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審査規則22条1項
令和4年(査)第5号
≪住所略≫
異議申立人 ≪B2≫
同代理人弁護士 平山 賢太郎
令和4年(査)第5号佐賀県有明海漁業協同組合に対する件(以下「本件審査事件」という。)について、異議申立人から、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第47条第1項及び同条第2項の規定に基づく審査官の処分に対し、公正取引委員会の審査に関する規則(以下「審査規則」という。)第22条第1項の規定に基づく異議の申立てがあったので、当委員会は、次のとおり決定する。
主文
本件異議の申立てを却下する。
理由
1 本件審査事件につき、令和4年12月12日、公正取引委員会審査官≪氏名略≫が異議申立人に対して行った各出頭命令(同月27日を出頭日とするもの及び同月28日を出頭日とするものの2件。いずれも同月13日に送達。以下「本件各出頭命令」という。)について、同月19日、異議申立人から、当委員会に対し、審査規則第22条第1項の規定に基づき、別添1の上申書のとおり異議の申立てがなされた。
2 異議申立人は、本件各出頭命令に先立って行われた審査官による任意の供述聴取において、同人が所属する佐賀県有明海漁業協同組合(以下「佐賀有明漁協」という。)の代表理事を務める≪B1≫が、審査官から別添1及び2の各上申書(別添2については≪B1≫に対する発言部分。以下同じ。)に記載のとおりの言辞を申し向けられ、これによって異議申立人又は佐賀有明漁協は、異議申立人を含む事件関係人らに対する供述聴取の適正や佐賀有明漁協に係る確約手続(独占禁止法第48条の2以下)を含む各種審査手続について、弁護士から法的助言を受ける機会を奪われ、代理人弁護士を選任する権利を妨害されたものであり、本件各出頭命令を用いて異議申立人に対して行われる審尋手続(同法47条第1項第1号)は、上記のとおり代理人弁護士の選任を違法かつ不当に妨害された状態で獲得された事件関係人らの供述等の証拠に基づいて行われることとなるから、本件各出頭命令は違法・不当である旨主張する。
3 しかしながら、
(1) そもそも、審査官は、「事件について必要な調査をするため」に、事件関係人等に対して出頭命令を発することができるのであり(独占禁止法第47条第1項、同項第1号、第2項)、異議申立人が主張する事実は、何ら本件各出頭命令の違法性、不当性を基礎付ける事由には当たらない。
(2) なお、本件各出頭命令に先立つ令和4年9月21日又は22日の前記≪B1≫に対する任意の供述聴取における審査官の発言は、その詳細が必ずしも客観的に定かとはいえないが、異議申立人が審査官の≪B1≫に対する発言として主張する別添1及び2の各上申書記載の内容をみても、異議申立人や佐賀有明漁協が弁護士を代理人に選任し、又は弁護士から法的助言を受けることを妨げたとの評価に値するものとは到底いえず、弁護士を代理人に選任する機会や弁護士から法的助言を受ける機会を喪失させたものと認めることはできない。
また、佐賀有明漁協は同年10月17日に本件審査事件について弁護士を代理人として選任し、異議申立人は同弁護士を代理人として本件の異議を申し立てたものであるところ、仮に、上記の審査官の発言により、異議申立人又は佐賀有明漁協に代理人弁護士を選任することを躊躇させ、その選任が遅れたことがあったとしても、それまでの間に異議申立人や≪B1≫は審査官から供述聴取を受けたことはなく、上記代理人選任後、佐賀有明漁協は本件事件審査の任意の協力要請に応じていない。
結局、代理人弁護士の選任を遅滞させている間に何らかの証拠を獲得したかのような異議申立人の主張は、その前提においても誤りであり、異議申立人又は佐賀有明漁協に何らかの不利益が生じたものとも認められない。
さらに、以上のことからすれば、本件各出頭命令を用いて審尋手続が行われたとしても、当該審尋手続が違法、不当となるものではない。
したがって、異議申立人の主張は失当である。
(3) その他、審査官は、上記の供述聴取、本件各出頭命令につき、いずれも法令・内規等に照らし、適法・適切に審査手続を遂行しており、この過程において何ら違法・不当な取扱いは存しない。
4 以上のとおり、異議申立人による本件の異議申立てはその理由がないので、主文のとおり決定する。
令和5年3月7日
公正取引委員会
別添1
上申書
令和4年12月19日
公正取引委員会御中
佐賀県有明海漁業協同組合
専務理事 ≪B2≫
平山法律事務所
電話 ≪番号略≫
FAX ≪番号略≫
代理人弁護士 平山 賢太郎
独占禁止法47条1項1号に規定する処分に対する異議の申立て
当職は、上記の者の代理人として、審査官が独占禁止法47条2項の規定に基づいてした同条1項1号に規定する出頭命令に対して、別紙のとおり、公正取引委員会の審査に関する規則22条1項の規定に基づき異議を申し立てます。
別紙
熊本県漁業協同組合連合会は貴会の令和4年(査)第4号事件について、佐賀県有明海漁業協同組合は貴会の令和4年(査)第5号事件について、それぞれ審査を受けておりますところ、両会はそれぞれ、貴会の審査に対して誠実に協力し貴会に真相を解明していただくことをその対応方針としております。
