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王子コンテナー(株)ほか11名による審決取消請求事件

独禁法3条後段、独禁法7条の2
東京高等裁判所

令和3年(行ケ)第8号(甲事件)、第13号(乙事件)

判決

令和5年4月21日

当事者の表示 別紙1当事者目録のとおり

主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、原告らの負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 甲事件
被告が甲事件原告らに対して令和3年2月8日付けでした公正取引委員会平成26年(判)第3号ないし第138号排除措置命令審判事件及び課徴金納付命令審判事件についての審決のうち、主文第3項の甲事件原告らに対する部分を取り消す。
2 乙事件
被告が乙事件原告に対して令和3年2月8日付けでした公正取引委員会平成26年(判)第3号ないし第138号排除措置命令審判事件及び課徴金納付命令審判事件についての審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
(1) 甲事件は、甲事件原告らが、公正取引委員会平成26年(判)第3号ないし第138号排除措置命令審判事件及び課徴金納付命令審判事件について、被告が令和3年2月8日付けでした審決(以下「本件審決」という。)のうち、甲事件原告らの審判請求をいずれも棄却する部分(主文第3項のうち甲事件原告らに係る部分)の取消しを求める事案、乙事件は、乙事件原告が、本件審決のうち、乙事件原告の審判請求を棄却する部分の取消しを求める事案であり、本件に係る手続の経過は、(2)のとおりである。なお、以下の記述で用いる別紙2用語一覧記載の用語の定義は同別紙記載のとおりである。
(2)ア 平成26年(判)第3号ないし第64号審判事件(段ボールシートの販売に係るもの。以下「第1事件」という。)
(ア) 被告は、原告らを含む57社(別紙3事業者一覧の番号1から57までの各社。以下「第1事件事業者57社」という。)が共同して、特定段ボールシートの販売価格を引き上げる旨合意することにより、公共の利益に反して、特定段ボールシートの販売分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、平成25年法律第100号による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)2条6項の不当な取引制限に該当し、同法3条に違反するものであるとして、平成26年6月19日、原告らを含む55社(第1事件事業者57社のうち別紙3事業者一覧の番号9及び25の2社を除く55社)に対し、排除措置を命じた(平成26年(措)第11号。以下「第1事件排除措置命令」といい、同命令において認定された違反行為を「第1事件違反行為」という。)。
(イ) また、被告は、第1事件違反行為は、独占禁止法7条の2第1項1号に規定する商品の対価に係るものであるとして、原告らを含む48社(上記(ア)の55社のうち別紙3事業者一覧の番号11、35、39、49、51、52及び56の7社を除く48社)に対し、それぞれ課徴金の納付を命じた(原告らに対して納付が命じられた課徴金の額は別紙4課徴金一覧の(表1)の課徴金額欄のとおりである。以下、当該課徴金納付命令を「第1事件課徴金納付命令」という。)。
(ウ) 原告らを含む32社(別紙3事業者一覧の番号1から3まで、5、6、8、10、12から24まで、27、28、31、33、36、38、39、42、45、47、51及び54の各社)は、それぞれ第1事件排除措置命令の全部の取消しを求める審判請求をするとともに、原告らを含む30社(上記32社のうち別紙3事業者一覧の番号39及び51の2社を除く30社)は、それぞれ第1事件課徴金納付命令の全部の取消しを求める審判請求をした(第1事件)。なお、これらの審判請求の日は、甲事件原告らにつき平成26年7月25日、乙事件原告につき同月22日である。
イ 平成26年(判)第65号ないし第138号審判事件(段ボールケースの販売に係るもの。以下「第2事件」という。)
(ア) 被告は、原告らを含む63社(別紙3事業者一覧の番号1から63までの各社。以下「第2事件事業者63社」といい、第1事件事業者57社と併せて「本件各事業者」という。)が共同して、特定段ボールケースの販売価格を引き上げる旨合意することにより、公共の利益に反して、特定段ボールケースの販売分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法2条6項の不当な取引制限に該当し、同法3条に違反するものであるとして、平成26年6月19日、原告らを含む61社(第2事件事業者63社のうち別紙3事業者一覧の番号9及び25の2社を除く61社)に対し、排除措置を命じた(平成26年(措)第12号。以下「第2事件排除措置命令」といい、同命令において認定された違反行為を「第2事件違反行為」という。また、第1事件排除措置命令と第2事件排除措置命令を併せて「本件各排除措置命令」といい、第1事件違反行為と第2事件違反行為を併せて「本件各違反行為」という。)。
(イ) また、被告は、第2事件違反行為は、独占禁止法7条の2第1項1号に規定する商品の対価に係るものであるとして、原告らを含む60社(上記(ア)の61社のうち別紙3事業者一覧の番号57を除く60社)に対し、それぞれ課徴金の納付を命じた(原告らに対して納付が命じられた課徴金の額は別紙4課徴金一覧の(表2)の課徴金額欄のとおりである。以下、当該課徴金納付命令を「第2事件課徴金納付命令」といい、第1事件課徴金納付命令と併せて「本件各課徴金納付命令」という。)
(ウ) 原告らを含む37社(別紙3事業者一覧の番号1から3まで、5、6、8、10、12から24まで、27、28、31、33、36、38、39、42、45、47、51、54及び58から62までの各社)は、それぞれ第2事件排除措置命令の全部の取消しを求める審判請求をするとともに、第2事件課徴金納付命令の全部の取消しを求める審判請求をした(第2事件)。なお、これらの審判請求の日は、甲事件原告らにつき平成26年7月25日、乙事件原告につき同月22日である。
ウ 本件審決(原告らに係るもの)
被告は、令和3年2月8日、第1事件課徴金納付命令のうち、甲事件原告王子コンテナーに対し4億8642万円を超えて課徴金の納付を命じた部分、第2事件課徴金納付命令のうち、甲事件原告王子コンテナーに対し12億8673万円、甲事件原告北海道森紙業に対し6586万円をそれぞれ超えて課徴金の納付を命じた部分を取り消したほか、原告らの第1事件及び第2事件の各審判請求をいずれも棄却する旨の審決をした。
そこで、原告らは、これを不服として、令和3年3月10日、本件審決の取消しを求める本件訴えを提起した。
エ 平成26年(判)第139号ないし第142号審判事件(特定ユーザー向け段ボールケースの販売に係るもの。以下「関連事件」という。)
被告は、レンゴー株式会社、株式会社トーモク及び日本トーカンパッケージ株式会社の3社は、甲事件原告王子コンテナー及び甲事件原告森紙業と共同して(以下、これら大手の段ボール製造業者である5社を「大手5社」という。)、特定ユーザー向け段ボールケースの販売価格又は加工賃を引き上げる旨合意することにより、公共の利益に反して、特定ユーザー向け段ボールケースの取引分野における競争を実質的に制限していたなどとして、平成26年6月19日、大手5社のうち、上記3社に対し、排除措置を命じるとともに、同日、課徴金の納付を命じた。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲各証拠から認められ、原告らにおいても実質的証拠の不存在を積極的に主張していない事実)
(1) 本件各事業者の概要
ア 原告らを含む本件各事業者(以下、原告ら以外の本件各事業者については、別紙3事業者一覧の「略称」欄記載のとおり略称する。ただし、同別紙の略称中「被審人」とあるのをいずれも削除する。)は、いずれもコルゲータ(段ボール製造機)を有する段ボール製造業者であり、段ボール原紙を加工して段ボールシートを製造するとともに、段ボールシートを加工して段ボールケースを製造する事業を営む者である(このうち、第1事件事業者57社は、自社加工用の段ボールシートのほか、他の需要者向けの段ボールシートを製造していた者である。)。本件各事業者の東日本地区における段ボール製品(段ボールシートと段ボールケースの双方又はいずれか一方をいう。以下同じ。)の工場等(製造拠点)は、それぞれ別紙3事業者一覧の「製造拠点」欄記載の都道府県に所在していた。(査1~63)
イ 本件各事業者のうち、グループ関係にある事業者は、次のとおりである。
(ア) レンゴーは、セッツカートン、大和紙器、マタイ紙工、アサヒ紙工、イハラ紙器及び甲府大一実業の親会社である(査1、6、8、12~15。以下、レンゴーが形成する企業グループを「レンゴーグループ」という。)。
(イ) 王子ホールディングス株式会社(平成24年10月1日の商号変更前の商号は王子製紙株式会社であり、以下、商号変更の前後を通じて「王子ホールディングス」ということがある。)は、甲事件原告王子コンテナー(同日の商号変更前の商号は王子チヨダコンテナー株式会社である。)及び甲事件原告森紙業の親会社である(以下、王子ホールディングスが形成する企業グループを「王子グループ」という。)。なお、静岡王子コンテナーは、王子ホールディングスの子会社であったが、同日、甲事件原告王子コンテナーに吸収合併された。
また、甲事件原告ムサシ王子コンテナー及び甲事件原告関東パックは、甲事件原告王子コンテナーの子会社である。
(ウ) 甲事件原告森紙業は、甲事件原告常陸森紙業、甲事件原告長野森紙業、甲事件原告群馬森紙業、甲事件原告新潟森紙業、甲事件原告仙台森紙業、甲事件原告静岡森紙業及び甲事件原告北海道森紙業の親会社である。
(エ) トーモクは、大一コンテナー及びトーシンパッケージの親会社である(査3、27、28。ただし、大一コンテナーの親会社となったのは平成24年3月である。)。
(オ) 大王製紙株式会社(以下「大王製紙」という。)は、中部大王製紙パッケージの親会社である。また、大王製紙パッケージは、大王製紙の子会社であったが、平成25年4月1日、中部大王製紙パッケージに吸収合併された(これに伴い、中部大王製紙パッケージは現商号(大王パッケージ株式会社)に商号変更した。)。(査9、26)
(2) 東日本段ボール工業組合
ア 東日本段ボール工業組合(以下「東段工」という。)は、その定款上、東日本地区において、コルゲータを有し、段ボール製品の生産の事業を営むことを資格要件とする組合である。本件各事業者のうち、別紙3事業者一覧の「組合員」欄に〇が記載されている51社は、本件当時(後記(4)アのとおりレンゴーにより段ボール製品の値上げの公表がされた平成23年8月26日から後記(7)アのとおり被告の立入検査が行われた平成24年6月5日までの時期をおおむね指す。以下同じ。)、いずれも東段工の組合員であった(以下東段工の組合員を単に「組合員」ということがあり、組合員でない者を「非組合員」という。)。(査478~481)
イ 東段工は、全国段ボール工業組合連合会(以下「全段連」という。)の会員である。全段連の会員には、地区に応じて、東段工のほかに、中日本段ボール工業組合、西日本段ボール工業組合、南日本段ボール工業組合がある。(査480~482)
ウ 東段工は、その最高の意思決定機関である総会及び業務の執行を決定する機関である理事会を置いているほか、次のとおり三木会及び支部を置いていた(査470、478、479、483~486)。
(ア) 三木会
三木会は、その規約上、組合員の地位向上のため、全段連及び東段工理事会決議事項の伝達、組合員に共通する課題に関する情報又は資料の提供等を目的として、理事会の下に置かれた組織であり、平成17年8月2日付け「東段工の組織と業務について」と題する書面において、三木会は、東段工の事業の連絡推進及び実行の徹底を図るための事業並びに支部との情報交換及び取りまとめを行うものと位置付けられていた(ただし、実際の役割等には争いがある。)。
三木会は、会長、幹事長及び副幹事長のほか、各支部を代表する支部長を含む委員で構成されており、本件当時、別紙5三木会構成員・出席者一覧(ただし、「被審人」とあるのをいずれも削除する。以下同じ。)の「役職」欄記載の各役職に「構成員」欄記載の各所属会社の役員又は従業員が就任していた。このうち各支部の支部長以外の委員は、レンゴー、セッツカートン、大和紙器、トーモク、甲事件原告王子コンテナー、甲事件原告森紙業、ダイナパック、日本トーカンパッケージ及び大王製紙パッケージの営業本部長級の者ら並びに福野段ボール工業の代表取締役であった(これらの10社が別紙2用語一覧の「本部役員会社」に当たる。)。
三木会の会合は、原則として毎月開催されることとされていた。
(イ) 支部
東段工には、別紙6支部一覧(ただし、「被審人」とあるのをいずれも削除し、埼玉支部の構成員欄の「福野ダンボール工業」を「福野段ボール工業」に、埼玉支部の支部長襴の「《I3》」を「《I3》」に、北海道支部の構成員欄の「北海道織紙業」を「北海道森紙業」にそれぞれ改める。以下同じ。)の「支部」欄記載の9支部が置かれ、これらの支部は、同別紙の「地区」欄記載の都道府県に工場等の事業所を有する組合員らにより構成され、本件当時は、同別紙の「構成員」欄記載の各組合員が当該支部に所属していたところ、支部開催の会合は、主に当該地区に所在する工場等の事業所における営業責任者(工場長又は事業所長等)を構成員として開催され(ただし、代表取締役又は営業担当の取締役、部長若しくは課長等が出席していた事業者もあった。以下、単に「営業責任者」という場合、これらの者を指す。)、上記構成員のうち同別紙「支部長(所属会社)」欄記載の者らがそれぞれ当該支部の支部長を務めていた。
(3) 段ボール市場の概要
ア 段ボール製品の概要
段ボールシートは、コルゲータを用いて、波型に成型した中しんの片面又は両面に、ライナと呼ばれる紙を張り合わせたものである。なお、中しん及びライナは、段ボール原紙と総称される。また、段ボールシートに印刷、切れ込みを入れる打ち抜き等の加工を施し、箱型に組み立て可能にしたものが段ボールケースである。段ボールシートについては、日本工業規格において外装用段ボール(日本工業規格「Z 1516:2003」)が規定されているところ、本件各事業者は、いずれもこの規格に該当する段ボールシート及びこれを加工した段ボールケースを製造しており、クラウン・パッケージ(この規格に当たらない製品も多く製造している。)を除く62社において製造していた段ボール製品は、専らこの規格に当たるものであった。(査177、229、265、298、306、453、487~489)
イ 段ボール製品の製造業者(以下「段ボールメーカー」という。)は、段ボール原紙又は段ボールシートの調達方法により、①段ボール原紙、段ボールシート及び段ボールケースのいずれも製造する事業者(以下「一貫メーカー」という。)、②段ボール原紙の製造業者(以下「原紙メーカー」という。)から段ボール原紙を購入して段ボールシート及び段ボールケースを製造する事業者(以下「専業メーカー」という。)並びに③コルゲータを保有せず、上記①又は②の事業者から段ボールシートを購入して段ボールケースを製造する事業者(以下「ボックスメーカー」という。)に大別される。主な原紙メーカーには、レンゴー、王子マテリア株式会社(王子グループに属している。以下「王子マテリア」という。)、大王製紙、《事業者A》、《事業者B》等があるところ、レンゴー及び王子マテリアとグループ関係にある甲事件原告王子コンテナーが一貫メーカーに位置付けられ、その余の本件各事業者は、いずれも専業メーカーに当たるものであった。(査251、300、490)
ウ 段ボール製品の流通・取引
(ア) 段ボール製品の需要者(ユーザー)は、段ボールシートについては、主として、ボックスメーカーなどの段ボールケースの製造業者であり、段ボールケースについては、主として、食品、飲料、自動車部品、電気製品等の製造業者である(査166、333、334、367、375、424、432、435、438、449、467)。
(イ) 段ボールケースのユーザーは、全国に所在する工場等の拠点において使用する段ボールケースにつき、購入価格等の取引条件の交渉を交渉担当部署において一括して行う「広域ユーザー」、「ナショナルユーザー」などと呼ばれる大口のユーザー(以下「広域ユーザー」という。)とそれ以外の地場ユーザー等に大別される(査142、234、392、613)。
(ウ) 段ボール製品の営業活動は、ユーザーの交渉担当部署に対して行われていた。段ボールシートの販売及び地場ユーザーに対する段ボールケースの販売については、主に段ボールメーカーの各工場等における営業担当者が営業活動を行い、当該ユーザーとの間で交渉をして販売価格等の取引条件を決定していた。(査151、164、275、613)
(エ) なお、乙事件原告は、平成23年4月以降、自社で製造した段ボール製品の販売業務を子会社の晃里株式会社(以下「晃里」という。)に委託しており、後記(6)の支部会等のうち、乙事件原告が所属していた支部における会合には、乙事件原告の代わりに晃里の営業担当者が出席していた(査418~421)。
(4) 段ボール原紙及び段ボール製品の値上げの動き
ア レンゴーにおける段ボール原紙及び段ボール製品の値上げの公表
レンゴーは、平成23年8月26日、各種原燃料価格の高騰を理由に、同年10月1日出荷分から、段ボール原紙の販売価格を現行価格から1㎏当たり7円以上、段ボールシートの販売価格を現行価格から1㎡当たり8円以上、段ボールケースの販売価格を現行価格から13%以上、それぞれ引き上げる旨公表した。レンゴーは、同年9月1日、自社のグループ会社を対象に、段ボール製品の値上げに関する説明会を開催し、上記の値上げの方針を伝達した。(査1、364、542、543)
イ 王子グループにおける段ボール原紙及び段ボール製品の値上げの公表
王子グループにおいても、平成23年9月27日に、王子マテリアが段ボール原紙の販売価格を現行価格から10%以上引き上げる旨公表するとともに(上記値上げ幅については、全品種1kg当たり6円と案内されていた。)、翌28日には、甲事件原告王子コンテナーが段ボールシート及び段ボールケースの販売価格を同年11月21日出荷分からそれぞれ12%以上引き上げる旨公表した(段ボールシートに係る上記値上げ幅は、1㎡当たり7円以上に相当するものであった。)。甲事件原告王子コンテナーは、この公表に先立つ同年9月26日に、静岡王子コンテナー、甲事件原告ムサシ王子コンテナー、甲事件原告関東パックを含むグループ会社の各工場長を対象として緊急電話会議を開催し、上記の値上げの方針を伝達するとともに、同月27日には、これらの価格改定の実施について文書でグループ内に周知した。(査2、384、546~550)
ウ 他の原紙メーカーにおける段ボール原紙の値上げの公表
レンゴー及び王子マテリア以外の原紙メーカーにおいても、平成23年9月22日には《事業者B》が、同年10月4日には《事業者A》が、同月11日には大王製紙がそれぞれ段ボール原紙について同程度の値上げを行うことを公表した(査550)。
エ 他の大手の段ボールメーカーにおける段ボール製品の値上げの方針の決定
こうした中、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーに続き、他の大手の段ボールメーカーにあっても、次のとおり、社内又はグループ内で、段ボール製品の値上げの方針を決定するなどした。
(ア) 甲事件原告森紙業は、甲事件原告王子コンテナーの前記値上げの方針を踏まえ、平成23年9月20日に開催された役員会で、自社においても同じ値上げ方針に従って段ボール製品の値上げを実施することを決定し、同年10月4日、子会社である甲事件原告常陸森紙業、甲事件原告長野森紙業、甲事件原告群馬森紙業、甲事件原告新潟森紙業、甲事件原告仙台森紙業、甲事件原告静岡森紙業、甲事件原告北海道森紙業等を対象とした全社会議を開催し、上記の値上げ方針に従って同年11月21日の出荷分から段ボール製品の値上げを行うよう指示した(査5、16~22、300、375、551)。
(イ) トーモクは、平成23年10月12日、部室長・工場長会議を開催し、同年12月1日出荷分から、段ボールシート及び段ボールケースについて、それぞれ12%以上の値上げを行うことを社内に通知した(査3、235、242)。
(ウ) 日本トーカンパッケージは、平成23年10月13日及び14日に工場長会議を開催し、段ボールシートについて15%以上、段ボールケースについて12%以上の値上げを行うことを社内に周知した(査266、277)。
(エ) ダイナパックは、平成23年10月17日午前に開催された会議で、段ボールシートについて同年12月1日納入分から1㎡当たり7円以上の値上げを行うとともに、段ボールケースについて平成24年1月納入分から12%以上の値上げを行うことを決定し、平成23年11月2日、各事業所に対し、これらの値上げの方針を周知した(査7、336)。
(オ) 大王製紙は、平成23年10月13日に開催された会議で、子会社である大王製紙パッケージ、中部大王製紙パッケージ等に対して、同年11月21日以降、段ボールシートについて1㎡当たり8円以上、段ボールケースについて13%以上の値上げを行うよう指示した(査388、552)。
(5) 三木会等の開催
ア 本件当時、三木会は、平成23年9月22日及び同年10月17日にそれぞれ開催されたほか、それ以降も、平成24年5月頃まで継続的に開催された(開催場所は、いずれも東京都中央区に所在する紙パルプ会館であった。)。このうち平成23年9月22日、同年10月17日及び同年11月17日開催の三木会には、別紙5三木会構成員・出席者一覧の「会合出席状況」欄においてそれぞれの会合欄に〇が付されている構成員又は同欄に氏名が記載されている代理者が出席した。(査152、179、266、350、464、486、545、554、587、611)
イ また、本部役員会社のうち、大手5社は、東段工の会合である三木会とは別に、主に各社の営業本部長級の者らを出席者とする「5社会」と称する会合(以下「5社会」という。)を開催し、専ら広域ユーザー向け段ボールケースの取引に関する諸問題について情報交換や協議を行っていた。そして、本件当時、5社会は、平成23年8月30日、同年9月26日、同年10月17日及び同月31日にそれぞれ開催されたほか、同年11月以降も継続して開催されていた。このうち、同年10月17日に開催された5社会では、大手5社の間で、個別の広域ユーザーに対する段ボールケースの値上げの実施について話し合うことが確認され、別紙2用語一覧の別表の「特定ユーザー」欄記載の各ユーザー(以下「特定ユーザー」という。)向け段ボールケースについて、個別のユーザーごとに入れ合い(同一のユーザーに対し複数の段ボールメーカーが段ボール製品を納入している状態のこと)となっている事業者の間で値上げの実施方法や値上げ交渉の状況に関する情報交換が行われ、これらの値上げの進捗状況が5社会に報告されていた。(査134、137、140、143、145、172、180、181、183~185、192、268、274、304~306、544、556、557、559~562、612~614)
(6) 支部会等(支部主催の会合その他支部所属の組合員の担当者を主な構成員とする会合をいう。以下「本件支部会等」という。)の開催
ア 東京・山梨支部
東京・山梨支部においては、従前から、同支部所属の組合員らの各営業責任者を構成員とする会合(以下「東京・山梨支部会」という。)が2か月に1回程度開催されていた。
本件当時、東京・山梨支部会は、平成23年10月19日に東京都新宿区内の飲食店で開催され(その際の出席者は、別紙7支部会等出席者一覧(ただし、「被審人」とあるのをいずれも削除する。以下同じ。)の「10月19日東京・山梨支部会」欄に対応する「出席者」欄記載のとおりである。)、それ以降も、平成24年4月頃まで継続的に開催された。
(以上、査412、419、424、437、438、446、457、467、563、590)
イ 新潟・長野支部
新潟・長野支部においては、従前から、同支部所属の組合員らの各営業責任者を構成員とする総会が年1回程度開催されていた。
また、新潟・長野支部所属の組合員らのうち、新潟県内に工場等を有する事業者の各営業責任者を主な出席者とする「四木会」などと称する会合(以下「新潟四木会」という。)が月1回程度開催されていたところ、同会合には、他に同県内に工場等を有する非組合員であるエヌディーケイ・ニシヤマなどの営業責任者が出席することもあった(その場合、「拡大四木会」と呼ばれることもあった。)。同様に、新潟・長野支部所属の組合員らのうち長野県内に工場等を有する事業者と同県内に工場等を有する非組合員である協和段ボールの各営業責任者を主な出席者とする「5社会」などと称する会合(以下「長野5社会」という。)が月1回程度開催されていたところ、同会合には、他に山梨県内に工場等を有する甲府大一実業の営業責任者が出席することもあった(ただし、新潟四木会及び長野5社会と新潟・長野支部との関係については争いがある。)。
本件当時、新潟四木会は、平成23年9月20日及び同年10月13日にそれぞれ開催された後、同月19日、新潟市内の飲食店で開催され(その際の出席者は、別紙7支部会等出席者一覧の「10月19日新潟四木会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、平成24年5月頃まで継続的に開催された。
また、本件当時、長野5社会は、平成23年9月27日に開催された後、同年10月24日、長野県松本市内の飲食店で開催され(その際の出席者は、別紙7支部会等出席者一覧の「10月24日長野5社会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、平成24年5月頃まで継続的に開催された。
(以上、査165、166、204、254、334、342、364、367、368、375、423、431、440、442、564、565)
ウ 北海道支部
北海道支部においては、従前から、支部主催の会合は開催されておらず、支部長も、移動に時間がかかるなどの事情により、三木会には出席しないのが通例であり、その場合、三木会の席上で配布された資料等は、東段工の事務局から支部長宛に送付されていた。
他方、北海道支部所属の組合員らと北海道内に工場等を有する非組合員である合同容器の各営業責任者を出席者とする「トップ会」などと称する会合(以下「トップ会」という。)が月1回程度開催されていたほか、これらの事業者の当該工場等における営業部長・課長級の者らが出席する「部課長会」などと称する会合(以下「部課長会」という。)が開催されていた(ただし、トップ会及び部課長会と北海道支部との関係については、争いがある。)。
本件当時、トップ会及び部課長会は、平成23年9月1日に両会合が開催された後、同年10月27日には、札幌市内のホテルで両会合が開催され(その際のトップ会の出席者は、別紙7支部会等出席者一覧の「10月27日トップ会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。ただし、トーモクの出席者「《C6》」を「《C15》」に、甲事件原告北海道森紙業の出席者「《C15》」を「《C6》」にそれぞれ改める。以下同じ。)、それ以降も、両会合は、平成24年5月頃まで継続的に開催された。
(以上、査170、171、207、259、369、371、405、566の5~15)
