文字サイズの変更
背景色の変更
独禁法66条3項(独禁法19条〔2条9項5号〕,独禁法20条の6)
東京高等裁判所
平成31年(行ケ)第9号
令和2年12月11日
岡山市南区平福一丁目305番地の2
原告 株式会社山陽マルナカ
同代表者代表取締役 《氏名略》
同訴訟代理人弁護士 長澤哲也
同 酒匂景範
同 小田勇一
同 吉村幸祐
東京都千代田区霞が関一丁目1番1号
被告 公正取引委員会
同代表者委員長 古谷一之
同指定代理人 宮本信彦
同 榎本勤也
同 堤 優子
同 鵜飼正明
同 近藤彩夏
同 島田成久
主文
1 公正取引委員会平成23年(判)第82号及び第83号審判事件について,被告が平成31年2月20日付けで原告に対してした審決のうち,主文第1項及び第3項を取り消す。
2 訴訟費用は,被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
主文と同旨
第2 事案の概要
1 事案の要旨
本件は,原告が,被告に対し, 原告に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成25年法律第100号による改正前のもの。以下,特に断りのない限り,「独占禁止法」という。)に基づく排除措置命令審判事件(公正取引委員会平成23年(判)第82号事件)及び課徴金納付命令審判事件(同委員会同年(判)第83号事件)について,被告が原告に対して平成31年2月20日付けでした審決(以下「本件審決」といい,その審決書を「本件審決書」 という。)のうち,原告の審判請求を排斥した部分の取消しを求める事案である。
2 前提事実
以下の事実は,本件審決で認定された事実で原告が実質的な証拠の欠缺を主張していないか,本件審決に係る記録から容易に認めることができる。
⑴ 原告は,岡山市南区に本店を置き,衣料品,食料品等の小売業等を目的とする資本金2500万円の株式会社であり,岡山県(平成22年5月当時55店舗),大阪府(同月当時8店舗),兵庫県(同月当時6店舗)及び広島県(同月当時2店舗)に,総合スーパーマーケット又は食品スーパーマーケットの店舗を出店している。原告の年間総売上高は,平成20年3月期から平成22年3月期までの各年度において,いずれも1200億円台で推移しており,平成22年度において,岡山県の区域に本店を置く各種商品小売業に係る事業者(百貨店及び総合スーパーマーケットを含む。)の中で第1位であった。
原告は,自社の店舗で販売する商品のほとんど全てを継続的な取引関係にある納入業者から買取りの方法で仕入れており,仕入れに当たっては,仕入担当者が,納入業者との間で商談を行い,事前に商品の仕入価格等の取引条件を決定していた。
⑵ 原告は,平成16年4月15日,被告から勧告審決(公正取引委員会平成16年(勧)第3号事件。以下「平成16年審決」という。)を受けた。
平成16年審決においては,(ア)原告が,取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者に対し,(a)百貨店業における特定の不公正な取引方法(平成17年公正取引委員会告示第11号による廃止前の昭和29年公正取引委員会告示第7号。以下「百貨店特殊指定」という。)2項各号及び1項各号に掲げる場合に該当しないにもかかわらず,購入した後に商品の納入価格を値引きさせ,又は商品を返品し,(b)百貨店特殊指定6項ただし書所定の場合に該当しないにもかかわらず,自社の販売業務のためにその従業員等を派遣させて使用していたことが,百貨店特殊指定1項,2項及び6項に該当し,(イ)原告が,自社の取引上の地位が納入業者に対し優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に,納入業者に対し,(a)納入取引に係る商品以外の紳士服等を購入させ,(b)自社の棚卸し作業のためにその従業員等を派遺させることにより経済上の利益を提供させていたことが,平成21年公正取引委員会告示第18号による改正前の不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号。以下「旧一般指定」という。)14項1号及び2号に該当するとして,上記(ア)及び(イ)の行為はいずれも独占禁止法19条に違反するものとされた。
⑶ 被告は,原告が,遅くとも平成19年1月以降,取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者165社(ただし,自然人を含む。)に対して,次のアからオまでの各行為を行い,もって自社の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に①継続して取引する相手方に対して,当該取引に係る商品以外の商品を購入させ,②継続して取引する相手方に対して,自社のために金銭又は役務を提供させ,③取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ,又は取引の相手方に対して取引の対価を減じていたとして,平成22年5月18日,独占禁止法47条1項4号に基づく立入検査を行った。原告は,同月19日以降,上記の各行為を行っていない。