貴会審査官は、令和4年12月12日付け出頭命令書(別添)により、本文記載の者に対して貴会事務総局審査局第四審査への出頭を命じました。
ところで、上記事件について審査官指定を受けた審査官らは、上記出頭命令に先立って行われた任意の事情聴取において、関係人らの会長や組合長に対して
「弁護士をつければ金がかかりますよ。確約手続なら簡単に終わりますよ」
「そういう無駄な金を使うよりも、県漁連で検討してください」
「弁護士をつける話があるけれど、弁護士に公取専門はいません」
などと申し向け、もって、関係人らが代理人弁護士を選任することを妨害し阻止しました。そして実際に、関係人らに対する審査手続は、代理人弁護士が選任されることがないまま長期間にわたって進行しました。
関係人が代理人弁護士から審査手続に関する法的助言を受けることは、貴会の審査手続その他の行政手続における基本的かつ根本的な権利です。独占禁止法の規定や審査手続指針の記述も、立入検査、事情聴取、意見聴取手続その他の審査手続において関係人が代理人弁護士を選任して対応することを当然の前提としています。
しかし関係人らは、代理人弁護士を選任することを上記審査官らの上記発言によって妨害されましたので、任意の事情聴取手続が適正に行われたか否かについて代理人弁護士からの法的助言を通じて検証する機会を奪われました。また、審査手続の選択について「確約手続なら簡単に終わりますよ」など誘導を受けて確約手続の利用を強く迫られたにもかかわらず、確約手続を含む各種の審査手続の内容や運用実態について代理人弁護士から法的助言を受ける機会を奪われました。
上記審査官らが上記出頭命令を用いて実施する審尋において、上記審査官らは、代理人弁護士の選任を違法かつ不当に妨害された状態にあった関係人らやその会長等から獲得した供述、電子メール通信その他の証拠に基づいて、さらにはこれら証拠の内容に基づいて第三者から獲得した供述その他の証拠に基づいて、質問を行い陳述を獲得することとなります。
かかる審尋手続には代理人選任妨害の違法・不当が連鎖していくことを避けることができないと思料しますので、上記出頭命令が取り消されることを求めて、公正取引委員会の審査に関する規則22条1項の規定に基づき異議を申し立てます。
なお、本文記載の者は、上記出頭命令が合法なものであることが異議申立てに係る審理を経て確認された場合には日程調整を経て出頭命令に応じたいと考えておりますので、その旨申し添えます。
以 上
【別添:出頭命令書2通】添付省略
別添2
上申書
令和5年1月10日
公正取引委員会御中
平山法律事務所
電話 ≪番号略≫
FAX ≪番号略≫
代理人弁護士 平山賢太郎
当職は、熊本県漁業協同組合連合会代表理事会長≪A1≫、熊本県漁業協同組合連合会業務部部長≪A2≫、佐賀県有明海漁業協同組合代表理事組合長≪B1≫及び佐賀県有明海漁業協同組合専務理事≪B2≫の各代理人として公正取引委員会の審査に関する規則22条1項の規定に基づき貴会あて提出した令和4年12月19日付け異議申立書に記載した事実について、これらの者の代理人として、別紙のとおり追加報告を行います。
別紙
熊本県漁業協同組合連合会は貴会の令和4年(査)第4号事件について、佐賀県有明海漁業協同組合は貴会の令和4年(査)第5号事件について、それぞれ審査を受けておりますところ、両会はそれぞれ、貴会の審査に対して誠実に協力し貴会に真相を解明していただくことをその対応方針としております。
上記事件について関係人等に対する立入検査が行われた後、関係人に対する任意の事情聴取は、審査官指定を受けた審査官らによって、令和4年8月31日から順次行われました。
熊本県漁業協同組合連合会代表理事会長≪A1≫に対する任意の事情聴取は、同年9月1日及びその翌日に、貴会事務総局審査専門官(主査)≪氏名略≫氏ほか1名によって行われました。
≪A1≫氏の記憶によれば、審査専門官は、当該事情聴取の初日に
「公取案件の専門弁護士は、日本全国いません」
「費用をかけて弁護士へ依頼するより、漁連で検討して判断してください」
「会長自身はどうお考えかお聞かせください」
と≪A1≫氏に対して告げました。
佐賀県有明海漁業協同組合代表理事組合長≪B1≫に対する任意の事情聴取は、同年9月21日及びその翌日に、貴会事務総局審査専門官(主査)≪氏名略≫氏及び内閣府事務官≪氏名略≫氏によって行われました。
≪B1≫氏の記憶によれば、審査専門官は、おそらく事情聴取初日の午前中に
「弁護士は金がかかる。確約手続をすれば弁護士費用もいらない」
「確約手続した方がよい。公取も協力する」
と≪B1≫氏に対して告げました。
≪A1≫氏及び≪B1≫氏が審査専門官らからこれらの教示を受けましたので、関係人の職員等はその後、代理人弁護士を選任することなく確約手続を利用することを前提として任意の事情聴取に対応し供述を行い、そのほか貴会審査専門官に対して情報を随時提供しました。そして、熊本県漁業協同組合連合会は、令和4年9月28日開催の理事会において、確約手続によって本件対応を進めていく旨の決議を行いました。
なお、本上申書表紙記載の者は、いずれも、本件異議申立ての対象である出頭命令が合法なものであることが異議申立てに係る審理を経て確認された場合には日程調整を経て出頭命令に応じたいと考えておりますので、その旨申し添えます。
以 上
注釈 《 》部分は、公正取引委員会事務総局において原文に匿名化等の処理をしたものである。