エ 群馬・栃木支部
群馬・栃木支部においては、従前から、同支部所属の組合員らの各営業責任者を構成員とする会合(以下「群馬・栃木支部会」という。)が月1回程度開催されていた。
また、これらの組合員のうち、群馬県内に工場等を有する事業者の当該工場における営業部長・課長級の者らを主な出席者とする「群馬会」などと称する会合(以下「群馬会」という。)と栃木県内に工場等を有する事業者の当該工場における営業部長・課長級の者らを主な出席者とする「栃木会」などと称する会合(以下「栃木会」という。)が月1回程度、同一の日に同一の場所で時間をずらすなどして開催されていた(ただし、群馬会及び栃木会と群馬・栃木支部との関係については、争いがある。)。このうち、栃木会には、栃木県内に工場等を有する非組合員である甲事件原告関東パック及び大日本パックスの各営業担当者が出席することがあった。
本件当時、群馬・栃木支部会は、平成23年9月30日及び同年10月13日にそれぞれ開催された後、同年11月14日、群馬県館林市内の複合施設の会議室で開催され(その際の出席者は、別紙7支部会等出席者一覧の「11月14日群馬・栃木支部会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、平成24年5月頃まで継続的に開催された。
また、群馬会及び栃木会は、平成23年9月15日に開催された後、同年10月27日、群馬県館林市内の複合施設の会議室で開催され(その際の出席者は、群馬会につき、別紙7支部会等出席者一覧の「10月27日群馬会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らであり、栃木会につき、同「10月27日栃木会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、同年11月28日に開催された。
(以上、査161、162、200、202、249、281、331、352、378、385、404、567、568の2~4)
オ 東北支部
東北支部においては、従前から、同支部所属の組合員らの各営業責任者を構成員とする総会が年1回程度開催されていた。
また、これらの組合員のうち宮城県内に工場等を有している事業者の各営業責任者を主な出席者とする「宮城支部会」、「宮城三木会」などと称する会合(以下「宮城支部会」という。)が数か月に1回程度開催されていた(ただし、宮城支部会と東北支部との関係については、争いがある。)。
本件当時、宮城支部会は、平成23年10月12日に開催された後、同月31日、仙台市内の飲食店で開催され(その際の出席者は、別紙7支部会等出席者一覧の「10月31日宮城支部会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、平成24年3月頃まで継続的に開催されたほか、同年4月16日には東北支部の総会が開催された。
(以上、査168、205、206、257、284、382、464、465、574、660、711)
カ 静岡支部
静岡支部においては、従前から、同支部所属の組合員らの各営業責任者を構成員とする会合(以下「静岡支部会」という。)が2か月に1回程度開催されていた。静岡支部会には、静岡県内に工場等を有する非組合員である大万紙業及び福原紙器の各営業責任者が出席することもあった。
本件当時、静岡支部会は、平成23年10月12日に開催された後、同月31日、静岡県掛川市内のホテルで開催され(その際の出席者は、別紙7支部会等出席者一覧の「10月31日静岡支部会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、平成24年3月頃まで継続的に開催された。
(以上、査164、173、250、251、283、333、340、348、357、366、386~389、435、445、449)
キ 埼玉支部
埼玉支部においては、従前から、同支部所属の組合員らの各営業責任者を構成員とする会合(以下「埼玉支部会」という。)が月1回程度開催されていた。
本件当時、埼玉支部会は、平成23年9月26日に開催された後、同年10月19日には埼玉県内のゴルフ場でゴルフコンペ終了後に開催されたほか、同年11月2日、さいたま市内の複合施設の会議室で開催され(その際の出席者は、別紙7支部会等出席者一覧の「11月2日埼玉支部会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、平成24年5月頃まで継続的に開催された。
(以上、査153、195、196、246、277、279、328、338、346、347、350、356、383、396、400、454、461、577、578)
ク 千葉・茨城支部
千葉・茨城支部においては、従前から、同支部所属の組合員らの各営業責任者を構成員とする会合(以下「千葉・茨城支部会」という。)が月1回程度開催されていた。
本件当時、千葉・茨城支部会は、平成23年9月9日及び同年10月3日にそれぞれ開催された後、同年11月9日、千葉県柏市内の結婚式場の会議室で開催され(その際の出席者は、別紙7支部会等出席者一覧の「11月9日千葉・茨城支部会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、平成24年5月頃まで継続的に開催された。
(以上、査157、158、161、198、247、280、330、339、351、372、402、408、411、416、417、420、447、453、580~582、588)
ケ 神奈川支部
神奈川支部においては、従前から、同支部所属の組合員らの各営業責任者を構成員とする会合(以下「神奈川支部会」という。)が1、2か月に1回程度開催されていた。
本件当時、神奈川支部会は、平成23年10月13日に開催された後、同年11月17日、横浜市内の飲食店で開催され(その際の出席者は、別紙7支部会等出席者一覧の「11月17日神奈川支部会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、平成24年5月頃まで継続的に開催された。
(以上、査151、193、209、239、275、322、345、398、399、407、410、413、425、433、434、443、444、448、452、456、459、469、583、584)
(7) 被告による立入検査
ア 被告は、平成24年6月5日、本件各違反行為に関し、埼玉県、群馬県、栃木県等に所在する段ボールメーカーが共同して段ボール製品の販売価格を決定しているという疑いで、独占禁止法47条1項4号の規定に基づいて立入検査を行った(査665、666)。
イ さらに、被告は、平成24年9月19日、本件各違反行為及び関連事件の違反行為に関し、上記規定に基づいて立入検査を行った。
ウ 少なくとも上記アの立入検査が行われた平成24年6月5日以降は、本件各事業者の間で段ボール製品の販売価格に関して情報交換は行われていない。
3 本件審決の判断
(1) 段ボールシートの販売価格を引き上げる旨の合意(以下「本件シート合意」という。)及び段ボールケースの販売価格を引き上げる旨の合意(以下「本件ケース合意」といい、本件シート合意と併せて「本件各合意」という。)による共同行為がされた事実があるか否かについて
ア 認定事実
(ア) 段ボール製造業における慣行等
段ボール製品の需要者は、複数の段ボールメーカーから段ボール製品を購入している者が多くを占めており、その購入価格の交渉を行うに当たり、複数の段ボールメーカーから見積もりを提出させることが通常であったところ、段ボールメーカーにおいて、段ボール製品は品質の差が生じにくい商品であることなどから、自社の段ボール製品を安値で販売するなどして取引を拡大しようとする事業者が現れると、段ボール製品の価格低落につながりかねないため、段ボールメーカーの間では、かねてから、段ボール製品の販売価格や現状のシェア維持のため、こうした取引拡大のための販売行為を競り込みなどと称して自粛すべきものと認識されてきた。
他方、段ボールシートは、その製造原価に占める段ボール原紙の製造原価(一貫メーカーの場合)又は仕入原価(専業メーカーの場合)の割合が高いため、これらの原価の上昇は、段ボールシートの販売価格の引上げを行うべき誘因となっていた。同様に、段ボールケースも、その製造原価に占める段ボールシートの製造原価(コルゲータ保有メーカーの場合)又は仕入れ原価(ボックスメーカーの場合)の割合が高いことから、これらの原価の上昇は、段ボールケースの販売価格の引上げを行うべき誘因となっていた。取り分け、ボックスメーカーは、段ボールケースの販売について、価格面でコルゲータ保有メーカーと競争をすることは困難であり、コルゲータ保有メーカーの段ボールシートの販売価格が引き上げられれば、段ボールケースの販売価格の引上げを実施する傾向にあった。
そして、このように段ボール原紙の値上がりに伴い段ボール製品の販売価格を引き上げるに当たっては、まず、一貫メーカーであるレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが段ボール製品の値上げ幅を表明し、それ以外の段ボールメーカーは、これらの値上げ幅を指標として自社の段ボール製品の値上げを実施していた。もっとも、段ボールメーカーの間では、レンゴーなど大手の段ボールメーカーであっても、自社の段ボール製品のみ値上げを実施するのは、上記のユーザーとの取引に係る実態からユーザーにこれを受け入れてもらうのが困難であるため、各社が足並みをそろえて値上げを実施することが必要であると認識されており、取り分けこうした値上げの時期に競り込みを行うことは、他の事業者において値上げを実施する妨げとなるため、警戒されていた。
こうした実情を背景として、三木会及び支部の会合等においては、出席各社の間で、日頃から、段ボールメーカーの間で課題となっていたリサイクルマークの普及や印版・木型に係る費用の回収の状況について情報交換が行われていたほか、段ボール製品の生産量の増減や特値と称する安値販売の情報を含む販売価格等の動向(以下、これらを「段ボール製品の需給動向」という。)についても情報交換が行われていたところ、三木会と各支部会等との間でも、支部長等を通じて相互にこうした会合の内容が報告、伝達されることが通常であった。こうした中で、上記の慣行に反して、特定のユーザーについて競り込みを行う事業者が現れた時には、当該事業者に対して他の納入業者による抗議活動が行われるなどして競争回避に向けた解決が図られる傾向があった。また、従前から、段ボール原紙の値上がりに伴い段ボール製品の値上げが実施される際には、三木会及び支部の会合等において、出席各社の間で、こうした値上げの方針や進捗状況について情報交換が行われていたほか、個別のユーザーごとに入れ合いとなっている事業者の間でも、「小部会」などと称する会合(以下「小部会」という。)が開催されるなどして、当該ユーザーとの値上げ交渉の状況に関する情報交換が行われることがあった。
(以上、査128、129、133、136、138、151、154、159~162、164、166、195、196、202、203、208、248、251、252、254~256、261、280、323、325、329、334、336、344、349、352、353、355、357、360、374~376、378~380、385、389、396、397、404、405、408~412、416、419、432、435、437、438、440、442~444、446~448、451、452、457、459、460、462、465~467、470~476、497~515、532~534、615、660、664、680、690の1~6等)
(イ) 10月17日に開催された三木会の開催前の経緯(なお、10月17日に開催された三木会を、以下「10月17日三木会」ということがあり、本件当時開催された他の三木会、5社会、各支部会等も、同様に開催月日と会合の名称によって表示することがある。)
a レンゴーは、前記前提事実(4)アのとおり、平成23年8月26日、原燃料価格の高騰を理由として、段ボール原紙の値上げと共に、段ボールシートについて現行価格から1㎡当たり8円以上、段ボールケースについて現行価格から13%以上、販売価格を引き上げる旨公表したが、その後同年9月27日に王子マテリアが段ボール原紙の値上げを公表するまでの間、レンゴーのほかに、段ボール原紙の値上げを公表した原紙メーカーがいなかったことから、レンゴーグループを除く段ボールメーカーにおいては段ボール製品の値上げについて様子見の状態が続いていた(査130、148、242)。
b こうした状況の下で、平成23年8月30日に開催された5社会において、レンゴーの《D2》が出席各社に対し、段ボール製品について値上げの見通しを表明するよう促したが、他の4社の出席者は、いずれも値上げ方針が決まっていない旨答えるにとどまったことから、上記《D2》は、「後から付いてきてくれ。」などと発言して、他の4社に対し、レンゴーに追随して値上げを実施するよう要請していた(査135、140、266、267、317)。
c その後、平成23年9月22日に開催された三木会において、幹事長を務めるレンゴーの《D1》が、自社が公表した段ボール製品の値上げの方針について説明するとともに、「1社だけではできないので、皆様のご協力をお願いします。」などと発言して、他の出席各社に対しても段ボール製品について値上げを実施するよう要請するとともに、これらの値上げの見通しを表明するよう促したが、レンゴーグループであるセッツカートン及び大和紙器以外の出席者においては、いずれもまだ値上げ方針が決まっていない旨答えていた(査130、139、182)。
d さらに、平成23年9月26日に開催された5社会において、レンゴーの《D2》が出席各社に対し、段ボール製品について、値上げの見通しを表明するよう促した。その際、甲事件原告王子コンテナーの出席者は、近いうちに値上げを発表する旨述べたほか、王子グループに属する甲事件原告森紙業の出席者も、甲事件原告王子コンテナーの値上げの方針に準じて値上げを実施する旨述べた。一方、トーモク及び日本トーカンパッケージの各出席者は、いずれも値上げ方針が決まっていない旨述べた。上記《D2》は、これらの発言を受けて、「いつになったら値上げの方針が決まるのか。」、「早くみなさんついてきてください。」などと発言し、段ボール製品について値上げの見通しが立っていない事業者に対して、早期に値上げを実施するよう要請した。
(査145、181、266、304)
e 王子グループにおいては、前記前提事実(4)イのとおり、平成23年9月27日に、王子マテリアが段ボール原紙の値上げを公表するとともに、翌28日には、甲事件原告王子コンテナーが段ボールシート及び段ボールケースの販売価格をそれぞれ現行価格から12%以上(段ボールシートに係る上記値上げ幅は、1㎡当たり7円以上に相当するものであった。)引き上げることを公表したほか、これに先立つ同月26日には、甲事件原告王子コンテナーにおいて、静岡王子コンテナー等のグループ会社に対しても、こうした値上げの方針を伝達していた。また、前記前提事実(4)ウのとおり、レンゴー及び王子マテリア以外の原紙メーカーにおいても、同月22日には《事業者B》が、同年10月4日には《事業者A》が、同月11日には大王製紙がそれぞれ段ボール原紙の値上げを発表するなどして、主要な原紙メーカーによる段ボール原紙の値上げの表明が出そろった。こうした中、一貫メーカーであるレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーに続いて、大手の専業メーカーにおいても、前記前提事実(4)エのとおり、甲事件原告森紙業、トーモク、大王製紙パッケージ、日本トーカンパッケージ及びダイナパックが、それぞれ10月17日三木会の開催前に、レンゴー又は甲事件原告王子コンテナーが公表した内容と同程度の値上げ幅を定めて段ボール製品の値上げを実施することを社内又はグループ内で決定するなどした(以下、レンゴーが公表した段ボールシートについて現行価格から1㎡当たり8円以上、段ボールケースについて現行価格から13%以上の値上げ幅及び甲事件原告王子コンテナーが公表した段ボールシート及び段ボールケースについて現行価格から12%以上の値上げ幅を「レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅」という。)。
(ウ) 10月17日三木会の状況
a こうした状況の中、10月17日三木会においては、司会を担当した三木会の会長であるトーモクの《C1》が、出席者に対し、段ボール製品の値上げの方針について発表するよう促したところ、これについて、出席各社から、次のとおり発言がされた(査130、139、152、156、161、178、233、245、252、266、303、324、326、336、344、350、455、554)。
(a) レンゴーグループ3社
レンゴーの出席者は、公表のとおり、段ボールシートについて1㎡当たり8円以上、段ボールケースについて13%以上、それぞれ値上げをする旨発言したほか、その際、他の出席者から、これらの値上げ幅の内訳について質問を受けたことから、段ボールシートについては、段ボール原紙代4円70銭、燃料代1円50銭ないし2円、補助材料費40銭等により、値上げ幅が1㎡当たり8円以上となること、段ボールケースについては、段ボール原紙代4円70銭、燃料代1円50銭ないし2円、補助材料費50銭等により、値上げ幅が13%以上となる旨説明した。
また、セッツカートン及び大和紙器の各出席者は、いずれも親会社であるレンゴーに準じて値上げをする旨発言した。
(b) 王子グループ2社
甲事件原告王子コンテナーの出席者は、公表のとおり、平成23年11月21日から段ボールシート及び段ボールケースについてそれぞれ12%以上値上げする旨発言した。
甲事件原告森紙業の出席者は、グループ会社である甲事件原告王子コンテナーに準じて値上げする旨発言した。
(c) トーモク
トーモクの出席者は、平成23年12月1日から段ボールシート及び段ボールケースについてそれぞれ12%以上値上げする旨発言した。
(d) 日本トーカンパッケージ
日本トーカンパッケージの出席者は、平成23年12月1日から段ボールシートについて15%以上、段ボールケースについて12%以上値上げする旨発言するとともに、「みなさんに遅れていますが、追いつくようにします。」などと発言した。なお、段ボールシートに係る上記の値上げ幅は、1㎡当たり8円以上に相当するものであった(査553)。
(e) ダイナパック
ダイナパックの出席者は、段ボールシート及び段ボールケースについて値上げは行うが、まだ、具体的には決まっていない旨発言した(同社の値上げの方針については、前記前提事実(4)エ(エ)のとおり、当日の午前中の会議で値上げ幅まで決まっていたものの、まだ社内に伝えられていなかったことから、このような発言となった。)
(f) 大王製紙パッケージ
大王製紙パッケージの出席者は、段ボールシート及び段ボールケースについて値上げは行うが、時期等については検討中である旨発言した。
(g) 福野段ボール工業
三木会の副幹事長を務めていた福野段ボール工業代表取締役の《G1》は、大手の段ボールメーカーが値上げをすれば、自社においても値上げをする旨の意向を示していたものの、まだ値上げ活動の準備ができていなかったことから、値上げ時期について検討中である旨発言した。
(h) 各支部の支部長等
東京・山梨支部長である興亜紙業の《H》は、段ボール原紙が値上がりすれば、当社としても段ボール製品の値上げをせざるを得ない旨発言するとともに、次回の東京・山梨支部会は平成23年10月19日に開催される予定である旨付言した。
また、他の支部の支部長等においても、自社の値上げの方針や支部管内の値上げに向けた動きなどについて報告していた。
こうした中で、千葉・茨城支部長であるレンゴーの《D3》及び群馬・栃木支部長であるレンゴーの《D4》は、それぞれの支部において、支部会等で出席者から出た意見を踏まえ、段ボールシートの代表的な銘柄であるC5の販売価格について、1㎡当たり50円以上となることを目標として値上げ活動を行っていく旨発言した。これについて、レンゴーの《D2》も、相場観としてC5が50円以上となればよい旨発言した。
b これらの発言を受け、トーモクの《C1》は、三木会の会長として、「皆さん頑張って値上げに向けて取り組みましょう。」などと発言したほか、レンゴーの《D1》も、三木会の幹事長として、当会合の終了時の挨拶の中で、「各社とも、しっかり頑張っていきましょう。」などと発言した(査130、139、178、230、266、344)。
また、10月17日三木会に引き続いて開催された10月17日5社会において、司会を務めたレンゴーの《D2》は、10月17日三木会で出席各社から段ボール製品の値上げの方針が表明され、協力して値上げを行っていくことになった旨報告した(査181、268、556)
(エ) 各支部の状況
a 東京・山梨支部の状況
東京・山梨支部は、別紙6支部一覧のとおり、9社が所属しており、前記前提事実(6)アのとおり、これらの組合員らの各営業責任者を構成員とする東京・山梨支部会が2か月に1回程度開催されていたところ、通常、東京・山梨支部会においては、必要に応じて、支部長から三木会で話題とされたリサイクルマークの普及率や印版・木型に係る費用の回収状況のほか、段ボール製品の需給動向についても報告がされるとともに、出席各社の間でも自社又は管内におけるこれらの事項について相互に報告がされ、その内容は支部長により同支部管内の状況として三木会に報告されていた。東京・山梨支部は、大手の段ボールメーカーが所属しておらず、いずれも地元に本社を置く地場の段ボールメーカーにより構成されていたところ、これらの中には、三木会に出席した支部長から報告される大手の段ボールメーカーの動向に関する情報が有用であるとの理由で東京・山梨支部会に出席していた者もいた。
10月19日東京・山梨支部会には、別紙7支部会等出席者一覧のとおり、同支部所属の全組合員9社の各営業責任者が出席し、支部長を務める興亜紙業の《H》は、その冒頭で、10月17日三木会の報告として、同会合の出席各社が段ボール製品の値上げ方針を表明したこと、その値上げ幅は、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した内容と同じ(すなわち、段ボールシートにつき1㎡当たり7円ないし8円以上、段ボールケースにつき、12%ないし13%以上)であったこと及び同会合でレンゴーから説明がされた値上げ幅の内訳などを説明した上で、大手の段ボールメーカーの動きをみながら当支部所属の各社においても値上げに動き出さなければならない旨発言するとともに、出席各社に対しても、段ボール製品の値上げの方針について発表するよう促した。
その際、2社(市川紙器製作所及び旭段ボール)の出席者は、段ボール製品の値上げに向けて動く旨発言し、段ボール製品の値上げの実施について反対の意向を表明した事業者はいなかった。
以上のとおり情報交換が行われた段ボール製品の値上げについて、10月19日東京・山梨支部会に出席した上記各事業者においては、それ以降、順次値上げ活動を行っていたところ、その後開催された東京・山梨支部会においては、出席各社の間で、こうした値上げの進捗状況について相互に報告がされ、支部長である上記《H》は、これらを取りまとめた内容を東京・山梨支部管内の値上げの実施状況として三木会に報告していた。
このほか、上記各事業者のうち、山梨県を本拠とする市川紙器製作所、内藤及び甲府紙器の営業責任者は、同じく同県に工場を置く甲府大一実業及び《事業者名略》の営業責任者や同県に営業拠点を有するレンゴー及び甲事件原告王子コンテナー等の営業責任者との間でも、平成23年11月以降、「YD会」、「山梨会」などと称する会合を開催して、段ボール製品の値上げの進捗状況について情報交換を行っていた。
(以上、査365、412、419、424、437、438、446、455、467、708、709)
b 新潟・長野支部の状況
新潟・長野支部は、別紙6支部一覧のとおり、8社が所属し、前記前提事実(6)イのとおり、年に1回程度、総会が開催されていたのみであったが、別途、新潟県と長野県の地区ごとに新潟四木会と長野5社会がそれぞれ月1回程度開催されていた。上記両会合は、組合員らの各営業責任者のほか非組合員である事業者の営業責任者も出席することがあったものの、他の支部の会合と同様、各地区におけるリサイクルマークの普及率や印版・木型に係る費用の回収状況に関する情報交換が行われていたほか、段ボール製品の需給動向についても情報交換が行われていたものであり、通常は、そのどちらかの会合に出席する支部長が、これらを取りまとめた内容を新潟・長野支部管内の状況として三木会に報告していた。(査166、204、254、334、367)
本件当時開催された新潟四木会及び長野5社会の状況は、次のとおりである。
(a) 新潟四木会
9月23日新潟四木会において、レンゴーの《D5》は、自社が公表した段ボール製品の値上げの方針について述べた上で、他の出席各社に対しても、これに同調して値上げを行うよう促したが、その時点ではレンゴー以外の原紙メーカーが段ボール原紙の値上げを表明していなかったため、レンゴーグループに属するセッツカートン以外の事業者においては、まだ段ボール製品の値上げの意向を表明していなかった。
その後、平成23年10月13日、急遽、これらの組合員のうち、レンゴー、セッツカートン、甲事件原告新潟森紙業及びトーモクの4社の各営業責任者が集まり、各社の値上げ方針について確認し合った上で、新潟・長野支部の支部長であるトーモクの《C2》が10月17日三木会に出席した。
そして、10月19日新潟四木会においては、段ボール製品の値上げが主な話題となったところ、同会合には、別紙7支部会等出席者一覧のとおり、新潟県内の全組合員5社の各営業責任者が出席したほか、同県内の地場の段ボールメーカーである非組合員のサクラパックス、森井紙器工業、新潟紙器工業及びエヌディーケイ・ニシヤマの4社の営業責任者が、レンゴーからの呼び掛けを受けて、いずれも他社の値上げに関する情報が得られることを期待して出席した。そして、同会合においては、段ボール製品の値上げについて、最初に、支部長であるトーモクの《C2》が、「皆さんと同じ位の幅で値上げします。」などと発言し、3社(レンゴー、セッツカートン及び甲事件原告新潟森紙業)の出席者が、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅に沿った値上げをする旨発言し、ほか3社(吉沢工業、新潟紙器工業及びサクラパックス)の出席者が値上げをする方針である旨発言した。また、2社(森井紙器工業及びエヌディーケイ・ニシヤマ)の出席者は、自社の段ボール製品の値上げの方針について特に発言しなかったが、いずれもこれらの値上げの実施について反対の意向を表明していなかった。
以上のとおり情報交換が行われた段ボール製品の値上げについて、10月19日新潟四木会に出席した上記各社のうち、その時点でまだ値上げ活動を始めていなかった事業者も、それ以降、順次値上げ活動を行っていたところ、その後開催された新潟四木会においては、出席各社の間で、こうした値上げの進捗状況について相互に報告がされていた。支部長である上記《C2》は、後記のとおり報告を受けていた長野5社会における値上げの進捗状況と共にこれらを取りまとめた内容を新潟・長野支部管内の値上げの実施状況として三木会に報告しており、その際に三木会で報告された他の支部管内の値上げの実施状況について新潟四木会で報告したこともあった。また、こうした値上げ交渉が難航していたユーザーについては、入れ合いとなっている事業者の間で小部会が開催されるなどして、これらの交渉の状況に関する情報交換が行われていた。
