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独禁法3条後段
令和4年(措)第2号
名宛人 別表1の名宛人目録記載のとおり
公正取引委員会は,上記の者らに対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき,次のとおり命令する。
なお,主文,理由,別紙1及び別表2中の用語のうち,別紙2「用語」欄に掲げるものの定義は,別紙2「定義」欄に記載のとおりである。
主 文
1 別表1記載の25社(以下「25社」という。)は,それぞれ,次の事項を,取締役会(会社法(平成17年法律第86号)第2条第7号に規定する取締役会設置会社でない場合にあっては,株主総会)において決議しなければならない。
(1) 別紙1記載のデータプリントサービス(以下「特定データプリントサービス」という。)について,25社及び別表2記載の事業者(以下「26社」という。)が,遅くとも平成28年5月6日以降(別表3記載の事業者にあっては,「期日」欄記載の年月日以降)共同して行っていた,受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
(2) 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,特定データプリントサービスについて,受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を行うこと。
(3) 今後,相互に,又は他の事業者と,特定データプリントサービスの受注に関する情報交換を行わないこと。
2 25社は,それぞれ,前項に基づいて採った措置を,自社を除く24社及び日本年金機構に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 25社は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,特定データプリントサービスについて,受注予定者を決定してはならない。
4 東洋紙業株式会社,ナカバヤシ株式会社,共同印刷株式会社,株式会社ビー・プロ及び株式会社谷口製作所(以下「東洋紙業ほか4社」という。)は,それぞれ,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については,前項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず,かつ,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 官公需の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成又は改定及び自社の従業員に対する周知徹底
(2) 官公需の受注に関する独占禁止法の遵守についての,データプリントサービスの入札に関与する者に対する定期的な研修及び法務担当者等による定期的な監査
5 東洋紙業ほか4社は,第1項,第2項及び前項に基づいて採った措置を,25社のうち東洋紙業ほか4社を除く20社は,第1項及び第2項に基づいて採った措置を,それぞれ,速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
理 由
第1 事実
1 関連事実
(1) 名宛人等の概要
ア 25社は,それぞれ,別表1の「本店の所在地」欄記載の地に本店を置き,データプリントサービスを請け負う者である。
イ 名宛人以外の別表2記載の事業者は,「本店の所在地」欄記載の地に本店を置き,データプリントサービスを請け負っていた者であるが,「期日」欄記載の年月日以降,「事由」欄記載の事由により,データプリントサービスを請け負う事業を営んでいない。
(2) 特定データプリントサービスの発注方法等
ア 日本年金機構は,特定データプリントサービスについて,一般競争入札又は見積り合わせ(以下「入札等」という。)の方法により発注していた。
また,日本年金機構は,特定データプリントサービスの大部分を,毎年,発注していた。
イ 日本年金機構は,一般競争入札を,1社落札入札又は複数社落札入札の方法により行っていたところ
(ア) 1社落札入札においては,予定価格の制限の範囲内で最も低い入札価格を提示した者を
(イ) 複数社落札入札においては,入札参加者に,調達予定数量の範囲内で受注予定数量及び入札価格を提示させ,予定価格の制限の範囲内の入札価格を提示した者のうち,低い入札価格を提示した者から順次調達予定数量に達するまでの者を
それぞれ受注者としていた。
ウ 一般競争入札による受注者がいない又は一般競争入札による受注者の受注予定数量が調達予定数量に達しない場合に,日本年金機構は,見積り合わせを行っていたところ,見積り合わせにおいては,予定価格の制限の範囲内で最も低い見積価格を提示した者を受注者としていた。
2 合意及び実施方法
26社は,遅くとも平成28年5月6日以降(別表3記載の事業者にあっては,「期日」欄記載の年月日以降),特定データプリントサービスについて,受注価格の低落防止等を図るため
(1) ア 受注予定者を決定する
イ 受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に
(2) ア 別表4記載の6社(以下「6社」という。)は,別表4「期間」欄記載の期間,特定データプリントサービスごとに,別表5記載の22社から,別表5「期間」欄記載の期間における受注希望を確認する
イ 6社は,別表4「期間」欄記載の期間,会合を開催するなどして,特定データプリントサービスごとに,26社の受注希望,毎年発注される特定データプリントサービスについては26社の過去の受注実績,新たに発注される特定データプリントサービスについては26社の日本年金機構に対する仕様の作成等への協力状況等を勘案して
(ア) 1社落札入札の特定データプリントサービスについては,受注予定者及び受注予定者の入札価格
(イ) 複数社落札入札の特定データプリントサービスについては,受注予定者,受注予定者ごとの受注予定数量並びに受注予定者の中で最も高い価格で入札を行う者及びその者の入札価格
を決定する
ウ 6社は,前記イで決定した受注予定者,受注予定数量及び受注予定者の入札価格を6社以外の入札参加者に連絡する
エ 受注予定者は
(ア) 1社落札入札の特定データプリントサービスについては,前記イで決定した受注予定者の入札価格
(イ) 複数社落札入札の特定データプリントサービスについては,受注予定者の中で最も高い価格で入札を行う者は前記イで決定した入札価格及び受注予定数量,それ以外の受注予定者は前記イで決定した受注予定者の中で最も高い価格で入札を行う者の入札価格よりも低い価格及び受注予定数量
を提示する
オ 受注予定者以外の入札参加者は
(ア) 1社落札入札の特定データプリントサービスについては,前記イで決定した受注予定者の入札価格よりも高い価格
(イ) 複数社落札入札の特定データプリントサービスについては,前記イで決定した受注予定者の中で最も高い価格で入札を行う者の入札価格よりも高い価格
を提示する
ことなどにより,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
3 実施状況等
(1) 6社は,別表4「期間」欄記載の期間
ア 特定データプリントサービスの入札等に新規に参加する者に対して前記2⑴の合意への参加を要請する
イ 受注予定者を決定するに当たり,受注を希望する者の数が多く,受注を希望する者を希望どおりに受注予定者にすることができない場合,受注予定者以外の者に業務の一部又は全部を下請に出すことなどを条件にして受注予定者とする
ことなどにより,前記2⑴の合意の実効を確保していた。
(2) 26社は,前記2により,特定データプリントサービスのほとんど全てを受注していた。
4 前記2の行為の取りやめ
(1) 別表6記載の事業者は,平成30年2月9日までに,ナカバヤシ株式会社に対し,特定データプリントサービスを請け負う事業から撤退する旨を伝え,別表6「期日」欄記載の日以降,特定データプリントサービスの入札等に参加していないことから,同日以降,前記2の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(2) 令和元年10月8日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行ったところ,同日以降,26社のうち別表6記載の事業者を除く25社は,前記2の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
第2 法令の適用
前記事実によれば,26社は,共同して,特定データプリントサービスについて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,特定データプリントサービスの取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,この行為は,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また,前記の違反行為は既になくなっているが,25社については,いずれも,独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり,違反行為が長期間にわたって行われていたこと等の諸事情を総合的に勘案すれば,特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって,25社に対し,独占禁止法第7条第2項の規定に基づき,主文のとおり命令する。
令和4年3月3日
委員長 古 谷 一 之
委 員 山 本 和 史
委 員 三 村 晶 子
委 員 青 木 玲 子
委 員 小 島 吉 晴