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独禁法3条後段
令和4年(措)第5号
名宛人 別表の名宛人目録記載のとおり
公正取引委員会は、上記の者らに対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。
なお、主文、理由及び別紙1中の用語のうち、別紙2「用語」欄に掲げるものの定義は、別紙2「定義」欄に記載のとおりである。
主 文
1 別表の名宛人目録記載の11社(以下「11社」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
(1) 別紙1記載のコンピュータ機器(以下「広島市発注の特定コンピュータ機器」という。)について、11社が、遅くとも平成28年5月20日以降共同して行っていた、受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定し、受注予定者又は受注予定者が広島市発注の特定コンピュータ機器の入札に参加させる者(以下「受注予定者等」という。)が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
(2) 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、広島市が一般競争入札の方法により発注する広島市立の学校で用いるための、授業用パーソナルコンピュータ、校務用パーソナルコンピュータ及び普通教室用パーソナルコンピュータ(パーソナルコンピュータ本体のほか、周辺機器又はソフトウェアが併せて発注される場合は当該周辺機器等を含む。以下同じ。)並びに授業用教育サーバ(サーバ本体のほか、周辺機器、ソフトウェア又は保守作業等の役務が併せて発注される場合は当該周辺機器等を含む。以下同じ。)について、受注予定者を決定せず、自主的に受注活動を行うこと。
2 11社は、それぞれ、前項に基づいて採った措置を、自社を除く10社及び広島市に通知し、かつ、自社の従業員(西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)にあっては、自社の従業員に加え、名宛人以外のNTTビジネスソリューションズ株式会社(以下「NTTBS」という。)の従業員を含む。)に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 11社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、広島市が一般競争入札の方法により発注する広島市立の学校で用いるための、授業用パーソナルコンピュータ、校務用パーソナルコンピュータ及び普通教室用パーソナルコンピュータ並びに授業用教育サーバについて、受注予定者を決定してはならない。
4 11社のうち株式会社大塚商会(以下「大塚商会」という。)、株式会社ソルコム(以下「ソルコム」という。)及びDynabook株式会社(以下「Dynabook」という。)は、次の(1)及び(2)の事項を行うために必要な措置を、NTT西日本は、次の(2)の事項を行うために必要な措置を、それぞれ、講じなければならない。この措置の内容については、前項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 官公需の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成又は改定及び自社の従業員に対する周知徹底
(2) 官公需の受注に関する独占禁止法の遵守についての、広島市が一般競争入札の方法により発注する広島市立の学校で用いるための、授業用パーソナルコンピュータ、校務用パーソナルコンピュータ及び普通教室用パーソナルコンピュータ並びに授業用教育サーバの営業担当者(NTT西日本にあっては、NTTBSの営業担当者を含む。)に対する定期的な研修及び法務担当者等による定期的な監査
5 大塚商会、ソルコム、NTT西日本及びDynabookは、第1項、第2項及び前項に基づいて採った措置を、11社のうち大塚商会、ソルコム、NTT西日本及びDynabookを除く7社は、第1項及び第2項に基づいて採った措置を、それぞれ、速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
理 由
第1 事実
1 関連事実
(1) 名宛人の概要
ア 11社は、それぞれ、別表の「本店の所在地」欄記載の地に本店を置き、広島市の区域においてコンピュータ機器を販売又は賃貸していた。
イ NTT西日本は、コンピュータ機器の販売及び賃貸に係る営業業務を同社の完全子会社であるNTTBSに委託するとともにNTTBSに自社の営業担当者を出向させるなどしているところ、広島市発注の特定コンピュータ機器の入札において、NTTBSの営業担当者が、NTT西日本の応札価格等を検討し、NTT西日本の支店長の決裁を得た上で、NTT西日本の名義において入札書の提出を行い、また、落札後の契約手続、コンピュータ機器の仕入先の選定、保守作業等の役務の委託先の選定をNTT西日本のために行うなどしていた。NTTBSの代表取締役を含む役員のほとんどをNTT西日本の役員又は従業員が兼務しており、このうちNTTBSの役員を兼務するNTT西日本の営業責任者が、広島市発注の特定コンピュータ機器の入札における決裁に関与していた。
(2) 広島市発注の特定コンピュータ機器の発注方法等
ア 広島市は、広島市発注の特定コンピュータ機器について、WTO案件として、一般競争入札の方法により発注していた。一般競争入札に当たっては、公告により所定の参加資格を示して入札の参加希望者を募り、当該参加資格を満たす者を入札参加者としていた。
