公正取引委員会審決等データベース

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東海旅客鉄道株式会社が発注するリニア中央新幹線に係る品川駅及び名古屋駅新設工事の指名競争見積の参加業者に対する件

独禁法3条前段

令和2年(措)第10号

排除措置命令

東京都港区港南二丁目15番2号
 株式会社大林組
  同代表者 代表取締役 《 氏  名 》

東京都中央区京橋二丁目16番1号
 清水建設株式会社
  同代表者 代表取締役 《 氏  名 》

東京都港区元赤坂一丁目3番1号
 鹿島建設株式会社
  同代表者 代表取締役 《 氏  名 》

東京都新宿区西新宿一丁目25番1号
大成建設株式会社
 同代表者 代表取締役 《 氏  名 》

公正取引委員会は,上記の者らに対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき,次のとおり命令する。
なお,主文,理由及び別紙1中の用語のうち,別紙2「用語」欄に掲げるものの定義は,別紙2「定義」欄に記載のとおりである。

主    文
1 株式会社大林組(以下「大林組」という。),清水建設株式会社(以下「清水建設」という。),鹿島建設株式会社(以下「鹿島建設」という。)及び大成建設株式会社(以下「大成建設」という。)の4社(以下「4社」という。)は,それぞれ,次の事項を,取締役会において決議しなければならない。
(1) 別紙1記載の工事(以下「リニア中央新幹線に係る地下開削工法による品川駅及び名古屋駅新設工事」という。)について,4社が,遅くとも平成27年2月頃以降共同して行っていた,受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定し,受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるように協力する旨の合意が消滅していることを確認すること。
(2) 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,リニア中央新幹線に係る地下開削工法による品川駅及び名古屋駅新設工事について,受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を行うこと。
2 4社は,それぞれ,前項に基づいて採った措置を,自社を除く3社及び東海旅客鉄道株式会社(以下「JR東海」という。)に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 4社は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,リニア中央新幹線に係る地下開削工法による品川駅及び名古屋駅新設工事について,受注予定者を決定してはならない。
4 4社は,それぞれ,自社の工事の受注に関する独占禁止法の遵守についての,リニア中央新幹線に係る地下開削工法による品川駅及び名古屋駅新設工事の受注活動に関与する自社の役員及び従業員に対する法務担当者及び第三者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については,前項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず,かつ,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
5 4社は,それぞれ,第1項,第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

理    由
第1 事実
1 関連事実
(1) 名宛人の概要
4社は,それぞれ,肩書地に本店を置き,建設業法(昭和24年法律第100号)の規定に基づき国土交通大臣の許可を受け,建設業を営む者である。
(2) 発注方法等
JR東海は,リニア中央新幹線に係る地下開削工法による品川駅及び名古屋駅新設工事について,大規模な工事であり,かつ,技術的難度が高い工事であったため,いわゆるスーパーゼネコンである4社又は4社のうち複数社を指名する指名競争見積により,次のとおり発注していた。
ア JR東海は,「中央新幹線品川駅北工区新設」の工事及び「中央新幹線品川駅南工区新設」の工事について,平成26年12月25日に4社を指名し,4社をそれぞれ代表者とする特定建設工事共同企業体を競争参加者として,当該競争参加者から見積書等の提出を受けた。その後,JR東海は,両工事に関する条件変更を行った上で,「中央新幹線品川駅新設(北工区)」の工事及び「中央新幹線品川駅新設(南工区)」の工事について,平成27年8月19日に4社を指名し,4社をそれぞれ代表者とする特定建設工事共同企業体を競争参加者として,指名競争見積により発注していた。
イ JR東海は,「中央新幹線名古屋駅(中央工区)」の工事について,平成27年4月24日に4社を指名し,鹿島建設及び大成建設をそれぞれ代表者とする特定建設工事共同企業体並びに清水建設を競争参加者として,当該競争参加者から契約価格の上限を設定する際の参考とするための参考見積書等の提出を受けた。その後,JR東海は,同工事に係る指名競争見積手続を中止し,当該工事の工区を分割等した「中央新幹線名古屋駅新設(中央西工区)」の工事について,平成28年3月10日に大林組及び大成建設を指名し,大林組及び大成建設をそれぞれ代表者とする特定建設工事共同企業体を競争参加者として,指名競争見積により発注していた。
2 合意及び実施方法
4社は,遅くとも平成27年2月頃以降,リニア中央新幹線に係る地下開削工法による品川駅及び名古屋駅新設工事について,受注価格の低落防止等を図るため
(1)ア 受注予定者を決定する
イ 受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に
(2)ア 各工事に対する受注意欲を確認し合い,工事ごとに受注を希望する者を受注予定者とする
イ 受注予定者を代表者とする特定建設工事共同企業体が提示する見積価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者が定めた見積価格よりも高い見積価格を提示する又は指名競争見積の参加を辞退する
などにより,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
3 実施状況
4社は,前記2により,リニア中央新幹線に係る地下開削工法による品川駅及び名古屋駅新設工事の全てを受注していた。
4 合意の消滅
平成29年12月8日,リニア中央新幹線に係る建設工事についての偽計業務妨害罪の疑いにより,大林組が東京地方検察庁による捜索及び差押えを受けたことから,同日以降,前記2の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為は行われていない。このため,同日以降,同合意は事実上消滅しているものと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば,4社は,共同して,リニア中央新幹線に係る地下開削工法による品川駅及び名古屋駅新設工事について,受注予定者を決定し,受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,リニア中央新幹線に係る地下開削工法による品川駅及び名古屋駅新設工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,この行為は,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また,前記の違反行為は既になくなっているが,4社は,いずれも,独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり,違反行為が自主的に取りやめられたものではないこと等の諸事情を総合的に勘案すれば,特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって,4社に対し,独占禁止法第7条第2項の規定に基づき,主文のとおり命令する。

令和2年12月22日

委員長 古  谷  一  之
委 員 山  本  和  史
委 員 三  村  晶  子
委 員 青  木  玲  子
委 員 小  島  吉  晴

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