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独禁法3条後段
令和06年(措)第3号
兵庫県三木市別所町東這󠄀田722番地の47
株式会社スターエム
同代表者 代表取締役 《氏名》
兵庫県加古川市神野町西条790番地の1
大西工業株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》
公正取引委員会は、上記の者らに対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。
なお、主文、理由、別紙1及び別紙2中の用語のうち、別紙2「用語」欄に掲げるものの定義は、別紙2「定義」欄に記載のとおりである。
主 文
1 株式会社スターエム(以下「スターエム」という。)及び大西工業株式会社(以下「大西工業」という。)の2社(以下「2社」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
⑴ 別紙1記載の木工用ドリル(以下「特定木工用ドリル」という。)について、2社が遅くとも令和元年9月26日までに及び遅くとも令和4年10月7日までに共同して行った、仕切価格を引き上げる旨の各合意が消滅していることを確認すること。
⑵ 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、自社が製造販売する特定木工用ドリル及びその同等品の販売価格を決定せず、自主的に決めること。
⑶ 今後、相互に、又は他の事業者と、自社が製造販売する特定木工用ドリル及びその同等品の販売価格に関する情報交換を行わないこと。
2 2社は、それぞれ、前項に基づいて採った措置を、相互に通知するとともに、自社の取引先である特定木工用ドリルの販売業者(以下単に「販売業者」という。)に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 2社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、自社が製造販売する特定木工用ドリル及びその同等品の販売価格を決定してはならない。
4 2社は、今後、それぞれ、相互に、又は他の事業者と、自社が製造販売する特定木工用ドリル及びその同等品の販売価格に関する情報交換を行ってはならない。
5 2社は、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前2項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
⑴ 木工用ドリルの販売活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成並びに自社の役員及び従業員に対する周知徹底
⑵ 木工用ドリルの販売活動に関する独占禁止法の遵守についての、当該販売活動に従事する自社の役員及び従業員に対する定期的な研修
6 2社は、それぞれ、第1項、第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
理 由
第1 事実
1 関連事実
⑴ 名宛人の概要
2社は、それぞれ、肩書地に本店を置き、木工用ドリルの製造販売に係る事業を営む者である。
⑵ 木工用ドリルの取引形態等
ア スターエムは、販売業者に対し、木工用ドリルを直接販売していた。
イ 大西工業は、販売業者等に対し、木工用ドリルを直接販売していた。
ウ 2社は、それぞれ、特定木工用ドリルの仕切価格を定め、これを改定する際には、新たな仕切価格を掲載した価格表等を販売業者に配布するなどしていた。
エ 2社の特定木工用ドリルの販売金額の合計は、我が国における特定木工用ドリル及びその同等品の総販売金額の大部分を占めていた。
2 合意の成立
⑴ 2社は、かねてから、木工用ドリルの販売価格等について情報交換を行っていたところ、木工用ドリルの原材料である鋼材等の価格が上昇していたことから、自社の利益の確保を図るため、遅くとも令和元年9月26日までに、2社の役員級及び営業責任者級の者による会合を開催するなどして、スターエムにあっては令和2年4月1日受注分から、大西工業にあっては同年6月1日受注分から、特定木工用ドリルの仕切価格を現行価格から12パーセントを目途に引き上げることを合意した。
⑵ 2社は、その後も木工用ドリルの原材料である鋼材等の価格が引き続き上昇していたことから、自社の利益の確保を図るため、遅くとも令和4年10月7日までに、2社の役員級及び営業責任者級の者による会合を開催するなどして、スターエムにあっては令和5年4月1日受注分から、大西工業にあっては遅くとも同年6月1日受注分から、特定木工用ドリルの仕切価格を現行価格から10パーセントを目途に引き上げることを合意した。
3 実施状況
⑴ 2社は、前記2の合意に基づき、それぞれ、新たな仕切価格を設定した上で、販売業者に対し、新たな仕切価格を掲載した価格表等を配布するなどして仕切価格の引上げを通知し、特定木工用ドリルの仕切価格を引き上げた。
⑵ 2社は、前記2の合意の実効を確保するため、特定木工用ドリルの仕切価格の引上げを販売業者に通知する時期等について、情報交換を行うなどしていた。
4 合意の消滅
令和5年9月5日、本件について、公正取引委員会が独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行ったところ、同日以降、前記2の合意に基づく行為は取りやめられている。このため、同日以降、同合意は事実上消滅しているものと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば、2社は、共同して、特定木工用ドリルの仕切価格を引き上げる旨を合意することにより、公共の利益に反して、特定木工用ドリル及びその同等品の販売分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、2社については、いずれも、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が長期間にわたって行われていたこと、違反行為の取りやめが公正取引委員会の立入検査を契機としたものであること等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、2社に対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。
令和6年3月28日
委員長 古 谷 一 之
委 員 三 村 晶 子
委 員 青 木 玲 子
委 員 𠮷 田 安 志
委 員 泉 水 文 雄