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佐賀県有明海漁業協同組合に対する件

審査規則22条1項

令和4年(査)第5号

審査官の処分に対する異議申立てに関する決定

佐賀県佐賀市西与賀町大字厘外821番地4
異議申立人    佐賀県有明海漁業協同組合
同代表者代表理事  ≪B1≫
同代理人弁護士  平 山 賢太郎

令和4年(査)第5号佐賀県有明海漁業協同組合に対する件(以下「本件審査事件」という。)について、異議申立人から、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第47条第1項及び同条第2項の規定に基づく審査官の処分に対し、公正取引委員会の審査に関する規則(以下「審査規則」という。)第22条第1項の規定に基づく異議の申立てがあったので、当委員会は、次のとおり決定する。

主文
本件異議の申立てを却下する。

理由
1 本件審査事件に関し、公正取引委員会審査官≪氏名略≫は、令和5年6月29日、異議申立人に対して行った報告命令(同月30日に送達。以下「本件報告命令」という。)において、異議申立人の支部ごとに、小間(支柱方式での海苔の養殖を行うための一定の面積の海苔の漁場)の割当てを受けた組合員の氏名、住所、「乾海苔共販にかかる誓約書」の提出状況 等に関する事項の報告を求めたところ、異議申立人は、令和5年7月20日付けで提出した報告書(同月24日到達)においては、当該事項の報告に必要な情報を収集しているところであるとして報告を留保し、その後、令和5年8月25日付けで提出した報告書(同月28日到達。以下「本件報告書」という。)においては、上記の事項につき報告をしてきたものの、その一部について「立入検査留置済」との記載の下に回答がなされていなかったことから、審査官は、同年9月6日、異議申立人に対し、回答に際して既に異議申立人から審査官が留置していた文書の閲覧等が必要であれば、これに対応することを申し添えた上で、上記無回答部分の回答を補充するように電子メールをもって要請したところ(以下「本件要請」という。)、同月11日、異議申立人から、当委員会に対し、審査規則第22条第1項の規定に基づき、別添上申書のとおり異議の申立てがなされた。
2 異議申立人は、審査官が異議申立人に対し行った本件要請により、本件報告命令が、これに先立って本件審査事件について審査官により行われた、異議申立人に対する立入検査(独占禁止法第47条第1項第4号、第2項)の際に留置された文書(独占禁止法第47条第1項第3号、第2項。以下「本件留置文書」という。)によらなければ回答できない事項について、その報告を命ずるものであったことが明らかになったとした上で、審査官は、本件留置文書を閲覧すれば、本件報告命令を行うまでもなく、上記の事項を確認することができ、また、本件留置文書を異議申立人に仮還付(審査規則第17条第2項)することができるにもかかわらず、仮還付手続について異議申立人に教示することを怠り、もって異議申立人が本件留置文書の原本の内容を精査して報告することを妨げており、本件報告命令は独占禁止法第47条に違反している旨主張する。
3(1) しかしながら、独占禁止法第47条第1項及び同条第2項の規定に基づく審査官の「処分」に対する異議の申立てについて、審査規則第22条第1項は、「処分を受けた者は、・・・処分を受けた日から一週間以内に・・・異議の申立てをすることができる。」と規定する。
これを本件異議の申立てについてみるに、異議申立ての対象とされている「処分」、すなわち、本件報告命令は、令和5年6月30日に異議申立人に対して行われたものであるから、同年9月11日になされた本件異議の申立ては、「処分を受けた日から一週間以内」に申し立てられたものではない。
したがって、本件異議の申立ては、不適法であることが明らかである。
なお、同月6日に行われた審査官からの本件要請は、本件報告命令と別個に報告すべき事項の範囲を新たに確定するような処分性を有するものではなく、異議申立ての対象となる本件報告命令とは別の「処分」には当たらないから、本件要請が行われた時点(令和5年9月6日)を異議申立期間の起算点として、本件異議の申立ての適否を検討する余地もない。
(2) また、異議申立人は、審査官が本件留置文書を検査すれば、自ら本件報告命令で報告を求めた事項を確認することができる旨主張しているとも解されるが、審査官が既に留置している「乾海苔共販にかかる誓約書」 等の本件留置文書からは、直近5事業年度において異議申立人から小間の割当てを受けた組合員の氏名等は判明しないものと認められるから、かかる主張は失当である。
(3) なお、本件報告命令に対して異議申立人が回答をしなかった事項のうち、小間の割当てを受けた組合員の氏名等については、本件留置文書に依拠しなくても異議申立人において回答することが可能であると解され、他方で「乾海苔共販にかかる誓約書」の提出状況 などについて、仮に本件留置文書の内容を確認しなければ回答ができないものであったとしても、審査官により文書を留置された者は、当該文書の仮の還付を請求し(審査規則第17条第2項)、あるいは当該文書を閲覧、謄写すること(審査規則第18条第1項)によって、当該文書の内容を確認することが可能である(異議申立人には、留置文書の閲覧、謄写が可能である旨を記載した文書が、本件報告命令前に審査官から交付されている。)から、異議申立人は本件報告命令におけるこれらの事項について回答が妨げられているものではない。
また、審査官には、留置文書の仮還付の手続(審査規則第17条第2項)について、文書の所有者等に教示する義務があるわけではないから、仮に審査官がこれを異議申立人に教示していなかったとしても、それ自体違法でないことはもとより、それによって本件報告命令が独占禁止法第47条の規定に違反して違法となるものではない。
以上の点を考慮しても、異議申立人の前記の主張は理由がない。
4 以上のとおり、異議申立人による本件異議の申立ては不適法であり、かつ、その理由もないので、主文のとおり決定する。

