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㈱富士通ゼネラルによる排除措置命令等取消請求事件

独禁法3条後段、独禁法7条2
東京地方裁判所民事第8部

平成29年(行ウ)第356号

判決

令和4年3月3日

川崎市高津区末長3丁目3番17号
原告 株式会社富士通ゼネラル
同代表者代表取締役 ≪A9≫
同訴訟代理人弁護士 村島 俊宏
穂積 伸一
谷口 悠樹
山本 晋之介
福田 英訓
同訴訟復代理人弁護士 工藤 友良
東京都千代田区霞が関1丁目1番1号
被告 公正取引委員会
同代表者委員長 古谷 一之
同指定代理人 横手 哲二
近藤 智士
垣内 晋治
並木 悠
河﨑 渉
井登 貴伸
新田 高弘
櫻井 裕介
太田 陽介
牧内 佑樹
福井 雅人
久野 慎介
名執 祐矢

令和4年3月3日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成29年(行ウ)第356号 排除措置命令等取消請求事件
口頭弁論終結日 令和3年9月16日
判 決
当事者の表示 別紙1「当事者目録」記載のとおり
主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告が原告に対して平成29年2月2日付けでした排除措置命令(公正取引委員会平成29年(措)第1号)を取り消す。
2 被告が原告に対して平成29年2月2日付けでした課徴金納付命令(公正取引委員会平成29年(納)第1号)を取り消す。
第2 事案の概要(主な略称は,別紙2「略称一覧表」による。)
被告は,原告を含む事業者らが消防デジタル無線機器について納入予定の製造販売業者を決定し,それ以外の者は当該製造販売業者が納入できるように協力する旨の合意(以下「本件基本合意」という。)をすることにより,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(令和元年法律第45号による改正前のもの。以下「独占禁止法」という。)2条6項所定の「不当な取引制限」(以下,この行為で同法7条の2第1項1号に規定する商品の対価に係るものを「本件違反行為」という。)をし,平成23年4月から平成26年4月までの3年間の実行期間における特定消防救急デジタル無線機器に係る原告の売上高は,130の物件に係る約480億円であったとして,原告に対し,同法7条2項に基づく排除措置命令(公正取引委員会平成29年(措)第1号。以下「本件排除措置命令」という。)及び同法7条の2第1項に基づく課徴金納付命令(同委員会平成29年(納)第1号。以下「本件課徴金納付命令」という。)をした。
本件は,原告が,本件基本合意をしていないなどと主張して,被告を相手に,本件排除措置命令及び本件課徴金納付命令の取消しを求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実,掲記の証拠〔書証の記載は,特に断らない限り,枝番号のものを含む。以下同じ〕及び弁論の全趣旨によって容易に認定することができる事実)
(1) 当事者等
ア 原告は,消防救急デジタル無線機器の製造販売を営む株式会社であり,《G》株式会社(以下「《G》」という。)の関連会社である。
原告は,全国6つの情報通信ネットワーク営業部及び本社内に所在する情報ネットワーク営業部において客先への訪問等の営業活動を行い,本社の情報通信システム営業統括部が営業活動の指導・支援等の業務を行っていた。また,原告は,平成21年6月頃,各方面から寄せられる情報を一元化して共有し,事業方針を明らかにして効率的に事業を推進できるようにするため,《A1》(以下「《A1》」という。)を責任者とする「消防デジタル無線ワーキンググループ」を立ち上げ,当時情報通信システム営業統括部統括部長代理であった《A2》(以下「《A2》」という。)や後に情報通信システム営業統括部営業推進部(消防デジタル無線)担当部長となった《A3》(以下「《A3》」という。)も出席して情報を共有していた。
平成20年から平成21年までの当時,《A4》(以下「《A4》」という。)は原告において防災分野及び消防分野を担当する情報通信システム営業統括部営業推進部長(ただし,平成21年6月,原告を退職した。),《A5》(以下「《A5》」という。)はシステムサポート統括部長,《A6》(以下「《A6》」という。)は情報通信システム営業統括部長,《A7》(以下「《A7》」という。)は情報通信ネットワーク事業部長,《A8》(以下「《A8》」という。)は情報通信システム営業統括部消防システム推進部長であった。また,平成22年4月以降,《A2》は情報通信システム営業統括部部長(平成24年4月に経営執行役に昇進した。),《A3》は情報通信システム営業統括部営業推進部(消防デジタル無線)担当部長(後に情報通信システム営業統括部消防システム推進部部長等)であった。
なお,原告は,平成21年頃から,「ブレークスループロジェクト」と題する営業力強化のためのプロジェクト(プロジェクトオーナーは《A1》。以下,このプロジェクトを「PMO」ということがある。)を推進し,原告従業員とコンサルティング会社で構成する事務局(PMO)を置き,PMO会議において,オーナー(《A1》)及び補佐(《A6》ら)への報告,統括責任者への指示・承認を行っていた。当該プロジェクトにおいては,《A2》が情報通信関係(このうち消防関係も兼務)の統括責任者とされ,《A3》がブレークスループロジェクト(地域コラボ)のリーダーとされていた(甲8,乙249)。
イ 日本電気株式会社以下「日本電気」という。)は,消防救急デジタル無線機器の製造販売を営む株式会社である。
日本電気は,全国の支社や支店の営業部署及び本社の官公営業部において営業活動を行い,本社の消防・防災ソリューション事業部第一営業部(後の第一ビジネス推進部)が営業活動の指導・支援等の業務を行っていた(乙36)。
平成20年当時,《B1》(以下「《B1》」という。)は消防・防災ソリューション事業部統括マネージャー,《B2》(以下「《B2》」という。)は,消防・防災ソリューション事業部第三営業部グループマネージャー(後に同事業部第二ビジネス推進部シニアエキスパートを務めた。乙44),平成22年当時,《B3》(以下「《B3》」という。)は,消防・防災ソリューション事業部第一ビジネス推進部マネージャー(平成23年7月1日からは同事業部第一ビジネス推進部長),《B8》は,消防・防災ソリューション事業部第一ビジネス推進部長(ただし,平成22年4月1日付けで就任),《B4》(以下「《B4》」という。)は,消防・防災ソリューション事業部第一ビジネス推進部エキスパートであった(乙36,44)。
ウ 沖電気工業株式会社(以下「沖電気工業」という。)は,消防救急デジタル無線機器の製造販売を営む株式会社である。
沖電気工業は,全国の7つの支社の官公営業の営業チーム等において営業活動を行い,本社の統合営業本部官公営業本部(平成22年3月以前は官公事業本部。以下同じ。)営業第二部が営業活動の指導・支援等の業務を行っていた。
その当時,《C1》(以下「《C1》」という)は本社の統合営業本部官公営業本部営業第二部長,《C2》(以下「《C2》」という。)は本社の官公営業本部営業第二部営業第三チームマネージャ(ビッグウェーブ・プロジェクト統括責任者兼務。後に官公営業本部営業第二部シニアスペシャリスト。),《C3》(以下「《C3》」という。)は官公営業本部営業第二部シニアスペシャリスト,《C4》(以下「《C4》」という。)は官公営業本部営業第二部第三チームマネージャであった(乙14,20,59)。
沖電気工業は,平成22年2月,消防救急デジタル無線機器の市場でシェア35%を獲得することを目的とし,《C1》及び《C2》を統括責任者とし,各支社の官公営業の営業チーム等で営業活動を行う部課長クラスの者をメンバーとする「ビッグウェーブ・プロジェクト」を立ち上げた(乙20)。
エ 株式会社日立国際電気(以下「日立国際電気」という。)は,消防救急デジタル無線機器の製造販売を営む株式会社であり,株式会社《H》(以下「《H》」という。)の子会社である(乙6。以下,《H》及び日立国際電気並びに《H》の関連会社を含め「《H》グループ」という。)
日立国際電気は,全国の支社の情報通信営業部等の営業担当者等において営業活動を行い,本社の公共通信営業部が営業先の選定や支社に対する営業の指示等の業務を行っていた。また,日立国際電気は,平成22年10月,消防救急デジタル無線機器の発注に対応するための戦略を検討する組織として,「消防危機管理プロジェクト」を立ち上げた(乙37,38)。
その当時,《D1》(以下「《D1》」という。)は公共通信営業部部長代理(後に消防機器管理プロジェクトリーダー等を務めた)であり(乙37),《D2》(以下「《D2》」という。)は通信事業部企画本部企画部部長代理(後に同事業部製品戦略・企画部部長等を務めた。)であった(乙45)。
オ 日本無線株式会社(以下「日本無線」という。)は,消防救急デジタル無線機器の製造販売を営む株式会社である。
日本無線は,全国の7つの支社・支店のシステム営業課等の営業担当者及び本社のソリューション営業部公共営業グループ(平成24年7月からはソリューション営業部営業統括グループ)において営業活動を行い,同グループが営業活動の指導・支援等の業務を行っていた(乙39~42)。
その当時,《E1》(以下「《E1》」という。)はソリューション営業部公共営業グループ長(後にソリューション営業部営業統括グループ長を務めた。)であり(乙39,46~48),《E2》(以下「《E2》」という。)はソリューション営業部公共営業グループ参事(後にソリューション営業部営業統括グループ参事を務めた。)であった(乙49)。
(2) 消防救急デジタル無線について
ア 消防無線機のアナログ通信方式からデジタル通信方式への移行の経緯
消防救急無線とは,電波法関係審査基準所定の審査を受けた無線局(電波法2条5号)を利用した無線通信であって,消防職員が消防業務及び救急業務に係る活動を行うためのものである。各消防本部で消防救急活動の指揮を執る指令センターのシステムは,主に①指令センターの活動に必要な情報処理を行う「指令システム」と②指令システムと各消防署,緊急車両・消防救急隊員等との間の情報伝達を行う「無線システム」で構成されるところ,この消防救急無線は,②無線システムを構成する機器である。
消防救急無線は,従来,150MHz帯の周波数帯を使用するアナログ通信方式(以下,この方式による消防救急無線を「消防救急アナログ無線」という。)であったが,平成10年頃から,全国消防長会や消防庁において消防救急無線のデジタル化が検討されるようになり,平成15年10月に260MHz帯の周波数帯を使用するデジタル化が決定され,平成20年5月,従来のアナログ通信方式の使用期限が平成28年5月31日までとされたこと(平成20年5月13日付け総務省告示第291号)から,消防救急アナログ無線を使用し続ける全国の約800消防本部のすべてが,それまでにデジタル通信方式に移行させなければならないこととなった。
消防庁は,国(総務省消防庁)が財源を用意した実証試験を実施し,デジタル化への取組を後押しすることとし,平成21年6月,対象とする市町村等を募集し,同年7月,6つの消防本部を選定した。この実証試験は,実施設計及び整備に分けて行われており,整備の発注は平成22年10月1日に入札が行われた。その後,平成23年3月の東日本大震災の発生等により,消防救急デジタル無線に係る発注の本格化が早まり,同年11月頃から東北地方の市町村等から発注が本格化していった。
消防無線のアナログ通信方式からデジタル通信方式への移行は,一般に次の①~③を順次経て,運用に至る。
① 基本設計(おおむね整備の2年前に発注され,発注者が調達する消防救急デジタル無線のシステムの大枠を決める作業であり,システムの概要(基地局設置場所,チャネル数,アプローチ回線,指令システムとの接続方法,局舎や電源等の活用可能性等)を決定し,概算整備費用を算出する作業が行われる。なお,基本設計段階において又は基本設計に先立ち,基地局設置場所等を決定するため,電波の届く範囲を机上でシミュレーションした上で,実際に受信機を積んだ車両を区域内で走行させるなどして,電波の届く範囲や通信状態を確認する電波伝搬調査を行うのが通常である。)
② 実施設計(おおむね整備の1年前に発注され,整備に必要な具体的な事項を決定する作業であり,基本設計に基づき,機器整備発注仕様書,整備費用積算書,発注用施行図面等を作成する作業が行われる。)
③ 整備(実施設計に基づき,機器発注等を行う作業である。)
イ 消防救急デジタル無線機器の種類と製造販売業者
消防救急デジタル無線機器は,SCPC方式のデジタル通信方式(1の搬送波当たりのチャネル数が1の方式のデジタル通信方式をいう。)により,260MHz帯の周波数帯を使用する消防無線のためのシステムを構成する基地局無線装置,無線回線制御装置,車載型無線装置,卓上型無線装置,携帯型無線装置,可搬型無線装置,遠隔制御装置及び管理監視制御装置の8つの機器がある。
原告,日本電気,沖電気工業,日立国際電気及び日本無線(以下「5社」という。)は,消防救急デジタル無線機器を自社で製造するほか,自社の子会社等に委託して製造するなどしている。
特に,日本無線は,平成22年頃,自社での開発・製造を断念し,日本電気から機器のOEM供給(他者から委託を受けて製品の製造及び供給を行うことをいう。以下同じ。)を受けることとし,日本電気との間でOEM供給の契約を締結し,その後,原告及び沖電気工業との間でもOEM供給の契約を締結した。
また,沖電気工業も,平成20年頃から,日本電気との間で相互にOEM供給を行うことの交渉を開始し,平成21年9月,その旨の合意に達した。
ウ 消防救急デジタル無線機器の発注方法等
消防救急デジタル無線機器の発注主体は,全国の市町村であるが,複数の市町村が一部事務組合又は広域連合(地方自治法284条1項)を設立して消防本部を設置するいわゆる広域化(消防組織法第4章参照)の場合は,当該一部事務組合又は広域連合が発注主体となる(なお,消防救急に用いる電波である共通波等の整備を県が行うこととして,当該整備に係る発注を県が行う場合もある。)。
消防救急デジタル無線機器の発注方法としては,一般競争入札,指名競争入札,公募型又は指名型プロポーザル方式等があり,一部の物件について随意契約で発注されることもある(以下,一般競争入札,指名競争入札,公募型又は指名型プロポーザル方式等を随意契約の方式も含め,「入札等」という。)。消防救急デジタル無線機器の発注は,アンテナや電源装置,冷暖房装置,印刷機器,指令台等の機器や,据付工事,鉄塔の建設工事等が併せて発注される場合がある。
消防救急デジタル無線機器の発注は,発注者が定める仕様書(通常,入札公告時に配布される。)に基づいて行われる。消防救急デジタル無線機器の仕様には,製造販売業者(以下「メーカー」という。)ごとに自社独自と考える仕様が存在し,5社のいずれかが独自と考える仕様や自社の指令台との接続(これらを「独自仕様」という。)が仕様書に盛り込まれる場合がほとんどである(独自仕様が仕様書に盛り込まれていない場合を「フラット」という。)。
5社は,消防本部,実施設計を受託した設計会社等に対して,自社の独自仕様を仕様書に入れ込んでもらえるように営業活動を行い,営業活動がうまく進んでいる場合等には,消防本部や設計会社から,予算取りや予定価格算出のための見積りについて,見積先はどこがよいかの意見を求められたり,中には他社分の見積作成作業まで依頼されたりすることがあった。また,5社は,盛り込むべき仕様について相談を受けたり,中には仕様書の作成自体を依頼されたりすることもあった。
5社は,消防救急デジタル無線機器を自ら落札等をした後,発注者と契約を締結して当該機器を納入するほか,代理店等が落札した場合は当該代理店等を通じて消防救急デジタル無線機器を納入していた。
(3) 指令台について
指令台は,119番通報の受付,出動車両の編成,出動指令,現場活動の支援情報の提供等を統括するための装置であり,消防救急無線と接続して使用されることがある。指令台の主な製造販売業者は,原告,日本電気,沖電気工業,《G》及び《H》であった。
(4) 5社による会合の状況等
ア 平成20年11月から平成21年12月までの月曜会の開催状況
原告,日本電気及び沖電気工業(以下「3社」という。)は,消防救急アナログ無線に係る機器の主要メーカーであったところ,消防本部で使用する消防救急無線については,平成20年5月頃,前記(2)アの経緯により,消防救急アナログ無線の使用期限である平成28年5月31日までの短期間に,全国の市区町村等から,これをデジタル通信方式に対応するものとするための発注が見込まれる状況になった。
このような状況を受け,原告の《A4》は,日本電気の《B2》及び沖電気工業の《C3》に対し,消防救急デジタル無線機器についての会合の開催を提案し,上記両名がこれに応じたことから,平成20年11月10日以降平成21年12月まで,おおむね月1回の割合で(その開催日及び開催場所は,別紙3「会合の実施状況」の番号1,3~7の各「日付」欄及び「開催場所」欄記載のとおりである。),《A4》(ただし,平成21年6月以降は,《A2》),《B2》及び《C3》といった原告,日本電気及び沖電気工業(3社)の関係者による「月曜会」,「三日月会」と呼ばれる会合が開催された(以下,後記のとおり平成26年3月まで継続的に開催されたこれらの一連の会合を「月曜会」という。ただし,月曜会における協議内容等については,当事者間に争いがある。)。
なお,実証試験に係る実施設計については,①平成21年12月10日,岐阜市消防本部分,鳥取県西部広域行政管理組合消防局分及び春日・大野城・那珂川消防組合消防本部分の入札が実施され,岐阜市消防本部分については《Ⅰ》(以下「《Ⅰ》」という。)が,鳥取県西部広域行政管理組合消防局分については《J》(以下「《J》」という。)が,春日・大野城・那珂川消防組合消防本部分については《K》(以下「《K》」という。)が,それぞれ落札し,②平成22年1月29日,京都市消防局分,神戸市消防局分及び玉野市消防本部分の入札が実施され,このうち,京都市消防局分については《L》(以下「《L》」という。)が,玉野市消防本部分については《М》(以下「《М》」という。)がそれぞれ落札した。
イ 平成22年1月から平成23年12月までの月曜会の開催状況
平成22年1月以降平成23年12月まで,おおむね月1回の割合で(その開催日及び開催場所は,別紙3の番号8~36の各「日付」欄及び「開催場所」欄記載のとおりである。),原告,日本電気及び沖電気工業の関係者による会合(月曜会)が開催されたところ,平成22年5月以降,日立国際電気の《D1》が,同年9月以降,日本無線の《E1》が,当該会合(月曜会)に参加するようになった(ただし,月曜会における協議内容等については,当事者間に争いがある。)。
なお,上記会合に際して,「ちず」と称する一覧表(これには,その作成時期に応じて「v1」,「v2」などの名称も付されていることから,以下,これらを総称する場合は「ちず」と,個別のちずをいう場合は「ちずv1」等とそれぞれ略称する。また,ちず中の「AI」は沖電気工業,「BC」は日本電気,「CG」は原告,「DK」は日立国際電気,「EC」は日本無線を意味する隠語である。乙153)が作成されるなどした。
ウ 平成24年4月から平成26年3月までの月曜会の開催状況
平成24年4月24日,5社の関係者による会合(月曜会)が開催された。一方,同年5月,日本電気の《B3》は,沖電気工業の《C2》との間のちずに関するメールのやり取り等について日本電気の社内調査の対象となったため,同月以降の会合(月曜会)には出席しなくなった(乙212,214,216,218,221,222)。
そのため,平成24年5月から平成26年3月までの間,おおむね3か月に1回の割合で(その開催日及び開催場所は,別紙3の番号37~46の各「日付」欄及び「開催場所」欄記載のとおりである。),4社(原告,沖電気工業,日立国際電気及び日本無線をいう。以下同じ。)の関係者による会合(月曜会)が開催された(ただし,月曜会における協議内容等については,当事者間に争いがある。)。
なお,以上の会合に際しては,ちずに類似した一覧表(これらの一覧表とちずを併せて「ちず等」という。乙227)が作成されるなどした。
エ 平成26年4月7日の匿名文書の送付と原告らの社内調査の実施
4社は,平成26年4月7日,匿名の者から「原告の《A3》,日本電気の《B3》,沖電気工業の《C1》及び《C2》,日立国際電気の《D1》及び《D2》並びに日本無線の《E1》が,会合に出席して談合を行っていることを指摘し,《AⅠ》にも情報提供している」旨の文書及び「ちずv22」の送付(乙243)を受けた。
4社は,平成26年4月7日から翌日にかけ,当該文書で会合出席者として指摘された自社の従業員らを対象とする社内調査を開始した。
沖電気工業の《C1》及び《C2》,日立国際電気の《D1》及び《D2》並びに日本無線の《E1》は,上記のとおり社内調査の対象となり,また,自身の行為が実名を挙げて明るみに出たことから,平成26年4月9日以後,他の会合出席者と連絡を取らないようになった。
(5) 消防救急デジタル無線機器の入札等の実施状況
ア 平成22年5月から平成26年4月までの間に実施された消防救急デジタル無線機器の入札等の実施状況は,別紙4「個別物件に係る基本的事実関係一覧表」記載のとおりである(ただし,別紙4の「納入予定メーカー」欄及び「本件合意に基づいて納入した物件」欄の記載内容は,本件基本合意の存在及び5社が納入予定メーカーを決定したか否かについて当事者間に争いがある。)。
別紙4記載の516物件については,5社のいずれかが消防救急デジタル無線機器を納入しているところ,このうち被告の認定に係る「本件基本合意に基づいて納入した物件」は,280物件(約54%)であった。
イ 上記アの個別物件に関する前提事実は,別紙8「認定事実」第1の4中の【前提事実】に記載したとおりである。
(6) 本件排除措置命令及び本件課徴金納付命令
ア 被告は,平成29年2月2日,要旨,原告,日本電気及び沖電気工業(3社)が,遅くとも平成21年12月21日頃までに,消防救急デジタル無線機器(多重無線装置,空中線,電源装置,冷暖房装置,印刷機器等の機器のほか,据付工事,鉄塔の建設工事等の工事を含めて発注される場合は,当該機器等を含む。以下「特定消防救急デジタル無線機器」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため,納入予定メーカーを決定し,それ以外の者は納入予定メーカーが納入できるように協力する旨の合意(本件基本合意)をし,3社が参加を呼び掛けたことにより,日立国際電気が遅くとも平成22年5月24日頃までに,日本無線が遅くとも同年9月15日までに本件基本合意に参加したことは,独占禁止法2条6号にいう「不当な取引制限」に該当し,同法3条の規定に違反するとして,5社に対し,次の(ア)~(オ)の措置を命ずる本件排除措置命令を発した。
(ア) 5社は,それぞれ①特定消防救急デジタル無線機器に係る5社の合意が消滅していることを確認すること,②今後,互いに又は共同して納入予定メーカーを決めず,自主的に受注活動を行うことを,取締役会において決議しなければならない。
(イ) 上記(ア)の措置につき,自社を除く4社及び特定消防救急デジタル無線機器を発注する市町村等に通知し,かつ自社の従業員に周知徹底しなければならない。
(ウ) 5社は,今後,互いに又は共同して納入予定メーカーを決めてはならない。
(エ) 特定消防救急デジタル無線機器の納入に関する独占禁止法の遵守について,営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じなければならない。
(オ) (ア),(イ)及び(エ)に基づきとった措置を被告に報告しなければならない。
イ 被告は,平成29年2月2日,原告に対し,上記アの違反行為の実行期間を平成23年4月17日から平成26年4月16日までの3年間とし,当該実行期間における特定消防救急デジタル無線機器に係る原告の売上高(以下,当該特定消防救急デジタル無線機器に係る別紙4のうち,「課徴金物件番号」欄に番号記載のある各取引を総称して「本件130物件」といい,個々の取引は別紙4の「課徴金物件番号」に応じて「物件1」等と略称する。)を480億3850円として,これを基礎して算定された課徴金48億円を納付することを命ずる本件課徴金納付命令を発した。
(7) 本件訴訟の提起
原告は,平成29年8月1日,被告を相手に,本件排除措置命令及び本件課徴金納付命令の取消しを求める本件訴訟を提起した。
2 本件の争点
本件の争点は,本件排除措置命令及び本件課徴金納付命令の適法性であり,具体的には,次のとおりである。
(1) 本件基本合意の成否
(2) 本件基本合意が「不当な取引制限」の要件に該当するか否か
(3) 独占禁止法7条2項に規定する要件の該当性
(4) 本件違反行為の実行期間
(5) 本件130物件の「当該商品又は役務」の要件の該当性
(6) 本件違反行為の実行期間における原告の特定消防救急デジタル無線機器に係る売上額及びこれに対する課徴金の額
3 争点に関する当事者の主張
争点に関する当事者の主張は,別紙5「争点に関する当事者の主張」のとおりである。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
前提事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,別紙8「認定事実」第1の事実(以下「認定事実」といい,これを引用する場合は,その項番号等を用いて「認定事実1(1)」等と略称する。)が認められる(証拠中のこの認定事実に反する部分は,採用することができない。なお,認定事実に関する当事者の主張に対する判断は,別紙8第2の事実認定の補足説明のとおりである。)。
2 争点(1)(本件基本合意の成否)について
(1) 前提事実及び認定事実によれば,次の事情を指摘することができる。
ア 消防救急無線については,平成20年5月13日付け総務省告示第291号によりアナログ通信方式による周波数帯の使用期限が平成28年5月31日とされたことから,それまでの短期間に,全国の市町村等から,全国の約800消防本部において使用する消防救急無線をデジタル通信方式に対応するものとするための発注(基本設計,実施設計,整備)がされる見込みとなり,更に遅くとも平成21年7月までには,6消防本部で国が財源を用意した実証試験(実施設計及び整備)も実施されることとなった(前提事実(2)ア)。
消防救急デジタル無線機器の発注は,アンテナや電源装置,冷暖房装置,印刷機器,指令台等の機器や,据付工事,鉄塔の建設工事等が併せて発注される場合があり,また,発注者が定める仕様書に基づいて,一般競争入札,指名競争入札,公募型又は指名型プロポーザル方式等の方法により行われるものであった。そのため,(消防救急デジタル無線機器を自社で製造するほか,自社の子会社等に委託して製造するなどしている)原告,日本電気,沖電気工業,日立国際電気及び日本無線(5社)は,消防本部,実施設計を受託した設計会社等に対して,自社の独自仕様を仕様書に入れ込んでもらえるように営業活動を行うことを予定しており,自ら落札等をした場合は発注者と契約を締結して,代理店等が落札した場合は当該代理店等を通じて,消防救急デジタル無線機器を納入することとしていた(前提事実(2)イ・ウ)。
イ 消防救急アナログ無線機器の主要メーカーであった3社(原告,日本電気及び沖電気工業)は,上記アのような状況を踏まえ,平成20年11月から,おおむね月1回のペースで月曜会を開催し,消防救急デジタル無線機器の市場を分け合う方法を話し合った(認定事実1(1))。平成21年8月頃には,原告の《A7》らは,沖電気工業の《C1》及び《C2》に対し,月曜会に言及して,今後発注される消防救急デジタル無線機器の整備につき原告が3社で受注調整して市場を分け合うことに前向きである旨を発言し,《C1》もこれに積極的に応じた(認定事実2(1)ア)。
3社は,平成21年9月の月曜会(別紙3の番号4)において,次回の月曜会には,各社の営業責任者級の者を出席させ,消防救急デジタル無線機器の整備について3社で受注調整を行うという方針を了解し合いたい旨の提案があり,これを了解した(認定事実2(1)イ)。
ウ 3社は,平成21年10月から同年12月までの月曜会(別紙3の番号5~7)において,各社の営業責任者級の者が出席し,実証試験6物件につき受注希望を表明し合い,実証試験に係る実施設計の大まかな予算額を共有して各社が支援等をする設計会社が落札できるよう対応することとし,また,全国の約800消防本部で発注される消防救急デジタル無線機器の整備に関し,①その機器の種類ごとに納入予定メーカーを決める方法や②ある程度の期間を区切って直近の物件を対象に受注調整を行う方法(漁獲高制)を提案するなどして,日立国際電気及び日本無線を含めて受注調整を行うことを話し合った(認定事実2(2))。
エ 3社は,平成22年1月から同年9月までの月曜会(別紙3の番号8~19)等において,順次,(遅くとも同年5月24日頃までに)日立国際電気及び(遅くとも同年9月15日頃までに),日本無線を加えた上,実証試験に係る6物件及び先行して発注される本事業に係る4物件の受注希望を表明し合い,その納入予定メーカーを決めた上,各物件の推定予算額を共有したり,実証試験に係る物件の提案書の内容を確認し合ったりするなどし,同年10月から平成23年1月までの間に行われたこれらの物件の入札において,納入予定メーカーが落札して納入することとなった(認定事実3(1))。
オ また,5社は,平成22年11月から平成23年12月までの月曜会(別紙3の番号21~36)や個別の協議等において,各社の営業責任者級の者が出席し,全国の約800消防本部で発注される消防救急デジタル無線機器の整備につき,ちずの作成及び更新等により物件ごとに受注希望を表明し合い,各社の営業戦略というべき物件ごとの受注希望を共有した上,必要に応じて受注希望者間でも話し合うなどしてその納入予定メーカーを決めた(認定事実3(2))。その上,5社は,平成24年4月の月曜会(別紙3の番号37)において,後記カのとおり実施された消防救急デジタル無線機器の入札等につき,「ちず」に類似した一覧表を用いて納入予定メーカーが納入することができたか否か等を確認し合うとともに,納入予定メーカーの変更等に係る受注希望者間の協議等の結果を報告し合った(認定事実3(4)ア)。
さらに,4社(原告,沖電気工業,日立国際電気及び日本無線)は,平成24年5月から平成26年3月までの月曜会(別紙3の番号38~46)において,①平成24年5月10日以降は日本電気が月曜会への出席等をすることができなくなったことを踏まえ,これまでに決定した納入予定メーカーはそのままとし,引き続き,4社で,受注調整を継続し,決定した納入予定メーカーが納入できるように協力し合うことを確認した上,②後記カのとおり実施された消防救急デジタル無線機器の入札等につき,「ちず」に類似した一覧表を用いて「チャン」欄記載の納入予定メーカーが納入することができたか否か等を確認し合うとともに,必要に応じて受注希望者間の協議等により納入予定メーカーを変更したり絞り込んだりした(認定事実3(4)イ~オ,認定事実4)。
カ 5社は,平成22年5月から平成26年4月までの間に実施された消防救急デジタル無線機器の入札等516件のうち,504件について上記オのとおり納入予定メーカーを決定し,このうち280件の物件について,納入予定メーカーが自ら又は代理店等において落札して機器納入メーカーとなった(前提事実(5)ア,認定事実5(1),別紙4)。別紙4の「本件合意に基づいて納入した物件」に該当する物件の平均落札率は,93.47%であった(認定事実5(2))。
キ 上記カの消防救急デジタル無線機器の入札等においては,5社の月曜会出席者が,現地の営業担当者に対し,「ちず」そのものを見せて営業活動の方針を指示するなどした上,5社のうち納入予定メーカーとなった者は,自社の独自仕様が盛り込まれるよう営業活動を行い,納入予定メーカー以外の者は,主として納入予定メーカーと個別に連絡し合い,必要に応じて,納入予定メーカーに見積協力を行う,入札に参加しない又は「お付き合い入札」を依頼されたときはこれに応じ,納入予定メーカーが指示した価格以上の価格で入札するなどして,決定した1社又は複数社の納入予定メーカーが納入できるようにした(認定事実3(3)・4,別紙4の「入札業者名等」欄)。
(2) 以上の事情を総合すれば,3社(原告,日本電気及び沖電気工業)は,遅くとも平成21年12月21日までに,全国の約800消防本部で発注される特定消防救急デジタル無線機器(多重無線装置,空中線,電源装置,冷暖房装置,印刷機器等の機器のほか,据付工事,鉄塔の建設工事等の工事を含めて発注される場合は,当該機器等を含む消防救急デジタル無線機器)について,受注価格の低落防止等を図るため,各社における物件ごとの受注希望その他の事情を勘案した話合いにより,納入予定メーカーを決定し,納入予定メーカー以外の者は納入予定メーカーが納入できるように協力する旨の合意(本件基本合意)をしたというべきであり,その後,順次,(遅くとも平成22年5月24日頃までに)日立国際電気及び(遅くとも同年9月15日頃までに)日本無線がそれぞれ本件基本合意に加わったものと認められる。
(3) これに対し,原告は,次のア~オの点を指摘して,5社間で本件基本合意が成立していない旨を主張するが,次のとおり,いずれの点についても原告の主張を採用することはできない。
ア 原告は,原告の《A2》が《A1》及びPMOの指示・承認なしに消防デジタル無線機器について他社と受注調整を行うことを合意し,又はこれを実行する権限を有していなかったから,《A2》が月曜会に参加したとしても,本件基本合意が成立することはない旨を主張する。
しかしながら,前提事実及び認定事実によれば,①《A2》は,原告における客先への訪問等の営業活動を行う部門(情報通信ネットワーク営業部)に対する指導・支援等の業務を行う情報通信システム営業統括部に所属し,その統括部長代理等として上記業務に従事しており,PMOの統括責任者でもあったこと(前提事実(1)ア),②《A2》は,現に,月曜会で話し合った内容(前記(1)イ~エ参照)について,随時消防デジタル無線ワーキンググループにおいて又は電子メール等により報告し,《A1》(PMOのプロジェクトオーナー)や《A6》(当時の上司であり,PMOのプロジェクトオーナー補佐)らと共有した(認定事実3(3)オ)が,《A1》らがその内容に異論を述べたことはうかがわれないこと(したがって,《A1》らは,月曜会における《A2》の発言等を少なくとも黙示に承認していたものと推認することができる。)等を指摘することができる。
これらの事情を総合すれば,《A2》は,原告の担当者として,各社の営業責任者級の者が集まる月曜会に出席し,実証試験6物件や全国の約800消防本部で発注される消防救急デジタル無線機器の整備に関する3社(又は5社)間の受注調整(前記(1)イ~エ参照)につき意見交換をするなどし,その話合いの結果を原告の社内に持ち帰り,少なくとも黙示に《A1》らの承認を得ることにより,他社との間で本件基本合意に至ったものと認められる。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
イ 原告は,①平成21年9月から同年12月までに開催された会合(月曜会)において,3社が実証試験の物件の納入予定メーカーや全国で発注される特定消防救急デジタル無線機器の割り振り方法等について認識し合うなどしたことはなく,平成22年1月以降の会合において受注調整を行うか否かについての議論が継続していたこと,②原告が無線基地局の既設業者となっている玉野市消防本部の物件を受注する目途も立たない状況の下で,原告が日本電気及び沖電気工業との間で受注調整に関する合意はできなかったこと等から,3社間において,平成21年12月21日までに,特定消防救急デジタル無線機器の受注調整に関する合意が成立したとはいえない旨を主張する。
しかしながら,平成21年9月から同年12月までの月曜会において,3社が実証試験の物件の納入予定メーカーや全国で発注される特定消防救急デジタル無線機器の割り振り方法等について認識し合うなどしたことは,前記(1)イ・ウのとおりである。このことは,殊に原告に関する事情,すなわち,①平成21年8月21日の会合(別紙3の番号3)において,原告の《A7》らは,沖電気工業の《C1》らに対し,月曜会に言及して,今後発注される消防救急デジタル無線機器の整備につき,原告が3社で受注調整して市場を分け合うことに前向きである旨を発言したこと(認定事実2(1)ア),②同年9月の月曜会(別紙3の番号4)において,原告の《A2》が,日本電気の《B2》及び沖電気工業の《C3》に対し,消防救急デジタル無線機器の整備について,次回の月曜会には日本電気も沖電気工業も消防救急デジタル無線分野の営業責任者級の者を出席させ,3社で受注調整を行うという方針について了解し合いたい旨を提案したこと(認定事実2(1)イ),③同年10月の月曜会(別紙3の番号5)において,原告の《A2》が,要旨「いきなり市場を壊すことはお互いに避けたい。各社バランスよくシェアできないか」,「実証試験は日立国際電気,日本無線,《G》を含んだ6社で考えないと初っ端で市場を壊すことになる」などと発言し,全国で発注される消防救急デジタル無線機器についても,その機器の種類ごとに納入予定メーカーを決めるという方法(基地局,回線制御,車両無線,携帯無線を分けた横串でのアライアンス)を提案したこと(認定事実2(2)ア),④同年11月の月曜会(別紙3の番号6)において,原告の《A2》は,日立国際電気を仲間に加えることとしたらどうかとの提案をしたこと(認定事実2(2)イ),⑤同年12月の月曜会会合(別紙3の番号7)において,原告の《A2》が,「日立国際電気を含めた6社で次年度以降のアライアンスを含めて包括的にやらないと市場破壊は避けられない。」旨の沖電気工業の出席者の発言を受けて,要旨「総論では賛成。ただ,本部でいかに統制をとれるかにかかっている。コンプラの面では価格統制(札)をすればよい」などと発言したこと(認定事実2(2)ウ)等に照らしても明らかである。
また,平成22年1月以降に月曜会で話し合われた内容は,前記(1)エ・オのとおり,実証試験に係る6物件及び先行して発注される本事業に係る4物件や全国の約800消防本部で発注される消防救急デジタル無線機器の整備についての具体的な受注調整の方法等であり,少なくとも3社の間ではこれらについての納入予定メーカーを決定するなどの受注調整を行うことが所与のものとされていたのであるから,平成21年12月21日までに原告が玉野市消防本部の物件を受注する目途が立たなかったことのみをもって,同日以前に本件基本合意が成立していなかったとはいえない。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
ウ 原告は,①平成22年1月から同年11月までの会合(月曜会)において,これに出席した《A2》は,全国で発注される特定消防救急デジタル無線機器の受注調整を行う目的を有しておらず,その納入予定メーカーの割振り方法について意見を述べ合うこと等もなかったこと,②《A2》が平成22年11月24日の会合において,受注調整を拒絶し,それ以降の会合には出席せず,《A3》に対しては今後会合には出席しないよう指示したこと,③同年12月以降に《A3》が会合(月曜会)に参加したことは,《A2》の指示に反して原告に全く報告なく行われたものであり,《A3》の個人的行為にすぎないこと,④同月以降に作成されたちず等は,何ら拘束力をもたず,これによって納入予定メーカーが決定されていたわけではないこと等から,これらの点からも本件基本合意が成立したとはいえない旨を主張する。
しかしながら,①の点については,原告の《A2》が実証試験の物件だけでなく全国で発注される消防救急デジタル無線機器の整備も含めてその受注調整について各社と話合いをしていたことは,前記(1)エのとおりであり,このことは,平成22年1月から同年11月までに開催された会合又はその前後における各社間のやりとりの状況が認定事実3(1)のとおりであることに照らしても明らかである。
また,②の点につき原告主張の事実が認められないことは,別紙8第2の1(10)のとおりであり,③の点につき原告主張の事実が認められないことは,別紙8第2の3のとおりである。
④の点については,5社(4社)が,ちず等の作成やこれに踏まえた受注希望者間の協議等により全国で発注される消防救急デジタル無線機器の整備に関する受注調整を行い,全国で発注された特定消防救急デジタル無線機器の物件の相当数について5社(4社)間で決めた納入予定メーカーが機器納入メーカーとなったことは,前記(1)オ・カのとおりであり,④のちず等に関する原告の指摘は,少なくとも本件基本合意の成立を否定する事情になるものではない。
したがって,原告指摘の点をもって本件基本合意の成立を否定することはできず,原告の上記主張は採用することができない。
エ 原告は,日本電気,沖電気工業及び日本無線が,本件基本合意とは別個の合意に基づく協力関係にあり,日本電気が平成24年5月に本件基本合意から離脱した後も,上記協力関係を継続していたことに照らすと,被告指摘の事実をもって原告を含めた本件基本合意が成立するとはいえない旨を主張する。
しかしながら,原告を含めた5社間で本件基本合意が成立したことは,前記(1)・(2)のとおりである。原告が指摘するような①日本電気及び沖電気工業間の協議の事実及び②日本電気,沖電気工業及び日本無線間の納入予定メーカーのやり取り等は,結局のところ本件基本合意の形成過程における一事情(①)又は本件基本合意に基づく受注調整の過程における一事情(②)にすぎないから,これをもって直ちに日本電気,沖電気工業及び日本無線間に本件基本合意とは別の合意があったとは認められない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
オ 原告は,①本件において5社間で協議された対象商品は,消防救急デジタル無線機器のみであること,②平成21年12月までの会合(月曜会)の協議内容は,実証試験に係る物件だけであり,本事業に係る物件(別紙6「課徴金計算の基礎とならない物件一覧」の「A」欄に該当する物件)を含まないこと,③《G》が受注を希望する物件,(別紙6の「B」欄に該当する物件。以下「《G》物件」という。)は,《G》が本件基本合意の当事者になっていない以上,受注調整ができないこと,④指令台と無線機器が一括発注される物件(別紙6の「C」欄に該当する物件)は,受注調整が困難であるなどの事情があることから,本件基本合意の対象物件は被告主張の特定救急デジタル無線機器ではなく,別紙6の「A」~「C」欄に該当する物件を除くべきである旨を主張する。
しかしながら,①の点については,前記(1)アで指摘したとおり,㋐そもそも消防救急デジタル無線機器の発注は,アンテナや電源装置,冷暖房装置,印刷機器,指令台等の機器や,据付工事,鉄塔の建設工事等が併せて発注される場合があり(前提事実(2)ウ),㋑5社間での消防救急デジタル無線機器の整備に関する納入予定メーカーの割り振りについては,そのことを踏まえて,原則として発注する消防本部単位で協議されていたこと(認定事実3(1)・(2)),㋒㋑の協議の際に割り振りの対象を消防救急デジタル無線機器に限定し,これに多重無線装置,空中線,電源装置,消防装置,印刷機器等の機器のほか,据付工事,鉄塔の建設工事等が発注される場合を含めないものとしていたとの事情はうかがわれないことに照らし,5社間で協議された対象商品が,消防救急デジタル無線機器のみであり,多重無線装置,空中線,電源装置,消防装置,印刷機器等の機器のほか,据付工事,鉄塔の建設工事等が発注される場合を含めていなかったとは認められない。
②の点については,前記(1)で指摘したとおり,少なくとも平成21年12月21日に開催された会合(別紙3の番号7)では,3社が全国で発注される消防救急デジタル無線機器の整備に関する納入予定メーカーの割り振り方法を協議していたのであり,前記(2)のとおり,本件基本合意の対象は特定救急デジタル無線機器であったと認められる。上記事実に照らしても,本件基本合意の対象が実証試験に係る物件のみであったとはいえない。
③の点は,認定事実によれば,本件基本合意に基づく受注調整では,《G》物件も対象とされ,原告がその受注希望を表明し,納入予定メーカーとなり,《G》が落札した後に原告がその機器納入メーカーになったことが認められる。したがって,《G》が本件基本合意の当事者になっていないことのみをもって,本件基本合意の対象から《G》物件が除外されるべきであるとはいえない。
