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独禁法3条後段、独禁法7条の2
東京高等裁判所
令和3年(行ケ)第9号
令和5年10月20日
別紙1「当事者目録」記載のとおり
主 文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告が原告らに対して令和3年2月8日付けでした公正取引委員会平成26年(判)第3号ないし138号排除措置命令審判事件及び課徴金納付命令審判事件についての審決のうち、主文第3項の原告らに係る部分を取り消す。
第2 事案の概要(以下、別紙2「用語一覧」の「用語」欄記載の各用語の定義は、それぞれ対応する同別紙の「定義」欄記載のとおりである。)
1⑴ 本件は、原告らを含む被審人らに対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成25年法律第100号)附則2条の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)に基づく公正取引委員会平成26年(判)第3号ないし第138号排除措置命令審判事件及び課徴金納付命令審判事件につき被告が令和3年2月8日付けでした審決(以下「本件審決」という。)について、原告らが、それぞれ、当該原告の審判請求を棄却する部分(原告浅野段ボールにあっては、その審判請求を一部棄却する部分。主文3項の原告らに係る部分)の取消しを求める事案である。
⑵ 本件審決に係る手続の経過は、以下のとおりである。
ア 平成26年(判)第3号ないし第64号審判事件(段ボールシートの販売に係るもの。以下「第1事件」という。)
(ア) 被告は、原告らを含む57社(別紙3「事業者一覧」の番号1~57の各社。以下「第1事件事業者57社」という。)が、共同して特定段ボールシートの販売価格を引き上げる旨合意することにより、公共の利益に反して、特定段ボールシートの販売分野における競争を実質的に制限していたものであって、当該行為が、独占禁止法2条6項の不当な取引制限に該当し、同法3条に違反するものであり、かつ、特に排除措置を命ずる必要があるとして、平成26年6月19日、原告コバシ、原告大万紙業、原告吉沢工業及び原告福原紙器(以下、併せて「原告コバシら4社」という。)を含む55社(第1事件事業者57社のうち、いずれも自らを吸収合併消滅会社とする吸収合併をした2社(別紙3「事業者一覧」の番号9及び25)を除く各社)に対し、排除措置命令(平成26年(措)第11号。以下「第1事件排除措置命令」といい、同命令において認定された違反行為を「第1事件違反行為」という。)を発した。
原告コバシら4社に対する上記命令の各送達の日は、いずれも平成26年6月20日である。
(イ) さらに、被告は、第1事件違反行為が、独占禁止法7条の2第1項1号に規定する商品の対価に係るものであるとして、平成26年6月19日、原告コバシ及び原告大万紙業を含む48社(上記(ア)の55社のうち、別紙3「事業者一覧」の番号11、35、39(原告吉沢工業)、49、51(原告福原紙器)、52及び56の7社を除く各社)に対し、それぞれ課徴金納付命令(原告コバシ(平成26年(納)第151号)及び原告大万紙業(同第160号)に対して納付が命じられた各課徴金の額は、別紙4「課徴金一覧」の「(表1)」の当該各「課徴金額」欄記載のとおりである。以下、当該各課徴金納付命令を「第1事件課徴金納付命令」という。)を発した。
原告コバシ及び原告大万紙業に対する上記各命令の送達の日は、いずれも平成26年6月20日である。
(ウ) 原告コバシら4社を含む32社(別紙3「事業者一覧」の番号1~3、5、6、8、10、12~24、27、28、31、33(原告コバシ)、36、38、39(原告吉沢工業)、42、45(原告大万紙業)、47、51(原告福原紙器)及び54の各社)は、それぞれ第1事件排除措置命令の全部の取消しを求める審判請求をするとともに、原告コバシ及び原告大万紙業を含む30社(上記32社のうち、別紙3「事業者一覧」の番号39(原告吉沢工業)及び51(原告福原紙器)の2社を除く各社)は、それぞれ第1事件課徴金納付命令の全部の取消しを求める審判請求をした(第1事件)。
原告コバシら4社による上記各審判請求の日は、いずれも平成26年8月15日である。
イ 平成26年(判)第65号ないし第138号審判事件(段ボールケースの販売に係るもの。以下「第2事件」という。)
(ア) 被告は、原告らを含む63社(別紙3「事業者一覧」の番号1~63の各社。以下、併せて「第2事件事業者63社」といい、第1事件事業者57社と併せて「本件各事業者」という。)が、共同して特定段ボールケースの販売価格を引き上げる旨合意することにより、公共の利益に反して、特定段ボールケースの販売分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為が、独占禁止法2条6項の不当な取引制限に該当し、同法3条に違反するものであり、かつ、特に排除措置を命ずる必要があるとして、平成26年6月19日、原告らを含む61社(第2事件事業者63社のうち、いずれも自らを吸収合併消滅会社とする吸収合併をした2社(別紙3「事業者一覧」の番号9及び25)を除く各社)に対し、排除措置命令(平成26年(措)第12号。以下「第2事件排除措置命令」といい、同命令において認定された違反行為を「第2事件違反行為」という。また、第1事件排除措置命令と第2事件排除措置命令とを併せて「本件各排除措置命令」といい、第1事件違反行為と第2事件違反行為とを併せて「本件各違反行為」という。)を発した。
原告らに対する上記命令の各送達の日は、いずれも平成26年6月20日である。
(イ) さらに、被告は、第2事件違反行為が、独占禁止法7条の2第1項1号に規定する商品の対価に係るものであるとして、平成26年6月19日、原告らを含む60社(上記(ア)の61社のうち、別紙3「事業者一覧」の番号57を除く各社)に対し、それぞれ課徴金納付命令(原告コバシ(平成26年(納)第177号)、原告大万紙業(同第203号)、原告吉沢工業(同第192号)、原告福原紙器(同第212号)、原告浅野段ボール(同第191号)、原告鎌田段ボール工業(同第207号)及び原告興亜紙業(同第218号)に対して納付が命じられた各課徴金の額は、別紙4「課徴金一覧」の「(表2)」の当該各「課徴金額」欄記載のとおりである。以下、当該課徴金納付命令を「第2事件課徴金納付命令」といい、第1事件課徴金納付命令と併せて「本件各課徴金納付命令」という。)を発した。
原告らに対する上記各命令の送達の日は、いずれも平成26年6月20日である。
(ウ) 原告らを含む37社(別紙3「事業者一覧」の番号1~3、5、6、8、10、12~24、27、28、31、33、36、38、39、42、45、47、51、54及び58~ら62の各社)は、それぞれ第2事件排除措置命令の全部の取消しを求める審判請求をするとともに、第2事件課徴金納付命令の全部の取消しを求める審判請求をした(第2事件)。
原告らによる上記各審判請求の日は、いずれも平成26年8月15日である。
ウ 本件審決(原告らに係るもの)
被告は、令和3年2月8日、本件審決をし、原告浅野段ボールの審判請求については、第2事件課徴金納付命令のうち原告浅野段ボールに対して2904万円を超えて課徴金の納付を命じた部分を取り消し、その余を棄却し、また、原告浅野段ボールを除くその余の原告らの各審判請求については、これらをいずれも棄却した。
原告らは、令和3年3月10日、本件訴えを提起した。
エ 平成26年(判)第139号ないし第142号審判事件(特定ユーザー向け段ボールケースの販売に係るもの。以下「関連事件」という。)
被告は、レンゴー株式会社、株式会社トーモク及び日本トーカンパッケージ株式会社の3社が、王子コンテナー株式会社及び森紙業株式会社と共同して(以下、これらの大手段ボール製造業者である5社を「大手5社」という。)、特定ユーザー向け段ボールケースの販売価格又は加工賃を引き上げる旨合意することにより、公共の利益に反して、特定ユーザー向け段ボールケースの取引分野における競争を実質的に制限していたなどとして、平成26年6月19日、大手5社のうち上記3社に対し、排除措置命令(平成26年(措)第13号)及び課徴金納付命令(同年(納)第222号~第224号)を発した。
2 前提事実(本件審決において認定された事実であって原告らが実質的な証拠の欠缺を主張していないものであるか、本件審決の記録中の証拠(枝番のある証拠は、特に明示しない限り、枝番の全てを含む。以下同じ。)から容易に認められる事実)
⑴ 本件各事業者の概要
ア 原告らを含む本件各事業者(以下、原告ら以外の本件各事業者の表記については、別紙3「事業者一覧」の「略称」欄の記載に従う。)は、いずれもコルゲータ(段ボール製造機)を有する段ボール製造業者であり、段ボール原紙を加工して段ボールシートを製造するとともに、段ボールシートを加工して段ボールケースを製造する事業を営む者である(このうち、第1事件事業者57社は、自社加工用の段ボールシートのほか、他の需要者向けの段ボールシートを製造していた者らである。)。本件各事業者の東日本地区における段ボール製品(段ボールシート及び段ボールケースの両方又はいずれか一方をいう。以下同じ。)の工場等(製造拠点)は、それぞれ別紙3「事業者一覧」の「製造拠点」欄記載の都道府県に所在していた。(査1~63)
イ 本件各事業者のうち、グループ関係にある事業者は、次のとおりである。
(ア) レンゴーは、セッツカートン、大和紙器、マタイ紙工、アサヒ紙工、イハラ紙器及び甲府大一実業の親会社である(以下、レンゴーが形成する企業グループを「レンゴーグループ」という。)(査1、6、8、12~15)。
