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(株)トーモクほか3名による審決取消請求事件

独禁法3条後段、独禁法7条の2

令和3年(行ケ)第11号

判決

令和6年5月31日

東京都千代田区丸の内2丁目2番2号
原告  株式会社トーモク
   (以下「原告トーモク」という。)
同代表者代表取締役  ≪ 氏名略 ≫
静岡県島田市中河1001番地
原告  大一コンテナー株式会社
   (以下「原告大一コンテナー」という。)
同代表者代表取締役  ≪ 氏名略 ≫
埼玉県加須市北大桑516番1
原告  株式会社トーシンパッケージ
   (以下「原告トーシンパッケージ」という。)
同代表者代表取締役  ≪ 氏名略 ≫
静岡県浜松市南区倉松町2600番地
原告  遠州紙工業株式会社
   (以下「原告遠州紙工業」といい、原告ら4社を「原告ら」ともいう。)
同代表者代表取締役  ≪ 氏名略 ≫
原告ら訴訟代理人弁護士  中 野 雄 介
同            臼 杵 善 治
同            塩 越   希
同            小 坂   惇
同            髙 橋 将 希
東京都千代田区霞が関1丁目1番1号
被告  公正取引委員会
同代表者委員長  古 谷 一 之
同指定代理人   別紙指定代理人目録記載のとおり

主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由
第1 請求の趣旨
被告が、原告らに対する公正取引委員会平成26年(判)第3号ないし第138号排除措置命令審判事件及び課徴金納付命令審判事件について、令和3年2月8日付けで原告らに対してした審決のうち、主文第3項の原告らに対する部分をいずれも取り消す。
第2 事案の概要等
本件に適用される私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成25年法律第100号による改正前のもの。以下「独禁法」という。)の主たる条文は別紙「独禁法の条文」に、同法施行令(平成27年政令第15号による改正前のもの。以下「独禁法施行令」という。)の主たる条文は別紙「独禁法施行令の条文」にそれぞれ記載のとおりである。なお、本文中の本件に特有な用語については、別紙「用語一覧表」に記載のとおりである。
1 事案の概要
⑴ 原告らは、いずれもコルゲータと呼ばれる段ボール製造機でダンボールを製造する業者である(以下、原告らに関連して登場する会社については、別紙を除き、株式会社の表記は省略する。)。
⑵ 被告は、原告らを含むダンボールを製造する業者は、共同して、特定段ボールケース及び特定段ボールシートの販売価格を引き上げる旨の合意(それぞれ「本件シート合意」「本件ケース合意」と、両合意を併せて「本件各合意」という。)をすることにより、公共の利益に反して、上記段ボールの販売分野(東日本全体の1つの市場)において競争を実質的に制限したものであり、これは、独禁法2条6項所定の「不当な取引制限」に該当し、同法3条に反するものであるとして、特定段ボールシートに関する不当な取引制限に係る事件(以下「第1事件」という。)及び特定段ボールケースに関する不当な取引制限に係る事件(以下「第2事件」という。)につき、原告らに対し、排除措置命令及び課徴金納付命令を発した(第1事件に係る排除措置命令(公正取引委員会平成26年(措)第11号。以下「第1事件排除措置命令」という。)は別紙1に、第2事件に係る排除措置命令(公正取引委員会平成26年(措)第12号。以下「第2事件排除措置命令」という。)は別紙2に、第1事件に係る課徴金納付命令(以下「第1事件課徴金納付命令」という。)は別紙3(ただし、原告らに関する部分)に、第2事件に係る課徴金納付命令(以下「第2事件課徴金納付命令」という。)は別紙4(ただし、原告らに関する部分)に各記載のとおりであり、第1事件及び第2事件に係る違反行為を「本件各違反行為」という。また、以下、第1事件排除措置命令及び第2事件排除措置命令を「本件各排除措置命令」と、第1事件課徴金納付命令及び第2事件課徴金納付命令を「本件各課徴金納付命令」という。)。