④の点は,上記①の点に関して説示したところに加え,認定事実によれば,本件基本合意に基づく受注調整では,指令台一括発注の物件も対象とされており,平成23年7月20日に開催された会合では,出席者は,指令台一括発注の場合についても,発注者等に対してはなるべく一括発注にしないよう働きかけることとし,一括発注となり,納入予定メーカー以外の社の独自仕様が採用されてしまっても,納入予定メーカーは潔い態度を取り,文句を言わないようにするとの認識を共有した(認定事実3(2)チ)というのである。したがって,原告指摘の事情のみをもって,本件基本合意の対象から指令台一括発注の物件が除外されるべきであるとはいえない。
したがって,原告の上記主張はいずれの点も採用することができない。
3 争点②(本件基本合意が「不当な取引制限」の要件に該当するか否か)について
(1) 独占禁止法2条6項は,この法律において「不当な取引制限」とは,事業者が,契約,協定その他何らの名義をもってするかを問わず,他の事業者と共同して対価を決定し,維持し,若しくは引き上げ,又は数量,技術,製品,設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し,又は遂行することにより,公共の利益に反して,一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいうと規定している。そして,同項にいう「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」とは,当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいうものと解される(最高裁平成22年(行ヒ)第278号同24年2月20日第一小法廷判決・民集66巻2号796頁参照)。
(2) これを本件についてみると,本件基本合意は,前記2(2)のとおり,5社(平成24年5月に日本電気が本件基本合意から離脱した後においては4社。以下同じ。)が,特定消防救急デジタル無線機器について,話合いにより,納入予定メーカーを決定し,納入予定メーカー以外の者は納入予定メーカーが納入できるように協力するという内容の取決めであり,5社は,本来的には,互いに各社の事業活動を十分に予測できない状況下で,消防本部又は実施設計を受託した設計会社等に対する自社の独自仕様を仕様書に入れ込んでもらうための営業活動をするか否か,特定消防救急デジタル無線機器の入札等に参加するか否か,その入札価格をいくらとするかなど特定消防救急デジタル無線機器の納入に至るまでに必要となる様々な事業活動について自由に決めることができるはずのところ,このような取決めがされたときは,これに制約されて意思決定を行うことになるという意味において,各社の事業活動が事実上拘束される結果となることが明らかである。そうすると,本件基本合意は,独占禁止法2条6項にいう「その事業活動を拘束し」の要件を充足するものということができる。そして,本件基本合意の成立により,5社の間に,上記の取決めに基づいた行動をとることをお互いに認識し認容して歩調を合わせるという意思の連絡が形成されたものといえるから,本件基本合意は,同項にいう「共同して…相互に」の要件も充足するものということができる。
また,本件基本合意の当事者は,平成22年5月から平成26年4月までの間に実施された特定消防救急デジタル無線機器の入札等(516物件)について,現にその機器納入メーカーとなった5社であること(前提事実(5)ア),本件基本合意の対象は,全国の約800消防本部で発注される特定消防救急デジタル無線機器とされたこと(前記2(2)),本件基本合意に基づく個別の受注調整においては,前記2(1)カ・キで説示したところに鑑みれば,5社の現地の営業担当者を通じて,5社の代理店又は5社と協力関係にある地元業者の協力等も相応に期待できる状況の下にあったものといえること等に照らすと,本件基本合意は,それによって,その当事者である5社がその意思で上記のような特定救急デジタル無線機器の入札等に係る市場における落札者及び落札価格をある程度自由に左右することができる状況をもたらし得るものであったということができる。しかも,前記2(1)オ・カのとおり,平成22年5月から平成26年4月までの間に実施された消防救急デジタル無線機器の入札等のほとんど(516件中504件)について本件基本合意に基づく個別の受注調整が現に行われ,このうち約半数の物件(280件)において納入予定メーカーとされた者が機器納入メーカーとなり,その平均落札率も93.47%であったことからすると,本件基本合意は,平成22年5月から平成26年4月までの間に実施された特定消防救急デジタル無線機器の入札等に係る市場の相当部分において,事実上の拘束力をもって有効に機能し,上記の状態をもたらしていたものということができる。そうすると,本件基本合意は,独占禁止法2条6項にいう「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」の要件を充足するものというべきである。
さらに,以上のような本件基本合意が,独占禁止法2条6項にいう「公共の利益に反して」の要件を充足するものであることも明らかである。
以上によれば,本件基本合意は,独占禁止法2条6項所定の「不当な取引制限」に当たるというべきである。
(3) これに対し,原告は,次のア・イの点から,原告を含めた5社の行為(本件基本合意)は,独占禁止法2条6項に規定する「不当な取引制限」に該当しない旨を主張するが,原告の上記主張は,次のとおりいずれの点も採用することができない。
ア 原告は,《A2》又は《A3》が,他社との合意の主体とはなり得ず,仮に《A2》又は《A3》が他社と合意したとしても,独占禁止法2条6項の「共同して…相互に」の要件を充たさない旨を主張する。
しかしながら,《A2》が,原告の担当者として,各社の営業責任者級の者が集まる月曜会に出席し,実証試験6物件や全国の約800消防本部で発注される消防救急デジタル無線機器の整備に関する3社(又は5社)間の受注調整につき意見交換をするなどし,その話合いの結果を原告の社内に持ち帰り,少なくとも黙示に《A1》らの承認を得ることにより,他社との間で本件基本合意に至ったことは,前記2(3)アで説示したとおりである。
また,認定事実によれば,①《A3》は,平成22年5月以降,《A2》と共に又は一人で各社の営業責任者級の者が集まる月曜会に出席し,全国の約800消防本部で発注される消防救急デジタル無線機器の整備に関する3社(又は5社)間の受注調整につき意見交換をするなどし,特に,平成23年11月の月曜会(別紙3の番号35)においては,日本電気が沖電気工業や日本無線に消防救急デジタル無線機器をOEM供給することになっていたことの説明がなかったことを問題視する旨の発言をし,「ちず」を白紙に戻すべき旨の発言をし,同年12月の月曜会(別紙3の番号36)において,出席者に対し,原告から示した納入予定メーカーの割り振り案を踏まえて納入予定メーカーの変更を協議させたこと(認定事実3(2)シ~ナ),②《A3》は,上記のような月曜会の話合いの結果について,随時,消防デジタル無線ワーキンググループにおいて又は電子メール等により報告し,《A1》(PMOのプロジェクトオーナー)や《A6》(当時の上司であり,PMOのプロジェクトオーナー補佐)らと共有した(認定事実3(3)オ)が,《A1》らがその内容に異論を述べたことはうかがわれないこと(したがって,《A1》らは,月曜会における《A2》の発言等を少なくとも黙示に承認していたものと推認することができる。)等を指摘することができる。これらの事情を総合すれば,《A3》も,原告の担当者として,上記のように月曜会に出席して意見交換をするなどし,その話合いの結果を原告の社内に持ち帰り,少なくとも黙示に《A1》らの承認を得ることにより,他社との間で本件基本合意に基づく3社(又は5社)間の受注調整を行ったものと認められる。
そうすると,原告の上記主張は,その前提を欠いているというべきであり,採用することができない。
イ 原告は,仮に本件基本合意が成立していたとしても,①納入予定メーカーが納入できた物件は54%に過ぎず,本件基本合意に基づいて納品された物件とそうでない物件の平均落札率の差もわずかであるなど,本件基本合意が有効に機能していたとはいえないこと,②会合(月曜会)の参加者は,各社の営業活動をコントロールできていなかったし,原告,日本電気及び沖電気工業は受注調整の結果を自社の営業担当者に伝達しておらず,当該会合の際に納入予定メーカーから他の入札参加者に対して必ずしも協力依頼がされていないこと,③当初から,《G》,《H》という有力なアウトサイダーが存在したこと等に照らし,本件基本合意は,「その事業活動を拘束し」の要件及び「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」の要件を充足しない旨を主張する。
しかしながら,①の点については,現に本件基本合意に基づく個別の受注調整が行われた特定消防救急デジタル無線機器の件数(516件)に照らすと,このうち納入予定メーカーが機器納入メーカーとなることができた物件が全体の54%にとどまるとしても,このことをもって直ちに本件基本合意が事実上の拘束力をもって有効に機能しなかったとはいえない。また,㋐本件基本合意に基づいて納入された物件の平均落札率(93.47%)と㋑これに基づかずに納入された物件の平均落札率(92.94%)の差もわずかであるとの原告の指摘も,㋑は被告が「本件基本合意に基づいて納入された物件」と認定しなかったものにすぎず,本件基本合意に基づく個別の受注調整等の影響が全くなかったものであるとは断じ難いから,上記指摘に係る平均落札率の差のみをもって直ちに本件基本合意が事実上の拘束力をもって有効に機能しなかったとはいえない。このことは,日本電気の離脱後に落札率の顕著な低下がみられないこととの関係でも同様である。
②の点については,原告,日本電気及び沖電気工業が受注調整の結果を自社の営業担当者に伝達したこと及び納入予定メーカーが他社に対して協力依頼をするなどしたことは,認定事実3(3)・4(特に,認定事実4(3),(8),(12),(17),(28),(46),(47)を参照)のとおりである。また,特定救急デジタル無線機器の発注方法等(前提事実(2)ウ),5社における営業体制(前提事実(1)),その協力関係にある地元企業等の存在,5社と従前の消防本部との関係等に鑑みれば,本件基本合意に基づく個別の受注調整の対象となった物件について5社等の営業活動が行われていたものがあっても不自然不合理ではなく,5社も本件基本合意の下でそのような営業活動が行われることを想定していたといえるから(認定事実4(8),(12),(17),(42),(44)~(47)等も参照),このことをもって直ちに本件基本合意が事実上の拘束力をもって有効に機能しなかったとはいえない。仮に,原告がBCチームを組織して他社既設物件に対する積極的な営業活動を行っていたとしても,このことをもって直ちに本件基本合意が事実上の拘束力をもって有効に機能しなかったとはいえないことは,上記と同様である。
③の点については,認定事実によれば,例えば,本件基本合意に基づく個別の受注調整の場面においては,①原告の《A3》は,指令台又は無線の既設業者が《G》である消防本部については,原告の受注希望を表明し(認定事実3(2)カ),現に《G》又はその子会社等が落札した物件28件のうち27件(別紙4の「落札業者名」欄に「《G》」,「《N》」,「《О》」,「《P》」,「《Q》」と記載がある物件のうち,別紙4の総通番429を除いたものを参照)について原告が単独で又は他社と共に納入予定メーカーとなっており,また,②日立国際電気の《D1》は,「実証試験の物件については1物件で納入予定メーカーとなれればよく,全体では,《H》が指令台の既設業者である消防本部や日立国際電気を気に入ってくれている消防本部の物件で納入予定メーカーとしてほしい」旨の意見を述べており(認定事実3(1)カ),現に《H》が落札した物件5件のうち3件(別紙4の総通番15,41,318の物件)について日立国際電気が単独で又は他社と共に納入予定メーカーとなっている。そうすると,《G》及び《H》が本件基本合意の当事者となっていないことをもって直ちに本件基本合意が事実上の拘束力をもって有効に機能しなかったとはいえない。
したがって,原告の前記主張は,いずれの点も採用することができない。
4 争点(3)(独占禁止法7条2項に規定する要件の該当性)について
(1) 独占禁止法7条2項は,「公正取引委員会は,同法3条の規定に違反する行為が既になくなっている場合においても,特に必要があると認めるときは,所定の手続に従い,当該行為をした事業者等に対し,当該行為が既になくなっている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができる。ただし,当該行為がなくなった日から5年を経過したときは,この限りでない。」旨を規定している。そして,「特に必要があると認めるとき」の要件に該当するか否かの判断については,我が国における独占禁止法の運用機関として競争政策について専門的な知見を有する被告の専門的な裁量が認められるものというべきである(最高裁平成16年(行ヒ)第208号同19年4月19日第一小法廷判決・集民224号1123頁参照)。
(2) 前提事実及び前記2・3で説示したところによれば,原告は前記3のとおり不当な取引制限に該当する行為をした事業者であり,本件基本合意は遅くとも平成26年4月9日までには事実上消滅し,当該行為は既になくなっている(前提事実(4)エ)が,当該行為が長期間にわたるものであったこと(前記2(1)参照),当該行為の取りやめが自発的なものでなかったこと(前提事実(4)エ)等に照らすと,「特に必要があると認めるとき」の要件に該当する旨の被告の判断について,合理性を欠くものであるということはできず,被告の裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものということはできない。
そして,被告は,平成29年2月2日,5社に対する本件排除措置命令を発したところ(前提事実(6)),同日は,上記の当該行為がなくなった日(平成26年4月9日)から5年を経過したとはいえない。
したがって,本件排除措置命令は,独占禁止法7条2項所定の要件を充足するものということができる。
(3) これに対し,原告は,平成22年11月24日以降,本件基本合意から離脱したというべきであり,違反行為の終了から5年を経過している以上,本件排除措置命令は違法である旨を主張する。
しかしながら,原告の上記主張が前提とする「《A2》が平成22年11月24日の会合(月曜会)において,他者に対して受注調整に反対する旨を明言し,以後の会合に出席せず,《A3》に対しても出席しないよう指示した」事実が認められないことは,別紙8第2の1(10)のとおりである。また,「《A3》が平成22年12月以降の会合に出席したのは,個人的に他社の情報を収集するためであり,他社と調整しようという意思も権限も有していなかったし,ちず等の作成に関与したのは,他社から情報を得るために,他者に対して情報を提供しただけである」との原告の主張を採用することができないことは,別紙8第2の3のとおりである。
そうすると,その余の原告指摘に係る事情(《A2》が,中途採用者から成る「BCチーム」を組織して他社既設物件を対象とする営業活動を積極的に行うなどし,また,平成23年9月に《C1》及び《D1》から受けた月曜会に出てきてほしい旨の要望を断ったこと)のみをもって,平成22年11月24日以降,原告が本件基本合意から離脱したとは認め難い。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
5 争点(4)(本件違反行為の実行期間)について
(1) 独占禁止法7条の2第1項1号は,事業者が,不当な取引制限で「商品若しくは役務の対価に係るもの」に該当するものをしたときは,公正取引委員会は,所定の手続に従い,当該事業者に対し,当該行為の実行としての事業活動を行った日から当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間(当該期間が3年を超えるときは,当該行為の実行としての事業活動がなくなる日からさかのぼって3年間とする。以下「実行期間」という。)における当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に100分の10を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない旨を規定している。
(2) 本件基本合意は,前記3(2)のとおり独占禁止法7条の2第1項所定の「不当な取引制限」に当たり,同項1号にいう商品の「対価に係るもの」(本件違反行為)に該当する。そして,前提事実及び認定事実によれば,①本件違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成23年4月8日以前の日であり(別紙4の総通番2参照),②本件違反行為の実行としての事業活動がなくなる日は,後記7で説示する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(令和元年政令第176号による改正前のもの。以下「独占禁止法施行令」という。)6条1項の規定の適用に関する被告の判断を踏まえると,前記4(2)のとおり本件基本合意がなくなった日(平成26年4月9日)までに入札が行われた特定消防救急デジタル無線機器の契約日である平成26年4月16日(物件130〔別紙4の総通番514〕)であると認めるのが相当である。
そうすると,本件違反行為の実行期間は,上記②の日から3年さかのぼった日である平成23年4月17日から平成26年4月16日までの3年間となる。
(3) これに対し,原告は,①日本電気が,相当に高いシェアを有しており,本件基本合意の当事者として,会合の中心的役割を果たしていたこと,②日本電気が後記のとおり本件基本合意から離脱したことにより,他の4社で受注調整の調整どおりの結果が実現されるか全く分からない状況となったこと,③日本電気の離脱後の会合においては納入予定メーカーを決定するための協議が行われず情報交換を行っていただけであったこと等に照らし,平成24年5月10日,日本電気が本件基本合意から離脱したことにより,本件基本合意が事実上消滅したとして,同日が「実行としての事業活動がなくなる日」に当たる旨を主張する。
しかしながら,前記2(1)オ・カのとおり,4社(原告,沖電気工業,日立国際電気及び日本無線)は,平成24年5月から平成26年3月までの月曜会(別紙3の番号38~46)において,①平成24年5月10日以降は日本電気が月曜会への出席等をすることができなくなったことを踏まえ,これまでに決定した納入予定メーカーはそのままとし,引き続き,4社で,受注調整を継続し,決定した納入予定メーカーが納入できるように協力し合うことを確認した上,②平成22年5月から平成26年4月までの間に実施された消防救急デジタル無線機器の入札等につき,「ちず」に類似した一覧表を用いて「チャン」欄記載の納入予定メーカーが納入することができたか否か等を確認し合うとともに,必要に応じて受注希望者間の協議等により納入予定メーカーを変更したり絞り込んだりし,現に,納入予定メーカーを決定した504件の物件のうち280件の物件について納入予定メーカーが自ら又は代理店等において落札して機器納入メーカーとなったのである。
以上の事実に照らすと,原告指摘の事情(①日本電気が相当に高いシェアを有しており,会合の中心的役割を果たしていたこと)を十分考慮しても,本件基本合意は,平成24年5月10日に日本電気が本件基本合意から離脱したことにより,事実上消滅したとはいえない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
6 争点(5)(本件130物件の「当該商品又は役務」の要件の該当性)について
(1) 本件130物件について
ア 独占禁止法の定める課徴金の制度は,不当な取引制限等の摘発に伴う不利益を増大させてその経済的誘因を小さくし,不当な取引制限等の予防効果を強化することを目的として,刑事罰の定め(独占禁止法89条)や損害賠償制度(独占禁止法25条)に加えて設けられたものである(最高裁平成14年(行ヒ)第72号同17年9月13日第三小法廷判決・民集59巻7号1950頁参照)。
本件基本合意は,独占禁止法7条の2第1項所定の商品の「対価に係るもの」に当たるものであるところ,上記の課徴金制度の趣旨に鑑みると,同項所定の課徴金の対象となる「当該商品」とは,本件においては,本件基本合意の対象とされた特定消防救急デジタル無線機器であって,本件基本合意に基づく受注調整等の結果,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものをいうと解される。
イ これを本件についてみると,前提事実及び認定事実,殊に前記2(1)オ・カで説示したところによれば,本件130物件は,別紙4のとおり,平成23年4月17日から平成26年4月16日までの3年間にその契約が締結された特定消防救急デジタル無線機器であって原告が機器納入メーカーとなったものであるところ,これらは,本件基本合意の対象とされ(前記2(2)参照),5社が,ちずの作成及び更新等により本件基本合意に基づく個別の受注調整手続に上程し,その了解の下に納入予定メーカーを原告又は原告を含む複数の社と決定し,原告又はその関係者(《G》,原告の代理店等)が落札して原告が機器納入メーカーとなったものである(認定事実3・5,別紙4)。これに加え,本件130物件を含む納入予定メーカーが機器納入メーカーとなった物件(280件)の平均落札率が93.47%であったことも併せ考慮すれば,本件130物件については,特段の事情がない限り,本件基本合意の対象とされた特定消防救急デジタル無線機器であって,本件基本合意に基づく受注調整等の結果,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものに当たると認められる。
以下,原告の主張する事情をもって上記特段の事情があるといえるか否かという観点から検討する。
(2) 本件130物件につき原告が直接又は間接に受注調整手続に関与していないとの原告の主張について
ア 原告は,月曜会に参加していた《A2》及び《A3》は,会合に出席して値上げについて情報交換をして共通認識を形成し,その結果を持ち帰ることを任されていたとはいえないから,これらの者の関与をもって原告が受注調整手続に関与したとはいえないとして,別紙6の「S」欄に「○」の記載がある物件の売上額は,いずれも本件課徴金納付命令の計算の基礎となる売上高にはならない旨主張する。
しかしながら,原告の《A2》及び《A3》が,原告の担当者として,本件基本合意に基づく個別の受注調整を行ったことは,前記3(3)アのとおりであり,原告主張の上記事情を認めることはできない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
イ 原告は,別紙6の「T」欄に「○」の記載がある物件について,①ちず等に納入予定メーカーの記載がされず,又はちずの「チャン」欄に「Pen」との記載がされ(別紙6の「T-2」の欄に「○」の記載がある物件)若しくは「不採算案件」とされる(別紙6の「T-1」欄に「○」の記載がある物件)などしたため,納入予定メーカーの決定がされておらず,他に納入予定メーカーが原告であったことを裏付ける証拠がないもの,②《G》が納入予定メーカーとされたもの又は受注したもの(原告は,《G》からの製造委託を受け,当該物件を《G》に納入したにとどまり(別紙6の「T-4」欄に「○」の記載がある物件),発注者に対しては《G》の銘板を付けた機器が納入された(別紙6の「T-6」欄に「○」の記載がある物件。甲79)。),③他の違反行為者が納入予定メーカーとされたもの又は受注したもの(別紙6の「T-5」欄に「○」の記載がある物件),④指令台一括発注を前提とした納入予定メーカーの決定はされていないもの(別紙6の「T-7」欄に「○」の記載がある物件),⑤その他の理由により納入予定メーカーが決定されておらず,具体的な競争制限効果が発生したとはいえない物件(別紙6の「T-8」欄に「○」の記載がある物件),⑥ちずの「チャン」欄に原告を含む複数社が記載されており,納入予定メーカーが決定されたとはいえないもの(別紙6の「T-3」欄に「○」の記載がある物件)であり,いずれも原告の特定消防救急デジタル無線機器に係る売上額とはいえない旨を主張する。
しかしながら,①の点(別紙6の「T-1」欄に「○」の記載がある物件〔物件2,41,63,66,76,81,106,118〕,別紙6の「T-2」欄に「○」の記載がある物件〔物件12,16,17,27,35,44,46,50,51,53,58,64,78,81,89,94,97~99,106,108,115,126〕)については,認定事実によれば,月曜会における「ちず」の作成及び更新の際には,㋐「ちず」の「不採算案件」欄に「×」が記載されたものは,既に幾度も話合いを重ねており,これ以上話合いを重ねても納入予定メーカーを更に1社にまで絞ることは難しいという消防本部を(認定事実3(2)チ),㋑「ちず」の「不採算案件」の欄に「△」,「チャン」の欄に複数社の社名が記載されたものは,1社に絞り込む余地はまだあるだろうという消防本部を(認定事実3(2)ツ),㋒「ちず」の「Pend再検討」欄に「Pen」と記載したものは,「チャン」欄記載の納入予定メーカーに変更はない消防本部を(認定事実3(2)ナ),それぞれ意味するとされていたから,「ちず」のこれらの記載をもって当該物件の納入予定メーカーが決定されていなかったとはいえない(なお,これらの物件の納入予定メーカーの決定過程に関しては,認定事実4(2),(5),(14),(18),(20),(25),(29),(31),(39),(41)も参照。)。
②の点(別紙6の「T-4」欄に「○」の記載がある物件。物件1,2,13,24~26,28,29,41,42,52,63,66,76,93,109,115~118,129)については,前記2(3)オのとおり,本件基本合意に基づく受注調整では,《G》物件も対象とされ,原告がその受注希望を表明し,納入予定メーカーとなり,《G》が落札した後に原告がその機器納入メーカーになったことが認められる。
③の点(別紙6の「T-5」欄に「○」の記載がある物件。物件112,122)については,原告が納入予定メーカーとされたことは,認定事実4(28),(37)のとおりである。
④の点(別紙6の「T-7」欄に「○」の記載がある物件。物件4,11~13,15,69,77,98,107,111,115,120,128,130)は,認定事実によれば,平成23年7月の月曜会(別紙3の番号32)において,出席者は,指令台一括発注の場合についても,発注者等に対してはなるべく一括発注にしないよう働きかけることとし,一括発注となり,納入予定メーカー以外の社の独自仕様が採用されてしまっても,納入予定メーカーは潔い態度を取り,文句を言わないようにするとの認識を共有しており(認定事実3(2)チ),5社による本件基本合意に基づく受注調整では,そのような前提で行われたものと認められるから,上記物件について原告指摘に係る指令台一括発注であることをもって前記特段の事情があるとはいえない。
⑤の点(別紙6の「T-8」欄に「○」の記載がある物件。物件1~3,18,21~23,25,26,31~33,40,42,48,49,55,64,66,75,81,93,94,97,106,109,116~118,121,122,125,127,129,130)については,納入予定メーカーが決定されていないとの主張が前提を欠くことは,認定事実又は他に説示したところに照らして明らかである。
⑥の点(別紙6の「T-3」欄に「○」の記載がある物件。物件16,17,35,44,58,97,98,108.126)については,認定事実(殊に認定事実5,別紙4)によれば,原告を含む複数の者が納入予定メーカーと決定されたものと認められる。
したがって,原告の上記主張は,その前提を欠くもの又は上記特段の事情に当たらないものをいうにすぎず,いずれの点も採用することができない。
(3) 本件130物件につき5社による受注調整手続に上程されていないとの原告の主張について
原告は,別紙6の「F」欄に「○」の記載がある物件(①広域化等により共同発注がなされた物件(F-1),②同一の消防本部から複数回発注がなされた物件(F-2),③千葉県内の消防本部が発注する移動局の物件(F-3))につき,ちず等に記載されておらず,かつ,月曜会の中で具体的に協議の対象となっていないから,本件基本合意の当事者による受注調整手続に上程されたとはいえない旨を主張する。
しかしながら,①の点については,広域化等により共同発注がされた物件(物件81,106,125)につき,本件基本合意に基づく受注調整に上程され,その納入予定メーカーが決定されたことは,認定事実4(31),(40)のとおりである。
②の点については,認定事実,殊に,大阪市消防局,岡山市消防局,堺市消防局,三田市消防本部及び長岡市消防本部の物件における納入予定メーカーの決定方法(認定事実4(1),(3),(9),(24),(29))に照らすと,5社は,本件基本合意に基づく受注調整において,同一の消防本部について複数回に分けて発注がされた場合には,当該消防本部の納入予定メーカーと決定された者がその全ての物件について納入予定メーカーとされていたと認められる。
そうすると,原告指摘に係る同一の消防本部から複数回発注がなされた物件(物件3,25,26,42,49,55,64,93,94,97,116~118,121,127,129.130)については,上記のような方法により本件基本合意に基づく受注調整に上程され,その納入予定メーカーが決定された(認定事実3・5,別紙4参照)と認められる。
③の点については,千葉県内の消防本部が発注する移動局の物件につき,本件基本合意に基づく受注調整に上程され,その納入予定メーカーが決定されたことは,認定事実4(8)のとおりである。
したがって,原告主張の上記事情は,いずれも認めることができず,原告の上記主張は,いずれの点も採用することができない。
(4) 本件130物件につき具体的な競争制限効果が発生していないとの原告の主張について
ア 随意契約となった物件(別紙6の「G」欄に「○」の記載がある物件)
原告は,発注者が,競争入札を実施せず,1社との随意契約を選択した物件は,原告以外の事業者が受注する可能性が皆無であり,当初から事業者間による競争の対象とならないから,具体的な競争制限効果の発生を観念する余地がない旨を主張する。
しかしながら,前記3(2)のとおり,本件基本合意は,このような取決めをした5社において,互いに各社の事業活動を十分に予測できない状況下で自由に意思決定が行われるはずである,消防本部又は実施設計を受託した設計会社等に対する自社の独自仕様を仕様書に入れ込んでもらうための営業活動をするか否か,特定消防救急デジタル無線機器の入札に参加するか否か,その入札価格をいくらとするかなど特定消防救急デジタル無線機器の納入に至るまでに必要となる様々な事業活動が事実上拘束される結果となるものである。
そして,前提事実及び認定事実によれば,原告指摘の物件(物件4,6,12,102,111)は,公募型プロポーザルを実施した上で,当該公募型プロポーザルにより選定された者との間で随意契約を締結するに至ったものであり(前提事実(5)ア,別紙4,認定事実4(5)),その余の物件(物件81,94,106)は,認定事実4(31)のとおり,箕面市消防本部の物件(物件78)を落札した者との間で随意契約を締結することが前提とされていたものである。そうすると,これらの物件について,そもそも原告以外の事業者が受注する可能性が皆無であったとはいえないし,本件基本合意に基づく受注調整等の結果,消防本部又は実施設計を受託した設計会社等に対する自社の独自仕様を仕様書に入れ込んでもらうための営業活動をするか否か,公募型プロポーザル又は代表物件の入札に参加するか否かなど特定消防救急デジタル無線機器の納入に至るまでに必要となる様々な事業活動が事実上拘束される結果となるという具体的な競争制限効果が発生するに至ったというべきである。
したがって,原告主張の事情をもって上記特段の事情があるとはいえず,原告の上記主張は,採用することができない。
イ 他社に参加資格のないとされる物件(別紙6の「H」欄に「○」の記載がある物件)
原告は,形式的には競争入札等の複数の事業者が参加できる選定方式が採用された場合においても,他社が指名されず,又は参加要件を満たさないなどの理由により入札に参加できないときは,具体的な競争制限効果の発生を観念する余地がない旨を主張する。
しかしながら,前記3(2)のとおり,本件基本合意は,このような取決めをした5社において,互いに各社の事業活動を十分に予測できない状況下で自由に意思決定が行われるはずである特定消防救急デジタル無線機器の納入に至るまでに必要となる様々な事業活動(消防本部又は実施設計を受託した設計会社等に対する自社の独自仕様を仕様書に入れ込んでもらうための営業活動をするか否か,特定消防救急デジタル無線機器の入札に参加するか否か,その入札価格をいくらとするかなど)が事実上拘束される結果となるものである。このことは,現に5社は,納入予定メーカーとなった者は自社の独自仕様が盛り込まれるよう営業活動を行い,納入予定メーカー以外の者は,主として納入予定メーカーと個別に連絡し合い,必要に応じて様々な協力を行ったこと(認定事実3(3)参照)や月曜会におけるやり取り(認定事実3(2)キの《B3》の発言,認定事実3(2)シの設計発注リストの趣旨,認定事実3(2)チの出席者が共有した認識の内容)からもうかがわれる。
そうすると,仮に,本件基本合意に基づく受注調整の対象となった物件について,原告主張のように,他社が指名されず,又は参加要件を満たさないなどの理由により入札に参加できなかったという事情があったとしても,それは,本件基本合意に基づく受注調整等の結果として,5社が行い,又は行わなかった消防本部又は実施設計を受託した設計会社等に対する自社の独自仕様を仕様書に入れ込んでもらうための営業活動の影響によるものである可能性も否定できないというべきである(例えば,原告指摘に係る物件107についても,認定事実4(34)によれば,本件基本合意に基づく受注調整において,原告のみが当初からこれを希望し,納入予定メーカーに決定されているから,受注調整の結果を受け,原告及び日本電気以外の者が営業活動を差し控えるなどした結果である可能性が否定できないというべきである。)。
以上によれば,原告主張のように,他社が指名されず,又は参加要件を満たさないなどの理由により入札に参加できない物件についても,このことをもって,直ちに具体的な競争制限効果の発生が観念できないとはいえず,上記特段の事情があるともいえない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
ウ 仕様上他社が対応できないとされる物件(別紙6の「I」欄に「○」の記載がある物件)
原告は,原告の独自仕様が採用された物件については,当初から原告以外の事業者が入札に参加することが事実上不可能であるから,事業者間での競争の対象ではなく,具体的な競争制限効果の発生を観念する余地がない旨を主張する。
しかしながら,前記イで説示したところによれば,仮に,本件基本合意に基づく受注調整の対象となった物件について,原告主張のように,原告の独自仕様が採用されたという事情があったとしても,それは,本件基本合意に基づく受注調整等の結果として,5社が行い,又は行わなかった消防本部又は実施設計を受託した設計会社等に対する自社の独自仕様を仕様書に入れ込んでもらうための営業活動の影響によるものである可能性も否定できないというべきである。また,認定事実によれば,ある社の独自仕様が採用された物件について,他社が落札して納入した事例もみられるところである(認定事実4(2),(42))。
そうすると,本件基本合意の下においては,原告主張のように,原告の独自仕様が採用された物件についても,このことをもって,直ちに具体的な競争制限効果の発生が観念できないとはいえず,上記特段の事情があるともいえない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
エ 指令台一括物件(別紙6の「J」欄に「○」の記載がある物件)
原告は,特定消防救急デジタル無線機器と指令台が一括して発注されることになった物件は,具体的な競争制限効果は発生し得ない旨を主張する。
しかしながら,前記2(3)オのとおり,認定事実によれば,本件基本合意に基づく受注調整では,指令台一括発注の物件も対象とされており,平成23年7月20日に開催された会合では,出席者は,指令台一括発注の場合についても,発注者等に対してはなるべく一括発注にしないよう働きかけることとし,一括発注となり,納入予定メーカー以外の社の独自仕様が採用されてしまっても,納入予定メーカーは潔い態度を取り,文句を言わないようにするとの認識を共有した(認定事実3(2)チ)というのである。
そうすると,特定消防救急デジタル無線機器と指令台が一括して発注されることになった物件についても,このことをもって,直ちに具体的な競争制限効果の発生が観念できないとはいえず,上記特段の事情があるともいえない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
オ 「不採算」とされた物件(別紙6の「K」欄に「○」の記載がある物件)
原告は,ちず等の「不採算案件」に「×」が記入されている物件は,何らかの理由により,納入予定メーカーを決定することができず,納入予定メーカーの決定が放棄されたものであるから,具体的な競争制限効果は発生し得ない旨を主張する。
しかしながら,「ちず」の「不採算案件」欄の「×」の意味は,前記(2)イのとおりであり,「ちず」の上記記載をもって,当該物件の納入予定メーカーが決定されていなかったとはいえず,具体的な競争制限効果が発生しないともいえない。
したがって,ちず等の「不採算案件」に「×」が記入されていることをもって上記特段の事情があるとはいえず,原告の上記主張は,採用することができない。
カ 地元業者が原告の機器を選択した物件(別紙6の「L」欄に「○」の記載がある物件)
原告は,5社による受注調整とは無関係に,地元業者が落札業者となり,当該地元業者がたまたま原告の機器を納入することを選択した物件は,本件基本合意に基づく受注調整手続との間の因果関係を欠くから,具体的な競争制限効果が発生したとはいえない旨を主張する。
しかしながら,原告指摘の物件(物件36,37,53,99,118)についての本件基本合意に基づく受注調整の状況は,認定事実4(12),(20),(29),(33)のとおりである。これによれば,例えば,根室北部消防事務組合消防本部(別海)の物件(物件36,37)については,本件基本合意に基づく受注調整の結果を踏まえた沖電気工業の消防本部又は地元業者に対する営業活動の有無・程度が物件の仕様や地元業者の選択に影響を与えたことがうかがわれるし(認定事実4(12)),その余の物件(物件53,99,118)についても,本件基本合意に基づく受注調整が行われ,現に原告の独自仕様が採用されていること(認定事実4(20),(29),(33))のほか,前記ウで説示したところ等に照らすと,地元業者が原告の製品を選択したことをもって,上記特段の事情があるとは断じ難い。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
キ 低落札率又は最低制限価格付近の応札物件(別紙5の「M」欄に「○」の記載がある物件)
原告は,最低制限価格や調査基準価格近くで応札されている物件につき,受注予定者の絞り込みにより競争単位の減少は認められたとしても,具体的競争制限効果は認められない旨を主張する。
しかしながら,前記3(2)のとおり,本件基本合意は,このような取決めをした5社において,互いに各社の事業活動を十分に予測できない状況下で自由に意思決定が行われるはずである特定消防救急デジタル無線機器の納入に至るまでに必要となる様々な事業活動(消防本部又は実施設計を受託した設計会社等に対する自社の独自仕様を仕様書に入れ込んでもらうための営業活動をするか否か,特定消防救急デジタル無線機器の入札に参加するか否か,その入札価格をいくらとするかなど)が事実上拘束される結果となるものである。そして,認定事実によれば,原告指摘の物件(物件2,3,10,15,18,23,25,26,31,39,46,53,56,60,62,77,92,107,110,114~116)は,いずれも認定事実4(1)~(4),(7),(8),(13),(15),(20),(21),(23),(24),(30),(32),(34),(36),(38),(39)のとおり本件基本合意に基づく受注調整が行われたものである。また,原告指摘の物件には,原告が独自に予想した予定価格が実際の予定価格を大きく下回ったことから,低落札率に至ったものも存在する(物件3につき認定事実4(3),物件25・26につき認定事実4(1),物件60につき認定事実4(23))。
そうすると,原告主張のように,仮に最低制限価格や調査基準価格近くで応札されていたとしても,このことをもって,直ちに具体的な競争制限効果の発生が観念できないとはいえず,上記特段の事情があるともいえない。なお,物件77については,原告が《H》の攻勢を強く警戒して実際の予定価格を大きく下回る金額で入札したために低落札率となった(認定事実4(30))が,このことが直ちに上記判断を妨げるものでないことは,後記コのとおりである。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
ク 原告以外による営業活動のある物件(別紙6の「N」欄に「○」の記載がある物件)及び各社の入札行動から競争制限効果が生じたとはいえない物件(別紙6の「P」欄に「○」の記載がある物件)
原告は,他社が納入予定メーカーの決定後も積極的に営業活動を行っていた物件につき,当該他社が当該物件において入札していないこと等に照らすと,具体的な競争制限効果が発生したとはいえない旨を主張する。
しかしながら,前記3(3)イ(②の点)で説示したとおり,特定救急デジタル無線機器の発注方法等(前提事実(2)ウ),5社における営業体制(前提事実(1)),その協力関係にある地元企業等の存在,5社と従前の消防本部との関係等に鑑みれば,本件基本合意に基づく個別の受注調整の対象となった物件について5社等の営業活動が行われていたものがあっても不自然不合理ではなく,5社も本件基本合意の下でそのような営業活動が行われることを想定していたといえるから,原告主張のように,他社が納入予定メーカーの決定後も積極的に営業活動を行っていたとしても,このことをもって,直ちに具体的な競争制限効果の発生が観念できないとはいえず,上記特段の事情があるともいえない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
ケ 受注希望者が当初から原告1社である物件(別紙6の「O」欄に「○」の記載がある物件)
原告は,受注希望者が当初から原告1社である物件は,もともと他社が入札に参加することを予定していなかったものであり,本件基本合意に基づく受注調整手続との間の因果関係を欠くから,具体的な競争制限効果が発生したとはいえない旨を主張する。
しかしながら,これらの物件についても,5社が,ちずの作成及び更新等により本件基本合意に基づく個別の受注調整手続に上程し,その了解の下に納入予定メーカーを原告又は原告を含む複数の社と決定し,原告又はその関係者(《G》,原告の代理店等)が落札して原告が機器納入メーカーとなったことは,前記(1)イのとおりである。原告主張の事情は,本件基本合意に基づく個別の受注調整の過程における一事情を述べるにとどまるのであり,これをもって,直ちに具体的な競争制限効果の発生が観念できないとはいえず,上記特段の事情があるともいえない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
コ 強力なアウトサイダーによる競争的な行動等が認められる物件(別紙6の「Q」欄に「○」の記載がある物件)
