公正取引委員会審決等データベース

文字サイズの変更

背景色の変更

本文表示content

独立行政法人国立印刷局が発注する再生巻取用紙の入札参加業者らに対する件

独禁法3条後段

令和06年(措)第2号

排除措置命令

東京都千代田区神田駿河台四丁目6番地
日本紙通商株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》

東京都中央区明石町6番24号
国際紙パルプ商事株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》

公正取引委員会は、上記の者らに対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。

主    文
1  日本紙通商株式会社(以下「日本紙通商」という。)及び国際紙パルプ商事株式会社(以下「国際紙パルプ商事」という。)の2社(以下「2社」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
⑴ 独立行政法人国立印刷局(以下「国立印刷局」という。)が一般競争入札の方法により発注する別紙記載の再生巻取用紙(以下「一般競争入札の方法により発注する再生巻取用紙」という。)について、2社、日本紙パルプ商事株式会社(以下「日本紙パルプ商事」という。)及びKPPグループホールディングス株式会社(以下「KPPグループホールディングス」という。)の4社(以下「4社」という。)が、遅くとも平成29年6月5日以降(KPPグループホールディングスにあっては令和4年9月30日までの間、国際紙パルプ商事にあっては同年10月1日以降)共同して行っていた、受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定し、受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
⑵ 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、国立印刷局が一般競争入札の方法により発注する再生巻取用紙について、受注予定者を決定せず、自主的に受注活動を行うこと。
2  2社は、それぞれ、前項に基づいて採った措置を、相互に通知するとともに、国立印刷局に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3  2社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、国立印刷局が一般競争入札の方法により発注する再生巻取用紙について、受注予定者を決定してはならない。
4  2社は、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
⑴ 官公需の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の自社の従業員に対する周知徹底
⑵ 官公需の受注に関する独占禁止法の遵守についての、官公需の営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査
5  2社は、それぞれ、第1項、第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

理    由
第1 事実
1 関連事実
⑴  名宛人等の概要
ア 2社は、それぞれ、肩書地に本店を置き、紙・紙製品卸売業を営む者である。
なお、2社のうち国際紙パルプ商事は、令和4年10月1日、商号を、国際紙パルプ商事分割準備株式会社から現商号に変更し、同日、名宛人以外のKPPグループホールディングスから、吸収分割により、紙・紙製品卸売業の全部を承継した者である。
イ 名宛人以外の日本紙パルプ商事は、東京都中央区勝どき三丁目12番1号フォアフロントタワーに本店を置き、紙・紙製品卸売業を営む者である。
ウ KPPグループホールディングスは、東京都中央区明石町6番24号に本店を置き、紙・紙製品卸売業を営んでいた者である。
なお、KPPグループホールディングスは、令和4年10月1日、商号を、国際紙パルプ商事株式会社から現商号に変更し、前記のとおり、国際紙パルプ商事に対し、吸収分割により、紙・紙製品卸売業の全部を承継させ、同日以降、紙・紙製品卸売業を営んでいない。
⑵  再生巻取用紙の発注方法等
ア 国立印刷局は、独立行政法人国立印刷局法(平成14年法律第41号)の規定に基づき、平成15年4月1日に設立された組織であり、東京都港区に主たる事務所を置き、官報の編集、印刷及び普及を行っていた。
イ 国立印刷局は、別紙記載の再生巻取用紙を一般競争入札等の方法により発注していた。
ウ 前記イに係る一般競争入札には、遅くとも平成29年6月5日以降、日本紙通商、日本紙パルプ商事、KPPグループホールディングス等が参加していた。
2  合意及び実施方法
4社は、遅くとも平成29年6月5日以降(KPPグループホールディングスにあっては令和4年9月30日までの間、国際紙パルプ商事にあっては同年10月1日以降)、国立印刷局が一般競争入札の方法により発注する再生巻取用紙について、自社の利益の確保を図るため
⑴ア 受注予定者を決定する
イ 受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に
⑵ア あらかじめ定められた順番により受注予定者を決定する
イ 受注予定者が提示する入札価格は、受注予定者が定め、受注予定者以外の者は、受注予定者が定めた価格で受注できるよう、受注予定者が定めた価格を上回る入札価格を提示して協力する
ことにより、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。
3 実施状況
4社は、前記2により、国立印刷局が一般競争入札の方法により発注する再生巻取用紙の全てを受注していた。
4 前記2の行為の取りやめ
⑴  KPPグループホールディングスは、前記1⑴ウのとおり、令和4年10月1日、吸収分割により、紙・紙製品卸売業の全部を国際紙パルプ商事に承継させた。当該吸収分割に伴い、国際紙パルプ商事がKPPグループホールディングスに替わって前記2⑴の合意に参加したことから、KPPグループホールディングスは、同日以降、同合意に参加していない。
⑵  令和5年4月11日、本件について、公正取引委員会が独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行ったところ、同日以降、前記2⑴の合意に基づき受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにする行為は取りやめられている。
第2  法令の適用
前記事実によれば、4社は、共同して、国立印刷局が一般競争入札の方法により発注する再生巻取用紙について、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、国立印刷局が一般競争入札の方法により発注する再生巻取用紙の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、2社は、いずれも、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が長期間にわたって行われていたこと、違反行為の取りやめが公正取引委員会の立入検査を契機としたものであること等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、2社に対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。

令和6年3月14日

委員長 古  谷  一  之
委 員 三  村  晶  子
委 員 青  木  玲  子
委 員 𠮷  田  安  志
委 員 泉  水  文  雄

ページトップへ

ページトップへ