これに対し、原告らは、被告に対し、本件各排除措置命令及び本件各課徴金納付命令の取消しを求めて審判請求をしたが、これをいずれも棄却された(本件審決。本件審決に引用されている審決案の部分を含む。以下同じ。)。そこで、原告らは、本件審決の取消しを求めて東京高等裁判所(独禁法85条1号)に本件訴えを提起した。
⑶ 本件は、原告らが、被告が原告らに対してした本件各排除措置命令及び本件各課徴金納付命令を取り消すよう求めた審判請求を棄却した本件審決には、審決の基礎となった事実を立証する実質的な証拠がない場合(独禁法82条1項1号)、又は法令に違反する場合(同項2号)に当たる旨主張して、被告に対し、本件審決の取消しを求める事案である。
2 前提事実
争いがない事実、被告が本件審決において証拠により認めた事実で、かつ、原告らも実質的な証拠の欠缺を主張していない事実、本件審判事件記録及び本件訴訟記録上明らかな事実は、次のとおりである。
⑴ 原告ら(段ボール製品の製造業者)
段ボール製品の製造業者(以下「段ボールメーカー」という。)は、段ボール原紙又は段ボールシートの調達方法により、①段ボール原紙、段ボールシート及び段ボールケースのいずれも製造する事業者(以下「一貫メーカー」という。)、②段ボール原紙の製造業者(以下「原紙メーカー」という。)から段ボール原紙を購入して段ボールシート及び段ボールケースを製造する事業者(以下「専業メーカー」という。)及び③コルゲータを保有せず、上記①又は②の事業者から段ボールシートを購入して段ボールケースを製造する事業者(以下「ボックスメーカー」という。)に大別される。主な原紙メーカーには、レンゴー、王子板紙、大王製紙、≪事業者A≫、≪事業者B≫等があるところ、レンゴー及び王子板紙とグループ関係にある王子コンテナーが一貫メーカーに位置付けられ、原告らは、いずれも専業メーカーに当たるものであった。(査251、300、490)
原告トーモクは、原告大一コンテナー及び原告トーシンパッケージの親会社である(ただし、原告トーモクが、原告大一コンテナーを子会社とした時期は平成24年3月である。)。
原告らは、いずれも、コルゲータと呼ばれる段ボール製造機を有する段ボールメーカーであり、段ボール原紙を加工して段ボールシートを製造するとともに、段ボールシートを加工して箱型に組立可能にした段ボールケースの製造を業として営む者である。(査3、27、28)。
⑵ 東日本段ボール工業組合、三木会・支部、本部役員会社、5社会
東日本段ボール工業組合(以下「東段工」という。)は、定款上、東日本地区において、コルゲータを有し、段ボール製品(段ボールシート又は段ボールケース。以下同じ。)の生産の事業を営むことを組合員の資格要件とする組合である。東段工は、全国段ボール工業組合連合会(以下「全段連」という。)の会員であり、全段連には、東段工の他、中日本段ボール工業組合、西日本段ボール工業組合及び南日本段ボール工業組合が存在した。(査478、480ないし483)
東段工には、その最高の意思決定機関である総会及び業務の執行を決定する機関である理事会が置かれているほか、理事会の下に三木会が置かれていた。東段工は、各都道府県に工場等の事業所を持つ組合員らにより構成されていた。
また、東段工には、別紙5に記載のとおり、東京・山梨支部、神奈川支部、埼玉支部、千葉・茨城支部、群馬・栃木支部、静岡支部、新潟・長野支部、東北支部及び北海道支部の合計9支部が置かれており、これらの支部は、「地区」欄記載の都道府県に工場等の事業所を有する組合員らにより構成されたていたものであり、本件当時(レンゴーにより段ボール製品の値上げの公表がされた平成23年8月26日から公取委の立入検査が行われた平成24年6月5日までの時期をおおむね指す。以下同じ。)は、「構成員」欄記載の各組合員が当該支部に所属していたところ、支部開催の会合は、主に当該地区に所在する工場等の事業所における営業責任者(工場長又は事業所長等)を構成員として開催され(ただし、代表取締役又は営業担当の取締役、部長もしくは課長等が出席していた事業者もいた。以下「営業責任者」という場合、これらの者を指す。)、上記構成員のうち「支部長(所属会社)」欄記載の者らがそれぞれ当該支部の支部長を務めていた。支部主催の会合その他支部所属の組合員の担当者の主な構成員とする会合(以下「支部会等」という。)の開催については、別紙6に記載のとおりである。