(イ) 王子ホールディングス株式会社(平成24年10月1日の商号変更前の商号は「王子製紙株式会社」であり、以下、当該商号変更の前後を通じて「王子ホールディングス」ともいう。)は、王子コンテナー(同日の商号変更前の商号は「王子チヨダコンテナー株式会社」である。)、森紙業、ムサシ王子コンテナー及び関東パックの親会社である(以下、王子ホールディングスが形成する企業グループを「王子グループ」という。)。なお、静岡王子コンテナーは、王子ホールディングスの子会社であったが、同日、王子コンテナーとの間で、自らを吸収合併消滅会社とする吸収合併をした。(査2、5、23~25)
(ウ) 森紙業は、常陸森紙業、長野森紙業、群馬森紙業、新潟森紙業、仙台森紙業、静岡森紙業及び北海道森紙業の親会社である(査5、16~22)。
(エ) トーモクは、大一コンテナー及びトーシンパッケージの親会社である(ただし、トーモクが大一コンテナーの親会社となったのは、平成24年3月である。)(査3、27、28)。
(オ) 大王製紙株式会社(以下「大王製紙」という。)は、中部大王製紙パッケージ及び大王製紙パッケージの親会社である。なお、大王製紙パッケージは、平成25年4月1日、中部大王製紙パッケージとの間で、自らを吸収合併消滅会社とする吸収合併をした(これに伴い、中部大王製紙パッケージは、その商号を「大王パッケージ株式会社」に変更した。)。(査9、26)
(2) 東日本段ボール工業組合
ア 東日本段ボール工業組合(以下「東段工」という。)は、その定款上、東日本地区において、コルゲータを有し、段ボール製品の生産の事業を営むことを組合員の資格要件とする組合である。本件各事業者のうち、別紙3「事業者一覧」の「組合員」欄に「〇」が記載されている原告ら(原告福原紙器を除く)を含む51社は、本件当時(おおむね後記⑷アのとおりレンゴーにより段ボール製品の値上げの公表がされた平成23年8月26日から後記⑺アのとおり被告の立入検査が行われた平成24年6月5日までの時期を指す。以下同じ。)、いずれも東段工の組合員(以下、単に「組合員」といい、組合員以外の者を「非組合員」という。)であった。(査478~481)
イ 東段工は、全国段ボール工業組合連合会(以下「全段連」という。)の会員である。全段連の会員としては、地区に応じて、東段工のほかに、中日本段ボール工業組合、西日本段ボール工業組合及び南日本段ボール工業組合がある。(査480~482)
ウ 東段工は、その最高の意思決定機関である総会及び業務の執行を決定する機関である理事会を置いているほか、次のとおり「三木会」と称する組織及び支部を置いていた(査470、478、479、483~486)。
(ア) 三木会
三木会は、その規約上、組合員の地位向上のため、全段連及び東段工の理事会決議事項の伝達、組合員に共通する課題に関する情報又は資料の提供等を目的として、理事会の下に置かれた組織であり、平成17年8月2日付け「東段工の組織と業務について」と題する書面において、東段工の事業の連絡推進及び実行の徹底を図るための事業並びに支部との情報交換及び取りまとめを行うものと位置付けられていた(ただし、実際の役割等には争いがある。)。
三木会は、会長、幹事長及び副幹事長のほか、各支部を代表する支部長を含む委員で構成されており、本件当時、別紙5「三木会構成員・出席者一覧」の「役職」欄記載の各役職に、「構成員」欄記載の各所属会社の役員又は従業員が就任していた。このうち、各支部の支部長以外の委員は、レンゴー、セッツカートン、大和紙器、トーモク、王子コンテナー、森紙業、ダイナパック、日本トーカンパッケージ及び大王製紙パッケージの営業本部長級の者ら並びに福野段ボール工業の代表取締役であった(これらの10社が、別紙2「用語一覧」の「本部役員会社」に当たる。)。
三木会の会合は、原則として毎月開催されることとされていた。
(イ) 支部
東段工には、別紙6「支部一覧」の「支部」欄記載の9支部が置かれ、これらの支部は、同別紙の「地区」欄記載の都道府県に工場等の事業所を有する組合員らにより構成され、本件当時、同別紙の「構成員」欄記載の各組合員が当該支部に所属していた。支部開催の会合は、主に当該地区に所在する工場等の事業所における営業責任者(工場長又は事業所長等)を構成員として開催され(ただし、代表取締役又は営業担当の取締役、部長若しくは課長等が出席していた事業者もあった。以下、単に「営業責任者」という場合は、これらの者を指す。)、上記構成員のうち、同別紙「支部長(所属会社)」欄記載の者らが、それぞれ当該支部の支部長を務めていた。
⑶ 段ボール市場の概要
ア 段ボール製品の概要
段ボールシートは、コルゲータを用いて、波型に成型した段ボール原紙である中しんの片面又は両面に、段ボール原紙であるライナと呼ばれる紙を張り合わせたものである。また、段ボールケースは、段ボールシー卜に印刷、切れ込みを入れる打ち抜き等の加工を施し、箱型に組立て可能にしたものである。段ボールシートについては、日本工業規格において外装用段ボール(日本工業規格「Z 1516:2003」)が規定されていて、本件各事業者は、いずれもこの規格に該当する段ボールシート及びこれを加工した段ボールケースを製造しており、クラウン・パッケージ(同社は、この規格に当たらない製品も多く製造している。)を除く62社において製造していた段ボール製品は、専らこの規格に当たるものであった。(査177、229、265、298、306、453、487~489)
イ 段ボール製品の製造業者(以下「段ボールメーカー」という。)
段ボールメーカーは、段ボール原紙又は段ボールシートの調達方法により、①段ボール原紙、段ボールシート及び段ボールケースのいずれも製造する事業者(以下「一貫メーカー」という。)、②段ボール原紙の製造業者(以下「原紙メーカー」という。)から段ボール原紙を購入して段ボールシート及び段ボールケースを製造する事業者(以下「専業メーカー」という。)並びに③コルゲータを保有せず、上記①又は②の事業者から段ボールシートを購入して段ボールケースを製造する事業者(以下「ボックスメーカー」という。)に大別される。主な原紙メーカーには、レンゴー、王子板紙株式会社(王子グループに属している会社であり、後に、その商号を「王子マテリア株式会社」に変更した。以下「王子板紙」という。)、大王製紙、≪事業者A≫、≪事業者B≫等があるところ、本件各事業者のうち、レンゴー及び王子板紙とグループ関係にある王子コンテナーが一貫メーカーに位置付けられ、その余の本件各事業者はいずれも専業メーカーに当たるものであった。(査251、300、490)
ウ 段ボール製品の流通・取引
(ア) 段ボール製品の需要者(ユーザー)は、段ボールシートについては、主として、ボックスメーカーなどの段ボールケースの製造業者であり、段ボールケースについては、主として、食品、飲料、自動車部品及び電気製品等の製造業者である(査166、333、334、367、375、424、432、435、438、449、467)。
(イ) 段ボールケースのユーザーは、全国に所在する工場等の拠点において使用する段ボールケースにつき、購入価格等の取引条件の交渉を交渉担当部署において一括して行う「広域ユーザー」又は「ナショナルユーザー」などと呼ばれる大口のユーザー(以下「広域ユーザー」という。)とそれ以外の地場ユーザー等に大別される(査142、234、392、613)。
(ウ) 段ボール製品の営業活動は、ユーザーの交渉担当部署に対して行われていた。このうち、広域ユーザーに対する段ボールケースの販売については、主に段ボールメーカーの本社等の営業担当者が営業活動を行い、当該ユーザーにおいて一括して交渉を担当する部署(なお、同一の企業グループに属するなどの理由から、あるユーザーが他のユーザーの窓口として交渉を担当することなどがある。)との間で交渉をして、販売価格等の取引条件を決定していた。他方、段ボールシートの販売及び地場ユーザーに対する段ボールケースの販売については、主に段ボールメーカーの各工場等における営業担当者が営業活動を行い、当該ユーザーとの間で交渉をして、販売価格等の取引条件を決定していた。(査132、142、151、164、192、234、268、274、275、306、613、614)
(エ) なお、東京コンテナ工業は、平成23年4月以降、自社で製造した段ボール製品の販売業務を子会社の晃里株式会社(以下「晃里」という。)に委託しており、後記⑹の支部会等のうち、東京コンテナ工業が所属していた支部における会合には、東京コンテナ工業の代わりに晃里の営業担当者が出席していた(査418~421)。
(4) 段ボール原紙及び段ボール製品の値上げの動き
ア レンゴーにおける段ボール原紙及び段ボール製品の値上げの公表
レンゴーは、平成23年8月26日、各種原燃料価格の高騰を理由に、同年10月1日出荷分から、段ボール原紙の販売価格を現行価格よりも1キログラム当たり7円以上、段ボールシートの販売価格を現行価格よりも1平方メートル当たり8円以上、段ボールケースの販売価格を現行価格よりも13パーセント以上、それぞれ引き上げる旨公表した。レンゴーは、同年9月1日、セッツカートン及び大和紙器等を含む自社のグループ会社を対象として、段ボール製品の値上げに関する説明会を開催し、上記値上げの方針を伝達した。(査1、364、542、543)
イ 王子グループにおける段ボール原紙及び段ボール製品の値上げの公表
王子グループにおいても、平成23年9月27日、王子板紙が段ボール原紙の販売価格を現行価格から10パーセント以上引き上げる旨公表するとともに(上記値上げ幅については、全品種1キログラム当たり6円と案内されていた。)、翌28日、王子コンテナーが段ボールシート及び段ボールケースの販売価格を同年11月21日出荷分からそれぞれ12パーセント以上引き上げる旨公表した(段ボールシートに係る上記値上げ幅は、1平方メートル当たり7円以上に相当するものであった。)。王子コンテナーは、上記公表に先立つ同年9月26日、静岡王子コンテナー、ムサシ王子コンテナー及び関東パックを含むグループ会社の各工場長を対象として緊急電話会議を開催し、上記値上げの方針を伝達するとともに、同月27日、これらの価格改定の実施について文書でグループ内に周知した。(査2、384、546~550)