原告は,物件12,15,41,46,47,50,53,71,77,107,110,114につき,強力なアウトサイダー(離脱後の日本電気又は《H》等)による競争的な行動が認められ,これによって原告も競争的な行動をとることになり,落札率も最低制限価格に近接するほど低くなったもの(最低制限価格が設置されていない物件については,上記と同等と評価できる事情があるものをいう。)であり,具体的な競争制限効果が発生したとはいえない旨を主張する。
しかしながら,前記3(2)のとおり,本件基本合意は,このような取決めをした5社において,互いに各社の事業活動を十分に予測できない状況下で自由に意思決定が行われるはずである特定消防救急デジタル無線機器の納入に至るまでに必要となる様々な事業活動(消防本部又は実施設計を受託した設計会社等に対する自社の独自仕様を仕様書に入れ込んでもらうための営業活動をするか否か,特定消防救急デジタル無線機器の入札に参加するか否か,その入札価格をいくらとするかなど)が事実上拘束される結果となるものである。認定事実によれば,原告指摘の物件(物件12,15,41,46,47,50,53,71,77,107,110,114)は,いずれも認定事実4(5),(7),(14)~(16),(18),(20),(27),(30),(34),(36),(38)のとおり本件基本合意に基づく受注調整が行われたものである。そうすると,前記イのとおり,当該物件について発注者が定める入札仕様書に基づく発注が行われる時点において,本件基本合意に基づく受注調整等の結果として,本件基本合意の当事者が消防本部又は実施設計を受託した設計会社等に対する自社の独自仕様を仕様書に入れ込んでもらうための営業活動を行い,又は行わなかったことによる影響が既に生じている可能性も否定できないというべきである。また,原告指摘の上記物件には,離脱後の日本電気又は《H》等が入札等に参加したにもかかわらず,その落札率が99.79%(物件12),95.02%(物件41),93.77%(物件47),97.85%(物件50),94.79%(物件114)と,被告が「本件合意に基づいて納入した物件」と認定した263件の平均落札率(93.47%)を超えたものや,原告が(実際には入札を辞退した)《H》の攻勢を強く警戒して実際の予定価格を大きく下回る金額で落札したため,落札率が72.97%となったもの(物件77)も存在する。
以上の点に照らすと,原告指摘の物件につき,離脱後の日本電気又は《H》等が営業活動等を行い,又は落札率が低率であったことをもって,直ちに具体的な競争制限効果の発生が観念できないとはいえず,上記特段の事情があるともいえない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
7 争点(6)(本件違反行為の実行期間における原告の特定消防救急デジタル無線機器に係る売上額及びこれに対する課徴金の額)
(1) 独占禁止法7条の2第1項は,「課徴金」の額について,実行期間における当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した「売上額」に所定の割合を乗じて得た額に相当する額とする旨を規定している。そして,これを受けて独占禁止法施行令6条1項は,独占禁止法7条の2第1項に規定する違反行為に係る商品又は役務の対価がその販売又は提供に係る契約の締結の際に定められる場合において,実行期間において引き渡した商品又は提供した役務の対価の額の合計と実行期間において締結した契約により定められた商品の販売又は役務の提供の対価の額の合計額との間に著しい差を生ずる事情があると認められるときは,同項に規定する売上額の算定方法は,実行期間において締結した契約により定められた商品の販売又は役務の提供の対価の額を合計する方法とする旨を規定し,独占禁止法施行令6条2項(同項において準用する独占禁止法施行令5条1項3号)は,この方法により売上額を算定する場合には,商品の引渡し又は役務の提供を行う者が引渡し又は提供の実績に応じて割戻金の支払を行うべき旨が書面によって明らかな契約があった場合に該当するときは,実行期間におけるその実績について当該契約で定めるところにより算定した割戻金の額を控除する旨を規定している。
これを本件についてみると,前記3~6のとおり,本件違反行為の実行期間は平成23年4月17日から平成26年4月16日までの3年間であるところ,この間にその契約が締結された本件130物件は,いずれも独占禁止法7条の2第1項所定の「当該商品」該当性を認めることができ,前提事実及び認定事実(特に,特定消防救急デジタル無線機器の発注方法等及び本件130物件の取引状況等)に照らし,本件について独占禁止法施行令6条1項所定の事情があると認められるとした被告の判断に,裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものと認めるに足りる事情はない。
そうすると,前提事実及び認定事実に照らし,本件違反行為の実行期間における原告の特定消防救急デジタル無線機器に係る売上額は,独占禁止法施行令6条1項所定の算定方法により,別紙4「個別物件に係る基本的事実関係一覧表」の「課徴金計算の基礎とされた売上額」欄記載の金額を合計した480億3850円であると認められ,これから控除すべきもの(同条2項において準用する独占禁止法施行令5条1項3号所定の割戻金の額)は見当たらない。
したがって,原告が納付すべき課徴金の額は,上記売上額480億3850円に100分の10を乗じて得た額から,独占禁止法7条の2第23項により1万円未満の端数を切り捨てて算出された48億円であると認められる。
(2) これに対し,原告は,①別紙6の「E」欄に「○」の記載がある物件は,その機能等に照らし,特定消防救急デジタル無線機器の範ちゅうに属せず,独占禁止法7条の2の「当該商品又は役務」に該当しない商品の売上高を含むものであり,②別紙6の「R」欄に「○」の記載がある物件は,その売上高に本来発注者が負担すべき費用で原告が代わりに支払ったものが含まれているから,これらの売上高(別紙6の「範ちゅうに属しない商品の売上額」欄記載のもの及び別紙7「免許申請関係費用等の一覧」記載のもの)を本件課徴金納付命令の計算の基礎となる売上高から除外されるべきである旨を主張する。
ア 原告の主張①について
確かに,原告主張に係るシステム・機器等(別紙5「争点に関する当事者の主張」6(原告の主張)①~⑳参照)は,消防救急デジタル無線機器(前提事実(2)イ参照)自体ではない。
しかし,そもそも消防救急デジタル無線機器の発注には,アンテナや電源装置,冷暖房装置,印刷機器,指令台等の機器や,据付工事,鉄塔の建設工事等が併せて発注される場合があったのであり(前提事実(2)ウ),前記2・6で説示したところによれば,5社は,このような消防救急デジタル無線機器の発注方法の実情を踏まえて,特定消防救急デジタル無線機器(消防救急デジタル無線機器に上記機器等を含めて発注される場合には,当該機器等を含むもの)を対象として本件基本合意をし,これに基づく受注調整等の結果,原告は本件130物件を納入するに至ったものである。原告主張に係る上記システム・機器等は,現に本件130物件に係る消防救急デジタル無線機器と一緒に発注されたことから,これらを分離して受注することができなかったものであり,5社が上記システム・機器等を本件基本合意やこれに基づく受注調整の対象から除外したと認めるに足りる事情はうかがわれない。
したがって,原告主張に係る上記システム・機器等も,原告に対する課徴金の算定の基礎となる売上額に当然に含まれるというべきである。原告の主張①は採用することができない。
イ 原告の主張②について
独占禁止法7条の2所定の売上額の意義については,事業者の事業活動から生ずる収益から費用を差し引く前の数値を意味すると解釈されるべきものである(最高裁平成14年(行ヒ)第72号同17年9月13日第三小法廷判決・民集59巻7号1950頁参照)。このように解釈されるべきことは,㋐独占禁止法の定める課徴金の制度の趣旨目的及び独占禁止法7条の2第1項所定の課徴金の額の算定方式が採用され,維持されている理由,㋑同項及びこれを受けた独占禁止法施行令5条及び6条の規定の文言,㋒課徴金制度に係る独占禁止法の規定の立法及び改正の過程並びに企業会計上の概念である売上高の意義等に照らして明らかである。
原告主張の免許申請関係費用等(別紙5「争点に関する当事者の主張」6(原告の主張)㉑)のうち,㋐無線局の開設・登録等の申請費用は,原告主張のとおり,発注者が負担すべき法定の手数料(電波法103条1項等,甲50~53参照)であり,㋑ARIB費用は,多重無線機を設置する場合において,混信を回避するため,混信に関する調査を行う場合に,一般社団法人電話産業会(略称ARIB)に支払う調査費用相当額(甲54参照)であったとしても,原告の主張によれば,仕様書において,受注者がその諸手続及び手数料等の負担を負担・処理すべきものとされ(甲55の1~66),発注者との契約上,当該手数料等を請負代金に含めて支払うこととされていた(なお,乙316参照)というのである。
そうすると,原告主張の上記免許申請関係費用等は,いずれも独占禁止法施行令6条1項にいう「実行期間において締結した契約により定められた商品の販売又は役務の提供の対価の額」に当たることが明らかである。
また,原告主張の撤去廃棄費用(別紙5「争点に関する当事者の主張」6(原告の主張)㉒)についても,以上に述べたところ及び前記アで述べたところに照らし,上記「対価の額」に当たることが明らかであるといわざるを得ない。
したがって,原告主張に係る上記免許申請関係費用等及び撤去廃棄費用も,原告に対する課徴金の算定の基礎となる売上額に当然に含まれるというべきである。原告の主張②も採用することができない。
8 まとめ
以上によれば,本件排除措置命令及び前記7(1)の認定額と同額の課徴金の納付を命じた本件課徴金納付命令は,適法である。
第4 結論
よって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。

令和4年3月3日

東京地方裁判所民事第8部
裁判長裁判官 林 史高
裁判官 高橋 浩美
裁判官本村理絵は,転補につき,署名押印することができない。
裁判長裁判官 林 史高

(別紙1)
当事者目録
川崎市高津区末長3丁目3番17号
原告 株式会社富士通ゼネラル
同代表者代表取締役 ≪A9≫
同訴訟代理人弁護士 村島 俊宏
穂積 伸一
谷口 悠樹
山本 晋之介
福田 英訓
同訴訟復代理人弁護士 工藤 友良
東京都千代田区霞が関1丁目1番1号
被告 公正取引委員会
同代表者委員長 古谷 一之
同指定代理人 横手 哲二
近藤 智士
垣内 晋治
並木 悠
河﨑 渉
井登 貴伸
新田 高弘
櫻井 裕介
太田 陽介
牧内 佑樹
福井 雅人
久野 慎介
名執 祐矢
以上


















(別紙5)
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(本件基本合意の成否)について
(被告の主張)
(1) 原告を含む5社は,かねてから指令台や防災分野を中心に,主に地方レベルで受注調整を行っていた状況があった。3社は,平成20年以降,特定消防救急デジタル無線機器に係る受注調整を模索し,同年11月以降,原告の《A4》,沖電気工業の《C3》及び日本電気の《B2》が月曜会等と称する会合(月曜会)をおおむね月1回開催し(別紙3「会合の実施状況」の「番号」1を参照),また,平成21年2月以降,日本電気及び沖電気工業の消防救急デジタル無線機器の営業担当責任者らが月曜会とは別に特定消防救急デジタル無線機器の受注調整に関する会合をおおむね月1回開催していた(別紙3の「番号」2を参照)。
(2) 3社は,平成21年9月14日の会合における原告の《A2》の提案により当該受注調整を行うという方針を3社の特定消防救急デジタル無線分野の営業責任者級の者の間で了解し合うため,同年10月19日の会合を開催することとし,同日に実際に3社の特定消防救急デジタル無線分野の営業責任者級の者らが一堂に会し,当該方針につき,異論が出されることなく会合を終えた。同日以降同年12月21日までに,3社の間で協議を重ねた結果(各会合の開催状況の概要は,要旨,別紙3の「番号」3~7のとおりである。),遅くとも同日頃までに,特定消防救急デジタル無線機器を対象として,納入予定メーカーを決定し,納入予定メーカー以外の者は納入予定メーカーが納入できるように協力する旨の合意(本件基本合意)が形成された。
(3) その後,3社に(遅くとも平成22年5月24日頃までに)日立国際電気が,(遅くとも同年9月15日頃までに)日本無線が順に加わり,平成23年12月までにおおむね月1回会合を開催して,全ての消防本部について1社又は複数社の納入予定メーカーを決定し(特に,平成22年12月から平成23年12月までの会合においては,消防本部及び共通波等の発注が見込まれる都道府県ごとに納入予定メーカー等を整理したちずを作成し,消防本部ごとに納入予定メーカーを決定した。また,後記(原告の主張)イ(ウ)の事情(平成22年11月24日の会合の状況等)は,事実と異なるもの又は被告の主張と矛盾しないものである。),平成24年4月以降は,おおむね3か月に1回会合を開催して,ちずに類似した一覧表を作成して,決定した納入予定メーカーが納入できているかなどを確認し合った(以上の各会合の開催状況の概要は,別紙3の「番号」8~46のとおりである。)。なお,証拠に照らし,原告が本件基本合意を反故にするような積極的な営業活動を行っていたとか,当該営業活動の結果として他社を抑えて70件の物件を受注したとはいえず,また,証拠等によれば,①原告らは,《G》が指令台の既設業者である消防本部についても納入予定メーカーの割り振りを行い(《G》及び《H》が受注を希望する物件については,原告及び日立国際電気がそれぞれその意向を汲むなどして他社と調整を行っていた。),多くの場合,原告が納入予定メーカーとなり,原告が納入できていること,②ちず等の「不採算案件」とは,これ以上話合いを重ねても納入予定メーカーを更に1社にまで絞ることが難しく,受注希望を出していた会社の間で個々に話し合って納入予定メーカーを決めていくこととなった消防本部を意味する記載であること,③原告らは,結果として指令台一括発注となった物件であっても,当該消防本部について納入予定メーカーを決め,納入できるようにしていたことも指摘することができる。
(4) その結果,5社は,本件基本合意に基づき,別紙4「個別物件に係る基本的事実関係一覧表」のとおり,特定消防救急デジタル無線機器の過半を納入した。
(5) なお,原告においては,本社の情報通信システム営業統括部が営業活動の指導・支援等の業務を行っており,《A2》は同部の統括部長代理であった。これは,営業方針の立案,支店等における実際の客先への訪問等の営業活動の指導・支援等をするという業務(この支店等と本店との関係を最前線の部隊と参謀本部と説明する者もいる。)であり,《A2》は,このような業務を統括部長代理という立場で担当していたのであり,そのような者が出席した会合において本件基本合意に係る内容が合意された以上,原告を含む5社間で本件基本合意が成立したと認められる。
また,本件基本合意の当事者である5社は,発注者が,発注に当たり,消防救急デジタル無線機器のみではなく,電源装置等の他の機器や,設置等の工事を併せて発注することがあることを当然に認識しており(乙18〔4~10頁〕),現に,①初期に発注される実証試験等10物件について納入予定メーカーを決定し,②ちずを用いて,消防本部ごとに,併せて発注される指令台等の機器や工事を含めた特定消防救急デジタル無線機器(特に,ちずの作成時点では,既にいくつかの物件については電源装置等を含めて発注されていた。)についてそれぞれ納入予定メーカーを決定し,③ちずに類する一覧表を作成して,実際に納入予定メーカーが納入できているかなどを確認していたこと等に照らし,本件基本合意の対象物件が特定消防救急デジタル無線機器であったことは明らかである。
(原告の主張)
被告の上記主張は,次のとおり,不知又は否認し若しくは争う。
(1) 5社がかねてから指令台や防災分野を中心に地方レベルで受注調整を行っていたことはない。平成20年11月以降の月曜会は,新規参入メーカーに対抗するための情報交換が行われただけであり,3社で市場を分け合うための具体的な方法等の話合いはされていない。日本電気及び沖電気工業の消防救急デジタル無線機器の営業担当責任者による会合の開催は不知。
(2) そもそも原告の《A2》は,情報通信システム営業部の統括部長代理であったから,同部の最終的な決定権を有していなかった上,原告においては,消防救急デジタル無線機器に関する全体的な営業方針や各地区営業の具体的な営業活動につき,プロジェクトオーナーである《A1》及びPMO(原告の従業員及び外部のコンサルティング会社で構成される会議体の事務局。甲8)の指示・承認に基づいて決定していたから,《A2》が上記の指示・承認なしに消防救急デジタル無線機器について他社と受注調整を行うことを合意し,又はこれを実行する権限を有していなかった。
また,原告の《A2》は,平成21年9月14日の会合(月曜会)において,3社で受注調整を行う方針を了解し合いたい旨の提案をしていない。同年10月19日の会合(月曜会)において,全国で発注される特定消防救急デジタル無線機器の割り振り方法等についての意見交換はされておらず,《A2》から実証試験に関して「いきなり市場を壊すことはお互いに避けたい。各社バランスよくシェアできないか」と提案したものの,他社が実証試験に対して受注調整に応じるか否かは判然としない状況であり,継続的に審議していくということで終了した(甲1)。同年11月16日及び同年12月21日の会合においても,実証試験の物件について納入予定メーカーを認識し合ったこと等はなく,他の2社(日本電気及び沖電気工業)の出席者がこれら2回の会合で合意が成立したとは供述していない。平成22年1月以降の会合においても,受注調整を行うか否かについての議論が継続していた(甲4~6)。
以上によれば,3社間において,平成21年12月21日までに,特定消防救急デジタル無線機器の受注調整に関する合意が成立したとはいえない。
また,原告としては,実証試験の対象物件を1件受注したいと考えていたが,①実証試験の対象である6つの消防本部における指令台・無線基地局の既設業者の状況(玉野市消防本部の指令台の既設業者は日本電気であり,その余の5つの消防本部について日本電気と沖電気工業が指令台・無線基地局の既設業者となっていた。),②平成21年10月から同年12月までの月曜会の協議状況(日本電気及び沖電気工業は,実証試験における自社の希望物件を日立国際電気や日本無線に譲ることを了承しなかった。)等に照らすと,原告が無線基地局の既設業者となっている玉野市消防本部の物件を受注する目途も立たない状況であり,このような状況で,日本電気及び沖電気工業との間で,受注調整に関する合意はできなかった。
(3) 平成22年1月から同年11月までの会合(月曜会)において,これに出席した《A2》は,全国で発注される特定消防救急デジタル無線機器の受注調整を行う目的を有しておらず,その納入予定メーカーの割振り方法について意見を述べ合うこと等もなかった。
《A2》は,平成22年11月24日の会合において,沖電気工業が一覧表を用いた調整を開始しようとしたことから,これを拒絶して,それ以降の会合には出席せず(同年12月21日,平成23年2月21日及び同年6月9日の会合にも出席していない。),その際に同行していた《A3》に対しては,今後会合には出席しないよう指示した(甲9)。また,《A2》は,中途採用者から成る「BCチーム」を組織し,他社既設物件を対象とする営業活動を積極的に行うなどし,現に,ちずの「チャン」欄に「CG」(原告を意味する。)以外の記載がある物件で原告が受注したものは61件あった。したがって,《A2》が,平成22年12月以降に,3社又は5社の間で納入予定メーカーを決定し,納入予定メーカーが納入できるようにしたことはない。
平成22年12月以降に《A3》が会合(月曜会)に参加したことは,《A2》の指示に反して原告に全く報告なく行われたものであり,《A3》の個人的行為にすぎない(《A3》が消防救急デジタル無線機器について他社と受注調整を行うことを合意し,又はこれを実行する権限を有していなかったことは,《A2》に関して主張したところと同様である。)。なお,《A2》は,平成23年6月9目,宮城県内の消防本部を訪問していたから,同日の会合に出席していない(甲16~18,113~116,118)。また,《A3》が月曜会に出席した際に「譲渡」と述べた趣旨は,日立国際電気や日本無線が営業できそうな物件を示したものにすぎない。
また,平成22年12月以降に作成されたちず等は,①受注調整の完了した物件を順次記載するという方法ではなく,発注者となり得る消防本部を最初から羅列し,そこに情報を加筆するという方法で作成されていること,②《C2》が,会合の場以外で自ら加筆・修正していたものであること,③5社は,受注調整の有無にかかわらず,自社が優位性を有する既設消防本部の物件の受注を目指して営業活動をしており,その結果,既設業者として当該物件を受注しただけであり,必ずしもちずの記載に従った行動をしていたとはいえないこと等に照らすと,何ら拘束力をもたず,これによって納入予定メーカーが決定されていたわけではない(《A3》は,会合への出席を継続することを目的に,《C2》から送付されたちずに「○」や「△」を記載したものを送付しただけである。上記記載は,指令台又は無線の既設業者が原告又は《G》であるかを示すものにすぎず,原告の受注希望の表明ではない。ちずの「チャン」欄は,単に各社の希望を整理したものであり,納入予定メーカーの趣旨ではなく,参加者の営業活動を拘束するものでもない。「不採算物件」欄の「×」の記載は,「チャン」欄の整理を放棄する趣旨であり,「Pen」との記載は「チャン」欄の整理を留保する趣旨である。)し,すべての消防本部について納入予定メーカーを決定し終えたわけでもない。
(4) 沖電気工業及び日本電気は,平成21年2月頃から,月曜会とは別に他社には秘密で定期的に会合を行い,2社間でどのような割り振りでチャンピオンを決定するかについて具体的に話し合っており,同年9月には沖電気工業が日本電気から機器のOEM供給を受けることを合意し,納付先の消防本部について住み分け(チャンピオンを決定し,チャンピオン以外の者は他方の受注に協力する。)を行っていた(乙13~15,73)。
日本無線は,平成22年頃から,日本電気及び沖電気工業から機器のOEM供給を受けることを合意し,日本電気との間で個別に協議を行い,日本電気からチャンピオンの地位を譲り受けていた(乙16,171)。
そして,例えば,沖電気工業及び日本無線は,本件基本合意に基づき原告が納入予定メーカーに決定されたとされる物件1につき,日本電気の依頼に基づき,日本電気が受注できるように協力し,他の物件においても,一方が他方に対するお付き合い入札を行っていた。
以上によれば,日本電気,沖電気工業及び日本無線は,本件基本合意とは別個の合意に基づく協力関係にあり,日本電気が平成24年5月に本件基本合意から離脱した後も,上記協力関係を継続していた。
(5) 仮に本件基本合意の成立が認められたとしても,本件基本合意の対象物件は,次の点に照らし,特定消防救急デジタル無線機器の全部ではない。
ア 本件において5社間で協議された対象商品は,消防救急デジタル無線機器のみであり,多重無線装置,空中線,電源装置,消防装置,印刷機器等の機器のほか,据付工事,鉄塔の建設工事等の工事を含めて発注される場合には当該機器等を含むことは協議されていない。
イ 平成21年12月までの会合(月曜会)の協議内容は,いずれも実証試験に関するものにとどまっているから(甲1~3),本件基本合意の対象は,実証試験に係る物件に限られる。《A2》が上記会合で本事業に言及したのは,これによって実証試験について日本電気と沖電気工業の既設物件を日立国際電気及び日本無線に譲らせ,原告が玉野市消防本部を確保する狙いで行われたものにすぎない。
したがって,別紙6「課徴金計算の基礎とならない物件一覧」の「A」欄に「○」の記載がある物件は,本件基本合意の対象物件ではなかった。
ウ 別紙6の「B」欄に「○」の記載がある物件は,《G》が受注を希望する物件(主に《G》が政令指定都市の指令台の既設業者となっている物件)であり,本件基本合意の当事者に《G》が参加していない以上,その受注調整は不可能であること,《A2》も日本電気及び沖電気工業からの《G》との調整の依頼を断っていること(甲4),ちず等においても調整不能を意味する「不採算案件」とされていること等に照らし,本件基本合意の対象物件ではなかった。
エ 指令台については,指令センターの中核となる指令システムを構成する機器であり,無線機器に比べて販売価格が高いこと,指令台と無線機器とを別の組織で対応する事業者もいたため,受注調整が困難であること等から,指令台と無線機器が一括発注される物件(別紙6の「C」欄に「○」の記載がある物件)は,本件基本合意の対象物件ではなかった。
2 争点(2)(本件基本合意の「不当な取引制限」の該当性)について
(被告の主張)
(1) 本件基本合意は,本来的には自由に特定消防救急デジタル無線機器に係る入札に至るまでの様々な事業活動を行い,入札参加や入札価格等についても自由に決めることができるはずであった5社が,特定消防救急デジタル無線機器について,納入予定メーカーを決定し,納入予定メーカー以外の者は納入予定メーカーが納入できるように協力する旨の合意をすることにより,各社の事業活動が事実上拘束される結果となるものである。したがって,本件基本合意は,独占禁止法2条6項にいう「その事業活動を拘束し」の要件を充足し,その成立により5社の間に本件基本合意に基づいて行動をとることを互いに認識し認容して歩調を合わせるという意思の連絡が形成されたものといえるから,同項にいう「共同して…相互に」の要件も充足する。
(2) また,①5社は,本件基本合意により,5割を超える程度の物件において,納入予定メーカーが納入できており,その落札率も平成21年12月21日から平成26年4月8日までの間における特定消防救急デジタル無線機器(随意契約の方法により発注された物件等を除き,470件)の平均落札率(93.2%)との対比において高いこと(なお,原告指摘の207物件についても,5社が本件基本合意の対象として協議を行い,納入予定メーカーを決定するなどしていたから,その受注において何らかの競争制限的な影響があったことは否定し難いし,また,日本電気が離脱したとしても,日本電気が離脱するまでに行われた各社の協力等の影響が直ちに覆滅されるわけではないから,日本電気の離脱後に落札率が低下していないことは,本件基本合意の実効性を否定する事情とはいえない。),②5社が,個別の受注調整を受けて,必要な範囲で営業担当者に指示等を行うなどして,現に納入予定メーカーが納入できるように協力していたこと(特に,原告においては,《A3》が,原告の社内方針どおり,基本的に指令台既設の消防本部の発注の物件についてその受注希望を表明して原告を納入予定メーカーとしており,原告の現地の営業担当者も,本件基本合意の存在や個別の受注調整の内容を前提として,具体的な物件に関し,納入予定メーカーが納入できるよう,お付き合い入札をするなどしていた。),③指令台一括発注物件については,5社間で,発注者等に対してなるべく一括発注にしないよう働きかけることとされ,仮に一括発注となり,納入予定メーカー以外の者の独自仕様が採用された場合は,納入予定メーカーは潔い態度を取り,文句を言わないようにする,との認識が共有されていたこと等に照らすと,本件基本合意は,本件対象期間中,特定消防救急デジタル無線機器の取引分野において有効に機能し,かかる取引分野が有する競争機能を損ね,その当事者がその意思で当該市場における価格等をある程度自由に左右することができる状態をもたらしていたものといえるから,独占禁止法2条6項にいう「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」の要件を充足する。
本件基本合意は,自由競争経済秩序に明確に違反する入札談合行為であり,公共の利益を即するものではなく,これを正当化すべき事由も存しないことから,独占禁止法2条6項にいう「公共の利益に反して」の要件を充足する。
(3) 以上によれば,原告を含めた5社の行為(本件基本合意)は,独占禁止法2条6項に規定する「不当な取引制限」に該当し,独占禁止法3条に違反する。
(原告の主張)
(1) 独占禁止法2条6項の「共同して…相互に」の要件に関し,事業者間に「意思の連絡」があったというためには,ある事業者の従業者が他の事業者と接触した結果,当該従業者が得た自らの入札価格に影響を及ぼす情報が当該従業者から事業者の意思決定権者に報告され,意思決定権者の決定ないし事業活動に影響を及ぼしたことが主張立証されるべきである。
これを本件についてみると,原告における入札参加・入札価格の決定は,各地域の情報通信部の部長らが行っていた(乙35〔9頁〕,乙36〔8頁〕,乙218〔36頁〕)。また,原告における消防救急デジタル無線機器の商談は,原告の従業員と外部のコンサルタント会社で構成される会議体(PMO)を中心とする組織体制で対応しており(甲8),情報通信システム営業統括部自体に当該商談推進の決定権がなかった。《A2》は,情報通信システム営業統括部の統括部長代理にすぎないから,同部の最終的な決定権さえも有しておらず,また,他社との調整結果について認識していなかったから,原告に個別の調整結果を伝達したり,これに基づく指示を行ったりしたことはなかった(《A2》は,各地域の部長に対し,各地域の情報通信部で対応していた実証試験以外の4消防については,会合の存在すら報告していなかった。)。また,被告は,《A3》が,各地域の部長に対し,「ちず」または「ちず」類似の一覧表を用いて行われたという調整の結果について報告し,これが各部長の入札価格に関する決定ないし事業活動に影響を及ぼしたという主張立証をしていない。
したがって,《A2》又は《A3》は,他社との合意の主体とはなり得ず,仮に《A2》又は《A3》が他社と合意したとしても,独占禁止法2条6項の「共同して・・・相互に」の要件を充たさない。
(2) 原告を含む5社は,前記1(原告の主張)のとおり5社間で本件基本合意が成立しておらず,また,本件基本合意に制約されて特定消防救急デジタル無線機器の取引に関する意思決定を行っていない。
仮に本件基本合意が成立していたとしても,①被告の主張によっても納入予定メーカーが納入できた物件は54%にすぎず,本件基本合意に基づいて納入された物件(267件)の平均落札率(93.47%)とこれに基づかずに納入された物件(207件)の平均落札率(92.94%)の差もわずかであるなど,本件基本合意が有効に機能していたとはいえないこと,②会合(月曜会)の参加者は,各社の営業活動を全くコントロールできていない状況がうかがわれる(納入予定メーカーが決定した後も,多くの物件について他社が積極的に営業活動を行っていた(甲84)。原告は,《A2》が平成22年11月24日の会合を最後に月曜会に出席しなくなった後は,ちずの作成過程に関与せず,かえって,BCチームを組織して他社既設物件に対する積極的な営業活動を行うなどしていた。)し,原告,日本電気及び沖電気工業は個別調整の結果を自社の営業担当者に伝達しておらず(なお,《A3》は,月曜会に参加していることを原告の社内で公にしておらず,ちずに基づく指示等もしていない。),会合の際に納入予定メーカーから他の入札参加者に対して必ずしも協力依頼がされていないこと,③当初から,《G》,《H》という有力なアウトサイダーが存在したこと等に照らし,本件基本合意は,「その事業活動を拘束し」の要件及び「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」の要件を充足しない。
(3) 以上によれば,原告を含めた5社の行為(本件基本合意)は,独占禁止法2条6項に規定する「不当な取引制限」に該当しない。
3 争点(3)(独占禁止法7条2項に規定する要件の該当性)について
(被告の主張)
原告は,前記2(被告の主張)のとおり独占禁止法3条に違反する行為をした事業者であり,違反行為を長期間にわたって行っていたこと,本件基本合意は既に事実上消滅しているが,違反行為の取りやめが自発的なものでないこと等の諸事情を総合的に勘案すれば,原告に対して排除措置を命ずることにつき,「特に必要がある」(独占禁止法7条2項)と認められる。
そして,本件違反行為は,平成26年4月9日以降,消滅するまで継続していたところ,本件排除措置命令は,平成29年2月2日に発令されている。よって,本件排除措置命令の発令は,違反行為がなくなった日から5年を経過していない(独占禁止法7条2項)。
(原告の主張)
《A2》は,前記のとおり,実証試験の対象物件を1件受注したいと考えていたが,平成21年12月までの月曜会の協議状況に照らし,他社との調整によって実現できないことが確定したため,他社との調整を行う意欲を失い,平成22年11月24日の会合(月曜会)において,他社に対して受注調整に反対する旨を明言し,以後の会合には出席せず,中途採用者から成る「BCチーム」を組織して他社既設物件を対象とする営業活動を積極的に行うなどした。また,《A2》は,平成23年9月,沖電気工業の《C1》及び日立国際電気の《D1》から,月曜会に出てきてほしいと要望されたが,「各社商談現場で戦っているじゃないか。会合をやっても意味がない」と述べて月曜会への出席を断った。なお,《A3》が平成22年12月以降の会合に出席したのは,個人的に他社の情報を収集するためであり,他社と調整しようという意思も権限も有していなかったし,ちず等の作成に関与したのは,他社から情報を得るために,他者に対して情報を提供しただけであるから,本件基本合意を継続するものではない。
したがって,原告は,平成22年11月24日以降,本件基本合意から離脱したというべきであり,違反行為の終了から5年を経過している以上,本件排除措置命令は違法である。
4 争点(4)(本件違反行為の実行期間)について
(被告の主張)
(1) 本件違反行為は,前記1・2のとおり不当な取引制限に該当し,独占禁止法7条の2第1項1号にいう「対価に係るもの」に当たるところ,①原告が本件違反行為の「実行としての事業活動を行った日」(独占禁止法7条の2第1項1号)は,平成23年4月8日以前であり,②原告が本件違反行為の「実行としての事業活動がなくなる日」は,令和元年政令第176号による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(以下「独占禁止法施行令」という。)6条1項所定の契約基準が適用され,平成26年4月9日以前に行われた指名競争入札に基づく契約を同月16日に締結したことから,同日であると認められる。
そうすると,原告については,本件違反行為の実行としての事業活動を行った日から本件違反行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間が3年を超えるため,独占禁止法7条の2第1項により,実行期間は,平成23年4月17日から平成26年4月16日までの3年間となる。
(2) 日本電気のシェアは,原告の主張によっても約3割程度にすぎず,その数値から直ちに競争の実質的制限等の要件が否定される程度のものとはいえないこと,現に,平成24年5月30日の会合において,既に割り振った納入予定メーカーはそのままとして,引き続き決定した納入予定メーカーが納入できるように日本電気以外の4社で協力し合っていくこととし,その後も4社において納入予定メーカーが納入できていることを確認し合っていたこと等に照らすと,同月10日の日本電気の離脱にかかわらず,同月以降も原告,沖電気工業,日立国際電気及び日本無線の間で本件基本合意が継続していたといえる。
また,仮に平成24年5月10日に本件基本合意が事実上消滅し,本件違反行為が終了したとしても,同日より前までに受注調整に係る入札が行われ,その後に当該入札に基づく契約が行われた物件は,当該契約締結時まで本件違反行為の実行としての事業活動が継続していたと認めることができるため,課徴金算定の基礎となるというべきである。
(原告の主張)
日本電気は,①指令台及び消防救急デジタル無線機器の製造メーカーであり,相当高いシェア(「消防システム市場(国内)60%1位」(2010年~2013年度末。金額ベース)と公表している。甲24)を有している上,平成21年12月21日頃までに成立した本件基本合意の当事者であり,会合の中心的役割を果たしていたこと,②平成24年5月10日に日本電気が本件基本合意から離脱したことにより,他の4社で受注調整を行っても調整どおりの結果が実現されるか全く分からない状況となったこと,③その後の会合においては,納入予定メーカーを決定するための協議は行われず,実施された入札の結果についての情報交換を行っていただけであること等に照らすと,同日の日本電気の離脱により,本件基本合意は事実上消滅しており,同日が独占禁止法7条の2第1項の「実行としての事業活動がなくなる日」に当たるというべきである。
したがって,本件違反行為の実行期間は,平成23年4月17日から平成24年5月9日までとなり,別紙6の「D」欄に「○」の記載がある同月10日以後に契約された物件は,本件課徴金命令の計算の基礎とすることができない。
5 争点(5)(本件130物件の「当該商品又は役務」の要件の該当性)について
(被告の主張)
(1) 「当該商品又は役務」の要件について
独占禁止法7条の2第1項にいう「当該商品又は役務」とは,基本合意の対象とされたものであって,基本合意に基づく受注調整等の結果,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものをいうと解される。
これを本件についてみると,前記1(被告の主張)のような5社による受注調整の態様及びその後の実施状況の確認等の事実からすれば,後記(2)~(4)のとおり,原告が納入予定メーカーとなり,原告が納入している特定消防救急デジタル無線機器については,本件基本合意に基づく個別の受注調整の結果,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものと認められる。
(2) 原告が直接又は間接に受注調整手続に関与したこと等(別紙6の「S」・「T」欄に「○」の記載がある物件)
原告が,他社との間で,《A2》及び《A3》を介して本件基本合意をしたことは,前記1(被告の主張)のとおりであり,原告が事業者として特定消防救急デジタル無線機器の受注調整手続に関与したことは明らかである。
また,①ちずに「Pen」と記載された物件は,納入予定メーカーに変更がないことを示すものであり,「チャン」がペンディングになったことを意味するものではない。②ちずv22に原告を含む複数社が「チャン」として記載された物件は,当該複数社のいずれかが納入予定メーカーとなるという形で決定されたものである。③《G》物件については,本件基本合意に基づく受注調整の結果,原告が納入予定メーカーに決定され,現に,《G》が元請として落札し,原告が《G》に特定消防救急デジタル無線機器を納入したから,納入予定メーカーである原告が実際に納入した物件であるといえる(当該機器に付された銘板の名義が《G》であったとしても,このことに変わりはない。)。④原告が納入予定メーカーと決定されたが,実際には日本無線が落札した物件は,落札した日本無線が元請となり,納入予定メーカーである原告が特定消防救急デジタル無線機器を納入しているから,納入予定メーカーである原告が実際に納入した物件であるといえる。⑤その他の原告の掲げる物件(成田市消防本部等の千葉県内の移動局の物件,大阪市消防局の移動局の物件,春日井市消防本部等の個別物件)についても,いずれも原告又は原告を含む複数社が納入予定メーカーに決定されたと認められる。
(3) 5社による受注調整手続に上程されたこと(別紙6の「F」欄に「○」の記載がある物件)
原告が「受注調整手続に上程されていない」と主張する物件については,①広域化等により共同発注がされた物件,②消防本部から複数回発注がされた物件(当該物件については,当該消防本部の納入予定メーカーが,その全ての物件について納入予定メーカーとなることとされていた。),③千葉県内の消防本部が発注する移動局の物件であり,いずれも本件基本合意に基づく受注調整の対象とされ,原告が納入予定メーカーとなったことが,ちずの記載等から明らかである。
(4) 具体的な競争制限効果が発生したこと(別紙6の「G」~「Q」欄の各項目に「○」の記載がある物件)
5社は,本件違反行為期間において,特定消防救急デジタル無線機器の受注に関し,本件基本合意に基づき,納入予定メーカーが納入できるようにするため,納入予定メーカー以外の自由な営業活動を制限し,自由競争の下では本来行われるはずのない具体的な営業活動や入札価格等の営業の手の内情報の交換を行ったこと,本件130物件は,原告の掲げる物件(具体的な競争制限効果が発生していないもの)も含め,上記のような自由な競争が制限された状況下で,納入予定メーカーとされた原告が現に予定どおりに納入したものであることに照らすと,原告主張の個別事情にかかわらず,具体的な競争制限効果が発生したことは明らかである。なお,5社が消防本部等に対して行った営業活動のうち,①本件基本合意に基づく個別の受注調整により納入予定メーカーとなった社が受注を目指して行う営業活動,②本件基本合意に基づく個別の受注調整による納入予定メーカーの決定前に行われた5社の営業活動は,本件基本合意及びそれに基づく個別の受注調整と矛盾するものではないし,本件基本合意に基づく個別の受注調整に係る協議等が4年以上もの長期間にわたって個別の物件に係る営業及び受注活動と並行して進められたことからすれば,5社が,本件基本合意に基づく個別の受注調整に係る協議を有利に進めるため,若しくは本件の談合行為の発覚を防ぐため,又は納入予定メーカーが不慮の事由により失注した場合に備えて念のためなど,様々な目的で最終的に自らが納入予定メーカーとならなかった消防本部に訪問等を行っていても何ら不自然ではない。
上記の点を措いても,この点に関する原告の主張は,次の点からも理由がない。
ア 随意契約となった物件(別紙6の「G」欄に「○」の記載がある物件)
原告の掲げる随意契約物件は,①公募型プロポーザル方式で選定された契約候補者と随意契約を締結するもの,②事前に行われた指名競争入札の落札者と随意契約を締結する旨を明らかにされていたもの又は③公募型指名競争入札であり,いずれも随意契約の相手方となった者以外の事業者が受注する可能性が皆無であったなどとはいえない。
原告指摘の物件については,証拠等を総合的に判断し,その発注態様や経緯に照らし,随意契約の相手方となった者以外の事業者が受注する可能性があったと必ずしもいえないものについては,本件基本合意に基づく個別の受注調整の結果,納入予定メーカーが納入できたとは認められないものとして,課徴金の対象としなかったものにすぎず,上記主張と矛盾するものではない。
イ 他社に参加資格のない物件(別紙6の「H」欄に「○」の記載がある物件)
5社は,特定消防救急デジタル無線機器の納入に関し,自社が入札参加資格がない場合であっても,自社の独自仕様を発注者が定める仕様書に入れ込むよう発注者や設計会社に働きかけたり,あるいは直接の受注者となるべき入札資格のある代理店や地元業者等に働きかけて自社の機器を当該代理店等を通じて発注者に納入できるようにしたりするなど,事業活動の様々な局面において,本来競争するはずであったにもかかわらず,本件基本合意をしたことにより,当該入札に至るまでの発注者等に対する営業活動などの様々な事業活動に係る意思決定が制約されていた以上,5社に入札参加資格のない物件であっても,具体的な競争制限効果が発生したことは明らかである。
ウ 仕様上他社が対応できない物件(原告の独自仕様が採用された物件。別紙6の「I」欄に「○」の記載がある物件)
原告の掲げる「仕様上,他社が対応できない物件(原告の独自仕様が採用された物件)」については,そもそも5社は,特定消防救急デジタル無線機器の納入に関し,自社に入札参加資格がない場合であっても,自社が納入予定メーカーとされたものについて,自社の独自仕様を発注者が定める仕様書に入れ込むよう発注者や設計会社に働きかけたりするなどの営業活動を行っていたものである。そうすると,5社は,本件基本合意がなければ,本来的には,互いの事業活動を十分に予測できない状況下で,例えば,1社入札となって入札が不調になるかもしれないリスクをも勘案しつつ,発注時の仕様書に独自仕様を反映させるための消防本部に対する営業活動をするかどうか,するとして,どのような営業活動を行うのかなどを自由に決めることができるなど,当該機器の納入に至るまでの発注者等に対する営業活動などの様々な事業活動の中で競争を行うことができるはずであったところ,本件基本合意の存在により,これに制約されて意思決定を行うこととなり,各社の事業活動が事実上拘束される結果となって,特定消防救急デジタル無線機器の取引に係る市場が有する競争機能が損なわれたといえる。原告主張のように,入札段階において原告の独自仕様が採用されていたとすれば,それは,本件基本合意に基づく受注調整の結果,入札段階において納入予定メーカーである原告が納入できるように競争が制限されたということであり,むしろ当該物件に競争制限効果が現に発生していたことを示すものである。