(以上、査165、253、254、334、375、414、415、423、430、431、439~442)
(b) 長野5社会
9月27日長野5社会において、レンゴーの《D6》は、他の出席各社に対し、レンゴーに続いて早く段ボール製品の値上げを行うよう促したが、その時点でまだ値上げを公表していなかった甲事件原告王子コンテナーからは、値上げの方針は決まっていない旨の回答がされたほか、レンゴーグループに属する甲府大一実業を除く他の事業者においても、値上げの意向は表明されなかった。
その後、10月24日長野5社会には、別紙7支部会等出席者一覧のとおり、長野県内の全組合員4社の各営業責任者が出席したほか、同県内の地場の段ボールメーカーである非組合員の協和ダンボール及び山梨県に本社工場を有する非組合員の甲府大一実業の各営業責任者が出席した。同会合において、4社(レンゴー、甲事件原告王子コンテナー、甲事件原告長野森紙業及び協和ダンボール)の出席者は、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅に沿った値上げをする旨発言し、ほか2社(甲府大一実業、ダイナパック)の出席者も値上げをする方針である旨発言した。
以上のとおり情報交換が行われた段ボール製品の値上げについて、10月24日長野5社会に出席した上記各社のうち、その時点でまだ値上げ活動を始めていなかった事業者も、それ以降、順次値上げ活動を行っていたところ、その後開催された長野5社会においては、出席各社の間で、こうした値上げの進捗状況について相互に報告がされ、副支部長である上記《I1》は、三木会に出席する支部長の上記《C2》に、これらを報告していた。また、こうした値上げ交渉が難航していたユーザーについては、入れ合いとなっている事業者の間で、小部会が開催されるなどして、これらの交渉の状況に関する情報交換が行われていた。
(以上、査166、167、203、204、211、341、342、364、367、368、432)
c 北海道支部の状況
北海道支部は、別紙6支部一覧のとおり、4社が所属し、前記前提事実(6)ウのとおり、正式な支部の会合は開催されていなかったものの、同支部所属の全組合員と道内の地場の段ボールメーカーである非組合員の合同容器の各営業責任者を出席者とするトップ会(なお、本件当時北海道内におけるコルゲータ保有メーカーはこの5社のみであった。)において、他の支部の会合と同様、リサイクルマークの普及率や印版・木型に係る費用の回収状況に関する情報交換が行われていたほか、段ボール製品の需給動向に関する情報交換も行われていた。支部長は、三木会には移動に時間がかかるなどの事情により出席しないのが通例であったが、支部長が東段工の事務局から送付された三木会の資料等を基にトップ会で出席各社に対して必要に応じて三木会の内容を報告したり、これらの資料を配布するなどして情報共有が図られていた。また、トップ会で情報交換がされた内容は、本件当時支部長であったレンゴーの《D7》において、直接三木会には報告していなかったものの、レンゴーの本社に報告しており、三木会の資料にはその内容が掲載されていたことから、少なくとも本部役員会社であるレンゴーを通じるなどして三木会に伝えられていた。
9月1日トップ会において、レンゴーの《D7》は、上司である北海道・東北事業部長と共に出席し、同事業部長から、自社が公表したとおり段ボール製品の値上げを実施する旨の発言がされたが、その時点ではレンゴー以外の原紙メーカーが段ボール原紙の値上げを表明していなかったことから、他の事業者は、まだ段ボール製品の値上げの意向を表明しなかった。
その後、10月27日トップ会には、別紙7支部会等出席者一覧のとおり全5社の各営業責任者が出席し、全出席者がレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅に沿った値上げをする旨発言した。
以上のとおり情報交換が行われた段ボール製品の値上げについて、10月27日トップ会に出席した上記各社のうち、その時点でまだ値上げ活動を始めていなかった事業者においても、それ以降、順次値上げ活動を行ったところ、その後開催されたトップ会においては、出席各社の間で、こうした値上げの進捗状況について相互に報告がされていたほか、部課長会議においては個別のユーザーに対する値上げ活動について報告がされていた。また、このうち値上げ交渉が難航していたユーザーについては、入れ合いとなっている事業者の間で、小部会が開催されるなどして、これらの交渉の状況に関する情報交換が行われていた。
(以上、査169~171、207、208、259、260、369~371、405)
d 群馬・栃木支部の状況
群馬・栃木支部は、別紙6支部一覧のとおり、9社が所属し、前記前提事実(6)エのとおり、これらの組合員らの各営業責任者を構成員とする群馬・栃木支部会が月1回程度開催されていたところ、通常、群馬・栃木支部会は、支部長が三木会に同支部の状況を発表するため、原則として三木会の開催予定日の数日前に行われ、これらの会合において、必要に応じて、支部長から三木会で話題となったリサイクルマークの普及率や印版・木型に係る費用の回収状況のほか、段ボール製品の需給動向についても報告がされるとともに、出席各社の間でも、自社又は管内におけるこれらの事項に関する報告が行われ、その内容は、支部長により同支部管内の状況として三木会に報告されていた。また、原則として、毎月末頃、群馬県と栃木県の地区ごとに各営業担当者を出席者とする群馬会と栃木会が開催され、このうち栃木会には非組合員である甲事件原告関東パック及び大日本パックスの各営業担当者も出席していたところ、両会合とも、群馬・栃木支部会と同様の情報交換が行われていた。(査161~163、200、202、352、353、361、378、421、429)
本件当時開催された群馬・栃木支部会及び群馬会、栃木会の状況等は、次のとおりである。
(a) 10月27日群馬会及び10月27日栃木会開催までの経過
9月12日群馬・栃木支部会において、支部長であるレンゴーの《D4》が段ボール製品について自社が公表したとおり値上げを実施する旨発言し、他の出席各社に対しても値上げの実施を促したが、その時点ではレンゴー以外の原紙メーカーが段ボール原紙の値上げを表明していなかったことから、他の事業者においては、まだ段ボール製品の値上げの意向を表明しなかった。9月15日群馬会、9月15日栃木会においても、出席各社の間で、同様のやり取りがされていた。
平成23年9月30日に、急遽群馬・栃木支部会が開催されたが、レンゴーグループおよび王子グループ以外の事業者においては、この時点でも明確に値上げの意向を表明していなかった。その後、同年10月13日に群馬・栃木支部会が開催されたところ、その間前記のとおり社内で段ボール製品の値上げを決定していたトーモク及び大王製紙パッケージにおいてもこれらの値上げの意向を表明したが、乙事件原告及び富士段ボールにおいては、まだ値上げの意向を表明していなかった。
(以上、査161、162、202、249、331、378、421、429、570)
(b) 10月27日群馬会の状況
こうした状況の中で開催された10月27日群馬会には、別紙7支部会等出席者一覧のとおり組合員らのうち6社の各営業担当者が出席したほか、群馬・栃木支部に所属していなかった日本トーカンパッケージ古河工場の営業担当者もセッツカートンから段ボール製品の値上げの時期であることを理由に要請されて出席した。10月27日群馬会において司会を務めていたレンゴーの《D8》は、段ボール製品について、自社の値上げ方針を説明するとともに、他の出席各社に対しても値上げの方針を発表するよう促した。その際、5社(甲事件原告王子コンテナー、トーモク、大王製紙パッケージ、日本トーカンパッケージ及びマタイ紙工)の出席者はレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅に沿った値上げをする旨、セッツカートンの出席者も値上げをする方針である旨発言し、一部の出席者からは値上げ活動の進捗状況についても発言があった。これらの発言を受け、上記《D8》は、こうした各社の値上げ活動について「頑張りましょう。」などと発言するとともに、次回には値上げの進捗状況を発表するよう呼びかけた。(査200、281、352、361、569)
(c) 10月27日栃木会の状況
10月27日栃木会には、別紙7支部会等出席者一覧のとおり、組合員らのうち5社の各営業担当者及び非組合員である甲事件原告関東パック及び大日本パックスの各営業担当者が出席したほか、日本トーカンパッケージの営業担当者も10月27日群馬会に引き続き出席していた。司会を務めていたレンゴーの《D9》は、段ボール製品について、自社の値上げの方針を説明するとともに、他の出席各社に対しても値上げの方針を発表するよう促した。その際、5社(甲事件原告王子コンテナー、トーモク、大王製紙パッケージ、日本トーカンパッケージ及び甲事件原告関東パック)の出席者はレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅に沿った値上げをする旨、ほか2社(セッツカートン及び大日本パックス)の出席者も値上げをする方針である旨発言し、一部の出席者からは値上げ活動の進捗状況についても発言があった。これらの発言を受け、上記《D9》は、こうした各社の値上げ活動について、「頑張りましょう。」などと発言するとともに、次回には値上げの進捗状況を発表するよう呼びかけた。(査249、281、331、352、385、404、569)
(d) 10月27日群馬会及び10月27日栃木会開催後の経過及び11月14日群馬・栃木支部会の状況
上記(b)、(c)のとおり10月27日群馬会及び10月27日栃木会の出席各社の間で情報交換が行われた段ボール製品の値上げについて、その時点でまだ値上げ活動を始めていなかった事業者においても、それ以降順次値上げ活動を行っていた。
そうした中、11月14日群馬・栃木支部会には、別紙7支部会等出席者一覧のとおり全組合員の各営業責任者が出席したところ、このうち、10月27日群馬会及び10月27日栃木会に出席していた上記各事業者の間で、こうした値上げの進捗状況について相互に報告がされていた。他方、甲事件原告群馬森紙業は、10月27日群馬会及び10月27日栃木会には出席していなかったものの、グループ会社である甲事件原告王子コンテナーの公表した値上げ方針に従って値上げ活動を行っていたところ、11月14日群馬・栃木支部会においては、上記のとおり各社において値上げの進捗状況に関する報告がされる中で、甲事件原告群馬森紙業の出席者も、自社の値上げの進捗状況について報告した。
その後開催された群馬・栃木支部会や群馬会、栃木会においても、出席各社の間で、引き続き値上げの進捗状況について相互に報告がされていたところ、支部長である上記《D4》は、これらを取りまとめた内容を群馬・栃木支部管内の値上げの実施状況として三木会に報告していた。また、こうした値上げ交渉が難航していたユーザーについては、入れ合いとなっている事業者の間で、小部会が開催されるなどして、これらの交渉の状況に関する情報交換が行われていた。
(以上、査161~163、202、249、281、282、331、352、353、362、378、385、404、421、429、573)
e 東北支部の状況
(a) 東北支部の概要
東北支部は、別紙6支部一覧のとおり、11社が所属していたが、管内が広範囲であるため、前記前提事実(6)オのとおり、同支部所属の組合員が一堂に集まる機会は、年に1回開催される総会のみであり、そのほかに、宮城県、青森県、福島県などの各地区ごとに不定期に会合が開催されていた。このうち、宮城支部会は、宮城県内に工場等を有するレンゴー、甲事件原告王子コンテナー、トーモク、日本トーカンパッケージ及び甲事件原告仙台森紙業の5社によって構成されており、これらの営業責任者が出席していたほか、東北支部の支部長を務めていた鎌田段ボール工業代表取締役の《E》又はその営業担当者も同支部会に出席することがあった。そして、東北支部の他の地区に工場等を有する組合員も、これらの大手の段ボールメーカー又はそのグループ会社が大半を占めていたため、宮城支部会の内容は、同支部の他の地区の組合員にも伝達される関係にあった。宮城支部会においては、他の支部の会合と同様、通常は、リサイクルマークの普及率や印版・木型に係る費用の回収状況のほか、段ボール製品の需給動向についても情報交換が行われ、支部長である上記《E》が三木会に出席するときは、これらの内容を東北支部の状況として三木会に報告していたが、上記のとおり東北支部所属の組合員は、鎌田段ボール工業を除き、本部役員会社となっている大手の段ボールメーカー又はそのグループ会社がそのほとんどを占めていたため、実際には、上記《E》は、遠距離を理由に三木会に出席しないことも多く、その際には、宮城支部会の出席者のうち、本部役員会社に所属する者から、三木会に関する情報を得るなどしていた。(査168、205、256、284、381、463、660)
(b) 10月31日宮城支部会開催までの経過及び同支部会の状況
10月12日宮城支部会において、既に段ボール製品の値上げを公表していたレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーの各出席者は、それぞれ自社が公表したとおり値上げを実施する旨発言したが、トーモク及び日本トーカンパッケージの出席者は、いずれも値上げの方針はまだ決まっていない旨発言した。その後、前記前提事実(4)エ(イ)、(ウ)のとおり、トーモク及び日本トーカンパッケージにおいてもそれぞれ社内で段ボール製品の値上げの方針を決定していた。
こうした状況の中で、10月31日宮城支部会には、別紙7支部会等出席者一覧のとおり、上記5社の営業責任者が出席したところ、全出席者がレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅に沿った値上げをする旨発言した。
(以上、査168、205、206、256、257、284、381、382)
(c) 鎌田段ボール工業の対応
東北支部の支部長を務めていた鎌田段ボール工業代表取締役の《E》は、9月22日三木会及び10月17日三木会を欠席していたほか、10月12日宮城支部会及び10月31日宮城支部会にも出席していなかった。
そうしたところ、上記《E》は、レンゴーの仙台工場長であった《D10》の申入れにより、平成23年10月28日、仙台市内のホテルで、同人及びレンゴーの北海道・東北事業部長と面会した。その際、同人らは、上記《E》に対し、大手の段ボールメーカーの各社が段ボール製品の値上げに動いている中で、鎌田段ボール工業にもこれらの値上げ活動に協力してほしいと要請したところ、上記《E》は、これに逆らって値上げを実施しないのは段ボール製造業の慣行に照らして到底できないことを理解し、その要請を受け入れることとした。そこで、上記《E》は、翌29日に開催した社内の営業会議の場で、営業担当者に対し、平成24年1月1日納品分から、段ボールケースについて12%以上の値上げを行う方針を示したが、実際には、鎌田段ボール工業において、まだ仕入れ先である原紙メーカーによる段ボール原紙の値上げがされていなかったため、直ちにはユーザーに対してこれらの値上げの要請文書を提出していなかった。
その後、上記《E》は、段ボール製品の値上げの動向を確認するため、11月17日三木会に出席したところ、同会合において、後記(オ)のとおり、出席各社の間で段ボール製品の値上げの進捗伏況について報告が行われる中で、トーモクの《C1》から、鎌田段ボール工業の営業担当者がユーザーに対して段ボール製品の値上げをしない旨の説明をしているとの噂があることについて問いただされたが、これに対し、上記《E》は、「そのような説明はしていないはずです。原紙が値上がりするのなら、きちんと値上げは行います。」と回答した。その後、上記《E》は、同月19日に開催した社内の営業会議の場で、営業担当者に対し、改めて上記の値上げの実施を指示して、鎌田段ボール工業においても値上げ活動を開始した。
(以上、査463、465、585、586、660、707)
(d) 10月31日宮城支部会開催後の経過
上記(b)のとおり10月31日宮城支部会の出席各社の間で情報交換が行われた段ボール製品の値上げについて、その時点でまだ値上げ活動を始めていなかった事業者においても、それ以降順次値上げ活動を行っていたところ、その後開催された宮城支部会においては、出席各社の間で、これらの値上げの進捗状況について相互に報告がされていた。また、こうした値上げ交渉が難航していたユーザーについては、入れ合いとなっている事業者の間で、小部会が開催されるなどして、これらの交渉の状況に関する情報交換が行われていた。
また、東北支部の他の地区においても、宮城支部会と同様、各地区ごとに会合が開かれるなどして事業者の間で情報交換をしながら段ボール製品の値上げ活動が行われていた。そして、11月17日三木会に出席した上記《E》は、それ以降に開催された三木会にも継続して出席していたところ、その出席に当たり、宮城支部会のみならず、東北支部の他の地区における段ボール製品の値上げの進捗状況についても各地区の連絡役から報告を受けるなどして、これらを取りまとめた内容を同支部管内の値上げの実施状況として三木会に報告していた。
(以上、査168、205、206、257、258、381、382、463、660)
f 静岡支部の状況
静岡支部は、別紙6支部一覧のとおり、11社が所属しており、前記前提事実(6)カのとおり、これらの組合員らの各営業責任者を構成員とする静岡支部会が2か月に1回程度開催されていたところ、かねてから、地場の段ボールメーカーである非組合員の大万紙業及び福原紙器も、準会員として各営業責任者が静岡支部会に出席していた。通常、静岡支部会においては、必要に応じて、支部長から三木会で話題とされたリサイクルマークの普及率や印版・木型に係る費用の回収状況のほか、段ボール製品の需給動向について報告がされるとともに、出席各社の間でも自社又は管内におけるこれらの事項について相互に報告がされ、その内容は支部長により同支部管内の状況として三木会に報告されていた。
10月12日静岡支部会において、既に段ボール製品の値上げを公表していたレンゴー及び静岡王子コンテナーの各出席者は、それぞれ自社が公表したとおり値上げを実施する旨発言したが、これらのグループに属しない他の事業者においては、明確に値上げの方針を表明しなかった。
このような状況の下で開催された10月31日静岡支部会には、別紙7支部会等出席者一覧のとおり、全組合員11社及び準会員2社の各営業責任者が出席したほか、これまで同支部会に出席していなかった非組合員の遠州紙工業の営業責任者も支部長の要請により出席した。10月31日静岡支部会において、支部長である日本紙工業の《J》は、10月17日三木会の報告として、段ボール製品について大手の各事業者が発表した値上げの方針を伝えるとともに、日本紙工業においても値上げを実施することになる旨発言した上で、他の出席各社に対しても、値上げの方針を発表するよう促した。その際、レンゴーの出席者は、既に公表したとおり値上げ活動を行っている旨発言した上で、「レンゴーも値上げ頑張っています。みなさんも頑張りましょう。」などと発言した。これ以外に6社(トーモク、大和紙器、イハラ紙器、日本トーカンパッケージ、静岡王子コンテナー及び甲事件原告静岡森紙業)の出席者はレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅に沿った値上げをする旨発言し、5社(ダイナパック、中部大王製紙パッケージ、大一コンテナー、福原紙器及び大万紙業)の出席者は値上げをする方針である旨発言した。また、遠州紙工業の出席者は、「当社が一番小さい会社なのでナショナルメーカーさんが音頭をとって動いてくれないとなかなか動けない。ただ価格改定の動きはしている。」などと発言するとともに、営業日報に、10月31日静岡支部会で発表された各社の値上げ方針等を記録した上で、「業界としてはシート㎡8円 ケース13%(レンゴー)の価格改定で進んでいる」などと記載して社長に報告していた。
以上のとおり情報交換が行われた段ボール製品の値上げについて、10月31日静岡支部会に出席した上記各社のうち、その時点でまだ値上げ活動を始めていなかった事業者においても、それ以降、順次値上げ活動を行っていたところ、その後開催された静岡支部会においては、出席各社の間で、こうした値上げ活動の進捗状況について相互に報告がされていた。支部長である上記《J》は、三木会において、これらを取りまとめた内容を静岡支部管内の値上げの実施状況として報告しており、また、三木会で報告された他の支部管内の値上げの実施状況について静岡支部会で報告したこともあり、その中で静岡支部管内の値上げが遅れていると三木会で指摘されたことも説明していた。また、静岡県東部地区所在の家庭紙メーカーに対する段ボールケースの値上げ活動については家庭紙部会などと称する会合が、同県西部地区所在の自動車関連メーカーなどのユーザーに対する段ボールケースの値上げ活動については西部会などと称する会合が、同県内のボックスメーカーに対する段ボールシートの値上げ活動についてはシート部会などと称する会合が、それぞれこれらの販売をしている事業者の間で開催されるなどして、個別のユーザーごとに値上げ活動の対策等に関する協議が行われるとともに、このうち値上げ交渉が難航するユーザーについては、入れ合いとなっている事業者の間で、小部会が開催されるなどして、これらの交渉の状況に関する情報交換が行われていた。
(以上、査164、173、250、251、283、333、340、348、358、366、376、377、386~389、435、445、449、576)
g 埼玉支部の状況
埼玉支部は、別紙6支部一覧のとおり、19社が所属しており、前記前提事実(6)キのとおり、これらの組合員らの各営業責任者を構成員とする埼玉支部会が月1回程度開催されていたところ、通常、埼玉支部会においては、支部長の代わりに三木会に出席していた副支部長から必要に応じて三木会で話題とされたリサイクルマークの普及率や印版・木型に係る費用の回収状況のほか、段ボール製品の需給動向について報告がされるとともに、出席各社の間でも自社又は管内におけるこれらの事項について相互に報告がされ、その内容は副支部長により同支部管内の状況として三木会に報告されていた。
9月26日埼玉支部会において、レンゴーの出席者は、他の出席各社に対し、段ボール製品について既に値上げを公表していたレンゴーに続いて値上げを実施するよう促したが、その時点ではレンゴー以外の原紙メーカーが段ボール原紙の値上げを表明していなかったため、レンゴーグループ以外の事業者においては、段ボール製品の値上げの意向を表明しなかった。その後、10月19日埼玉支部会において、出席各社の間で、段ボール製品について値上げを行うことが確認されたものの、同会合はゴルフ場でゴルフコンペ終了後に開催されたこともあって、同支部に所属する地場の段ボールメーカーの多くが欠席していたことから、これらの事業者の値上げに関する意向を確認するため、平成23年11月10日に予定されていた次回の埼玉支部会を急遽同月2日に繰り上げて開催することとなった。
そして、11月2日埼玉支部会には、別紙7支部会等出席者一覧のとおり、組合員19社のうち18社の各営業責任者が出席したところ、支部長である甲事件原告王子コンテナーの《I3》が、その冒頭で原紙メーカーの各社が段ボール原紙を値上げするため、段ボール製品も値上げしなくてはならない旨発言するとともに、三木会に出席していた副支部長であるトーモクの《C3》は、10月17日三木会の報告として、同会合の出席各社において段ボール製品を値上げすることとなったこと、段ボールシートの値上げ幅は、1㎡当たり8円以上とし、その標準的な銘柄であるC5の販売価格につき、群馬・栃木支部、千葉・茨城支部においては、1㎡当たり50円を目標としていること、値上げ実施日は、同年11月21日又は同年12月1日とされたため、同年11月10日までにユーザーにその旨の見積書を提出すべきことなどを説明した上で、司会役を務めていたレンゴーの《D11》が出席各社に対し、段ボール製品の値上げの方針について発表するよう求めた。
その際、9社(レンゴー、甲事件原告王子コンテナー、トーモク、日本トーカンパッケージ、ダイナパック、大和紙器、アサヒ紙工、甲事件原告ムサシ王子コンテナー及びトーシンパッケージ)の出席者はレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅に沿った値上げをする旨、ほか9社(大王製紙パッケージ、セッツカートン、福野段ボール工業、コーワ、富士段ボール、八木ダンボール、日藤ダンボール、旭段ボール及び浅野段ボール)の出席者は値上げをする方針である旨それぞれ発言し、これらのうち一部の出席者からは値上げ活動の進捗状況についても発言があった。
これらの発言を受け、司会役の上記《D11》は、そのまとめとして、「シートは1㎡当たり8円以上、ケースは13%以上で、平成23年11月21日又は12月1日を値上げ実施期日として値上げを進めていきましょう。」などと発言した。
以上のとおり情報交換が行われた段ボール製品の値上げについて、11月2日埼玉支部会に出席した上記各社のうち、その時点でまだ値上げ活動を始めていなかった事業者についても、それ以降、順次値上げ活動を行っていたところ、その後開催された埼玉支部会においては、出席各社の間で、こうした値上げの進捗状況について相互に報告がされていた。副支部長である上記《C3》は、これらを取りまとめた内容を埼玉支部管内の値上げの実施状況として三木会に報告しており、その際に三木会で報告された他の支部管内の値上げの実施状況について埼玉支部会で報告したこともあった。その中で、値上げの実施が遅れていた富士段ボールに対しては、他の事業者が値上げ活動を進めるよう促したこともあった。また、こうした値上げ交渉が難航しているユーザーについては、入れ合いとなっている事業者の間で小部会が開催されるなどして、これらの交渉の状況に関する情報交換が行われていた。
(以上、査153、155、195~197、240~246、261、276、277、279、297、327、328、338、346、347、350、356、359、360、383、384、390、396、397、400、422、426~428、450、451、454、458、461、579の2、579の3、663、687、695)
h 千葉・茨城支部の状況
千葉・茨城支部は、別紙6支部一覧のとおり、17社が所属しており、前記前提事実(6)クのとおり、これらの組合員らの各営業責任者を構成員とする千葉・茨城支部会が月1回程度開催されていたところ、通常、千葉・茨城支部会は、支部長が同支部の状況を三木会で報告するため、三木会の開催予定日の約1週間前までに行われ、同会合において、必要に応じて、支部長から三木会で話題とされたリサイクルマークの普及率や印版・木型に係る費用の回収状況のほか、段ボール製品の需給動向についても報告がされるとともに、出席各社の間でも自社又は管内におけるこれらの事項について相互に報告がされ、その内容は支部長により同支部管内の状況として三木会に報告されていた。
そして、9月9日千葉・茨城支部会において、レンゴーの出席者は、段ボール製品について自社が公表したとおり値上げを実施する旨発言した上で、他の出席各社に対しても値上げを実施するよう促したが、その時点ではレンゴー以外の原紙メーカーが段ボール原紙の値上げを表明していなかったため、レンゴーグループを除く事業者においては、まだ段ボール製品の値上げの意向を表明しなかった。その後開催された10月3日千葉・茨城支部会においても、レンゴーグループ及び甲事件原告王子コンテナー以外の事業者は、まだ明確に段ボール製品の値上げについての意向を表明していなかった。