ウ 他の原紙メーカーにおける段ボール原紙の値上げの公表
レンゴー及び王子板紙以外の原紙メーカーにおいても、平成23年9月22日には≪事業者B≫が、同年10月4日には≪事業者A≫が、同月11日には大王製紙がそれぞれ段ボール原紙について同程度の値上げを行うことを公表した(査550)。
エ 他の大手段ボールメーカーにおける段ボール製品の値上げの方針の決定
こうした中、レンゴー及び王子コンテナーに続き、他の大手段ボールメーカーも、次のとおり、社内又はグループ内で、段ボール製品の値上げの方針を決定するなどした。
(ア) 森紙業は、王子コンテナーの前記値上げの方針を踏まえ、平成23年9月20日に開催された役員会において、同じ値上げ方針に従って段ボール製品の値上げを実施することを決定し、同年10月4日、子会社である常陸森紙業、長野森紙業、群馬森紙業、新潟森紙業、仙台森紙業、静岡森紙業及び北海道森紙業等を対象とした全社会議を開催し、上記値上げ方針に従って同年11月21日の出荷分から段ボール製品の値上げを行うよう指示した(査5、16~22、300、375、551)。
(イ) トーモクは、平成23年10月12日、部室長・工場長会議を開催し、同年12月1日出荷分から、段ボールシート及び段ボールケースについて、それぞれ12パーセント以上の値上げを行うことを社内に周知した(査3、235、242)。
(ウ) 日本トーカンパッケージは、平成23年10月13日及び14日、工場長会議を開催し、段ボールシートについて15パーセント以上、段ボールケースについて12パーセント以上の値上げを行うことを社内に周知した(査266、277)。
(エ) ダイナパックは、平成23年10月17日午前に開催された会議において、段ボールシートについて同年12月1日納入分から1平方メートル当たり7円以上の値上げを行うとともに、段ボールケースについて平成24年1月納入分から12パーセント以上の値上げを行うことを決定し、平成23年11月2日、各事業所に対し、これらの値上げの方針を周知した(査7、336)。
(オ) 大王製紙は、平成23年10月13日に開催された会議において、子会社である大王製紙パッケージ及び中部大王製紙パッケージ等に対し、同年11月21日から、段ボールシートについて1平方メートル当たり8円以上、段ボールケースについて13パーセント以上の値上げを行うよう指示した(査388、552)。
⑸ 三木会等の開催
ア 本件当時、三木会は、平成23年9月22日及び同年10月17日にそれぞれ開催されたほか、それ以降も、別紙8「会合開催一覧」の「三木会」欄記載のとおり、同年11月17日、同年12月7日、平成24年1月11日、同年2月15日、同年3月15日、同年4月19日及び同年5月17日にそれぞれ開催された(それらの開催場所は、いずれも東京都中央区所在の紙パルプ会館であった。)。このうち、平成23年9月22日、同年10月17日及び同年11月17日開催の三木会には、別紙5「三木会構成員・出席者一覧」の「会合出席状況」欄においてそれぞれの会合欄に「〇」が付されている構成員又は同欄に氏名が記載されている代理者が出席した。(査152、179、266、350、464、486、545、554、587、611)
イ また、本部役員会社のうち、大手5社は、東段工の会合である三木会とは別に、主に各社の営業本部長級の者らを出席者とする「5社会」と称する会合(以下「5社会」という。)を開催し、専ら広域ユーザー向け段ボールケースの取引に関する諸問題について情報交換や協議を行っていた。本件当時、5社会は、平成23年8月30日、同年9月26日、同年10月17日及び同月31日にそれぞれ開催されたほか、同年11月以降も継続して開催されていた。このうち、同年10月17日に開催された5社会では、大手5社の間で、個別の広域ユーザーに対する段ボールケースの値上げの実施について話し合うことが確認され、同月31日に開催された5社会では、別紙2「用語一覧」の別表の「特定ユーザー」欄記載の各ユーザー(以下「特定ユーザー」という。)が選定され、その後、これに従って、特定ユーザー向け段ボールケースについて、個別のユーザーごとに入れ合い(同一のユーザーに対して複数の段ボールメーカーが段ボール製品を納入している状態のこと)となっている事業者の間で値上げの実施方法や値上げ交渉の状況に関する情報交換が行われ、これらの値上げの進捗状況が5社会に報告されていた。(査134、137、140、143、145、172、180、181、183~185、192、268、274、304~306、544、556、557、559~562、612~614)
⑹ 支部会等(支部主催の会合その他支部所属の組合員の担当者を主な構成員とする会合をいい、以下「本件支部会等」という。)の開催
ア 東京・山梨支部
東京・山梨支部においては、従前から、同支部所属の組合員らの各営業責任者を構成員とする会合(以下「東京・山梨支部会」という。)が2か月に1回程度開催されていた。
本件当時、東京・山梨支部会は、平成23年10月19日に東京都新宿区内の飲食店で開催され(その際の出席者は、別紙7「支部会等出席者一覧」の「10月19日東京・山梨支部会」欄に対応する「出席者」欄記載のとおりである。)、それ以降も、別紙8「会合開催一覧」の「東京・山梨支部」欄記載のとおり、同年11月16日、同年12月9日、平成24年2月8日、同年3月6日及び同年4月12日にそれぞれ開催された。
(以上につき、査412、419、424、437、438、446、457、467、563、590)
イ 新潟・長野支部
新潟・長野支部においては、従前から、同支部所属の組合員らの各営業責任者を構成員とする総会が年1回程度開催されていた。
また、新潟・長野支部所属の組合員らのうち、新潟県内に工場等を有する事業者の各営業責任者を主な出席者とする「四木会」などと称する会合(以下「新潟四木会」という。)が月1回程度開催されていたところ、同会合には、他に同県内に工場等を有する非組合員であるエヌディーケイ・ニシヤマなどの営業責任者が出席することもあった(その場合には、「拡大四木会」と呼ばれることもあった。)。同様に、新潟・長野支部所属の組合員らのうち、長野県内に工場等を有する事業者及び同県内に工場等を有する非組合員である協和段ボールの各営業責任者を主な出席者とする「5社会」などと称する会合(以下「長野5社会」という。)が月1回程度開催されていたところ、同会合には、他に山梨県内に工場等を有する甲府大一実業の営業責任者が出席することもあった(ただし、新潟四木会及び長野5社会と新潟・長野支部との関係については、争いがある。)。
本件当時、新潟四木会は、平成23年9月20日及び同年10月13日にそれぞれ開催された後、同月19日に新潟市内の飲食店で開催され(その際の出席者は、別紙7「支部会等出席者一覧」の「10月19日新潟四木会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、別紙8「会合開催一覧」の「新潟・長野支部」欄記載のとおり、同年11月9日、同年12月2日、同月22日、平成24年1月12日、同年2月28日、同年3月28日、同年4月27日及び同年5月29日にそれぞれ開催された。
また、本件当時、長野5社会は、平成23年9月27日に開催された後、同年10月24日に長野県松本市内の飲食店で開催され(その際の出席者は、別紙7「支部会等出席者一覧」の「10月24日長野5社会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、別紙8「会合開催一覧」の「新潟・長野支部」欄記載のとおり、同年11月29日、同年12月9日、同月26日、平成24年1月30日、同年2月28日、同年3月27日、同年4月23日及び同年5月29日に開催された。
(以上につき、査165、166、204、254、334、342、364、367、368、375、423、431、440、442、564、565)
ウ 北海道支部
北海道支部においては、従前から、支部主催の会合は開催されておらず、支部長も、移動に時間がかかるなどの事情により三木会には出席しないのが通例であり、その場合、三木会の席上で配布された資料等は、東段工の事務局から支部長宛てに送付されていた。
他方、北海道支部所属の組合員ら及び北海道内に工場等を有する非組合員である合同容器の各営業責任者を出席者とする「トップ会」などと称する会合(以下「トップ会」という。)が月1回程度開催されていたほか、これらの事業者の当該工場等における営業部長・課長級の者らが出席する「部課長会」などと称する会合(以下「部課長会」という。)が開催されていた(ただし、トップ会及び部課長会と北海道支部との関係については、争いがある。)。
本件当時、トップ会及び部課長会は、平成23年9月1日に両会合が開催された後、同年10月27日には札幌市内のホテルで両会合が開催され(その際のトップ会の出席者は、別紙7「支部会等出席者一覧」の「10月27日トップ会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、別紙8「会合開催一覧」の「北海道支部」欄記載のとおり、同年12月2日、平成24年2月21日、同年3月15日、同年4月5日、同月23日及び同年5月17日に両会合がそれぞれ開催され、また、平成23年11月15日、平成24年1月18日及び同年2月15日に部課長会がそれぞれ開催された。
(以上につき、査170、171、207、259、369、371、405、566の5~15)
エ 群馬・栃木支部
群馬・栃木支部においては、従前から、同支部所属の組合員らの各営業責任者を構成員とする会合(以下「群馬・栃木支部会」という。)が月1回程度開催されていた。