イ 広島市は、広島市発注の特定コンピュータ機器について、授業用パーソナルコンピュータ、校務用パーソナルコンピュータ及び普通教室用パーソナルコンピュータにあっては売買契約として、授業用教育サーバにあっては賃貸借契約として、地域ごとに複数のブロックに分割するなどして発注していた。
ウ 広島市は、広島市発注の特定コンピュータ機器について、授業用パーソナルコンピュータ、校務用パーソナルコンピュータ及び普通教室用パーソナルコンピュータにあってはOSのサポート期限の終了を迎える時点で買い替え、授業用教育サーバにあってはおおむね5年間の借入期間の終了を迎える時点などで借り替えていた。
エ 株式会社新星工業社(以下「新星工業社」という。)は、名宛人以外の富士通リース株式会社を広島市発注の特定コンピュータ機器の入札の一部に参加させるとともに、入札価格を指示して当該価格で入札させていた。
オ 前記(1)イのNTTBSの営業担当者は、名宛人以外の株式会社NTTフィールドテクノをNTT西日本の代わりに広島市発注の特定コンピュータ機器の入札の一部に参加させるとともに、入札価格を指示して当該価格で入札させていた。
2 合意及び実施方法
11社は、遅くとも平成28年5月20日以降、広島市発注の特定コンピュータ機器について、受注価格の低落防止を図るため
(1)ア 受注予定者を決定する
イ 受注予定者以外の者は、受注予定者等が受注できるように協力する
旨の合意の下に
(2)ア 次の方法により受注予定者を決定する
(ア) 前記1(1)イのNTTBSの営業担当者は、NTT西日本が受注を希望する物件について、ソルコムとの間で確認し合うなどする
(イ) 株式会社立芝(以下「立芝」という。)又は中外テクノス株式会社(以下「中外テクノス」という。)は、Dynabookとの間で立芝又は中外テクノスが受注を希望する物件を確認し合うなどし、Dynabookは、株式会社呉電子計算センター(以下「呉電子計算センター」という。)に対し、立芝又は中外テクノスが受注を希望する物件を伝えるなどする
(ウ) 理研産業株式会社は、受注を希望する場合、新星工業社に受注を希望する旨を伝える
(エ) 大塚商会、株式会社ハイエレコン、新星工業社、北辰映電株式会社、ソルコム、呉電子計算センター(令和元年6月6日まで)及び立芝(令和元年6月7日以降)が、各社の営業責任者等による会合を開催するなどして、過去の受注実績、各社の受注希望等を勘案して受注予定者を決定する
イ 受注予定者等が提示する入札価格は、受注予定者が定め、受注予定者等以外の者は、受注予定者が定めた入札価格より高い入札価格を提示する若しくは入札を辞退する又は入札に参加しない
などにより、受注予定者を決定し、受注予定者等が受注できるようにしていた。
3 実施状況
11社は、前記2により、広島市発注の特定コンピュータ機器の全てについて、受注予定者を決定し、受注予定者等が受注できるよう協力し、受注予定者等は、広島市発注の特定コンピュータ機器のほとんど全てを受注していた。
4 前記2の行為の取りやめ
(1) 呉電子計算センターは、令和元年6月7日に開催された各社の営業責任者等による会合において、今後当該会合に出席しないことを表明するなどし、同日以降、前記2(1)の合意に基づき受注予定者を決定し、受注予定者等が受注できるようにする行為を取りやめている。
(2) NTT西日本は、令和2年2月10日までに、課徴金の減免に係る事実の報告及び資料の提出に関する規則(令和2年公正取引委員会規則第3号)による改正前の課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第7号。以下「改正前の課徴金減免規則」という。)第1条第1項の規定に基づき、公正取引委員会に対して様式第1号による報告書を提出するとともに、広島市発注の特定コンピュータ機器に係るNTTBSの営業担当者に対して前記2の行為を行わない旨の指示を行い、同日以降、前記2(1)の合意に基づき受注予定者を決定し、受注予定者等が受注できるようにする行為を取りやめている。
(3) 大塚商会は、令和2年2月12日までに、改正前の課徴金減免規則第1条第1項の規定に基づき、公正取引委員会に対して様式第1号による報告書を提出するとともに、広島市発注の特定コンピュータ機器に係る自社の営業担当者に対して前記2の行為を行わない旨の指示を行い、同日以降、前記2(1)の合意に基づき受注予定者を決定し、受注予定者等が受注できるようにする行為を取りやめている。
(4) 令和2年10月13日、本件について、公正取引委員会が独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行ったところ、11社のうち呉電子計算センター、NTT西日本及び大塚商会を除く8社は、同日以降、前記2(1)の合意に基づき受注予定者を決定し、受注予定者等が受注できるようにする行為を取りやめている。
第2 法令の適用
前記事実によれば、11社は、共同して、広島市発注の特定コンピュータ機器について、受注予定者を決定し、受注予定者等が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、広島市発注の特定コンピュータ機器の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、11社については、いずれも、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が長期間にわたって行われていたこと等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、11社に対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。
令和4年10月6日
委員長 古 谷 一 之
委 員 山 本 和 史
委 員 三 村 晶 子
委 員 青 木 玲 子
委 員 𠮷 田 安 志