ア 原告は,新規開店(原告が,新たな店舗を設置して,当該店舗の営業を開始すること),全面改装(原告が,自社の既存の店舗について,一旦営業を取りやめた上で売場の移動,売場面積の拡縮,設備の改修その他の改装を行うこと),棚替え(原告が,自社の既存の店舗について,商品の陳列場所の変更,商品の入替えその他の改装を行うこと(全面改装に伴うものを除く。))等に際し,これらを実施する店舗に商品を納入する納入業者に,当該納入業者が納入する商品以外の商品を含む当該店舗の商品について,当該納入業者の従業員等が有する技術又は能力を要しない商品の移動,陳列,補充,接客等の作業を行わせることとし,あらかじめ当該納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく,仕入担当者から,当該納入業者に対し,直接又は他の納入業者を通じて,これらの作業を行う店舗,日時等を連絡し,その従業員等を派遺するよう要請していた。なお,原告は,当該派遣のために通常必要な費用を負担していなかった。
イ 原告は,新規開店を宣伝するためのアドバルーンの設置等に要する費用を確保するため,又は自社が主催する「こども将棋大会」若しくは「レディーステニス大会」と称する催事等の実施に要する費用を確保するため,あらかじめ仕入部門ごとに納入業者から提供を受ける金銭の目標額を設定し,仕入担当者から,納入業者に対し,当該納入業者の納入する商品の販売促進効果等の利益がない又は当該利益を超える負担となるにもかかわらず,金銭を提供するよう要請していた。この要請を受けた納入業者は,要請に応じることを余儀なくされ,金銭を提供していた。
ウ 原告は,自社の食品課が取り扱っている調味料等の商品(以下 「食品課商品」という。)のうち,自社が独自に定めた「見切り基準」と称する販売期限を経過したものについて,当該食品課商品を納入した納入業者に対し,当該納入業者の責めに帰すべき事由がなく,当該食品課商品の購入に当たって当該納入業者との合意により返品の条件を定めておらず,かつ,当該納入業者から当該食品課商品の返品を受けたい旨の申出がないにもかかわらず,当該食品課商晶を返品していた。原告は,この返品によって当該納入業者に通常生ずべき損失を負担していなかった。
エ(ア) 原告は,食品課商品のうち,季節商品の販売時期の終了等に伴う商品の入替えを理由として割引販売を行うこととしたものについて,当該食品課商品を納入した納入業者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず,当該割引販売に伴う自社の損失を補てんするために,当該食品課商品の仕入原価に50%を乗じて得た額に相当する額を,当該納入業者に支払うべき代金の額から減じていた。
(イ) 原告は,食品課商品又は自社の日配品課が取り扱っている牛乳等の商品(以下「日配品課商品」という。)のうち,全面改装に伴う在庫整理を理由として割引販売を行うこととしたものについて,当該食品課商品又は当該日配品課商品を納入した納入業者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず,当該割引販売に伴う自社の損失を補てんするために,当該割引販売において割引した額に相当する額等を,当該納入業者に支払うべき代金の額から減じていた。
オ 原告は,平成21年11月から同年12月にかけて実施したクリスマス関連商品の販売に際し, あらかじめ自社の仕入部門ごとにクリスマス関連商品の目標販売数量を設定した上で,仕入担当者から納入業者に対し,
(ア) 納入業者との懇親会において,クリスマス関連商品の申込用紙を配付し,クリスマス関連商品の最低購入数量を示した上で,その場で注文するよう指示する
(イ) 自社との取引額を踏まえて,納入業者ごとにクリスマス関連商品の購入数量を示す方法により,クリスマス関連商品を購入するよう要請していた。この要請を受けた納入業者は,要請に応じることを余儀なくされ,クリスマス関連商品を購入していた。
⑷ア 被告は,原告に対し,平成23年3月15日付けで,同月29日までに,平成22年1月1日から同年5月18日までの間における原告による納入業者294社からの購入額等につき報告するよう命じた(以下,この命令を「本件報告命令」という。)(審1の1から3まで)。
イ 原告は,被告に対し,平成23年4月13日付けで,本件報告命令に対する回答をするとともに,納入業者のうちに課徴金算定の相手方から除外すべきものがいるとの意見を述べた(審3の1から3まで)。
なお,原告は,被告に対し,同月26日付けで,本件報告命令に対する回答を修正したものを提出した(審2)。