三木会は、その規約上、東段工組合員の地位向上のため、全段連及び東段工理事会決議事項の伝達、組合員に共通する課題に関する情報又は資料の提供等を目的として理事会の下に置かれた組織であり、会長や幹事長、副幹事長、各支部の支部長などの委員で構成される集まりであった。三木会は、平成23年当時、レンゴー並びにセッツカートン及び大和紙器以外に、原告トーモク、王子チヨダコンテナー(王子コンテナー)、森紙業、ダイナパック、日本トーカンパッケージ、大王製紙パッケージ及び福野段ボール工業の10社(本部役員会社)の役員等によって構成されていた。
三木会は、原則として毎月開催されることとされていた。
本部役員会社のうち、大手5社は、東段工の会合である三木会とは別に、主に各社の営業本部長級の者らを出席者とする5社会という非公式の会合を開催していた。(査134、137、470、478、479、483ないし486)
⑶ 特定段ボールシート及び特定段ボールケース
原告らは、購入価格等の取引条件の交渉担当部署が東日本地区に所在する需要者(ユーザー)に販売される特定段ボールシート及び特定段ボールケースを製造していた。(争いがない事実)
⑷ 被告による立入検査
被告は、平成24年6月5日、本件各違反行為に関し、埼玉県、群馬県、栃木県等に所在する段ボールメーカーが共同して段ボール製品の販売価格を決定しているという疑いで、独禁法47条1項4号の規定に基づき、立入検査を行った。また、被告は、平成24年9月19日、本件各違反行為及び関連事件の違反行為に関し、独禁法47条1項4号の規定に基づき、立入検査を行った。
⑸ 第1事件
被告は、特定段ボールシートの販売に係る第1事件につき、原告らを含む32社(別紙1の番号1ないし4、8、10、12、15、17、25ないし29、31ないし33、36、40、42ないし54)が、その他25社(別紙1の番号5ないし7、9、11、13、14、16、18ないし24、30、34、35、37ないし39、41、55ないし57)と共同して(合計57社)、特定段ボールシートの販売価格を引き上げる合意(本件シート合意)をすることにより、公共の利益に反して、特定段ボールシートの販売分野における競争を実質的に制限したものであって、この行為は、独禁法2条6項所定の不当な取引制限に該当し、同法3条に違反し、かつ、特に排除措置を命ずる必要があるとして、上記57社のうち、55社(同57社から別紙1の番号56及び57を除いた55社。原告らを含む。)に対し、平成26年6月19日付けで第1事件排除措置命令を発令し、上記55社のうち、48社(同55社から別紙1の番号35ないし41を除いた48社。原告らを含む。)に対し、同日付けで第1事件課徴金納付命令を発令した(原告らが納付を命じられた金額等は、別紙3に記載のとおりである。)。(本件審判事件記録上明らかな事実)
⑹ 第2事件
被告は、特定段ボールケースの販売に係る第2事件につき、原告らを含む37社(別紙2の番号1、2、4ないし6、8、11、13ないし15、18、20ないし22、25、29、30、32ないし34、38、41、43、44、48ないし60)が、その他26社(別紙2の番号3、7、9、10、12、16、17、19、23、24、26ないし28、31、35ないし37、39、40、42、45ないし47、61ないし63)と共同して(合計63社)、特定段ボールケースの販売価格を引き上げる合意(本件ケース合意)をすることにより、公共の利益に反して、特定段ボールケースの販売分野における競争を実質的に制限したものであって、この行為は、独禁法2条6項所定の不当な取引制限に該当し、同法3条に違反し、かつ、特に排除措置を命ずる必要があるとして、上記63社のうち、61社(同63社から別紙2の番号62及び63を除いた61社。原告らを含む。)に対し、平成26年6月19日付けで第2事件排除措置命令を発令し、上記61社のうち、60社(同61社から別紙2の番号47を除いた60社。原告らを含む。)に対し、同日付けで第2事件課徴金納付命令を発令した(原告らが納付を命じられた金額等は、別紙4に記載のとおりである。)。(本件審判事件記録上明らかな事実)