この点を置くとしても,例えば,①燕・弥彦総合事務組合消防本部が発注した物件(物件15)は,日本電気の仕様でありながら原告が納入し(乙1の2〔3枚目〕,乙261〔資料5〕),②白河地方広域市町村圏整備組合が発注した物件は,原告の仕様でありながら日立国際電気が納入するなど,ある社の独自仕様が盛り込まれていてもこれと異なる社が受注し履行に至った例は存在するから,これをもって具体的な競争制限効果が発生していなかったとはいえない。
エ 指令台一括発注物件(別紙6の「J」欄に「○」の記載がある物件)
原告の掲げる指令台一括発注物件については,現にちずを用いた受注調整の対象とされ,5社の協議によって納入予定メーカーが決められたものである。
オ 「不採算」とされた物件(別紙6の「K」欄に「○」の記載がある物件)
原告の掲げる「不採算」とされた物件については,前記1(被告の主張)のとおり,納入予定メーカーの決定自体が放棄されたものではなく,本件基本合意に基づく受注調整の結果,5社のうち1社又は複数社が納入予定メーカーに決定されたものであるから,具体的な競争制限効果が発生したことが明らかである。
カ 地元業者が原告の機器を選択した物件(別紙6の「L」欄に「○」の記載がある物件)
地元業者が原告の機器を選択した物件については,むしろ実際に落札者となった地元業者が原告の製品を選択したことにより,本件基本合意に基づく受注調整の結果,納入予定メーカーである原告が納入できるようにできていたということであり,競争制限効果が現に発生していたことを示すものといえる。
キ 低落札率又は最低制限価格付近の応札物件(別紙6の「M」欄に「○」の記載がある物件)
原告が掲げる札幌市消防局(物件2),北アルプス広域消防本部(物件10),燕・弥彦総合事務組合消防本部(物件15),津市消防本部(物件107)及び旭川市消防本部(物件114)は,いずれも本件基本合意に基づき,5社の協議により,原告が納入予定メーカーとなっており,本件基本合意に基づく個別の受注調整の結果,納入予定メーカーが納入できたといえるから,具体的な競争制限効果が発生したものと認められる。
これに加えて,本件基本合意は,本件対象期間中,特定消防救急デジタル無線機器の取引分野において有効に機能し,かかる取引分野が有する競争機能を損ね,その当事者がその意思で当該市場における価格等をある程度自由に左右することができる状態をもたらしていたものであり,納入予定メーカーを1社に絞り込むことができず,2社以上で落札が争われ,その結果,落札率が低くなったからといって,具体的競争制限効果の発生を否定することはできないというべきである。
ク 原告以外による営業活動のある物件(別紙6の「N」欄に「○」の記載がある物件)及び各社の入札行動から競争制限効果が生じたとはいえない物件(別紙6の「P」欄に「○」の記載がある物件)
原告が掲げる物件につき,仮に,本件基本合意の一部の内部者による競争的行動があったとの事実が認められたとしても,前記のとおり,本件基本合意による相互拘束により,競争制限効果が及んでいる以上,具体的な競争制限効果の発生は否定されない。
ケ 受注希望者が当初から原告1社である物件(別紙6の「O」欄に「○」の記載がある物件)
原告が掲げる物件のうち,①物件4,11,12は,ちずv11で原告の他に沖電気工業若しくは日本無線又は両者が受注希望を出しており,②物件24,42及び93は,ちずv11まで原告の他に日本電気が受注希望を出していたから,受注希望者が当初から原告1社である物件には当たらない。
コ 強力なアウトサイダーによる競争的な行動があり,かつ低落札率の物件(別紙6の「Q」欄に「○」の記載がある物件)
具体的競争制限効果の発生とは,本質的には,基本合意に基づく事業活動の相互拘束が及んだ状況にあることであり,そのような状況が認められる限り,アウトサイダーの存在やその行動は,具体的競争制限効果の発生を否定する事情にはならない。
原告指摘の物件につき,仮に,強力なアウトサイダーによる競争的行動があり,これにより落札率又は落札金額が低くなり,最低制限価格と同額又は近い価格で落札・受注をしたとの事情があったとしても,具体的な競争制限効果の発生が否定されるものではない。また,前記のとおり5社(平成24年5月の日本電気の離脱後は,その余の4社)が本件基本合意に基づき個別の受注調整がされた以上,原告主張のアウトサイダーの存在や行動をもって,直ちに自由な競争状況が回復されたとはいえず,具体的な競争制限効果の発生を否定することはできない。
(原告の主張)
(1) 本件130物件の「当該商品又は役務」の要件の該当性について
被告の主張(1)は,否認し又は争う。その理由は,以下のとおりである。
(2) 原告が直接又は間接に受注調整手続に関与していない物件等
月曜会に参加していた《A2》及び《A3》は,会合に出席して値上げについて情報交換をして共通認識を形成し,その結果を持ち帰ることを任されていたとはいえず(特に,《A3》に関しては,《A2》の明示的な指示に背き,《A2》に無断で月曜会に出席していたことからも明らかである。),これらの者の関与をもって,原告が事業者として特定消防救急デジタル無線機器の受注調整手続に関与したとはいえない。
したがって,別紙6の「S」欄に「○」の記載がある原告が直接にも間接にも受注調整に関与していない物件の売上額は,いずれも本件課徴金納付命令の計算の基礎となる売上高にはならない。
また,別紙6の「T」欄に「○」の記載がある納入予定メーカー等の認定が誤っている物件は,①ちず等に納入予定メーカーの記載がされず,又はちずの「チャン」欄に「Pen」との記載がされ(別紙6の「T-2」の欄に「○」の記載がある物件)若しくは「不採算案件」とされる(別紙6の「T-1」欄に「○」の記載がある物件)などしたため,納入予定メーカーの決定がされておらず,他に納入予定メーカーが原告であったことを裏付ける証拠がないもの,②《G》が納入予定メーカーとされたもの又は受注したもの(原告は,《G》からの製造委託を受け,当該物件を《G》に納入したにとどまり(別紙6の「T-4」欄に「○」の記載がある物件),発注者に対しては《G》の銘板を付けた機器が納入された(別紙6の「T-6」欄に「○」の記載がある物件。甲79)。),③他の違反行為者が納入予定メーカーとされたもの又は受注したもの(別紙6の「T-5」欄に「○」の記載がある物件),④指令台一括発注を前提とした納入予定メーカーの決定はされていないもの(別紙6の「T-7」欄に「○」の記載がある物件),⑤その他の理由により納入予定メーカーが決定されておらず,具体的な競争制限効果が発生したとはいえない物件(別紙6の「T-8」欄に「○」の記載がある物件)であり,いずれも原告の特定消防救急デジタル無線機器に係る売上額とはいえない。なお,ちずの「チャン」欄に原告を含む複数社が記載されたもの(別紙6の「T-3」欄に「○」の記載がある物件)は,それだけでは,納入予定メーカーが決定されたとはいえず,具体的な競争制限効果は発生したとはいえない。
(3) 5社による受注調整手続に上程されていない物件
別紙6の「F」欄に「○」の記載がある物件は,ちず等に記載されておらず,かつ,月曜会の中で具体的に協議の対象となっていない(例えば,月曜会においては,複数回発注される場合(別紙6の「F-2」欄に「○」の記載がある物件)の取扱い等につき,議論されたことはない上,かえって,1回目の入札の結果のみが報告され,2回目以降の入札の結果が報告されたことはなかったのであり,現に,67の物件中15の物件で複数のメーカーが納入するに至っているから,消防本部が複数回発注した場合に当該消防本部の納入予定メーカーがその全ての物件について納入予定メーカーになるとの取扱いがされていたことはない。)から,本件基本合意の当事者による受注調整手続に上程されたとはいえず,独占禁止法7条の2の「当該商品又は役務」に該当しない。したがって,当該物件に関する売上高は,本件課徴金納付命令の基礎となる売上高に含まれない。
(4) 具体的な競争制限効果が発生していない物件
別紙6の「G」欄~「Q」欄の各項目に「○」の記載がある物件は,次の各事情から,ちず等に記載されていても,具体的に競争制限効果が発生しておらず(被告が本件基本合意に基づいて納入した物件と認定した物件数(516件中280件),アウトサイダーである《G》や《H》の存在,平成24年5月10日を基準にその前後における平均落札率(92.99%,93.27%)等に照らすと,5社による本件基本合意の成立をもって,具体的な競争制限効果が発生したと推認することもできない。),独占禁止法7条の2の「当該商品又は役務」に該当しない。したがって,当該物件に関する売上高は,本件課徴金納付命令の基礎となる売上高に含まれない。
ア 随意契約となった物件(別紙6の「G」欄に「○」の記載がある物件)
発注者が,競争入札を実施せず,1社との随意契約を選択した物件は,原告以外の事業者が受注する可能性が皆無であり,当初から事業者間による競争の対象とならないから,具体的な競争制限効果の発生を観念する余地がない。
現に,被告は,置賜広域行政事務組合消防本部,富士五湖消防本部,さいたま市消防局及び上川郡鷹栖町消防本部の4物件につき,本件違反行為の実行期間内であり,かつ,ちずに対象消防本部の記載があり,かつ,原告が「チャン」として記載され,原告が機器を納入したにもかかわらず,本件課徴金納付命令の対象となる売上高から除外したが,これは,随意契約によって発注されたことを理由とするものである。
イ 他社に参加資格のない物件(別紙6の「H」欄に「○」の記載がある物件)
形式的には競争入札等の複数の事業者が参加できる選定方式が採用された場合においても,他社が指名されず,又は参加要件を満たさないなどの理由により入札に参加できないときは,具体的な競争制限効果の発生を観念する余地がない。
特に,物件107は,原告以外で入札に参加することができたのは,日本電気だけであり(沖電気工業及び日本無線は,仕様書(甲28の107の3,甲55の53)記載の「本件工事における主たる機器の製造業者又は同製造業者の関係する会社」に該当せず,入札参加資格を満たさない。),日本電気は既に本件合意から離脱したアウトサイダーであったから,入札資格のある代理店や地元業者さえも存在しない物件であり,これらの者に働きかけて自社の機器を当該代理店等を通じて発注者に納入できるようにする営業活動をすることはあり得ない。
ウ 仕様上他社が対応できない物件(原告の独自仕様が採用された物件。別紙6の「I」欄に「○」の記載がある物件)
次のような原告の独自仕様が採用された物件については,当初から原告以外の事業者が入札に参加することが事実上不可能であるから,事業者間での競争の対象ではなく,具体的な競争制限効果の発生を観念する余地がない。
① 車載型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること(他社の製品は5Wであった。)
② 携帯型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が5Wであること(他社の製品は2Wであった。)
③ 卓上型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること(他社の製品は5Wであった。)
④ 可搬型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること(他社の製品は5Wであった。)
⑤ 遠隔制御器により移動局無線装置の電波や警報音の発信状態を統制できること(他社の製品は統制機能がなかった。)
⑥ 遠隔制御器の液晶パネル上のボタンを押下した際に画面が振動する機能があること(他社の製品はこのような機能を実装していなかった。)
⑦ 2波半複信及び1波単信型の可搬型移動局無線装置の重量が6kg以下であること(他社の製品は8kg程度であった。)
⑧ 2波複信及び1波単信型の可搬型移動局無線装置の重量が8.5kg以下であること(他社の製品は10㎏程度であった。)
⑨ ハンドセットにテンキー入力機能等が実装されていること(他社のハンドセットにはそのような機能が実装されていなかった。)
⑩ 既設指令台(原告製)と機能的に接続できること(既設防災行政無線との機能連動を含む。既設指令台(原告製)との機能的接続を行うためには指令台のインターフェースの開示を受けるなどの技術支援が必要であるが,原告は他社に対してそのような技術支援を行っていなかった。)
⑪ 既設指令台(原告製)の改修を行うこと(指令台の改修作業を行うためには既設指令台のメーカーからの技術支援が必要であるが,原告は他社に対してそのような技術支援を行っていなかった。)
⑫ 既設指令台(《G》製)と機能的に接続できること(既設指令台(《G》製)との機能的接続を行うためには指令台のインターフェースの開示を受けるなどの技術支援が必要であるが,《G》が原告以外の他社に対してそのような技術支援を行っていなかった。)
⑬ 既設指令台(《G》製)の改修を行うこと(指令台の改修作業を行うためには既設指令台のメーカーからの技術支援が必要であるが,《G》が原告以外の他社に対してそのような技術支援を行っていなかった。)
⑭ 指令台一括発注物件において,指令台の通話路方式がIP制御方式であること(他社は,従来型の技術であるPCM時分割方式を採用していた。)
エ 指令台一括発注物件(別紙6の「J」欄に「○」の記載がある物件)
特定消防救急デジタル無線機器と指令台が一括して発注されることになった物件は,前記の事情から,具体的な競争制限効果は発生し得ない。
オ 「不採算」とされた物件(別紙6の「K」欄に「○」の記載がある物件)
ちず等の「不採算案件」に「×」が記入されている物件は,何らかの理由により,納入予定メーカーを決定することができず,納入予定メーカーの決定が放棄されたものであるから,具体的な競争制限効果は発生し得ない(特に,物件2は,《G》の落札率が81.1%であり,調査基準価格(31億5030万6300円)を下回っており,原告の入札価格も調査基準価格を下回っていること(甲28の2の1)から,実際にも叩き合いとなっている。)。
カ 地元業者が原告の機器を選択した物件(別紙6の「L」欄に[○」の記載がある物件)
5社による受注調整とは無関係に,地元業者が落札業者となり,当該地元業者がたまたま原告の機器を納入することを選択した物件は,本件基本合意に基づく受注調整手続との間の因果関係を欠くから,具体的な競争制限効果が発生したとはいえない。
キ 低落札率又は最低制限価格付近の応札物件(別紙6の「M」欄に「○」の記載がある物件)
本件では,最低制限価格や調査基準価格近くで応札されている物件が,数多く存在するところ,競争入札というものは,価格以外の競争変数をすべて捨象しておこなわれるものであり,競争入札において,最低制限価格と同額で落札されたのであるなら,需要者としてはそれ以上のものを期待しようがないのであり,たとえ,受注予定者の絞り込みにより競争単位の減少は認められたとしても,具体的競争制限効果は認められない。
ク 原告以外による営業活動のある物件(別紙6の「N」欄に「○」の記載がある物件)及び各社の入札行動から競争制限効果が生じたとはいえない物件(別紙6の「P」欄に「○」の記載がある物件)
多くの物件において,他社が,納入予定メーカーの決定後も,積極的に営業活動を行っていたこと(甲84。このような行為は,納入予定メーカーによる納入に協力するという本件合意の趣旨に反する行為である。),それにもかかわらず,当該他社が当該物件において入札していないこと(これは,受注意欲は持っていたが,入札仕様等の関係で,受注を諦めたことを推認させる事実である。)等に照らすと,具体的な競争制限効果が発生したとはいえない。
ケ 受注希望者が当初から原告1社である物件(別紙6の「O」欄に「○」の記載がある物件)
受注希望者が当初から原告1社である物件は,もともと他社が入札に参加することを予定していなかったものであり,本件基本合意に基づく受注調整手続との間の因果関係を欠くから,具体的な競争制限効果が発生したとはいえない。
コ 強力なアウトサイダーによる競争的な行動があり,かつ低落札率の物件(別紙6の「Q」欄に「○」の記載がある物件)
物件12,15,41,46,47,50,53,71,77,107,110,114は,強力なアウトサイダー(離脱後の日本電気又は《H》等)による競争的な行動が認められ,これによって原告も競争的な行動をとることになり,落札率も最低制限価格に近接するほど低くなったもの(最低制限価格が設置されていない物件については,上記と同等と評価できる事情があるものをいう。)であり,具体的な競争制限効果が発生したとはいえない。
6 争点(6)(本件違反行為の実行期間における原告の特定消防救急デジタル無線機器に係る売上額及びこれに対する課徴金の額)について
(被告の主張)
(1) 本件違反行為の実行期間における原告の特定消防救急デジタル無線機器に係る売上額は,別紙4の「課徴金計算の基礎とされた売上額」欄記載の金額を合計した480億3850円である。
本件基本合意は,特定消防救急デジタル無線機器を対象として成立しており,これには消防救急デジタル無線機器ではない機器や工事を含めて発注される場合には当該機器等が含まれるから,原告の掲げる物件に係る売上額は,いずれも特定消防救急デジタル無線機器に係る原告の売上額である。
なお,原告主張の免許申請関係費用等については,①そもそも独占禁止法7条の2第1項の「売上高」の算定方法は,実行期間において締結した「契約により定められた商品の販売又は役務の提供の対価の額」とされていること(独占禁止法施行令6条1項),②原告主張の免許申請関係費用等は,契約により定められた請負代金又は売買契約に含まれていたものであり,納税義務者や特別徴収義務といった法律上の義務が発注者(各消防本部)及び原告に課せられるわけではなく,請負代金部分と法的性質を異にする金員ではないこと,③各消防本部と原告らの間の契約書や仕様書等においても,免許申請関係費用などが何ら明確に区分されていなかったこと等に照らし,課徴金の算定の基礎となる売上額から控除すべきものではない。
(2) したがって,本件違反行為の実行期間中,特定消防救急デジタル無線機器の製造業を営んでいた原告が納付すべき課徴金の額は,独占禁止法7条の2第1項により,前記売上額480億3850円に100分の10を乗じて得た額から,同条23項により1万円未満の端数を切り捨てて算出された48億円となる。
(原告の主張)
別紙6の「E」欄に「○」の記載がある物件は,次の①~㉒に掲げるとおり,その機能等に照らし,特定消防救急デジタル無線機器の範ちゅうに属しない商品であり,独占禁止法7条の2の「当該商品又は役務」に該当しない商品の売上高を含むものである。また,別紙6の「R」欄に「○」の記載がある物件(無線局申請費用等)は,その売上高に本来発注者が負担すべき費用で原告が代わりに支払ったものが含まれている。
したがって,上記商品(指令システム等)の売上高(別紙6の「E」欄記載のもの及び別紙7「免許申請関係費用等の一覧」記載のもの)は,本件課徴金納付命令の計算の基礎となる売上高から除外されるべきである。
① 指令システム(情報伝達を目的とする無線システムとは別のシステムである。)
② 防災無線システム(地方自治体が災害時の情報伝達と情報収集を迅速に行うための通信ネットワークシステムであり,消防に関するシステムとはまったく別個のシステムである。)
③ 潮位観測装置(管内の潮位データを本部の中央処理装置に集めてデータ処理を行い,ネットワーク内の端末機器で潮位データの閲覧を行うための装置であり,通信機器ではない。)
④ 車両動態管理設備(AVM。指令システムの構成機器である。)
⑤ 情報系コンピューター(指令システムの構成機器である。)
⑥ データ系端末装置・緊急援助隊支援端末(指令システム又は無線システムとは別の緊急援助隊支援システムの構成機器である。)
⑦ 基本設計又は実施設計に相当する設計業務(消防救急デジタル無線機器の整備とは別に行われる設計業務である。)
⑧ 局舎(基地局を構成する機器を収容するための建物であり,消防救急デジタル無線機器そのものではない。)
⑨ ネットワーク機器(情報通信を行うネットワーク上に設置される通信中継機器の総称であり,消防救急デジタル無線機器による無線通信とは別の機能を有する機器である。)
⑩ 遠方監視装置及び被遠方監視装置(多重無線局の監視制御を行うための装置であり,無線機器とは別の用途に用いられる機器である。)
⑪ 衛星通信システム・衛星電話(各VSAT局間での通信を衛星通信ネットワークを介して行う通信システム及び衛星通信と直接通信する電話網を利用する電話機であり,消防救急無線が使用できない地域・場面においてその代替手段として設置される通信機器である。)
⑫ 無線サイレン吹鳴制御装置(各種消防業務において消防団員等への非常招集等を行うことを目的として設置するものであり,消防救急無線とは全く異なる別の機器である。)
⑬ 受令機・受信システムその他受信専用装置(消防活動業務における音声通信を傍受するための装置であり,特定消防救急デジタル無線機器ではない。)
⑭ アナログ無線,防災相互通信用移動局無線装置その他260MHz以外の無線機器(260MHzの周波数帯を使用する通信以外の方法により無線通信を行う無線機器であり,特定消防救急デジタル無線機器ではない。)
⑮ 監視カメラ・高所カメラ・CCTV・デコーダ・エンコーダ・監視装置(各所に設置してカメラ監視を行うための装置群であり,消防救急無線とは全く異なる別の機器である。)
⑯ ヘリコプター搭載無線装置(消防救急デジタル無線に特殊な仕様を追加した機器であり,消防救急デジタル無線とは別の機器である。)
⑰ 指令改修等(指令システム等の改修作業であり,特定消防救急デジタル無線機器ではない。)
⑱ 消防団用無線装置(消防団員が活動を行う際に無線の傍受を行うために使用する無線装置であり,消防職員の使用する消防救急デジタル無線機器に通信を発することはできないものである。消防団員は「消防職員」ではなく(地方公務員法4条1項,消防組織法11条1項,14条),消防団員用無線装置は,「消防職員」が消防業務及び救急業務を行うためのものである「消防救急無線」に当たらない。)
⑲ J-ALERT関係(全国瞬時警報システムに用いられる装置であり,消防救急デジタル無線機器とは全く別のシステムである。)
⑳ 県庁接続通信機器(指令システムの一部として音声通話を電話回線を通じて県庁などの機関に転送する機器であり,消防救急デジタル無線機器とは別の機器である。)
㉑ 免許申請関係費用等(無線局の開設・登録等の申請費用,一般社団法人電波産業会(ARIB)に対する照会費用といった無線局を開設する際に必要な申請手続等に係る手数料であり,消防救急デジタル無線機器を設置する前提として行われる事務手続に関するものにすぎない。これらは,発注者である各自治体が負担すべきものであり(電波法103条1項1号2号,6条1項,10条1項,2項),発注者の負担すべき費用を請負人である原告らが立て替えて支払ったことに対する補てんであるから,請負代金とは,その法的性質を異にし,契約上明確に区分されていたものである。)
㉒ 撤去廃棄費用(消防救急デジタル無線機器の設置に伴い,不要となった従来の無線機器の撤去・廃棄に係る費用であり,消防救急デジタル無線機器の設置工事とは別の作業である。)
以上
















(別紙8)
認定事実
第1 認定事実
前提事実,掲記の証拠(書証の記載は,特に断らない限り,枝番号のものを含む。)及び弁論の全趣旨により認められる認定事実は,次の1~6のとおりである。
以下の認定事実のうち,原告らによる会合の開催場所及び出席者については,特に断らない限り,別紙3「会合の実施状況」に記載のとおりであるから,認定事実中の会合ごとに別紙3の該当箇所を括弧書きで引用するにとどめた。また,認定事実中の「出席者」は,当該会合の出席者として別紙3の該当箇所に記載された者らをいう趣旨である。
なお,書証に付した〔 〕内の記載は,当該認定事実に特に関連する部分を注記したものであり,当該部分以外の部分をその認定根拠となる証拠から排除する趣旨ではない。また,認定事実中の〔 〕内に準備書面を記載した部分は,弁論の全趣旨として摘示したものである。
1 平成21年12月頃までの経緯
(1) 平成20年11月頃から平成21年9月までの3社による会合の開催状況
ア 原告の≪A4≫(当時,情報通信システム営業統括部営業推進部長),日本電気の≪B2≫(当時,消防・防災ソリューション事業部第三営業部グループマネージャー)及び沖電気工業の≪C3≫(当時,官公営業本部営業第二部シニアスペシャリスト)は,今後,消防救急デジタル無線機器の発注が見込まれる状況であったことから,平成20年11月10日,≪A4≫の提案により,消防救急デジタル無線機についての会合(別紙3の番号1)を開催した(前提事実(1)・(4)ア)。
上記会合においては,今後発注される消防救急デジタル無線機器の整備に関する商談について,新規に消防救急無線の市場に参入してくるメーカーを排除して3社(原告,日本電気,沖電気工業)が協調して市場を分け合うこと,そのための具体的な方法等について話し合われ,今後も原則として毎月第2月曜日にこのような会合(月曜会)を開催し,継続して話し合うこととされた(乙55参照)。
その後,≪A4≫(ただし,平成21年6月の≪A4≫の退職後は,≪A2≫(情報通信システム営業統括部統括部長代理)),≪B2≫及び≪C3≫は,同年9月までの間におおむね月1回のペースで月曜会を開催し,継続して,今後発注される消防救急デジタル無線機器の整備(実証試験を含む。)に関する発注について,3社で市場を分け合うための方法等を話し合った(別紙3の番号1・4参照。以上につき,乙13〔28~44頁〕,44〔3~28頁〕,55,56,57〔2~5頁〕,58〔11~31頁〕,59〔7~21頁〕,63)。
イ 原告の≪A4≫及び≪A2≫は,原告の≪A1≫,≪A5≫(当時,システムサポート統括部長),≪A6≫(当時,情報通信システム営業統括部長),≪A7≫(当時,情報通信ネットワーク事業部長)らに対し,随時,社内に設けられた消防デジタル無線ワーキンググループ(前提事実(1)ア参照)において又は電子メールにより,月曜会で話し合った内容を報告した。
日本電気の≪B2≫は,日本電気の≪B1≫(当時,消防・防災ソリューション事業部統括マネージャー)らに対して,随時,電子メール等により,月曜会で話し合った内容を報告した。
沖電気工業の≪C3≫は,沖電気工業の≪C1≫(当時,官公営業本部第二営業部長)らに対して,随時,電子メール等により,月曜会で話し合った内容を報告した(以上につき,乙13〔28~44頁〕,14〔10~12頁〕,28〔2~6頁〕,57〔5~6頁〕,58〔3~11頁,16~22頁,26~28頁〕,59〔9~27頁〕,63〔11~33頁〕,64~66,67〔4~5頁〕,68〔2~3頁〕,69〔2~5頁〕)。
(2) 日本電気及び沖電気工業の2社の会合
ア 日本電気及び沖電気工業は,かねてから,技術系の担当者が中心となって,消防救急デジタル無線機器を共同開発し,相互にOEM供給を行うことについて協議を行っていた。
イ 日本電気の≪B1≫及び沖電気工業の≪C1≫らは,平成21年2月3日以降,月曜会とは別に,おおむね月一回のペースで会合を開催し,今後発注される消防救急デジタル無線機器の整備(実証試験を含む。)について受注調整する方法等について検討するようになった(別紙3の番号2)。
日本電気の≪B1≫と沖電気工業の≪C1≫らは,上記会合において,上記の消防救急デジタル無線機器の整備について,日本電気と沖電気工業の2社間で受注調整していくとの認識を共有した上で,受注調整するための具体的な方法について話し合うとともに,原告を含めた3社で受注調整していくことなどに関してもお互いの意見を交換した(ア・イにつき,乙13〔2~28頁〕,14〔7~12頁〕,20〔23~37頁〕,70,71,72〔2~15頁〕,73〔12~36頁〕)。
2 原告,日本電気及び沖電気工業の3社による会合等の状況
(1) 平成21年8月及び9月の会合の開催状況
ア 原告と沖電気工業は,平成21年8月上旬頃,原告の≪A2≫が沖電気工業の≪C3≫に対して消防救急デジタル無線機器のうち携帯型無線装置の調達についての沖電気工業の考え方を確認したい旨を伝えたことから,同月21日に会合を行うことになった。
平成21年8月21日に開催された上記会合(別紙3の番号3)において,原告の≪A7≫らは,月曜会に言及して,今後発注される消防救急デジタル無線機器の整備につき,原告が3社で受注調整して市場を分け合うことに前向きである旨を発言し,沖電気工業の≪C1≫は,月曜会での話合いをそろそろ消防救急デジタル無線機器の営業責任者級の者が参加する会合にすべきであるなどと積極的に応じた(乙74参照。以上につき,乙74,75〔2~13頁〕,76〔2~13頁〕)。
イ 平成21年9月14日に開催された会合(別紙3の番号4)において,原告の≪A2≫は,日本電気の≪B2≫及び沖電気工業の≪C3≫に対し,消防救急デジタル無線機器の整備について,次回の月曜会には日本電気も沖電気工業も消防救急デジタル無線機器の営業責任者級の者を出席させ,3社で受注調整を行うという方針について了解し合いたい旨を提案し,日本電気及び沖電気工業の出席者はこれを持ち帰って検討することになった。
これに対し,日本電気においては,≪B2≫が≪B1≫らに対して電子メール(乙77)で上記提案を報告するなどし,この提案を了解した。また,沖電気工業においては,≪C3≫が≪C1≫及び≪C2≫らに対して電子メール(乙66)で上記提案を報告するなどし,この提案を了解した(以上につき,乙59〔21~27頁〕,63〔33~44頁〕,66,78〔2~16頁〕,75〔13~18頁〕,76〔13~23頁〕,77)。
(2) 平成21年10月から同年12月までの会合の開催等
ア 平成21年10月19日の会合
平成21年10月19日に開催された会合(別紙3の番号5)において,出席者は,実証試験として発注される6つの消防本部の物件について,それぞれ,どの消防本部分の実証試験の物件の受注を希望するかなどを述べ合い,原告は玉野市消防本部分,日本電気は京都市消防局分,鳥取西部広域行政管理組合消防局分及び春日・大野城・那珂川消防組合消防本部分,沖電気工業は岐阜市消防本部分及び神戸市消防局分を希望する旨を述べた。そして,原告の≪A2≫は,要旨「いきなり市場を壊すことはお互いに避けたい。各社バランスよくシェアできないか」,「実証試験は日立国際電気,日本無線,≪G≫を含んだ6社で考えないと初っ端で市場を壊すことになる」などと発言し,日本電気の≪B1≫は,要旨「日立国際電気は消防の無線市場で失うものはなく,他の業種でも同様に壊しては手を引く連続だ」などと発言した。
また,全国で発注される消防救急デジタル無線機器についても,例えば,原告の≪A2≫が,その機器の種類ごとに納入予定メーカーを決めるという方法(基地局,回線制御,車両無線,携帯無線を分けた横串でのアライアンス)を提案したところ,日本電気の≪B1≫が,「それは難しい」,「客の意向が尊重されるべき」旨を述べるなど,出席者間で意見を交換した。
出席者は,≪H≫及び日本無線が消防救急デジタル無線機器の市場に参入してくる可能性があること,≪H≫が実証試験の段階から参入してくることが予想されるところ,そうなると,競争により受注価格の低落を招くことが危惧されるので,これを回避する方策を検討する必要があるとの認識を共有した。出席者は,≪H≫への対応策も話し合ったところ,まずは,原告の≪A2≫が,日立国際電気の担当者に接触し,≪H≫の動向や本音を探ってみることにした。
出席者は,3社の間での会合を今後も引き続き開催することとした(以上につき,甲1,乙79参照。そのほか,乙76〔23~50頁〕,78〔16~32頁〕,80〔3~12頁〕,81,83〔1~32頁,37~38頁〕,84〔1~17頁〕,)。
原告の≪A2≫は,上記会合の終了後,上記と同趣旨を記載したメモ(甲1)を作成した(乙80,証人≪A2≫)。
イ 平成21年11月16日の会合
平成21年11月16日に開催された会合(別紙3の番号6)において,原告の≪A2≫は,≪H≫の動向について,日立国際電気から聞いた内容として,同社は実証試験の物件についても1件受注したいと考えていること,実証試験の物件の中では神戸市消防局分の受注を狙っていることなどを報告するとともに,日立国際電気を仲間に加えることとしたらどうかとの提案も行った。
この報告を受けて,3社は,≪H≫が,神戸市消防局分かそれ以外の実証試験の物件1件の受注を狙って消防救急デジタル無線機器の市場に実証試験の段階から参入してくるとの認識を共有し,≪H≫を暴れさせてしまうと,当該市場を最初から安値で破壊されてしまうのではないかとの危惧を共有した。出席者は,すぐに日立国際電気に声をかけるとの結論に至らず,日立国際電気が実証試験の物件の受注を狙っているということがどの程度確度が高いものであるのかを探ることとし,設計会社に日立国際電気が支援を申し込んでいるかどうか等についての情報を設計会社から得ることとした。そして,出席者は,≪J≫(≪J≫),≪K≫(≪K≫)及び≪Ⅰ≫(≪Ⅰ≫)の3社から出席会社の間で分担して情報収集することとし,≪J≫からは原告が,≪K≫からは日本電気が,≪Ⅰ≫からは沖電気工業が,それぞれ情報を収集することとした(以上につき,甲2参照。そのほか,乙21〔2~12頁〕,28〔2~6頁〕,34〔2~8頁〕,67〔3~5頁〕,84〔17~23頁,26~30頁〕,85,86,87,88〔2~28頁〕,89,90〔10~35頁〕)。
原告の≪A2≫は,上記会合の終了後,上記と同趣旨のメモ(甲2)を作成した上,その頃に開催された≪A1≫らを出席者とする消防デジタル無線ワーキンググループにおいて,上記メモを配布して上記会合の協議内容等を説明するなどしたが,当該出席者から特に異論は出なかった(乙34)。
ウ 平成21年12月21日の会合
平成21年12月21日に開催された会合(別紙3の番号7)において,出席者は,いずれも日立国際電気や日本無線が設計会社に支援の申入れをしているなどの情報に接することはなかった旨を報告した。
次に,出席者は,①平成21年12月10日に入札が実施された実証試験に係る実施設計(岐阜市消防本部分,鳥取県西部広域行政管理組合消防局分及び春日・大野城・那珂川消防組合消防本部分)については,岐阜市消防本部分を沖電気工業が支援する≪Ⅰ≫が,鳥取県西部広域行政管理組合消防局分を日本電気が支援する≪J≫が,春日・大野城・那珂川消防組合消防本部分を日本電気が支援する≪K≫が落札したことを踏まえ,実証試験の物件の入札が平成22年8月から9月頃になるのではないかとの見通しを共有するとともに,②同年1月29日に予定されていた実証試験に係る実施設計(京都市消防局分,神戸市消防局分,玉野市消防本部分)の入札において落札すると予想される設計会社に対する納入予定メーカーと認識されている者の支援状況等を確認し合い,「事故」が起こることのないよう,設計会社が総務省消防庁の予算額の積算用に提出した見積価格を入手して,物件ごとの大まかな予算額を把握して3社の間で共有し,落札すると予想される設計会社以外の社から入札金額について相談を受けた場合には,「落札することのない入札金額」を教えられるようにすることとした。この見積価格の入手については,3社の間で分担することとし,京都市消防局分については≪J≫が落札するであろうとの認識の下,その納入予定メーカーと認識されていた日本電気が,神戸市消防局分については≪Ⅰ≫が落札するであろうとの認識の下,その納入予定メーカーと認識されていた沖電気工業が,玉野市消防本部分については≪K≫が落札するであろうとの認識の下,その納入予定メーカーと認識されていた原告が,それぞれ担当することとした。
そして,原告の≪A2≫は,要旨「日本無線について,間に合わないで片づけていいのか,戦略として低価格で市場を壊しに来ることは明白であり,実証試験には来ないと決めつけるには尚早である」旨を述べたところ,沖電気工業の出席者は,要旨「確かに日立国際電気を含めた6社で次年度以降のアライアンスを含めて包括的にやらないと市場破壊は避けられない。他の2社に3社連合をオープンにし,出方をみるのもいいのではないか」などと述べた。これに対し,原告の≪A2≫は,要旨「総論では賛成。ただ,本部でいかに統制をとれるかにかかっている。コンプラの面では価格統制(札)をすればよい」などと発言した。これに対し,日本電気の≪B2≫は,全国で発注される消防救急デジタル無線機器の整備に関する納入予定メーカーの割り振り方法に関し,日本電気としても,全国約800の消防本部の納入予定メーカーを全て割り振ることには異論はないが,全国約800の消防本部の納入予定メーカーを一気に全て割り振るとの方法は難しいのではないかと考え,折衷案として,日立国際電気と日本無線を加えた上での「漁獲高制」との方法を提案した。出席者は,以上のやり取りを踏まえ,継続して情報収集を行い,日立国際電気及び日本無線に「鈴をつける」方策を模索することにした(以上につき,甲3,乙92参照。そのほか,前提事実(4)ア,乙84〔23~24頁,30頁〕,88〔28~47頁〕,91,92,93〔1~28頁〕)。
原告の≪A2≫は,上記会合の終了後,上記と同趣旨のメモ(甲3)を作成した上,その頃に開催された≪A1≫らを出席者とする消防デジタル無線ワーキンググループにおいて,上記メモを配布して上記会合の協議内容等を説明するなどしたが,当該出席者から特に異論は出なかった(乙34)。
3 平成22年1月から平成26年3月までの会合等の状況
(1) 実証試験の入札までの状況
ア 平成22年1月25日の会合
平成22年1月25日に開催された会合(別紙3の番号8)において,出席者は,実証試験に係る実施設計(京都市消防局分,神戸市消防局分,玉野市消防本部分)の入札が数日後に控えていたことから,前回の会合において話し合ったとおり,設計会社から入手した見積価格を発表し合い,「事故」が起こることのないようにすることとした。
また,全国で発注される消防救急デジタル無線機器の整備に関する納入予定メーカーの割り振り方法につき,原告の≪A2≫は,指令台の既設業者を納入予定メーカーとしつつ,その中の一部の納入予定メーカーを日立国際電気及び日本無線にも割り振るとの意見を述べ,沖電気工業の≪C1≫らは,これに同調する旨の意見を述べた。これに対し,日本電気の≪B2≫は,日立国際電気及び日本無線も消防救急デジタル無線機器の整備に関する受注調整の話合いに参加させるとの考えや,全国で発注される消防救急デジタル無線機器の整備について納入予定メーカーを割り振るとの考えでは賛成であったものの,具体的な納入予定メーカーの割り振り方法としては,1件1件個別に判断していくとの考えであったことから,上記意見を持ち帰って社内で検討する旨を述べた。
なお,この日の会合において,日本電気の≪B2≫及び沖電気工業の≪C1≫らは,原告の≪A2≫に対し,≪G≫については,原告がその意向も踏まえて日本電気及び沖電気工業と受注調整を図る形としたい旨を述べた。原告の≪A2≫は,政令指定都市が設置する消防本部など大規模な消防本部に関しては,≪G≫と日本電気との間で受注希望が重複することも想定されていたところ,このような場合には,両社間の話合いの場を設けるか,事前に何らかの調整基準が明確となっていることが必要となるかもしれないと述べたが,日本電気及び沖電気工業の上記要望を拒否しなかった(以上につき,甲4参照。これに加え,乙84〔24頁〕,94〔1~5頁〕,95,96〔3~26頁〕,98〔2~20頁〕)。
原告の≪A2≫は,上記会合の終了後,上記と同趣旨のメモ(甲4)を作成した。
イ 平成22年2月15日の会合
平成22年2月15日に開催された会合(別紙3の番号9)において,出席者は,実証試験に係る実施設計(京都市消防局分,神戸市消防局分,玉野市消防本部分)の入札につき,京都市消防局分を落札した≪L≫には日本無線が,玉野市消防本部分を落札した≪М≫には日立国際電気が,それぞれ支援等をしているようだと報告し合った。日本電気の≪B1≫らは,要旨「自らが納入予定メーカーとされていた京都市消防局分は日本電気の方を向いているので,いずれ日本電気に支援を求めるよう話があるだろう」などと述べたが,原告の≪A2≫は,その納入予定メーカーとされていた玉野市消防本部分を落札した≪М≫に対し,支援させてほしいと打診したが,その承諾を得られなかった旨を報告した。出席者は,日本無線及び日立国際電気が,実証試験の入札にも参加してくるであろうとの見方を共有し,指令台連携等,納入予定メーカーの特徴を出すようにするとの方策を共有した。
また,全国で発注される消防救急デジタル無線機器の納入予定メーカーの割り振り方法について,原告の≪A2≫は,前回と同様,指令台の既設業者を納入予定メーカーとすべきとの考え方である旨を述べ,沖電気工業の≪C1≫らも,無線の既設業者を納入予定メーカーとすべきとの考え方である旨を述べた。これに対し,日本電気の≪B2≫らは,指令台との連携や接続を要する機能を希望する顧客が多いのではないかなどと,≪A2≫の意見に類似するような意見を述べつつ,政令指定都市クラスの規模の大きな消防本部は指令台の既設業者が他社であっても受注を希望するとも述べた。そのため,出席者は,この点につき,引き続き検討を行っていくということとした。
なお,出席者は,大阪市消防局と岡山市消防局が平成22年7月から8月頃にかけて消防救急デジタル無線機器の整備を発注しそうであるとの情報を共有した(以上につき,甲5,乙97。そのほか,乙28〔2~3頁〕,34〔2~5頁〕,67〔3~5頁〕,84〔24~25頁,30~34頁〕,96〔26~50頁〕,98〔21~47頁〕)。
原告の≪A2≫は,上記会合の終了後,沖電気工業の≪C1≫及び≪C2≫と個別に打合せをして,日本無線及び日立国際電気に対して個別に感触取りをしようなどと確認し,また,上記と同趣旨のメモ(甲5)を作成した(乙84〔38~40頁〕,98〔47~48頁〕)。
ウ 平成22年3月15日の会合
(ア) 原告の≪A2≫は,平成22年3月15日の月曜会に先立ち,沖電気工業の≪C1≫に対し,このまま3社で話合いをするのではなく,日立国際電気,日本無線等を加えて話合いを行うべきではないか,それが受け入れられない場合は,納入予定メーカーを決定することなく自由に入札に参加等しようと考えているなどと述べていたところ,同日の月曜会の開催前に,沖電気工業の≪C1≫らと個別に打合せをした際,≪C1≫らから,平成22年2月23日に行った日立国際電気の≪D1≫との会合の内容や,日立国際電気に消防救急デジタル無線機器の整備に関する受注調整の話合いへの参加を打診してもよいのではないかとの沖電気工業の考えを伝えられた。
(イ) 平成22年3月15日に開催された会合(別紙3の番号10)においては,全国で発注される消防救急デジタル無線機器の整備に関する納入予定メーカーの割り振り方法について,沖電気工業の≪C1≫が,これまでの各社の意見等からすると,20%程度を日立国際電気,日本無線等を納入予定メーカーとし,残りを3社の間で納入予定メーカーを割り振り,日本電気や≪G≫などが受注を強く希望することが考えられる政令指定都市等に所在する大規模な消防本部については,別の調整の場を設けて納入予定メーカーを決定するとの考え方になるのではないかと総括した。そして,≪C1≫は,日立国際電気や日本無線を3社によるこのような受注調整に参加するよう誘ってみてはどうかと提案した。出席者は,全国で発注される消防救急デジタル無線機器の整備に関する納入予定メーカーの割り振り方法につき,各社で4月までに物件の数等を整理するなどした上で,引き続き話合いを行うとともに,まずは日立国際電気に対して沖電気工業が参加を打診することにし,日立国際電気の参加を認めるか否か,次回,平成22年4月19日の会合において3社で意見を確認し合うということとした((ア)・(イ)につき,甲6,乙99参照。そのほか,乙84〔34~41頁,44~51頁〕,98〔52~71頁〕,100〔2~4頁〕,101〔3~15頁〕)。