11月9日千葉・茨城支部会には、別紙7支部会等出席者一覧のとおり、組合員17社のうち15社の各営業責任者が出席したところ、支部長であるレンゴーの《D3》は、その冒頭で、10月17日三木会の報告として同会合の出席各社において段ボール製品の値上げを行うことになった旨説明するとともに、「値上げ活動に遅れると、損をすることになるので、各社とも値上げに進んで取り組んでいきましょう。」などと発言した上で、司会を担当していたレンゴーの《D13》は、出席各社に対し、段ボール製品の値上げの方針を発表するように促した。
その際、11社(レンゴー、セッツカートン、甲事件原告王子コンテナー、甲事件原告常陸森紙業、日本トーカンパッケージ、ダイナパック、大王製紙パッケージ、コバシ、幸陽紙業、三興段ボール及びコーワ)の出席者はレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅に沿った値上げをする旨発言し、ほか2社(トーモク及びクラウン・パッケージ)の出席者は値上げをする方針である旨発言した。晃里の出席者は、値上げ幅などの具体的な内容が定まっていない旨発言したが、値上げを実施することについては反対の意向を表明していなかった。山田ダンボールの出席者も、値上げを実施することを前提として、具体的な値上げ方針は決まっていないが、ユーザーに対する値上げの要請文書を準備している旨発言した。
以上のとおり情報交換が行われた段ボール製品の値上げについて、11月9日千葉・茨城支部会に出席した上記各社のうち、その時点でまだ値上げ活動を始めていなかった事業者も、それ以降順次値上げ活動を行っていたところ、その後開催された千葉・茨城支部会においては、出席各社の間で、こうした値上げの進捗状況について相互に報告がされていた。支部長である上記《D3》は、これらを取りまとめた内容を千葉・茨城支部管内の値上げの実施状況として三木会に報告しており、また、三木会で報告された他の支部管内の値上げの実施状況について千葉・茨城支部会で報告したこともあった。このほか、群馬・栃木支部長であるレンゴーの《D4》が千葉・茨城支部会に出席して群馬・栃木支部管内の値上げの実施状況について報告したこともあった。その中で、値上げの実施が遅れていたコバシや乙事件原告などの事業者に対しては、支部長が値上げ活動を進めるよう促したこともあった。また、こうした値上げ交渉が難航しているユーザーについては、入れ合いとなっている事業者の間で小部会が開催されるなどして、これらの交渉の状況に関する情報交換がされていた。
(以上、査157、158、198、247、280、330、339、351、372、374、402、403、408、409、411、416、417、420、447、453)
i 神奈川支部の状況
神奈川支部は、別紙6支部一覧のとおり、18社が所属しており、前記前提事実(6)ケのとおり、これらの組合員らの各営業責任者を構成員とする神奈川支部会が1ないし2か月に1回程度開催されていたところ、通常、神奈川支部会においては、必要に応じて、支部長から三木会で話題とされたリサイクルマーク普及率や印版・木型に係る費用の回収状況のほか、段ボール製品の需給動向についても報告がされるとともに、出席各社の間でも自社又は管内におけるこれらの事項について相互に報告がされ、その内容は支部長により同支部管内の状況として三木会に報告されていた。
そして、10月13日神奈川支部会において、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーの各出席者は、それぞれ段ボール製品について自社が公表したとおり値上げを行う旨発言したが、レンゴーグループ及び王子グループ以外の事業者においては、値上げについて反対の意向を示していなかったものの、まだ値上げ方針が決まっていない事業者が多かったことから、次回の支部会で再び値上げ方針について確認することになったほか、その会合前に開催された幹事会では、同支部として、段ボールシートの値上げ活動について情報交換を行うためのシート部会及び段ボールケースの値上げ活動について情報交換を行うためのケース部会を開催することが決まった。
11月17日神奈川支部会には、別紙7支部会等出席者一覧のとおり、全組合員18社及び同支部に所属していないセッツカートンの各営業責任者が出席したところ、支部長であるレンゴーの《D14》は、その冒頭で、10月17日三木会の報告として、同会合の出席各社において段ボール製品の値上げの方針が出そろい、段ボールシートについては1㎡当たり7円ないし8円、段ボールケースについては12%ないし13%で値上げを進めることになった旨説明するとともに、レンゴーにおいては、既にユーザーに対して値上げ活動を行っている旨説明した上で、他の出席各社に対しても段ボール製品の値上げを実施するよう呼びかけ、これらの値上げの方針や取組状況について発表するよう促した。
その際、12社(甲事件原告王子コンテナー、大和紙器、甲事件原告森紙業、トーモク、日本トーカンパッケージ、日通商事、大村紙業、クラウン・パッケージ、三興段ボール、旭紙業、美鈴紙業及び興栄)の出席者はレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅に沿った値上げをする旨、ほか4社(コバシ、旭段ボール、浅野段ボール及び三五紙業)の出席者は値上げをする方針である旨それぞれ発言し、一部の出席者からは値上げ活動の進捗状況についても発言があった。この中で、トーモクの出席者は、段ボールシート及び段ボールケースについてそれぞれ12%以上値上げする旨発言した上で、既にユーザーに対して値上げの見積書を配り始めている旨報告するとともに、「毎回裏切る人がいますが、今回は裏切り者はいませんよね。しっかり値上げしていきましょう。」などと発言し、浅野段ボールの出席者は、段ボールケースの値上げについて、「乱さないようにやっていきます。」などと、他者の足を引っ張らずに値上げを行う旨発言した。他方、富士段ボールの出席者は、段ボール原紙の値上がりが実際にはまだ始まっておらず、現時点では値上げ活動を始めていない旨発言したにとどまったが、段ボール製品について出席各社が値上げ活動に取り組んでいくことを否定する趣旨のものではなく、他の出席各社も、この発言から、富士段ボールにおいても、段ボール原紙の値上がりが始まれば段ボール製品の値上げ活動を始めるという意図であると理解したため、その場で、同人に対して意見や質問がされることはなかった。なお、この会合には、埼玉支部に所属するセッツカートン東京工場の《K1》も出席していたところ、同人は、自社もレンゴーに準じて値上げを行っており、既にユーザーに対して値上げを通知している旨発言するとともに、「埼玉も頑張っています。」、「お互いに頑張っていきましょう。」などと発言した。
以上のとおり情報交換が行われた段ボール製品の値上げについて、11月17日神奈川支部会に出席した上記各社のうち、その時点でまだ値上げ活動を開始していなかった事業者においても、それ以降、順次値上げ活動を行っていたところ、その後開催された神奈川支部会においては、出席各社の間で、こうした値上げの進捗状況について相互に報告がされていた。支部長である上記《D14》は、これらを取りまとめた内容を同支部管内の値上げの実施状況として三木会に報告しており、また、三木会で話題に出た他の支部管内の値上げの実施状況について神奈川支部会で報告したこともあった。その中で、値上げの実施が遅れていた富士段ボールに対しては、他の事業者が早く値上げ活動を進めるよう促したこともあった。また、上記のとおり、段ボールシートの値上げ活動については、これらの販売を行っている事業者の間で情報交換を行うためのシート部会が開催されていたほか、段ボールシート及び段ボールケースとも、値上げ交渉が難航するユーザーについては、入れ合いとなっている事業者の間で小部会が開催されるなどして、これらの交渉の状況に関する情報交換が行われていた。
(以上、査149~151、193、209、210、239、275、322、329、345、380、398、399、407、410、413、425、433、434、443、444、448、452、456、459、469)
(オ) 平成23年11月以降に開催された三木会の状況等
a 上記(ウ)のとおり10月17日三木会の出席各社の間で発表された段ボール製品の値上げの実施について、平成23年11月以降開催された三木会において、出席各社の間で、自社の値上げの進捗状況のみならず、上記(エ)のとおり支部長等を通じて支部管内における値上げの進捗状況も相互に報告されていた。このうち12月7日三木会と1月11日三木会は、例年その時期には開催されていなかったが、このような値上げの進捗状況を確認するために臨時に開催された。
こうした中で、三木会においては、当初、平成23年12月末までに段ボール製品の値上げが完了するよう値上げ活動を行っていくことが予定されていたが、実際には、日経市況における段ボール原紙の販売価格が同月末頃まで上がらなかったことなどから、各社及び各支部とも値上げ活動が円滑に進んでおらず、取り分け段ボールケースの値上げに先行して行われるべき段ボールシートの値上げの進捗状況が悪かった。そこで、東段工管内に所在するボックスメーカーのうち値上げ交渉が難航しているユーザーを対象として値上げ活動の対策について協議するために「シート会議」などと称する会合(以下「シート会議」)が開催されることとなり、それ以降、本部役員会社のうち、レンゴー、甲事件原告王子コンテナー、トーモク、セッツカートン、甲事件原告森紙業、ダイナパック、日本トーカンパッケージ及び大王製紙パッケージの8社が中心となって、段ボールシートの競争が激しい国道4号線付近のボックスメーカーを始めとして東段工管内に所在するユーザー(その対象は少なくとも40社を上回り、関東地方のユーザーのみならず、《事業者名略》、《事業者名略》、《事業者名略》など北海道・東北地方のユーザーや《事業者名略》など静岡県のユーザーも含まれていた。)をリストアップした上で、シート会議を開催し、前記のとおり各地域で開催されていた小部会の幹事等から個別のユーザーに対する値上げ交渉の報告を受けながら、これらの値上げ活動の対策を協議していた。また、シート会議の中心メンバーであったセッツカートンの《K2》は、11月2日埼玉支部会に出席して、出席各社に対し、国道4号付近のボックスメーカーに対して値上げを実施できないと段ボールシート全体の値上げに影響するため頑張ってほしいなどと述べて、これらの値上げ活動を促した。
このほか、三木会においては、富士段ボールなど値上げ活動が遅れていた事業者に対しては、これらの事業者が所属する支部において速やかに値上げ活動を進めるよう働きかけを行うことなども確認されていた。
(以上、査130、131、139、152、174、179、266、278、302、336、350、663)
b こうした状況の下、東段工は平成23年12月15日に忘年会を開催し、東段工に所属する本部役員会社及びグループ会社のほか、乙事件原告(晃里の代理出席)、コバシ、鎌田段ボール工業、浅野段ボール、旭段ボール、興亜紙業等の代表者又は担当者が出席したところ、同会合の挨拶の際、東段工の理事長であるトーモク代表取締役の《C4》は、段ボール製品の値上げ活動について、「今はまだら模様だが、やるべきときに努力しないと徒労に終わる。」、「今はいいタイミングなのでしっかりやってほしい。」、「年越しもみんなで走ってもらうしかないが、お願いしたい。」、「皆でがんばりましょう。」などと発言した。また、これに続いて、三木会幹事長であるレンゴーの《D1》は、「皆さん全力で価格改定に取り組んでおられると思いますが、わが社も全力上げて取り組んでいる。」、「東段工は信頼関係が深く、全国で一番早く決着をみる組織だと思っている。」、「信頼関係を持って進んでいけば、それなりの結果がついてくる。」などと発言したほか、甲事件原告王子コンテナーの《I4》は、「板紙の値上げは何度も経験したが、段ボールの値上げは根気が必要だとつくづく思っている。」、「幸い大手(全農)から原紙を1/1から値上げするとの連絡が入ってきた。」、「年明けても交渉しないといけないかもしれないが、可能な限り今年中に決めるため、ベクトルを合わせてやっていきたい。」、「王子チヨダに何か問題があれば、私に言ってください。」などと発言した。(査691~693)
(カ) 段ボール製品の値上げの実施状況
以上のとおり、本件各事業者においては、それぞれ段ボール製品の値上げ活動を行っていたところ、その値上げの実施時期や進捗状況には差異があったものの、その実施に当たり目安とした値上げ幅は、三木会又は支部会等でこれらを発表した事業者のみならず、それ以外の事業者においても、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーの発表した値上げ幅と大きな差異がみられるものではなかった。
そして、これらの値上げ活動の結果、東段工管内における段ボール製品の値上げの実施率は、平成24年4月20日に三木会が開催された時点で、段ボールシートについてはほぼ100%に達していたほか、段ボールケースについても、約80%に達し、さらに、同年5月17日に三木会が開催された時点では、段ボールケースについて90%に達しており、これらの会合で各支部からの報告によりこうした値上げの達成状況が確認されたところ、レンゴーの《D2》は、同日に開催された三木会で、おおむね自社の段ボール製品の値上げが完了した旨表明した。
(以上、査1~63(各号証における「段ボール製品の販売価格の改訂に係る社内手続」と題する項目)、64~127、139、179、266、579の4、591~605)
イ 三木会の出席各社の間における意思の連絡の存在について
従前から、段ボールメーカーの間では、段ボール製品について、販売価格の維持や現状の納入業者によるシェアの維持の観点から、取引拡大のため安値の販売を行うことを「競り込み」などと称して自粛すべきものと認識されてきた。また、従前から、段ボール原紙の価格の上昇に伴い、段ボール製品の販売価格を引き上げるに当たっては、まず、一貫メーカーであるレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが段ボール製品の値上げを表明し、それ以外の段ボールメーカーは、両社の示したこれらの値上げ幅を指標として自社の段ボール製品の値上げを実施するのが通例であったところ、段ボールメーカーの間では、大手の段ボールメーカーを含め、各社が足並みをそろえて値上げをすることが必要であると認識され、取り分けこうした値上げの時期に値上げを実施せずに競り込みを行うことは他の事業者の値上げの妨げになるため、警戒されてきた。こうしたことから、段ボール原紙の値上がりに伴い段ボール製品の値上げを実施する時期には、東段工の三木会及び支部の会合において、出席した事業者の間で、各社の値上げの方針や値上げの進捗状況について情報交換が行われるなどしていた。
こうした慣行の下で、レンゴーは、平成23年8月下旬に、段ボール原紙の値上げと共に、段ボールシートについて1㎡当たり8円以上、段ボールケースについて13%以上値上げする旨を公表し、その営業を統括する地位にあった《D1》は、9月22日三木会で他の出席各社にも値上げの実施を呼びかけ、自社が公表した段ボール製品の値上げを成功させるため、同会合に出席した他の事業者においても、レンゴーに続いて同程度の値上げ幅で段ボール製品の値上げを実施するよう働きかけた。
その後、甲事件原告王子コンテナーが、グループ内の段ボールシートの値上げと共に、段ボールシートにつき1㎡当たり7円以上、段ボールケースにつき12%以上の値上げをする旨公表し、他の主要な原紙メーカーも段ボール原紙の値上げを表明したことから、大手の専業メーカーにおいても、社内又はグループ内で段ボール製品の値上げの方針を決定していたところ、10月17日三木会において、本部役員会社の各出席者は、それぞれ値上げを行う意向を表明するとともに、各支部の支部長等においても自社の値上げの方針のほか支部管内における値上げに向けた動きなどについて発表した。このうち、値上げ幅を併せて発表した事業者による発表された値上げ幅は、いずれも、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅(段ボールシートにつき1㎡当たり7円ないし8円以上、段ボールケースにつき12%ないし13%以上)と同程度のものであり、従前からレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅を指標に段ボール製品の値上げが行われてきた実態から、本件当時も、これらと同様の方針で段ボール製品の値上げを実施することになることは、具体的な値上げ幅を表明しなかった事業者も含め、出席各社の間で共通の認識となった。
これらによれば、10月17日三木会において、出席各社の間で、段ボールシートの販売価格について、現行価格から1㎡当たり7円ないし8円以上、段ボールケースの販売価格について、現行価格から12%ないし13%以上引き上げることが確認され、相互に歩調をそろえながらこうした値上げを行うとの意思が形成され、その旨の意思の連絡が成立したと認められる。
ウ 支部会等の出席各社の間における意思の連絡の存在について
東段工の支部においても、従前から、支部の会合が段ボールメーカーによる段ボール製品の価格の維持や引上げを行うための情報交換の場として利用されてきたところ、平成23年8月下旬に段ボール製品の値上げを公表したレンゴーは、自社が所属していない東京・山梨支部を除く各支部における支部会等で、これらの値上げの方針を発表して、他の事業者にも値上げの方針を表明するよう促すなどし、自社の公表した段ボール製品の値上げを成功させるため、他の事業者においてもレンゴーに続いて同程度の値上げ幅で共に値上げを実施するよう働きかけた。
その後、平成23年10月中旬以降開催された本件支部会等(10月19日東京・山梨支部会、10月19日新潟四木会、10月24日長野5社会、10月27日トップ会、10月27日群馬会、10月27日栃木会、10月31日宮城支部会、10月31日静岡支部会、11月2日埼玉支部会、11月9日千葉・茨城支部会、11月14日群馬・栃木支部会及び11月17日神奈川支部会の総称。以下同じ。)においては、出席各社のうち、大手の段ボールメーカーを始めとする事業者においては、自社の段ボール製品について具体的な値上げ幅を発表するなどしながら値上げの意向を表明するなどしていたところ、その値上げ幅は、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅と同程度のものであったのであり、また、大手の段ボールメーカーが所属しない東京・山梨支部においても、支部長が三木会で大手の段ボールメーカーが段ボール製品の値上げの方針を表明したこと並びにその値上げ幅及び内訳を報告した上で、大手の段ボールメーカーの動きをみながら同支部所属の各社においても段ボール製品の値上げを実施するよう促していた。他方、本件支部会等に出席していた事業者のうち、地場の段ボールメーカー等の中には、段ボール製品の値上げの意向自体は表明しつつも、具体的な値上げ幅については発表していなかった事業者やこれらの値上げの意向自体を明確には表明していなかった事業者が存在するものの、従前の慣行から、前者のような事業者がいたとしても、レンゴーや甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅を指標として値上げを実施することになることについて出席各社の間で共通認識となっていたことが認められ、後者のような事業者がいたとしても、特に値上げを実施することについて反対の意向を表明しない限り、競り込みを自粛すべきとされる慣行の下で、大手の段ボールメーカーにより値上げが実施されることになれば、これに追随して値上げを行うことになることは出席者間の共通の認識となっていたことが認められ、実際、これらの事業者においても大手の段ボールメーカーが発表した内容と同程度の値上げ幅を目安として値上げ活動が行われたとみられ、その後の支部会等において値上げの交渉状況等について情報交換が行われていたことからしても、これらの事業者が協調して値上げを行う当事者から除外されていたとはいえない。このことは、具体的な値上げ幅について表明しなかった者も含め、本件支部会等に出席していた営業責任者の多くが、供述調書において、当該会合において出席各社の間で協調して値上げ活動を行っていく旨の認識を持ったと述べていることからも明らかである。
以上によれば、本件支部会等においても、出席各社の間で、段ボールシートの販売価格について、現行価格から1㎡当たり7円ないし8円以上、段ボールケースの販売価格について、現行価格から12%ないし13%以上引き上げることが確認され、相互に歩調をそろえながらこうした値上げを行う意思が形成され、その旨の意思の連絡が成立したと認められる。
エ 支部会等の出席各社による三木会の意思の連絡への参加について
本件当時、東段工管内の段ボールメーカーの間で協調して段ボール製品の値上げを実施するための情報交換の場として三木会及び各支部の会合が利用されていたというべきところ、これらの協調行為は、段ボール製品の値上げについては、大手の段ボールメーカーであっても他の事業者と共に行わなければこれを実現するのが困難であるとの認識の下、本部役員会社を構成する大手の段ボールメーカーが、管内の地場の段ボールメーカーとも各支部の会合を通じて協調しながら東段工管内で値上げを実施するため、その主導により組織的に一連のものとして行われたものであり、これにより各支部管内で行われた段ボール製品の値上げには三木会で成立した合意による拘束が及んでいたと認められる。
一方、本件支部会等のうち10月19日東京・山梨支部会、10月31日静岡支部会、11月2日埼玉支部会、11月9日千葉・茨城支部会及び11月17日神奈川支部会においては、当該会合の冒頭で、支部長等が10月17日三木会において段ボール製品の値上げを実施することが確認された旨の報告をした上で、当該支部会等の出席各社の間でも、その旨の確認がされており、これらの支部会等に出席していた事業者においては、相互に他の事業者との間で協調して段ボール製品の値上げを実施するにとどまらず、三木会を構成する事業者においても同内容の値上げが行われる旨の認識があったと認められる。
他方、本件支部会等のうち、10月19日新潟四木会、10月24日長野5社会、10月27日トップ会、10月27日群馬会、10月27日栃木会及び10月31日宮城支部会については、支部長等を通じて10月17日三木会で段ボール製品の値上げを実施することが確認された旨の報告がされた事実を認めることはできない。しかしながら、段ボール原紙の値上がりに伴い段ボール製品の値上げが実施される時期には、三木会のみならず、各支部の会合においても、値上げの方針や進捗状況についての情報交換が行われるなど、従前からこれらの会合が協調して段ボール製品の値上げを行うための情報交換の場として利用されており、東段工の組合員であるか否かにかかわらず、いずれの事業者も従前からこうした慣行が存在していたことを理解していたことは容易に推認され、本件当時行われた段ボール製品の値上げも、段ボール原紙の値上がりを理由とするものであって、これに伴い段ボール製品について足並みをそろえて値上げを行うことについては、各地域において共通した課題であったのであり、これまでも段ボール原紙の値上がりを理由として一部の地域のみで値上げが実施されたことがなかったとみられることからすれば、上記各支部会等において10月17日三木会の報告がされていなかったとしても、これに出席した事業者においては、従前からの慣行により、当該支部会等で値上げの表明をしていたレンゴーなどの大手の段ボールメーカーが東段工管内の他の支部においても段ボール製品の値上げを主導するなどして同様の情報交換がされていることを認識していたとみられる状況にあったといえる。
以上によれば、本件支部会等に出席した事業者においては、当該会合で10月17日三木会の報告がされていたか否かにかかわらず、当該支部を代表して三木会に出席していた支部長等又は三木会を構成する本部役員会社に所属する営業責任者等の促しにより、10月17日三木会で確認されたところと同程度の値上げ幅で段ボール製品の値上げを実施することを出席各社の間で確認したことをもって、これらの者を介して、10月17日三木会で成立した意思の連絡に参加したものと認めるのが相当である。
オ その他の事業者の参加について
(ア) 乙事件原告の参加について
乙事件原告は、平成23年4月以降、子会社である晃里に対し、自社で製造した段ボール製品の販売業務を委託するとともに、乙事件原告の所属する東段工の支部における各会合に、晃里の営業担当者を出席させていたが、晃里は、実質的には親会社である乙事件原告の営業部門として、その指揮監督の下で営業活動を行っていたのであり、東段工の各支部の会合にも、かかる立場で出席していたと認められる。そうすると、晃里の営業担当者が10月19日東京・山梨支部会等に出席して他の事業者との間で段ボール製品の値上げに関してした情報交換は、乙事件原告が実質的に自社の営業部門である晃里を介して行ったというべきであり、これについて乙事件原告を当事者とする意思の連絡が存在したものと認められる。
(イ) 甲事件原告群馬森紙業の参加について
甲事件原告群馬森紙業は、10月27日群馬会及び10月27日栃木会に出席していなかったものの、自社の段ボール製品についてグループ会社である甲事件原告王子コンテナーの公表した値上げの方針に従って値上げ活動を行っていたところ、その後、11月14日群馬・栃木支部会において、同会合に出席した他の事業者が値上げの進捗状況について報告をする中で、甲事件原告群馬森紙業の出席者も、自社の値上げの進捗状況について報告していたことからすれば、甲事件原告群馬森紙業も、11月14日群馬・栃木支部会の場において、これらの事業者との間で、相互に歩調をそろえながら値上げを行うことについての意思の連絡が成立したものと認められ、このとき、三木会が中心となって各支部において同様の情報交換が行われながら値上げが実施されたことについての認識、認容があったと認められるから、段ボール製品の値上げについて10月17日三木会で成立した意思の連絡に参加したものと認めるのが相当である。
(ウ) 鎌田段ボール工業の参加について
鎌田段ボール工業についても、その代表者が11月17日三木会に出席した際には、自社の段ボールケースについて、他の事業者と足並みをそろえて同程度の値上げ幅で値上げを行うことを認識、認容していたものであり、同会合でした値上げに関する回答は、その旨の意思を表明したものと認められるから、11月17日三木会を通じ、かかる値上げの実施について10月17日三木会の出席各社の間で成立した意思の連絡に参加したものと認めるのが相当である。
カ 小括
以上のとおり、本件各事業者は、本件各合意に参加したものと認められ、本件各合意により、段ボール製品の販売価格について、本件各事業者の意思決定等が制約されることになるところ、その後に開催された三木会や支部会等において値上げの進捗状況等について情報交換が行われ、その結果、本件各事業者ともおおむね段ボール製品の値上げを実現したことに照らしても、本件各合意は、かかる段ボール製品の値上げについて本件各事業者の事業活動を拘束するものであったと認められる。
(2) 本件各合意が一定の取引分野における競争を実質的に制限するものであったか否かについて
ア 一定の取引分野の範囲について
