公正取引委員会審決等データベース

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旧一般電気事業者に対する件

独禁法3条後段

令和05年(措)第3号

排除措置命令

広島市中区小町4番33号
中国電力株式会社
同代表者 代表取締役 《 氏   名 》


公正取引委員会は、上記の者に対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。
なお、主文、理由及び別紙中の用語のうち、別紙「用語」欄に掲げるものの定義は、別紙「定義」欄に記載のとおりである。

主    文
1 中国電力株式会社(以下「中国電力」という。)は、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
⑴ 中国電力管内又は関西電力管内(以下「2地区」という。)に所在する相対顧客及び中国電力管内に所在する官公庁等(競争入札により自らが使用する電気の供給者を決定する者に限る。以下同じ。)に対して小売供給を行う電気について、中国電力及び関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)の2社(以下「2社」という。)が、遅くとも平成30年11月8日以降共同して行っていた、以下の合意が消滅していることを確認すること。
ア 互いに、相手方の供給区域に所在する相対顧客の獲得のための営業活動を制限すること。
イ 関西電力にあっては、中国電力管内において平成30年11月8日以降順次実施される官公庁入札における入札参加及び安値による入札を制限すること。
⑵ 今後、他の事業者と共同して、2地区に所在する相対顧客及び中国電力管内に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気について、互いに、相対顧客の獲得のための営業活動を制限する行為並びに官公庁入札における入札参加及び安値による入札を制限する行為を行わず、自主的に相対顧客に係る営業活動を行うこと並びに官公庁入札における入札参加及び提示する電気料金の決定を行うこと。
⑶ 今後、電気の小売供給を行う事業を営む他の事業者と、2地区に所在する相対顧客及び中国電力管内に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気について、電気料金、見積り(電気料金に係る見積りをいう。以下同じ。)提示及び入札参加に関する情報交換を行わないこと。
2 中国電力は、前項に基づいて採った措置を、2地区に所在する相対顧客及び中国電力管内に所在する官公庁等に周知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの周知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 中国電力は、今後、他の事業者と共同して、2地区に所在する相対顧客及び中国電力管内に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気について、互いに、相対顧客の獲得のための営業活動を制限する行為並びに官公庁入札における入札参加及び安値による入札を制限する行為を行ってはならない。
4 中国電力は、今後、電気の小売供給を行う事業を営む他の事業者と、2地区に所在する相対顧客及び中国電力管内に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気について、電気料金、見積り提示及び入札参加に関する情報交換を行ってはならない。
5 中国電力は、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前2項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
⑴ 役員及び従業員に対する、電気の小売供給に係る営業活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の周知徹底
⑵ 電気の小売供給に係る営業活動に関する独占禁止法の遵守についての、当該営業活動に従事する役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者及び第三者による定期的な監査
⑶ 独占禁止法違反行為に係る調査への協力を行った者に対する適切な取扱いを定める規程の作成
6 中国電力は、第1項、第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

