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独禁法3条後段
令和5年(措)第1号
大分市西大道二丁目3番8号
株式会社アステム
同代表者 代表取締役 《氏名》
福岡市博多区山王二丁目3番5号
株式会社翔薬
同代表者 代表取締役 《氏名》
福岡市東区箱崎ふ頭三丁目4番46号
九州東邦株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》
熊本市中央区九品寺六丁目2番35号
富田薬品株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》
東京都千代田区内神田一丁目12番1号
アルフレッサ株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》
公正取引委員会は、上記の者らに対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。
主 文
1 株式会社アステム、株式会社翔薬、九州東邦株式会社、富田薬品株式会社及びアルフレッサ株式会社の5社(以下「名宛人5社」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
⑴ 別紙記載の医薬品(以下「特定医薬品」という。)について、名宛人5社及び株式会社アトル(以下「6社」という。)が、遅くとも平成28年6月24日以降共同して行っていた、受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定し、受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
⑵ 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、独立行政法人国立病院機構(以下「NHO」という。)が一般競争入札の方法により発注する医薬品について、受注予定者を決定せず、自主的に受注活動を行うこと。
2 名宛人5社は、それぞれ、前項に基づいて採った措置を、自社を除く4社、NHO並びに別表記載の福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県及び鹿児島県(以下「九州エリア」という。)に所在するNHO又は独立行政法人労働者健康安全機構(以下「JOHAS」という。)が運営する31病院(以下「31病院」という。)に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 名宛人5社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、NHOが一般競争入札の方法により発注する医薬品について、受注予定者を決定してはならない。
4 名宛人5社のうち富田薬品株式会社は、次の⑴及び⑵の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
⑴ NHOが一般競争入札の方法により発注する医薬品の受注に関する独占禁止法の遵守についての法務担当者による定期的な監査
⑵ 独占禁止法違反行為に係る調査への協力を行った者に対する適切な取扱いを定める規程の作成
5 富田薬品株式会社は、第1項、第2項及び前項に基づいて採った措置を、株式会社アステム、株式会社翔薬、九州東邦株式会社及びアルフレッサ株式会社は、第1項及び第2項に基づいて採った措置を、それぞれ、速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
理 由
第1 事実
1 関連事実
⑴ 名宛人等の概要
ア 名宛人5社は、それぞれ、肩書地に本店を置き、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「薬機法」という。)の規定に基づき都道府県知事の許可を受け、九州エリアにおいて医薬品等の卸売業を営む者である。
イ 名宛人以外の株式会社アトルは、福岡市東区香椎浜ふ頭二丁目5番1号に本店を置き、薬機法の規定に基づき都道府県知事の許可を受け、九州エリアにおいて医薬品等の卸売業を営む者である。
⑵ 発注方法等
ア NHOは、独立行政法人国立病院機構法(平成14年法律第191号)の規定に基づき、平成16年4月1日に設立された組織であり、東京都目黒区に主たる事務所を置き、全国の140病院等を運営していた。
イ JOHASは、独立行政法人労働者健康安全機構法(平成14年法律第171号)の規定に基づき、平成28年4月1日に設立された組織であり、川崎市中原区に主たる事務所を置き、全国の34病院等を運営し、平成28年度以降、医薬品の入札に関すること等をNHOに委任していた。
ウ NHOは、31病院が調達する医薬品であって、平成28年5月20日から令和元年6月3日までの間の入札公告及び当該入札公告に基づく入札説明書により指定された医薬品(以下「本件医薬品」という。)を年度ごとに一般競争入札の方法により発注していた。
エ 前記ウに係る入札には、株式会社アトル、株式会社アステム、株式会社翔薬、富田薬品株式会社及び九州東邦株式会社の5社(以下「入札参加5社」という。)等が参加していた。
オ アルフレッサ株式会社は、31病院に本件医薬品を納品するため、富田薬品株式会社と提携し、前記ウに係る入札について、同社に委任していた。
カ NHOは、本件医薬品を医薬品の製造販売業者等で区分した医薬品群について、予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもって入札を行った者を当該医薬品群の落札者とし、当該落札者との価格交渉により、本件医薬品の単価契約の相手方及び契約価格を決定していた。
また、NHOは、予定価格の制限の範囲内の価格での入札がない当該医薬品群については、最低の入札価格を提示した者等と交渉を行った上で、本件医薬品の単価契約の相手方及び契約価格を決定していた。
キ 31病院は、本件医薬品について、前記カに基づいて決定された単価契約の相手方と単価契約を締結し、本件医薬品を調達していた。
2 合意及び実施方法
6社は、かねてから、NHOが発注する、九州エリア等に所在するNHOが運営する病院が調達する医薬品の受注に関する調整を行ってきたところ、6社は、遅くとも平成28年6月24日以降、特定医薬品について、自社の利益を確保するため
⑴ ア 特定医薬品を医薬品の製造販売業者等で区分した医薬品群(以下「特定医薬品群」という。)ごとに、受注予定者を決定する
イ 受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に
⑵ 会合を開催するなどして
ア 入札参加5社それぞれの各年度の受注予定比率を設定し、同比率に合うよう特定医薬品群ごとに受注予定者を決定する
イ 受注予定者が提示する入札価格は、受注予定者が定め、受注予定者以外の者は、受注予定者がその定めた価格で受注できるよう、受注予定者が連絡した価格を上回る入札価格を提示するなどして協力する
ことにより、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。
3 実施状況
入札参加5社は、前記2により、特定医薬品のほとんど全てを受注し、本件医薬品の大部分を受注していた。
4 前記2の行為の取りやめ
令和元年11月27日、独立行政法人地域医療機能推進機構が発注する医薬品の入札に係る独占禁止法違反の疑いにより、アルフレッサ株式会社等が、公正取引委員会により、独占禁止法第102条第1項の規定に基づく臨検及び捜索を受けたことを契機として、同日以降、前記2の合意に基づき受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにする行為は取りやめられている。
第2 法令の適用
前記事実によれば、6社は、共同して、特定医薬品について、特定医薬品群ごとに受注予定者を決定し、受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、本件医薬品の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、名宛人5社は、いずれも、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が自主的に取りやめられたものでないこと等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、名宛人5社に対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。
令和5年3月24日
委員長 古 谷 一 之
委 員 山 本 和 史
委 員 三 村 晶 子
委 員 青 木 玲 子
委 員 𠮷 田 安 志