独占禁止法2条6項にいう「一定の取引分野」とは、当該共同行為によって競争の実質的制限がもたらされる範囲をいうものであり、その成立する範囲は、当該共同行為が対象としている取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討して定まるものと解するのが相当であるところ、東段工は、その管轄地域である東日本地区においてコルゲータを有する段ボールメーカーで構成される団体であり、三木会は、こうした東段工の理事の下に置かれた組織として、主に東日本地区の全域又は広域において営業活動を行っている大手の段ボールメーカーからなる本部役員会社の営業統括者等及び管内の各支部を代表する支部長によって構成されていた。そして、本件における共同行為は、こうした本部役員会社を占める大手の段ボールメーカーが東段工管内の地場の段ボールメーカーとも協調しながら同管内全体で段ボール製品の値上げを実現するため、その主導により、東段工の組織である三木会及び支部会等を利用して行われたものである。
これらによると、本件各合意における情報交換の対象となった段ボール製品の値上げについて、その地理的な範囲に東段工の管轄地域である東日本地区が含まれることは明らかであるところ、これらの値上げ交渉が需要者の交渉担当部署との間で行われることを踏まえ、需要者の交渉担当部署の所在地を基準として、その範囲を画定すると、交渉担当部署が東日本地区に所在する需要者に対し、当該交渉担当部署との間で取り決めた取引条件に基づき販売される段ボール製品は、少なくとも本件各合意の対象に含まれるものであったと認められる。また、本件各合意により影響を受ける範囲も同様と解するのが相当である。
イ 競争の実質的制限の有無について
独占禁止法2条6項が定める「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」とは、当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいい、共同して商品の販売価格を引き上げる旨の合意がされた場合は、その当事者である事業者らがその意思で、ある程度自由に当該商品の販売価袼を左右することができる状態をもたらすことをいうものと解する。
特定段ボールシートについては、本件シート合意成立時点において、その合意の当事者となった第1事件三木会出席11社(第1事件事業者57社のうち、10月17日三木会に営業統括者等が出席した本部役員会社10社と支部長として営業責任者が出席した事業者のうち本部役員会社に属しない日本紙工業を併せた11社をいう。以下同じ。)のシェアは、4割余りであり、また、特定段ボールケースについても、本件ケース合意成立時において、その合意の当事者となった第2事件三木会出席12者(第2事件事業者63社のうち、10月17日三木会に営業統括者等が出席した本部役員会社10社と支部長として営業責任者が出席した事業者のうち本部役員会社に属しない日本紙工業及び興亜紙業を併せた12社をいう。以下同じ。)のシェアは、4割余りである。さらに、第1事件三木会出席11社のうちの4社(レンゴー、甲事件原告王子コンテナー、甲事件原告森紙業及び大王製紙パッケージ)とグループ関係にある15社(別紙3事業者一覧の番号12~26記載の各事業者)は、本件各合意の成立に先立ち、既にそれぞれ自社の親会社等から段ボールシート及び段ボールケースの値上げの方針を示されており、その意向が及んでいたことを踏まえ、特定段ボールシートについて、第1事件三木会出席11社に上記15社を加えた26社のシェアをみると、その割合は6割余りとなり、特定段ボールケースについて、第2事件三木会出席12社に上記15社を加えた27社のシェアをみると、その割合は5割余りとなり、いずれもシェアは過半を占めることになる。
これに加え、従前段ボール製品の値上げが実施された時期の状況等からすれば、特定段ボールシートについて、本件シート合意成立当時、その当事者である第1事件三木会出席11社又はこれにそのグループ会社である上記15社を加えた26社による販売価格の引上げに対し、他の事業者が競争的に振る舞い、これらの価格値上げをけん制する行動を採ることは見込みにくい状況にあったといえ、特定段ボールケースについても、本件ケース合意成立当時、その当事者である第2事件三木会出席12社又はこれにそのグループ会社である上記15社を加えた27社による販売価格の引上げに対し、ボックスメーカーを含む他の事業者が競争的に振る舞い、これらの価袼の引上げをけん制する行動を採ることは見込みにくい状況にあったといえる。
そうすると、特定段ボールシートについて、第1事件三木会出席11社が本件シート合意を成立させるとともに、特定段ボールケースについて、第2事件三木会出席12社が本件ケース合意を成立させたことをもって、いずれもその意思である程度自由に販売価格を左右することができる状態をもたらしたと認めることができる。そして、本件各事業者のうち、その余の事業者らが後日本件各合意に順次参加したことにより、そのシェアは、特定段ボールシートについて8割を超え、特定段ボールケースについて6割を超えるのであり、かかる市場支配は強固なものとなったということができる。これらによれば、本件各合意は、一定の取引分野における競争を実質的に制限するものであったことは明らかである。
また、その内容に照らし、これらが公共の利益に反するものであったことは明らかである。
(3) 本件各排除措置命令の適法性について
平成24年6月5日に被告が立入検査を行って以降は、本件各合意は消滅したものと認められるが、本件各事業者が本件各違反行為をやめたのは、自発的な意思に基づくものではないとみられること、東段工の組織である三木会及び支部の会合が、従前から段ボール製品の価格の維持及び引き上げのための情報交換の場として利用され、本件各違反行為も大手の段ボールメーカーの主導により組織的に行われたといえることからすれば、本件各違反行為が終了してから本件各排除措置命令がされるまでに2年余りが経過していることを踏まえても、本件各事業者において再び東段工の会合を利用するなどして同様の違反行為を繰り返すおそれがあることは否定できず、また、本件各違反行為が終了したことのみをもって当該取引分野における競争秩序の回復が十分にされたものということもできないから、被告が本件各違反行為につき特に必要があると認め、排除措置を命じたことにつき、裁量の逸脱、濫用があるということはできない。
また、本件各排除措置命令は、本件各違反行為が排除されたことを確保するのに必要な事項を命じたものと認められ、その内容についても、裁量の逸脱、濫用があるということはできない。
以上によれば、本件各排除措置命令は適法である。
(4) 本件各課徴金納付命令の適法性
ア 課徴金の算定期間(実行期間)について
本件各違反行為についてみると、原則としてユーザーに対して申し入れた値上げの実施予定日のうち最も早い日(①)が実行期間の始期となるが、本件各合意の成立時又は本件各合意への参加日より前に値上げを申し入れていた事業者については、値上げの申入れが本件各違反行為の実行とはいえないから、本件各合意成立又は本件各合意への参加以降に当該商品を引き渡した最初の日(②)が実行期間の始期となる。原告らにつきこれに当たる日は、別紙4課徴金一覧の「実行期間の始期」欄記載の各日である。
他方、本件各事業者は、平成24年6月5日に、被告の立入検査が行われたことを契機に情報交換をやめているから、同日をもって、本件各違反行為は終了したと認められる。
イ 課徴金の算定対象となる商品の該当性及び売上額について
(ア) 第1事件違反行為について、その対象商品の範ちゅうに属するものは、特定段ボールシートであり、第2事件違反行為について、その対象商品の範ちゅうに属するものは、特定段ボールケースであるから、一定の商品が違反行為である相互拘束から除外されていることを示す特段の事情が認められない限り、これらが課徴金の算定対象となるところ、原告らに係る上記アの実行期間に係る特定段ボールシート及び特定段ボールケースの売上高は、別紙4課徴金一覧の「売上額」欄記載の金額である。
(イ) 甲事件原告王子コンテナー及び甲事件原告北海道森紙業は、ロール紙の側面を保護するために用いられる「当て紙」に係る売上げを除外すべきであると主張するところ、当て紙は、外装用段ボールではなく、特定段ボールシート又は特定段ボールケースに当たらないから、当て紙に係る売上げは、課徴金の算定対象となる商品の売上額から除外すべきである。
(ウ) 甲事件原告王子コンテナー及び静岡王子コンテナーは、取引先から受注した段ボールケースの製造に当たり、自社の設備では対応できない特殊加工が必要な場合等に、ボックスメーカーに対し、原材料となる段ボールシートまたは段ボールケースを販売した上で、当該ボックスメーカーにおいてこれらを加工して仕上げた販売用段ボールケースを買い取り、取引先のユーザーに販売するという取引を行っていたが、これは実質的には加工委託取引であるとして、審査官からの報告命令に対し、実行期間における特定段ボールシート又は特定段ボールケースの売上額のうち、甲事件原告王子コンテナーにつき10億2106万9258円、静岡王子コンテナーにつき5億0822万3443円を課徴金の算定基礎から除外すべきであると報告したところ、本件各課徴金納付命令においては、上記のうち、甲事件原告王子コンテナーにつき段ボールシートの売上額4126万3206円、静岡王子コンテナーにつき段ボールシートの売上額1億1869万4622円については、課徴金の算定基礎から除外されなかった。しかし、上記についても、実質的に販売用段ボールケースの原材料の有償支給としてされたものと認められるから、これらの段ボールシートの売上げは、課徴金の算定基礎から除外すべきである。
(エ) 以上によれば、原告らに係る課徴金の算定対象となる商品の売上額は、甲事件原告王子コンテナーの特定段ボールシートにつき47億8565万5090円、特定段ボールケースにつき120億8164万5454円、静岡王子コンテナーの特定段ボールシートにつき1億9654万4543円、甲事件原告北海道森紙業の特定段ボールケースにつき16億4656万3040円となるほかは、上記(ア)のとおりである。
ウ 課徴金の算定率について
原告らは、いずれも段ボール製品の製造業を営んでいた者であるから、独占禁止法7条の2第1項に規定する小売業又は卸売業には該当しない。また、原告らのうち、甲事件原告王子コンテナー(静岡王子コンテナーに係る部分)、甲事件原告ムサシ王子コンテナー、甲事件原告関東パック、甲事件原告常陸森紙業、甲事件原告長野森紙業、甲事件原告群馬森紙業、甲事件原告新潟森紙業、甲事件原告仙台森紙業、甲事件原告静岡森紙業、甲事件原告北海道森紙業及び乙事件原告は、上記アの実行期間を通じ、資本金の額が3億円以下又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社であって、段ボール製品等の製造を主たる事業として営んでいた者に当たるから、独占禁止法7条の2第5項1号の軽減算定率が適用されるが、その余の甲事件原告には、同号所定の軽減算定率は適用されない。
エ 結論
以上によれば、第1事件について、静岡王子コンテナー合併後の甲事件原告王子コンテナーが納付すべき課徴金の額は4億8642万円となるほかは、原告らの納付すべき課徴金の額は、別紙4課徴金一覧記載のとおりであり、また、第2事件について、静岡王子コンテナー合併後の甲事件原告王子コンテナーが納付すべき課徴金の額は12億8673万円、甲事件原告北海道森紙業が納付すべき課徴金の額は6586万円となるほかは、原告らの納付すべき課徴金の額は、別紙4課徴金一覧記載のとおりである。
したがって、第1事件課徴金納付命令のうち、甲事件原告王子コンテナーに上記の額を超える課徴金の納付を命じた部分は違法であるが、その余の原告らに対するものは適法であり、第2事件課徴金納付命令のうち、甲事件原告王子コンテナー及び甲事件原告北海道森紙業に対して上記の額を超える課徴金の納付を命じた部分は違法であるが、その余の原告らに対する課徴金納付命令はいずれも適法である。
4 争点
(1) 本件各合意により、独占禁止法2条6項の不当な取引制限に当たり得る行為(いわゆる共同行為)がされた事実があるとした本件審決の認定が実質的証拠を欠くものか、また法令の解釈を誤ったものか(争点1)
(2) 本件審決における一定の取引分野の認定に実質的証拠があるといえるかどうか、また、その認定が適法なものといえるかどうか(争点2)
(3) 本件審決が乙事件原告を処分の対象者としたことが誤りであるかどうか(乙事件に係る争点。争点3)
(4) 本件審決における課徴金の算定に誤りがあるかどうか(争点4)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(本件各合意により、独占禁止法2条6項の不当な取引制限に当たり得る行為(いわゆる共同行為)がされた事実があるとした本件審決の認定が実質的証拠を欠くものか、また法令の解釈を誤ったものか)について
(1) 甲事件原告らの主張
ア 本件審決は、10月17日三木会において、出席者の間で本件各合意が成立し、その後に開催された各地の支部会等において、他の事業者が事後的に本件各合意に参加したと認定している。
不当な取引制限における「共同して…相互にその事業活動を拘束し」(独占禁止法2条6項)に該当するというためには、複数の事業者が商品又は役務の対価を引き上げるに当たって、相互の間に「意思の連絡」があったことが必要とされているが、独占禁止法2条6項の要件を満たす意思の連絡と認められるためには、事業者間で、市場の有する競争の機能が十全に発揮されることが阻害されるに必要なレベルの反競争効果をもたらすようなコミュニケーション、換言すれば、一定の取引分野における競争を実質的に制限することができるようなコミュニケーションが行われる必要があると解すべきである。
10月17日三木会の時点では、段ボール原紙の値上げ活動が進捗していない状況であって、実際に段ボール原紙の値上げを受け入れざるを得なくなるかどうかは不透明であり、専業メーカーにとって、段ボール製品の値上げを決定するにはいまだ機が熟していなかったから、10月17日三木会の出席者は、自社の段ボール製品の値上げ方針について相互に保証を交換し合う前提条件を欠いており、反競争効果をもたらすコミュニケーションがされたとはいえない。
また、段ボール製品には輸送上の大きな制約があるため、工場所在地を中心としておおむね数十㎞程度の地理的範囲ごとに、顧客の獲得をめぐる競争が行われているという実態があり、段ボール製品については、東日本地区の細分化された地域ごとに、大手段ボールメーカーの工場、多数の地場専業メーカーの工場及び段ボールケースについては極めて多数のボックスメーカーが入り混じる形で競争が展開されている。そこで、少なくとも甲事件原告王子コンテナーにおいては、段ボール製品の販売等に係る最終決定権限は各工場長に与えられており、かかる事情は、他の大手会社でも大きく異ならないと思われる。したがって、段ボール製品の製造業者にあっては、本社や親会社からの値上げの指示があったとしても、各工場が製造し、出荷する段ボール製品の販売価格が直ちに引き上げられるものではなく、値上げは、地域の実情を踏まえた工場長等の判断に委ねられていることが一般的である。そうすると、10月17日三木会の出席者が、競争回避を試みたとしても、各地域において10月17日三木会の内容を踏まえた反競争的コミュニケーションが行われない限り、東日本地区全体において共同して値上げを行うことは不可能であり、仮に、上記のような事情を熟知しているはずの10月17日三木会の出席者らが、東日本地区全体において共同して段ボール製品を値上げしようと試みるのであれば、10月17日三木会の内容を各地域に伝達し、各地で地域の実情を踏まえた詳細な情報交換を行うために必要な措置を採るはずである。この措置としては、①三木会から東段工の各支部に対し、地域での協議、調整を行うよう指示する方法、②10月17日三木会に出席した各社から、東日本地区内に所在する自社の工場又は子会社に対し、地域での協議、調整を行うよう指示する方法の2通りが考えられるが、そのような措置は取られていない。
そもそも、東段工の支部は定款の規定により設置された組織であるのに対し、三木会は定款に直接に根拠を有さず、下位規定である規約に基づき設置された会議体であり、下位規定に基づき設置された会議体が、定款の規定により設置された組織の上位に位置し、情報の集約や伝達について指揮命令をすることは考えられない。
これらの事実に照らすと、10月17日三木会におけるやり取りは、参考程度の情報として、各社の全体としての大きな方向感を確認するという域を超えるものではなく、独占禁止法2条6項の「共同して…相互にその事業活動を拘束し、又は遂行すること」という要件を満たすものではない。
イ 三木会定例会議には、一部の支部長の参加は予定されていないから、三木会が各支部との間での情報集約や情報伝達において司令塔的な役割を果たすことは考えられていない。現に、10月17日三木会に出席した者がいなかった北海道支部及び東北支部を含め、東日本地区の18都道県のうち11道県(本件審決が10月17日三木会の内容が支部会等に伝達されていないことを認定している北海道、宮城県、群馬県、栃木県、新潟県及び長野県並びに本件審決が10月17日三木会の内容が支部会等に伝達されているかどうかを認定していない青森県、岩手県、秋田県、山形県及び福島県。以下これらの道県を「本件11道県」という。)の支部会等には、10月17日三木会の内容さえ伝達されていなかった。
本件審決は、三木会と各支部会等との間で、支部長等を通じて相互にこうした会合の内容が報告、伝達されることが通常であったことなどの慣行に照らせば、10月17日三木会の内容を各地域に伝達するまでもなく、地場専業メーカーが追随して値上げをすることが容易に予測される状況にあったから、かかる状況の下で行われた10月17日三木会でのやり取りは、競争制限効果をもたらす合意と認められるとしている。しかし、北海道支部長は三木会に出席しておらず、東北支部長も半分程度しか出席しておらず、これらの支部長に対する情報伝達の措置は採られていなかったのであるから、少なくともこれら支部会との関係では、三木会と各地域の会合との間で報告及び情報伝達がされることが通常であったとする本件審決の認定は実質的証拠を欠くというべきであるし、これ以外の10月17日三木会の内容が伝えられていなかった県についても普段から報告及び情報伝達はされていなかったというべきであって、これらの県との関係でも、本件審決の上記認定は実質的証拠を欠くというべきである。
また、本件審決は、従前の慣行からすれば、10月17日三木会の内容が伝達されたと認められない支部会等において、本部役員会社である大手の段ボールメーカー及びそのグループ会社が10月17日三木会で協議した内容と同様の値上げの意向を表明すれば、10月17日三木会でその旨の合意が成立した事実自体を伝達しなくても、他の地場の段ボールメーカーもこれに追随して値上げの実施に向かうことは容易に予測される状況にあったとしているが、10月17日三木会の出席者がそのような予測を実際にしていたとの事実又はそのような予測の下にあえて10月17日三木会の内容を伝達しなかったとの事実は認定されておらず、この認定は実質的証拠を欠くというべきである。
ウ 本件審決は、支部会等の出席者が本件各合意に参加したと認められるとの認定の前提として、三木会における情報交換と支部会等における情報交換が組織的に一連のものとして行われていたとの事実を認定している。しかし、支部会等の状況をみると、例えば、トップ会においては、話題は北海道内の事に限られていたし、非組合員である合同容器が出席していることも踏まえ、トップ会は東段工及び三木会とは全く無関係の会合として運営され、トップ会と三木会との間で情報交換がされていた事実はなく、10月27日トップ会における値上げに関する情報交換は、10月17日三木会とは無関係に、北海道内で販売する段ボール製品を対象として行われていた。また、上記イのとおり、三木会と本件11道県の会合との間では普段から報告及び情報伝達がされていなかったと認められる。これらによれば、上記のような、三木会における情報交換と支部会等における情報交換が組織的に一連のものとして行われていたとの認定は実質的証拠を欠き、10月17日三木会の内容が伝達されたかどうかにかかわらず、支部会等の出席者の本件各合意への参加を認めた本件審決の認定も実質的証拠を欠く。
被告は、10月17日三木会での協議の内容が伝達されたとは認められない支部会等の出席各社についても、当該支部会等で確認された内容と同様の段ボール製品の値上げが、三木会を構成する事業者の間や東段工の他の支部会等においても確認されていることを少なくとも概括的には認識していたと主張し、本件審決にはその旨認定されているが、この認定は実質的証拠を欠くし、そもそも、本件合意のような極めて具体的な合意について、概括的な認識で足りるとはいえない。
エ 複数の事業者の間で成立した合意に、他の事業者が事後的に参加したというためには、当該他の事業者において既に成立している合意の存在及び内容を知ることが必要不可欠であり、これがなければ既存の合意に参加した者と歩調をそろえる意思を形成することは不可能である。仮に、本件支部会等において、本件各合意とおおむね一致する内容の合意が成立していたとしても、このような状況が違反行為者間における共通の了解を人為的に作り出す行為によって生じたものであることが認定されない限り、10月17日三木会における合意と各地の支部会等における合意は別のものであり、これらを包含する意思の連絡を認定することはできない。
また、仮に、各地の支部会等の出席者の中に、東日本地区の他の地域の支部会等においても、当該地域において販売される段ボール製品の値上げに係る情報交換が行われていることを認識している者が存在したとしても、10月17日三木会と各地の支部会等との間に共通の了解を人為的に作り出す行為、すなわち情報の伝達行為が存在しない限り、これらの合意は、いわゆる意識的並行行為であるにとどまり、これらを包含する意思の連絡を認定することはできない。
そして、本件各合意の内容に照らすと、10月17日三木会と各地の支部会等との間に情報の伝達行為が存在したと認められるためには、少なくとも、各地の支部会等に出席した者が、10月17日三木会の出席者から、直接又は少なくとも間接に、10月17日三木会の開催の事実、10月17日三木会で本件各合意が成立したことを伝達され、自社もこれと歩調をそろえる意思があることを表明することが必要不可欠である。
このように、意思の連絡の概念から検討しても、10月17日三木会の内容が伝達されたかどうかにかかわらず、支部会等の出席者が本件各合意に参加したと認められるとした本件審決の認定は実質的証拠を欠くというべきである。
(2) 乙事件原告の主張
ア 本件審決においては、①事前の連絡交渉の存在、②連絡交渉が商品の価格引上げに関するものであったこと、③その結果として価格引上げに向けた一致した行動がとられた事実を総合して意思の連絡を推認する手法であるいわゆる3分類説が採られたというべきであるが、3分類説は、当該行為の一致が不自然である場合に限って用いることができるものであるところ、本件のような段ボール製品のように、製造コストに占める原材料価格の割合が高く、製品の販売価格が原材料価格の上下と密接に関係している市場においては、近接した時期に同様の値上げがあったとしても、不自然であるとはいえないのであり、3分類説を用いて意思の連絡を推認することは許されない。
3分類説を用いることができない以上、本件では、事前の連絡、交渉の内容それ自体により、意思の連絡が立証されなければならない。意思の連絡には、各事業者がばらばらに設定すべき価格等を一つの基準に調整する「調整機能」と当該基準を自分が守れば相手も守るであろうという関係を保証する「保証機能」があるとされることからすると、事前の連絡、交渉により意思の連絡を認定できるかどうかを検討するに当たっては、問題となる連絡、交渉の内容が、これら2つの機能を果たすに足りるものかどうかという観点から検討すべきである。
イ 10月17日三木会におけるやり取りについてみると、10月17日三木会の時点では、主要な原紙業者による段ボール原紙の値上げの公表はされており、10月17日三木会の出席者にとっては、段ボール原紙や段ボール製品の値上げ問題は、タイムリーかつ極めて関心の高い事柄であり、10月17日三木会においてこれに関する話題が出ることは自然なことである上、10月17日三木会で成立したとされる本件各合意は、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが既に公表し周知のものとなっていた値上げ方針と同様のものであることからすれば、これが段ボール製品に関する値上げの合意に転化したというためには、単なる情報交換とは異なる合意があったと認定できるだけの事情が必要である。
しかし、10月17日三木会では、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが既に公表済みの値上げ方針を発表し、日本トーカンパッケージの出席者が10月17日三木会に先立って社内で方針決定されていた値上げ方針及び値上げ幅を新たに発表したほかは、値上げ方針や値上げ幅は発表されていないのであり、このことからすれば、10月17日三木会において、各事業者の値上げ幅が調整された事実はなく、また、自分が値上げすれば他社も値上げするだろうという信頼が醸成されたとはいえない。そうすると、10月17日三木会のやり取りは、調整機能や保証機能を有するものとはいい難い。実際、段ボール原紙メーカーが値上げを発表したとしても実際に値上げが成功するかどうかは明らかではなく、10月17日三木会での各社の発言も意思の連絡を認定するに足りるものとはいえない。
また、意思の連絡の要件は、これを満たすことにより行為者相互の拘束の効果が生じることが必要であり、意思の連絡の主体となる事業者の範囲については、合意に参加する事業者全員を個別具体的に認識する必要はないとしても、少なくとも、市場に影響を与え得る範囲の事業者が合意に参加しているものと当事者に認識されていることを要する。しかし、本件では、本件11道県の事業者に対しては、10月17日三木会で成立したとされる本件各合意は伝達されていない。また、10月17日三木会において、その会議内容を各地の支部会等に伝達するための措置が採られたといったことは本件審決に認定されていない。以上に照らせば、10月17日三木会の出席各社において、その会議内容を各地の支部会に伝達する意思は認められず、そうであるとすれば、三木会に参加していない各支部の事業者が、当該合意に参加することを認識、予測していたともいえない。そうすると、10月17日三木会において意思の連絡があったと認定する本件審決の判断は、実質的証拠を欠くというべきである。
ウ 10月17日三木会の出席者以外が本件各合意に参加したかどうかを認定するに当たっても、本件では3分類説を用いることはできないから、事前の連絡、交渉の内容それ自体により、意思の連絡が立証されなければならない。
本件審決は、東日本全域の市場は存在せず、したがって、各支部相互において市場に影響を与える範囲の事業者相互の認識もあり得ないことを認めつつ、合意への参加を認容しているものと解されるが、意思の連絡に係る2つの機能は、少なくとも概括的に意思の連絡の相手方の範囲を認識しなければ発揮されないこと、意思の連絡の要件は、それを満たすことにより行為者相互の拘束の効果が生じるものでなければならず、そのためには、概括的であっても、市場に影響を与え得る範囲の事業者の認識を有することが必要であるというべきことからすれば、上記の認定は誤っている。
