公正取引委員会審決等データベース

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青森市が発注する新型コロナウイルス感染症患者移送業務の入札参加業者らに対する件

独禁法3条後段

令和06年(措)第7号

排除措置命令

東京都墨田区押上一丁目1番2号
東武トップツアーズ株式会社
同代表者 代表取締役 ≪氏名≫

仙台市青葉区中央四丁目7番22号
株式会社日本旅行東北
同代表者 代表取締役 ≪氏名≫

名古屋市中村区名駅南二丁目14番19号
名鉄観光サービス株式会社
同代表者 代表取締役 ≪氏名≫

東京都品川区東品川二丁目3番11号
株式会社JTB
同代表者 代表取締役 ≪氏名≫

公正取引委員会は、上記の者らに対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。
なお、主文及び理由中の用語のうち、別紙「用語」欄に掲げるものの定義は、別紙「定義」欄に記載のとおりである。

主    文
1  東武トップツアーズ株式会社(以下「東武トップツアーズ」という。)、株式会社日本旅行東北(以下「日本旅行東北」という。)、名鉄観光サービス株式会社及び株式会社JTB(以下「JTB」という。)の4社(以下「4社」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
(1) 青森市が指名競争入札の方法により発注する新型コロナウイルス感染症患者移送業務(以下「特定移送業務」という。)について、4社及び近畿日本ツーリスト株式会社(以下「近畿日本ツーリスト」という。)の5社(以下「5社」という。)が、令和4年4月6日に共同して行った、以下の合意が消滅していることを確認すること。
ア 受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定し、受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるように協力すること
イ 受注予定者は、受注予定者以外の者に受注した当該業務の一部を委託すること
(2) 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、青森市が発注する新型コロナウイルス感染症患者移送業務について、受注予定者を決定せず、各社がそれぞれ自主的に受注活動を行うこと。
2  4社は、それぞれ、前項に基づいて採った措置を、自社を除く3社及び青森市に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3  4社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、青森市が発注する新型コロナウイルス感染症患者移送業務について、受注予定者を決定してはならない。
4  4社は、今後、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1)  官公需の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成又は改定及び自社の従業員に対する周知徹底(東武トップツアーズにあっては当該行動指針の自社の従業員に対する周知徹底)
(2)  官公需の受注に関する独占禁止法の遵守についての、青森市が発注する委託業務の営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査
5  4社は、それぞれ、第1項、第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

理    由
第1 事実
1 関連事実
⑴ 名宛人等の概要
ア 4社は、それぞれ、肩書地に本店を置き、旅行業法(昭和27年法律第239号)の規定に基づき観光庁長官の行う登録を受けて、青森市の区域において旅行業を営む者である。
イ 名宛人以外の近畿日本ツーリストは、東京都新宿区西新宿二丁目6番1号に本店を置き、旅行業法の規定に基づき観光庁長官の行う登録を受けて、青森市の区域において旅行業を営む者である。
⑵ 特定移送業務の発注方法等
ア 青森市は、令和4年3月1日から同月31日までの間及び同年4月1日から同月30日までの間を委託期間とする新型コロナウイルス感染症患者移送業務について、それぞれ、5社の従業員が委員長又は副委員長を務めていた一般社団法人日本旅行業協会東北支部青森県地区委員会に対し、随意契約の方法により発注していた。
イ 5社は、一般社団法人日本旅行業協会東北支部青森県地区委員会が受注した前記アの新型コロナウイルス感染症患者移送業務を共同で実施し、当該業務の利益を5社間で分配していた。
ウ(ア)  青森市は、委託期間の始期を令和4年5月1日以降とする新型コロナウイルス感染症患者移送業務については、指名競争入札の方法により発注していた。
(イ)  青森市は、競争入札に参加する者に必要な資格(以下「参加資格」という。)を定め、業務の種類別に、参加資格を有する事業者(以下「有資格者」という。)を名簿に登録していた。
(ウ) 青森市は、特定移送業務について、「企画製作等業務」の業種のうち「旅行等企画運営業務」の部門又は「運搬・配布等業務」の業種のうち「送迎バス運行業務」の部門の有資格者の中から入札の参加者を指名していた。
(エ) 近畿日本ツーリスト、日本旅行東北及びJTBの3社は、いずれも、令和4年4月1日以降、「企画製作等業務」の業種のうち「旅行等企画運営業務」の部門の有資格者であった。
2 合意の成立
⑴ 5社は、青森市が、令和4年4月1日に、前記1⑵ウ(ウ)の部門の有資格者に対し、同年5月1日から同年8月31日までを委託期間とする新型コロナウイルス感染症患者移送業務に係る対応の可否について照会したことなどから、委託期間の始期を同年5月1日以降とする当該業務について、同市が競争入札の方法による発注を検討していることを把握した。
⑵ 5社は、令和4年4月1日以降、各社の支店長級の者が電話連絡等の方法により協議を重ね、同月6日、各社の支店長級の者が電子メールで連絡する方法により、特定移送業務について、前記1⑵イと同様に、引き続き、5社間で利益を分配するため
ア 受注予定者を決定し、受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるように協力すること
イ 受注予定者は、受注予定者以外の者に受注した当該業務の一部を委託すること
を合意した。
3 実施状況
5社は、前記2⑵の合意に基づき、次のとおり、特定移送業務について、受注予定者を決定するとともに受注予定者が受注できるようにし、受注予定者は、受注予定者以外の者に受注した当該業務の一部を委託し、当該業務の利益を分配していた。
⑴ 青森市から新型コロナウイルス感染症患者移送業務に係る対応の可否についての照会や特定移送業務の入札の参加に係る指名を受けた場合には、その情報を5社で共有した。
⑵ 近畿日本ツーリストを受注予定者とした。
⑶ 近畿日本ツーリストが提示する入札価格は、5社間の協議を経るなどして同社が定めた。
⑷ 日本旅行東北及びJTBが提示する入札価格は、5社間の協議を経るなどして近畿日本ツーリストが定め、日本旅行東北及びJTBは、近畿日本ツーリストが連絡した入札価格を提示した。
⑸ 近畿日本ツーリストは、特定移送業務の全てを受注し、4社に対し、受注した当該業務の一部を委託して利益を分配した。
4 合意の消滅
令和5年5月8日、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)における新型コロナウイルス感染症の位置付けが、新型インフルエンザ等感染症から五類感染症となり、同日以降、青森市は、新型コロナウイルス感染症患者移送業務の委託を行わなくなった。このため、同日以降、前記2⑵の合意は事実上消滅しているものと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば、5社は、共同して、特定移送業務について、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすること及び受注予定者は、受注予定者以外の者に受注した当該業務の一部を委託することを合意することにより、公共の利益に反して、特定移送業務の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、4社については、いずれも、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が自主的に取りやめられたものではないこと等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、4社に対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。

令和6年5月30日

委員長 古  谷  一  之
委 員 三  村  晶  子
委 員 青  木  玲  子
委 員 𠮷  田  安  志
委 員 泉  水  文  雄

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