また、これらの組合員のうち、群馬県内に工場等を有する事業者の当該工場における営業部長・課長級の者らを主な出席者とする「群馬会」などと称する会合(以下「群馬会」という。)及び栃木県内に工場等を有する事業者の当該工場における営業部長・課長級の者らを主な出席者とする「栃木会」などと称する会合(以下「栃木会」という。)が月1回程度、同一の日に同一の場所で時間をずらすなどして開催されていた(ただし、群馬会及び栃木会と群馬・栃木支部との関係については、争いがある。)。このうち、栃木会には、栃木県内に工場等を有する非組合員である関東パック及び大日本パックスの各営業担当者が出席することもあった。
本件当時、群馬・栃木支部会は、平成23年9月30日及び同年10月13日にそれぞれ開催された後、同年11月14日に群馬県館林市内の複合施設の会議室で開催され(その際の出席者は、別紙7「支部会等出席者一覧」の「11月14日群馬・栃木支部会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、別紙8「会合開催一覧」の「群馬・栃木支部」欄記載のとおり、同年12月19日、平成24年1月30日、同年2月14日、同年3月12日、同年4月18日及び同年5月15日にそれぞれ開催された。
また、群馬会及び栃木会は、平成23年9月15日に開催された後、同年10月27日に群馬県館林市内の複合施設の会議室で開催され(その際の群馬会の出席者は、別紙7「支部会等出席者一覧」の「10月27日群馬会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らであり、栃木会の出席者は、同「10月27日栃木会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、同年11月28日に開催された。
(以上につき、査161、162、200、202、249、281、331、352、378、385、404、567、568の2~4)
オ 東北支部
東北支部においては、従前から、同支部所属の組合員らの各営業責任者を構成員とする総会が年1回程度開催されていた。
また、これらの組合員のうち、宮城県内に工場等を有している事業者の各営業責任者を主な出席者とする「宮城支部会」、「宮城三木会」などと称する会合(以下「宮城支部会」という。)が数か月に1回程度開催されていた(ただし、宮城支部会と東北支部との関係については、争いがある。)。
本件当時、宮城支部会は、平成23年10月12日に開催された後、同月31日に仙台市内の飲食店で開催され(その際の出席者は、別紙7「支部会等出席者一覧」の「10月31日宮城支部会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、別紙8「会合開催一覧」の「東北支部」欄記載のとおり、同年11月22日、平成24年1月26日及び同年3月12日にそれぞれ開催されたほか、同年4月16日には東北支部の総会が開催された。
(以上につき、査168、205、206、257、284、382、464、465、574、660、711)
カ 静岡支部
静岡支部においては、従前から、同支部所属の組合員らの各営業責任者を構成員とする会合(以下「静岡支部会」という。)が2か月に1回程度開催されていた。静岡支部会には、静岡県内に工場等を有する非組合員である原告大万紙業及び原告福原紙器の各営業責任者が出席することもあった。
本件当時、静岡支部会は、平成23年10月12日に開催された後、同月31日に静岡県掛川市内のホテルで開催され(その際の出席者は、別紙7「支部会等出席者一覧」の「10月31日静岡支部会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、別紙8「会合開催一覧」の「静岡支部」欄記載のとおり、同年11月28日、同年12月13日、平成24年1月18日、同年2月2日、同月17日及び同年3月7日にそれぞれ開催された。
(以上につき、査164、173、250、251、283、333、340、348、357、366、386~389、435、445、449)
キ 埼玉支部
埼玉支部においては、従前から、同支部所属の組合員らの各営業責任者を構成員とする会合(以下「埼玉支部会」という。)が月1回程度開催されていた。
本件当時、埼玉支部会は、平成23年9月26日に開催された後、同年10月19日には埼玉県内のゴルフ場でゴルフコンペ終了後に開催されたほか、同年11月2日にさいたま市内の複合施設の会議室で開催され(その際の出席者は、別紙7「支部会等出席者一覧」の「11月2日埼玉支部会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、別紙8「会合開催一覧」の「埼玉支部」欄記載のとおり、同年11月25日、同年12月12日、平成24年1月23日、同年2月28日、同年3月28日、同年4月19日及び同年5月24日にそれぞれ開催された。
(以上につき、査153、195、196、246、277、279、328、338、346、347、350、356、383、396、400、454、461、577、578)
ク 千葉・茨城支部
千葉・茨城支部においては、従前から、同支部所属の組合員らの各営業責任者を構成員とする会合(以下「千葉・茨城支部会」という。)が月1回程度開催されていた。
本件当時、千葉・茨城支部会は、平成23年9月9日及び同年10月3日にそれぞれ開催された後、同年11月9日に千葉県柏市内の結婚式場の会議室で開催され(その際の出席者は、別紙7「支部会等出席者一覧」の「11月9日千葉・茨城支部会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、別紙8「会合開催一覧」の「千葉・茨城支部」欄記載のとおり、同年12月2日、同月13日、平成24年1月17日、同年2月10日、同年3月8日、同年4月11日及び同年5月10日にそれぞれ開催された。
(以上につき、査157、158、161、198、247、280、330、339、351、372、402、408、411、416、417、420、447、453、580~582、588)
ケ 神奈川支部
神奈川支部においては、従前から、同支部所属の組合員らの各営業責任者を構成員とする会合(以下「神奈川支部会」という。)が1か月ないし2か月に1回程度開催されていた。
本件当時、神奈川支部会は、平成23年10月13日に開催された後、同年11月17日に横浜市内の飲食店で開催され(その際の出席者は、別紙7「支部会等出席者一覧」の「11月17日神奈川支部会」欄に対応する「出席者」欄記載の者らである。)、それ以降も、別紙8「会合開催一覧」の「神奈川支部」欄記載のとおり、同年12月5日、平成24年1月18日、同年2月16日、同年3月13日、同年4月3日及び同年5月14日にそれぞれ開催された。
(以上につき、査151、193、209、239、275、322、345、398、399、407、410、413、425、433、434、443、444、448、452、456、459、469、583、584)
⑺ 被告による立入検査
ア 被告は、平成24年6月5日、本件各違反行為に関し、埼玉県、群馬県及び栃木県等に所在する段ボールメーカーが共同して段ボール製品の販売価格を決定しているという疑いで、独占禁止法47条1項4号の規定に基づいて立入検査を行った(査665、666)。
イ さらに、被告は、平成24年9月19日、本件各違反行為及び関連事件の違反行為に関し、上記規定に基づいて立入検査を行った。
ウ 少なくとも上記アの立入検査が行われた平成24年6月5日以降、本件各事業者の間で段ボール製品の販売価格に関する情報交換は行われていない。
⑻ 関連事件との関係
関連事件は、大手5社が5社会において特定ユーザー向け段ボールケースの販売価格又は加工賃を引き上げる旨の合意(以下「関連事件合意」という。)をしたことを違反行為とするものである。
被告は、特定段ボールケースに係る敗引のうち、特定ユーザー向け段ボールケースに係る取引と重複する部分については、大手5社の間で遅くとも平成23年10月31日までに関連事件合意が成立したことにより、第2事件違反行為の対象となる特定段ボールケースの販売価格を引き上げる旨の合意による拘束の対象から事実上除外されたことを理由として、第2事件課徴金納付命令において、課徴金の計算の基礎となる特定段ボールケースの売上額から上記重複部分に係る売上額を除外している。
3 本件審決(原告らに係る部分)の認定判断
別紙9「本件審決の認定判断」記載のとおり
4 争点及び争点に関する当事者の主張の要旨
本件における争点は、次の⑴から⑻までのとおりであり、これらに関する当事者の主張の要旨は、別紙10「主張整理表」の第1から第8までの各「原告ら」及び各「被告」欄にそれぞれ記載のとおりである。
⑴ 10月17日三木会において、不当な取引制限が成立するために必要な「意思の連絡」の前提となる段ボールシート及び段ボールケースの販売価格に関する値上げに向けた具体的な合意が成立したか否か
⑵ 仮に、前記⑴の合意が成立していたとしても、10月17日三木会における情報交換によって、独占禁止法2条6項に定める「共同して」に該当するために必要とされる意思の連絡が成立したか否か
⑶ 仮に、本件各合意が成立したとしても、その内容は、各支部に伝達されることが予定されており、10月17日三木会における情報交換は、出席各社が協調して従うべきものであったか否か
⑷ 本件各合意によって競争制限効果が生じたか否か
⑸ 本件各合意が対象としている地理的範囲(一定の取引分野)を東日本地区と画定することができるか否か
⑹ 原告らが本件各合意(原告浅野段ボール、原告鎌田段ボール工業及び原告興亜紙業にあっては、本件ケース合意。以下、単に「本件各合意」と総称することがある。)に参加したか否か
⑺ 仮に、原告らについて本件各違反行為が存在したとしても、これが既になくなっていることから、本件各排除措置命令は、その必要があると認められるか否か
⑻ 仮に、原告コバシに対する第1事件排除措置命令が適法であるとしても、原告コバシがその100パーセント子会社である≪事業者T≫に販売する段ボールシートの売上げを課徴金の算定対象となる売上額から除外すべき特段の事情が存在するか否か(原告コバシに対する第1事件課徴金納付命令(平成26年(納)第151号)の適法性)。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
