘリポート等の利用を回避している状況にある。
(3) 《販売業者A》から機上渡し給油を受けた需要者であって,マイナミ空港サービスから前記2(2)エの文書への署名を求められ,これに応じて署名をした者の中には,自社の航空事業に支障が生じることなどを考慮してやむを得ず署名し,マイナミ空港サービスから機上渡し給油を受けた者がいる。他方,《販売業者A》から機上渡し給油を受けた需要者であって,マイナミ空港サービスからの前記2(2)エの文書への署名又は抜油の求めを拒否した者の中には,マイナミ空港サービスから機上渡し給油を受けられなかった者がいる。
(4) 《販売業者A》は,平成29年5月中旬頃,マイナミ空港サービスに対し,前記2(2)ウの文書は,客観的な根拠なく自社の信用を毀損しかねず事業活動を妨害するものであるなどとして,その撤回を求めるなどしたが,マイナミ空港サービスは応じなかった。
第2 法令の適用
前記事実によれば,マイナミ空港サービスは,八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売に関して,自社の取引先需要者に《販売業者A》から機上渡し給油を受けないようにさせていることによって,《販売業者A》の事業活動を排除することにより,公共の利益に反して,八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売分野における競争を実質的に制限しているものであって,この行為は,独占禁止法第2条第5項に規定する私的独占に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
よって,マイナミ空港サービスに対し,独占禁止法第7条第1項の規定に基づき,主文のとおり命令する。

令和2年7月7日

委員長 杉  本  和  行
委 員 山  本  和  史
委 員 三  村  晶  子
委 員 青  木  玲  子
委 員 小  島  吉  晴

ページトップへ

ページトップへ