ウ 原告は,平成23年6月1日,被告から,独占禁止法49条5項及び50条6項並びに平成27年公正取引委員会規則第2号による改正前の公正取引委員会の審査に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第5号。以下「審査規則」という。)24条1項及び29条に基づき,本件排除措置命令書(案)及び本件課徴金納付命令書(案)並びに本件排除措置命令及び本件課徴金納付命令に係る事前の通知書の送達を受けた。本件排除措置命令書(案)の主文1項⑴柱書には「取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者(以下「特定納入業者」という。)」との記載があり,主文の他の箇所及び理由中には「特定納入業者」との記載がある。また,本件課徴金納付命令書(案)の「課徴金に係る違反行為」中には,「別添……排除措置命令書(写し)記載のとおり」と排除措置命令書の記載を引用する形式が採られているものの,上記の各案それ自体には特定納入業者の具体的な商号(氏名を含む。)の記載はない。上記各送達書類には,平成22年(平成23年の誤記とみとめる。)5月31日付け「送付資料一覧」と題する書面,「課徴金算定対象事業者一覧表」と題する書面,「排除措置命令の概要」と題する書面,「課徴金制度の概要 (優越的地位の濫用)」と題する書面及び「排除措置命令及び課徴金納付命令の今後の手続について」と題する書面が同封されていた。送付資料一覧には,「1 通知書及び命令書(案) ⑴ 排除措置命令に係る事前の通知書 ⑵ 排除措置命令書(案) ⑶ 課徴金納付命令に係る事前の通知書 ⑷ 課徴金納付命令書(案) (参考)課徴金算定対象事業者一覧表 2 制度の概要について ⑴ 排除措置命令の概要 ⑵ 課徴金制度の概要(優越的地位の濫用) 3 今後の手続について」と記載されており,課徴金算定対象事業者一覧表には,本件報告命令の別表記載の番号と共に「会社名」欄に会社名が,「課徴金算定基礎となる購入額」欄に金額が列記されており,上記各事前の通知書には,それぞれ同年6月14日までに,文書により意見を述べ,及び証拠を提出することができる旨記載されていた(以下,この事前の通知を「本件事前通知」という。)。(査244)
エ 被告は,原告からの申出により,審査規則25条及び29条に基づき,排除措置命令及び課徴金納付命令の発付前に事実,証拠等に関する説明を実施した(以下,この説明を「本件事前説明」といい,本件事前通知と本件事前説明を含む本件事前通知に係る通知書に記載された期限である平成23年6月14日までの手続を「本件事前手続」という。)。
⑸ア 被告は,原告が遅くとも平成19年1月以降前記⑶アからオまでの各行為を行い,もって自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に①継続して取引する相手方に対して,当該取引に係る商品以外の商品を購入させ,②継続して取引する方に対して,自社のために金銭又は役務を提供させ,③取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ,又は取引の相手方に対して取引の対価を減じていたものであって,この行為は独占禁止法2条9項5号(平成22年1月1日より前においては旧一般指定14項)に該当し,独占禁止法19条に違反するものであり,原告は独占禁止法20条2項において準用する独占禁止法7条2項1号に該当する上,平成16年審決において排除措置を命じられたにもかかわらず違反行為を行っていたこと,違反行為が長期間にわたって行われていたこと,違反行為の取りやめが被告の立入検査を契機としたものであることなどの諸事情を総合的に勘案すれば,特に排除措置を命ずる必要があると認められるとして,平成23年6月22日付けで,原告に対し,独占禁止法20条2項に基づき,主文の内容を大要以下のとおりとして排除措置を命じた(平成23年(措)第5号。以下,この処分を「本件排除措置命令」といい,その命令書を「本件排除措置命令書」という。)。
(ア) 原告は,次の事項を,取締役会において決議しなければならない。
a 遅くとも平成19年1月以降,取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者(以下「特定納入業者」という。)に対して行っていた前記⑶アからオまでの各行為を取りやめていることを確認すること
b 今後,前記⑶アからオまでの各行為と同様の行為を行わない旨
(イ) 原告は,前記(ア)に基づいて採った措置を納入業者に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については,あらかじめ被告の承認を受けなければならない。
(ウ) 原告は,今後,前記⑶アからオまでの各行為と同様の行為を行ってはならない。
(エ) 原告は,今後,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については,前記⑶アからオまでの各行為と同様の行為をすることのないようにするために十分なものでなければならず,かつ,あらかじめ,被告の承認を受けなければならない。
