公正取引委員会審決等データベース

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熊本県漁業協同組合連合会に対する件

審査規則22条1項

令和4年(査)第4号

審査官の処分に対する異議申立てに関する決定

熊本市西区中原町656番地
異議申立人    熊本県漁業協同組合連合会
同代表者代表理事  ≪A1≫
同代理人弁護士  平 山 賢太郎

令和4年(査)第4号熊本県漁業協同組合連合会に対する件(以下「本件審査事件」という。)について、異議申立人から、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第47条第1項及び同条第2項の規定に基づく審査官の処分に対し、公正取引委員会の審査に関する規則(以下「審査規則」という。)第22条第1項の規定に基づく異議の申立てがあったので、当委員会は、次のとおり決定する。

主文
本件異議の申立てを却下する。

理由
1 本件審査事件に関し、令和5年6月29日、公正取引委員会審査官≪氏名略≫が異議申立人に対して行った報告命令(同月30日に送達。以下「本件報告命令」という。)に基づき、異議申立人が、同年7月11日付け報告書(同月18日到達。以下「本件報告書」という。)をもってした回答について、審査官は、同年10月3日ないし5日、異議申立人に対し、架電又は電子メールにより、報告事項にして合計6項目の回答につき、資料の添付又は回答の訂正を要請した(以下、これら一連の要請を「本件要請」という。)ところ、同月12日、異議申立人から、当委員会に対し、審査規則第22条第1項の規定に基づき、別添上申書のとおり異議の申立てがなされた。
2 異議申立人は、本件要請につき、審査官は提出されてから3か月近くが経過している本件報告書の内容を十分に精査してきたものである以上、同報告書における回答の訂正の要求は一度にまとめて行えば足り、これが可能であるにもかかわらず、審査官は訂正の要求を殊更多数回に分割して、本件要請を連日にわたって執拗に敢行したものであり、このような対応は審査官による誠実な業務遂行とは評価できず、異議申立人を疲弊させ混乱に陥れようとする戦略的行動というほかないとした上で、報告命令制度(独占禁止法第47条第1項第1号)は、同制度があることを奇貨として関係人等の業務を混乱に陥れることを許すものではないから、本件報告命令は独占禁止法第47条に違反する旨主張する。
3(1) しかしながら、独占禁止法第47条第1項及び同条第2項の規定に基づく審査官の「処分」に対する異議の申立てについて、審査規則第22条第1項は、「処分を受けた者は、・・・処分を受けた日から一週間以内に・・・異議の申立てをすることができる。」と規定するところ、本件異議の申立ての対象とされている「処分」、すなわち、本件報告命令は、令和5年6月30日に行われたものであるから、同年10月12日になされた本件異議の申立ては、「処分を受けた日から一週間以内」に申し立てられたものではない。
したがって、本件異議の申立ては、不適法であることが明らかである。
なお、同月3日ないし5日に行われた審査官からの本件要請は、本件報告命令と別個に報告すべき事項の範囲を新たに確定するような処分性を有するものではなく、異議申立ての対象となる本件報告命令とは別の「処分」には当たらないから、本件要請が行われた時点(例えば最後に要請が行われた同月5日)を異議申立期間の起算点として、本件異議の申立ての適否を検討する余地もない。
(2) また、本件要請についていえば、審査官による連続する3日間にわたる訂正等の要請があったからといって、これが遡って、本件報告命令が独占禁止法第47条に違反することを基礎付けることになるものでもない。
4 以上のとおり、異議申立人による本件異議の申立ては不適法であり、かつ、その理由もないので、主文のとおり決定する。

令和5年10月30日

公正取引委員会

別添

上申書

令和5年10月11日

公正取引委員会御中

熊本県漁業協同組合連合会
平山法律事務所
電話  ≪番号略≫
FAX ≪番号略≫
代理人弁護士 平山 賢太郎

独占禁止法47条1項1号に規定する処分に対する異議の申立て

当職は、上記の者の代理人として、審査官が独占禁止法47条2項の規定に基づいてした同条1項1号に規定する報告命令に対して、別紙のとおり、公正取引委員会の審査に関する規則22条1項の規定に基づき異議を申し立てます。

別紙

熊本県漁業協同組合連合会は貴会の令和4年(査)第4号事件について、佐賀県有明海漁業協同組合は貴会の令和4年(査)第5号事件について、それぞれ審査を受けておりますところ、両会はそれぞれ、貴会の審査に対して誠実に協力し貴会に真相を解明していただくことをその対応方針としております。

貴会審査官は、令和5年6月29日付け報告命令書により申立人に対して同命令書様式記載の事項について報告を命じ、申立人は、同年7月11日付け報告書を提出しました。その後、貴会審査官は同年10月3日付け架電及び電子メールによって、さらに同月4日付電子メールおよび同月5日付電子メールによって、申立人に対して連日、多数回にわたって当該報告書の訂正等を求めています。
申立人は貴会による審査に誠実に協力しようとしているにもかかわらず、貴会審査官は連日、多数回にわたって要求行為を重ねることによって申立人事務局の業務を混乱させ、申立人事務局職員を疲弊させています。
当該報告書はすでに提出されてから3か月近く経過しており、貴会審査官はその内容について十分に時間をかけて精査してきた以上、上記要求行為は一度にまとめて行えば足りるものであり、これは当然に可能なことです。それにもかかわらず貴会審査官が当該要求行為をことさら多数回、連日にわたって分割して執拗に敢行していることは、誠実な審査業務の遂行によるものと評価することができず、むしろ、ことさら申立人を疲弊させ混乱に陥れようとする戦略的行動であるというほかありません。

報告命令制度は、貴会が事件について必要な調査をするべく、事業者等に対して必要な事実の報告を求めるために設けられた制度であって、当該制度のあることを奇貨としてこれを梃子として用い関係人等の業務を混乱に陥れることを許す制度ではありません。
上記報告命令は、「公正取引委員会は、事件について必要な調査をするため、次に掲げる処分をすることができる」と定める独占禁止法47条に違反しますので、本書をもって異議を申し立てます。

なお、申立人は、当該報告命令が合法なものであることが異議申立て、裁決取消の訴え等を経て確認された場合には報告を行いたいと考えており、報告をすでに準備していますので、その旨申し添えます。
以 上


注釈 《 》部分は、公正取引委員会事務総局において原文に匿名化等の処理をしたものである。

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