本件の各事業者は、上記の第1事件57社及び第2事件63社である(以下「本件各事業者」という。)。
⑺ 本件各排除措置命令及び本件各課徴金納付命令の送達、審判請求及び本件審決の送達
第1事件排除措置命令及び第1事件課徴金納付命令は、いずれも名宛人に送達されたところ、上記各名宛人のうち、原告らを含む32社は、被告に対し、第1事件排除措置命令の取消しを求めて、同32社のうち、原告らを含む30社は、被告に対し、第1事件課徴金納付命令の取消しを求めて審判請求をしたが、被告は、原告らに係る同審判請求をいずれも棄却する旨の審決をした(本件審決)。(本件審判記録上明らかな事実)
第2事件排除措置命令及び第2事件課徴金納付命令は、いずれも名宛人に送達されたところ、上記各名宛人のうち、原告らを含む37社は、被告に対し、第2事件排除措置命令及び第2事件課徴金納付命令の取消しを求めて審判請求したが、被告は、令和3年2月8日、原告らに係る同審判請求をいずれも棄却する旨の審決をした(本件審決)。
被告は、令和3年2月9日、本件審決に係る審決書謄本を原告らに送達した。(審判記録上明らかな事実)
⑻ 原告らは、令和3年3月10日、東京高等裁判所に本件審決の取消訴訟を提起した。(本件訴訟記録上明らかな事実)
⑼ 公正取引委員会平成26年(判)第139号ないし第142号審判事件(以下「関連事件」という。)
被告は、レンゴー、原告トーモク及び日本トーカンパッケージの3社は、王子コンテナー及び森紙業と共同して特定ユーザー向け段ボールケース(関連事件の対象となった段ボールケース)の販売価格又は加工賃を引き上げる合意をすることにより、公共の利益に反して、特定ユーザー向け段ボールケースの取引分野における競争を実質的に制限したものであって、この行為は、独禁法2条6項に規定する不当な取引制限に該当し、同法3条に違反するものであり、かつ、特に排除措置を命ずる必要性があるとして、平成26年6月19日、レンゴー、原告トーモク及び王子コンテナーに対し、排除措置を命じるとともに、当該違反行為は、同法7条の2第1項1号に規定する商品又は役務の対価に係るものであるとして、同日、上記3社に対し、それぞれ課徴金の納付を命じた。上記命令書の送達を受けたレンゴー及び原告トーモクは、被告に対し、これらの命令の全部の取消しを求める審判請求をしたが、同審判請求はいずれも棄却された。(審判記録上明らかな事実)
3 争点
本件審決及び本件訴訟の争点は、次のとおりである。
⑴ 本件各合意の成否及びその内容(争点⑴)
⑵ 本件各合意による実質的な競争制限の有無等(争点⑵)
⑶ 本件各排除措置命令の必要性及び相当性の有無(争点⑶)
⑷ 本件各課徴金納付命令の適法性(争点⑷)
4 本件審決における認定事実及び判断
本件審決は、別紙7に記載のとおり事実を認定し、争点⑴ないし⑷につき、次のとおり判断した。
⑴ 本件各合意の成否及びその内容(争点⑴)について
段ボールメーカーの間で、段ボール原紙の値上がりに伴い、段ボール製品の値上げをする際には、レンゴー及び王子コンテナーが段ボール製品の値上げ幅を表明し、それ以外の段ボールメーカーは両社の示した値上げ幅を指標として値上げを実施していた。
また、従前から、段ボール製品の値上げが実施される際には、三木会及び支部の会合等において、出席各社の間で、こうした値上げの方針や進捗状況について情報交換が行われていた。
