文字サイズの変更
背景色の変更
審査規則22条1項
令和4年(査)第4号
≪住所略≫
異議申立人 ≪A1≫
同代理人弁護士 平山 賢太郎
令和4年(査)第4号熊本県漁業協同組合連合会に対する件(以下「本件審査事件」という。)について、異議申立人から、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第47条第1項及び同条第2項の規定に基づく審査官の処分に対し、公正取引委員会の審査に関する規則(以下「審査規則」という。)第22条第1項の規定に基づく異議の申立てがあったので、当委員会は、次のとおり決定する。
主文
本件異議の申立てを却下する。
理由
1 本件審査事件につき、令和5年3月16日、公正取引委員会審査官≪氏名略≫が異議申立人に対して行った各出頭命令(同月23日を出頭日とするもの及び同月24日を出頭日とするものの2件。いずれも同月18日に送達。以下「本件各出頭命令」という。)について、同月24日、異議申立人から、当委員会に対し、審査規則第22条第1項の規定に基づき、別添上申書のとおり異議の申立てがなされた。
2 異議申立人は、次のとおり、本件各出頭命令は違法、不当である旨主張する。
① 出頭命令において、審査規則第22条第1項の所定の異議申立期間(処分を受けた日から1週間)内に出頭日時が到来するものは、適正手続を公正取引委員会内部において担保しようとする異議申立制度の存在意義を無視するものであって、違法、不当である。
② 異議申立人は、任意の供述聴取に応じるために、令和5年4月18日に公正取引委員会九州事務所に出頭することを予定しているから、これに先立って出頭命令や審尋を行う必要はなく、その必要性がない本件各出頭命令は違法、不当である。
③ 本件各出頭命令に先立って行われた任意の供述聴取において、熊本県漁業協同組合連合会(以下「熊本県漁連」という。)は、熊本県漁連の代表理事を務める異議申立人が審査官から申し向けられた言辞によって、弁護士から法的助言を受ける機会を奪われ、代理人弁護士を選任する権利を妨害されたものであり、これらと一連の手続にある異議申立人に対する本件各出頭命令は、違法、不当である。
3 しかしながら、審査官は、「事件について必要な調査をするため」に、事件関係人等に対して出頭命令を発することができるものである(独占禁止法第47条第1項第1号、同条第2項)。
そして、異議申立人が主張する前記2①についてみれば、出頭命令においてその出頭を命ずる日時に関し、当該出頭命令に対する異議申立期間内であってはならないという法令上の制約はなく、異議申立期間内であれば出頭を命じられた日時以降であっても、異議申立てを行うことを妨げられるものではないから、当該出頭命令が違法、不当となるものではない。
また、前記2②についてみれば、審査官は、令和5年3月23日及び24日に供述聴取を行うことを予定して本件各出頭命令を発出しているところ、異議申立人からの申入れにより同年4月18日に任意の供述聴取を行うことを了解したからといって、上記3月中になおも供述聴取を行う必要があるとして発出した本件各出頭命令が、違法、不当になると解する理由は全くない。
さらに、前記2③の事実は、何ら異議申立人に対する本件各出頭命令の違法性、不当性を基礎付ける事由には当たらない。
したがって、異議申立人の主張はいずれも理由がない。
その他、審査官は、法令・内規等に照らし、適法・適切に本件各出頭命令を発出しており、この過程において何ら違法・不当な取扱いは存しない。
4 以上のとおり、異議申立人による本件の異議申立てはその理由がないので、主文のとおり決定する。
令和5年4月7日
公正取引委員会
別添
上申書
令和5年3月24日
公正取引委員会御中
熊本県漁業協同組合連合会
代表理事会長 ≪A1≫
平山法律事務所
電話 ≪番号略≫
FAX ≪番号略≫
代理人弁護士 平山 賢太郎
独占禁止法47条1項1号に規定する処分に対する異議の申立て