本件審決における個々の事実に係る認定については、いずれも各掲記の証拠に照らし、合理的なものとして是認することができる。なお、原告らが争う点については、後述する。
2 争点⑴(10月17日三木会において、不当な取引制限が成立するために必要な「意思の連絡」の前提となる段ボールシート及び段ボールケースの販売価格に関する値上げに向けた具体的な合意が成立したか否か)及び争点⑵(仮に、前記⑴の合意が成立していたとしても、10月17日三木会における情報交換によって、独占禁止法2条6項に定める「共同して」に該当するために必要とされる意思の連絡が成立したか否か)について
⑴ 複数の事業者が対価を引き上げる行為が独占禁止法2条6項の「不当な取引制限」にいう「共同して・・・相互に」の要件に該当するというためには、当該行為について、相互の間に「意思の連絡」があったと認められることが必要であるところ、ここにいう「意思の連絡」とは、複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し、これと歩調をそろえる意思があることを意味し、一方の対価引上げを他方が単に認識、認容するのみでは足りないが、事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要なく、相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りるものと解するのが相当である。
そこで、10月17日三木会において、不当な取引制限が成立するために必要な「意思の連絡」の前提となる段ボールシート及び段ボールケースの販売価格に関する値上げに向けた具体的な合意が成立したか否か、また、本件各合意について、上記のような意思の連絡が認められるか否かについて、以下検討する。
⑵ 本件審決が別紙9「本件審決の認定判断」⑴アにおいて掲げられた証拠により認定したとおり、本件においては、段ボール製品の製造業界において、段ボール原紙の値上がりに伴って段ボール製品の値上げをする際には、レンゴー及び王子コンテナーが値上げを表明し、それ以外の段ボールメーカーは両社の示した値上げ幅を指標として実施するのが通例であって、従前から、段ボール製品の値上げに当たっては、各社が足並みをそろえて行うことが必要であると認識されており、値上げを実施する時期に値上げを実施せずに取引の拡大を図るべきでないとされ、仮にこれを行った場合には、他の事業者等からの抗議活動の対象となり、また、そのような値上げを実施する時期には、東段工の三木会及び支部の会合において、情報交換が行われてきたという慣行(従前からの慣行)が存在していたところ、レンゴーが、平成23年8月下旬、段ボールシートにつき1平方メートルにつき8円以上、段ボールケースにつき13パーセント以上という値上げ幅の値上げを公表し、他の段ボールメーカーに値上げを働き掛け、王子コンテナーも、同年9月28日、レンゴーの値上げ幅と大きな差異のない幅で段ボール製品の値上げをする旨公表し、10月17日三木会において、本部役員会社の多くがレンゴー及び王子コンテナーが公表した値上げ幅に沿った値上げ幅で値上げをすることを表明し、それ以外の本部役員会社や各支部の支部長等も値上げをすること自体は表明していた事実が認められる(前記前提事実⑷、別紙9「本件審決の認定判断」⑴ア)。そうすると、上記の従前からの慣行として、レンゴー及び王子コンテナーの上記表明により、10月17日三木会の出席者の間において、10月17日三木会の出席各社以外の東段工の組合員等の段ボールメーカーもその合意内容に沿った段ボール製品の値上げをするであろうという認識を前提に、上記の値上げ幅での値上げを行うことについて意思の連絡が成立し、本件各合意が成立したものというべきである。
また、本件審決が認定したとおり、10月19日東京・山梨支部会、10月31日静岡支部会、11月2日埼玉支部会、11月9日千葉・茨城支部会及び11月17日神奈川支部会において、10月17日三木会の報告がされ、それ以外の支部会等においても、レンゴー及び王子コンテナー又はこれらのグループ会社の出席者がレンゴー及び王子コンテナーの公表した値上げ幅での値上げを行うことになった旨発言し、これに対して段ボール製品の値上げについて反対の意向を表明した出席者がいなかった事実も認められる(別紙9「本件審決の認定判断」⑴ア(エ))。そうすると、上記の従前からの慣行の下、本件支部会等の出席者は、10月17日三木会の報告又はレンゴー及び王子コンテナー若しくはそのグループ会社の出席者の発言により、東段工管内の全域において、東段工の組合員等の段ボールメーカーが、レンゴー及び王子コンテナーが公表した値上げ幅による値上げを行うものと相互に認識しつつ、これを認容して自ら値上げの方針を発表し、又は値上げに反対の意向を表明しなかったということができ、これらによれば、本件支部会等の出席者の間においては、東段工管内の他の支部においても同様の意思の連絡が成立するという認識を前提に、上記の値上げ幅での値上げを行うことについて意思の連絡が成立し、これによって、本件支部会等の出席各社も、本件各合意に参加したものというべきである。
⑶ 上記のとおり、本件各合意は、従前からの慣行を背景としたものであり、10月17日三木会の出席各社においては、過去の値上げの経験等からも、10月17日三木会で確認された段ボール製品の値上げに関する共通認識に従って自社が行動すれば、他社もこれに従って行動することを互いに期待し合っていたことが明らかである。
そして、平成23年11月以降開催された三木会において、出席各社の間で、自社の値上げの進捗状況のみならず、支部長等を通じて支部管内における値上げの進捗状況も相互に報告されるなどしており、互いの値上げ活動を注視していたことからすれば、10月17日三木会において確認された上記の値上げ幅は、指標として機能していたものとみることができる。
また、10月17日三木会の出席各社を含む本件各事業者においては、上記の従前からの慣行として、段ボール製品の販売価格を引き上げるには大手段ボールメーカーが表明した値上げ幅を指標として各社足並みをそろえて実施する必要があると認識されており、平成23年11月以降開催された三木会においても、出席各社の間で値上げの進捗状況を相互に報告し合っていたものであるから、それまでの生産数量や出荷数量に基づく具体的な金額や値上げ率までの合意をしなくても、協調して段ボール製品の値上げを実施することに特段の支障はなく、また、本件当時実施された段ボール製品の値上げは段ボール原紙の値上がりに伴うものであって、値上げを行うべき有用性が商品によって大きく異なるものではないところ、大手段ボールメーカーが公表し、各社の共通認識となった値上げ幅は、単品の金額ではなく、平米単価ベース又は割合であるから、個々の商品の価格設定の指標となるべき具体性も有していたといえる。
⑷ 以上のとおり、本件各合意については、その成立が認められるところ、その前提として、10月17日三木会において、不当な取引制限が成立するために必要な「意思の連絡」の前提となる段ボールシート及び段ボールケースの販売価格に関する値上げに向けた具体的な合意が成立し、10月17日三木会における情報交換によって、独占禁止法2条6項に定める「共同して」に該当するために必要とされる意思の連絡が成立したことが明らかであり、これらの事実についての本件審決の認定は、実質的証拠を欠くものではなく、原告らが種々主張するところは、いずれも以上の認定判断を左右しないものと認める。
3 争点⑶(本件各合意の内容は、各支部に伝達されることが予定されており、10月17日三木会における情報交換は、出席各社が協調して従うべきものであったか否か)について
⑴ 前記2のとおり、従前からの慣行から、本件支部会等において、三木会に出席していた支部長等や本部役員会社に所属する出席者から大手段ボールメーカーの値上げの方針が説明され、出席各社の値上げ方針が確認されれば、本件支部会等の出席各社においては、大手段ボールメーカーが東段工管内の他の支部においても段ボール製品の値上げを主導するなどして同様の情報交換がされていることを認識していた状況にあったということができる。そうである以上、本件支部会等の出席各社は、東段工管内の他の支部会等においても、東日本地区の全域における値上げを実施するために、大手段ボールメーカーが公表した値上げ方針に沿って値上げをすることが確認されるであろうこと、その前提として、本部役員会社等による三木会を構成する事業者間においても、同様に確認がされているであろうことを認識していたものということができる。また、10月17日三木会に出席していた本部役員会社等からしても、従前からの慣行から、本件支部会等において、10月17日三木会と同様に値上げの意向を表明すれば、10月17日三木会でその旨の合意が成立した事実を伝えなくても、他の地場の段ボールメーカーが追随して値上げの実施に向かうであろうことを認識していたということができる。これらによれば、10月17日三木会においては、支部会等への協議内容の伝達、又は支部会等においてこれと同旨の情報交換を行うことが予定されていたものということができ、このことは、本件審決が認定したとおり、10月17日三木会において、その協議内容を各支部会等へ伝達することが明確に合意されるなどした事実が認められないにもかかわらず、東段工管内の9支部全ての支部会等において、上記協議内容と同様の値上げに関する情報交換が同時期に行われた事実(別紙9「本件審判の要旨」⑴ア(エ))からも、裏付けられるものというべきである。
したがって、10月17日三木会での協議の内容は、支部会等に伝達されることを前提に行われたものと認められる。
⑵ そして、10月17日三木会における情報交換、すなわち、各支部に伝達されることが予定されていた本件各合意は、前記の従前からの慣行により、出席各社が協調して従うべきものであったと認められる。