本件支部会等にのみ出席した者は、当該支部会等に出席した事業者を認識することはできたものの、他の支部においていかなる事業者が支部会等に出席したかやどのようなことが話し合われたかについての認識を有しない。また、乙事件原告のような地場メーカーと他の地域にしか工場を有しない地場メーカーとの間で競争は起こり得ないため、これらのメーカーの間で同じ合意に参加することはあり得ない。
先行する合意が存在する場合に、これへの事後的な参加が成立するためには、事後的な参加者においては、先行合意の内容を認識、予測した上で、これと歩調をそろえる意思を形成する必要があるが、本件11道県の事業者にあっては、10月17日三木会で成立したとされる本件各合意について伝達されていないのであるから、その内容どころか存在さえ認識していないのであり、本件支部会等の出席者が本件各合意に参加したとの本件審決の認定は、実質的証拠を欠くというべきである。
エ 本件審決は、乙事件原告について、10月19日東京・山梨支部会において本件各合意に参加したとの事実を認定しているが、10月19日東京・山梨支部会においては、10月17日三木会において各社が段ボール製品を値上げする旨を説明していたという事実が伝えられたにとどまり、合意の内容は伝達されておらず、したがって、10月19日東京・山梨支部会の出席者が、合意に参加したということもできない。関係者の供述調書には、値上げの方針の説明に対して反対する者がいなかった旨の供述があるものもあるが、値上げに関して何らかの提案があったわけではないことからすれば、これをもって、意思の連絡を認めることはできないし、違法性や反倫理性を疑うべきやり取りが認められるわけでもない。
本件審決は、意思の連絡の認定に当たり従前の慣行を強調するが、これは意識的に他と同調する行為(並行行為)はあるが意思の連絡を欠く意識的並行行為と意思の連絡を混同するもので、独占禁止法2条6項の解釈適用を誤るものである。また、本件審決のいう慣行があったとしても、10月17日三木会の合意の伝達を受けていない支部会のみに参加している地場の事業者において、他の地域の地場の段ボールメーカーが本件合意の内容に従った値上げに向かうことを予測することが可能となるとは考え難いこと、本件支部会等においては、具体的な値上げの方針を明らかにしなかったり、段ボール原紙の値上げが確定するまでは値上げ方針を決定しないとしたりする事業者もいたことからすれば、従前の慣行を重視して、本件支部会等に出席した事業者が本件各合意に参加したとする本件審決の認定は実質的証拠を欠くというべきである。
さらに、本件審決は、合意への参加を立証するに当たり、事後の値上げ活動を指摘するが、製造コストに占める原材料価袼の割合が高い段ボール製品にあっては、原材料価格の高騰後、各社が近似した時期に同一又は同様の値上げを行うことは不自然とはいえず、このことから意思の連絡を認定することはできない。乙事件原告においては、本件支部会等に出席していた晃里の担当者から支部会等におけるやり取りの報告を受けたことはない。
(3) 被告の反論
ア 甲事件原告らの主張に対する反論
(ア) 甲事件原告らは、10月17日三木会において、反競争効果をもたらすコミュニケーションがされたとはいえないと主張するが、10月17日三木会の時点において、段ボール製品の値上げを行う事態となるか不透明であったとはいえないし、10月17日三木会での出席各社の発言等によれば、本件各合意に係る意思の連絡がされたと認められるのであって、上記主張は理由がない。
また、甲事件原告らは、大手の段ボール製品の製造業者にあっては、段ボール製品の値上げは地域の実情を踏まえた工場長等の判断に委ねられていると主張するが、甲事件原告王子コンテナー等の大手の段ボールメーカーにおいて、地場のユーザーに対する販売について、各工場で営業活動を行い、当該工場の裁量で販売価格を決定していたとしても、これらの事業者が各工場で実施した段ボール製品の値上げは、本社又は親会社が示した値上げ方針に沿って行われたものであり、各工場の独自の判断によるものではないから、上記主張は理由がない。
甲事件原告らは、三木会の組織上の位置付けからして、三木会が、各地の支部に対して指揮命令をしたり、司令塔的な役割を果たしたりすることは考えられないと主張するが、三木会は、事実として各支部の管内における値上げ実施状況の把握や値上げ活動の促進を図っていたものと評価されているのであって、これが、三木会と各支部会との東段工の組織内における正規の役割分担や事務分掌によって左右されるものではない。
(イ) 甲事件原告らは、10月17日三木会において、10月17日三木会の内容を各地域に伝達するための措置が採られていないことを主張する。
しかし、本件支部会等において、本部役員会社に所属する営業責任者等が10月17日三木会で協議した内容と同様の値上げの意向を表明すれば、10月17日三木会でその旨の合意が成立した事実を伝達しなくても、他の地場の段ボールメーカーもこれに追随して値上げの実施に向かうことは容易に予測される状況にあったのであり、本件支部会等のうちに、10月17日三木会の協議の内容自体が明示的に伝達されたという事実が証拠上認められない支部会等があったとしても、地場の段ボールメーカーを含めた本件各合意の成立、存在に関する本件審決の認定が左右されるものではない。三木会からの特段の指示がなくても、東段工の9つの各支部において、本件支部会等やその後の支部会等を通じて、値上げの方針や進捗状況に関する情報交換が一斉に行われたことは、本件各合意に係る段ボール製品の値上げが組織的に一連のものとして行われたこと、三木会の協議の内容自体を各支部に伝達するための特段の措置を要しなかったことを示すものである。
北海道支部の支部長であったレンゴーの《D7》は、三木会に欠席することが多かったが、東段工の事務局から送付された三木会の資料等を基に、トップ会において、三木会の情報を報告したりするなどして情報共有を図り、トップ会で情報交換された内容は、レンゴーの本社に報告しており、少なくともレンゴーを通じて三木会に伝えられていた。このように三木会と北海道支部(トップ会)との間の情報伝達の手段は事実上確保されており、また、トップ会の構成員のうち、合同容器以外の4社は、いずれも本部役員会社又はそのグループ会社であるから、改めて伝達のための措置を採る必要はなかった。
また、東北支部の支部長であった鎌田段ボール工業の《E》は、三木会に欠席することが多かったが、同支部が管轄する東北地区のうち宮城県以外の地区に工場等を有する組合員は、大手の段ボールメーカー又はそのグループ会社が大半を占めており、宮城支部会の内容が他の地区の組合員にも伝達される関係にあったところ、宮城支部会においては、上記《E》が三木会を欠席したときは、本部役員会社に所属する者から、三木会に関する情報を得るなどしており、三木会と東北支部(宮城支部会)との間の情報伝達の手段は事実上確保され、また、宮城支部会の出席者は、鎌田段ボール工業を除いては、いずれも本部役員会社を構成する大手の段ボールメーカー又はそのグループ会社であるから、改めて伝達の措置を採る必要はなかった。
以上によれば、甲事件原告らの上記主張は、理由がない。
(ウ) 10月17日三木会の内容が伝達された5つの支部会(10月19日東京・山梨支部会、10月31日静岡支部会、11月2日埼玉支部会、11月9日千葉・茨城支部会、11月17日神奈川支部会)以外の4つの支部における支部会等(10月19日新潟四木会、10月24日長野 5社会、10月27日トップ会、10月27日群馬会、10月27日栃木会、10月31日宮城支部会)においても、本部役員会社に所属する営業責任者等が10月17日三木会で協議された内容と同様の値上げの意向を表明していたのであるから、10月17日三木会での協議の内容は、実質的に東日本地区の全域に伝達されたものといえ、当該支部会等の出席各社は、本件各合意の存在を少なくとも概括的には認識していたものである。
10月17日三木会当時、本件支部会等に出席する地場の段ボールメーカーが値上げの実施に追随するであろうことは容易に予測され、10月17日三木会の出席各社が、東段工の9支部に伝達されることを前提とせずにコミュニケーションを行っていたとはいえない。また、このことが10月17日三木会の出席各社において競争回避的な行動を採る意思のなかったことの裏付けとなるものでもない。
本件審決における三木会と各地域の会合との間で報告及び情報伝達がされることが通常であったとする認定は、10月17日三木会の内容が伝達されていなかった本件11道県との関係でも、実質的証拠を欠くものではない。
また、本件審決が認定する、三木会における情報交換と支部会等における情報交換が組織的に一連のものとして行われたとの事実は、証拠に基づいて認められる具体的な事実である。
なお、甲事件原告らは、トップ会を例に挙げて、東段工及び三木会とは無関係の会合として行われ、情報交換もされていなかったと主張するが、トップ会は、実質的には東段工の北海道支部としての活動も担っていたというべきであり、東段工の三木会とも無関係に運営されていたとはいえないし、10月27日トップ会における段ボール製品の値上げに関する情報交換は、10月17日三木会での協議内容とは無関係に北海道内で販売する段ボール製品を対象に行われたものとはいえない。
以上によれば、10月17日三木会における本件各合意の成立に関する甲事件原告らの主張は、理由がない。
(エ) 甲事件原告らは、成立した合意に事後的に参加するためには、合意の存在及び内容を知っている必要があり、10月17日三木会の内容を伝達されていない本件支部会等の出席者が本件各合意に参加することは不可能であると主張し、また、仮に、本件支部会等において、本件各合意とおおむね一致する内容の合意が成立していたとしても、10月17日三木会と各地の支部会等が意思の連絡により結合されない限り、これらを包含する意思の連絡を認定することはできないと主張する。しかし、意思の連絡が存在するといえるためには、存在する合意の内容や合意の当事者の範囲を正確に知らなければならないわけではない。また、段ボール製品の製造業界における従前からの慣行によれば、各支部会等において、三木会に出席していた支部長等や本部役員会社に所属する出席者から、大手の段ボールメーカーの値上げの方針が説明され、その上で、出席各社の値上げの方針が確認されれば、支部会等の出席各社は、東段工の他の支部においても同様の情報交換がされていることを認識していたとみられる状況にあったといえ、本件支部会等の出席各社は、三木会を構成する事業者間で確認されたであろう値上げの実施内容を認識していたというべきであり、これと歩調を合わせて値上げを実施することを確認し合った本件支部会等の出席各社には、協調的行動を採ることを期待し合う関係が形成されており、これら各社が本件各合意に係る意思の連絡に参加したことが認められる。
本件各合意に対する本件支部会等の出席各社の参加に関する甲事件原告らの主張は、理由がない。
イ 乙事件原告の主張に対する反論
(ア) 乙事件原告が引用する3分類説は、一般的な規範ではない。本件審決は、①10月17日三木会当時に存在した段ボール製品の製造業界における従前からの慣行等、②レンゴーが他の段ボールメーカーに段ボール製品の値上げの実施を要請していたことなど10月17日三木会開催前の経緯、③これらを前提にした10月17日三木会の状況、④その後に開催された三木会の状況等、⑤段ボール製品の値上げの実施状況などから、10月17日三木会における本件各合意に係る「意思の連絡」の成立を認定したものである。本件審決が認定した事実経過に照らせば、このような近接した時期での段ボール製品の値上げが不自然でないとはいえない。また、いかなる事実から意思の連絡を認定するかについては制約はないのであって、乙事件原告がいう調整機能、保証機能が認められなければならないというものではない。
(イ) 10月17日三木会における情報交換の内容は、段ボール製品に関する一般的な市況といった話題ではなく、競争上重要な情報である出席各社個々の値上げに関する意向や方針であって、それ自体が違反行為をうかがわせる。本件各合意によって出席各社が指標とすることとなった値上げの内容がレンゴー等の大手段ボールメーカーが公表した内容と一致するのは、まさに上記の情報交換によって意思の連絡が形成された結果であり、この点は具体的に認定されている。
また、本件審決は、10月17日三木会の出席各社による一連の発言の経過に鑑み、上記(ア)に述べた事実を総合して、意思の連絡を認定したものである。意思の連絡があったというためには、相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りるのであるから、一部の事業者が、自社の値上げの方針や、具体的な値上げ幅、値上げの時期について明確に表明していなくても、意思の連絡を形成することは可能である。また、既に独自の判断で値上げを社内決定し、これを公表していた事業者や、値上げをすることが当然の成り行きであると認識していた事業者であっても、値上げをすること自体について社内の意向が定まっていない事業者であっても、意思の連絡を形成することは可能である。
10月17日三木会の時点においては、主要な原紙メーカーによる段ボール原紙の値上げの表明はそろっており、段ボール原紙の値上がりの見込みが不透明なものであったとはいえない。10月17日三木会における出席各社の発言は、値上げに関する雰囲気を醸成するのに十分であった。
10月17日三木会の協議の内容が本件11道県の地域に係る本件支部会等に対しても伝達されていたというべきことは、上記ア(ウ)のとおりであり、このことからすれば、10月17日三木会の会議内容を各地の支部会等に伝達するための措置が特段講じられていなくても、10月17日三木会の出席者が、三木会に参加していない事業者が本件各合意に参加することを予測していなかったということはできない。
さらに、本件各合意は、乙事件原告のいう調整機能や保証機能に欠けるところもない。
以上のとおり、10月17日三木会における情報交換の内容に関する乙事件原告の主張は理由がない。
(ウ) 意思の連絡が存在するというためには、各事業者において、どの範囲の事業者の間で意思の連絡が成立するかについて、その範囲を具体的かつ明確に認識していることまでは要しないところ、本件支部会等の出席各社は、本部役員会社等の三木会を構成する事業者間において、大手の段ボールメーカーが公表した値上げ方針に沿った値上げの実施が確認されたこと、東段工管内の他の支部会等においても、東日本地区の全域における値上げを実施するために、同様の確認がされるであろうことを、少なくとも概括的には認識していたものといえることからすれば、本件支部会等の出席各社は、東段工管内の他の支部会等の出席各社との間においても、意思の連絡が形成されたものといえ、更には、乙事件原告のいう調整機能や保証機能についても欠けるところはない。
(エ) 10月19日東京・山梨支部会においては、支部長である興亜紙業の《H》が、10月17日三木会の出席各社が段ボール製品の値上げや値上げ幅を表明したことに加え、レンゴーから披露された値上げ交渉をする場合に説明が必要となる値上げ幅の根拠についても報告しており、この報告につき、新規の情報が含まれていなかったとはいえず、また、従前からの慣行によれば、大手の段ボールメーカーの値上げ幅が基準又は指標となることが認識されていたのであるから、この報告により、10月19日東京・山梨支部会の出席各社が、10月17日三木会において成立した本件各合意に参加したと認められる。
《H》からの報告には、これまでの段ボール原紙の値上がりに伴う段ボール製品の値上げと同様に、10月17日三木会で確認された値上げに同調することへの働きかけが含意されていたことは明らかであり、このような働き掛けに対し、出席各社から反対の意向が表明されずに、順次、自社の値上げの意向に関する発言がされたことは、出席各社間において、本件各合意に参加するという共通の意思が醸成されたものにほかならない。
従前からの慣行を意思の連絡をうかがわせる事情の一つとして捉えたことは合理的であるし、本件支部会等におけるやり取り等によれば、本件支部会等に参加した各社による段ボール製品の値上げが、単に公表された大手の段ボールメーカーの値上げに一方的に追随しただけの意識的並行行為であるとは評価できないのであるから、本件審決が、これらの地場の段ボールメーカーについて本件各合意に係る意思の連絡に参加したと判断したことに独占禁止法2条6項の解釈適用の誤りはない。
また、本件審決の従前の慣行に関する事実は、証拠から合理的に認定できるもので、実質的証拠を欠くものではない。
本件審決は、本件各事業者が近接した時期に段ボール製品の値上げを行ったという事実のみから意思の連絡を認定したものではない。そして、10月17日三木会や本件支部会等をはじめとする各会合の状況等の経過を併せて考慮すれば、このような近接した時期での段ボール製品の値上げは、不自然でないとはいえない。
以上によれば、乙事件原告が本件各合意に参加したかどうかに関する乙事件原告の主張は理由がない。
2 争点2(本件審決における一定の取引分野の認定に実質的証拠があるといえるかどうか、また、その認定が適法なものといえるかどうか)について
(1) 甲事件原告らの主張
ア 本件審決は、独占禁止法2条6項にいう一定の取引分野につき、当該共同行為によって競争の実質的制限がもたらされる範囲をいうものとし、その成立する範囲は、当該共同行為が対象としている取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討して定まるとしているが、このような認定手法は、最高裁判決(最高裁平成22年(行ヒ)第278号同24年2月20日第一小法廷判決・民集66巻2号796頁(以下「多摩談合新井組最高裁判決」という。))によって否定されている。一定の取引分野とは、競争が実質的に制限されているかどうかを検討するに当たって、当該検討の対象となる「場」を商品の範囲及び地理的範囲により特定する機能を有する概念であるところ、検討対象となる「場」が設定されない限り、共同行為が当該「場」における競争にもたらす影響について論ずることはできないのであるから、一定の取引分野の画定は、論理的に、競争が実質的に制限されているかどうかの判断の前提となるものである。本件審決の一定の取引分野の画定方法は論理の前後関係を逆転させるものであり、相当ではない。
一定の取引分野の画定に当たっては、商品の範囲及び地理的範囲により仮に特定された「場」において、いかなる供給者が、いかなる共通の目標となる需要者の獲得を目指していかなる事業活動を行っており、当該供給者群及び需要者群の間において、いかにして価格の変化を通じた需給調整がされているかという客観的事情を検証することが必要である。
そして、段ボール製品の取引の対象、地域、態様等に基づく競争状況に鑑みれば、東日本地区全体を地理的範囲とする特定段ボールシートの販売分野及び特定段ボールケースの取引分野を画定できないことは明らかである。
イ 仮に、本件審決の判断手法に基づいて一定の取引分野を画定するとしても、10月17日三木会及び本件支部会等に出席した者のうち、その事業区域が東日本地区全体に及ばない事業者からの出席者は、自らの事業区域において販売される段ボール製品の価格を念頭において価格引上げに関するやり取りをしたというべきである。また、甲事件原告王子コンテナーにおいては、10月17日三木会に先立つ社内の会議において、各工場やグループ会社に対して値上げの方針を伝達済みであったから、10月17日三木会における情報交換によって、東日本地区内各地の工場長による価格決定に影響が生じたとはいえない。これらによれば、10月17日三木会において、東日本地区全域において販売される「特定段ボールシート」及び「特定段ボールケース」について値上げをするという共通の意思が形成されたとはいえず、共同行為が対象としている取引を「特定段ボールシート」及び「特定段ボールケース」に関する取引とした本件審決の認定は実質的証拠を欠く。
共同行為が対象としている取引により影響を受ける範囲についても、段ボール製品の価格決定の状況等からすれば、10月17日三木会における情報交換により東日本地区内各地の価格決定に影響が生じたということはできず、共同行為が対象としている取引により影響を受ける範囲が東日本地区全域であると認定することはできず、そのように認定した本件審決は実質的証拠を欠く。
(2) 乙事件原告の主張
ア 段ボール製品は、輸送費用との関係から、その納入場所が工場から一定の範囲に限られる。乙事件原告が参加する競争市場は、新しい工場の新設や他社の買収を前提とせずに、需要者に対し段ボール製品を供給できる範囲であり、その範囲は、広くてもせいぜい北関東地方程度に限定される。東日本全域の段ボール製品市場を前提として競争制限行為をやめるよう求める本件審決は違法である。
イ 本件審決は、一定の取引分野は、当該共同行為によって競争の実質的制限がもたらされる範囲をいうとして、いわゆる主観説に依拠しているが、主観説は、多摩談合新井組最高裁判決によって否定されているから、本件審決は法の適用を誤っている。
(3) 被告の反論
ア 甲事件原告らの主張に対する反論
(ア) 本件審決が採用する一定の取引分野の画定に関する手法は、多摩談合新井組最高裁判決によって否定されたものではない。
また、本件審決における一定の取引分野における地理的範囲の画定は、段ボール製品に係る市場の客観的状況と相いれないものではない。
(イ) 本件各事業者のうち、実際の事業活動の範囲が東日本地区の全域にわたっていない地場の段ボールメーカーが本件各合意に係る意思の連絡を形成し、又はこれに参加するに当たり、主に関心を抱くのは自社の事業活動の範囲内の取引であるが、自社が段ボール製品を供給する範囲の認識と、相互拘束の対象となる事業活動の範囲の認識とは異なる。
段ボール製品の供給範囲が事業者の工場の近距離に限定され、ある事業者についてはその供給範囲が競合する他の事業者との間でのみ競争関係があり、このような供給範囲を中心とした取引分野が成立し得るとしても、他方で一定の取引分野は、このように特定の事業者及び生産拠点ごとに存在する競争関係について、重層的に成立し得るものであるから、このこと自体は、本件審決が是認したような、東日本地区の全域を地理的範囲として一定の取引分野を画定することを否定する理由となるものではない。
そして、東段工の各支部管内に所在する地場の段ボールメーカーの事業活動の範囲や、そのような段ボールメーカーが点在する各支部管内の商圏は、その境界が明確に識別できるものではなく、他の支部管内に所在する段ボールメーカーや当該支部管内の商圏と隣接して一部又は相当な部分が競合するのであり、特定の支部管内においてのみ協調して値上げを実施するよりも、東日本地区の全域といった商圏の隣接する多くの支部会の管内において同様の値上げを実施することが、各支部管内における値上げの実施にとってより実効的であることは明らかである。
このような段ボール製品の市場に係る実情があるからこそ、本件支部会等の出席各社は、東段工管内の他の支部会等においても、同様の値上げの実施が確認されるであろうことを認識しつつ、またそれを期待して、本件各合意に参加したのであって、本件各事業者が本件各合意において対象とした取引は、東日本地区の全域を地理的範囲としたものということができる。
なお、本件各合意以前に、既に段ボール製品の値上げを決定し、自社内の各地域の工場及びグループ会社内にこれを伝達していたとしても、その後の本件各合意によって他の事業者と共同して値上げを実施することにより、自社及び自社が属するグループ会社の値上げ活動を十全のものとできるのであって、それらに係る取引にも共同行為による影響は及んでいるというべきである。
(ウ) 以上によれば、一定の取引分野の画定に関する甲事件原告らの主張には理由がない。
イ 乙事件原告の主張に対する反論
(ア) 一定の取引分野と目される範囲内の個々の事業者の全てが、いわば総当り的に競争関係になければ、当該範囲を一定の取引分野とした競争を実質的に制限し得ないことを前提とする乙事件原告の主張は独自の見解である。
本件審決が、本件各事業者が本件各合意において情報交換の対象とした取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討して、本件各合意における一定の取引分野における地理的範囲を、東日本地区の全域として確定したことは、上記ア(イ)のとおり、相当である。
(イ) 本件審決が採用する一定の取引分野の画定に関する手法は、多摩談合新井組最高裁判決によって否定されたものではない。
3 争点3(本件審決が乙事件原告を処分の対象者としたことが誤りであるかどうか)について
(1) 乙事件原告の主張
ア 東段工の支部会に出席していたのは、乙事件原告ではなく、晃里の担当者であった。
晃里の担当者は、乙事件原告に対して支部会の内容を報告することも求められず、現に報告していなかった。そのため、乙事件原告は、支部会での議論の状況については全く関知しておらず、乙事件原告は、段ボール製品の価格の値上げについて支部会で成立した合意の主体となることはない。
なお、支部会において、晃里の担当者は、段ボール製品の値上げの進捗についてその場の雰囲気に合わせて適当な話をするなど真実を述べていなかったし、他の出席者が述べている内容が真実であるとの認識もしていなかったのであり、支部会において他の事業者と合意をするとか合意に参加するとかいうことはなかった。
イ 晃里では、納入先ごとに営業担当者が段ボール製品の価格を決定していた。もっとも、営業担当者に無制限の裁量が与えられていたわけではなく、段ボール製品の価格は、原価や利益率を考慮した数値に、営業担当者の裁量を加えた形で決定するという仕組みとなっていた。そして、このような仕組みによる価格決定において、乙事件原告が介入するのは、乙事件原告に損害を与えることになる利益率が5%以下となる場合に限られており、実際に利益率を5%以下とすることが考慮される事例は数%程度にすぎなかった。
また、乙事件原告の役員会議と部門会議には、晃里の社長と営業担当が出席していたが、その場で、乙事件原告から価格決定の指示が出ていたわけではなかった。
このように、晃里においては、独自に構築した価格決定システムによって段ボール製品の価格が決定されることから、乙事件原告に段ボール製品の価袼決定について指示を仰ぐことはなかった。晃里が設立された目的は、営業部門を別会社にして、歩合を原則とする精鋭従業員を集め、商社的な販売会社を立ち上げるというものであり、晃里では乙事件原告以外の商品の取扱いもあり、歩合制を主とした従業員の給与体系は乙事件原告とは異なる。
以上によれば、段ボール製品の価格の決定は、晃里が自らの判断において行っていたものであり、乙事件原告の指示、管理下で決定をしていたとはいえないし、晃里が実質的には乙事件原告の営業部門であるなどと安易に認定することはできない。仮に本件各合意に参加する余地があるとしても、参加したのは晃里であって乙事件原告ではない。
ウ 本件審決の認定する事情によっても、晃里を乙事件原告の営業部門にすぎないとみて、その法人格を否認することは困難である。
また、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律7条の2第1項に係る令和元年改正の経緯及び趣旨を踏まえれば、違反行為の主体は法人格を単位として特定されるべきであり、本件において乙事件原告を違反行為の主体として安易に認定した本件審決は重大な誤りを含むものである。
(2) 被告の反論
ア 乙事件原告は、子会社である晃里に対して、自社で製造した段ボール製品の販売業務を委託していた(以下、この委託に係る契約を「本件業務委託契約」という。)ところ、本件業務委託契約の内容によれば、乙事件原告には段ボール製品の販売価格の最終的な決定権が留保されていたというべきである。