当職は、上記の者の代理人として、審査官が独占禁止法47条2項の規定に基づいてした同条1項1号に規定する出頭命令に対して、別紙のとおり、公正取引委員会の審査に関する規則22条1項の規定に基づき異議を申し立てます。
別紙
熊本県漁業協同組合連合会は貴会の令和4年(査)第4号事件について、佐賀県有明海漁業協同組合は貴会の令和4年(査)第5号事件について、それぞれ審査を受けておりますところ、両会はそれぞれ、貴会の審査に対して誠実に協力し貴会に真相を解明していただくことをその対応方針としております。
貴会審査官は、令和5年3月16日付け出頭命令書によって、本書面本文記載の者を含む4名に対して貴会事務総局審査局第四審査への出頭を命じ、上記出頭命令書はその後に名宛人に送達されました。
公正取引委員会の審査に関する規則22条1項は出頭命令に対する異議申立の期間について規定しているところ、上記出頭命令書のなかには、異議申立期間が経過する前に出頭日時が到来するものがあります。これは、適正手続を貴会内部において担保しようとする異議申立制度の存在意義を貴会審査官が無視し否定しているものであり、上記出頭命令には適正手続を没却する明白な違法・不当があります。かかる違法性・不当性は、一連の出頭命令、審尋手続及び将来の審査手続へと連鎖していくことを避けられません。
また、上記出頭命令書の名宛人は、本件について任意に事情聴取を受けるため、本年4月に貴会九州事務所へ出頭することを申し出ており、かつ、当該日程調整は関係人と貴会審査担当課との間ですでに完了しています。かかる状況において、審査官がことさら出頭命令に基づいて審尋を行うことに審査のため必要があるといえませんので、この点においても、上記出頭命令には明白な違法・不当があります。
ところで、上記事件について審査官指定を受けた審査官らは、上記出頭命令に先立って行われた任意の事情聴取において、関係人らの会長や組合長に対して
「弁護士をつければ金がかかりますよ。確約手続なら簡単に終わりますよ」
「そういう無駄な金を使うよりも、県漁連で検討してください」
「弁護士をつける話があるけれど、弁護士に公取専門はいません」
などと申し向け、もって、関係人らが代理人弁護士を選任することを妨害し阻止しました。そして実際に、関係人らに対する審査手続は、代理人弁護士が選任されることがないまま長期間にわたって進行しました。
関係人らは、代理人弁護士を選任することを上記審査官らの上記発言によって妨害されましたので、任意の事情聴取手続が適正に行われたか否かについて代理人弁護士からの法的助言を通じて検証する機会を奪われました。また、審査手続の選択について「確約手続なら簡単に終わりますよ」など誘導を受けて確約手続の利用を強く迫られたにもかかわらず、確約手続を含む各種の審査手続の内容や運用実態について代理人弁護士から法的助言を受ける機会を奪われ、関係人の一部は実際に確約手続の利用を申し出る旨の決議を行いました。
上記審査官らが上記出頭命令を用いて実施する審尋において、上記審査官らは、代理人弁護士の選任を違法かつ不当に妨害された状態にあった関係人らやその会長等から獲得した供述、電子メール通信その他の証拠に基づいて、さらにはこれら証拠の内容に基づいて第三者から獲得した供述その他の証拠に基づいて、質問を行い陳述を獲得することとなります。代理人選任妨害の違法性・不当性は、一連の出頭命令、審尋手続及び将来の審査手続へと連鎖していくことを避けられません。
以上のことから、上記出頭命令は取り消されるべきであると思料しますので、公正取引委員会の審査に関する規則22条1項の規定に基づき異議を申し立てます。
なお、本文記載の者は、上記出頭命令が合法なものであることが異議申立てに関する手続を経て確認された場合には日程調整を経て出頭命令に応じたいと考えておりますので、その旨申し添えます。
以 上
注釈 《 》部分は、公正取引委員会事務総局において原文に匿名化等の処理をしたものである。