公正取引委員会審決等データベース

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独立行政法人地域医療機能推進機構が発注する医薬品の入札参加業者に対する件

独禁法3条後段

令和4年(措)第3号

排除措置命令

東京都千代田区内神田一丁目12番1号
 アルフレッサ株式会社
  同代表者 代表取締役 《 氏  名 》

東京都世田谷区代沢五丁目2番1号
 東邦薬品株式会社
  同代表者 代表取締役 《 氏  名 》

名古屋市東区東片端町8番地
 株式会社スズケン
  同代表者 代表取締役 《 氏  名 》

公正取引委員会は,上記の者らに対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき,次のとおり命令する。
なお,主文,理由,別表1及び別表2中の用語のうち,別紙「用語」欄に掲げるものの定義は,別紙「定義」欄に記載のとおりである。

主    文
1 アルフレッサ株式会社,東邦薬品株式会社及び株式会社スズケンの3社(以下「3社」という。)は,それぞれ,次の事項を,取締役会において決議しなければならない。
⑴ア 独立行政法人地域医療機能推進機構(以下「JCHO」という。)が平成28年に別表1のとおり実施した一般競争入札(以下「平成28年入札」という。)の調達内容である医薬品(以下「平成28年入札医薬品」という。)のうち「藤本製薬」の医薬品を除く医薬品について,3社及び株式会社メディセオの4社(以下「4社」という。)が,平成28年6月8日以降共同して行っていた,受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定し,受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるように協力する旨の合意が消滅していることを確認すること。
 イ JCHOが平成30年に別表2のとおり実施した一般競争入札(以下「平成30年入札」という。)の調達内容である医薬品(以下「平成30年入札医薬品」という。)について,4社が,平成30年6月1日以降共同して行っていた,受注予定者を決定し,受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるように協力する旨の合意が消滅していることを確認すること。
⑵ 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,JCHO又はJCHOが運営する病院が購入する医薬品について,受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を行うこと。
⑶ 今後,JCHO又はJCHOが運営する病院が購入する医薬品に係る予定価格の設定のために参考とされる見積価格(以下「参考見積価格」という。)をJCHOに提示するに当たり,相互に,又は他の事業者と,参考見積価格に関する情報交換を行わないこと。
2 3社は,それぞれ,前項に基づいて採った措置を,自社を除く2社,JCHO及びJCHOが運営する病院に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 3社は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,JCHO又はJCHOが運営する病院が購入する医薬品について,受注予定者を決定してはならない。
4 3社は,今後,JCHO又はJCHOが運営する病院が購入する医薬品に係る参考見積価格をJCHOに提示するに当たり,それぞれ,相互に,又は他の事業者と,参考見積価格に関する情報交換を行ってはならない。
5 3社のうち東邦薬品株式会社は,次の(1)及び(2)の事項を行うために必要な措置を,株式会社スズケンは,次の(2)の事項を行うために必要な措置を,それぞれ,講じなければならない。この措置の内容については,前2項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず,かつ,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
⑴ JCHO又はJCHOが運営する病院が購入する医薬品の受注に関する独占禁止法の遵守についての法務担当者による定期的な監査
⑵ 独占禁止法違反行為に係る調査への協力を行った者に対する適切な取扱いを定める規程の作成
6 3社は,それぞれ,第1項,第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