⑶ 以上によれば、10月17日三木会での協議の内容が支部会等に伝達されることを前提に行われたこと及び各支部に伝達されることが予定されていた本件各合意が従前からの慣行により出席各社が協調して従うべきものであったことについての本件審決の認定は、実質的証拠を欠くものではなく、原告らが種々主張するところは、いずれも以上の認定判断を左右しないものと認める。
4 争点⑷(本件各合意によって競争制限効果が生じたか否か)について
⑴ 原告らは、本件各合意について、第1事件三木会出席11社の東日本地区における市場シェアが44.29パーセントにすぎず、また、第2事件三木会出席12社の同市場シェアが41.24パーセントにすぎないから、競争を実質的に制限する効果は生じないものであるとし、本件審決が第1事件三木会出席11社及び第2事件三木会出席12社にそれぞれグループ会社を加えたシェアを考慮して、競争の実質的制限を判断したことについては、グループ関係にある事業者が本件各合意の当事者に同調するとは限らず、他の事業者のけん制力が欠如しているという証拠があるわけではないとして、不当な取引制限として問題となる合意は成立しておらず、本件審決の上記判断は実質的証拠を欠いている旨主張する。
しかしながら、違反事業者の市場におけるシェアが過半に達していないとしても、それ以外の事業者の価格けん制力等、市場の状況によっては、競争を実質的に制限することが可能であると考えられるところ、段ボール製品の製造業界における前記の従前からの慣行等からすれば、事業者が本件各合意に参加せずに、競争的に価格引上げをけん制する行動を取ることは見込み難く、本件各合意の成立当時、第1事件三木会出席11社の東日本地区における段ボールシートの市場のシェアが約44.29パーセントであり、第2事件三木会出席12社の同地区における段ボールケースの市場のシェアが約41.24パーセント(査492、493)であることからすれば、それらの事業者において特定段ボールシート又は特定段ボールケースの販売価格を決めることは、ある程度競争を実質的に制限し得るものであるということができる。また、グループ会社において、事業活動を統一的な方針に基づいて行う場合、第1事件三木会出席11社にそのグループ会社を加えた東日本地区における段ボールシートの市場のシェアは約62.20パーセント、第2事件三木会出席12社にそのグループ会社を加えた同地区における段ボールケースの市場のシェアは約51.88パーセントであったこと(査492、493)からすれば、他の事業者が競争的に価格引上げをけん制する行動を取ることは、更に見込み難いということができる。そして、10月17日三木会での本件各合意の成立後、本件支部会等を通じてこれら地場の段ボールメーカーである「他の事業者」が本件各合意に参加した事実(別紙9「本件審決の認定判断」⑴ウ、エ、オ)からしても、本件各合意の成立時において、「他の事業者の価格けん制力」は十分でなかったものということができる。
⑵ また、原告らは、本件審決においては、平成23年10月31日までに大手5社による特定ユーザー向け段ボールケースに関する関連事件合意が成立したことにより、本件ケース合意に係る段ボールケースのうち特定ユーザー向け段ボールケースと重複する部分については、本件ケース合意による拘束の対象から事実上除外されており、そのことからすれば、本件ケース合意の対象は特定ユーザー向け段ボールケースを除いた部分になるはずであるとして、第2事件三木会出席12社の上記シェアは4割以下に減少することが明らかであり、本件ケース合意について競争の実質的制限が生ずる余地はない旨主張する。
しかしながら、本件ケース合意は、特定ユーザー向け段ボールケース等の広域ユーザー向けの特定段ボールケースをも対象としており、特定ユーザー向け段ボールケースに係る取引も、本件ケース合意における一定の取引分野に含まれるところ、特定段ボールケースは、段ボールシートを加工して製造される段ボール製品として共通するものであるから、そのうちの特定ユーザー向け段ボールケースとの相違は相対的なものにすぎない。このような特定ユーザー向け段ボールケースに係る取引について、別途取引分野が成立し得るとしても、一定の取引分野が重層的に成立することは、地理的範囲についてのみならず、対象商品の範囲についても同様であり、特定ユーザー向け段ボールケースとそれ以外のユーザー向けの段ボールケースとを包摂する一定の取引分野が成立することは妨げられないということができる。また、大手段ボールメーカーを中心とする第2事件三木会出席12社は、10月17日三木会の段ボールケースに関する情報交換において、特定ユーザー向け段ボールケースを本件各合意の対象から除外していたものとは認められず、本件ケース合意における一定の取引分野、すなわち、特定段ボールケースの販売分野における対象商品の範囲には、特定ユーザー向け段ボールケースが含まれるものと認められる。
したがって、特定ユーザー向け段ボールケースの販売分野が特定段ボールケースの販売分野に含まれないとする原告らの主張は、その前提を欠き、採用することができない。
⑶ 以上によれば、本件各合意によって競争制限効果が生じたと認められ、これと同旨の本件審決の認定は、実質的証拠を欠くものではなく、この点についての原告らの主張は、いずれも採用することができない。
5 争点⑸(本件各合意が対象としている地理的範囲(一定の取引分野)を東日本地区と画定することができるか否か)について
⑴ 原告らは、独占禁止法2条4項の定める「競争」の定義を本件に即していえば、二以上の段ボールメーカーが同一の需要者(需要者群)に対して段ボール製品を供給する関係にある場合に競争があるということになるとした上、段ボール製品は輸送費の関係で自社工場から納入場所までの輸送距離がおおむね100キロメートル程度に限られているため、段ボールメーカーが具体的な競争をしているのは、自社工場から100キロメートル程度の範囲内に限られ、全国的に段ボール製品を販売する大手業者であっても、工場を有さない地域にあっては競争をしているとは限らず、第1事件事業者57社及び第2事件事業者63社については、東日本地区のどのような地域においても競争関係にあるというわけではない上、原告らのような地場中小の段ボールメーカーが販売する地域は自らの工場から輸送可能な範囲に限られ、その範囲を超えて他の段ボールメーカーと競争関係にはないにもかかわらず、本件審決は本件各合意に係る一定の取引分野を東日本地区全域として画定しており、このような認定は実質的証拠を欠くか、法令の適用を誤ったものである旨を主張するとともに、本件審決が採用した考え方(違反者のした共同行為が対象としている取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討し、その競争が実質的に制限される範囲を画定することにより、一定の取引分野を画定するというもの)は、本来、一定の取引分野の画定が、当該市場における競争が実質的に制限されているか否かを判断するための前提として行われることからすると、論理が逆である旨をも主張する。
しかしながら、ある事業者について、段ボール製品の供給範囲が競合する他の事業者との間でのみ競争関係があって、その供給範囲を中心とした取引分野が成立するとしても、これと一定の取引分野とは重層的に成立し得るから、東日本地区の全域を地理的範囲として一定の取引分野を画定することが否定されるものではない。100キロメートルの範囲で営業活動をする段ボールメーカーやそのような段ボールメーカーが点在する各支部管内の商圏は、境界を明確に識別し難く、また、他の支部管内に所在する段ボールメーカーや当該支部管内の隣接する商圏と一部分又は相当な部分が競合し得るということができるほか、ある支部管内の商圏の外延付近に所在するユーザーが隣接する他の支部管内を主たる商圏とする段ボールメーカーと取引をする可能性は十分にあり得るものということができる。そして、東段工の各支部の管内において、個別のユーザーごとに入れ合いとなっている事業者の間で小部会を開くなどして値上げの交渉状況の情報交換が行われた際に、近隣の地域に所在する事業者が参加することがあったと認められること(査158、198、202、280等)などからしても、各事業者において、支部の管轄地域のいかんにかかわらず、足並みをそろえて値上げを行う必要があると認識されていたものと認めることができる。
⑵ したがって、10月17日三木会や本件支部会等の出席各社の認識の下に、本件各事業者が本件各合意の対象とした取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討し、東日本地区の全域を地理的範囲として一定の取引分野を画定した本件審決の認定判断は、合理的であって、実質的証拠を欠くものとも、法令の適用を誤ったものともいえないというべきであり、また、一定の取引分野の範囲内における個々の事業者全てが競争関係になければ、その範囲での競争を実質的に制限し得ないというものではないから、第1事件事業者57社又は第2事件事業者63社全ての事業者相互の関係において東日本地区全域で競争関係が認められることを前提とするかのような原告らの主張は、採用することができない。
⑶ なお、独占禁止法2条6項にいう「一定の取引分野」とは、違反者の共同行為によって競争の実質的制限がもたらされる範囲をいい、その範囲は、前記のように当該共同行為が対象としている取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討して定まるものと解されるから、この点についての原告らの主張も採用することができない。
6 争点⑹(原告らが本件各合意に参加したか否か)について
⑴ 原告興亜紙業について