令和5年10月3日

公正取引委員会

別添

上申書

令和5年9月11日

公正取引委員会御中

佐賀県有明海漁業協同組合
平山法律事務所
電話  ≪番号略≫
FAX ≪番号略≫
代理人弁護士 平山 賢太郎

独占禁止法47条1項1号に規定する処分に対する異議の申立て

当職は、上記の者の代理人として、審査官が独占禁止法47条2項の規定に基づいてした同条1項1号に規定する報告 命令に対して、別紙のとおり、公正取引委員会の審査に関する規則22条1項の規定に基づき異議を申し立てます。

別紙

熊本県漁業協同組合連合会は貴会の令和4年(査)第4号事件について、佐賀県有明海漁業協同組合は貴会の令和4年(査)第5号事件について、それぞれ審査を受けておりますところ、両会はそれぞれ、貴会の審査に対して誠実に協力し貴会に真相を解明していただくことをその対応方針としております。

貴会審査官は、令和5年6月29日付け報告命令書により、申立人に対して同命令書様式記載の事項について報告を命じました。その後、貴会審査官の申立人あて令和5年9月6日付け電子メールにより、当該命令が立入検査留置済書類によらなければ記載できない事項の報告を独禁法47条に基づいて命じるものであることが明らかになりました。
しかし、当該書類原本はすでに同条に基づく処分によって貴会の支配・管理下に移転したのであり、貴会審査官は、ことさら報告命令を行うまでもなく、当該書類原本を自由に閲覧し内容を確認することができます。なお、貴会審査官は、当該書類原本を申立人に仮還付することができるにもかかわらず、仮還付手続について申立人に教示することを怠り、もって、申立人が当該書類について原本の内容を精査したうえで報告することを妨げています。

当該報告命令は、「公正取引委員会は、事件について必要な調査をするため、次に掲げる処分をすることができる」と定める独占禁止法47条に違反しますので、本書をもって異議を申し立てます。

なお、申立人は、当該書類原本を閲覧することなく記載できることを確認できた事項の報告を提出することを準備しているほか、留置済書類を精査しなければ記載できない事項についても、当該報告命令が合法なものであることが異議申立て、裁決取消の訴え等を経て確認された場合には、当該書類原本について仮還付を受けるなどしたうえで報告を行いたいと考えておりますので、その旨申し添えます。
以 上


注釈 《 》部分は、公正取引委員会事務総局において原文に匿名化等の処理をしたものである。

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