段ボールメーカーの間では、値上げに当たっては、各社が足並みを揃えて行うことが必要であると認識されており、値上げを実施する時期に値上げを実施しないで取引の拡大を狙うことは警戒されており、仮に、これを行った場合には、他の事業者等からの抗議活動が行われるなどして競争回避に向けた解決が図られる傾向があったほか、このような段ボール原紙の値上げに伴い段ボール製品の値上げを実施する時期には、東段工の三木会及び支部の会合において、出席した事業者の間で、各社の値上げの方針や値上げの進捗状況について情報交換がされてきたという従前からの慣行が存在した。
平成23年8月下旬頃に、レンゴーが段ボールシート1平方メートルにつき、8円以上、段ボールケースにつき13%以上という値上げの公表をし、他の段ボールメーカーにも協力を求め、同程度の値上げ幅で段ボール製品の値上げを実現するよう働き掛けた。
その後、王子コンテナーが、グループ内段ボール原紙の値上げとともに、段ボールシート及び段ボールケースにつき、それぞれ12%以上(段ボールシート1平方メートルにつき7円以上)の値上げをする旨公表した。
原告トーモクを初めとする大手の専業メーカーにおいても、社内のグループ内で段ボール製品の値上げを決定していた。
10月17日の三木会では、本部役員会社の多くがレンゴー及び王子コンテナーが公表した値上げ幅に沿った値上げ幅で値上げをすることを表明し、それ以外の本部役員会社や各支部の支部長等も値上げをすることを表明した。
出席各社の間で、段ボールシートの販売価格について、現行価格から1平方メートル当たり7円ないし8円以上、段ボールケースの販売価格について、現行価格から12%ないし13%以上引き上げることが確認され、相互に歩調を揃えながらこうした値上げを行うとの意思が形成され、その旨の意思の連絡が成立したものと認めるのが相当である。
平成23年10月19日の東京・山梨支部会、同月31日の静岡支部会、同年11月2日の埼玉支部会、同月9日の千葉・茨城支部会及び同月17日の神奈川支部会において、10月17日の三木会の経過が報告がされたほか、各支部等において、三木会での説明が明確にされなかった会合やそのような説明がされなかった会合があったとしても、前記の従前からの慣行に照らし、当該支部会等で値上げの表明をしていたレンゴーなどの大手の段ボールメーカーが東段工管内の他の支部においても段ボール製品の値上げを主導するなどして同様の情報交換がされていることを認識していたとみられる状況にあり、段ボール原紙の値上げに伴い、段ボール製品について足並みを揃えて値上げをすることは各事業者の共通認識であった。
以上によれば、本件支部会等に出席した事業者においては、当該会合で10月17日の三木会の報告がされていたか否かにかかわらず、当該支部を代表して三木会に出席していた支部長等又は三木会を構成する本部役員会社に所属する営業責任者等の促しにより、10月17日の三木会で確認されたところと同程度の値上げ幅で段ボール製品の値上げを実施することを出席各社の間で確認したことをもって、これらの者を介して、10月17日の三木会で成立した意思の連絡に参加したものと認めるのが相当である。
なお、群馬森紙業(第1事件及び第2事件事業者)は、平成23年11月14日の群馬・栃木支部会において、事業者間で相互に歩調を揃えながら値上げを行うことについて意思を連絡した。また、鎌田段ボール工業(第2事件事業者)は、遅くとも、10月17日の三木会を通じて上記意思の連絡に参加した。
以上のとおり、10月17日の三木会において、三木会に出席した第1事件11社については、本件シート合意が成立するとともに、三木会に出席した第2事件12社については、本件ケース合意が成立した。また、第1事件事業者45社(第1事件事業者57社から上記第1事件11社及び群馬森紙業を除いた会社)については、自社の営業責任者等が出席した支部会等において、本件シート合意と同内容の合意が成立した。そして、第2事件事業者49社(第2事件事業者63社のうち、第2事件三木会出席事業者12社並びに群馬森紙業及び鎌田段ボール工業を除いた会社)については、上記と同様に、自社の営業責任者等が出席した支部会等において、本件ケース合意と同内容の合意が成立した。このように、上記45社及び上記49社は、これらの成立した当該会合を通じて、10月17日の三木会で成立した本件各合意に参加したものと認められる。そして、群馬森紙業は、平成23年11月14日の群馬・栃木支部会を通じて、鎌田段ボール工業は、同月17日の三木会を通じて、本件ケース合意に参加したものと認められる。
