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独禁法3条後段
令和05年(措)第4号
福岡市中央区渡辺通二丁目1番82号
九州電力株式会社
同代表者 代表取締役 《 氏 名 》
福岡市中央区薬院三丁目2番23号KMGビル
九電みらいエナジー株式会社
同代表者 代表取締役 《 氏 名 》
公正取引委員会は、上記の者らに対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。
なお、主文、理由及び別紙中の用語のうち、別紙「用語」欄に掲げるものの定義は、別紙「定義」欄に記載のとおりである。
主 文
1 九州電力株式会社(以下「九州電力」という。)及び九電みらいエナジー株式会社(以下「九電みらいエナジー」という。)の2社(以下「九電2社」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
⑴ 九州電力管内又は関西電力管内(以下「2地区」という。)に所在する官公庁等(競争入札等により自らが使用する電気の供給者を決定する者に限る。以下同じ。)に対して小売供給を行う電気について、九電2社及び関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)の3社(以下「3社」という。)が、遅くとも平成30年10月12日以降(九電みらいエナジーにあっては遅くとも同月31日以降)共同して行っていた、互いに、相手方(九電2社にあっては関西電力を、関西電力にあっては九電2社をいう。以下同じ。)の供給区域において同日以降順次実施される官公庁入札等で安値による電気料金の提示を制限する旨の合意が消滅していることを確認すること。
⑵ 今後、他の事業者(九州電力にあっては九電みらいエナジーを、九電みらいエナジーにあっては九州電力を除く。以下主文において同じ。)と共同して、2地区に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気について、互いに、官公庁入札等で安値による電気料金の提示を制限する行為を行わず、自主的に官公庁入札等において提示する電気料金の決定を行うこと。
⑶ 今後、電気の小売供給を行う事業を営む他の事業者と、2地区に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気について、電気料金及び官公庁入札等での電気料金の提示に関する情報交換を行わないこと。
2 九電2社は、それぞれ、前項に基づいて採った措置を、2地区に所在する官公庁等に周知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの周知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 九電2社は、今後、他の事業者と共同して、2地区に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気について、互いに、官公庁入札等で安値による電気料金の提示を制限する行為を行ってはならない。
4 九電2社は、今後、電気の小売供給を行う事業を営む他の事業者と、2地区に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気について、電気料金及び官公庁入札等での電気料金の提示に関する情報交換を行ってはならない。
5 九電2社は、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前2項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
⑴ 役員及び従業員に対する、電気の小売供給に係る営業活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の周知徹底(九電みらいエナジーにあっては当該行動指針の作成及び役員及び従業員に対する周知徹底)
⑵ 電気の小売供給に係る営業活動に関する独占禁止法の遵守についての、当該営業活動に従事する役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者及び第三者による定期的な監査
⑶ 独占禁止法違反行為に係る調査への協力を行った者に対する適切な取扱いを定める規程の作成
6 九電2社は、それぞれ、第1項、第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
理 由
第1 事実
1 関連事実
⑴ 名宛人等の概要
ア 九州電力は、肩書地に本店を置き、自ら発電し、又は《発電事業者A》等から調達した電気の小売供給を行う事業を営む者である。
イ 九電みらいエナジーは、肩書地に本店を置き、九州電力等から調達した電気の小売供給を行う事業を営む者である。
ウ 九州電力は、九電みらいエナジーの株式の全てを保有し、九電みらいエナジーによる電気の小売供給を行う事業の方針を定め、当該方針に基づき九電みらいエナジーに当該事業を行わせていた。
エ 名宛人以外の関西電力は、大阪市北区中之島三丁目6番16号に本店を置き、自ら発電し、又は《発電事業者A》等から調達した電気の小売供給を行う事業を営む者である。
オ 九州電力及び関西電力(以下「2社」という。)は、従来、電気事業法(昭和39年法律第170号)による参入規制によって自社の供給区域における電気の小売供給の独占が認められていた者(以下「旧一般電気事業者」という。)であった。
