公正取引委員会審決等データベース

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炭素鋼製突合せ溶接式管継手の製造販売業者らに対する件

独禁法3条後段

令和4年(措)第7号

排除措置命令

大阪市西成区津守三丁目3番17号
 古林工業株式会社
  同代表者 代表取締役 《 氏 名 》

兵庫県洲本市上加茂4番地の2
 淡路マテリア株式会社
  同代表者 代表取締役 《 氏 名 》

公正取引委員会は、上記の者らに対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。
なお、主文、理由、別紙1及び別紙2中の用語のうち、別紙2「用語」欄に掲げるものの定義は、別紙2「定義」欄に記載のとおりである。

主    文
1 古林工業株式会社(以下「古林工業」という。)及び淡路マテリア株式会社(以下「淡路マテリア」という。)の2社(以下「2社」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
⑴ 別紙1記載の炭素鋼製突合せ溶接式管継手(以下「特定炭素鋼製管継手」という。)について、2社及び株式会社ベンカン機工(以下「ベンカン機工」という。)の3社(以下「3社」という。)が平成28年11月18日に共同して行った、販売価格の引上げを行っていく旨の合意が消滅していることを確認すること。 
⑵ 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、建値取引対象商品の販売価格を決定せず、自主的に決めること。
⑶ 今後、相互に、又は他の事業者と、建値取引対象商品の販売価格に関する情報交換を行わないこと。
2 2社は、それぞれ、前項に基づいて採った措置を、相互に通知するとともに、自社の特定炭素鋼製管継手の取引先である一次問屋に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 2社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、建値取引対象商品の販売価格を決定してはならない。
4 2社は、今後、それぞれ、相互に、又は他の事業者と、建値取引対象商品の販売価格に関する情報交換を行ってはならない。
5 2社は、それぞれ、第1項及び第2項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