原告の≪A2≫は,上記会合の終了後,上記と同趣旨のメモ(甲6)を作成し,平成22年3月16日,≪A1≫,≪A5≫,≪A7≫及び≪A6≫に対し,電子メール(乙100〔添付資料1・2〕)により当該メモを送付した。
エ 平成22年4月14日の会合
(ア) 沖電気工業の≪C2≫は,平成22年3月15日の月曜会の話を受けて,日立国際電気の≪D1≫に連絡し,日立国際電気に消防救急デジタル無線機器の整備に関する受注調整の話合いへの参加を呼びかけた。日立国際電気の≪D1≫は,上記話合いへの参加を了承した。
(イ) 平成22年4月14日に開催された会合(別紙3の番号11)においては,3社からの出席者は,日立国際電気の≪D1≫を交えて,玉野市消防本部分の実証試験の物件や大阪市消防局発注の物件等について歓談し,会合は和やかに終了した(以上につき,甲7参照。このほか,(ア)・(イ)につき,乙21〔22~29頁〕,100〔4~6頁〕,102〔2~6頁〕,103〔2~16頁〕,104〔3~7頁〕,105〔3~19頁〕))。
(ウ) 原告の≪A2≫は,上記会合の終了後,上記(イ)と同趣旨のメモ(甲7)を作成し,平成22年4月15日,≪A1≫,≪A5≫,≪A7≫及び≪A6≫に対し,電子メール(乙100〔添付資料3・4〕)により当該メモを送付した(乙100,102)。
オ 平成22年5月10日の会合
平成22年5月10日に開催された会合(別紙3の番号12)においては,3社は,日立国際電気の参加を認めることとした。
その上で,全国で発注される消防救急デジタル無線機器の整備に関する納入予定メーカーの割り振り方法について,原告の≪A2≫は,指令台について既設業者であるメーカーが納入予定メーカーとなるという指令台既設の考え方を前提として,政令指定都市クラスの大規模な消防本部の場合はともかく,指令台についても無線についても既設業者である場合には,当該メーカーが納入予定メーカーとなるということになるのだろうという旨の意見を述べた。これに対し,沖電気工業の≪C1≫らは,無線について既設業者であるメーカーが納入予定メーカーとなるという無線既設の考え方を前提とした発言をした。また,日本電気の≪B2≫は,発注者等に実際に営業活動を行い,入札を行ったりする日本電気の支社等の現地の営業部隊をコントロールしやすいという観点から,発注仕様書に自社の仕様が採用されたメーカーが納入予定メーカーとなるとの考え方(いわゆる仕様書勝負の考え方)や指令台既設の考え方などが混在する考え方を前提とした発言をした。出席者は,次回,日立国際電気の意見も聴き,引き続き検討することにした(以上につき,乙30〔2~11頁〕〕,101〔29~38頁〕,104〔5~8頁〕,106,107,108〔1~4頁〕,109,110〔3~8頁〕,111〔11~23頁〕)。
カ 平成22年5月24日の会合
平成22年5月24日に開催された会合(別紙3の番号13)においては,出席者は,全国で発注される消防救急デジタル無線機器の整備に関する納入予定メーカーの割り振り方法につき,日立国際電気の≪D1≫から,「実証試験の物件については1物件で納入予定メーカーとなれればよく,全体では,≪H≫が指令台の既設業者である消防本部や日立国際電気を気に入ってくれている消防本部の物件で納入予定メーカーとしてほしい」旨の意見を聴いた。日本電気の≪B2≫及び沖電気工業の≪C1≫らは,これまでと同様の意見を述べ,原告の≪A2≫は,これまでと同様の意見に加え,実証試験の物件につき,1物件は受注したいとの意見を述べた。
出席者は,実証試験の物件等平成22年度に発注が予定されている物件の発注が目前に迫ってきていたことから,先行して納入予定メーカーを決定すべく,このような物件として実証試験等10物件(岡山市消防局,大阪市消防局,千葉県,岐阜市消防本部,京都市消防局,神戸市消防局〔実証試験〕,玉野市消防本蔀,鳥取県西部広域行政管理組合消防局,春日・大野城・那珂川消防組合消防本部,神戸市消防局〔単独〕)を書き出し,発注時期はいつ頃か,既設業者はどの社であるか,設計会社にはどの社が支援しているか等を出席者の間で情報を出し合い,ホワイトボードに書き出した(その書き出された内容につき,乙114参照)。その上で,出席者は,各社どの物件につき納入予定メーカーとなることを希望しているかを表明した。
このうち,原告は,実証試験6物件のうち玉野市消防本部分,先行して発注される本事業に係る物件のうち岡山市消防局の物件及び大阪市消防局の物件の希望を表明した(以上につき,乙112参照。このほか,乙21〔29~35頁〕,104〔8~13頁〕,110〔7~22頁〕,111〔23~42頁〕,113,114)。
キ 平成22年6月7日の会合
(ア) 沖電気工業の≪C2≫らと原告の≪A2≫は,平成22年6月1日,打合せを行ったところ,その際,≪C2≫が,≪A2≫に対し,各社の受注希望を整理して作成した表(乙115。岡山市消防局の物件の「仕分案」欄に「FG」,大阪市消防局の物件〔単独〕の「仕分案」欄に「F」と記載されたもの)を示してその内容を説明した(乙115,116〔3~7頁〕)。
(イ) 平成22年6月7日に開催された会合(別紙3の番号14)においては,幹事役となっていた沖電気工業が,前回の会合での4社の希望等を踏まえて作成した実証試験等10物件の納入予定メーカーの割り振り案(①岡山市消防局の物件及び大阪市消防局の物件の納入予定メーカーは原告,②千葉県発注の物件,実証試験のうち京都市消防局,鳥取県西部広域行政管理組合消防局及び春日・大野城・那珂川消防組合消防本部分の物件の納入予定メーカーは日本電気,③実証試験のうち岐阜市消防本部分の物件及び神戸市消防局分並びに神戸市消防局の物件の納入予定メーカーは沖電気工業,④実証試験のうち玉野市消防本部分の物件の納入予定メーカーは日立国際電気とする。乙115)をプロジェクターを使用して提示した。
この案について,原告の≪A2≫は,社内調整が必要であるものの受入れ可能である旨を回答した。日立国際電気の≪D1≫も,神戸市消防局分の実証試験の物件については≪H≫から指示があるかもしれず,その場合には希望せざるを得なくなるかもしれない旨の留保はあったものの,受入れ可能である旨回答した。日本電気の≪B2≫は,大阪市消防局の物件について希望を取り下げるとまでの回答は行わなかったことから,同物件の納入予定メーカーについては日本電気と原告の2社間で個別に調整することとなった。希望が重複していなかった残りの物件については,上記会合において,おおむね沖電気工業の上記の案のとおりの割り振りで意見の一致を見た(以上につき,乙104〔10~18頁〕,110〔22~26頁〕,115,116〔3~19頁〕)。
ク 平成22年9月1日の会合
(ア) 平成22年6月18日及び平成22年7月28日に開催された会合(別紙3の番号15及び16)においては,原告と日本電気との間における大阪市消防局の物件の調整は進展しなかった。
4社は,平成22年8月9日,実証試験の入札公告が行われ,予想外に早く入札が行われることとなったことから,同年9月1日に月曜会を開催することにした。
(イ) 平成22年9月1日に開催された会合(別紙3の番号17)においては,日本電気の≪B2≫が,日本電気は大阪市消防局の納入予定メーカーとなることを諦める旨発言した。
そして,実証試験の物件について,沖電気工業は,「お付き合い入札」をしてもらう者には,誤って落札してしまうという「事故」が起こらないよう,推定予算額以上の金額で応札してもらうのがよいのではないかと提案し,出席者は,次回の会合で各物件の推定予算額を共有することとした。また,会合の中で,沖電気工業が,そろそろ日本無線にも消防救急デジタル無線機器の整備に関する受注調整の話合いに加わってもらってはどうかと提案し,日本電気の≪B2≫が声をかけてみることとなった((ア)・(イ)につき,乙104〔18~44頁〕,124〔3~24頁〕,125〔7~9頁〕,126〔2~17頁〕)。
ケ 日本無線の参加
日本電気の≪B2≫は,平成22年9月1日の月曜会の結果を受け,日本無線の≪E1≫に連絡し,日本無線に消防救急デジタル無線機器の整備に関する受注調整の話合いへの参加を呼びかけた。日本無線の≪E1≫は,参加を了承した(乙46〔2~5頁〕,125〔7~9頁〕)。
コ 平成22年9月7日の会合
平成22年9月7日に開催された会合(別紙3の番号18)において,出席者は,実証試験等10物件のうち既に入札が終了した岡山市消防局以外の物件の納入予定メーカーの割り振り(①実証試験のうち,㋐京都市消防局,㋑鳥取県西部広域行政管理組合消防局及び㋒春日・大野城・那珂川消防組合消防本部分は日本電気,㋓岐阜市消防本部分及び㋔神戸市消防局分は沖電気工業,㋕玉野市消防本部分は日立国際電気とし,②千葉県発注の物件(単独)は日本電気,③神戸市消防局の物件(単独)は沖電気工業,④大阪市消防局の物件(単独)は≪G≫とする。)を確認した。
その上で,沖電気工業の≪C2≫は,実証試験の6物件について,ホワイトボードに物件名を書き出し,納入予定メーカーの名称と共に,各社がどの物件の入札に参加する予定であるかを整理していった。原告は,実証試験のうち,日立国際電気が納入予定メーカーとなった玉野市消防本部分並びに日本電気が納入予定メーカーとなった京都市消防局分及び春日・大野城・那珂川消防組合消防本部分の実証試験の物件に参加する旨を表明した。そして,出席者は,前回の会合で話し合ったとおり,各物件の推定予算額を共有し,確認し合った納入予定メーカー以外の入札参加者は当該推定予算額以上の金額で入札に参加することを了解し合った。
出席者は,推定予算額以上の額で応札すれば「事故」は生じないと考えていたが,念のため,更に,提案書の内容のすり合わせも行うこととし,次回の会合で各社提案書を持ち寄り,記載ぶり等を検討し合うこととした(以上につき,乙21〔35~41頁〕,46〔5~7頁〕,104〔44~48貢〕,125〔2~17頁〕,126〔17~25頁])。
サ 平成22年9月15日の会合
平成22年9月15日に開催された会合(別紙3の番号19)においては,出席者は,実証試験の物件に係る提案書を持ち寄り,納入予定メーカーとなった者以外の者の提案書の内容が納入予定メーカーとなった者の提案書の内容よりも劣ったものとなっているかを確認し合った。
出席者は,提案書の内容の確認や,納入予定メーカーとなった者以外の者に実際に応札してもらう価格の連絡等については,必要に応じて引き続き関係する者の間で連絡を取り合って行っていくこととした(以上につき,乙46〔7~9頁〕,104〔48~50頁〕,125〔17~29頁〕,126〔25~28頁〕)。
シ 実証試験の入札等
平成22年9月14日,千葉県の物件の入札が行われ,あらかじめ定めた納入予定メーカーである日本電気が落札し,納入することになった(別紙4「個別物件に係る基本的事実関係一覧表」の総通番3参照)。
平成22年9月17日,大阪市消防局の物件(物件1)の入札が行われ,あらかじめ定めた納入予定メーカーである原告が落札し,納入することになった(別紙4の総通番4参照)。
平成22年10月1日,実証試験6物件の入札が,提案書のプレゼンテーション等を経て行われ,あらかじめ定めた納入予定メーカーである,①日本電気が京都市消防局,鳥取県西部広域行政管理組合消防局及び春日・大野城・那珂川消防組合消防本部分の物件を,②沖電気工業が岐阜市消防本部分の物件及び神戸市消防局分の物件を,③日立国際電気が玉野市消防本部分の物件を,それぞれ落札し,納入することになった(別紙4の総通番5~10参照)。
平成22年10月6日に開催された会合(別紙3の番号20)において,出席者は,実証試験の物件,千葉県の物件及び大阪市消防局の物件について,予定どおり納入予定メーカーが納入することができたことを確認し合うなどした。
平成22年10月15日及び平成23年1月14日,それぞれ神戸市消防局の物件2件の入札が順次行われ,あらかじめ定めた納入予定メーカーである沖電気工業が落札し,納入することになった(別紙4の総通番11・12参照)。
原告は,これらのうち,他社が納入予定メーカーとなっていた物件についてはいずれも,納入予定メーカーよりも高い金額で入札するか,入札に参加しないなどして,納入予定メーカーが納入することができるように協力した(以上につき,乙21〔37~42頁〕,32〔5~13頁〕),127~131,133〔6~11頁,26~38頁〕,134〔2~56頁〕,135,137〔41~48頁〕,138〔1~17頁〕,140〔26~37頁〕,141〔4~31頁〕,142〔3~13頁〕,143〔3~4頁〕,144〔4~13頁〕)。
(2) 「ちず」の作成状況
ア 平成22年11月24日の会合
平成22年11月24日に開催された会合(別紙3の番号21)において,出席者は,消防救急デジタル無線機器の整備に関する納入予定メーカーの割り振り方法について意見を述べたが,各社の意見は従前と同様であり,1つの統一的な割り振り基準を立てることは困難な状況であることがはっきりしたことから,沖電気工業の≪C1≫の提案により,個々の消防本部ごとに1件1件納入予定メーカーを決定していくこととした(その際,≪C1≫は,「個別にやっていってもぶつかるところはぶつかるけど,しょうがないよな」などと発言したが,出席者から上記のように納入予定メーカーを決定することに異論は出されなかった。)。
沖電気工業の≪C2≫は,出席者から,1件1件決めていくなら,何か全国の消防本部ごとに無線や指令台の既設業者等が整理されている資料があった方が良いとの意見が出され,沖電気工業の≪C1≫から振られたこともあり,これを用意することとなった(以上につき,乙147〔3~11頁〕,148〔3~16頁,24~25頁〕,150〔3~7頁〕)
イ 沖電気工業の≪C2≫による資料の作成
沖電気工業の≪C2≫は,平成22年11月24日の会合後,元々社内用に作成していたエクセルファイル「ターゲット案件管理表」(乙151)を利用し,①指令台や無線の既設業者等の情報,②各社の受注希望を記載する欄に自社の希望やこれまでの話合いから推測した他社の希望(「○」,「△」等による。)を記載した資料を作成した。なお,≪C2≫は,その頃,日立国際電気の≪D1≫と会い,日立国際電気の受注希望を確認し,これを上記資料に反映させた(乙148〔16~26頁〕,152〔2~18頁〕)。
ウ 平成22年12月8日の3社での会合
(ア) 平成22年12月8日に開催された会合(別紙3の番号22)において,沖電気工業の≪C2≫は,原告の≪A3≫及び日本電気の≪B3≫に対し,前記イの資料について,その記載の意味を説明した上,①各社の受注希望を示す欄の「○」や「△」は,仮の記載にすぎないので,各社で自社の受注希望に合わせて修正してほしい旨,②無線や指令台の既設業者がどの社であるかを示す列の情報についても,間違いがあれば指摘してほしい旨を伝えた。そして,3名は,その場で,北は北海道から南は沖縄県まで,一通り既設情報の正確性を確認したほか,受注希望の修正等を行った。
≪C2≫は,上記当日,≪A3≫及び≪B3≫に対し,上記の修正等を反映した資料を送付し,両名において更に内容を確認することとした。
(イ) 沖電気工業の≪C1≫は,≪C2≫から平成22年12月8日の会合の内容について報告を受け,≪C2≫に対し,上記資料中の各社の受注希望を記載する欄については,当該資料が表沙汰になった場合,記載の会社名の社の間で受注調整を行っていることが分かってしまうことから,隠語を用いた方がよいことなどを指示した。
≪C2≫は,会合での指摘に係る修正とともに,≪C1≫の上記指示を踏まえた修正を行うなどした資料「ちずv1」(乙153別紙1)を作成し,これを≪A3≫及び≪B3≫に送付した。
なお,≪C2≫は,上記資料における各社を示す隠語として,1文字目はA,B,Cなどと順に割り当てたアルファベットとし,2文字目は5社各社の会社名から取ったアルファベットとして,沖電気工業は「AI」,日本電気は「BC」,原告は「CG」,日立国際電気は「DK」,日本無線は「EC」と表記することにした((ア)・(イ)につき,前提事実(4)イ,乙146〔23~46頁〕,148〔26~35頁〕,154〔3~8頁〕,155〔3~8頁〕)。
エ 平成22年12月21日の会合用の資料の完成
原告の≪A3≫及び日本電気の≪B3≫は,沖電気工業の≪C2≫から「ちずv1」の送付を受け,それぞれ一部修正を施して≪C2≫に返信した。
≪C2≫は,上記返信内容を確認するなどして修正した資料「ちずv2」(乙153別紙2)を平成22年12月21日の会合で使用することとした(以上につき,乙155〔8~14頁〕,156〔3~18頁〕)。
オ 平成22年12月21日の会合
平成22年12月21日に開催された会合(別紙3の番号23)において,≪C2≫は,他の出席者に対し,資料「ちずv2」(乙153別紙2)をプロジェクターで映し出した上,「AI」から「EC」までの隠語の意味や,「○」が受注を希望する旨で「△」が「○」よりも劣るが受注を希望する旨であること等を説明した。
出席者は,今後の会合ではこの「ちず」を用いて納入予定メーカーを1件1件決めていくことを確認し合った。
なお,≪C2≫は,この日欠席していた日本電気の≪B3≫に対し,上記会合の内容を連絡した(以上につき,乙150〔6~7頁〕,152〔15~18頁〕,154〔8~12頁〕,155〔14~26頁〕,156〔18~23頁〕,158〔3頁,13頁〕)。
カ 「ちずv2」に対する原告及び日本無線の意見の反映
(ア) 原告の≪A3≫は,平成22年12月27日頃,沖電気工業の≪C2≫に対し,同月21日の会合で使用した「ちずv2」の「CG」の欄に「○」や「△」を付した資料を送付して原告の受注希望(具体的には,①指令台及び無線の既設業者が原告又は≪G≫である消防本部については「○」(受注を希望する消防本部)を付し,②指令台の既設業者が原告又は≪G≫であり,無線の既設業者が他社であるもの及び指令台の既設業者が他社であり,無線の既設業者が原告又は≪G≫であるものについては,「△」(「○」よりも劣るが受注を希望する消防本部)を付した。)を表明した。
≪C2≫は,原告から表明された受注希望を「ちずv2」に反映させ,これをバージョンを1つ上げ,「ちずv3」とした(以上につき,乙159〔3~9頁〕,160)。
(イ) 日本無線の≪E1≫は,日本無線がこれから本格的な営業を開始するといった状況であり,納入予定メーカーが決まってから本格的な営業活動を行おうと考えていたが,支社等から日本無線の既設情報や営業状況を報告させて受注希望を表明する準備を行っていたことを踏まえ,平成23年1月31日頃,沖電気工業の≪C2≫に対し,受注を希望する消防本部に「○」や「△」の印を付したリスト(乙161参照。受注希望を表明した消防本部は174であった。)を送付して,日本無線の受注希望を表明した。
≪C2≫は,日本無線から表明された受注希望を「ちずv3」に反映させ,これをバージョンを1つ上げ,「ちずv4」とした(以上につき,乙41〔5~17頁〕,159〔9~12頁〕,161)。
キ 平成23年2月1日の会合
平成23年2月1日に開催された会合(別紙3の番号24)において,≪C2≫は,「ちずv4」をプロジェクターで映し出して示し,原告と日本無線の受注希望を反映させたものであることや,前記カ(ア)の原告の受注希望の基準を説明した。そして,出席者は,北海道の消防本部から始まる「ちず」を上から順に見て,各社の受注希望を全員で確認したり,既設業者の情報に係る指摘を出し合ったりした。≪C2≫は,必要に応じてその場で「ちず」の内容を修正するなどし,会合が終了した時点で「ちずv5」として保存した。また,日立国際電気の≪D1≫は,受注希望の消防本部の数を増やしたいと申し出て,後日≪C2≫にこれを送付することにした。
また,日本電気の≪B3≫は,会合において,日本電気においては,各支社等に「ちず」の内容をはっきり伝えて従わせることが難しいが,納入予定メーカーとなった者がその社の独自仕様を仕様書に盛り込んでもらえれば現地の営業部隊も諦めるので,協力をお願いしたい旨を述べた(以上につき,乙41〔16~21頁〕,46〔10頁〕,154〔15~16頁〕,156〔23~34頁〕,159〔12~24頁〕,162〔3~13頁〕,163)。
ク 日立国際電気の追加の受注希望表明
日立国際電気の≪D1≫は,≪D2≫と相談の上,追加する受注希望先を91選定し,平成23年2月上旬頃,沖電気工業の≪C2≫に対し,受注希望先の追加として連絡をした。
≪C2≫は,ちずの「DK」の欄に連絡を受けた受注希望先を追加するとともに,「ちず」に「競合」という列を追加するなどの修正も併せて行った上で,これを「ちずv6」として保存した(以上につき,乙159〔24~28頁〕,164〔3~9頁〕)。
ケ 平成23年2月21日の会合
平成23年2月21日に開催された会合(別紙3の番号25。ただし,後記第2の2(2)のとおり,≪A2≫が出席していたとは認められない。)において,≪C2≫は,「ちずv6」を映し出して,北海道の消防本部から順に「ちず」をスクロールさせ,出席者の間で,既設情報が誤っている場合にはそれを指摘したり,受注希望を確認したりした。≪C2≫は,必要に応じてその場で「ちず」の内容を修正するなどし,会合が終了した時点で「ちずv7」(乙153別紙3)として保存した。
上記会合の際,沖電気工業の≪C2≫は,「ちず」の最初の方に登場する北海道の消防本部について,沖電気工業は譲渡する旨を表明するとともに,競合する案件が多いことから,原告や日本電気も譲渡案件を出していく必要があるのではないかと提案し,原告の≪A3≫及び日本電気の≪B3≫はこれを了解した(以上につき,乙41〔21~25頁〕,154〔12~16頁〕,156〔34~44頁〕,159〔28~36頁〕,162〔11~13頁〕,164〔6~8頁〕,165〔21~24頁〕)。
コ 譲渡物件に関するやりとり
次回の会合は,平成23年3月下旬頃に設定されたが,東日本大震災が発生したことから,同年4月19日に延期された。沖電気工業の≪C2≫は,上記の間に,原告の≪A3≫及び日本電気の≪B3≫に対し,「ちずv7」(乙153別紙3)に3社それぞれが譲渡する消防本部を記載する列を追加するなどした資料を送付し,譲渡する消防本部を連絡するよう依頼した。≪C2≫は,上記依頼に対する≪A3≫の回答及び≪B3≫の回答(なお,≪B3≫は,受注希望も一部追加した。)を受け,沖電気工業の譲渡する消防本部も含めてちずに反映させて「ちずv9」とした(以上につき,乙166,167,168,169〔3~12頁〕,170〔3~9頁,21頁〕)。
サ 平成23年4月19日の会合
平成23年4月19日に開催された会合(別紙3の番号26)において,≪C2≫は,「ちずv9」をプロジェクターで映し出して,3社が譲渡する消防本部を選定し,選定した消防本部は,「AI譲渡」,「BC譲渡」,「CG譲渡」の各欄に記載していること等を説明し,出席者は,北海道の消防本部から順に「ちず」をスクロールさせて内容を確認していった。出席者は,競合している消防本部も多く,その場合は受注を希望している社の中から納入予定メーカーを絞っていくこととなり,更に譲渡案件を出していかなければならないとの認識を共有し,「○」と「△」の2つに加えて,譲れない旨,すなわち強く受注を希望する旨の「●」を設けて話合いを進めていくこととした。≪C2≫は,必要に応じてその場で「ちず」の内容を修正するなどし,会合が終了した時点で「ちずv10」(乙153別紙4)として保存し,「●」を記載してもらうための欄等を追加した。なお,会合の場で使用している「ちず」については,この日の会合以降会合終了後に各社の出席者のうち1名に送付することとなった(乙152〔12頁〕,154〔12~17頁〕,157〔4~7頁〕,158〔8~14頁〕,164〔3~4頁,9~21頁〕,169〔3~7頁,12~28頁〕,170〔9~23頁〕,171〔14~21頁〕)。
シ 平成23年5月17日の会合等
(ア) 沖電気土業の≪C2≫は,原告の≪A3≫,日本電気の≪B3≫,日立国際電気の≪D1≫及び日本無線の≪E1≫に対し,「ちずv10」を送付し,強く受注を希望する消防本部を選定して回答すること等を依頼した。
これに対し,原告の≪A3≫は,「ちずv10」中の203の消防本部につき「●」を付すとともに,譲渡を検討中としていた消防本部の中から2つにつき日本無線に譲渡する旨等を回答し,≪C2≫は,沖電気工業の検討結果及び他社(日本電気を除く。)の回答を併せて反映させた「ちずv11」(乙153別紙5)を作成した(以上につき,乙157〔11頁〕,164〔9~15頁〕,169〔28~35頁〕,170〔23~28頁〕,172,173,174,175,176〔1~14頁〕,177〔2~9頁〕,178)。
(イ) 平成23年5月17日に開催された会合(別紙3の番号27)において,≪C2≫は,「ちずv11」に日本電気からの回答を反映させた上で,これをプロジェクターで映し出し,各社から強く受注を希望する消防本部を出してもらったこと,3社から譲渡する消防本部を追加したこと等を説明し,北海道の消防本部から順に「ちず」をスクロールさせながら,各物件の状況を紹介していき(3社が譲渡する消防本部として挙げている消防本部については,都度その旨等も紹介し,また,広域化する消防本部や複数の消防本部で共同して整備することが予定されている消防本部などの情報も共有した。),出席者は,その物件についての受注希望及びその理由,その他の情報について発言していった(当該消防本部の「BC」の欄にその場で「●」印が付けられることもあった。)。
そして,出席者は,受注を希望しているのが一部の社のみであり,当該一部の社以外の社は受注を希望しないことが確認できた場合に,「コメント」欄に「ローカル」と記載し,今後は当該一部の社の間で納入予定メーカーをどの社にするかを話し合ってもらうこととした。この「ローカル」との記載は,後の会合での話合いにおいては,例えば「AI-BCローカル」,などと,受注を希望している当該一部の社の隠語を付して記載されることもあった。なお,≪C2≫が発案して作成した「設計発注リスト」(特定の設計会社と組み,その設計会社に実施設計等を受注してもらい,発注仕様書に自社の独自仕様を盛り込むというのが典型的な納入予定メーカーの納入に向けたシナリオであり,実施設計を請け負った会社に対して支援活動を行うことが,自社の独自仕様を盛り込むための有効な手段となることから,消防本部ごとに実施設計等の請負業者名や入札時期等の情報についても共有して,納入予定メーカーが納入することを確実なものとできるように協力し合おうとの趣旨のもの)も共有した。
≪C2≫は,必要に応じてその場で「ちず」の内容を修正するなどし,上記会合が終了した時点で「ちずv12」(乙153別紙6)として保存し,上記会合終了後,各出席者に対し,「設計発注リスト」と共にメールで送信した(以上につき,乙154〔12~17頁〕,165〔2~30頁〕,176〔14~30頁〕,177〔9~15頁〕,179,180〔3~7頁〕)。
ス 平成23年5月27日の会合
平成23年5月27日に開催された会合(別紙3の番号28)において,出席者は,沖電気工業の≪C2≫が「ちずv12」をプロジェクターで映し出して,北海道の消防本部から順番に,広域化等の情報も更に提供し合いながら,前回と同様に話し合い,また,日本電気の≪B3≫からの情報を追加するなどした「設計発注リスト」も映し出して,出席者の間で情報を共有した。
≪C2≫は,必要に応じてその場で「ちず」及び「設計発注リスト」の内容を修正するなどし,上記会合が終了した時点で「ちずv13」(乙153別紙7)として保存し,上記会合終了後,各出席者に対し,これらをメールで送信した(以上につき,乙153別紙7,154〔12~18頁〕,165〔30~41頁〕,176〔30~38頁〕,177〔19頁〕,180〔7~10頁〕,181)。
セ 平成23年6月9日の会合
平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29。ただし,後記第2の2(3)のとおり,≪A2≫が出席していたとは認められない。)において,出席者は,「チャン」と名付けられた納入予定メーカーを記載する欄等を設けた「ちず」を映し出しながら話し合い,㋐広域化等の情報のある消防本部については,この日,「ちず」に新たに「広域化」という列を設け,都道府県名の漢字1文字と数字を組み合わせた記号を「広域化」の欄に記載し,㋑受注希望を表明している会社が1社のみである消防本部については,納入予定メーカーを当該社とし,また,受注希望を表明していた社が「譲渡」等の対象とした消防本部については,日立国際電気又は日本無線を納入予定メーカーとするなどして,「チャン」の欄を埋めていった(譲渡とした社が日立国際電気か日本無線のどちらかを特定して譲渡とするとしていた場合なども,全体のバランス等から,日立国際電気か日本無線のいずれか1社を納入予定メーカーとするのではなく,①両社のうちのいずれかを納入予定メーカーとしたり,②譲渡とした社の了解をその場で得た上で,譲渡とした社が譲渡先としていた社以外の社を納入予定メーカーとしたりすることもあり,①の場合には,「チャン」の欄には「HJ」と記入した。)。
≪C2≫は,必要に応じてその場で「ちず」及び「設計発注リスト」の内容を修正するなどし,上記会合が終了した時点で「ちずv15」(乙153別紙8),「設計発注リストv8」(乙182)として保存し,上記会合終了後,各出席者に対し,これらをメールで送信した(以上につき,乙150〔7~12頁〕,154〔18~30頁〕,157〔7~14頁〕,158〔21~22頁〕,177〔19~20頁〕,180〔10~13「頁〕,183〔2~21頁〕,184,185〔5~21頁〕,186〔3~30頁〕,187〔30~35頁〕,188〔4~15頁〕)。
ソ 平成23年6月22日の会合
平成23年6月22日に開催された会合(別紙3の番号30)において,出席者は,沖電気工業の≪C2≫を司会役とし,「ちずv15」をプロジェクターで映し出し,北海道の消防本部から順番に,まだ「チャン」の欄を埋められていない消防本部を中心に,前回同様の話合いを行い,㋐受注希望を表明している他社が降りて,1社に絞られるなどして納入予定メーカーを決定できれば,その社の略称を「チャン」の欄に記載し,㋑他社が降りても1社にまでは絞られていない場合等は,「××-××ローカル」などと記載したり,検討を次回以降の会合に先延ばしにしたりして,話合いの対象を次の消防本部に移していった(なお,「神奈川県共通波」等,都道府県が全県一括で整備する共通波の物件についても話合いの対象に加えることとし,これを意味する行を新たに「ちず」に追加した。また,「ちず」の「コメント」欄に「AI,BCは別途考慮」等との記載があるものは,原告の≪A3≫が,「今後頑張って営業をかけますから。」などと発言して当該消防本部分の受注を強く希望したため,出席者は,一応納入予定メーカーは原告とし,原告が当該消防本部に嫌われたままであったら,納入予定メーカーをどうするかその時考えようとしたものであった。)。
≪C2≫は,必要に応じてその場で「ちず」の内容を修正するなどし,上記会合が終了した時点で「ちずv16」(乙153別紙9)として保存し,上記会合終了後,各出席者に対し,これをメールで送信した(以上につき,乙150〔12頁,30~34頁〕,157〔7~14頁〕,177〔20頁〕,180〔13~l6頁〕,183〔21~53頁〕,187〔3~35頁〕,188〔23~29頁〕,189〔3~14頁〕)。
タ 平成23年6月28日の会合
平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,出席者は,沖電気工業の≪C2≫を司会役とし,「ちずv16」をプロジェクターで映し出し,北海道の消防本部から順番に,まだ「チャン」の欄を埋められていない消防本部を中心に,前回同様の話合いを行い,携帯電話で現地の営業担当者等に状況を確認するなどして,その場で降りる,譲れないなどの判断をし,その旨の発言をすることにより,相当数の消防本部について,納入予定メーカーを決定した。
≪C2≫は,上記会合において納入予定メーカーを決定できなかった消防本部及び「チャン」の欄は埋めたが,念のため現地の事情等を改めて確認する必要があるといった何らかの事情がある消防本部については,次回以降に決定等しないといけないということが分かるように,「チャン」の欄に黄色で網掛けをした。
≪C2≫は,上記話合いの結果等を「ちず」に反映させ,上記会合が終了した時点で「ちずv17」(乙153別紙10)として保存し,上記会合終了後,各出席者に対し,これをメールで送信した(以上につき,乙150〔12~17頁〕,157〔7~14頁〕,177〔20~21頁〕,180〔16~19頁〕,188〔15~29頁〕,189〔3~14頁〕,190〔2~42頁〕,191〔3~28頁〕)。
チ 平成23年7月20日の会合
平成23年7月20日に開催された会合(別紙3の番号32)において,出席者は,沖電気工業の≪C2≫を司会役とし,「ちずv17」をプロジェクターで映し出し,まだ「チャン」の欄を埋められていない消防本部を中心に,前回同様の話合いを行い,納入予定メーカーを決定し,「チャン」の欄を埋めていったが,㋐新たに広域化等することが明らかとなった消防本部について,広域化等することを前提に納入予定メーカーを1社に絞るために再度話合いが必要となり,「チャン」の欄も空欄に戻したもの,㋑既に幾度も話合いを重ねており,これ以上話合いを重ねても納入予定メーカーを更に1社にまで絞ることは難しいという消防本部については,「ちず」に「不採算案件」の列を設け,「×」印を付したものもあった。
そして,出席者は,原告の≪A3≫が,将来発注が見込まれている指令台更新等の物件を受注できれば新たに希望を表明したいなどと述べたことから,その意向も汲み取り,平成23年度中に発注される指令台更新等に限り,これを理由に新たに希望を表明することができる(ただし,納入予定メーカーが1社に絞られていない「ペンディング」の消防本部については,指令台更新等を理由に新たに希望を表明することができる期限は設けない。)ということとした。また,出席者は,指令台一括発注の場合についても,発注者等に対してはなるべく一括発注にしないよう働きかけることとし,一括発注となり,納入予定メーカー以外の社の独自仕様が採用されてしまっても,納入予定メーカーは潔い態度を取り,文句を言わないようにするとの認識を共有した。そのほか,出席者は,「ちず」に新たに「可能性」の列を設けて,日立国際電気や日本無線にさらに譲渡できる可能性のある消防本部に「●」印を付け,これらの消防本部を中心に,3社において,譲渡できるか否かを再度検討することとした。
≪C2≫は,上記話合いの結果等を「ちず」に反映させ,上記会合が終了した時点で「ちずv18」(乙153別紙11)として保存し,上記会合終了後,各出席者に対し,これをメールで送信した(以上につき,乙150〔17~25頁〕,157〔7~14頁〕,177〔21頁〕,180〔19~25頁〕,189〔3~14頁〕,192〔2~42頁〕,193〔3~28頁〕,194〔2~20頁〕)。
ツ 平成23年8月30日の会合
平成23年8月30日に開催された会合(別紙3の番号33)において,出席者は,沖電気工業の≪C2≫を司会役とし,「ちずv18」をプロジェクターで映し出し,まだ「不採算案件」の欄に「×」を付しておらず,「チャン」の欄も埋めていない消防本部を中心に,前回同様の話合いを行い,当該複数社にまで納入予定メーカーを絞り込んだものの,更に1社にまで絞り込むことは難しく,他方で「不採算案件」に「×」を付した消防本部ほど可能性がないわけではなく,1社に絞り込む余地はまだあるだろうという消防本部については,「チャン」の欄に複数社の社名を記載するとともに,「不採算案件」の欄に「△」と記載した。
≪C2≫は,上記話合いの結果等を「ちず」に反映させ,上記会合が終了した時点で「ちずv19」(乙153別紙12)として保存し,上記会合終了後,各出席者に対し,これをメールで送信した(以上につき,乙157〔7~14頁〕,177〔21頁〕,180〔25~28頁〕,189〔3~14頁〕,196〔2~87頁〕,197〔5~22頁〕)。
テ 平成23年9月27日の会合
(ア) 平成23年9月27日に開催された会合(別紙4の番号34)において,出席者は,沖電気工業の≪C2≫を司会役とし,「ちず」の「v19」を映し出し,残り少なくなった,まだ「不採算案件」の欄に「×」を付しておらず,納入予定メーカーを1社にまでは絞り込めていない消防本部を中心に,前回同様の話合いを行い,≪C2≫は,「ちず」に「9/27」という列を設け,㋐納入予定メーカーを1社に絞ることができた消防本部については,当該欄に「★」と記載し,「チャン」の欄に当該1社の略称を記載し,㋑前回の会合ではまだ「チャン」の欄を空欄にしたままの消防本部についても,納入予定メーカーを絞り込むなどして,1社又は複数社の名称を「チャン」の欄に記載した。
≪C2≫は,上記話合いの結果等を「ちず」に反映させ,上記会合が終了した時点で「ちずv20」(乙153別紙13)として保存し,上記会合終了後,各出席者に対し,これをメールで送信した(以上につき,乙157〔7~14頁〕,177〔21~22頁〕,180〔28~31頁〕,189〔3~14頁〕,197〔22~40頁〕,198〔8~41頁〕)。
(イ) 上記会合後,沖電気工業の≪C2≫と日本無線の≪E1≫は,「ちずv19」(乙153別紙12)において「チャン」欄に「O・J」と記載された九州地区の物件の納入予定メーカーについて話し合い,①直方鞍手広域市町村圏事務組合消防本部及び②竹田市消防本部の物件については沖電気工業が,③宇城広域消防衛生施設組合消防本部及び④豊後大野市消防本部の物件については日本無線が,それぞれ納入予定メーカーとなる旨を了解し合った(この了解内容は,「ちずv21」(乙153別紙14)に反映された。)。
また,沖電気工業の≪C2≫と日立国際電気の≪D1≫は,「ちずv19」(乙153別紙12)において「チャン」欄に⑤「DK」と記載された海老名市消防本部の物件と⑥「AI」と記載された石岡市消防本部の物件について,⑤の納入予定メーカーを沖電気工業とし,⑥の納入予定メーカーを日立国際電気とする旨を了解し合った(この了解内容は,「ちずv21」(乙153別紙14)に反映された。以上につき,乙150〔25~29頁〕,188〔29~41頁〕,197〔40頁〕,199〔13~16頁,28~33頁〕,200〔6~17頁〕,201〔20~23頁〕)。
ト 平成23年11月22日の会合
平成23年11月22日に開催された会合(別紙3の番号35)において,沖電気工業の≪C2≫は,上記会合で「ちず」の更新を一区切りとしようと考えていたところ,原告の≪A3≫は,日本電気が沖電気工業や日本無線に消防救急デジタル無線機器をOEM供給することになっていたことの説明がなかったことを問題視する旨の発言をし,「ちず」を白紙に戻すべき旨の発言をした。これを踏まえて,≪C2≫は,原告から納入予定メーカーの割り振り案を示してもらうため,同日の会合後,≪A3≫に対し,「ちずv21」(乙153別紙14)を送付した(乙29〔5頁〕,177〔22頁〕,180〔31~39頁〕,199〔16~34頁〕,201〔2~23頁〕,202,203〔1~22頁〕,204〔3~11頁〕,205〔3~13頁〕,206〔2~13頁〕)。
その後,≪C2≫は,≪A3≫から送付されてきた原告の考える納入予定メーカーの割り振り案を一部補正した上で,「ちず」に新たに設けた「CGリセット」の欄に入力した(以上につき,乙153,199〔16~34頁〕,201〔2~23頁〕,203〔1~22頁〕,204〔3~11頁〕,205〔3~13頁〕)。
ナ 平成23年12月6日の会合
平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の番号36)において,≪C2≫は,「CGリセット」欄を入力した「ちず」をプロジェクターで映し出し,原告から提案された内容は「CGリセット」という列に整理したこと,「HJ」とされていた消防本部について日立国際電気と日本無線との間で割り振りが決定され,その内容が反映されていること等を説明した。
出席者は,「CGリセット」の欄が「チャン」の欄と異なる記載となっている消防本部につき話し合い,一部,納入予定メーカーが変更となった消防本部については,「Pend再検討」欄に新たな納入予定メーカーの略称が記載され,納入予定メーカーに変更はない消防本部には,「Pen」と記載し,「ちず」を更新しての話合いはこの日の会合をもって一区切りとすることとした。
≪C2≫は,上記話合いの結果を反映させた「ちずv22」(乙153別紙15)として保存し,上記会合終了後,各出席者に対し,これをメールで送信した(以上につき,乙180〔39~43頁〕,201〔23~30頁〕,204〔11~18頁〕,205〔13~34頁〕,206〔13~23頁〕,207〔2~28頁〕)。
ニ ≪A2≫と≪C1≫による平成24年2月1日の協議
原告の≪A2≫と沖電気工業の≪C1≫は,平成24年2月1日,東北地区の消防本部の物件の受注調整について協議したところ,≪A2≫は,≪C1≫に対し,原告の全国各地区の営業を担当する7人の部長に「ちず」を示して消防救急デジタル無線機器の整備に関する受注調整の話合いの結果に従った営業や他社への協力を指示したことを伝え,また,5社の会合における原告への「チャンピオン」の割り振りが少ないことへの不満を述べた(乙247,253の1及び2,257〔22~33頁〕)。
(3) 個別物件の発注に際しての5社の行動
5社は,前記(2)のとおり,ちずの作成等を通じて納入予定メーカーを決定するに当たり,特に,平成23年3月11日に東日本大震災が発生し,その復興のための補正予算が組まれたこと等から,東北地区を中心に発注が前倒しになっていたことを踏まえ,早期に入札が行われることが見込まれる消防本部については,なるべく早めに納入予定メーカーを決定するようにした。そして,次のア~オのとおり,納入予定メーカーとなった者は,自社の独自仕様が盛り込まれるよう営業活動を行い,納入予定メーカー以外の者は,主として納入予定メーカーと個別に連絡し合い,必要に応じて,納入予定メーカーに見積協力を行う,入札に参加しない又は「お付き合い入札」を依頼されたときはこれに応じ,納入予定メーカーが指示した価格以上の価格で入札するなどして,決定した1社又は複数社の納入予定メーカーが納入できるようにした。
ア 沖電気工業
沖電気工業の≪C2≫は,現地の営業担当者に対し,「ちず」そのものを見せるなどして,本社レベルで本件の談合行為を行っていることを伝え,納入予定メーカーとなった物件以外については積極的に営業を行わないこと等を説明した。これを受けて,現地の営業担当者らは,自社が納入予定メーカーとなった物件以外については,消極的な営業活動しか行わず,「お付き合い入札」に応じるなどして,納入予定メーカーが納入できるように協力をした。また,沖電気工業の≪C1≫らは,現地の営業担当者から原告の独自仕様を標準化するための質疑を出すことを相談された際には,当該物件の納入予定メーカーが原告と決定されたことを尊重して質疑を出さなかったこともあった(乙12〔18~21頁〕,210〔3~25頁〕,230〔2~5頁〕,257〔35頁〕,268〔21~22頁〕,271〔2~10頁〕,272〔33~37頁〕,273〔8~24頁〕,274〔2~29頁〕)。
イ 日本無線
日本無線の≪E1≫は,上記(2)ナのとおり「ちず」を更新しての話合いが一区切りとなると,各地区の営業担当者に対し,地区ごとに自社が納入予定メーカーとなった消防本部を記載したターゲットリストと称する一覧表を送付し,これらの消防本部について営業活動を行うよう指示した(乙208〔3~40頁〕,275〔11~12頁〕)。日本無線の現地の営業担当者は,他社の営業担当者と連絡を取り,見積価格の調整や「お付き合い入札」に応じるなどして,納入予定メーカーが納入できるように協力をした(乙52〔30~35頁〕,54〔4~13頁〕)。
ウ 日立国際電気
日立国際電気の≪D1≫は,現地の営業担当者に対し,自社が納入予定メーカーとなっていた消防本部について営業活動を行うよう指示した。また,≪D1≫は,現地の営業担当者に対し,自社が納入予定メーカーとなっていない消防本部については,「やみくもに営業しても取れるものではありません」などと言って,自社が納入予定メーカーとなっていない消防本部には営業活動を行わせないように仕向けるとともに,他社が納入予定メーカーとなった消防本部にまで営業活動を行ってしまう場合には,これを止めさせるようにした(乙195〔2~24頁〕)。
また,≪D1≫は,例えば,原告が納入予定メーカーとされた物件については,原告の≪A3≫に入札価格を伝えるなどして,原告が納入できるよう協力をした(乙276〔11~22頁〕,277〔5~16頁〕)。
エ 日本電気