カ 2社は、電気の小売供給の自由化(特別高圧需要にあっては平成12年3月、高圧大口需要にあっては平成16年4月、高圧小口需要にあっては平成17年4月。)以降も、それぞれ、九州電力にあっては九州電力管内において、関西電力にあっては関西電力管内において、各供給区域における電気の需要の大部分に相当する電気を自ら発電し、又は《発電事業者A》等から調達しており、当該自ら発電するなどした電気を、自ら小売供給するほか、直接又は《取引所A》を介して、電気の小売供給を行う事業を営む他の事業者に供給していた。
⑵ 電気の供給者の決定方法
2地区に所在する官公庁等は、競争入札等の方法により、電気の小売供給を行う事業を営む者が提示した電気料金のうち最も低い電気料金を提示した者を自らが使用する電気の供給者として決定していた。
2 合意及び実施方法等
⑴ 旧一般電気事業者の間では、かねてから、電気の小売供給に係る営業活動の方針、状況等について情報交換が行われていたところ、関西電力は、平成29年12月頃に、「仁義切り」と称して、九州電力管内の官公庁入札等に参加する旨を九州電力に伝えた。その際に、2社は、役員級の者による情報交換を継続することとした。
⑵ 平成29年12月頃以降、関西電力が九州電力管内の官公庁入札等に参加したことを契機として、3社は、2地区に所在する官公庁等が使用する電気の供給者となるため、2地区の官公庁入札等で安値の電気料金を提示した。
⑶ 前記⑵により、2地区に所在する官公庁等の電気料金の水準が低下したことから、2社は、それぞれ、2地区に所在する官公庁等の電気料金の水準の低落を防止して自社の利益を確保する必要性を認識した。
⑷ア 2社は、平成30年8月以降、役員級の者が面談するなどして、遅くとも同年10月12日までに、2地区の官公庁入札等における安値の電気料金の提示による電気料金の水準の低落を防止して自社の利益の確保を図るため、互いに、相手方の供給区域において同日以降順次実施される官公庁入札等で安値による電気料金の提示を制限することを合意した。
イ 九電みらいエナジーは、遅くとも平成30年10月31日までに、九州電力から前記アの面談などの内容を伝達され、前記アの合意に参加した。
⑸ 当該合意の下に、
ア 関西電力は、官公庁入札等で電気料金を提示する際に基準となる下限値を引き上げ、2地区の官公庁入札等で自社が提示する電気料金の水準を九州電力に伝える
イ 九州電力は、前記アの関西電力が提示する電気料金の水準を九電みらいエナジーに伝える
ウ 九電2社は、前記アの関西電力が提示する電気料金の水準を踏まえ、2地区の官公庁入札等で提示する電気料金を引き上げる
エ 九電2社は、九州電力管内において関西電力が電気の小売供給を行う官公庁等に係る契約電力の合計(以下、官公庁等に係る契約電力の合計を「需要規模」という。)等を踏まえ、関西電力管内において九電みらいエナジーが電気の小売供給を行う需要規模の上限を設定する
などしていた。
3 実施状況
⑴ 九州電力又は九電みらいエナジーは、関西電力との間で部長級の者による面談を開催するなどして、互いに、相手方の供給区域において、官公庁入札等で安値の電気料金を提示していないことを確認するなどし、前記2⑷の合意の実効を確保していた。
⑵ 関西電力は、前記2⑸により、九州電力管内の官公庁等が使用する電気の供給者にほとんどなっていなかった。
⑶ 九電2社は、前記2⑸により、関西電力管内において九電みらいエナジーが小売供給を行う需要規模を、九州電力管内において関西電力が小売供給を行う需要規模等を踏まえて設定した上限以下に抑制していた。
⑷ 3社は、前記2⑸により、2地区に所在する官公庁等の電気料金の水準を上昇させていた。
4 合意の消滅
関西電力は、令和2年10月29日までに、課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第7号)第1条第1項の規定に基づき、公正取引委員会に対して様式第1号による報告書を提出するとともに、自社における電気の小売供給に係る部門の責任者に対して前記2⑷の合意に基づく行為を行わない旨の指示を行い、同日以降、同合意に基づく行為を行っていない。このため、同日以降、同合意は事実上消滅しているものと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば、3社は、共同して、2地区に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気について、互いに、相手方の供給区域において平成30年10月12日以降順次実施される官公庁入札等で安値による電気料金の提示を制限することを合意することにより、公共の利益に反して、2地区に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、九電2社については、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が自主的に取りやめられたものではないこと等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、九電2社に対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。
令和5年3月30日
委員長 古 谷 一 之
委 員 山 本 和 史
委 員 三 村 晶 子
委 員 青 木 玲 子
委 員 𠮷 田 安 志