理    由
第1 事実
1 関連事実
⑴ 名宛人等の概要
ア 中国電力は、肩書地に本店を置き、自ら発電し、又は《発電事業者A》等から調達した電気の小売供給を行う事業を営む者である。
イ 名宛人以外の関西電力は、大阪市北区中之島三丁目6番16号に本店を置き、自ら発電し、又は《発電事業者A》等から調達した電気の小売供給を行う事業を営む者である。
ウ 2社は、従来、電気事業法(昭和39年法律第170号)による参入規制によって自社の供給区域における電気の小売供給の独占が認められていた者(以下「旧一般電気事業者」という。)であった。
エ 2社は、電気の小売供給の自由化(特別高圧需要にあっては平成12年3月。高圧大口需要にあっては平成16年4月。高圧小口需要にあっては平成17年4月。)以降も、それぞれ、中国電力にあっては中国電力管内において、関西電力にあっては関西電力管内において、各供給区域における電気の需要の大部分に相当する電気を自ら発電し、又は《発電事業者A》等から調達しており、当該自ら発電するなどした電気を、自ら小売供給するほか、直接又は《取引所A》を介して、電気の小売供給を行う事業を営む他の事業者に供給していた。
⑵ 電気の供給者の決定方法等
ア 2地区に所在する相対顧客は、電気の小売供給を行う事業を営む者又はその代理業者(以下「小売供給事業者等」という。)に見積りを提出させて、当該小売供給事業者等との間で交渉を行うなどして、自らが使用する電気の供給者を決定していた。
イ 2社は、代理業者が相対顧客に見積り提示する際に基準となる電気料金の下限値をあらかじめ定め、又は、代理業者が相対顧客に見積り提示する電気料金等について指示していた。
ウ 2社は、紹介業者から紹介を受けて、2地区に所在する相対顧客に見積り提示することがあった。
エ 中国電力管内に所在する官公庁等は、競争入札の方法により、電気の小売供給を行う事業を営む者が提示した電気料金のうち最も低い電気料金を提示した者を自らが使用する電気の供給者として決定していた。
2 合意及び実施方法等
⑴ 旧一般電気事業者の間では、かねてから、電気の小売供給に係る営業活動の方針、状況等について情報交換が行われていたところ、関西電力は、平成29年11月頃に、「仁義切り」と称して、中国電力管内で相対顧客の獲得のための営業活動を開始する旨及び中国電力管内の官公庁入札に参加する旨を中国電力に伝えた。その際に、2社は、役員級の者による情報交換を継続することとした。
⑵ 平成29年11月頃以降、中国電力管内に所在する相対顧客の獲得のために関西電力が中国電力管内に営業拠点を設置して安値の見積り提示による営業活動を開始したことや、中国電力管内に所在する官公庁等が実施する競争入札に関西電力が参加したことを契機として、2社は、以下の行為を行った。
ア 互いに、相手方の供給区域に所在する相対顧客を獲得するため、又は、自社の供給区域に所在する相対顧客を相手方に獲得されることを防ぐため、相対顧客に対して安値の見積り提示をした。
イ 中国電力管内に所在する官公庁等が使用する電気の供給者となるため、中国電力管内の官公庁入札で安値の電気料金を提示した。
⑶ 前記⑵により、2地区に所在する相対顧客及び中国電力管内に所在する官公庁等の電気料金の水準が低下したことから、2社は、それぞれ、電気料金の水準の低落を防止して自社の利益を確保する必要性を認識した。
⑷ 2社は、平成30年6月頃以降、役員級の者が面談するなどして、遅くとも同年11月8日までに、相対顧客に対する安値の見積り提示及び中国電力管内の官公庁入札での安値の電気料金の提示による電気料金の水準の低落を防止して自社の利益の確保を図るため、
ア 互いに、相手方の供給区域に所在する相対顧客の獲得のための営業活動を制限する
イ 関西電力にあっては、中国電力管内において同日以降順次実施される官公庁入札における入札参加及び安値による入札を制限する
ことを合意した。
⑸ 2社は、当該合意の下に、
ア 相手方の供給区域に所在する相対顧客に対する見積り提示を、代理業者を通じて行うもの、紹介業者から相対顧客の紹介を受けて行うもの及び相対顧客から見積り提示の依頼を受けるなどして行うものに限定する
イ 相手方の供給区域において、相対顧客に対して見積り提示する際に、関西電力にあっては見積りの基準となる電気料金の下限値を引き上げること、中国電力にあっては見積り提示する電気料金の基準を引き上げることにより、相手方の供給区域に所在する相対顧客に見積り提示する電気料金の水準を上昇させる
ウ 自社の供給区域において、相対顧客に対して見積り提示する際に、見積りの基準となる電気料金の下限値を引き上げることなどにより、自社の供給区域に所在する相対顧客に見積り提示する電気料金の水準を維持又は上昇させる
エ 関西電力にあっては、中国電力管内の官公庁入札について、1年間に供給する電力量が30万キロワットアワー未満の官公庁入札に参加しないこと及び電気料金を提示する際に基準となる下限値を引き上げて当該下限値未満の電気料金を提示しないことを中国電力に伝える
オ 中国電力にあっては、中国電力管内の官公庁入札で提示する電気料金の水準を上昇させる
などしていた。
3 実施状況
⑴ 2社は、役員級の者が面談するなどして、互いに、相手方の供給区域に所在する相対顧客の獲得のための営業活動の制限に係る状況を確認するなどし、前記2⑷の合意の実効を確保していた。
⑵ 2社は、前記2⑸により、互いに、相手方の供給区域に所在する相対顧客の獲得のための営業活動を制限し、また、自社の供給区域に所在する相対顧客の電気料金の水準を維持又は上昇させていた。
⑶ 前記2⑸により、関西電力にあっては中国電力管内の官公庁入札において入札参加及び安値による入札を制限し、また、中国電力にあっては中国電力管内に所在する官公庁等の電気料金の水準を上昇させていた。
4 合意の消滅
関西電力は、令和2年10月29日までに、課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第7号)第1条第1項の規定に基づき、公正取引委員会に対して様式第1号による報告書を提出するとともに、自社における電気の小売供給に係る部門の責任者に対して前記2⑷の合意に基づく行為を行わない旨の指示を行い、同日以降、同合意に基づく行為を行っていない。このため、同日以降、同合意は事実上消滅しているものと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば、2社は、共同して、2地区に所在する相対顧客及び中国電力管内に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気について、互いに、相手方の供給区域に所在する相対顧客の獲得のための営業活動を制限すること、並びに、関西電力にあっては、中国電力管内において平成30年11月8日以降順次実施される官公庁入札における入札参加及び安値による入札を制限することを合意することにより、公共の利益に反して、2地区に所在する相対顧客及び中国電力管内に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、中国電力については、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が自主的に取りやめられたものではないこと等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、中国電力に対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。

令和5年3月30日

委員長  古  谷  一  之
委 員  山  本  和  史
委 員  三  村  晶  子
委 員  青  木  玲  子
委 員  𠮷  田  安  志

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