理    由
第1 事実
1 関連事実
⑴ 名宛人等の概要
ア 古林工業は、肩書地に本店を置き、炭素鋼製突合せ溶接式管継手の製造販売に係る事業を営む者である。
イ 淡路マテリアは、肩書地に本店を置き、炭素鋼製突合せ溶接式管継手の販売に係る事業を営む者である。
ウ 名宛人以外のベンカン機工は、群馬県太田市六千石町5番地1に本店を置き、炭素鋼製突合せ溶接式管継手の製造販売に係る事業を営む者である。
なお、ベンカン機工は、日鉄住金機工株式会社(平成24年10月1日の商号変更前は住金機工株式会社をいう。以下同じ。)が、平成28年8月1日付けで、吸収分割により、株式会社ベンカン(平成26年9月1日の商号変更前は株式会社ベンカン・ジャパンをいう。)から同社の炭素鋼製突合せ溶接式管継手の製造販売に係る事業を承継し、現商号に変更した者である。
⑵ 特定炭素鋼製管継手の取引形態等
ア 3社は、それぞれ、炭素鋼製突合せ溶接式管継手のうち、比較的取引量が多いFSGP及びPT370と称されるものについて、建値を定め、これを掲載した価格表を一次問屋に配布していた。
イ 3社は、それぞれ、一次問屋に対し、特定炭素鋼製管継手を直接又は商社を通じて販売していた。
ウ 3社は、それぞれ、特定炭素鋼製管継手の販売価格について、適用する建値及び掛率を一次問屋と交渉して決定の上、建値に掛率を乗じる方法により定め、商社を通じて一次問屋に販売する場合には、当該販売価格から当該商社の口銭を差し引いたものを自らの販売価格としていた。
エ 3社の特定炭素鋼製管継手の販売金額の合計は、我が国における特定炭素鋼製管継手の総販売金額のほとんど全てを占めていた。
2 合意の成立
⑴ 2社、株式会社ベンカン・ジャパン及び日鉄住金機工株式会社は、かねてから、営業責任者級の者らが会合を開催するなどして、炭素鋼製突合せ溶接式管継手の販売価格等について情報交換を行っており、平成25年に、各社がそれぞれ建値を定める炭素鋼製突合せ溶接式管継手について建値を引き上げる改定を行う際、各社の建値が一致するよう調整していた。
⑵ 3社は、利益の確保を図るため、3社の営業責任者級の者らが、平成28年9月16日以降、ベンカン機工と淡路マテリアの間で、及び、ベンカン機工と古林工業の間で、順次、会合を開催するなどして、3社がそれぞれ建値を定める炭素鋼製突合せ溶接式管継手について、3社が共同して販売価格の引上げを行っていく旨の認識を共有した。
⑶ 3社は、3社の営業責任者級の者が、平成28年11月18日に会合を開催し、前記(2)の3社が共同して行う販売価格の引上げを、3社がそれぞれ建値を定める炭素鋼製突合せ溶接式管継手のうち、FSGP及びPT370と称されるものについて行っていく旨の認識を共有し、もって、3社が共同して特定炭素鋼製管継手の販売価格の引上げを行っていく旨を合意した。
3 実施状況
⑴ 3社は、前記2(3)の合意に基づき、3社の実務者級の者らによる会合を開催するなどして、累次、次のとおり、特定炭素鋼製管継手の販売価格の引上げの具体的な内容及び実施方法を3社の話合いにより決定するとともに、それぞれ、一次問屋に対して、掛率の引上げや建値の改定を申し入れるなどして、特定炭素鋼製管継手の販売価格をおおむね引き上げていた。
ア 平成28年11月18日に会合を開催するなどして、同年12月21日出荷分から、掛率を最低でも26まで引き上げる旨を決定し、それぞれ、一次問屋に対して、掛率を引き上げる旨を申し入れた。
イ 平成29年1月6日に会合を開催するなどして、同年3月21日出荷分又は同年4月1日出荷分から適用する建値を平成25年版価格表に掲載した建値と比較しておおむね20パーセント引き上げるとともに、掛率を28とすることを目標にして最低でも26とする旨を決定し、それぞれ、当該決定に基づいて新たな建値を設定した上で、一次問屋に対して、当該建値を掲載した価格表等を配布して、建値の改定及び掛率の引上げを申し入れた。
ウ 平成29年11月20日に会合を開催するなどして、平成30年1月21日出荷分又は同年2月1日出荷分から、現行の販売価格と比較して15パーセント引き上げることができる水準まで掛率を引き上げる旨を決定し、それぞれ、一次問屋に対して、掛率を引き上げる旨を申し入れた。
エ 平成30年5月14日に会合を開催するなどして、同年7月21日出荷分又は同年8月1日出荷分から、現行の販売価格と比較して15パーセント引き上げることができる水準まで掛率を引き上げる旨を決定し、それぞれ、一次問屋に対して、掛率を引き上げる旨を申し入れた。
オ 平成30年12月26日に会合を開催するなどして、平成31年4月1日出荷分から適用する建値を平成29年版価格表に掲載した建値と比較しておおむね10パーセントから15パーセント引き上げるとともに、掛率を最低でも26とする旨を決定し、それぞれ、当該決定に基づいて新たな建値を設定した上で、一次問屋に対して、当該建値を掲載した価格表等を配布して、建値の改定等を申し入れた。
⑵ 3社は、前記2(3)の合意の実効を確保するため、おおむね毎月1回、3社の実務者級の者らによる会合を開催して、掛率の引上げや建値の改定状況について情報交換を行うなどしていた。
4 合意の消滅
⑴ ベンカン機工は、令和元年12月2日、課徴金の減免に係る事実の報告及び資料の提出に関する規則(令和2年公正取引委員会規則第3号)による改正前の課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第7号)第1条第1項の規定に基づき、公正取引委員会に対して様式第1号による報告書を提出するとともに、自社の炭素鋼製突合せ溶接式管継手の営業責任者等に対して前記2(3)の合意に基づく行為を行わない旨の指示を行い、同日以降、同合意に基づく行為を行っていない。
⑵ 令和2年11月25日、本件について、公正取引委員会が独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行ったところ、同日以降、前記2(3)の合意に基づく行為は取りやめられている。このため、同日以降、同合意は事実上消滅しているものと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば、3社は、共同して、特定炭素鋼製管継手の販売価格の引上げを行っていく旨を合意することにより、公共の利益に反して、特定炭素鋼製管継手の販売分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、2社については、いずれも、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が長期間にわたって行われていたこと等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、2社に対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。

令和4年12月15日

委員長  古  谷  一  之
委 員  山  本  和  史
委 員  三  村  晶  子
委 員  青  木  玲  子
委 員  𠮷  田  安  志

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