本件各合意により、段ボール製品の販売価格について、本件各事業者の意思決定等がこれらに制約されることになるところ、実際に、本件各事業者において本件各合意を実行するため、その後に開催された三木会や支部会等において、出席各社との間で、値上げの進捗状況について情報交換が行われるとともに、個別のユーザーごとに入れ合いになっている事業者の間で、値上げの交渉状況について情報交換が行われるなどした結果、本件各事業者が、おおむね段ボール製品の値上げを実現したことに照らすと、本件各合意は、かかる段ボールの値上げについて本件各事業者の事業活動を拘束するものであったと認められる。
⑵ 争点⑵(本件各合意による実質的な競争制限の有無等)について
ア 独禁法2条6項にいう「一定の取引分野」とは、当該共同行為によって競争の実質的制限がもたらされる範囲をいうものであり、その成立する範囲は、当該共同行為が対象としている取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討して定まるものと解するのが相当である。
これを本件について見ると、東段工は、全段連を構成する4団体の1つにして、その管轄地域である東日本地区においてコルゲータを有する段ボールメーカーで構成される団体であり、三木会は、こうした東段工の理事会の下に置かれた組織として、主に東日本地区の全域又は広域において営業活動を行っている大手の段ボールメーカーからなる本部役員会社の営業統括者等及び管内の各支部を代表する支部長によって構成されていた。そして、本件各合意に基づく共同行為は、こうした本部役員会社を占める大手の段ボールメーカーが東段工内の地場の段ボールメーカーと協調しながら同管内全体で段ボール製品の値上げを実現するため、その主導により、東段工の組織である三木会及び支部会等を利用して行われた。これらのことからすると、本件各合意における情報交換の対象となった段ボール製品の値上げについて、その地理的な範囲に東段工の管轄地域である東日本地区が含まれることは明らかであるところ、これらの値上げ交渉が需要者の交渉担当部署の所在地を基準として、その範囲を画定すると、交渉担当部署が東日本地区に所在する需要者に対し、当該交渉担当部署との間で取り決めた取引条件に基づき販売される段ボール製品は、少なくとも本件各合意の対象に含まれるものであったと認められる。また、これらの事情に照らすと、本件各合意によって影響を受ける範囲も同様に解するのが相当である。
したがって、本件シート合意に係る一定の取引分野は、特定段ボールシートの販売分野(東日本全体の1つの市場)であり、本件ケース合意に係る一定の取引分野は、特定段ボールケースの販売分野(東日本全体の1つの市場)であると認めるのが相当である。
イ 独禁法2条6項が定める「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」とは、当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいい、共同して商品の販売価格を引き上げる旨の合意がされた場合には、その当事者である事業者らがその意思で、ある程度自由に当該商品の販売価格を左右できる状態をもたらすことをいうものと解される。そして、販売価格の引上げに係る合意により一定の取引分野における競争が実質的に制限されたか否かは、当該合意の当事者である事業者らのシェアの高さのみで判断するのでなく、上記の観点から、これらのシェアの高さに応じて、当該合意の当事者ではない他の事業者がどの程度価格引上げをけん制することができるか等の諸事情も考慮してこれを判断するのが相当である。