ア 原告興亜紙業は、10月17日三木会に参加したが、出席者である原告興亜紙業の≪H≫においては、段ボール原紙が値上がりすれば、当社においても段ボール製品を値上げせざるを得ない旨の当然のことを述べたにすぎず、原告興亜紙業を含む第2事件三木会出席12社との間に信頼関係が醸成され、協調関係とそれに基づく保証が得られたとは考えられず、「意思の連絡」が生じたとはいえないから、本件ケース合意自体が成立していない旨、仮に本件ケース合意が成立したとしても、原告興亜紙業は地場の段ボールメーカーであり、東日本地区全体を一定の取引分野とする本件ケース合意に参加する余地はない旨を主張する。
イ しかしながら、10月17日三木会において、原告興亜紙業は、その出席者である≪H≫の発言のとおり、値上げの意向は示しつつ、具体的な値上げ幅については表明していなかったものの、前記2のとおり、それまでにもレンゴーや王子コンテナーが公表した値上げ幅を指標に段ボール製品の値上げが行われてきたという従前からの慣行の実態から、本件当時も、それらと同様の方針で段ボール製品の値上げを実施することになることは、出席各社の間で共通の認識となっていたものと認められる。
そして、「意思の連絡」は、複数の事業者の間で相互に同程度の対価の引上げを実施することを認識し、これと歩調をそろえる意思があることを意味し、一方の対価引上げを他方が単に認識して認容するのみでは足りないものの、事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りると解するのが相当であるところ、10月17日三木会において、このような「意思の連絡」が原告興亜紙業を含む第2事件三木会出席12社の間に生じ、本件ケース合意が成立した認めることができることも、前記2のとおりである。
ウ また、「意思の連絡」の主体に原告興亜紙業を含む本件ケース合意において、東日本地区の全域を地理的範囲として特定段ボールケースの販売分野という一定の取引分野が画定されるとの本件審決の認定判断が、合理的であって、実質的証拠を欠くものとも、法令の適用を誤ったものともいえないことは、前記5のとおりである。
エ したがって、原告興亜紙業は、本件ケース合意に参加してこれを成立させたものと認めることができ、原告興亜紙業を本件ケース合意の当事者と認定した本件審決は、実質的証拠を欠くものではなく、原告興亜紙業の上記主張は、採用することができない。
⑵ 原告鎌田段ボール工業について
ア 原告鎌田段ボール工業は、その代表取締役≪E≫においては、平成23年10月28日にレンゴーの仙台工場長や北海道・東北事業部長と会っておらず、レンゴーから段ボール製品の値上げの要請を受けたこともないから、本件審決における上記要請を受けた旨の認定は実質的証拠を欠いており、また、仮に、原告鎌田段ボール工業が上記要請を受けたとしても、上記≪E≫は本件ケース合意の存在が前提とされていたことを知る由がなく、本件ケース合意の存在やその内容を認識していなかったから、11月17日三木会において自社の値上げ方針を表明したとしても、原告鎌田段ボール工業が特定段ボールケースの販売価格について現行価格から12パーセントないし13パーセント以上引き上げることを認識して認容し、本件ケース合意に参加したとは評価し得ない上、原告鎌田段ボール工業については、その段ボールケースの納品先が東北地方の一部に限られており、その範囲でしか営業をしていないから、本件ケース合意に係る一定の取引分野(地理的範囲)を東日本地区全体とした場合、本件ケース合意に参加する余地はない旨主張する。
イ しかしながら、10月17日三木会を欠席していた上記≪E≫は、当初、平成23年10月28日、レンゴーの仙台工場長であった≪D10≫らと面会し、段ボール製品の値上げについて協力の要請を受けたことを、レンゴーの上記≪D10≫からの事前の電話連絡の経緯を含めて明確に供述しており(査463)、当該面会の事実は、上記≪E≫のスケジュール管理に利用されていたカレンダーの記載によって客観的に裏付けられている(査585)。そして、前記2のとおり、段ボール製品の製造業界においては従前からの慣行が存在し、以前から三木会や支部の会合等において値上げの方針や進捗状況についての情報交換が行われていたところ、同日当時、既に主要な原紙メーカーによる段ボール原紙の値上げ及び一貫メーカーによる段ボール製品の値上げの表明が出そろっていたところであって、そのような状況下で、一貫メーカーであり、三木会の本部役員会社であるレンゴーから、段ボール製品の値上げ活動への協力を要請された地場の段ボールメーカーにおいては、具体的に10月17日三木会において本件各合意が成立したことやその内容を伝えられなくとも、東段工管内の支部会等においても東日本地区の全域における値上げを実施するために大手段ボールメーカーが公表した値上げ方針に沿った値上げの実施が確認されるであろうこと、その前提として、本部役員会社等の三木会を構成する事業者間においても同様の確認がされているであろうことを概括的には認識していたものとみることができる。また、その上で、上記≪E≫は、自ら出席した11月17日三木会において、他の出席各社の間で値上げの進捗状況の情報交換が行われている中で、「原紙が値上がりするのなら、きちんと値上げは行います。」などと回答し、それ以降開催された三木会においても東北支部の支部長として同支部管内における段ボール製品の値上げの進捗状況について報告していたものであって(別紙9「本件審決の認定判断」⑴ア(エ)e(c))、これらの行動は、本件各合意の存在を前提としていたものということができる。
以上によれば、原告鎌田段ボール工業は、遅くとも上記≪E≫が出席し、上記の回答をした11月17日三木会を通じて、本件ケース合意の存在及びその内容を認識し、本件ケース合意に参加したものと認めることができる。
ウ これに対し、後に値上げの要請等に係る事実を否定した上記≪E≫の供述は、上記カレンダーに記載された平成23年10月28日の他の予定については記憶しているとする反面、レンゴーとの面会や上記≪D10≫からの事前の電話連絡については記憶にないなどとしつつ、同日にレンゴーから値上げの要請を受けたことを明確に否定する内容のものである(審Fク5、同人の尋問速記録)が、その供述内容は、全体として不自然であり、直ちに信用することができず、また、上記≪E≫供述に沿う上記≪D10≫の供述(同人の参考人審尋速記録)も、直ちに信用することができるものではない。
エ また、「意思の連絡」の主体に原告鎌田段ボール工業を含む本件ケース合意において、東日本地区の全域を地理的範囲として特定段ボールケースの販売分野という一定の取引分野が画定されるとの本件審決の認定判断が、合理的であって、実質的証拠を欠くものとも、法令の適用を誤ったものともいえないことは、前記5のとおりである。
オ したがって、原告鎌田段ボール工業が、平成23年10月28日、レンゴーの仙台工場長及び北海道・東北事業部長から原告鎌田段ボール工業も値上げ活動に協力してほしいとの要請を受けた旨の本件審決の認定は、実質的証拠に基づく合理的なものであり、原告鎌田段ボール工業については、前記イのとおり、本件ケース合意に参加したものと認めることができるから、原告鎌田段ボール工業を本件ケース合意の当事者と認定した本件審決は、実質的証拠を欠くものではなく、原告鎌田段ボール工業の上記主張は、採用することができない。
⑶ 原告興亜紙業及び原告鎌田段ボール工業を除くその余の原告ら(原告ら5社)について
ア 原告ら5社は、いずれも、本件支部会等のうち6つの支部会等にはレンゴーが公表していた値上げの内容が伝えられたにすぎず、10月17日三木会における本件各合意の内容は伝えられていないから、本件支部会等の参加者は本件各合意が成立した事実を知る余地がなく、また、原告ら5社がそれぞれ本件各合意について伝達された事実はないとし、本件各合意の当事者や他の支部会等の参加者との間で「意思の連絡」が生ずる余地もなく、また、本件各合意に係る一定の取引分野は東日本地区全体とされているところ、地場の段ボールメーカーである原告ら5社が本件各合意に参加したものと認定することは困難であるなどと主張する。
イ しかしながら、原告ら5社のうち原告大万紙業及び原告福原紙器が出席した10月31日静岡支部会、原告浅野段ボールが出席した11月2日埼玉支部会、原告コバシが出席した11月9日千葉・茨城支部会並びに原告浅野段ボール及び原告コバシが出席した11月17日神奈川支部会において、いずれも各支部長等から、10月17日三木会の報告として本件各合意の内容が明示的に伝達されていることが認められる(別紙9「本件審決の認定判断」⑴ア(エ)f~i)。また、前記2のとおり、本件支部会等の出席各社は、東段工管内の他の支部会等において、大手段ボールメーカーが公表した値上げ方針に沿った値上げの実施が確認されるであろうこと、その前提として、本部役員会社等による三木会を構成する事業者間においても、同様の確認がされているであろうことを概括的には認識していたといえるところ、原告吉沢工業が出席した10月19日新潟四木会において、新潟・長野支部の支部長であるトーモクの出席者が「皆さんと同じ位の幅で値上げします。」と発言し、本部役員会社であるレンゴーの出席者において、同社が10月17日三木会で表明していた内容と同旨の段ボール製品の値上げの意向を示したことによって、原告吉沢工業においては、本件各合意の存在を概括的には認識したものと認められる(別紙9「本件審決の認定判断」⑴ア(エ)b(a))。
したがって、原告ら5社が本件各合意が成立したことを認識していたことは明らかであるということができる。
ウ そして、前記説示に照らせば、原告ら5社についても、従前からの慣行により、それぞれ不当な取引制限の成立に必要な「意思の連絡」が生じたものと認め、「意思の連絡」の主体に原告ら5社を含む本件各合意において、東日本地区の全域を地理的範囲として一定の取引分野(特定段ボールシート又は特定段ボールケースの各販売分野)が画定されるとする本件審決の認定判断は、実質的な証拠に基づく合理的なものであって、現実の商圏が東日本地区の一部に限定されている事業者があったとしても、そのことは、本件各合意に係る「意思の連絡」を否定する理由にはならないものというべきである。