a 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の改定
b 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての,役員及び従業員に対する定期的 な研修並びに法務担当者による定期的な監査
(オ)a 原告は,前記(ア),(イ),(エ)に基づいて採った措置を速やかに被告に報告しなければならない。
b 原告は,前記(エ)bに基づいて講じた措置の実施内容を,今後3年間,毎年,被告に報告しなければならない。
イ 被告は,原告が,本件排除措置命令書の写しに記載のとおり,自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に①継続して取引する相手方に対して,当該取引に係る商品以外の商品を購入させ,②継続して取引する相手方に対して,自社のために金銭又は役務を提供させ,③取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ,又は取引の相手方に対して取引の対価の額を減じていたものであって,この行為は独占禁止法2条9項5号に該当し,独占禁止法19条に違反するものであって,かつ,独占禁止法20条の6の「継続してする」ものであるとし,同条により,原告の違反行為期間を平成19年5月19日から平成22年5月18日までの3年間とし,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成21年法律第51号。以下「改正法」という。)の施行日である平成22年1月1日以後に係るものの相手方は165社であり,全て原告に商品を供給する者であり,同日以後における原告と上記165社それぞれとの間における購入額を,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(以下「施行令」という。)30条2項に基づき算定すると,合計222億1605万4358円であることから,課徴金の額は,独占禁止法20条の6により,その100分の1を乗じて得た額から独占禁止法20条の7において準用する独占禁止法7条の2第23項により1万円未満の端数を切り捨てて算出された2億2216万円であると判断して,平成23年6月22日付けで,原告に課徴金2億2216万円を納付することを命じた(公正取引委員会平成23年(納)第87号。以下,この課徴金納付命令を「本件課徴金納付命令」といい,その命令書を「本件課徴金納付命令書」といい,本件排除措置命令と本件課徴金納付命令を併せて「本件各命令」と,本件排除措置命令書及び本件課徴金納付命令書を併せて「本件各命令書」ということもある。)。
ウ 原告は,平成23年6月23日,本件各命令書の謄本並びに本件各命令に係る通知書の送達を受けた。本件排除措置命令書の主文1項⑴柱書には,前記アのとおり,「特定納入業者」の用語と共にその定義が記載され,主文のその余の部分及び理由には「特定納入業者」との記載があり,本件課徴金納付命令書には本件排除措置命令書が別添として添付されるとともに,「課徴金に係る違反行為」の欄には本件「排除措置命令書(写し)記載のとおり」と本件排除措置命令書の記載を引用する旨の記載があるが,本件各命令書のいずれにも特定納入業者の具体的な商号(氏名を含む。)の記載はなかった。
上記各送達書類には,同月22日付け「送付資料一覧」と題する書面,「課徴金算定対象事業者一覧表」と題する書面(以下「本件一覧表」という。)及び「今後の手続きについて」と題する書面が同封されていた。送付資料一覧には,「1 通知書及び命令書 ⑴ 排除措置命令に係る通知書 ⑵ 排除措置命令書 ⑶ 課徴金納付命令に係る通知書 ⑷ 課徴金納付命令書 (参考)課徴金算定対象事業者一覧表 2 今後の手続について」と記載されており,本件一覧表には,本件報告命令の別表記載の番号と共に「会社名」欄に会社名が,「課徴金算定基礎となる購入額」欄に金額が列記されていた。(査245)
⑹ 原告は,被告に対し,平成23年8月17日付けで,本件各命令の全部の取消しを求める審判請求 (以下「本件審判請求」という。)をした。
⑺ 被告は,平成31年2月20日付けで,本件審決をし,原告は,同月21日,本件審決書の謄本の送達を受けた。
本件審決においては,原告の取引上の地位が優越していたのは納入業者名及び本店等の所在地が記載された本件審決書の別表記載の127社であったと認定した上で,同別表を引用して上記127社を特定する形式に本件排除措置命令を変更し(主文1項),本件課徴金納付命令のうち1億7839万円を超えて納付を命じた部分を取り消し(主文2項),原告のその余の審判請求を棄却した (主文3項)。
⑻ 原告は,平成31年3月22日,本件訴えを提起した。
3 争点及び争点に関する当事者の主張
本件の争点は以下のとおりであり,これに関する当事者の主張は,別紙争点整理表に記載のとおりである。
⑴ 原告の取引上の地位が納入業者127社のそれぞれに対して優越しているか。