理    由
第1 事実
1 関連事実
⑴ 名宛人等の概要
ア 3社は,それぞれ,肩書地に本店を置き,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。旧薬事法。以下「薬機法」という。)の規定に基づき都道府県知事の許可を受け,医薬品等の卸売業を営む者である。
イ 名宛人以外の株式会社メディセオは,東京都中央区八重洲二丁目7番15号に本店を置き,薬機法の規定に基づき都道府県知事の許可を受け,医薬品等の卸売業を営む者である。
⑵ 入札方法等
ア JCHOは,独立行政法人地域医療機能推進機構法(平成17年法律第 71号)の規定に基づき,平成26年4月1日に,独立行政法人年金・健 康保険福祉施設整理機構を改組して設立された組織であり,東京都港区に 主たる事務所を置き,全国の57病院(以下「JCHO57病院」という。) 等を運営していた。
イ JCHOは,平成28年入札については別表1のとおり,平成30年入札については別表2のとおり,一般競争入札を実施した。
ウ 4社は,全国各地にあるJCHO57病院へ平成28年入札医薬品及び平成30年入札医薬品を納品するため,自社では十分な納品が困難な地域においては,それぞれ,自社の子会社,関連会社等の他の卸売業者と提携し,各提携先から委任を受けて,代表入札者として平成28年入札及び平成30年入札に参加していた。
エ JCHOは,平成28年入札及び平成30年入札を実施する前に,4社から平成28年入札医薬品及び平成30年入札医薬品に係る参考見積価格を徴取し,当該参考見積価格等を参考にして,平成28年入札医薬品及び平成30年入札医薬品について,医薬品の製造販売業者等で区分した医薬品群ごとに予定価格を設定していた。
オ JCHOは,前記エに基づいて設定した予定価格の制限の範囲内で最低の入札価格を提示した者を交渉権者とし,当該交渉権者との交渉により,単価購入契約の相手方及び契約価格を決定していた。
また,JCHOは,当該予定価格の制限の範囲内の価格での入札がない医薬品群については,最低の入札価格を提示した者と交渉を行った上で,単価購入契約の相手方及び契約価格を決定していた。
カ JCHO57病院は,平成28年入札医薬品及び平成30年入札医薬品については,前記オに基づいて決定された単価購入契約の相手方との間で単価購入契約を締結し,医薬品を購入していた。
2 合意及び実施方法等
⑴ 平成28年入札医薬品
ア 4社は,平成28年5月中旬頃から同月下旬頃,JCHOから,平成28年入札医薬品に係る参考見積価格の提示を求められた際に,予定価格の低落防止を図るため,JCHOに対し,参考見積価格を一般価以上の価格で提示することを確認し合った上で,それぞれ,参考見積価格を提示していた。
イ 4社は,平成28年6月8日以降,東京都千代田区所在の貸会議室において,部長級,課長級等の営業担当者による会合を開催して,平成28年入札医薬品のうち「藤本製薬」の医薬品を除く医薬品について,受注価格の低落防止等を図るため,
(ア)a 4社それぞれの受注予定比率を設定し,同比率に合うよう平成28年入札医薬品を医薬品の製造販売業者等で区分した医薬品群ごとに受注予定者を決定する
b 受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に
(イ)a 既存の取引(入札が行われる時点での卸売業者とJCHO57病院間における単価購入契約をいう。以下同じ。)等を勘案し,前記受注予定比率に合うよう医薬品群ごとに受注予定者を決定する
b 受注予定者が提示する入札価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者等が連絡した価格以上の入札価格を提示する
などにより,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
⑵ 平成30年入札医薬品
ア 4社は,平成30年4月下旬頃から5月上旬頃,JCHOから,平成30年入札医薬品に係る参考見積価格の提示を求められた際に,予定価格の低落防止を図るため,JCHOに対し,参考見積価格を,自社が納入している医薬品については直近の納入価格,他社が納入している医薬品及び新規に入札に付された医薬品については一般価以上の価格で提示することを確認し合った上で,それぞれ,参考見積価格を提示していた。
イ 4社は,平成30年6月1日以降,東京都千代田区所在の貸会議室において,部長級,課長級等の営業担当者による会合を開催して,平成30年入札医薬品について,受注価格の低落防止等を図るため,
(ア)a 4社それぞれの受注予定比率を設定し,同比率に合うよう平成30年入札医薬品を医薬品の製造販売業者で区分した医薬品群ごとに受注予定者を決定する
b 受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に
(イ)a 既存の取引及び医薬品群の薬価総額等を勘案し,前記受注予定比率に合うよう医薬品群ごとに受注予定者を決定する
b 受注予定者が提示する入札価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者が連絡した価格以上の入札価格を提示する
などにより,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
3 実施状況
4社は,前記2⑴イ及び⑵イにより,平成28年入札医薬品のうち「藤本製薬」の医薬品を除く医薬品及び平成30年入札医薬品のほとんど全てを受注していた。
4 合意の消滅
⑴ 平成28年入札医薬品
平成30年6月30日,平成28年入札医薬品の納入期間が終了したことから,翌日以降,前記2⑴イの合意は事実上消滅しているものと認められる。
⑵ 平成30年入札医薬品
令和元年11月27日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法第102条第1項の規定に基づく臨検及び捜索を行ったことから,同日以降,前記2⑵イの合意に基づく行為は行われていない。このため,同日以降,前記2⑵イの合意は事実上消滅しているものと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば,4社は,共同して,
⑴ 平成28年入札医薬品のうち「藤本製薬」の医薬品を除く医薬品について,受注予定者を決定し,受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,平成28年入札医薬品の取引分野における競争を実質的に制限していた
⑵ 平成30年入札医薬品について,受注予定者を決定し,受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,平成30年入札医薬品の取引分野における競争を実質的に制限していた
ものであって,これらの行為は,それぞれ,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また,前記の違反行為は既になくなっているが,3社は,いずれも,独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり,違反行為が自主的に取りやめられたものでないこと等の諸事情を総合的に勘案すれば,特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって,3社に対し,独占禁止法第7条第2項の規定に基づき,主文のとおり命令する。

令和4年3月30日

委員長 古  谷  一  之
委 員 山  本  和  史
委 員 青  木  玲  子
委 員 小  島  吉  晴

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