日本電気の≪B3≫は,社内における受注確度の見込みや現地の営業状況を確認した上で,5社間において,受注希望を出しており,基本的に社内において受注確度が高いと目されているものについて,日本電気が納入予定メーカーとなれるように調整していた(乙156〔9~13頁〕)。
また,≪B3≫は,現地の営業担当者に対し,他社が納入予定メーカーとなっている物件について,「時間の無駄だから」などと伝え,営業活動を控えさせるようにするとともに,最終的に,現地の営業担当者が諦めきれず,他社が納入予定メーカーとなっている物件について入札を行う場合には,安値で応札しないように指示し,日本電気の入札価格を当該物件の納入予定メーカーに伝えるなどして,納入予定メーカーが納入できるように協力していた。そして,≪B3≫は,例えば,原告が納入予定メーカーとされた物件について,原告の≪A3≫から日本電気の概算見積書案の送付を受けたり,入札を辞退したりして,原告が納入できるように協力を行うなどしていた(乙22〔2~47頁〕,209〔2~25頁〕,278〔40~45頁〕,279〔16~24頁〕,280〔5~29頁〕)。
オ 原告
原告は,≪A2≫の指示により,各地区の情報通信ネットワーク営業部において,管内の物件を対象とした物件管理表の作成・管理(これには,Aランク~Cランクに分類された営業の優先順位も記載されていた。)を行い,これを社内会議(部課長会議,営業会議)の資料として使用しており,また,入札に参加する際の応札希望額等が1000万円以上である物件については,本社で開催する見積審査会(各地区の情報通信ネットワーク営業部の部長及び担当者のほか,本社からは,≪A5≫を筆頭に,情報通信システム営業統括部,システムサポート統括部,情報通信ネットワーク事業部が参加していた。)に諮ることとされていた(甲8,乙28,31,32,34,35,67〔4~5頁〕,68〔3頁〕,100〔2~6頁〕,102〔1~6頁〕,249)。
≪A2≫及び≪A3≫は,月曜会で話し合った内容(ちずの内容等を含む。)について,随時,消防デジタル無線ワーキンググループ(PMOのプロジェクトオーナーでもある≪A1≫,その当時の上司であってPMOのプロジェクトオーナー補佐である≪A6≫が出席していた。)において又はこれらの者に対する電子メール等により,報告していた。また,≪A2≫及び≪A3≫は,部課長会議(情報通信システム関係の部課長が出席して2か月に1回本社で開催されるもの)や営業会議(毎月1回各地区の営業担当者全員を招集して行われるもの)において,各地区の情報通信ネットワーク営業部に対し,Aランクの物件についての営業活動の状況等の確認を行っていた(前提事実(1)ア,乙28〔1~6頁〕,32〔11~12頁〕,34〔2~11頁〕,35,67〔4~5頁〕,68〔3頁〕,69,100〔2~6頁〕,102〔2~6頁〕,252)。
≪A2≫は,原告の全国各地区の営業を担当する7人の部長に対し,ちずを示して消防救急デジタル無線機器の整備に関する受注調整の話合いの結果に従った営業や他社への協力を指示するなどし,原告の現地の営業担当者は,消防救急デジタル無線機器の整備に関する受注調整の話合いの存在や個別の受注調整の内容を前提として,具体的な物件に関し,納入予定メーカーが納入できるように「お付き合い入札」をするなどして協力していた。現に,原告の東北情報通信ネットワーク営業部長は,「ちずv16」(乙153別紙9)のエクセルファイル(乙251)を保有していた(乙54〔7~13頁〕,274〔12~19頁〕,281〔3~16頁〕,282〔19~22頁〕,283〔4~9頁〕)。
(4) 納入予定メーカーが納入できているかなどの確認状況
ア 平成24年4月24日の会合
平成24年4月24日に開催された会合(別紙3の番号37)において,出席者は,沖電気工業の≪C2≫を司会役とし,「ちず」に類似した一覧表(乙227。「済み」の列が設けられ,≪C2≫が事前に把握していた発注済みの物件及び当該物件において機器を納入したメーカーの情報が入力されていた。)をプロジェクターで映し出し,機器納入メーカーを確認し合った。出席者は,この日確認し合った物件については,そのほとんどを「チャン」欄に記載されている会社が納入できたことを確認し,「チャン」欄に記載されている会社が納入できなかった消防本部については,どのような理由等でそのような事態となったのかを,≪C2≫が承知している範囲で紹介し,「チャン」欄に記載されている会社や納入した会社の者が,そうですねなどと相槌を打ったり,説明をしたりした。
また,出席者は,代表となった消防本部(以下「代表消防」という。)以外の物件について納入予定メーカーとなっている社にとっては納入予定メーカーである消防本部の減少を意味する広域化等の情報や,今後の発注予定等についても情報を共有したり,歌志内市消防本部の納入予定メーカーの変更のほか,千葉県内の消防本部についてのその後の納入予定メーカーの決定に係る話合いの結果等を報告し合ったりした。
≪C2≫は,上記会合で話し合った内容を反映した「ちず」と類似の一覧表を保存し,上記会合の終了後,出席者に配布した(以上につき,乙211〔2~30頁〕,212〔3~8頁〕,213〔3~22頁〕,214〔3~19頁〕,215〔20~22頁〕,216〔3~16頁〕,217〔4~25頁〕)。
イ 日本電気の社内調査
日本電気は,営業企画本部リスクマネジメント部の調査・通報に基づき,平成24年5月9日,≪B3≫に対する社内調査を開始することにした。
≪B3≫は,平成24年5月10日,沖電気工業の≪C2≫に対し,「ちず」をやり取りしたメールが社内調査で見付かったことを説明するとともに,今後は≪C2≫らと受注調整に関する連絡を行うことができなくなったこと,これらのことを他の会合出席者にも伝えてほしいことなどを伝えた。
≪C2≫は,≪B3≫の上記依頼を受け,平成24年5月10日,原告の≪A3≫,日立国際電気の≪D1≫及び日本無線の≪E1≫に連絡し,≪B3≫が受注調整に関する連絡を行うことができなくなったこと等,≪B3≫から伝えられた内容を伝えた。また,≪C2≫は,上司の≪C1≫にも同様のことを伝えた(以上につき,前提事実(4)ウ,乙212〔8~13頁〕,216〔16~17頁〕,218〔2~26頁〕,221〔3~32頁〕,222〔2~9頁〕)。
ウ 平成24年5月30日の会合
平成24年5月30日に開催された会合(別紙3の番号38)において,出席者は,日本電気の≪B3≫が会合に出席できなくなったこと,受注調整に係る連絡を行うことができなくなったことなど,≪B3≫に関しての情報を改めて共有した。また,出席者は,これまでに決定した納入予定メーカーはそのままとし,日本電気を納入予定メーカーとした消防本部を改めて割り振りし直すことはしないこととし,引き続き,4社で,受注調整を継続し,決定した納入予定メーカーが納入できるように協力し合っていくこととした(乙212〔13~18頁〕,214〔20~28頁〕,216〔17~22頁〕,221〔32~41頁〕)
エ 平成24年9月3日の会合
平成24年9月3日に開催された会合(別紙3の番号40)において,出席者は,沖電気工業の≪C2≫を司会役とし,「ちず」に類似の一覧表を映し出し,機器納入メーカーを確認し合った。出席者は,この日確認し合った物件については,そのほとんどを「チャン」欄に記載されている会社が納入できたことを確認し,「チャン」欄記載の会社が納入できなかった消防本部については,どのような理由等でそのような事態となったのかを,≪C2≫が把握している範囲で紹介し,「チャン」欄記載の会社であった会社や納入した会社が,そうですねなどと相槌を打ったり,説明をしたりした。
また,出席者は,広域化等の情報や,今後の発注予定等について情報を共有したり,納入予定メーカーの変更等を報告し合ったりした。
≪C2≫は,上記会合で話し合った内容を反映させた「ちず」と類似の一覧表(乙227別紙1)を保存し,上記会合終了後,原告については≪A3≫,日立国際電気については≪D1≫,日本無線については≪E1≫に郵送した(以上につき,乙212〔20~23頁〕,223〔12~37頁〕,224〔14~29頁〕,225〔5~11頁〕,226〔8~17頁〕,228〔1~6頁〕,229〔25~33頁〕,230〔23~24頁〕,231〔46~49頁〕)。
オ 平成24年10月31日から平成26年3月17日までの間の会合における入札結果の確認
平成24年9月3日の会合以降も,同年10月31日から平成26年3月17日までの間に別紙3の番号41~46のとおり6回の会合が開催された。上記各会合において,出席者は,沖電気工業の≪C2≫を司会役とし,平成24年9月3日の会合と同様,「ちず」に類似の一覧表を映し出して,機器納入メーカーを確認し合い,「チャン」欄記載の会社が納入でなかった消防本部については,どのような理由等でそのような事態となったのかなどについて確認した。
≪C2≫は,上記各会合で話し合った内容を反映した「ちず」と類似の一覧表(平成24年10月31日の会合分が乙227別紙2,平成25年9月25日の会合分が乙227別紙3,平成25年12月26日の会合分が乙227別紙4,平成26年3月17日の会合分が乙227別紙5)を保存し,上記各会合終了後,出席者に対し,これを配布した。
4 主な個別の入札物件に関する事情(なお,【前提事実】欄の事実は,本判決「事実及び理由」第2の1(5)イの前提事実である。)
(1) 大阪市消防局の物件(物件25,26,55,116,117,129)について
【前提事実】
大阪市消防局の物件は,①平成22年9月17日を入札日とする「消防救急デジタル無線設備製造」(物件1)と,②これに引き続いて発注された「移動局」に関する物件,すなわち,平成24年5月11日を入札日とする消防救急デジタル車載無線機(物件25)及び消防救急デジタル可搬無線機(物件26),平成25年3月27日を入札日とする「消防救急デジタル車載無線機製造」(物件55),同年9月13日を入札日とする「消防救急デジタル車載無線機製造」(物件116)及び「消防救急デジタル携帯無線機製造」(物件117),平成26年2月24日を入札日とする「消防救急デジタル携帯無線機製造(2)」(物件129)である。
【認定事実】
ア 大阪市消防局の物件(物件1)について,≪G≫が平成22年9月27日にこれを落札して原告が機器納入メーカーとなった経緯は,認定事実3(1)のとおりである。
イ 大阪市消防局の物件(物件25,26,55,116,117,129。既設指令台の納入業者は≪G≫であった。)については,平成22年12月,日本電気が希望したところ(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),遅くとも平成23年2月21日に開催された会合(別紙3の番号25)以降,原告も希望した(乙153別紙3参照)。
平成23年7月20日に開催された会合(別紙3の番号32)において,出席者は,当該物件の納入予定メーカーを原告又は日本電気とし,「ちずv18」(乙153別紙11)には,その「チャン」欄に「CG」,「コメント」欄に「移動。CG⇒BC考慮」と記載され(認定事実3(2)チ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)において,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
ウ 大阪市消防局の物件(物件25,26)については,平成24年5月11日に入札が行われ,≪G≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件25・26に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。また,原告は,設計会社からの見積り依頼や入札の際に原告社内の基準として用いていた価格表(甲104)に準じた価格(物件25につき1億4200万円,物件26につき2億円)で入札したが,実際の予定価格が予想より高かったため(物件25につき1億5884万1000円,物件26につき2億1850万2000円),低落札率(物件25につき89.4%,物件26につき91.53%)となった〔原告第12準備書面3頁以下参照〕。)。
エ 大阪市消防局の物件(物件55)については,平成25年3月27日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件55に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
オ 大阪市消防局の物件(物件116,117)については,平成25年9月13日に入札が行われ,≪G≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件116・117に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
カ 大阪市消防局の物件(物件129)については,平成26年2月24日に入札が行われ,≪G≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件129に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(2) 札幌市消防局の物件(物件2)について
【前提事実】
札幌市消防局の物件(物件2)は,広域化等により,北海道内の他の6消防局の物件との共同発注となり,札幌市消防局が代表消防となったものであった。
【認定事実】
ア ①札幌市消防局の物件(物件2。既設指令台の納入業者は≪G≫である。)については,平成22年12月,日本電気が希望したところ(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),遅くとも平成23年2月21日に開催された会合(別紙3の番号25)以降,原告も希望し(乙153別紙3参照),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,当該物件が②石狩北部地区消防事務組合消防本部(石狩市),③石狩北部地区消防事務組合消防本部(当別町),④千歳市消防本部,⑤江別市消防本部,⑥恵庭市消防本部,⑦北広島市消防本部の物件(これらの物件については,日本電気及び原告に加え,沖電気工業及び日立国際電気が希望するものも含まれていた。)と広域化等がされる旨の情報提供がされ,「ちずv15」(乙153別紙8)には,これらの物件の「広域化」欄に「北1」と記載された(認定事実3(2)セ参照)。
平成23年7月20日に開催された会合(別紙3の番号32)において,出席者は,これ以上話合いを重ねても更に1社に絞ることは難しいとの認識を共有し,「ちずv18」(乙153別紙11)には,これらの物件の「不採算案件」欄に「×」印が付され(認定事実3(3)チ),平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,沖電気工業及び日立国際電気は納入予定メーカーとなることを事実上諦めたような状態であり,実質的には原告と日本電気に絞られたような形になっていたが,「ちずv22」(乙153別紙15)には,①の「チャン」欄は空欄のままとされた(認定事実3(2)ナ。乙186〔14~15頁〕,187〔24~25頁〕,192〔21~22頁〕,194〔17~18頁〕)。
イ 日本電気は,札幌市消防局の物件(物件2)の入札に向け,自社の独自仕様を盛り込むよう営業活動を行い,その入札仕様書に日本電気の独自仕様であるデュアル機が採用された(甲80の2)。
札幌市消防局の物件(物件2)については,平成23年7月13日に入札が行われ,≪G≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件2に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(3) 岡山市消防局の物件(別紙4の総通番2,物件3,物件49)について
【前提事実】
岡山市消防局の物件(物件3)は,平成22年7月12日に入札された「消防救急無線デジタル化整備工事」に引き続く移動局の物件であり,原告は,日立国際電気に対して原告の製品の製造を委託する形式(OEM供給)で,当該物件を納入した(乙265〔1~19頁〕)。
【認定事実】
ア 原告は,平成22年5月24日に開催された会合(別紙3の番号13)において,岡山市消防局の物件(別紙4の総通番2)の希望を表明したところ(当該物件については,原告以外に希望を表明する者はいなかった。),同年6月7日に開催された会合(別紙3の番号14)において,同物件の納入予定メーカーを原告とする割り振り案が提示され,出席者により了承された(認定事実3(1)キ参照)。
その後,岡山市消防局の物件(別紙4の総通番2)につき平成22年6月18日付けで同年7月12日に一般競争入札の方法で入札が行われる旨の公告がされたことから,原告の≪A2≫は,同年6月18日に開催された会合(別紙3の番号15)において,沖電気工業に対し,「お付き合い入札」をしてくれるよう依頼し,その了承を得た(乙122,123)。
イ 原告の≪A3≫は,平成22年7月5日,入札価格及びその内訳が記載された文書(岡山市指定様式のもの)を日本電気の≪B3≫にメールで送付し(乙122〔添付資料14〕),当該メールの送付を受けた日本電気の≪B3≫は,当該文書を社内に展開し,当該文書記載の価格を参考として原告よりも高い価格で入札を行った(乙122〔1~49頁,添付資料14〕)。
岡山市消防局の物件(別紙4の総通番2)については,平成22年7月12日に入札が行われたところ,原告が落札して機器納入メーカーとなった。
ウ 平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,出席者は,岡山市消防局の物件につき,原告を納入予定メーカーとし,「ちずv15」(乙153別紙8)の「チャン」欄には「CG」と記載された(認定事実3(2)セ参照)。
岡山市消防局の物件(物件3)については,平成23年7月21日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件3に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりであり,≪AJ≫及び≪AK≫は,原告の代理店である。また,原告は,予定価格を1億7800万円と独自に予想し(甲103),そこから約5%減じた1億6770万円を入札価格としたが,実際の予定価格は,原告の予想を大きく上回る2億166万1000円であったため,低落札率(83.16%)となった〔原告第12準備書面2頁以下参照〕。)。
平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の番号36)においても,岡山市消防局の物件については,「ちずv22」(乙153別紙15)の「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
エ 岡山市消防局の物件(物件49)については,平成24年10月23日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件49に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(4) 北アルプス広域消防本部の物件(物件10)について
ア 北アルプス広域消防本部の物件(物件10)については,平成22年12月,原告が希望したところ(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),遅くとも平成23年2月21日に開催された会合(別紙3の番号25)以降,日立国際電気も希望し(乙153別紙3参照),同年6月22日に開催された会合(別紙3の番号30)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv16」(乙153別紙9)には,その「チャン」欄に「CG」と記載され(認定事実3(2)ソ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ。乙273)。
イ 日本電気及び沖電気工業は,北アルプス広域消防本部の物件(物件10)の入札に向け,営業活動を行った(甲80の10)。原告も,当該物件の入札に向け,営業活動を行い,入札仕様に原告の独自仕様(遠隔制御機による移動局無線装置の電波や警報音の発信状態を制御できること)が採用された(甲28の10)。
北アルプス広域消防本部の物件(物件10)について,平成24年3月8日に入札が行われ(沖電気工業は,原告の要請により「お付き合い入札」をした(乙273,282〔18~20頁〕,291〔3~12頁〕)。日本電気の≪B3≫は,原告の≪A3≫との間で,入札価格に関する情報交換をしていた(乙279)。),原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件10に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(5) 陸前高田市消防本部の物件(物件12)について
ア 陸前高田市消防本部の物件(物件12)については,平成22年12月,原告が希望したところ(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),その後,日本無線も希望したが(乙153別紙3参照),平成23年5月17日に開催された会合(別紙3の番号27)において,日本無線は希望を取り下げた(乙153別紙6参照。乙177〔13~14頁〕)。平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv15」(乙153別紙8)には,その「チャン」欄に「CG」と記載され(認定事実3(2)セ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」,「Pend再検討」欄に「Pen」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 原告,日本電気及び≪H≫は,陸前高田市消防本部の物件(物件12)の入札に向け,プロポーザルに参加した(甲80の12)。なお,原告は,当該物件の入札に向け,営業活動を行い,入札仕様に原告の独自仕様(指令台の通話路方式がIP制御方式であること)が採用された(甲28の12)。
陸前高田市消防本部の物件(物件12)については,平成24年3月19日に公募型プロポーザルが行われ(日本電気の≪B3≫は,原告の≪A3≫との間で,公募型プロポーザルに関し,適宜連絡していた。乙299),原告が選定されて随意契約を締結して機器納入メーカーとなった(なお,公募型プロポーザルの提案金額は,物件12に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(6) 鳥取県東部広域行政管理組合消防局の物件(物件13)について
ア 鳥取県東部広域行政管理組合消防局の物件(物件13。既設指令台の納入業者は≪G≫である。)については,平成22年12月,沖電気工業及び原告が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),平成23年6月22日に開催された会合(別紙3の番号30)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告(又は沖電気工業)とし,「ちずv16」(乙153別紙9)には,その「チャン」欄に「CG」,「コメント」欄に「AI考慮」と記載され(認定事実3(2)ソ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ ≪G≫は,鳥取県東部広域行政管理組合消防局の物件(物件13)の入札に向け,営業活動を行い,入札仕様に原告の独自仕様(車載型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること等)が採用された(甲28の13)。
鳥取県東部広域行政管理組合消防局の物件(物件13)については,平成24年4月6日に入札が行われ,≪G≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件13に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(7) 燕・弥彦総合事務組合消防本部の物件(物件15)について
ア 燕・弥彦総合事務組合消防本部の物件(物件15)については,平成22年12月,原告が希望したところ(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),遅くとも平成23年5月17日に開催された会合(別紙3の番号27)以降,日本無線も希望し(乙153別紙6参照),同年6月22日に開催された会合(別紙3の番号30)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv16」(乙153別紙9)には,その「チャン」欄に「CG」と記載され(認定事実3(2)ソ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,①の「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 日本電気は,燕・弥彦総合事務組合消防本部の物件(物件15)の入札に向け,営業活動を行い,技術提案が満たすべき「要求水準書」に日本電気の仕様が採用された(なお,日本電気の≪B3≫や日立国際電気の≪D1≫は,原告の≪A3≫との間で,お互いの営業活動の状況に関し,適宜情報交換をしていた。乙261,300)。
燕・弥彦総合事務組合消防本部の物件(物件15)について,平成24年4月20日に公募型指名競争入札(指名を受けることができた業者は,原告と日本電気であった。)が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件15に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(8) 千葉県内の各消防本部の物件(物件18,21~23,31~33,40等)
【前提事実】
千葉県内の消防本部の物件(物件22,23,31~33,40)は,千葉県が代表して県内の基地局を整備したことから,移動局の発注がされたもめである。
【認定事実】
ア 千葉県発注の物件(別紙4の総通番3)は,千葉県が代表して県内の基地局を整備するというものであり,平成22年6月7日に開催された会合(別紙3の番号14)において,納入予定メーカーを日本電気とする割り振り案が提示され,出席者間で了承されたところ(認定事実3(1)キ),同年9月14日に入札が行われ,日本電気が落札して納入することになり,同年10月6日に開催された会合(別紙3の番号20)において,出席者が予定どおり納入予定メーカーが納入することができたことを確認し合った(認定事実3(1)シ)。
イ 平成22年12月21日以降に開催された会合においては,上記アの経緯から,今後千葉県内の各消防本部から発注される移動局の受注調整が行われたところ,平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,出席者は,千葉県内の各消防本部が発注する物件につき,「ちずv17」(乙153別紙10)には,その「チャン」欄を「BC」(ただし,習志野市消防本部は「AI」)とし,その「コメント」欄に移動局を納入することとなる納入予定メーカーを「●●考慮」と記載することとした(「CG移動系考慮」又は「FG移動系考慮」とされた物件は,佐倉市八街市酒々井町消防組合消防本部(物件31),安房郡市広域市町村圏事務組合消防本部(物件33),木更津市消防本部(物件32),浦安市消防本部(物件21),四街道市消防本部(別紙4の総通番88),富津市消防本部(物件22),栄町消防本部(物件40)であり,「AI,CG移動系考慮」とされた物件は,香取広域市町村圏事務組合消防本部(別紙4の総通番56),鎌ケ谷市消防本部(別紙4の総通番58),匝瑳市横芝光町消防組合消防本部(別紙4の総通番53)であった。認定事実3(2)タ。乙191〔21~23頁〕)。
平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の番号36)において,出席者は,佐倉市八街市酒々井町消防組合消防本部(物件31),安房郡市広域市町村圏事務組合消防本部(物件33),木更津市消防本部(物件32),浦安市消防本部(物件21),印西地区消防組合消防本部(物件18),富津市消防本部(物件22),栄町消防本部(物件40)の納入予定メーカーを原告とし,「ちずv22」(乙153別紙15)には,上記各消防本部の「CGリセット」欄に「CG」,「Pend再検討」欄に「CG移」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
ウ 原告,日本電気及び沖電気工業は,千葉県内の移動局の物件につき,自社系列の販売特約店等を擁立して入札に参加させることを基本としていたところ,日本電気系の株式会社≪S≫(以下「≪S≫」という。)と沖電気工業系の≪Q≫株式会社(以下「≪Q≫」という。)の折り合いが悪く,決定した納入予定メーカーが予定どおり納入できないおそれがあった。
沖電気工業,日本電気,≪S≫及び≪Q≫は,平成24年4月11日,沖電気工業の≪C2≫の提案により会合を行い,千葉県内の移動局の物件について納入予定メーカーの再確認・調整等を行った。その際,上記イに掲げる物件に加え,成田市消防本部の物件(物件23)については,その納入予定メーカーを原告とされた。
日本電気の≪B3≫は,上記会合の後,原告の≪A3≫に対し,成田市消防本部の物件の納入予定メーカーが原告になったこと等を告げ,その了解を得た(以上につき,乙262〔2~35頁・資料9の2頁目〕,263,264)。
エ 佐倉市八街市酒々井町消防組合消防本部(物件31),安房郡市広域市町村圏事務組合消防本部(物件33),木更津市消防本部(物件32),浦安市消防本部(物件21),印西地区消防組合消防本部(物件18),富津市消防本部(物件22),成田市消防本部(物件23)の物件については,平成24年4月27日から平成24年5月30日までの間に入札が行われ,≪V≫又は≪T≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件18,21~32,31~33に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。≪V≫及び≪T≫は,原告の代理店である(乙19)。)。
栄町消防本部の物件(物件40)については,平成24年7月6日に入札が行われ,≪T≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件40に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。≪T≫は,原告の代理店である(乙19)。)。
(9) 堺市消防局の物件(物件24,42,93)について
ア 堺市消防局の物件(物件24,42,93。既設指令台の納入業者は≪G≫である。)については,平成22年12月,原告が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),その後,日本電気も希望したが,平成23年5月17日に開催された会合(別紙3の番号27)において,日本電気は希望を取り下げた(乙153別紙6の「BC譲渡」欄の「降」の記載参照。乙169〔34~35頁〕)。平成23年6月22日に開催された会合(別紙3の番号30)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv16」(乙153別紙9)には,その「チャン」欄に「CG」,と記載され(認定事実3(2)ソ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 堺市消防局の物件(物件24,42,93)については,入札仕様に原告の独自仕様(車載型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること等)が採用された(甲28の24,28の42,28の93)。堺市消防局の物件(物件24)については,平成24年5月11日に入札が行われ,≪G≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件24に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
堺市消防局の物件(物件42)については,平成24年7月24日に入札が行われ,≪G≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件42に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
堺市消防局の物件(物件93)については,平成25年7月12日に入札が行われ,≪G≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件93に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(10) 高知市消防局の物件(物件28)について
ア 高知市消防局の物件(物件28。既設指令台の納入業者は≪G≫である。)については,平成22年12月,原告が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv15」(乙153別紙8)には,その「チャン」欄に「CG」と記載され(認定事実3(2)セ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 高知市消防局の物件(物件28)については,入札仕様に原告の独自仕様(卓上型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること等)が採用された(甲28の28)。
高知市消防局の物件(物件28)については,平成24年5月16日に入札が行われ,≪G≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件28に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(11) 高槻市消防本部の物件(物件29)について
ア 高槻市消防本部の物件(物件29。既設指令台の納入業者は≪G≫である。)については,平成22年12月,原告が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv15」(乙153別紙8)には,その「チャン」欄に「CG」と記載され(認定事実3(2)セ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 高槻市消防本部の物件(物件29)については,入札仕様に原告の独自仕様(車載型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること等)が採用された(甲28の29)。
高槻市消防本部の物件(物件29)については,平成24年5月21日に入札が行われ,≪G≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件29に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(12) 根室北部消防事務組合消防本部(別海)の物件(物件36,37)
ア 平成22年12月,原告が①根室北部消防事務組合消防本部(別海)の物件(物件36,37)を希望し,沖電気工業及び日本電気が②同消防本部(標津。別紙4の総通番117,120),沖電気工業が③同消防本部(中標津。別紙4の総通番116,119)を希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,出席者は,①の納入予定メーカーを原告とし,③の納入予定メーカーを沖電気工業として,「ちずv15」(乙153別紙8)には,①の「チャン」欄に「CG」,③の「チャン」欄に「AI」と記載され(認定事実3(2)セ),平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,出席者は,②について日本電気との話合いの余地を残しつつ納入予定メーカーを一応沖電気工業として,「ちずv17」,(乙153別紙10)には,②の「チャン」欄に「AI」,「コメント」欄に「BC考慮」と記載された(認定事実3(2)タ)。
平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,①の「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」,②・③の「チャン」欄に「AI」,「CGリセット」欄に「AI」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 平成24年2月頃,根室北部消防事務組合消防本部の物件が中標津町,標津町,羅臼町,別海町で分割発注されることに決まったことから,沖電気工業は,設計業者と一体となって,沖電気工業が納入予定メーカーとされた中標津町及び標津町(上記ア②・③)並びに羅臼町の物件について仕様書に同社の仕様を反映してもらうよう営業活動を行う一方,原告が納入予定メーカーとされた別海町の物件(上記ア①)については上記のよう営業活動を行わなかった。そのため,根室北部消防事務組合消防本部(標津。別紙4の総通番117,120)及び同消防本部(中標津。別紙4の総通番116,119)の物件については,その仕様書に沖電気工業の仕様が取り込まれ,同消防本部(別海)の物件(物件36,37)については,その仕様書に原告の仕様が取り込まれた。
また,沖電気工業は,その頃,協力店を介して地元業者に対する営業活動(地元業者対策)を行った。
ウ 根室北部消防事務組合消防本部(標津。別紙4の総通番117,120),同消防本部(中標津。別紙4の総通番116,119)及び同消防本部(羅臼。別紙4の総通番118)の物件については,平成24年6月1日に入札が行われ,≪AA≫又は≪AB≫が落札し,沖電気工業が機器納入メーカーとなった。
根室北部消防事務組合消防本部(別海)の物件(物件36,37)については,平成24年6月1日に入札が行われ,≪AB≫が落札し,原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件36・37に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
エ 沖電気工業の現地の営業担当者は,上記ウの後,根室北部消防事務組合消防本部(別海)の物件(物件36,37)を落札した地元業者から,原告が仕切価格を下げてくれないので,沖電気工業から機器を仕入れたいという話があったが,当該物件の納入予定メーカーは原告であったこと等から,これを断った(以上のイ・エにつき,乙284〔10~14,20~21頁〕,289)。
(13) 阿賀野市消防本部の物件(物件39)について
ア 阿賀野市消防本部の物件(物件39)については,平成22年12月,原告が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv15」(乙153別紙8)には,その「チャン」欄に「CG」と記載され(認定事実3(2)セ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 原告は,阿賀野市消防本部の物件(物件39)の入札に向け,営業活動を行い,入札仕様に原告の独自仕様(車載型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること等)が採用された(申28の39)。阿賀野市消防本部の物件(物件39)について,平成24年6月26日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件39に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(14) 大津市消防局の物件(物件41,66)について
ア 大津市消防局の物件(物件41,66。既設指令台の納入業者は≪G≫である。)については,平成22年12月,沖電気工業が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),その後,原告も希望したところ(乙153別紙3参照),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,各物件について協議ができる状況にないなどの事情があるものについては,次回以降に協議することとされ,「ちずv15」(乙153別紙8)には,その「チャン」欄が空欄とされ,「未整合協議中」の欄に「●」と記載された(認定事実3(2)セ,乙187〔16頁〕)。
平成23年7月20日に開催された会合(別紙3の番号32)において,出席者は,これ以上話合いを重ねても更に1社に絞ることは難しいとの認識を共有し,上記物件の納入予定メーカーを沖電気工業又は原告として両者間の協議に委ねることとし,「ちずv18」(乙153別紙11)には,その「不採算案件」欄に「×」印が付され,「コメント」欄に「AI-CG協議」と記載され(認定事実3(3)チ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄が空欄のまま,「不採算案件」欄に「×」が記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 沖電気工業及び日本電気は,大津市消防局の物件(物件41)の入札に向け,営業活動を行った(甲80の41)。原告も,当該物件の入札に向け,営業活動を行い,各物件の入札仕様に原告の独自仕様(可搬型移動局無線装置(物件41)又は車載型移動局無線装置(物件66)の空中線電力の送信出力が10Wであること等)が採用された(甲28の41,28の66)。なお,沖電気工業は,大津市消防局の物件(物件41)の入札仕様が上記のように決まった後は,その受注を諦め,大津市消防局の物件(物件66)についての営業活動を行わなかった(乙272〔15~16頁〕)。
大津市消防局の物件(物件41)については,平成24年7月23日に入札が行われ,≪G≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件41に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
大津市消防局の物件(物件66)については,平成25年5月13日に入札が行われ≪G≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件66に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(15) 浦添市消防本部の物件(物件46)について
ア 浦添市消防本部の物件(物件46)については,平成22年12月,日本電気が希望したところ(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),遅くとも平成23年2月21日に開催された会合(別紙3の番号25)以降,原告も希望し(乙153別紙3参照),平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,出席者は,その納入予定メーカーを一応原告(又は日本電気)として,「ちずv17」(乙153別紙10)には,その「チャン」欄に「CG」,「コメント」欄に「BC-CG協議」と記載され(認定事実3(2)タ。乙190〔35~36頁〕),平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の36)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「Pend再検討」欄に「Pen」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 原告は,浦添市消防本部の物件(物件46)の入札に向け,営業活動を行い,入札仕様に原告の独自仕様(車載型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること等)が採用された(甲28の46)。