晃里は、実質的には親会社である乙事件原告の営業部門として、その指揮監督の下で営業活動を行っていたものであり、東段工の各支部の会合にも、かかる立場で出席していたものと認められる。このような晃里の営業活動は、乙事件原告のそれと同視できるのであり、晃里の営業担当者が10月19日東京・山梨支部会等に出席して他の事業者との間で段ボール製品の値上げについて行った情報交換は、乙事件原告が晃里を介して行ったということができ、これについて乙事件原告を当事者とする意思の連絡が存在したものと認めた本件審決の判断は相当である。
なお、晃里の担当者が支部会等において真実を述べていなかったとする晃里の《L2》の供述は信用できない。
イ 晃里における段ボール製品の販売価格の決定プロセスは、乙事件原告との本件業務委託契約に基づくものであり、乙事件原告の意向が反映されているから、乙事件原告が段ボール製品の価格決定に関与していないとはいえない。乙事件原告は、晃里に対し、段ボール原紙の値上がり分を段ボール製品の価格に転嫁するよう指示していたほか、晃里の値上げ活動に関して細かい指示を出していた。乙事件原告における段ボール製品の販売価格の決定を晃里が自らの判断で行っていたとはいえない。
ウ 晃里が実質的に乙事件原告の営業部門であったとの本件審決の認定は実質的証拠に基づく合理的なものである。本件審決も、何ら晃里の法人格を否定するものではない。令和元年法律第45号による改正後の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律7条の2第1項の規定は、違反行為者の認定とは局面を異にし、この規定から本件審決における違反行為者の認定の適否を論じることはできない。
4 争点4(本件審決における課徴金の算定に誤りがあるかどうか)について
(1) 甲事件原告らの主張
ア 独占禁止法及び被告の運用も、企業グループが一つの競争単位として一体となって事業活動を行っている実態を前提としていることからすれば、グループ内企業に対して販売された商品が当該商品(独占禁止法7条の2第1項)に該当するかどうかは、極めて慎重に判断すべきである。
イ 甲事件原告らが本件審判手続において課徴金の算定基礎からの除外を主張している王子グループ内のボックスメーカー等に対する段ボールシートの売上げのほとんどは、王子製紙株式会社の100%子会社であるボックスメーカーに対するものである。各子会社に対して販売された段ボールシートは、当該子会社によって段ボールケースに加工されて王子グループ外のユーザーに販売されており、段ボールシートとして王子グループ外に販売されるものではないから、本件シート合意に係る不当利得に対する損失は王子グループ内にとどまっており、かかる売上げに対して課徴金を科すべき根拠は見出せない。また、王子グループにおいて、段ボールシートの製造事業と段ボールケースの製造事業を1つの法人で行うか別々の法人で行うかということは事業経営上の判断によるもので、課徴金の対象となる売上げの範囲が、かかる事業経営上の判断の内容によって左右されることは合理的ではない。加えて、上記のとおり、独占禁止法及び被告がグループ会社が一つの競争単位として一体となって事業活動を行っている実態を前提としていることに照らすと、王子グループ内のボックスメーカー等に販売される段ボールシートは、当該商品に当たらないと考えるべきである。
ウ 王子グループでは、甲事件原告らを含む段ボール製品製造会社が製造した段ボールケースを多種多様な事業を営むグループ会社がエンドユーザーとして購入し、梱包等に利用している。仮に、王子グループが段ボール事業とその他の事業を同一の法人で営んでいれば、当該段ボールケースは自家消費分として課徴金の算定基礎に含まれないことになる。本件違反行為と全く無関係の事業経営上の理由に基づき分社化したことにより、課徴金の対象となる売上額が大幅に増加することは不合理であり、また、価格カルテルによる不当利得に対応する損失が一つの競争単位である企業グループ内にとどまっているのであれば、あえてかかる不当利得を国家が剥奪すべき理由はないし、あえて制裁を科して抑止するまでの必要性も見出し難い。したがって、企業グループ内のエンドユーザーに販売された違反行為対象商品は、一つの競争単位である企業グループ内で自家消費したものとして、課徴金の算定対象に含まれないと解すべきである。
(2) 乙事件原告の主張
ア 本件審決がいう段ボール製品の値上げ合意が行われた期間において、全ての取引について値上げ合意に基づいて価格が決定されているわけではない。一定の期間の取引を全て課徴金の対象とすることは、一定の期間の売上げにつき合意の効力が及んでいることの推定を認めるもので、被告において適法性を立証すべき行政処分の取消しを求める原告に、不当に主張立証責任を転換するものである。
イ 乙事件原告が晃里に支払った業務委託費は課徴金算定の基礎から控除されるべきである。
ウ 本件審決が主張する課徴金算定の基礎となる期間(平成24年1月1日から同年6月4日まで)における、乙事件原告の《事業者l》に対する売上げのうち、乙事件原告が特許を有している技術を使用することによってのみ、同社の要求にこたえることができる段ボール製品については、代替の発注先が存在しないため、独占禁止法21条に該当し、また、本件各合意の枠外にあるものとして、当該段ボール製品の売上額818万6505円は課徴金の算定の基礎となる売上げから除外しなければならない。
エ 同期間における乙事件原告の段ボール製品の売上額のうち、仕様が特殊であって代替の発注先が存在しないため、他社との競争性が元来存在しない段ボール製品に係る売上額は、本件合意の枠外にあったというべきであり、当該段ボール製品の売上額2166万5302円は課徴金算定の基礎となる売上げから除外すべきである。
オ 乙事件原告が属する特定段ボールケース及び特定段ボールシートの市場の範囲は東日本地区全体ではなく、関東地方(特に北関東)であり、違反行為は当該市場に係る違反行為に限られるから、課徴金算定の基礎となる期間も当該市場を基礎に認定しなければならないところ、これが不明であることからすれば、乙事件原告に対する本件各課徴金納付命令は違法である。
カ 乙事件原告の平成24年1月から同年6月までの売上げのうち、別紙8記載の合計3773万0537円に相当する売上げは、特定段ボールシート又は特定段ボールケースでないものの売上げであるから、課徴金算定の基礎から除外すべきである。
(3) 被告の反論
ア 甲事件原告らの主張に対する反論
(ア) 課徴金制度の趣旨及び課徴金の算定方法に照らせば、グループ会社に対する商品の販売が実質的に同一企業内における加工部門への物資の移動と同視し得るなどの事情が存在しない限り、直ちに当該グループ会社に販売された商品が違反行為の対象から除外されているものと認めることはできないのであり、それ以上に当該商品該当性の認定を慎重に行うべき理由はない。
(イ) 甲事件原告らは、グループ内のボックスメーカー等に販売される段ボールシートは当該商品に該当しないと主張するが、仮に、本件シート合意によって原告らに生じる不当な利得に対応する損失が王子グループ内にとどまっているとしても、課徴金の趣旨からして、現実の経済的利得の有無や多寡によって、課徴金の算定対象が当然に左右されるものではないこと、事業活動を一つの法人で行うか別々の法人で行うかは事業経営上の判断に属する事柄ではあるが、その判断によって生じるリスクも当然負担すべきであり、このことを遠因として課徴金の計算の基礎が異なることになっても、不合理であるとはいえないことなどからすれば、甲事件原告らの上記主張は理由がない。
(ウ) 甲事件原告らは、王子グループ内のエンドユーザーに対する段ボールケース等の売上げは課徴金の算定対象から除外すべきであると主張するが、上記(イ)のとおり、分社化という事業経営上の自己決定を遠因として、課徴金の計算の基礎が変動することになっても、これが不合理であるとはいえないこと、同様に、上記(イ)のとおり、本件ケース合意によって甲事件原告らに生ずる不当な利得に対応する損失が王子グループ内にとどまっていたとしても、これに課徴金を課す根拠がないとはいえないことからすれば、甲事件原告らの上記主張は理由がない。
イ 乙事件原告の主張に対する反論
(ア) 独占禁止法7条の2第1項によって課徴金の算定期間となる実行期間は、違反行為者が違反行為の実行としての事業活動を行っていれば、その行った日を始期とし、同事業活動を行わなくなった日を終期として特定され、このように実行期間が特定された以上、実行期間における当該商品または役務の売上げに係る行為が当該行為の実行としての事業活動によることを要するものではないから、乙事件原告が個別の取引において本件各合意に基づいて価格決定をしたかどうかにかかわらず、実行期間内の特定段ボールシートまたは特定段ボールケースの売上額である限り、課徴金の計算の基礎に含まれる。乙事件原告は、一定の期間内の取引全てを課徴金算定の基礎とすることは不当に立証責任を転換するものであると主張するが、これは因果関係を推定するものではないから、上記主張には理由がない。
(イ) 乙事件原告は、晃里に対して支払った業務委託費を課徴金算定の基礎から控除すべきであると主張するが、独占禁止法7条の2第1項でいう売上額とは費用を含むものであるところ、乙事件原告が主張する業務委託費は段ボール製品の販売に要する費用に相当するものであるから、これを控除すべきとはいえない。
(ウ) 乙事件原告の主張する、《事業者l》に販売した特許に基づく段ボール製品の点(上記⑵ウ)及び仕様が特殊な段ボール製品の点(上記(2)エ)について、理由がないことは、本件審決が説示するとおりである。
(エ) 乙事件原告は、乙事件原告の属する特定段ボールシート及び特定段ボールケースの市場が東日本地区全体ではないことを前提に、課徴金算定の基礎となる期間が不明であると主張するが、乙事件原告に係る市場の範囲は上記2(3)イ(ア)のとおり東日本地区の全域というべきであるから、乙事件原告の上記主張は前提を欠く。
(オ) 乙事件原告は、平成24年1月から同年6月までの売上げのうち、特定段ボールシート又は特定段ボールケース以外の売上げである合計3773万0537円は、課徴金の算定基礎から除外すべきである旨主張するが、乙事件原告主張に係る売上げが、そもそも、特定段ボールシート又は特定段ボールケースの売上げとして乙事件原告が報告したものに含まれるかどうかや、別途課徴金の算定基礎から除外された834万6359円の売上げと重複するものでないかは全く明らかではないことなどからすれば、上記主張には理由がない。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(本件各合意により、独占禁止法2条6項の不当な取引制限に当たり得る行為(いわゆる共同行為)がされた事実があるとした本件審決の認定が実質的証拠を欠くものか、また法令の解釈を誤ったものか)について
(1) 複数の事業者が対価を引き上げる行為が、独占禁止法2条6項の「不当な取引制限」にいう「共同して・・・相互に」の要件に該当するというためには、当該行為について、相互の間に「意思の連絡」があったと認められることが必要であるところ、ここにいう「意思の連絡」とは、複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し、これと歩調をそろえる意思があることを意味し、一方の対価引上げを他方が単に認識、認容するのみでは足りないが、事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要なく、相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りると解するのが相当である。
本件各合意について、上記のような意思の連絡が認められるかどうかについて検討する。
本件審決が認定したとおり(原告らも、本件審決が認定した個々の事実については、後記のとおり判断するものを除き、実質的証拠の存在について明らかに争うものではない。)、本件においては、段ボールメーカーの間で、段ボール原紙の値上がりに伴い段ボール製品の値上げをする際には、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが値上げを表明し、それ以外の段ボールメーカーは両社の示した値上げ幅を指標として実施するのが通例であり、また、従前から、段ボール製品の値上げに当たっては、各社が足並みをそろえて行うことが必要であると認識されており、値上げを実施する時期に値上げを実施しないで取引の拡大を狙うことは行うべきでないこととされ、仮にこれを行った場合には他の事業者等からの抗議活動の対象となり、また、このような値上げを実施する時期には、東段工の三木会及び支部の会合において、情報交換が行われてきたという慣行が存在していたところ、平成23年8月下旬に、レンゴーが段ボールシートにつき1㎡につき8円以上、段ボールケースにつき13%以上という値上げ幅での値上げを公表し、他の段ボールメーカーにも値上げを働きかけ、同年9月28日に、甲事件原告王子コンテナーがレンゴーの値上げ幅と大きな差異のない幅で段ボール製品の値上げをする旨公表し、10月17日三木会では、本部役員会社の多くがレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅に沿った値上げ幅で値上げをすることを表明し、それ以外の本部役員会社や各支部の支部長等も値上げをすること自体は表明していたという事実が認められる。そうすると、前記慣行の下では、上記のような各社の表明により、10月17日三木会の出席者の間では、10月17日三木会の出席者以外の東段工の組合員等の段ボールメーカーも、その合意内容に沿った段ボール製品の値上げをするであろうという認識を前提に、上記の値上げ幅での値上げを行うことについて意思の連絡が成立し、本件各合意が成立したというべきである。
また、本件11道県以外の本件支部会等(10月19日東京・山梨支部会、10月31日静岡支部会、11月2日埼玉支部会、11月9日千葉・茨城支部会及び11月17日神奈川支部会)においては10月17日三木会の経過の報告がされ、本件11道県の本件支部会等においても、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナー又はこれらのグループ会社の出席者が、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナー又はこれらのグループ会社がレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーの公表した値上げ幅での値上げを行うことになった旨の発言をし、本件支部会等の出席者にあっては、これらに対して反対の意思を表明した者はいなかった(前記第2の3(1)ア(エ))。そうすると、前記慣行の下では、本件支部会等の出席者は、10月17日三木会の経過の報告又はレンゴー及び甲事件原告王子コンテナー又はそのグループ会社の出席者の発言により、東段工管内の全域にわたり、東段工の組合員等の段ボールメーカーが、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが発表した値上げ幅による値上げを行うものと相互に認識しつつ、これを認容して自ら値上げの方針を発表し又は値上げに反対の意を表さなかったというべきであり、これらによれば、本件支部会等の出席者にあっては、東段工管内の他の支部においても同様の意思の連絡が成立するという認識を前提に、上記の値上げ幅での値上げを行うことについて意思の連絡が成立し、これによって、本件支部会等の出席者も、本件各合意に参加したというべきである。
(2) 原告らの主張に対する判断
ア 原告らは、10月17日三木会の時点では、段ボール原紙の値上げ活動が進捗しておらず、実際に段ボール原紙の値上げを受け入れざるを得なくなるかどうか不透明であったから、10月17日三木会では反競争効果をもたらすコミュニケーションがされたとはいえないと主張するが、10月17日三木会の時点では、主要な原紙メーカーによる原紙の値上げ表明が出そろっており(前記第2の3(1)ア(イ)e)、他に原紙の調達先があるともうかがわれないことからすると、段ボールメーカーにあっては、原紙の値上げを受け入れざるを得ず、段ボール製品の値上げに向けた活動をしなければならない時期にあったといえるから、上記主張は採用できない。
イ 甲事件原告らは、甲事件原告王子コンテナーなどの大手の段ボールメーカーにおいては、各工場長が段ボール製品の価格の決定権を有していると主張するが、個別の取引における価格の決定権を有するのが各工場長であっても、段ボール原紙の値上がりに伴い段ボール製品の値上げをする際には、段ボールメーカーの本社等が値上げの方針を決め、それに沿って個別の取引における価格を改定させるのであって、その点について各工場長等が自由に決められるわけではないことは、甲事件原告王子コンテナーが値上げの方針を公表するに先立って各工場長等の参加する会議を開催して値上げの方針を伝達していること(前記前提事実(4)イ)からも明らかであり、甲事件原告らの上記主張は採用できない。
ウ 甲事件原告らは、東段工の組織上、三木会が各支部に対して指揮命令をすることや、三木会が各支部との間で司令塔的な役割を果たすことは考えられないと主張するが、三木会が各支部から値上げ活動の情報提供を受けてこれを集約したり、値上げ活動が十分でない事業者に対して値上げを促すよう各支部に指示したりしていたことは、証拠に基づく本件審決の認定のとおりであり、実際にこのような活動が行われていた以上、甲事件原告らの上記の主張は採用できない。
エ 原告らは、三木会の内容が各支部に伝達される措置が採られておらず、実際10月17日三木会の内容が本件11道県には伝達されていなかったことからすれば、本件各合意の効果が及ぶ範囲を認識して本件各合意がされたとはいえず、意思の連絡の要件を欠く旨主張する。
しかし、本件11道県においても、これらの道県に係る本件支部会等(10月19日新潟四木会、10月24日長野5社会、10月27日トップ会、10月27日群馬会、10月27日栃木会、10月31日宮城支部会)において、段ボール製品の値上げが一斉に話題とされていることからすれば、10月17日三木会の内容を各支部に伝達する措置が採られていなかったとは考え難い。また、本件11道県に係る本件支部会等においては、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナー又はそのグループ会社の出席者がそれぞれの値上げ方針を説明しており、段ボール業界における前記慣行の下では、これにより、本件各合意の内容がこれらの支部にも伝達されたということができるところ、10月17日三木会の出席者にあっては、このような形で本件各合意の内容が本件支部会等に伝達されるであろうことも容易に予測できたというべきであるから、10月17日三木会の出席者において、本件各合意の及ぶ範囲を認識できなかったとはいえず、上記主張は採用できない。
また、甲事件原告らは、東段工の北海道支部長は三木会に出席しておらず、東北支部長も半分程度しか出席していなかったから、三木会とこれらの支部の間で報告及び情報伝達がされることが通常であったとする本件審決の認定は実質的証拠を欠くと主張する。
しかし、北海道支部の構成員4社は、いずれも本部役員会社又はそのグループ会社であり、東北支部の構成員も大半は本部役員会社又はそのグループ会社であり、北海道支部及び東北支部の構成員との関係では、本部役員会社を通じて、三木会からの情報が伝達され、三木会に対する報告がされていたというべきであり、証拠(査170、171)によれば、北海道支部長であったレンゴーの《D7》は、三木会の資料が東段工の事務局から送付されており、トップ会において三木会の資料を配布したり、資料の内容を紹介したりしたこと、トップ会の内容をレンゴー本社に報告していたことを供述しており、三木会と北海道支部との間で報告及び情報伝達が行われていたことが認められる。この点、甲事件原告らは、甲事件原告王子コンテナーの《I2》が、参考人審尋において、トップ会において三木会の資料が配布されたことはない旨供述していると主張するが、《I2》は、参考人審尋において、トップ会の出席者には、東段工からの資料が事前にそれぞれ送付されており、それを持ってトップ会に出席したことはあり、少なくとも東段工の資料が本部役員会社を通じてトップ会にもたらされることがあることは認めているのであるから、トップ会と三木会との間で報告、情報伝達がされることが通常であったとする本件審決の認定が実質的証拠を欠くとはいえない。
東北支部についても、支部長が三木会を欠席した場合、宮城支部会の出席者のうち本部役員会社に所属する者から三木会の情報を得るなどしていたと認められるから(前記第2の3(1)ア(エ)e(a)。査463)、三木会と東北支部の間で報告及び情報伝達がされることが通常であったとする本件審決の認定が実質的証拠を欠くとはいえない。
オ 甲事件原告らは、本件審決が、10月17日三木会の内容が伝達されたと認められない本件支部会等において、本部役員会社である大手の段ボールメーカー及びそのグループ会社が10月17日三木会で協議した内容と同様の値上げの意向を表明すれば、10月17日三木会でその旨の合意が成立した事実自体を伝達しなくても、他の地場の段ボールメーカーもこれに追随して値上げの実施に向かうことは容易に予測できる状況にあったと認定したことにつき、10月17日三木会の出席者が実際にそのような予測をしたこと又はそのような予測の下にあえて10月17日三木会の内容を伝達しなかったことが認定されておらず、上記認定は実質的証拠を欠く旨主張する。
しかし、他の地場の段ボールメーカーが大手段ボールメーカー等に追随して値上げの実施に向かうことは容易に予測できる状況にあったとの本件審決の認定は、段ボール業界の従前の慣行等から客観的にそのように予測される状況にあったというものであり、10月17日三木会の出席者が実際に予測したことが証拠に基づいて認定されていなくても、本件審決の上記認定が実質的証拠を欠くとはいえないし、そのような客観的状況にある以上、10月17日三木会の出席者がそのような予測の下あえて10月17日三木会の内容を伝達しなかったという事実が証拠に基づいて認定されていなくても、本件審決の上記認定が実質的証拠を欠くとはいえない。
カ 甲事件原告らは、本件審決が、三木会における情報交換と本件支部会等における情報交換が組織的に一体のものとして行われていたとし、本件支部会等の出席者に本件各合意への参加を認めたことにつき、北海道内のトップ会を例に挙げ、実質的証拠を欠く旨主張する。
しかし、甲事件原告らが例として挙げるトップ会については、北海道支部の組合員4社と非組合員の合同容器が構成員となっており(前記前提事実(6)ウ)、他の支部の会合と同様にリサイクルマークの普及率や印版・木型に係る費用の回収状況や段ボール製品の需給動向に関する情報交換が行われていたのであるから(前記第2の3(1)ア(エ)c)、実質的には北海道支部の支部会と同様の役割を果たしていたものと考えるのが相当である。また、10月27日トップ会の出席者は、段ボール製品の値上げは、段ボール原紙の値上がりに合わせて全国的に行われるもので、北海道地区についてのみ値上げを行うことはあり得ないことを認識していたこと(査170、208、260、370、405)からすれば、トップ会において行われていた段ボール製品の値上げに関する情報交換が北海道内で販売する段ボール製品を対象とするものであったとしても、トップ会の出席者は、それが東日本地区の他の支部の管内においても同様に行われていることを認識しつつ情報交換をしたものというべきである。また、三木会と北海道支部との間で普段から報告及び情報交換が行われていたというべきことは上記エのとおりである。これらによれば、本件審決における三木会における情報交換と本件支部会等における情報交換が組織的に一体のものとして行われていたとの事実認定が実質的証拠を欠くとはいえない。
また、甲事件原告らは、10月17日三木会での協議の内容が伝達されたとは認められない本件支部会等の出席各社について、本件審決が、本件各合意への参加を認める前提として、当該支部会等で確認された内容と同様の段ボール製品の値上げが、三木会を構成する事業者の間や東段工の他の支部会等においても確認されていることを少なくとも概括的には認識していたと認定したことにつき、本件各合意のような極めて具体的な合意について、概括的な認識で足りるとはいえない旨主張する。
しかし、本件審決は、本件各合意と同様の合意が、具体的な事業者名やその範囲について正確な認識はなくても、三木会の構成員や他の支部会の構成員といった事業者のほぼ全ての者の間でされていること又はされるであろうことを認識しているという趣旨で概括的にという用語を用いたものというべきところ、意思の連絡が認められるためには相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りると解されることからすれば、意思の連絡に参加している事業者を全て具体的に認識している必要はなく、本件各合意への参加を認める前提としては、そのような概括的な合意で足りるものというべきである。
さらに、甲事件原告らは、複数の事業者間で成立した合意に他の事業者が参加したというためには、既に成立している合意の存在及び内容を知り、これと歩調を合わせる意思を表明することが不可欠であるとし、支部会等の出席者が、いわゆる意識的並行行為を超えて、10月17日三木会の出席者との間で意思の連絡があったといえるためには、10月17日三木会の出席者から、直接又は間接に、10月17日三木会の開催の事実、10月17日三木会で本件各合意が成立したことを伝達され、自社もこれと歩調をそろえる意思を表明することが必要不可欠である旨主張し、乙事件原告も、先行的な合意に事後的に参加する者においては、先行合意の内容を認識、予測した上でこれと歩調をそろえる意思を形成する必要があるとし、本件11道県の支部会等の出席者には、10月17日三木会で成立したとされる本件各合意について伝達されていないから、これらの者との間で意思の連絡があったとはいえず、慣行を根拠に意思の連絡を認定することはいわゆる意識的並行行為と意思の連絡を混同するもので独占禁止法2条6項の解釈適用を誤るものであると主張する。
しかし、上記(1)のとおり、段ボール業界においては、従前から、段ボール製品の値上げに当たっては、各社が足並みをそろえて行うことが必要であると認識され、段ボール原紙の値上がりに伴い段ボール製品の値上げをする際には、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが値上げを表明し、それ以外の段ボールメーカーは両社の示した値上げ幅を指標として実施するのが通例であり、このような値上げを実施する時期には、東段工の三木会及び支部の会合において、情報交換が行われてきたという慣行が存在しており、このような慣行を前提とすると、10月17日三木会における合意の内容が伝達された本件支部会等の出席者はもちろん、それ以外の本件支部会等においても、当該支部会等において、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナー又はそのグループ会社の出席者がほぼ同一の値上げ幅による値上げの方針を表明したことにより、10月17日三木会の出席者及び東段工の他の支部に所属する組合員のほぼ全ての者の間で、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅に沿った値上げをするとの合意がされていること又はされるであろうことが容易に予測できるものといえる。10月17日三木会の出席者及び本件支部会等の出席者は、こういった予測を持った上で、値上げを表明したという情報が集約されることを認識しつつ自らもこれと同等の値上げをする意思を表明するか少なくとも値上げに反対の意思を表明しないことによって、これらの事業者の間で、相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容するという意味での意思の連絡が存在するというべきであるから、本件支部会等の出席者が本件合意に参加したものと認められるとした本件審決の認定が、実質的証拠を欠く又は独占禁止法2条6項等の解釈を誤る違法不当なものであるとはいえない。