エ したがって、原告コバシ、原告大万紙業、原告福原紙器及び原告吉沢工業については本件各合意に、原告浅野段ボールについては本件ケース合意にそれぞれ参加したものと認めることができ、原告ら5社の上記主張は、いずれも採用することができない。
7 争点⑺(仮に、原告らについて本件各違反行為が存在したとしても、これが既になくなっていることから、本件各排除措置命令は、その必要があると認められるか否か)について
⑴ 独占禁止法7条2項にいう「特に必要があると認めるとき」とは、排除措置を命じた時点では既に違反行為はなくなっているが、当該違反行為が繰り返されるおそれがある場合や、当該違反行為の結果が残存しており競争秩序の回復が不十分である場合などをいうものと解され、その判断については、我が国における独占禁止法の運用機関として競争政策について専門的な知見を有する公正取引委員会の専門的な裁量が認められているものというべきである。
⑵ 原告らを含む本件各事業者による本件各違反行為の取りやめは、公正取引委員会による立入検査を受けたことを契機とするものであり(前記前提事実⑺)、本件各事業者の自発的な意思に基づいて違反行為が消滅したものではなく、その後も公正取引委員会による審査活動が継続し、本件各排除措置命令が発令されるまでの間に違反行為の兆候等がみられなかったとしても、それが直ちに本件各事業者の自制的な行動の結果であるとは認められない。本件各違反行為は、過去に段ボール製品の製造業界において同種の違反行為が繰り返されてきたように、根強い慣行等に基づいている側面があるということができ、原告らを含む本件各事業者において再び同様の違反行為に及ぶおそれがあることも直ちには否定し難いところであって、被告が、本件について「特に必要があると認めるとき」に該当すると判断したことは、相当であるということができる。
⑶ したがって、本件各排除措置命令の発令には裁量権の逸脱、濫用はなく、これを是認した本件審決の認定判断にも実質的証拠の欠如や法令違反はないものと認められる。
8 争点⑻(仮に、原告コバシに対する第1事件排除措置命令が適法であるとしても、原告コバシがその100パーセント子会社である≪事業者T≫に販売する段ボールシートの売上げを課徴金の算定対象となる売上額から除外すべき特段の事情が存在するか否か(原告コバシに対する第1事件課徴金納付命令(平成26年(納)第151号)の適法性))について
⑴ 原告コバシは、課徴金制度の目的が、違反行為者が価格カルテル等によって得た不当な利得を剥奪することにあり、親会社である原告コバシが100パーセント子会社である≪事業者T≫に対して販売した段ボールシートの取引が、実質的に同一企業内における加工部門への物資の移動と同視し得るものであることからすれば、原告コバシが≪事業者T≫に対して販売した段ボールシートの売上額を課徴金の計算の基礎としたことは課徴金制度の趣旨、目的に反し、これを適法とした本件審決には実質的証拠の欠如又は法令違反がある旨、被告においては、独占禁止法の規制や被告による同法の運用において、当事者の関係や取引等の実態に着目して、100パーセント子会社はもとよりグループ関係にある会社を一体として取り扱っているところ、本件審決が当該実態を無視して上記売上額を課徴金の計算の基礎としたことは独占禁止法の規定や被告の法運用と矛盾するものであり、本件審決には実質的証拠の欠如又は法令違反が存在する旨、本件各合意の当事者は親会社が100パーセント子会社に対して販売する段ボール製品については本件各合意の対象から除外しており、原告コバシが≪事業者T≫に販売する段ボールシートの販売価格については原告コバシにおいて政策的に決定しているものであって、≪事業者T≫に対する段ボールシートの販売価格に本件シート合意の拘束を及ぼすことは極めて不合理であり、このような販売価格の決定方法は第1事件違反行為の対象から除外されていることを示す「特段の事情」に該当するといえる上、≪事業者T≫は原告コバシにとって段ボールシートの販売先として他の段ボールメーカーと競争する関係にはなく、本件シート合意の当事者が、10月17日三木会において、親会社が100パーセント子会社に対して販売する段ボールシートについてまで、本件シート合意に拘束されて値上げをしなければならないと考えることはあり得ないことからしても、原告コバシの≪事業者T≫に対する段ボールシートの売上げは課徴金算定の対象から除外されるべきであるところ、これを除外しなかった本件審決には実質的証拠の欠如又は法令違反がある旨等を主張する。
⑵ しかしながら、まず、課徴金制度は、カルテルの摘発に伴う不利益を増大させてその経済的誘因を小さくし、カルテルの予防効果を強化することを目的として設けられたものであり、行政上の措置として機動的に発動することができるようにしたものであると解され、また、不当な取引制限(独占禁止法3条、2条6項)に係る課徴金(同法7条の2)の額の算定方式については、実行期間のカルテル対象商品又は役務の売上額に一定率を乗ずる方式が採られているが、これは、課徴金制度が行政上の措置であるため、算定基準も明確なものであることが望ましく、また、制度の積極的かつ効率的な運営により抑止効果を確保するためには算定が容易であることが必要であることから、個々の事案ごとに経済的利益を算定することは適切ではないとして、そのような算定方式が採用され、維持されているものと解される。
このように、課徴金制度は、違反行為の予防効果の強化を目的とするものであって、違反事業者からの経済的利得の剥奪それ自体を主な目的とするものではないということができ、また、課徴金額の算定についても、課徴金制度が違反行為抑止の実効性確保のために行政上の措置として機動的に発動されることを可能とすべく、現実的な経済的利得そのものとは一応切り離して、一律かつ画一的に算定される売上額や購入額に一定の比率を乗ずる方法により算出された金額を、いわば観念的に剥奪すべき経済的利得と擬制するものであるということができる。
したがって、課徴金制度の主な目的が不当な経済的利得の剥奪にあると解することはできず、そのような理解を前提として原告コバシに対する第1事件課徴金納付命令の適否を判断することは相当でない。
⑶ そして、課徴金制度の趣旨及び目的に照らし、現実の経済的利得の有無や多寡によって、課徴金の算定対象が当然に左右されるものでないことは、前記⑵のとおりであり、原告コバシの≪事業者T≫に対する段ボールシートの売上額を課徴金の計算の基礎としたことについては、直ちに課徴金制度の趣旨及び目的に反するものということはできない。
これに対し、原告コバシは、上記のとおり、原告コバシに対する第1事件課徴金納付命令が適法でない旨を種々主張するところ、原告コバシが指摘する被告の法運用や独占禁止法の規定等は、いずれも課徴金の算定の問題とは適用場面が異なるか、その趣旨及び目的を異にするものであり、上記のとおり原告コバシが主張するところに沿った取扱いをすることが、前記の課徴金制度の趣旨及び目的に沿うものとはいえず、また、≪事業者T≫が原告コバシの100パーセント子会社であることを踏まえても、原告コバシの≪事業者T≫に対する段ボールシートの販売が実質的に同一企業内における加工部門への物資の移動と同視し得るなどの事情が存在したとまでは認められず、さらに、本件各事業者において、親会社が100パーセント子会社に対して販売する段ボール製品につき、本件各合意の対象から除外するとの明示的又は黙示的な共通認識を有していたことを示すような事情も認められないところであって、この点に関する原告コバシの主張は、いずれも採用することができない。
そして、原告コバシに対する第1事件課徴金納付命令については、本件審決による認定判断(別紙9「本件審決の認定判断」⑷イ(ア)、(イ))が、その課徴金額を含めて相当であるものと認めることができる。
9 以上によれば、本件審決中、原告らの各審判請求を棄却する部分(原告浅野段ボールについては、その審判請求を一部棄却する部分。主文3項の原告らに係る部分)については、その基礎となった事実を立証する実質的証拠があると認められ、また、その判断が違法不当であるとはいえないから、独占禁止法82条1項所定の取消事由があるものとは認められない。
10 よって、原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし、主文のとおり判決する。
令和5年10月20日
東京高等裁判所第3特別部
裁判長裁判官 相 澤 哲
裁判官 増 田 𠮷 則
裁判官 篠 原 淳 一
裁判官 富 岡 貴 美
裁判官宇田川公輔は転補につき、署名押印することができない。
裁判長裁判官 相 澤 哲
別紙1 当事者目録
東京都中央区京橋1丁目4番13号
原 告 コバシ株式会社
(以下「原告コバシ」という。)
同代表者代表取締役 《 氏名略 》
静岡市駿河区聖一色658番地の1
原 告 大万紙業株式会社
(以下「原告大万紙業」という。)
同代表者代表取締役 《 氏名略 》
新潟県三島郡出雲崎町大字小木318番地8
原 告 吉沢工業株式会社
(以下「原告吉沢工業」という。)
同代表者代表取締役 《 氏名略 》
静岡市葵区新間1089番地の733
原 告 福原紙器株式会社
(以下「原告福原紙器」という。)
同代表者代表取締役 《 氏名略 》
愛知県みよし市福谷町蟹畑1番地
原 告 浅野段ボール株式会社
(以下「原告浅野段ボール」という。)
同代表者代表取締役 《 氏名略 》
岩手県奥州市水沢字多賀6番地の5
原 告 鎌田段ボール工業株式会社
(以下「原告鎌田段ボール工業」という。)
同代表者代表取締役 《 E 》
東京都北区赤羽北一丁目16番3号
原 告 興亜紙業株式会社
(以下「原告興亜紙業」という。)
同代表者代表取締役 《 氏名略 》
原告ら訴訟代理人弁護士 西 村 泰 夫
同 橋 本 隼 人
東京都千代田区霞が関一丁目1番1号
被 告 公正取引委員会
同代表者委員長 古 谷 一 之
同指定代理人 宮 本 信 彦
同 榎 本 勤 也
同 小 野 隆 史
同 齋 藤 みずえ
同 岩 丸 華 子
同 小 室 尚 彦
以上
注釈 《 》部分は、公正取引委員会事務総局において原文に匿名化等の処理をしたものである。