浦添市消防本部の物件(物件46)について,平成24年8月17日に入札が行われ,≪AD≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件46に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(16) 羽島市消防本部の物件(物件47)について
ア 羽島市消防本部の物件(物件47)については,平成22年12月,原告が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv15」(乙153別紙8)には,その「チャン」欄に「CG」と記載され(認定事実3(2)セ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 5社は,羽島市消防本部の物件(物件47)につき,事後審査型一般競争入札の参加申請を行うなどした(甲80の47)。
羽島市消防本部の物件(物件47)について,平成24年8月22日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件47に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(17) 歌志内市消防本部(物件48)と胆振東部消防組合消防本部(別紙4の総通番46)の物件
原告は,平成22年12月当時,胆振東部消防組合消防本部の物件(別紙4の総通番46)を希望し,平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の番号36)においても,原告が納入予定メーカーとなることとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,「チャン」欄に「CG」,「Pend再検討」欄に「Pen」と記載された。
ところが,胆振東部消防組合消防本部の物件(別紙4の総通番46)については,平成24年4月20日に入札が行われ,日立国際電気が落札して機器納入メーカーとなった。
平成24年4月24日に開催された会合(別紙3の番号37)においては,原告の≪A3≫が,日立国際電気の≪D1≫から色々情報をもらっていたものの,それを活かしきれずに失注につながった旨を説明し,≪D1≫が代わりに歌志内市消防本部を原告に譲ることとした旨を説明したところ,出席者は,これを了解した(認定事実3(4)ア,乙213〔14~15頁〕,216〔9~12頁〕,217)。その後に作成された「ちず」と類似の一覧表(乙227別紙1)には,歌志内市消防本部の物件(物件48)の「チャン」欄に「DK」と記載されているが,その「4/24」欄には「CG」と記載された。
歌志内市消防本部の物件(物件48)については,平成24年10月15日に入札が行われ,≪AE≫が落札し,原告が機器納入メーカーとなった。
(18) 五島市消防本部の物件(物件50)について
ア 五島市消防本部の物件(物件50)については,平成22年12月,日本電気が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),遅くとも平成23年2月21日に開催された会合(別紙3の番号25)以降,原告も希望し(乙153別紙3参照),平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,出席者は,日本電気との話合いの余地を残しつつ納入予定メーカーを一応原告として,「ちずv17」(乙153別紙10)には,②の「チャン」欄に「CG」,「コメント」欄に「BC考慮」と記載された(認定事実3(2)タ)。平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の36)において,出席者は,納入予定メーカーを原告とし,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「Pend再検討」欄に「Pen」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 日本電気は,五島市消防本部の物件(物件50)の入札に向け,営業活動を行った(甲80の50)。五島市消防本部の物件(物件50)について,平成24年11月1日に入札が行われ,≪W≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件50に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。また,≪W≫と≪AN≫は,原告と協力関係にあった(乙19)。)。
(19) 松本広域消防局の物件(物件52)について
ア 松本広域消防局の物件(物件52。既設指令台の納入業者は≪G≫である。)については,平成22年12月,原告が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv15」(乙153別紙8)には,その「チャン」欄に「CG」と記載され(認定事実3(2)セ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 松本広域消防局の物件(物件52)については,入札仕様に原告の独自仕様(車載型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること等)が採用された(甲28の52)。
松本広域消防局の物件(物件52)については,平成25年1月29日に入札が行われ,≪N≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件52に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(20) 小野市消防本部の物件(物件53)について
ア 小野市消防本部の物件(物件53)については,平成22年12月,沖電気工業が希望したところ(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),遅くとも平成23年2月21日に開催された会合(別紙3の番号25)以降,原告も希望し(乙153別紙3参照),同年8月30日に開催された会合(別紙3の番号33)において,出席者は,納入予定メーカーを原告とし,「ちずv19」(乙153別紙12)には,その「チャン」欄に「CG」と記載され(認定事実3(2)ツ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「Pend再検討」欄に「Pen」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 沖電気工業及び≪H≫は,小野市消防本部の物件(物件53)の入札に向け,営業活動を行った(甲80の53)。原告も,当該物件の入札に向け,営業活動を行い,入札仕様に原告の独自仕様(車載型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること等)が採用された(甲28の53)。
小野市消防本部の物件(物件53)について,平成25年2月27日に入札が行われ,≪AF≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件53に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(21) 福知山市消防本部の物件(物件56)について
ア 福知山市消防本部の物件(物件56)については,平成22年12月,原告が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv15」(乙153別紙8)には,その「チャン」欄に「CG」と記載され(認定事実3(2)セ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 福知山市消防本部の物件(物件56)については,入札仕様に原告の独自仕様(車載型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること等)が採用された(甲28の56)。
福知山市消防本部の物件(物件56)については,平成25年4月19日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件56に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(22) 入間東部地区消防組合消防本部の物件(物件58)
ア 遅くとも平成23年5月17日までに,①入間東部地区消防組合消防本部(物件58)については,沖電気工業,原告,日立国際電気及び日本無線が希望し,②上尾市消防本部の各物件については,沖電気工業及び原告が希望した(認定事実3(2)ウ~シのほか,乙153別紙1~5)。同年6月22日に開催された会合(別紙3の番号30)において,出席者は,②の納入予定メーカーを一応原告又は沖電気工業とし,「ちずv16」(乙153別紙9)には,その「チャン」欄を空欄にしたまま,「コメント」欄に「AI-CGローカル」と記載された(認定事実3(2)ソ)。また,同月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,出席者は,①の納入予定メーカーを留保とし,「ちずv17」(乙153別紙10)には,その「チャン」欄を空欄にしたまま,「コメント」欄に「EC工場。ペンディング」と記載された(認定事実3(2)タ)。
そして,平成23年12月6日に開催された会合(別紙4の番号36)において,出席者は,①の納入予定メーカーを原告,沖電気工業及び日立国際電気とし,②の納入予定メーカーを原告及び沖電気工業として,「ちずv22」(乙153別紙15)には,①につき「チャン」欄に「O,FG,HK」,「CGリセット」欄に「CG」,「Pend再検討」欄に「Pen」と,②につき「チャン」欄に「O,FG」,「CGリセット」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」,「Pend再検討」欄に「Pen」と記載された(そのため,①・②の「決定」欄に赤丸(「●」)は付されなかった。認定事実3(2)ナ参照)。
平成24年8月,①の指令台の入札が行われ,原告がこれを受注したことを契機として,原告の≪A3≫は,沖電気工業の≪C2≫と話し合い,①の納入予定メーカーは原告,②の納入予定メーカーは沖電気工業として分け合うことを確認した。同年9月3日に開催された会合(別紙3の番号40)において,出席者は,上記のように分け合うことを了解し,「ちず」と類似の一覧表(乙227別紙1)には,①につき「済み」欄に「CG」と,②につき「済み」欄に「AI」と記載された(認定事実3(4)エ,乙223〔31~32頁〕)。
イ ①(入間東部地区消防組合消防本部の物件〔物件58〕)については,平成25年4月24日に入札が行われ,≪U≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件58に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。≪U≫は,原告の代理店である(乙19)。)。
(23) 久御山町消防本部の物件(物件60)について
ア 久御山町消防本部の物件(物件60)については,平成22年12月,原告が希望したところ(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),遅くとも平成23年2月21日に開催された会合(別紙3の番号25)以降,日立国際電気も希望し(乙153別紙3参照),同年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)においては,宇治市消防本部,城陽市消防本部,乙訓消防組合消防本部,八幡市消防本部の物件と共に広域化等の情報が共有され,「ちずv15」(乙153別紙8)には,これらの物件の「広域化」欄に「京1」と記載された(認定事実3(2)セ参照)。
平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,出席者は,共同運用となることが決まった際は見直すことを前提として,納入予定メーカーを原告とし,「ちずv17」(乙153別紙10)には,その「チャン」欄に「CG」,「コメント」欄に「共同の際は見直し」と記載され(認定事実3(2)タ。乙190〔26~28頁〕),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 原告は,久御山町消防本部の物件(物件60)の入札に向け,営業活動を行い,入札仕様に原告の独自仕様(車載型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること等)が採用された(甲28の60)。
久御山町消防本部の物件(物件60)については,平成25年4月26日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件60に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。また,原告は,予定価格を1億円と独自に予想し(甲105,それに近接した9800万円を入札価格としたが,実際の予定価格は,原告の予想を大きく上回る1億5075万円であったため,低落札率(65.01%)となった〔原告第12準備書面7頁以下参照〕。)。
(24) 三田市消防本部の物件(物件62,121)について
ア 三田市消防本部の物件(物件62,121)については,遅くとも平成23年2月21日に開催された会合(別紙3の番号25)以降,原告が希望し(乙153別紙3参照),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv15」(乙153別紙8)には,その「チャン」欄に「CG」と記載され(認定事実3(2)セ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ、「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 三田市消防本部の物件(物件62,121)については,各物件の入札仕様に原告の独自仕様(車載型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること等)が採用された(甲28の62,28の121)。
三田市消防本部の物件(物件62)については,平成25年5月9日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件62に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。また,≪AO≫及び≪AP≫は,原告の代理店である(物件121についても同じ。乙19)。)
三田市消防本部の物件(物件121)については,平成25年10月31日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件121に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(25) 奈良市消防局の物件(物件63)について
ア 奈良市消防局の物件(物件63。既設指令台の納入業者は≪G≫である。)については,平成22年12月,日本電気が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),その後,原告も希望したところ(乙153別紙3参照),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,各物件について協議ができる状況にないなどの事情があるものについては,次回以降に協議することとされ,「ちずv15」(乙153別紙8)には,その「チャン」欄が空欄とされ,「未整合協議中」の欄に「●」と記載された(認定事実3(2)セ)。
平成23年7月20日に開催された会合(別紙3の番号32)において,出席者は,これ以上話合いを重ねても更に1社に絞ることは難しいとの認識を共有し,上記物件の納入予定メーカーを日本電気又は原告として両者間の協議に委ねることとし,「ちずv18」(乙153別紙11)には,その「チャン」欄を空欄のまま,「不採算案件」欄に「×」印が付され(認定事実3(3)チ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄が空欄のまま,「不採算案件」欄に「×」が記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 奈良市消防局の物件(物件63)については,入札仕様に原告の独自仕様(既設指令台(≪G≫製)と機能的に接続できること等)が採用された(甲28の63)。日本無線は,原告から,「お付き合い入札」の依頼を受け,地方のパイプを使って入札参加の申請をしたが,入札前に,辞退して構わないとの連絡を受けたため,入札参加を辞退した(乙270〔11~12頁〕)。
奈良市消防局の物件(物件63)については,平成25年5月10目に入札が行われ,≪G≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件63に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。また,≪AM≫は,日本電気の代理店である。)。
(26) 富田林市消防本部の物件(物件68)
ア 原告は,原告が指令台,無線ともに既設業者であった富田林市消防本部の物件(物件68)を原告の大阪府における「モデルユーザー」と位置付け,絶対に死守したい消防本部であると認識し,遅くとも平成23年2月21日に開催された会合(別紙3の番号25)以降,当該物件を希望していた(乙153別紙3参照)。
もっとも,①富田林市消防本部の物件は,②河内長野市消防本部,③大阪狭山市消防本部,④河南町消防本部の各物件との共同整備(代表消防は,富田林市消防本部)が予定されていたところ,これらの物件については原告以外の者も希望しており(②につき沖電気工業,③につき原告及び日本電気,④につき原告及び日本無線),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)においては,「ちずv15」(乙153別紙8)には,これらの物件の「広域化」欄に「大1」と記載された(認定事実3(2)セ参照)。
その後の会合においても,出席者は,富田林市消防本部の物件ほか3件の納入予定メーカーにつき,いずれも希望を下ろさなかったことから,平成23年7月20日に開催された会合(別紙3の番号32)において,これ以上話合いを重ねても更に1社に絞ることは難しいとの認識を共有し,「ちずv18」(乙153別紙11)には,これらの物件の「不採算案件」欄に「×」印が付された(認定事実3(3)チ。以上につき,乙150〔17~25頁〕,157〔7~14頁〕,177〔21頁〕,180〔19~25頁〕,189〔3~14頁〕,192〔2~42頁〕,193〔3~28頁〕,194〔2~20頁〕)。
しかし,平成23年8月30日に開催された会合(別紙3の番号33)において,富田林市消防本部の物件ほか3件の広域化がされないとの情報が提供されたことから,それぞれの物件について納入予定メーカーが決められ(①につき原告,②につき沖電気工業,③につき日本電気,④につき日本無線),「ちずv19」(乙153別紙12)の上記各物件の「チャン」欄に当該納入予定メーカーを示す記号が記載された(認定事実3(2)ツ,乙196〔73~75頁〕,197〔16頁〕)。
そして,平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の番号36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,①の「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 富田林市消防本部の物件(物件68)については,平成25年5月16日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件68に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(27) 高島市消防本部の物件(物件71)について
ア 高島市消防本部の物件(物件71)については,平成22年12月,原告が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),その後,日立国際電気も希望したが(乙153別紙3),平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,出席者は,納入予定メーカーを一応原告として,「ちずv17」(乙153別紙10)には,その「チャン」欄に「CG」,「コメント」欄に「指令台,無線一括発注2014年仮おき」と記載された(認定事実3(2)タ)。遅くとも平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の36)において,出席者は,納入予定メーカーを原告とし,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 原告は,高島市消防本部の物件(物件71)の入札に向け,営業活動を行い,入札仕様に原告の独自仕様(既設指令台(原告製)の改修を行うこと)が採用された(甲28の71,80の71)。
高島市消防本部の物件(物件71)について,平成25年5月20日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件71に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(28) 島根県内の物件(物件72,75,82,85,122等)
【前提事実】
江津市邑智消防組合消防本部の物件(物件85)及び出雲市消防本部の物件(物件122)は,その落札者が日本無線であった(別紙4の総通番328,443)が,原告が日本無線に対してその製造に係る消防救急デジタル無線機器を納入し,日本無線が上記各物件の機器納入メーカーとしてこれを納入した(乙235〔14~15頁,25~27頁〕,乙236〔2~9頁〕)。
【認定事実】
ア 月曜会の出席者は,島根県の物件(①安来市消防本部(別紙4の総通番234),②浜田市消防本部(物件72),③大田市消防本部(物件75),④雲南広域連合雲南消防本部(物件82),⑤江津市邑智消防組合消防本部(物件85),⑥益田広域消防本部(別紙4の総通番374),⑦出雲市消防本部(物件122),⑧松江市消防本部(別紙4の総通番460),⑨隠岐広域連合消防本部(別紙4の総通番464))に関し,地元のディーラーである≪AG≫株式会社(以下「≪AG≫」という。)がおり,原告と日本無線が≪AG≫とつながりがあるなどと認識していた。
イ 平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,5社がそれぞれ島根県の物件を希望していたところ(①につき日立国際電気及び日本無線,②・④・⑤・⑦につき原告及び日本無線,③につき原告,日立国際電気及び日本無線,⑥につき日本電気,原告及び日本無線,⑧・⑨につき日本電気及び日本無線),原告の≪A3≫と日本無線の≪E1≫が消防本部ごとに納入予定メーカーをいずれとするかは2社でまだ話合いを行っている途中であり,当該話合いの結果次第としてほしい旨を述べたため,出席者は,同日の「ちずv17](乙153別紙10)には,とりあえず≪A3≫と≪E1≫が,それぞれ自社が納入したいと述べた方の会社名の略称を「チャン」の欄に記載し,「コメント」の欄には「CG-ECローカル」と記載して,納入予定メーカーは,原告と日本無線とが話し合って決定したとおりとすることとした。
その後,原告と日本無線は,話合いの結果,③~⑤及び⑦については,このうち,③・④は≪AG≫が,⑤・⑦は日本無線が,それぞれ元請けとなって原告から消防救急デジタル無線機器を購入して納入することとして,原告を納入予定メーカーとした(ア・イにつき,乙150〔16~17頁〕,191〔24~28頁〕,234〔5~6頁,13~15頁〕,266〔10~11頁,30~32頁〕,307〔6~13頁〕,308〔6~23頁〕)。
そして,平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の番号36)においては,「ちずv22」(乙153別紙15)には,①・③・⑥・⑨の「チャン」欄に「EC」,「CGリセット」欄に「EC」,②・④・⑤・⑦の「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」,⑧の「チャン」欄に「BC」,「CGリセット」欄に「BC」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
ウ ②(浜田市消防本部。物件72)については,平成25年5月21日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件72に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
③(大田市消防本部。物件75)については,平成25年5月22日に入札が行われ,≪AG≫が落札して原告から消防救急デジタル無線機器を購入して納品することにより,原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件75に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
④(雲南広域連合雲南消防本部。物件82)については,平成25年5月30日に入札が行われ,≪AG≫が落札して原告から消防救急デジタル無線機器を購入して納品することにより,原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件82に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
⑤(江津市邑智消防組合消防本部。物件85)については,平成25年6月6日に入札が行われ,日本無線が落札して原告から消防救急デジタル無線機器を購入して納品することにより,原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件85に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
⑦(出雲市消防本部。物件122)については,平成25年11月7日に入札が行われ,日本無線が落札して原告から消防救急デジタル無線機器を購入して納品することにより,原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件122に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(29) 長岡市消防本部の物件(物件76,118)について
ア 長岡市消防本部の物件(物件76,118。既設指令台の納入業者は≪G≫である。)については,平成22年12月,沖電気工業が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),その後,日本無線及び原告も希望したところ(乙153別紙3・5参照),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,各物件について協議ができる状況にないなどの事情があるものについては,次回以降に協議することとされ,「ちずv15」(乙153別紙8)には,その「チャン」欄が空欄とされ,「未整合協議中」の欄に「●」と記載された(認定事実3(2)セ)。
平成23年7月20日に開催された会合(別紙3の番号32)において,出席者は,これ以上話合いを重ねても更に1社に絞ることは難しいとの認識を共有し,上記物件の納入予定メーカーを沖電気工業,原告又は日本無線として三者間の協議に委ねることとし,「ちずv18」(乙153別紙11)には,その「チャン」欄を空欄のまま,「不採算案件」欄に「×」印が付され(認定事実3(2)チ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄が空欄のまま,「不採算案件」欄に「×」が記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 沖電気工業は,長岡市消防本部の物件(物件76)の入札に向け,営業活動を行った(甲80の76)。原告(≪G≫も含む。)も,当該物件の入札に向け,営業活動を行い,その入札仕様に原告の独自仕様(車載型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること等)が採用された(甲28の76,乙291〔24~27頁〕)。
長岡市消防本部の物件(物件76)については,平成25年5月23日に入札が行われ,≪О≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件76に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
ウ 長岡市消防本部の物件(物件118)については,その入札仕様に原告の独自仕様(携帯型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が5Wであること等)が採用された(甲28の118)。沖電気工業は,その代理店(ディーラー)である≪AC≫から,≪G≫を介して原告の機器を購入して入札に参加したいとの申入れを受け,これを了承した(乙291〔26~27頁〕)。
長岡市消防本部の物件(物件118)については,平成25年9月24日に入札が行われ,≪AC≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件118に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。≪AC≫は,沖電気工業の代理店である。)。
(30) 加古川市消防本部の物件(物件77)について
ア 加古川市消防本部の物件(物件77)については,平成22年12月,原告が希望したところ(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),その後,沖電気工業及び日本電気も希望し(乙153別紙3・4参照),平成23年6月22日に開催された会合(別紙3の番号30)において,出席者は,≪A3≫が「今後がんばって営業をかけますから」などと述べて強く希望したこと等から,その納入予定メーカーを一応原告(又は沖電気工業若しくは日本電気)とし,「ちずv16」(乙153別紙9)には,その「チャン」欄に「CG」,「コメント」欄に「AI,BCは別途考慮」と記載され(認定事実3(2)ソ。乙183〔44~45頁〕),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 沖電気工業,日本電気及び≪H≫は,加古川市消防本部の物件(物件77)の入札に向け,営業活動を行った(甲80の77)。原告も,当該物件の入札に向け,営業活動を行い,入札仕様に原告の独自仕様(車載型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること等)が採用された(甲28の77)。
加古川市消防本部の物件(物件77)については,平成25年5月23日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件77に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。また,原告は,上記物件の予定価格を10億4761万9000円と予測していたが(甲107),≪H≫の攻勢を強く警戒して,7億4500万円で入札したため,低落札率(72.97%)となった〔原告第12準備書面7頁以下参照〕。)。
(31) 箕面市消防本部(物件78,94)及び豊能町消防本部(物件81,106)の物件
【前提事実】
豊能町消防本部の物件(物件81,106)及び箕面市消防本部の物件(物件94)は,箕面市消防本部を代表消防とする広域化物件である(乙258,259)。
箕面市消防本部は,豊能町消防本部との間で,これらの物件の発注に先立ち,箕面市消防本部内の共通波等の整備を対象とする指名競争入札を実施することとし,入札業者に対しては,当該指名競争入札の落札業者と上記3物件の随意契約を締結する旨を明らかにした上,平成25年5月24日,当該指名競争入札を実施したところ,原告がこれを落札し(落札業者名につき,別紙4の総通番357を参照),上記3物件につき,原告を落札業者として随意契約が締結された(別紙4の総通番315,357,389を参照)。
【認定事実】
ア 平成22年12月頃,原告は,①箕面市消防本部の物件(物件78,94)を希望し,沖電気工業は,②豊能町消防本部の物件(物件81,106)を希望しており(認定事実3(2)ウ~カのほか,乙153別紙1~3),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,出席者は,①の納入予定メーカーを原告とし,②の納入予定メーカーを沖電気工業として,「ちずv15」(乙153別紙8)には,①の「チャン」欄に「CG」,②の「チャン」欄に「AI」と記載された(認定事実3(2)セ)。
もっとも,平成23年6月22日に開催された会合(別紙3の番号30)において,出席者は,②を①に統合することを前提として,①・②の納入予定メーカーを原告とし,「ちずv16」(乙153別紙9)には,②の「決定」欄に「統合」,「コメント」欄に「箕面消防に統合」,①の「チャン」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ソ)。そして,平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の番号36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,①の「チャン」欄に「CG」,「Pend再検討」欄に「Pen」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 箕面市と豊能町は,平成25年5月13日,消防救急無線のデジタル化への移行のための整備に係る入札業務を箕面市が行い,契約は両市町が落札者と締結する旨の消防救急無線のデジタル化整備に伴う入札業務の共同実施に係る協定書(乙259)を締結し,箕面市消防本部は,箕面市消防本部の物件(物件78)の実施に先立ち,当該入札の落札業者との間で,その後に発注される豊能町消防本部(物件81,106)及び箕面市消防本部(物件94番)の3物件に係る随意契約を締結する旨を明らかにした(乙258)。
箕面市消防本部の物件(物件78)については,平成25年5月24日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件78に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
そして,豊能町消防本部の物件(物件81)については平成25年5月29日に,箕面市消防本部の物件(物件94)については同年7月16日に,豊能町消防本部の物件(物件106)については同年8月1日に,それぞれ上記落札者である原告が随意契約を締結して機器納入メーカーとなった。
(32) 深谷市消防本部の物件(物件92)について
ア 深谷市消防本部の物件(物件92)については,平成22年12月,沖電気工業及び原告が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,出席者は,納入予定メーカーを一応原告として,「ちずv17」(乙153別紙10)には,その「チャン」欄に「CG」,「コメント」欄に「AI移動局考慮」と記載され(認定事実3(2)タ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)において,出席者は,納入予定メーカーを原告として,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 深谷市消防本部の物件(物件92)については,入札仕様に原告の独自仕様(携帯型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が5Wであること等)が採用された(甲28の92)。
深谷市消防本部の物件(物件92)については,平成25年7月4日に入札が行われ,≪U≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件92に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。≪U≫及び≪✕≫は,原告の代理店である(乙19)。)。
(33) 釧路東部消防組合消防本部(釧路町)の物件(物件99)
ア 平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,釧路東部消防組合消防本部(釧路町)の物件(物件99。当該物件の無線の既設業者は日本電気であり,指令台の既設業者は原告であった。)については,日本電気のみが希望していたことから,日本電気が納入予定メーカーとされ,「ちずv15」(乙153別紙8)には,その「チャン」欄に「BC」と記載された。
ところが,平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,原告の≪A3≫は,上記物件の指令台は原告が既設業者であったということを見落としており,希望を表明したい旨を述べた。このため,沖電気工業の≪C2≫は,≪A3≫の上記申出を受け,消防本部の意向をよく確認した方が良い旨を述べ,「ちずv17」(乙153別紙10)の当該物件の「チャン」の欄に黄色で網掛けをした(認定事実3(2)タ)。
平成23年7月20日に開催された会合(別紙3の番号32)において,日本電気の≪B3≫は,日本電気が上記物件から降りる旨を発言し,原告の≪A3≫は,それでは原告を当該物件の納入予定メーカーにしてほしい旨を述べた。そのため,出席者は,当該物件の納入予定メーカーを原告とし,「ちずv18」(乙153別紙11)には,当該物件の「チャン」の欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)チ。以上につき,乙191〔20~21頁〕,192〔25頁,27~28頁〕,193〔25頁〕)。
そして,平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の番号36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,②の「チャン」欄に「CG」,「Pend再検討」欄に「Pen」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 原告は,釧路東部消防組合消防本部(釧路町)の物件(物件99)の入札に向け,営業活動を行い,入札仕様に原告の独自仕様(車載型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が10Wであること等)が採用された(甲29の99)。
釧路東部消防組合消防本部(釧路町)の物件(物件99)については,平成25年7月22日に入札が行われ,≪AH≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件99に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(34) 津市消防本部の物件(物件107)について
ア 津市消防本部の物件(物件107)については,平成22年12月,原告が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv15」(乙153別紙8)には,その「チャン」欄に「CG」と記載され(認定事実3(2)セ),同年12月6日に開催きれた会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 日本電気は,津市消防本部の物件(物件107)の入札に向け,営業活動を行った(甲80の107)。
津市消防本部の物件(物件107)については,平成25年8月2日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件107に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(35) 春日井市消防本部の物件(物件109)
ア 春日井市消防本部の物件(物件109。既設指令台の納入業者は≪G≫である。)については,平成22年12月当時,原告がこれを希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,各物件について協議ができる状況にないなどの事情があるものについては,次回以降に協議することとされ,「ちずv15」(乙153別紙8)には,その「チャン」欄に「CG」,「未整合協議中」の欄に「●」と記載された(認定事実3(2)セ,乙187〔16頁〕)
平成23年6月22日に開催された会合(別紙3の番号30)において,出席者は,春日井市消防本部の物件(物件109)の納入予定メーカーを原告とし,「ちずv16」(乙153別紙9)には,「未整合協議中」の欄が削除され,当該物件の「チャン」欄に「CG」と記載され(認定事実3(2)ソ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)において,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 春日井市消防本部の物件(物件109)については,平成25年8月6日に入札が行われ,≪G≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件109に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(36) 南空知消防組合消防本部の物件(物件110)について
ア 南空知消防組合消防本部の物件(物件110)については,平成22年12月,原告が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv15」(乙153別紙8)には,その「チャン」欄に「CG」と記載され(認定事実3(2)セ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 日本電気は,南空知消防組合消防本部の物件(物件110)の入札に向け,営業活動を行った(甲80の110)。
南空知消防組合消防本部の物件(物件110)については,平成25年8月8日に入札が行われ,≪U≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件110に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。≪U≫は,原告の代理店である(乙19)。)。
(37) 宇佐市消防本部の物件(物件112)
【前提事実】
宇佐市消防局の物件(物件112)は,これを落札した日本無線が,原告から消防救急デジタル無線機器を購入し(甲80の112),この工事を施工して納入した。
【認定事実】
ア 宇佐市消防本部の物件(物件112)については,平成22年12月当時,原告がこれを希望した(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2)が,その後,日本無線もこれを希望した(認定事実3(2)シ,乙153別紙5参照)。