⑵ 原告が納入業者127社のそれぞれに対して濫用行為を行ったか。
⑶ 課徴金の算定方法についての違法性の有無
⑷ 本件各命令書における主文の不特定及び理由の記載の不備による違法性の有無
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,争点⑷につき,本件排除措置命令書の主文及び理由並びに本件課徴金納付命令書の理由の各記載に不備があったのであるから,本件審決において本件各命令を取り消すべきであるにもかかわらず,これを取り消さなかった本件審決の主文1項及び3項に係る部分は違法であり,取り消されるべきであると判断する。その理由は,本件排除措置命令書の違法性については次項の,本件課徴金納付命令書の違法性については次々項のとおりである。
2 本件排除措置命令書における主文の不特定及び理由の記載の不備による違法性の有無について
⑴ 独占禁止法49条1項は,排除措置命令書には,主文として「違反行為を排除し,又は違反行為が排除されたことを確保するために必要な措置」を示さなければならないと規定しており,その内容があまりにも抽象的であるため,これを受けた名宛人が当該命令を履行するために何をすべきかが具体的に分からないようなもの,その他その履行が不能あるいは著しく困難なものは違法となると解される。
これを本件についてみると,前提事実⑸アのとおり,本件排除措置命令書の主文は,原告に対し,遅くとも平成19年1月以降特定納入業者に対して行っていた各種行為を取りやめている旨を確認すること(主文1項⑴)及び今後上記行為と同様の行為を行わない旨(主文1項⑵)を取締役会において決議しなければならないことなどを命じているところ,少なくとも主文1項⑴については, 各種行為の相手方となっている特定納入業者が本件排除措置命令書の記載からは明らかでなく,原告において,何を決議すべきかが判然とせず,その履行が不能又は著しく困難であるといわざるを得ない。そうすると,少なくとも主文1項⑴については特定を欠くものというべきである。
⑵ また,独占禁止法49条1項は,排除措置命令書には,その理由として,「公正取引委員会の認定した事実及びこれに対する法令の適用を」示さなければならないと規定する。その趣旨は,排除措置命令がその名宛人に対し当該命令の主文に従った排除措置の履行義務を課すなど名宛人の事業活動の自由等を制限する不利益処分であることに鑑み,他の行政処分において理由の付記が必要とされるのと同様,被告(公正取引委員会)の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,排除措置命令の理由をその名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるためのものであると解される。このような排除措置命令の性質及び排除措置命令書に理由の記載が必要とされる趣旨に鑑みると,排除措置命令書に記載すべき理由の内容及び程度は,特段の理由がない限り,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該排除措置命令がされたかを名宛人においてその記載自体から了知し得るものでなければならないと解される(最高裁昭和45年(行ツ)第36号同49年4月25日第一小法廷判決・民集28巻3号405頁,最高裁昭和57年(行ツ)第70号同60年1月22日第三小法廷判決・民集39巻1号1頁参照)。
これを本件についてみると,前提事実⑸アのとおり,本件排除措置命令書には,排除措置命令の理由として,特定納入業者に該当するかの考慮要素及び原告が特定納入業者に対して具体的にいかなる態様の行為をどの程度行ったのかという,命令の原因となる事実と,これらの行為が優越的地位の濫用に該当し,独占禁止法19条に違反するなどという,命令の根拠法条は示されているものの, 上記行為の相手方である特定納入業者については何ら具体的な特定がされていない。そうすると, 本件排除措置命令書の記載自体によって,その名宛人である原告において,いずれの相手方に対する自己の行為が優越的地位の濫用に該当すると評価されたかを具体的に了知し得ないから,本件排除措置命令書の理由の記載には不備があったものというほかない。
⑶ 被告は,前記⑴の不備は,本件排除措置命令を取り消さなければならないほど違法なものではないと主張し,その理由として,次のとおり主張する。そして,本件審決は,前記⑴の説示と同様,本件排除措置命令書の理由の記載には不備があるとしつつ,後記ア,イ,エの主張に沿う説示をして,本件排除措置命令を取り消さなければならないほどの違法はないと判断している(なお,本件審決は,本件排除措置命令の主文2項(前提事実⑸ア(イ))の適法性について,原告による将来の違法行為を防止するために,特定納入業者に限らず,原告と取引関係のある全ての納入業者に対して,主文1項(前提事実⑸ア(ア))に基づいて採った措置を通知することは必要かつ相当である旨説示するが,主文1項⑴(前提事実⑸ア(ア)a)の適法性については特に判断を示していない。)。
