公正取引委員会審決等データベース

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広島県が発注するコンピュータ機器の入札等の参加業者らに対する件

独禁法3条後段

令和4年(措)第4号

排除措置命令

名宛人 別表の名宛人目録記載のとおり

公正取引委員会は、上記の者らに対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。
なお、主文、理由及び別紙1中の用語のうち、別紙2「用語」欄に掲げるものの定義は、別紙2「定義」欄に記載のとおりである。

主    文
1 別表の名宛人目録記載の6社(以下「6社」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
(1) 別紙1記載のコンピュータ機器(以下「広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器」という。)について、6社が、遅くとも平成29年7月14日以降共同して行っていた、受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定し、受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
(2) 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器について、受注予定者を決定せず、自主的に受注活動を行うこと。
2 6社は、それぞれ、前項に基づいて採った措置を、自社を除く5社及び広島県に通知し、かつ、自社の従業員(西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)にあっては、自社の従業員に加え、名宛人以外のNTTビジネスソリューションズ株式会社(以下「NTTBS」という。)の従業員を含む。)に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 6社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器について、受注予定者を決定してはならない。
4 6社のうち株式会社大塚商会(以下「大塚商会」という。)及び株式会社ソルコム(以下「ソルコム」という。)は、次の(1)及び(2)の事項を行うために必要な措置を、NTT西日本は、次の(2)の事項を行うために必要な措置を、それぞれ、講じなければならない。この措置の内容については、前項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 官公需の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成又は改定及び自社の従業員に対する周知徹底
(2) 官公需の受注に関する独占禁止法の遵守についての、広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器の営業担当者(NTT西日本にあっては、NTTBSの営業担当者を含む。)に対する定期的な研修及び法務担当者等による定期的な監査
5 大塚商会、ソルコム及びNTT西日本は、第1項、第2項及び前項に基づいて採った措置を、6社のうち大塚商会、ソルコム及びNTT西日本を除く3社は、第1項及び第2項に基づいて採った措置を、それぞれ、速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

理    由
第1 事実
1 関連事実
(1) 名宛人の概要
ア 6社は、それぞれ、別表の「本店の所在地」欄記載の地に本店を置き、広島県の区域においてコンピュータ機器を販売又は賃貸していた。
イ NTT西日本は、コンピュータ機器の販売及び賃貸に係る営業業務を同社の完全子会社であるNTTBSに委託するとともにNTTBSに自社の営業担当者を出向させるなどしているところ、広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器の入札において、NTTBSの営業担当者が、NTT西日本の応札価格等を検討し、NTT西日本の支店長の決裁を得た上で、NTT西日本の名義において入札書の提出を行い、また、落札後の契約手続、コンピュータ機器の仕入先及びリース業者の選定、保守作業等の役務の委託先の選定をNTT西日本のために行うなどしていた。NTTBSの代表取締役を含む役員のほとんどをNTT西日本の役員又は従業員が兼務しており、このうちNTTBSの役員を兼務するNTT西日本の営業責任者が、広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器の入札における決裁に関与していた。
(2) 広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器の発注方法等
ア 広島県は、広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器について、賃貸借契約として一般競争入札(入札参加者の全てが入札を辞退したため当該入札を不調とし、入札参加者のうち複数者から見積書を徴した上で随意契約により契約の相手方を決定する場合を含む。以下同じ。)の方法により発注していた。一般競争入札に当たっては、公告により所定の参加資格を示して入札の参加希望者を募り、当該参加資格を満たす者を入札参加者としていた。
広島県は、広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器の入札において、当該参加資格を満たす1者又は複数者での入札参加を認めているところ、株式会社新星工業社(以下「新星工業社」という。)、株式会社ハイエレコン(以下「ハイエレコン」という。)及びNTT西日本は、物品の賃貸に係る資格を有するリース業者をそれぞれ選定(NTT西日本にあっては前記(1)イのNTTBSの営業担当者が選定)の上、当該リース業者と自社の2者で広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器の入札に参加していた。
イ 広島県は、広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器をコンピュータ機器の販売業者とリース業者が2者で受注した場合、次の内容を含む契約を、広島県、コンピュータ機器の販売業者及びリース業者の3者の間で締結していた。
(ア) リース業者は、コンピュータ機器の販売業者から、貸付物件を取得した上で広島県に賃貸する。
(イ) 広島県は賃借料をリース業者に支払う。
(ウ) コンピュータ機器の販売業者は、保守作業を行う。
ウ 広島県は、広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器について、情報教育用パーソナルコンピュータにあっては、地域又は学科の種類ごとに分割して発注し、教職員用パーソナルコンピュータにあっては、地域ごとに分割して発注するほか、教職員の増員による必要数を発注していた。
2 合意及び実施方法
6社は、遅くとも平成29年7月14日以降、広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器について、受注価格の低落防止を図るため
(1)ア 受注予定者を決定する
イ 受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に
(2)ア 次の方法により受注予定者を決定する
(ア) 前記1(1)イのNTTBSの営業担当者は、NTT西日本が受注を希望する物件について、ソルコムとの間で確認し合うなどする
(イ) 北辰映電株式会社、新星工業社、ハイエレコン、大塚商会及びソルコムの5社が各社の営業責任者等による会合を開催するなどして、過去の受注実績等を勘案して受注予定者を決定する
イ 受注予定者は自ら又はリース業者と2者で入札に参加する
ウ 受注予定者又は受注予定者がリース業者と2者で入札に参加する場合における当該2者が提示する入札価格は、受注予定者が定め、受注予定者以外の者は、受注予定者が定めた入札価格より高い入札価格を提示する若しくは入札を辞退する又は入札に参加しない
などにより、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。
3 実施状況
6社は、前記2により、広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器の全てについて、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるよう協力し、受注予定者は、広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器の全てを受注していた。
4 前記2の行為の取りやめ
(1) NTT西日本は、令和2年2月10日までに、課徴金の減免に係る事実の報告及び資料の提出に関する規則(令和2年公正取引委員会規則第3号)による改正前の課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第7号。以下「改正前の課徴金減免規則」という。)第1条第1項の規定に基づき、公正取引委員会に対して様式第1号による報告書を提出するとともに、広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器に係るNTTBSの営業担当者に対して前記2の行為を行わない旨の指示を行い、同日以降、前記2(1)の合意に基づき受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(2) 大塚商会は、令和2年2月21日までに、改正前の課徴金減免規則第1条第1項の規定に基づき、公正取引委員会に対して様式第1号による報告書を提出するとともに、広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器に係る自社の営業担当者に対して前記2の行為を行わない旨の指示を行い、同日以降、前記2(1)の合意に基づき受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(3) 令和2年10月13日、本件について、公正取引委員会が独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行ったところ、6社のうちNTT西日本及び大塚商会を除く4社は、同日以降、前記2(1)の合意に基づき受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
第2 法令の適用
前記事実によれば、6社は、共同して、広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器について、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、広島県教育委員会発注の特定コンピュータ機器の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、6社については、いずれも、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が長期間にわたって行われていたこと等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、6社に対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。

令和4年10月6日

委員長 古  谷  一  之
委 員 山  本  和  史
委 員 三  村  晶  子
委 員 青  木  玲  子
委 員 𠮷  田  安  志

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