平成23年7月20日に開催された会合(別紙3の番号32)において,出席者は,当該物件の納入予定メーカーを原告とし,「ちずv18」(乙153別紙11)には,その「チャン」欄に「CG」と記載され(認定事実3(2)チ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」,(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 宇佐市消防本部の物件(物件112)については,平成25年8月16日に入札が行われ,原告と原告の要請に従って「お付き合い入札」をした日本無線が入札したところ,原告の入札手続に不備があってその入札が無効とされたため,日本無線がこれを落札した。その後,日本無線の≪E1≫は,九州支社から上記落札結果の報告を受け,原告の≪A3≫からは迷惑をかけたと謝罪を受けた。そのため,日本無線は,原告と調整の上(日本無線の≪E1≫は,原告の≪A3≫から,機器費は日本無線の言い値でよい旨を言われた。),原告の消防救急デジタル無線機器を購入してこれを納入した(乙235〔25~27頁〕,306〔5~15頁〕)。
(38) 旭川市消防本部の物件(物件114)について
ア 旭川市消防本部の物件(物件114)については,平成22年12月,原告が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)において,出席者は,その納入予定メーカーを原告とし,「ちずv15」(乙153別紙8)には,その「チャン」欄に「CG」と記載され(認定事実3(2)セ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 旭川市消防本部の物件(物件114)については,入札仕様に原告の独自仕様(携帯型移動局無線装置の空中線電力の送信出力が5Wであること等)が採用された(甲28の92)。
旭川市消防本部の物件(物件114)については,平成25年8月27日に入札が行われ,原告・≪AL≫JVが落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件114に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(39) 枚方寝屋川消防組合消防本部の物件(物件115)について
ア 枚方寝屋川消防組合消防本部の物件(物件115。既設指令台の納入業者は≪G≫である。)については,平成22年12月,日本電気が希望したところ(認定事実3(2))ウ~オのほか,乙153別紙1・2),遅くとも平成23年2月21日に開催された会合(別紙3の番号25)以降,原告も希望し(乙153別紙3参照),同年8月30日に開催された会合(別紙3の番号33)において,出席者は,納入予定メーカーを原告又は日本電気とし,「ちずv19」(乙153別紙12)には,その「チャン」欄に,「N・FG」,「コメント」欄に「BC-CGローカル」と記載され(認定事実3(2)ツ),同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)におい,ても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「N・FG」,「Pend再検討」欄に「Pen」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 原告は,枚方寝屋川消防組合消防本部の物件(物件115)の入札に向け,営業活動を行い,入札仕様に原告の独自仕様(遠隔制御器による移動局無線装置の電波や警報音の発信状態を統制できること等)が採用された(甲28の115)。
枚方寝屋川消防組合消防本部の物件(物件115)については,平成25年8月30日に入札が行われ,≪G≫が落札して原告が機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件115に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(40) 富山県東部消防組合消防本部の物件(物件125)
【前提事実】
富山県東部消防組合消防本部の物件(物件125)は,魚津市消防本部,滑川市消防本部及び上市町消防本部が広域化し,共同発注された物件であった。
【認定事実】
ア 平成22年12月,原告は,①魚津市消防本部の物件を希望した(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2)が,その後,①については日本無線も希望し,②滑川市消防本部の物件については日本電気及び日立国際電気が,③上市町消防本部の物件については沖電気工業,原告,日立国際電気及び日本無線が希望していた(認定事実3(2)カ~ソ,乙153別紙8・9参照)。
平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,出席者は,①については日本無線との話し合いの余地を残しつつ納入予定メーカーを一応原告とし,②については納入予定メーカーを日本電気とし,③については日立国際電気及び日本無線との話合いの余地を残しつつ納入予定メーカーを一応沖電気工業とし,「ちずv17」(乙153別紙10)には,①の「チャン」欄に「CG」,「コメント」欄に「ECディーラ考慮」,②の「チャン」欄に「BC」,③の「チャン」欄に「AI」,「コメント」欄に「DK,EC考慮」と記載された(認定事実3(2)タ)。
平成23年8月30日に開催された会合(別紙3の番号33)において,出席者は,③については納入予定メーカーを一応日本電気とし,「ちずv19」(乙153別紙12)には,③の「チャン」欄に「BC」,「コメント」欄に「DK,EC考慮」と記載された(認定事実3(2)ツ)。同年12月6日に開催された会合(別紙3の36)において,出席者は,①の納入予定メーカーを原告,②の納入予定メーカーを日本電気,③の納入予定メーカーを沖電気工業とし,「ちずv22」(乙153別紙15)には,①の「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」,②の「チャン」欄に「BC」,「CGリセット」欄に「BC」,③の「チャン」欄に「BC」,「CGリセット」欄に「AI」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 平成25年6月20日に開催された会合(別紙3の番号43)において,出席者は,①魚津市消防本部,②滑川市消防本部及び③上市町消防本部の物件が魚津市消防本部を代表消防と位置付けて広域化等がされるとの情報を共有し,①の納入予定メーカーである原告を①~③の納入予定メーカーとすることとし,「ちず」と類似の一覧表(乙227別紙3)には,①~③の「広域化」欄に「富山東」,「広域後」欄に「1」,「指令更新」欄に「CG」と記載された(乙234〔24~25頁〕,乙237〔22~23頁〕)。
ウ 富山県東部消防組合消防本部の物件(物件125)については,平成26年2月10日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件125に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(41) 遠野市消防本部の物件(物件126)
ア 遠野市消防本部の物件(物件126)については,平成22年12月当時,原告,沖電気工業及び日立国際電気がこれを希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)においても,納入予定メーカーが決まらず,「ちずv17」(乙153別紙10)には,その「チャン」欄を空欄のまま黄色マーカーが付され(認定事実3(2)タ),同年9月27日に開催された会合(別紙3の番号34)において,当該物件の納入予定メーカーを沖電気工業と原告に絞り込み,「ちずv20」(乙153別紙13)には,その「チャン」欄に「О,FG」,「9/27」欄に「Pen」と記載された(認定事実3(2)テ)。
平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の番号36)において,出席者は,上記物件の納入予定メーカーを原告とし,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「O,FG」,「CGリセット」欄に「CG」,「Pend再検討」の欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 遠野市消防本部の物件(物件126)については,平成26年2月19日に入札が行われ,原告が落札して機器納入メーカーとなった(なお,入札の結果は,物件126に係る別紙4の「入札業者名等」欄のとおりである。)。
(42) 白河地方広域市町村圏消防本部の物件(別紙4の総通番29)
ア 白河地方広域市町村圏消防本部の物件(別紙4の総通番29)については,平成22年12月,沖電気工業及び原告が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),日本無線も希望したが(認定事実3(2)カ~ケのほか,乙153別紙3),平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,出席者は,納入予定メーカーを原告として,「ちずv17」(乙153別紙10)には,その「チャン」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)タ)。平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 原告は,白河地方広域市町村圏消防本部の物件(別紙4の総通番29)の入札に向け,営業活動を行い,入札仕様に原告の独自仕様が反映された。
ところが,白河地方広域市町村圏消防本部の物件(別紙4の総通番29)については,平成24年1月26日に入札が行われ,≪H≫が落札して日立国際電気が機器納入メーカーとなった。
平成24年4月24日に開催された会合(別紙3の番号37)において,上記物件が話題となった。その際,原告の≪A3≫は,既設業者ということでタカを括っていたので,取れなかったなどと説明し,特に日立国際電気を責めるような発言をすることはなかった。「ちず」と類似の一覧表(乙227)には,「済み」及び「指令/一括」欄に「DK」と記載された(認定事実3(4)ア及び当該認定事実に掲げた証拠)。
(43) 尾三消防本部の物件(別紙4の総通番36)
ア 平成22年12月当時,沖電気工業は,尾三消防本部の物件(別紙4の総通番36)を希望し,日本電気及び日立国際電気は,豊明市消防本部の物件を希望していた(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2)。
平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)以降,尾三消防本部の物件と豊明市消防本部の物件が共同整備を予定していたこと(代表消防は尾三消防本部であった。)から,これを前提とした話合いが行われたところ,沖電気工業は,その納入予定メーカーになりたいと強く希望を表明し,平成23年8月30日に開催された会合(別紙3の番号33)において,日本電気らが降りる旨を表明し,沖電気工業が納入予定メーカーとなり,「ちずv19」(乙153別紙12)には,尾三消防本部の物件の「チャン」欄に「AI」,豊明市消防本部の物件の「決定」欄に「吸収」,「チャン」欄に「AI」とそれぞれ記載された(認定事実3(2)セ~ツ。以上につき,乙157〔7~14頁〕177〔21頁〕,180〔25~28頁〕,189〔3~14頁〕,196〔2~87頁〕,197〔5~22頁〕)。
平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,尾三消防本部及び豊明市消防本部の物件の「チャン」欄に「AI」,「CGリセット」欄に「AI」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ 尾三消防本部の物件(別紙4の総通番36)については,平成24年3月12日に入札が行われ,≪P≫が落札し,沖電気工業が消防救急デジタル無線機器の機器納入メーカーとなった。
(44) 三笠市消防本部の物件(別紙4の総通番50,252)
ア 三笠市消防本部の物件(別紙4の総通番50,252)については,平成22年12月,原告及び日立国際電気が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,出席者は,納入予定メーカーを原告として,「ちずv17」(乙153別紙10)には,その「チャン」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)タ)。平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「CG」,「CGリセット」欄に「CG」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ ところが,三笠市消防本部の物件(別紙4の総通番50)については,平成24年4月24日に入札が行われ,≪R≫(日本電気の子会社)が落札して日本電気が機器納入メーカーとなった。
平成24年4月24日に開催された会合(別紙3の番号37)において,上記物件が話題となった。その際,日本電気の≪B3≫は,取っちゃってすみませんなどと謝罪したところ,原告の≪A3≫は,営業できていなかったのだから原告側に非があり,≪B3≫を責めるつもりはないなどと発言した。「ちず」と類似の一覧表(乙227)には,「済み」欄に「BC」と記載された(認定事実3(4)ア及び当該認定事実に掲げた証拠)。
(45) 大船渡地区消防組合消防本部の物件(別紙4の総通番75)
ア 大船渡地区消防組合消防本部の物件(別紙4の総通番75)については,平成22年12月,沖電気工業及び日立国際電気が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,出席者は,納入予定メーカーを沖電気工業として,「ちずv17」(乙153別紙10)には,その「チャン」欄に「AI」と記載された(認定事実3(2)タ)。平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「AI」,[CGリセット」欄に「AI」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ ところが,大船渡地区消防組合消防本部の物件(別紙4の総通番75)について,平成24年5月11日に入札が行われたところ,原告がこれを落札して機器納入メーカーとなった。
平成24年9月3日に開催された会合(別紙3の番号40)においては,上記物件が話題となった。その際,沖電気工業の≪C2≫は,沖電気工業が納入予定メーカーであったが,原告に取られてしまったものである旨を説明したところ,≪A3≫は,その経緯(原告の≪A2≫は,平成23年3月11日の東日本大震災後,大船渡地区消防組合消防本部が所在する東北地区に所在する消防本部で原告が既設業者となっているものを回って支援し,そのついでに原告が既設業者となっていない消防本部も訪問するなどしていたところ,大船渡地区消防組合消防本部の物件については,沖電気工業の営業活動がうまくいっていなかったこともあり,同消防本部が原告の方を向くようになってしまっていた。)を説明するなどした上で謝罪した(認定事実3(4)エ及び当該認定事実に掲げた証拠)。
(46) 八幡市消防本部の物件(別紙4の総通番157)
ア 八幡市消防本部の物件(別紙4の総通番157)については,平成22年12月,沖電気工業が希望したが(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),譲渡する物件とされ,平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,出席者は,納入予定メーカーを日本無線として,「ちずv17」(乙153別紙10)には,その「チャン」欄に「EC」と記載された(認定事実3(2)タ)。平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「EC」,「CGリセット」欄に「EC」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ ところが,日本無線は,八幡市消防本部の物件(別紙4の総通番157)についてほとんど営業活動ができておらず,当該物件の発注者が既設業者を頼って沖電気工業に様々な問い合わせを行うようになった。
そのため,沖電気工業の≪C2≫は,日本無線の≪E1≫に対し,何度も営業活動をしっかり行うように注意喚起したが,日本無線は,その後も十分な営業活動を行うことができなかった。
その後,沖電気工業は,上記物件の発注者から沖電気工業と随意契約を締結したいと言われたため,≪C2≫を介して≪E1≫から沖電気工業の受注についての了解を得た。
ウ 八幡市消防本部の物件(別紙4の総通番157)については,平成24年7月30日,沖電気工業が発注者との間で随意契約を締結し,沖電気工業が機器納入メーカーとなった。
平成24年9月3日に開催された会合(別紙3の番号40)において,≪C2≫は,出席者に対し,上記イの経緯について説明し,「ちず」と類似の一覧表(乙227別紙1)には,「済み」欄に「AI」と記載された(認定事実3(4)エ及び当該認定事実に掲げた証拠)。
(47) 土佐市消防本部の物件(別紙4の総通番136,229)
ア 土佐市消防本部の物件(別紙4の総通番136,229)については,平成22年12月,沖電気工業が希望し(認定事実3(2)ウ~オのほか,乙153別紙1・2),その後,日立国際電気及び日本無線も希望したことから,沖電気工業は譲渡する物件とし,(認定事実3(2)カ~ケのほか,乙153別紙3),平成23年6月28日に開催された会合(別紙3の番号31)において,出席者は,納入予定メーカーを日立国際電気として,「ちずv17」(乙153別紙10)には,その「チャン」欄に「DK」と記載された(認定事実3(2)タ)。平成23年12月6日に開催された会合(別紙3の36)においても,上記のとおりとされ,「ちずv22」(乙153別紙15)には,その「チャン」欄に「DK」,「CGリセット」欄に「DK」と記載された(認定事実3(2)ナ)。
イ ところが,日立国際電気は,土佐市消防本部の物件(別紙4の総通番136,229)について営業活動ができていなかった。
沖電気工業の≪C2≫は,日立国際電気の≪D1≫に対し,何度も営業活動をしっかり行うように注意喚起したが,その後も,日立国際電気が営業活動を行うことができなかったことから,≪D1≫との間で沖電気工業が当該物件の納入予定メーカーとなる旨を了解し合った(乙229〔25~26頁〕)。
ウ 土佐市消防本部の物件(別紙4の総通番136)については,平成24年6月21日に入札が行われ,沖電気工業が落札して機器納入メーカーとなった。
平成24年9月3日に開催された会合(別紙3の番号40)において,≪C2≫は,出席者に対し,上記イの経緯について説明し,「ちず」と類似の一覧表(乙227別紙1)には,「済み」欄に「AI」と記載された(認定事実3(4)エ及び当該認定事実に掲げた証拠)。土佐市消防本部の物件(別紙4の総通番229)については,平成25年2月25日に入札が行われ,沖電気工業が落札して機器納入メーカーとなった。
5 会合の結果決定された納入予定メーカーと入札結果等
(1) 前記3の各会合の結果,特定消防救急デジタル無線機器の各入札物件につき,納入予定メーカーとなった者は,別紙4の「納入予定メーカー」欄記載の会社であった(認定事実3のほか,乙153〔別紙15〕,254,255参照)。
(2) 別紙4の「本件合意に基づいて納入した物件」に該当する物件516件から①随意契約の方法により発注された物件27件,②公募型又は指名型のプロポーザル方式により発注された物件17件及び③予定価格が不明である物件2件の合計46件を除いたもの(合計470件)の平均落札率は,93.2%であった(乙260)。
また,上記470件のうち,被告が「本件合意に基づいて納入した物件」と認定した263件の平均落札率は,93.47%であった。
6 会合の事実上の消滅
原告,沖電気工業,日立国際電気及び日本無線は,平成26年4月7日から同月8日にかけて,4社による談合を指摘する旨の匿名文書の受領を契機として社内調査を開始した。そのため,沖電気工業の≪C1≫及び≪C2≫,日立国際電気の≪D1≫及び≪D2≫並びに日本無線の≪E1≫は,平成26年4月9日以後,他の会合出席者と連絡を取らないようになり,4社による会合の開催は事実上終了した(前提事実(4)エを参照)。
第2 事実認定の補足説明
1 会合の内容について
(1) 平成21年8月21日の会合について
原告は,平成21年8月21日の会合において,≪A7≫らが,原告において市場を分け合うことに前向きであるなどと発言していない旨を主張する。
しかしながら,平成21年8月21日に開催された会合(別紙3の番号3)に出席した≪C1≫(乙75)及び≪C2≫(乙76)は,≪A7≫らが原告において3社で受注調整して市場を分け合うことに前向きである旨を発言したなどと供述しており,これに沿う≪C2≫作成の報告書(乙74)もあることに照らすと,≪C1≫及び≪C2≫の上記供述の信用性は十分であり,これらによれば,認定事実2(1)アのとおり認められる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(2) 平成21年9月14日の会合について
原告は,≪A2≫が受注調整を行うという方針について了解し合いたい旨の発言はしていない旨を主張し,これに沿う証拠(甲102,証人≪A2≫)もある。
しかしながら,①平成21年9月14日に開催された会合(別紙3の番号4)に出席した沖電気工業の≪C3≫(乙59〔21~27頁〕)及び日本電気の≪B2≫(乙63〔33~44頁〕)は,「原告の≪A2≫が,当該会合において,消防救急デジタル無線機器の整備について3社で受注調整を行うという方針につき,次回の会合で消防救急デジタル無線機器の営業責任者を連れてきて了解し合いたいと提案した」旨を供述しており,②当該会合後に≪C3≫が≪C1≫らに対して送信した報告メール(乙66)には,≪A2≫の発言として「3社でクローズする策の検討について同意を頂きたい。HK,Jの参入は絶対阻止したい。上記を次の月曜会(10/19)で検討したい」との記載があること,③当該会合後に≪B2≫が≪B6≫(消防・防災ソリューション事業部第一部ビジネス推進部長)及び≪B1≫に対して送信した報告メール(乙77)にも,「第一のテーマは,プレーヤーを増やさないための対策がメインとなりそうです」との記載があることに照らすと,上記②・③の事実に沿う上記①の≪C3≫及び≪B2≫の供述の信用性は十分であり,これらによれば,認定事実2(1)イのとおり認められる。
原告の上記主張及び前掲証拠は,以上の説示に反するものであるから,いずれも採用することができない。
(3) 平成21年10月19日の会合について
ア 原告は,平成21年10月19日の会合において,全国で発注される特定消防救急デジタル無線機器の割り振り方法等についての意見交換はされておらず,≪A2≫が実証試験に関して「いきなり市場を壊すことはお互いに避けたい。各社バランスよくシェアできないか」と提案したものの,他社が実証試験に対して受注調整に応じるか否かは判然としない状況であり,継続的に審議していくということで終了した旨を主張し,これに沿う証拠(甲1,102,証人≪A2≫)もある。
イ しかしながら,次の点に照らすと,次の例で指摘した関係者の供述の信用性は十分である。そして,これらによれば,原告の≪A2≫は,上記会合において,全国で発注される消防救急デジタル無線機器の整備の割り振り方法として,その機器の種類ごとに納入予定メーカーを決めるという方法を提案したが日本電気の≪B1≫からはこれに消極の意見が出され,別の方法が提案されたため,引き続き協議することになった(詳細は認定事実2(2)ア参照)と認められる。
(ア) 平成21年10月19日に開催された会合(別紙3の番号5)に出席した沖電気工業の≪C1≫(乙84〔1~17頁〕)及び≪C2≫(乙76〔23~50頁〕),日本電気の≪B2≫(乙78〔16~32頁〕)及び≪B4≫(乙83〔1~32頁,37~38頁〕)は,要旨「原告の≪A2≫が,その機器の種類ごとに納入予定メーカーを決めるという方法を提案したところ,日本電気の≪B1≫が,「それは難しい」旨等を述べた」,「日本電気の≪B1≫の上記発言は,顧客の志向がどのメーカーを向いているかによってどのメーカーがチャンピオンであるかを判断するようにしたいという趣旨である」などと供述しており,これらの供述内容はお互いに符合している。
(イ) ≪C2≫が上記会合の内容に関して作成したメモ(乙79)には,次のような記載があり,これらの記載は,上記例の供述に沿うものといえる。
a 「総論」として「消防デジタル無線については,指令台市場を寡占している3社(O,N,FG)の枠組みでスキームを組み,短期の市場を価格維持しながら乗り切っていくという大枠の考え方で整合した」との記載
b 「機器別供給の可否について」として「FGから基地局,回線制御,車載無線,携帯無線を分けた横串でのアライアンスの可否について提案がなされたが,NECよりそれは難しい旨の回答があった。」との記載
c 「Nの意思表示」として「この消防デジタル無線市場についてはダーティーな市場にしたくない。顧客志向に準じ,自主判断ができるようにしたい(FGに対するジャブか?)。各社の仕様差別化で,価格破壊が起きないようにしたい」との記載がある。
(ウ) また,≪A2≫が上記会合の内容に関して作成したメモ(甲1)には,次のような記載があり,これらの記載も≪C2≫作成のメモ(乙79)中の上記(イ)の記載と符合するものといえる。
a 「各社対応について」として,「いきなり市場を壊すことはお互いに避けたい。各社バランスよくシェアできないか(≪A2≫)」,「客の意向が尊重されるべき(≪B1≫)」との記載
b 「今後について」として「継続的に審議していくことで一致」との記載
c 「市場を守る観点では各社共通の認識あり」との記載
d 「Nは実証試験と本商談を分けて考えている。→実証試験は無線既設重視」
ウ したがって,原告の上記アの主張及び前掲証拠は,以上の説示に抵触する限度で,採用することができないというべきである。
(4) 平成21年11月16日及び同年12月21日の会合について
ア 原告は,平成21年11月16日及び同年12月21日の会合においても,実証試験の物件について納入予定メーカーを認識し合ったこと等はなく,他の2社(日本電気及び沖電気工業)の出席者がこれら2回の会合で合意が成立したとは供述していない旨を主張し,これに沿う証拠(甲102,証人≪A2≫)もある。
イ しかしながら,平成21年11月16日に開催された会合(別紙3の番号6)については,≪A2≫が作成した当該会合の内容に関するメモ(甲2)にも,原告からの情報提供として「(HKにつき)①神戸への執着あり,②入札方法によって全件安値の可能性あり,③神戸次第で調整の道はある」との記載,「当面,設計会社囲い込みによる仕様封じでHK対策を行う」,「対HK対策として,設計3社(≪J≫=FG,≪K≫=N,≪Ⅰ≫=O)からの情報取りを行うこととする」との記載,≪A2≫の所感として「※京都,神戸情報提供により当社からO,Nにボールを返した形となった。しばらく結論は出さない可能性があり,設計会社の契約状況により何らかの動きがありそう。」との記載があり,当該会合に出席した≪C2≫作成のメモ(乙86)にもこれと同旨の記載がある。そうすると,これらの記載及びこれらに沿う関係者の供述(認定事実2(2)イに掲げたもの)に照らせば,認定事実2(2)イの事実が認められるところであり,これによれば,当該会合においても,出席者が実証試験の物件について納入予定メーカーを認識し合うなどしたといえる。
ウ また,平成21年12月21日に開催された会合(別紙3の番号7)についても,≪A2≫作成の当該会合の内容に関するメモ(甲3)には,「先行3件の設計が春日=≪K≫,鳥取=≪J≫,岐阜=≪Ⅰ≫になったことを踏まえ,次回3件について,京都=≪J≫◎/神戸=≪Ⅰ≫○,≪K≫△,玉野=≪K≫○,≪Ⅰ≫△」,「次回WTO案件の予算上限が判らないため設計会社の応札数字が読めない件について,【京都=≪J≫→N】,【神戸=≪Ⅰ≫→O】,【玉野=≪K≫→FG】が担当で見積額を確認する」との記載,「『JRCは間に合わない』で片つけていいのか。戦略として低価格で市場を壊しに来ることは明白。実証試験は来ないと決め付けるには尚早。(FG)」,「→確かにHSを含めて6社で次年度以降のアライアンスを含めて包括的にやらないと市場破壊避けられない。他の2社に3社連合をオープンにし出方を見るのもいいのでは。ただ,各社コンプラの問題もあるので如何か。(O)」,「→総論では賛成。ただ,本部で如何に統制を取れるかにかかっている。今までのように『現場の声』を入れるようでは機能しない。コンプラの面では価格統制(札)をすればよい。(FG)」,「→物件物件で重いがあるから他の2社を含めた「漁獲高制」にする方法もある。社内に持帰って検討する。(N)」との記載,次回までの確認事項として「①継続して情報収集(対設計会社),②2社に対して鈴をつける,③実証試験は失敗しない」との記載があり,当該会合に参加した≪C2≫作成のメモ(乙92)にも同趣旨の記載がある。これらの記載及びこれに沿う関係者の供述(認定事実2(2)ウに掲げたもの)に照らせば,認定事実2(2)ウの事実が認められるところであり,これによれば,当該会合においても,出席者が実証試験の物件について納入予定メーカーを認識し合うなどしたといえる。
エ したがって,原告の上記アの主張及び前掲証拠は,以上の説示に反するものであり,採用することができない。
(5) 平成22年1月25日の会合について
原告は,平成22年1月25日の会合において,原告の≪A2≫と沖電気工業が「指令3社ではだめ。実証試験を含む本事業について全社で協議すべき」と主張したところ,日本電気が難色を示し,これに応じなかったと主張し,これに沿う証拠(甲4,102,証人≪A2≫)もある。
しかしながら,平成22年1月25日に開催された会合(別紙3の番号8)について,①≪A2≫が作成した当該会合の内容に関するメモ(甲4)には,「メーカー2社の対応について」として「指令3社ではため。実証実験を含む本事業について全社で協議すべき(FG,O)。指令既設権で地割→うちJ,Hにシェアする」,「※FG,Oは同調。Nは難色→事業部長と相談し検討。検討結果でO-Nの事業巣部長間で協議」との記載があり,②当該会合に出席した日本電気の≪B2≫は,上記記載に関し,要旨「≪A2≫から,①3社に加え,2社とも協調して,実証試験6物件だけではなく実証試験後に順次発注される全国の800消防本部等の消防救急デジタル無線システムも対象にして受注調整のための協議をすべきであり,②指令システムの既設業者が誰なのかに基づいて消防救急デジタル無線システムを受注すべき社を決めた上で,3社がそれぞれ自社が受注すべきとされた物件の中からいくつかを日本無線と日立国際電気に分け与えるとの提案があり,沖電気工業の≪C1≫らがこれに賛成したが,≪B2≫は,上記提案に難色を示し,消防・防災ソリューション事業部長の≪B7≫に相談して検討してみると発言した」と供述している。これらの証拠に加え,これに沿う関係者の供述(認定事実3(1)ア)に照らすと,認定事実3(1)アのとおり認められる。そうすると,日本電気の≪B2≫は,当該会合において,上記のような≪A2≫の提案に難色を示したものの,持ち帰って検討すると発言したのであるから,当日の時点で日本電気が上記提案に応じないとの意思を示したとはいえない。
原告の上記主張及び前掲証拠は,以上の説示に反するものであり,採用することができない。
(6) 平成22年3月15日の会合について
原告は,平成22年3月15日の会合において,日本無線を含めた6社協調については,日本電気によって拒絶された旨を主張する。
しかし,≪A2≫作成の上記会合の内容に関するメモ(甲6)によっても,日本電気が全国で発注される消防救急デジタル無線機器の整備について日本無線を含めた6社での需給調整を明確に拒否した旨の記載はなく,かえって,上記会合において「3社で纏めた案」として日本無線に対しても一定件数を提供する案の記載や「もう少し粘ってあくまでもN社を巻き込んでの6社強調を確認したうえで先方の可能性を引き出せるかを見極める場とした」との記載がある上,当該会合に出席した≪C2≫は,「日本無線については,確か日本電気の≪B2≫さんが,特に前振りなどはなく,『日本無線は大丈夫だろう』という話があり,沖電気工業からも日本無線は実証試験には間に合わないのではないかと話した記憶がある」旨を供述していること(乙98〔70頁〕)にも照らすと,関係証拠(認定事実3(1)ウに掲げたもの)の信用性は十分であり,これらによれば,認定事実3(1)ウのとおり認められる。したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(7) 平成22年4月14日の会合について
被告は,平成22年4月14日の会合において,原告の≪A2≫が,大阪市消防局の物件について,≪G≫に落札させたい旨の希望を表明するとともに,同様に同物件について積極的に営業活動を行っていた日本電気の≪B3≫に対し,日本電気との話合いを持ちかけた旨を主張し,これに沿う証拠(乙102〔14~16頁〕)もある。
しかし,原告は,上記事実を否認している上,前掲証拠は,上記会合に≪B2≫に代わって出席した≪B3≫が,この日に具体的な話されていた内容は思い出せないとしながら,≪A2≫作成のメモ(甲7)中の「今後の予定」として記載された部分に基づいて供述したものであり,≪A2≫から「誰に連絡すればいいですか」と聞かれたのは,上記会合よりも後の別の機会であったかもしれない旨を供述していることに照らすと,前掲証拠のみをもって,被告の上記主張を採用することはできない。
(8) 平成22年6月18日の会合について
原告は,平成22年6月18日の会合において,≪A2≫が,沖電気工業に対し,「お付き合い入札」をしてくれるよう依頼したことはない旨を主張し,これに沿う証拠(甲102,証人≪A2≫)もある。
しかし,認定事実4(3)(岡山市消防局の物件(総通番2)について)に沿う≪C2≫の供述(乙122,123)は,その前後における≪A2≫又は≪A3≫と≪C2≫又は≪B3≫との間のメールの内容(乙123〔添付資料1~4,14〕)等に照らし,その信用性は十分であり,これに反する前掲証拠は採用することができない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(9) 平成22年9月1日及び同月7日の会合について
原告は,平成22年9月1日及び同月7日の会合において,日本電気が大阪市消防局の物件(単独)につき納入予定メーカーとなることを諦める旨を発言したことはなく,≪A2≫がこの発言を前提とした発言をしたこともない旨を主張し,これに沿う証拠(甲102,証人≪A2≫)もある。
しかしながら,上記会合に出席した沖電気工業の≪C1≫(乙104)及び≪C2≫(乙126)は,その前後の経緯を含めて認定事実3(1)ク(イ)及び同コに沿う供述をしており,日本電気の≪B2≫(乙124)も上記会合において大阪市消防局の物件について納入予定メーカーの話合いをしたことは認める旨の供述をしていることに照らすと,少なくとも証拠(認定事実3(1)ク(イ)及び同コに掲げるもの)によれば,上記各事実が認められるというべきである。
そうすると,原告の上記主張及び前掲証拠は,上記各事実に反するものであるから,採用することができない。
(10) 平成22年11月24日の会合について
原告は,平成22年11月24日の会合において,沖電気工業が一覧表を用いた調整を開始しようとしたことから,≪A2≫は,これを拒絶するとともに,その際に同行していた≪A3≫に対して,今後会合には出席しないよう指示した旨を主張し,これに沿う証拠(甲9,102,証人≪A2≫)もある。
しかしながら,平成22年11月24日に開催された会合(別紙3の番号21)に出席した沖電気工業の≪C1≫(乙147)及び≪C2≫(乙148)並びに日本無線の≪E1≫(乙150)は,いずれも,上記会合において,≪C1≫が納入予定メーカーの決定方法として1件1件みていくことを提案し,最終的に出席者全員が当該提案に同意した,≪C2≫がその基礎となる資料を用意することとなった旨の認定事実3(2)アに沿う供述をしており,これは,その後のちずの作成状況等(認定事実3(2)イ・ウ)とも符合している。加えて,原告の≪A3≫も,平成23年11月22日の会合以外で,会合の最中に怒ったり言い争ったり,会議内容や主旨に異議を唱えたりした状況にあったことの記憶がなく,≪A2≫と≪A3≫の二人が怒って途中で退席したこともない旨の供述をしている(乙29)。そうすると,≪C1≫,≪C2≫及び≪E1≫の上記供述(乙147,148,150)の信用性は十分であり,これらによれば,認定事実3(2)アの事実が認められる。
原告の上記主張及び前掲証拠は,以上の認定に反するものであり,採用することができない。
(11) 平成24年5月30日の会合について
原告は,平成24年5月30日の会合が単なる飲み会であった旨を主張する。
しかしながら,証拠(認定事実3(4)ウに掲げたもの)によれば,平成24年5月30日に開催された会合(別紙3の番号38)においては,出席者は,日本電気の社内調査等の状況を踏まえ,これまでに決定した納入予定メーカーはそのままとし,日本電気を納入予定メーカーとした消防本部を改めて割り振りし直すことはしないこととし,引き続き,4社で,受注調整を継続し,決定した納入予定メーカーが納入できるように協力し合っていくこととするなど,出席者間で認定事実3(4)ウのとおりのやり取りがされたものと認められる。
したがって,上記会合が単なる飲み会であったとする原告の上記主張は採用することができない。
2 会合への≪A2≫の出席状況等について
(1) 平成22年12月21日の会合について
原告は,≪A2≫が平成22年12月21日の会合に参加していなかった旨を主張し,これに沿う証拠(甲102〔44頁〕,112,証人≪A2≫〔43頁〕)もある。
しかしながら,証拠(乙154,155,187)によれば,平成22年12月21日に開催された会合(別紙3の番号23)に出席した≪C1≫(乙154),≪C2≫(乙155,187)が,当該会合に原告からは≪A3≫に加えて≪A2≫が出席していた旨を供述しており,当該会合は午後4時から午後6時の予定で開催されたものと認められる。また,証拠(乙318~320)によれば,同日のPMO会議は,同日の午前10時から開催され,遅くとも午前中には終了したこと,同日の会合(月曜会)に出席した≪A3≫も上記PMO会議に出席したことが認められる。そうすると,≪A2≫は,仮に同日のPMO会議に出席していたとしても,同日の会合(月曜会)に出席することは可能であったといわざるを得ず,≪A2≫が同日の社内の会議に出席していたことを理由に同日の会合(月曜会)に出席していなかった旨の原告指摘に係る前掲証拠は,信用性に乏しく採用することができない。
したがって,≪C1≫及び≪C2≫の前記各供述によれば,≪A2≫は平成22年12月21日の会合(月曜会)に出席していたと認められ,これに反する原告の上記主張は採用することができない。
(2) 平成23年2月21日の会合について
被告は,≪A2≫が平成23年2月21日の会合に参加した旨を主張し,これに沿う証拠(乙156,159,165)もある。
しかしながら,前掲証拠は,当該会合に出席した≪B3≫(乙156),≪C2≫(乙159,165)が,当該会合に原告からは≪A3≫に加えて≪A2≫が出席していた旨を供述するものであり,≪A2≫の発言に関するものを含むものであるが,≪A2≫の当該発言は当該会合固有の事情を伴うものではない。かえって,当該会合に出席した≪E3≫(乙162)は,「原告の≪A3≫さん又はもう1人いたかもしれません」と述べるにとどまっており,また,≪A2≫は,同日,午後1時から社内の消防デジタル開発工程会議に出席し,午後3時からは社内で≪G≫との会議に出席していたから,上記会合には出席していないと述べ(甲102,証人≪A2≫),これに沿う証拠(甲14,15)もあることからすると,≪A2≫の上記供述の信用性は直ちに否定し難いというべきである。
以上に照らすと,前掲証拠中,被告の上記主張に沿う部分は直ちに採用し難いというべきである。被告の上記主張は採用することができない。
(3) 平成23年6月9日の会合について
被告は,≪A2≫が平成23年6月9日の会合に出席していた旨を主張し,これに沿う証拠(乙183,185,187)もある。
しかしながら,掲記の証拠によれば,≪A2≫は,平成23年6月9日,鉄道で仙台に移動し(甲16〔領収書〕),順次,名取市消防本部,亘理地区行政事務組合消防本部を訪問した後,仙台から大阪に飛行機で移動し(甲17),大阪府吹田市内のホテルに宿泊し(甲16〔領収書〕),同月10日午前零時36分に名取消防本部宛てに「今日,訪問時にご依頼がありました件について」等の記載があるメール(甲114)を送信し,同日,大阪から東京に飛行機で移動したこと(甲17)が認められる。また,≪A2≫は,同月9日午後5時48分に≪B3≫と電話し,同日午後7時43分に≪C1≫と電話した(乙247)。
そうすると,被告の上記主張に沿う前掲証拠は,平成23年6月9日に開催された会合(別紙3の番号29)に出席した≪C1≫(乙185),≪C2≫(乙187)及び≪B3≫(乙183)が,同日の会合後に同月10日の入札物件に関する打合せをしたことに絡めて同月9日の月曜会に≪A2≫が参加していたことを述べるものであるが,上記認定事実と齟齬する点において,その信用性には疑問があるといわざるを得ない。
したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
(4) 平成24年2月1日の協議
原告は,≪A2≫が,平成24年2月1日,≪C1≫と会って話したことはない旨を主張し,これに沿う証拠(甲20,21,102,証人≪A2≫)もある。
しかしながら,≪C1≫(乙257)は,認定事実3(2)ニに沿う供述をしており,これを裏付ける手帳(乙253の1・2)もある。他方,原告指摘のメール(甲20,21)は,≪A2≫が≪C1≫と同日にあったことと直ちに抵触するものではない。そうすると,≪C1≫の上記供述の信用性は十分であり,これによれば,認定事実3(2)ニのとおり認めることができる。
したがって,以上に反する原告の上記主張は,採用することができない。
3 ≪A3≫による会合への出席について
原告は,平成22年11月24日の会合後,≪A2≫が≪A3≫に対して月曜会に出席しないように指示しているから,以降の≪A3≫の会合参加は個人として行った行為であり,原告の行為ではない旨主張し,これに沿う証拠(甲9,102,証人≪A2≫)もある。
しかし,平成22年11月24日に開催された会合の後に≪A2≫が≪A3≫に対して上記の指示を行ったとの事実が認められないことは,前記1(10)のとおりである。かえって,前提事実及び認定事実によれば,①平成22年11月24日以降の月曜会には,原告の本社会議室で開催されたものが複数回あること(別紙3の番号25,29,34,40,45),②≪A3≫は,当時,情報通信システム営業統括部営業推進部担当部長(平成23年10月1日以降は,同部消防システム推進部長等)であり,月曜会の内容については,消防デジタル無線ワーキンググループ等において,≪A1≫や≪A2≫らと情報共有を行っていたこと(前提事実(1)ア,認定事実3(3)),③それにもかかわらず,≪A1≫や≪A2≫らが≪A3≫の月曜会への出席について異論等を述べたことはうかがわれないこと,④≪A3≫は,月曜会に出席して情報交換をするだけでなく,平成23年11月22日の月曜会(別紙3の番号35)においては,他の出席者に対し,日本電気のOEM供給の件を理由に「ちず」を白紙に戻すべき旨を発言し,同年12月6日の月曜会(別紙3の36)において,納入予定メーカーの決め直しをさせるという行動にも及んでいることに照らすと,≪A3≫が平成22年11月24日以降の月曜会に出席したことは,原告において了承されていたものと推認することができる。
以上に反する原告の上記主張は,採用することができない。

以上

(別紙4、7 省略)
注釈 《 》部分は,公正取引委員会事務総局において原文に匿名化等の処理をしたものである。

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