ア 被告は,本件各命令書の謄本の原告への送達時に,本件一覧表を送達書類に同封して,違反行為の相手方である特定納入業者を明らかにしており,これにより,原告は,本件排除措置命令の主文及び理由を了知することができる状態にあった上,被告の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するという恣意抑制機能は果たされたというべきである。
イ 本件事前手続において,原告は,被告から,本件各命令の理由を事前に示されたのと変わりがないものと容易に予測できるものであった上,原告は,本件各命令書の送達を受領するのと同時に,本件一覧表を受領したことによって特定納入業者を認識している。加えて,原告が本件各命令の効力を全面的に争っていることに照らすと,不服申立ての便宜が害されるといった不利益は生じていない。
ウ 本件排除措置命令の主文は本件審決によって変更されており,仮に本件排除措置命令の主文に瑕疵があるとしてもその瑕疵は治癒されたというべきである。
エ 原告は,組織的かつ計画的に一連のものとして特定納入業者に対して不利益行為を行っていたものであって,多数の相手方に対して一律に混然一体として各種の行為を行っていたのであるから,相手方が課徴金算定対象事業者一覧表で特定され,「優越的地位の濫用」としての違反行為の外延が画されていれば足り,常に原告の行った各種要請の行為の類型ごとに,あるいは独占禁止法2条9項5号イからハまでに規定する不利益行為の類型ごとに特定されなければならないものではない。
⑷ しかし,被告の前記主張は,以下に詳述するとおり,いずれも採用することができない。
ア 本件一覧表の送付について(前記⑶ア)
前提事実⑸ウのとおり,被告は,本件各命令書を原告に送達するに際し,本件一覧表を送付しているが,本件各命令書の謄本の状況(査245の3枚目から12枚目まで(記録3835丁から3844丁まで),14枚目から25枚目まで(記録3846丁から3857丁まで))及び送付資料一覧(査245の1枚目(記録3833丁))の記載に照らすと,本件一覧表は,本件排除措置命令又は本件課徴金納付命令の一部ではなく,本件課徴金納付命令の「参考資料」と位置付けられている。このような本件各命令書の形式及び本件一覧表の位置付けに照らすと,本件一覧表が「参考資料」として同封された趣旨(この点について,被告(審査官)は,本件審判請求に係る審判手続においては,本件各命令書の記載に不備はなく,本件一覧表を同封したことにより本件課徴金納付命令書の理由付記の不備の違法が治癒されるとは主張していない,審査官が本件一覧表を送付した点を主張した趣旨は,本件一覧表と照合することにより事実上被審人(原告)において本件課徴金納付命令書の内容を確認することが可能であること,すなわち,不服申立ての便宜や処分の公正さの担保に配慮し,法令の規定以上に手厚い手当てをした事実を指摘したものである旨主張していた(審査官の平成24年9月14日付け第4準備書面62,63頁)。)のほか,本件一覧表が本件各命令の発付に際して,被告の委員長及び委員の合議(独占禁止法69条)の結果を踏まえて作成されたものであるかさえ明らかでないというほかなく,本件一覧表が本件各命令書と一体のものであると評価することはできないというべきである。仮にこの点はおくとしても,「課徴金算定対象事業者一覧表」という本件一覧表の表題に加えて,本件一覧表の記載上,本件報告命令の別表記載の番号は付記されているものの,そこに掲げられている事業者が特定納入業者であるとも記載されていないことに照らすと,本件一覧表と本件排除措置命令とが関連しているかは明らかではなく,本件一覧表に記載された事業者が特定納入業者であると評価することもできないといわざるを得ない。
以上によれば,本件排除措置命令書の記載を課徴金算定対象事業者一覧表で補充することはできず,本件排除措置命令の主文のうち少なくとも1項⑴の関係では行為の対象が明らかとならない上,本件排除措置命令書の理由の記載についても,原告の行為の相手方である特定納入業者が了知し得るものということはできない。したがって,本件排除措置命令書の主文及び理由の記載には重大な違法があるというほかなく,被告の前記⑶アの主張は採用できない。
イ 本件排除措置命令に至る手続の経緯について(前記⑶イ)
本件報告命令から本件事前手続を経て本件排除措置命令及び本件課徴金納付命令に至る事実経過は,前提事実⑷,⑸のとおりである。
しかし,独占禁止法49条1項が同条5項に基づく事前の手続を経た上でもなお排除措置命令書に理由の記載を要求していることに鑑みると,本件事前手続が行われたことをもって,本件排除措置命令書における理由の記載の瑕疵が治癒されると解することはできない。この点はおくとしても,前提事実⑷ウのとおり,本件事前通知においても,本件各命令書の謄本の送達時と同様,課徴金算定対象事業者一覧表(記載内容は本件一覧表と同じである。)は,排除措置命令書(案)又は課徴金納付命令書(案)の一部ではなく,課徴金納付命令書(案)の「参考資料」という位置付けであって,その記載内容に照らしても排除措置命令書(案)との関連性は明らかではないといわざるを得ず,前記アに説示するところと同様に,本件排除措置命令書における理由の記載の瑕疵を治癒し得るものではないというべきである。よって,被告の前記⑶イの主張は採用できない。