キ 乙事件原告は、本件審決が意思の連絡を認定するに当たって3分類説を用いたとし、本件では3分類説を用いる基礎を欠く旨主張する。
しかし、本件審決は、乙事件原告のいう3分類説を用いたものとは解されず、段ボール業界における慣行を前提としつつ、レンゴーが段ボール製品の値上げを公表してからの三木会や本件支部会等の状況、取り分け10月17日三木会の状況やその後の本件支部会等や三木会の状況などから、10月17日三木会で本件各合意が成立し、本件支部会等の出席者がこれに参加したものと認定したというべきであり、乙事件原告の上記主張は採用できない。
ク 乙事件原告は、10月17日三木会においては、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーの出席者が既に公表済みの値上げ方針を発表し、日本トーカンパッケージの出席者が社内で方針決定されていた値上げ方針及び値上げ幅を発表したにとどまり、各事業者の値上げ幅が調整された事実はなく、また、自分が値上げすれば他社も値上げするだろうという信頼が醸成されたといえないことからすれば、10月17日三木会でのやり取りは調整機能や保証機能を有するものではないと主張する。
しかし、上記(1)のような段ボール業界における慣行の下、前記第2の3(1)ア(ウ)のとおり、10月17日三木会では、上記のような値上げ方針が発表されたのに対し、これに異を唱える出席者はおらず、三木会の会長であるトーモクの《C1》は「皆さん頑張って値上げに向けて取り組みましょう。」などと発言していたのであるから、10月17日三木会の出席者は、上記のような慣行に従って東段工の組合員等の段ボールメーカーがレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅で値上げを進めていくであろうことを認識してこれを認容したというべきであり、そのような値上げを一致して行うことについて信頼が醸成されたというべきであるから、10月17日三木会において、意思の連絡に当たる本件各合意が成立したというべきである。
ケ 乙事件原告は、段ボール製品の市場の状況によれば、乙事件原告のような地場メーカーと他の地域の地場メーカーとの間では競争は起こり得ないため、これらのメーカーが同じ合意に参加することはあり得ない旨主張するが、後記2のとおり、本件においては、東日本地域全域を対象とする合意が成立したというべきであり、同じ地域に工場を有しない地場の段ボールメーカーの間で直接の競争が生じないとしても、これらのメーカーが東日本地域全域を対象とする本件各合意に参加することがあり得ないということはできない。
コ 乙事件原告は、10月19日東京・山梨支部会においては、10月17日三木会における合意の内容は伝達されておらず、10月19日東京・山梨支部会の出席者が合意に参加したということはできないと主張する。
しかし、10月19日東京・山梨支部会において、支部長である興亜紙業の《H》は、10月17日三木会において出席各社が段ボール製品の値上げ方針を表明し、その値上げ幅がレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅と同様のものであったこと、同会合でレンゴーから説明がされた値上げ幅の内訳を説明した上で、東京・山梨支部所属の各社においても値上げに動き出さなければならないと発言し、出席各社に対して値上げの方針を発表するよう促しているのである。上記(1)の段ボール業界における従前の慣行からすれば、これによって、10月19日東京・山梨支部会の出席者は、10月17日三木会の出席者及び東段工の他の支部に所属する組合員において、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅で段ボール製品の値上げを行うことについて意思の連絡が成立したこと又は成立するであろうことを認識しこれを認容したというべきであるから、これに応じて段ボール製品を値上げする方針である旨を発言し、少なくとも段ボール製品の値上げについて反対の意思を表明しなかった10月19日東京・山梨支部会の出席者においては、10月17日三木会で成立した本件各合意に参加したというべきである。
乙事件原告は、10月19日東京・山梨支部会において何らかの提案がされたわけではないから、反対を表明しないことで意思の連絡が認められるものではないとも主張するが、上記のような10月19日東京・山梨支部会の経過に照らせば、上記《H》から値上げの方針について発表するよう促されたのに対し、値上げをしない旨の意思を示さなかったことは、本件各合意を認容し、これに同調する意思を表すものというべきであって、乙事件原告の上記主張は採用できない。
サ 乙事件原告は、本件審決がいう慣行の存在を根拠に本件支部会等に参加した事業者が本件各合意に参加したとする本件審決の認定は、実質的証拠を欠くと主張する。
しかし、段ボール原紙の値上がりに伴う段ボール製品の値上げについては各社が足並みをそろえて行う必要があると認識され、レンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが値上げを表明した後にそれ以外の段ボールメーカーが両社の示した値上げ幅を指標として実施するのが通例であって、その際に、値上げを実施しないで取引の拡大を狙うことは行うべきでないとされ、仮にこれを行った場合には他の事業者等からの抗議活動の対象となるといった段ボール業界における慣行(上記(1))の存在は証拠上認められるものである。このような慣行からすれば、本件支部会等に出席して、10月17日三木会の内容の説明を受けたり、段ボール製品の値上げに関するレンゴーや甲事件原告王子コンテナーの説明を受けた地場の段ボールメーカーは、東日本地区全域において多くの段ボールメーカーが足並みをそろえて値上げに向かうことを認識できたというべきであるし、本件支部会等において具体的な値上げ幅を表明しなかったり、原紙の値上げが確定するまでは値上げ方針を決定しない旨表明したりした事業者がいたとしても、値上げ自体に反対の意思を表明した事業者がいなかった以上は、本件支部会等の出席者が足並みをそろえて値上げに向かうことを認識し、これを認容したというべきであるから、本件支部会等の出席者に本件各合意への参加を認めた本件審決の認定が実質的証拠を欠くとはいえない。
シ 乙事件原告は、製造コストに占める原材料価格の割合が高い段ボール製品にあっては、原材料価格の高騰後、各社が近似した時期に同一又は同様の値上げを行うことは不自然ではなく、このことから意思の連絡を認定することはできないと主張する。
しかし、本件審決は、三木会や本件支部会等における具体的なやり取りを考慮して意思の連絡を認めたものであり、本件支部会等に出席した地場の段ボールメーカーにおいて一様にレンゴー及び甲事件原告王子コンテナーが公表した値上げ幅と同様の値上げ幅で値上げを行ったという事実が不自然でないとはいえず、乙事件原告の上記主張も採用できない。
2 争点2(本件審決における一定の取引分野の認定に実質的証拠があるといえるかどうか、また、その認定が適法なものといえるかどうか)について
(1) 原告らは、本件審決が、独占禁止法2条6項にいう「一定の取引分野」につき、当該共同行為によって競争の実質的制限がもたらされる範囲であると解したことは論理的な前後関係を逆転させるものであり、また、このような判断手法は多摩談合新井組最高裁判決によって否定されている旨主張する。
しかし、本件審決は、要するに、東日本地区全域における段ボール製品の販売を対象として本件各合意がなされ、段ボール製品の販売価格が引き上げられたことが、各事業者の生産拠点ごとに存在する競争関係において、不当な取引制限に当たるとしたものである。段ボールシート及び段ボールケースの取引は、輸送上の制約から、工場所在地から一定の範囲内のユーザーとの取引に限られ、各段ボールメーカーの商圏はその範囲に限られるという実情があるとしても、それらの商圏は互いに重なり合いつつ連続的に広がっており、東日本の地区内でいくつかの範囲に分割されているものではないこと、本件各合意が東段工の管内である東日本全域を対象としたのは、上記のような各段ボールメーカーの商圏の状況や、段ボール製品の価格の大部分は原料である段ボール原紙の価格が占めているところ、本件各合意の契機となった段ボール原紙の値上げ幅が東日本の各地域内によって異なっていたという事情はうかがわれず、したがって、東日本の各地域内において、値上げ幅を異にする理由がなかったとうかがわれることによるものと考えられることからすれば、本件における一定の取引分野の地理的範囲を東日本全体とした本件審決の判断が実質的証拠を欠くものとはいえず、また、これが本件各合意の対象と一致するからといって、最高裁の判例に反し独占禁止法2条6項等の解釈を誤るものともいえない。
(2) 甲事件原告らは、10月17日三木会及び本件支部会等に出席した者のうち、その事業区域が東日本地区全体に及ばない事業者からの出席者は、自らの事業区域において販売される段ボール製品の価格を念頭において価格引上げに関するやり取りをしたというべきであるから、東日本地区全域についての合意が成立したとはいえない旨主張するが、上記のような事業者であっても、東段工の管内全域の段ボールメーカーが本件各合意に参加することの概括的認識があったと認められることは前記のとおりであり、甲事件原告らの上記主張は採用できない。
(3) 甲事件原告らは、甲事件原告王子コンテナーにおいては、10月17日三木会に先立つ社内の会議において、値上げ方針を伝達済みであったから、10月17日三木会における情報交換によって東日本地区内各地の工場長による価格決定に影響が生じたとはいえないと主張するが、本件各合意は、甲事件原告王子コンテナーにあっては、既に伝達された値上げ方針のとおりの値上げを実現するために行われるものというべきであり、本件各合意が甲事件原告王子コンテナーの各地の工場長の価格決定に影響を与えていないとはいえないから、甲事件原告らの上記主張は採用できない。
3 争点3(本件審決が乙事件原告を処分の対象者としたことが誤りであるかどうか)について
(1) 前記前提事実(3)ウ(エ)のとおり、乙事件原告は、平成23年4月以降、自社で製造した段ボール製品の販売業務を晃里に委託しており、10月19日東京・山梨支部会及び11月9日千葉・茨城支部会に出席したのも晃里の営業担当者である(前記第2の3(1)ア(エ)a、同h、別紙7支部会等出席者一覧)。
しかし、晃里の沿革、従業員の構成、事業所が乙事件原告の事業所と同一の場所にあること、乙事件原告における組織上の位置付け、対外的にも晃里の営業担当者が乙事件原告の名で営業活動を行うとともに、東段工の東京・山梨支部及び千葉・茨城支部の会合にも乙事件原告の営業責任者として出席していたこと、乙事件原告が社内の会議に晃里の役員及び従業員を出席させるなどして晃里の営業方針について指示を出すとともに晃里に営業実績の報告をさせていたこと、本件当時も、乙事件原告は晃里に対して段ボール原紙の値上がり分を段ボール製品の価格に転嫁するよう指示していたこと等本件審決認定の事実(これらの認定が実質的証拠を欠くものとはいえない。査38、157、196、249、361、607、665~669、713、714)によれば、晃里は、実質的には乙事件原告の営業部門として、その指揮監督の下で営業活動を行っており、晃里の営業担当者が10月19日東京・山梨支部会等に出席して行った段ボール製品の値上げに関する情報交換は、乙事件原告が自社の営業部門である晃里を介して行ったものであって、乙事件原告についても本件各合意への参加が認められるというべきである。
(2) 乙事件原告の主張について
ア 乙事件原告は、本件支部会等の内容について晃里に報告を求めるなどしておらず、そこでの議論には全く関知していなかったと主張するほか、支部会に出席した晃里の担当者は、段ボール製品の値上げの進捗についてその場の雰囲気に合わせて適当な話をするなど真実を述べておらず、他の出席者の述べる内容も真実であると認識していなかったのであり、支部会において他の事業者と合意をするとか合意に参加するとかということはなかったと主張する。
しかし、段ボール業界においては、段ボール原紙の値上がりに伴い段ボール製品の値上げをする際には、各社が足並みをそろえて行うことが必要であると認識され、三木会及び支部の会合において、情報交換が行われ、値上げを実施する時期に値上げを実施しないで取引の拡大を狙った場合には他の事業者等からの抗議活動の対象となるとの慣行が存在していたのであり(上記1(1))、実際に乙事件原告に対して千葉・茨城支部長から値上げ活動を進めるように促されることもあった(前記第2の3(1)ア(エ)h)のであるから、支部会において、値上げ方針や値上げの実施状況について真剣なやり取りがされていたというべきであり、支部会において、晃里の出席者が、真実の回答をしておらず、また他の事業者も真実を話していなかったと認識していたとは認め難く、支部会に出席した晃里の担当者が、支部会で話し合われた内容を乙事件原告に伝えていないとはにわかに信じ難い。
イ 乙事件原告は、段ボール製品の価格決定は晃里が自らの判断で行っていたものであり、その決定が乙事件原告の指示、管理下で行われていたともいえず、晃里が実質的に乙事件原告の営業部門であったなどということはできないと主張する。
しかし、乙事件原告の段ボール製品の価格は、乙事件原告側で決定した段ボール原紙の原価(これを乙事件原告側で決定していたことは《L1》参考人の供述により認められる。)等から算出される製造原価を基準に、利益率が5%以下となる場合は乙事件原告側の決裁が必要とされていた(《L1》参考人の供述及び《L2》参考人の供述)のであり、晃里がその全面的な裁量により決められるものではない上、段ボール原紙の値上がりについては、値上がり分を価格に転嫁するように乙事件原告からの指示があった(査669)ほか、価格改定について乙事件原告からの詳細な指示がされていること(査420。特に同号証添付の乙事件原告の平成24年2月24日の役員会議議事録には、乙事件原告代表者が、価格改定について乙事件原告のアドミニストレーション本部も介入すべきではないか。値上げ幅について満額回答を得られない場合は乙事件原告代表者の承認を得なければならないのではないかなどと発言した旨記録されている。)からすれば、乙事件原告の段ボール製品の価格を晃里が決定していたとはいえず、その他乙事件原告の主張する事情(晃里の設立の目的や、従業員の給与体系が乙事件原告と晃里とで異なっていたこと)などを考慮しても、晃里が実質的に乙事件原告の営業部門であるとした本件審決の認定が実質的証拠を欠くとはいえない。
ウ 乙事件原告は、本件審決が、乙事件原告が晃里を介して本件各合意に参加したものと認めたことについて、晃里の法人格を否認することは困難であるとか、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律7条の2第1項に係る令和元年改正の経緯及び趣旨によれば違反行為の主体は法人格を単位として特定されるべきであることに反するものである旨主張するが、本件審決は、乙事件原告が実質的に乙事件原告の営業部門であると評価すべき晃里を介して本件各合意に参加したものと認定したものであって、晃里の法人格を否認するものではないし、上記改正の経緯及び趣旨に反するものであるともいえないから、乙事件原告の上記主張は採用できない。
4 争点4(本件審決における課徴金の算定に誤りがあるかどうか)について
(1) 甲事件原告らの主張について
甲事件原告らは、王子グループ内のボックスメーカーに販売された段ボールシートの売上げ及び王子グループ内のエンドユーザーに販売された段ボールケースの売上げは課徴金の算定の基礎から除外すべきであると主張する。
しかし、違反行為者のグループ会社であっても、違反行為者とは別個の法人格を有し、法律上の独立の取引主体として活動している事業者であるから、グループ会社に対する商品の販売が実質的に同一企業内における加工部門への物資の移転と同視し得るなどの事情が存在しない限り、直ちに当該グループ会社に販売された商品が違反行為の対象から除外されているものとすることはできないと解され、甲事件原告らが課徴金の算定の基礎から除外すべきであると主張する売上げについて、上記のような事情があるとは認められないことからすると、これらを課徴金の算定の基礎から除外すべきであるとはいえない。
甲事件原告らは、甲事件原告らが課徴金の算定の基礎から除外すべきと主張するグループ会社間の売上げについては、不当利得に対応する損失が王子グループ内にとどまっているからこれに対して課徴金を課すべき根拠はないこと、ボックスメーカーやエンドユーザーに相当する業務を同一の企業で行うかグループ企業で行わせるかは事業経営上の判断であり、それによって課徴金の算定の基礎が変動することは合理的ではないと主張するが、前者については、違反行為の抑止という課徴金の趣旨からして、損失が外部に生じていないからといって課徴金を課す根拠がないとはいえないし、後者については、事業経営上の判断により課徴金額に変動がもたらされるとしても、それは事業経営上の判断に伴い生ずるやむを得ないものであり、課徴金の算定の基礎とすべきでないことの理由になるものではない。甲事件原告らの上記主張は採用できず、本件審決が認定した甲事件原告らに係る課徴金の額は相当である。
(2) 乙事件原告の主張について
ア 乙事件原告は、一定の期間の取引を全て課徴金の対象とすることは、因果関係を推定するもので、不当に主張立証責任を転換するものであると主張する。
しかし、課徴金の算定の対象となる額は、独占禁止法7条の2第1項の「当該行為の実行としての事業活動を行った日から当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間における当該商品又は役務の…売上額」の解釈として一定の期間の取引が全て対象となるのであり、因果関係を推定するものではないから、乙事件原告の上記主張は失当である。
イ 乙事件原告は、乙事件原告が晃里に支払った業務委託費を課徴金算定の基礎から除外すべきであると主張するが、独占禁止法7条の2第1項の売上額は、事業者の事業活動から生ずる収益から費用を差し引く前の数値を意味すると解釈されるべきであり、ここにいう費用に当たる業務委託費を除外すべき理由は見当たらず、乙事件原告の上記主張は採用できない。
ウ 乙事件原告は、《事業者l》に対する売上げのうち乙事件原告が特許を有している技術を利用しなければ製造することができない段ボール製品の売上げ及び仕様が特殊で代替の発注先が存在しない段ボール製品の売上げは、課徴金の算定の基礎から除外すべきであると主張する。
しかし、他の事業者が乙事件原告の有する特許に抵触しない範囲でこれに代替し得る商品等の取引を行うことができないとまで認めるには足りず、潜在的にも競争が存在しないと認めることはできないことからすれば、乙事件原告の上記主張は採用できない。
エ 乙事件原告は、課徴金を課すべき対象は、乙事件原告が属する関東地方の市場に係る違反行為に限られるところ、東日本地域全体を市場として違反行為を認定し課徴金を算定した本件審決は違法である旨主張する。
しかし、上記2のとおり、乙事件原告に係る違反行為に係る市場の範囲は、東日本地域全体であると認められるから、乙事件原告の上記主張は採用できない。
オ 乙事件原告は、乙事件原告の平成24年1月から6月までの売上げのうち、特定段ボールシート又は特定段ボールケースでないものの売上げである3773万0537円は、課徴金の算定の基礎から除外すべきであると主張する。
本件審判事件の記録によれば、乙事件原告に係る課徴金の計算の基礎とされた売上額は、審査官が平成25年9月27日付け報告命令において、特定段ボールシート又は特定段ボールケースの販売実績の報告を求めたのに対し、乙事件原告から報告された売上額(査102の別表1、4)を基に、独占禁止法50条6項が準用する独占禁止法49条3項から5項までに定める事前通知、意見申述等の手続等を経て確定されたものである。その後の本件審判手続において、乙事件原告は、平成30年7月11日の第12回準備手続期日で陳述された準備書面(8)において、乙事件原告の売上げには、特定段ボールシート又は特定段ボールケース以外の付加価値である役務や製品を付加したことに得られたものが含まれる(審D5号証)ので、これらの売上合計3773万0537円は、課徴金算定の基礎となる売上げから除外すべきであると主張し、また、令和2年1月30日の第15回審判期日で陳述された最終意見において、乙事件原告が申告した売上額の中には、段ボールシート又は段ボールケースの売上額とは異なる役務の対価又は商品の対価の売上額が含まれている(審D6号証)ので、当該売上額834万6359円(以下「既控除売上げ」という。)を課徴金算定の基礎となる売上げから除外しなければならないとしたものの、同期日において、既控除売上げに係る部分については、課徴金の算定の対象から既に除外されていることが確認できたとして、この部分に係る主張を撤回した。これら3773万0537円の売上げと既控除売上げとの関係は明らかではないものの、上記各証拠(審D5及び審D6)によれば、取引先と金額に共通する部分がみられ、これらは相当の範囲で重なり合っているものと認められる。
そして、本件審決案は、本件課徴金納付命令における課徴金の算定の基礎となる売上額は相当であるとしたところ、乙事件原告は、本件審決案に対する異議申立てにおいて、既控除売上げ以外にも、特定段ボールシート又は特定段ボールケース以外の売上げ3773万0989円が含まれており、これを除外すべきと主張した。この3773万0989円の売上げの内訳は、上記3773万0537円の売上げの内訳とほぼ一致しており、既控除売上げと相当の範囲で重なり合っているものと認められる。本件審決は、異議申立てにおいて除外を求める3773万0989円の売上げには、既控除売上げに当たるものが含まれているとした上で、これに含まれない部分についても、そもそも商品の内容が不明のものや段ボール製品との関係が判然としないものが多く含まれ、乙事件原告が、上記報告において、特定段ボールシート又は特定段ボールケースの売上げとして報告したものに計上されていたかどうかについての具体的主張立証がないとして、既控除売上げを超える額の売上げを課徴金の計算の基礎から除外することは相当ではないとした。
乙事件原告は、乙事件訴状において、課徴金の計算の基礎から既控除売上げを控除すべきであると主張し、さらに、準備書面(1)において、既控除売上げ以外にも特定段ボールシート又は特定段ボールケースに含まれない売上げがあるとして、それに相当する額である3773万0537円を課徴金の算定の基礎となる売上げから除外すべきであると主張したが(本件審判手続の準備書面(8)と同様の主張)、準備書面(2)において、既控除売上げに係る訴状の主張を撤回した。
上記の経緯に照らせば、乙事件原告が主張する特定段ボールシート又は特定段ボールケースに含まれない売上げが課徴金の計算の基礎に含まれているのでこれを除外すべきであるとの主張を採用せず、乙事件原告に係る課徴金の額は本件課徴金納付命令における課徴金額と同額であるとした本件審決の認定が実質的証拠を欠くものとはいえない。
乙事件原告は、売上げ明細を見れば、上記3773万0537円の売上げに、特定段ボールシート又は特定段ボールケースではないものが含まれているというべきである旨主張するが、これらが既控除売上げとは別のものであるか、そもそも審査官への報告において特定段ボールシート又は特定段ボールケースの売上げとして計上されていたかについての的確な立証があるとはいえないことからすれば、乙事件原告の上記主張は採用できない。
カ そうすると、乙事件原告の主張はいずれも採用できず、本件審決が認定した乙事件原告に係る課徴金の額は相当である。
5 以上によれば、本件審決の基礎となった事実を立証する実質的証拠があるものと認められ、また、その判断も違法不当なものとはいえないから、本件審決に独占禁止法82条1項所定の取消事由があるとは認められない。
第5 結論
よって、原告らの請求は理由がないからいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。

令和5年4月21日

東京高等裁判所第3特別部
裁判長裁判官  永 谷 典 雄
裁判官     𠮷 田 光 寿
裁判官     中 野 達 也
裁判官神野律子及び裁判官須賀康太郎は転補のため署名押印できない。
裁判長裁判官  永 谷 典 雄

(別紙1)
当事者目録
東京都中央区銀座5丁目12番8号
甲事件原告 王子コンテナー株式会社
(以下「甲事件原告王子コンテナー」という。)
同代表者代表取締役 《氏名略》
京都市南区西九条南田町61番地
甲事件原告 森紙業株式会社
(以下「甲事件原告森紙業」という。)
同代表者代表取締役 《氏名略》
埼玉県入間市大字狭山ケ原11番地7
甲事件原告 ムサシ王子コンテナー株式会社
(以下「甲事件原告ムサシ王子コンテナー」という。)
同代表者代表取締役 《氏名略》
栃木県下野市下古山144番地の2
甲事件原告 関東パック株式会社
(以下「甲事件原告関東パック」という。)
同代表者代表取締役 《氏名略》
京都市南区西九条南田町61番地
甲事件原告 常陸森紙業株式会社
(以下「甲事件原告常陸森紙業」という。)
同代表者代表取締役 《氏名略》
京都市南区西九条南田町61番地
甲事件原告 長野森紙業株式会社
(以下「甲事件原告長野森紙業」という。)
同代表者代表取締役 《氏名略》
京都市南区西九条南田町61番地
甲事件原告 群馬森紙業株式会社
(以下「甲事件原告群馬森紙業」という。)
同代表者代表取締役 《氏名略》
京都市南区西九条南田町61番地
甲事件原告 新潟森紙業株式会社
(以下「甲事件原告新潟森紙業」という。)
同代表者代表取締役 《氏名略》
京都市南区西九条南田町61番地
甲事件原告 仙台森紙業株式会社
(以下「甲事件原告仙台森紙業」という。)
同代表者代表取締役 《氏名略》
京都市南区西九条南田町61番地
甲事件原告 静岡森紙業株式会社
(以下「甲事件原告静岡森紙業」という。)
同代表者代表取締役 《氏名略》
京都市南区西九条南田町61番地
甲事件原告 北海道森紙業株式会社
(以下「甲事件原告北海道森紙業」という。)
同代表者代表取締役 《氏名略》
上記11名訴訟代理人弁護士 大東泰雄
同 鳥居江美
同 福塚侑也
東京都千代田区神田小川町1丁目3番1号
乙事件原告 東京コンテナ工業株式会社
同代表者代表取締役 《氏名略》
同訴訟代理人弁護士 鳥飼重和
同 島村 謙
同 本田 聡
東京都千代田区霞が関1丁目1番1号
両事件被告 公正取引委員会
同代表者委員長 古谷一之
同指定代理人 西川康一
同 榎本勤也
同 堤 優子
同 茂泉尚子
同 坂本智之
同 岩丸華子
同 小室尚彦














































注釈 《 》部分は,公正取引委員会事務総局において原文に匿名化等の処理をしたものである。

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