なお,被告は,原告が本件各命令の効力を全面的に争っており,本件各命令に対する不服申立ての便宜が害されるといった不利益は生じていないから,手続保障上の問題は生じない旨主張するが,本件各命令の名宛人である原告において,本件各命令の記載を関係資料等から推知・補充して,本件各命令の効力を全面的に争うこととしたことをもって,原告の不服申立ての便宜は害されておらず,手続保障上の問題は生じないといえるかどうかはおくとしても,前記⑵の説示のとおり,排除措置命令書の理由の記載には,その名宛人への手続保障だけでなく,被告の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するという面もあることに鑑みると,被告の上記主張はこの点を看過するものであり,採用できない。
ウ 本件審決による瑕疵の治癒の成否について(前記⑶ウ)
本件審決は,取引上の地位が原告に劣っている納入業者が165社ではなく127社であると認定したことに伴い,その限度で本件排除措置命令の主文を変更するとともに,この127社を「対象納入業者」として別表で本店等の所在地と商号で特定している。本件審決書のこの記載自体は,不利益行為の相手方の特定としては適切なものである。
しかし,独占禁止法49条1項が排除措置命令書に理由の記載を求める趣旨が,前記⑵のとおり,被告(公正取引委員会)の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,排除措置命令の理由をその名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるためのものであることに鑑みると,本件審決の理由の記載により本件排除措置命令書の理由の記載の瑕疵が遡って治癒されると解することはできない(最高裁昭和40年(行ツ)第5号同47年3月31日第二小法廷判決・民集26巻2号319頁参照)。また,本件排除措置命令が原告の事業活動の自由等を制限する不利益処分であり,本件排除措置命令により原告が負うべき行為義務の内容が,本件審決の時まで確定しないという事態を容認することは相当ではないから,本件審決によって本件排除措置命令の主文1項⑴(前提事実⑸ア(ア)a)の瑕疵が治癒されたとみることもできないというべきである。よって,被告の前記⑶ウの主張は採用できない。
エ 行為類型の特定は不要であるとの主張について(前記⑶エ)
被告の前記⑶エの主張は,本件一覧表により,本件排除措置命令書における理由の記載の瑕疵が治癒されることを前提とするものであるところ,前記アからウまでに説示するところによれば,本件排除措置命令書の理由の記載の瑕疵が治癒されることはないから,上記主張はその前提を欠くものというべきである。
⑸ 小括
以上の次第で,本件排除措置命令書の主文1項⑴(前提事実⑸ア(ア)a)及び理由の記載は独占禁止法49条1項に違反するものであるから,本件排除措置命令は全部取り消されるべきである。
3 本件課徴金納付命令書における理由の記載の不備による違法性の有無について
⑴ 独占禁止法50条1項は,課徴金納付命令書には,「納付すべき課徴金の額及びその計算の基礎, 課徴金に係る違反行為」を記載しなければならないと規定する。その趣旨は,その名宛人に対し当該命令に従った課徴金の納付義務という不利益を課すものであることに鑑み,前記2⑵の説示に係る排除措置命令書に理由の付記が必要とされるのと同様,被告(公正取引委員会)の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,課徴金納付命令の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるためのものであると解される。このような課徴金納付命令の性質及び課徴金納付命令書に理由の記載が必要とされる趣旨に鑑みると,課徴金納付命令書に記載すべき事項である納付すべき課徴金の額及びその計算の基礎,課徴金に係る違反行為は,本件排除措置命令書における理由の記載と同様,特段の理由がない限り,名宛人においてその記載自体から了知し得るものでなければならないと解される。
これを本件についてみると,前提事実⑸イのとおり,本件課徴金納付命令書は,本件排除措置命令書(写し) を引用する形式で,「課徴金に係る違反行為」として,原告が行った行為が独占禁止法19条に違反するとともに,独占禁止法20条の6にいう「継続してするもの」である旨が記載されているが,引用に係る本件排除措置命令書における違反行為の記載内容は,前記2⑵説示のとおりである。また,優越的地位の濫用に係る課徴金の算定方法については,独占禁止法20条の6において,「当該行為をした日から当該行為がなくなる日までの期間……における,当該行為の相手方との間における政令で定める方法により算定した売上額(……当該行為の相手方が複数ある場合は当該行為のそれぞれの相手方との間における政令で定める方法により算定した売上額又は購入額の合計額とする。)に100分の1を乗じて得た額」とする旨規定しているところ,本件課徴金納付命令書には,「課徴金の計算」の基礎として,違反行為の期間,改正法の施行日以後の違反行為の相手方の数が165社であり,いずれも原告に商品を供給する者である旨,改正法の施行日以後における原告の上記165社それぞれとの間における購入額を施行令30条2項に基づき算定した当該購入額の合計額,原告が納付しなければならない課徴金の額とその算定過程は記載されているが,上記165社の商号や原告と上記165社との間における個々の購入額については,具体的に示されていない。そうすると,本件課徴金納付命令書のみからは,原告において,いずれの相手方に対する自社の行為が 「課徴金に係る違反行為」に当たるとの評価を受け,いずれの相手方からの購入額が納付すべき課徴金の額の計算の基礎となったかを具体的に知ることはできず,いずれの相手方からの購入額を課徴金の計算の基礎とすることを甘受し,いずれの相手方からの購入額を課徴金の計算の基礎とすることを争うべきかを,的確に判断することが困難であって,原告の不服申立ての便宜にはならないものといえる。そうすると,本件課徴金納付命令書の理由の記載には不備があったものというほかない。
⑵ 被告は,前記2⑶ア,イ,エと同内容の主張をして,本件課徴金納付命令を取り消さなければならないほど違法なものではないと主張する。そして,本件審決は,前記⑴の説示と同様,本件課徴金納付命令書の理由の記載には不備があるとしつつ,被告の上記主張に沿う説示をして,本件課徴金納付命令を取り消さなければならないほどの違法はないと判断している。
⑶ しかし,前記⑴説示のとおり,本件課徴金納付命令書における「課徴金に係る違反行為」の記載は,本件排除措置命令書(写し)を引用する形式で記載されているところ,前記2の説示のとおり,本件排除措置命令書の理由の記載は誰が特定納入業者に当たるかが明確でなく,独占禁止法49条1項に違反するものといわざるを得ないから,これを引用する本件課徴金納付命令書の記載もまた,特定納入業者が明確でなく,独占禁止法50条1項に違反するというほかない。
被告は,本件課徴金納付命令書を原告に送達するに際し,本件一覧表を併せて送付したことをもって瑕疵が治癒されたというべきであると主張するが(前記⑵,前記2⑶ア),前記2⑷ア説示のとおり,本件一覧表は,その形式上,本件各命令の一部を構成するものではなく,本件課徴金納付命令の「参考資料」という位置付けにとどまり,本件各命令の発付に際して,被告の委員長及び委員の合議の結果を踏まえて作成されたものであるかさえ明らかでないことに照らすと,本件一覧表を本件課徴金納付命令書と法的に一体のものと評価することはできない。そうすると,本件一覧表が同封されていたことをもって,本件課徴金納付命令書の記載の不備が治癒されるということもできない。
また,被告は,本件事前手続において原告の手続保障は担保されていたことなどを理由として, 本件課徴金納付命令を取り消すべきほどの違法性はないとも主張するが(前記⑵,前記2⑶イ),前記2⑷イに説示するところと同様,独占禁止法50条1項が,事前の手続(独占禁止法50条6項, 49条5項)を経た上でもなお課徴金納付命令書に納付すべき課徴金の額及びその計算の基礎並びに課徴金に係る違反行為の記載を要求していることに鑑みると,本件事前手続が行われたことをもって,本件課徴金納付命令書における独占禁止法50条1項所定の記載の瑕疵が治癒されると解することはできないし,原告が本件各命令の効力を全面的に争っていることを理由に瑕疵が治癒されたとみることもできない。
そして,前記⑵,前記2⑶エの被告の主張がその前提を欠くことは,前記2⑷エにおいて説示のとおりである。
⑷ 小括
以上の次第で,本件課徴金納付命令書の記載は独占禁止法50条1項に違反するものであり,本件課徴金納付命令は全部取り消されるべきである。
第4 結論
以上によれば,その余の点につき判断するまでもなく,本件各命令はいずれも全部取り消されるべきであるから,原告による本件審判請求は理由があるというべきところ,その一部のみに理由があるとして本件排除措置命令を変更し,本件課徴金納付命令の一部のみを取り消した本件審決は,独占禁止法66条3項に違反するものというべきである。よって,独占禁止法82条1項2号に基づき,本件審決のうち本件排除措置命令を変更した部分及び本件課徴金納付命令の取消しの請求を棄却した部分(主文1項及び3項)を取り消すこととして,主文のとおり判決する。
注釈 《 》部分は,公正取引委員会事務総局において原文に匿名化等の処理をしたものである。
【別紙】添付省略
令和2年12月11日
東京高等裁判所第3特別部
裁判長裁判官 村田 渉
裁判官 小海隆則
裁判官 鈴木 博
裁判官 本多哲哉
裁判官 成田晋司