これを本件について見れば、特定段ボールシートについて、三木会に出席した第1事件11社が本件シート合意を成立させるとともに、特定段ボールケースについて、三木会に出席した第2事件12社が本件ケース合意を成立させたことをもって、いずれもその意思で、ある程度自由に販売価格を左右することができる状態をもたらしたと認めることができる。そして、本件各事業者のうち、その余の事業者らが後日本件各合意に順次参加したことにより、そのシェアは、第1事件11社による販売数量は東日本地区における段ボールシートの総出荷数量の約4割を占めているが、そのうち、4社(レンゴー、王子コンテナー、森紙業、大王製紙パッケージ)とグループ関係にある15社を加えた26社による販売数量は上記総出荷数量の約6割を占め、後日、本件シート合意に参加した46社を加えた第1事件事業者57社による販売数量は上記総出荷数量の約8割を占めている。また、第2事件12社による製造数量は、東日本地区において段ボールケースの原材料となった段ボールシートの総製造数量の約4割を占めるが、そのうち、上記15社を加えた27社による製造数量は上記総製造数量の約5割を占めており、本件ケース合意に参加した51社を加えた63社による製造数量は上記総製造数量の6割以上を占めている。
本件各合意に他の事業者が順次参加したことにより、そのシェアは特定段ボールシートについては8割を超えるものとなり、特定段ボールケースについては6割を超えるものとなるのであり、かかる市場支配は、強固なものとなったということでき、これらよれば、本件各合意は、一定の取引分野における競争を実質的に制限するものであることは明らかである。
⑶ 争点⑶(本件各排除措置命令の必要性及び相当性の有無)について
ア 排除措置命令の必要性の有無
独禁法7条2項は、違反行為が既になくなっている場合においても、「特に必要があると認めるとき」は、事業者に対し、当該違反行為が排除されることを確保するために必要な措置を命ずることができる旨規定しているところ、この「特に必要があると認めるとき」とは、排除措置を命じた時点では既に違反行為はなくなっているが、当該違反行為が繰り返されるおそれがある場合や、当該違反行為の結果が残存しており競争秩序の回復が不十分である場合などをいうものと解される。そして、その判断については、我が国における独禁法の運用機関として競争施策について専門的な知見を有する被告の専門的な裁量が認められる。
本件各違反行為について見ると、平成24年6月5日に被告が立入検査を行った(本件審決の認定事実7)時点以降は、本件各事業者において、特定段ボールシート及び特定段ボールケースの販売価格に関する情報交換は行われないことから、本件各合意は消滅したものと認められるが、本件の経過に照らすと、本件各事業者は、上記立入検査が行われるまで三木会及び各支部会等にいてこれらの情報交換を行っていたものであって、本件各違反行為を止めたのは、上記立入検査を受けたことを契機とするものであったと認められ、自発的な意思に基づくものではないとみられる。段ボールメーカーの間では、従前から段ボール製品について安値販売により取引拡大を図ることについては自粛すべきとされていたものとされていたほか、値上げの実施には、各事業者において足並みを揃えて行う必要があるとされていたところ、東段工の組織である三木会及び支部の会合がこうした価格の維持及び引上げのための情報交換の場として利用されていた経緯があり、本件各違反行為も、このような協調関係の下で大手の段ボールメーカーの主導により組織的に行われていたということができる。
したがって、本件各違反行為が終了してから、本件各排除措置命令がされるまで2年余りが経過していることを踏まえても、本件各事業者において、再び東段工の会合を利用するなどして、同様の違反行為を繰り返すおそれがあることは否定できず、また、本件各違反行為が終了したことのみをもって、当該取引分野の競争秩序の回復が十分にされたものということもできないから、被告が、本件各違反行為につき特に必要があると認め、排除措置を命じたことについて、裁量権の逸脱又は濫用があるとはいえない。
イ 排除措置命令の相当性
本件各排除措置命令は、名宛人の各事業者に対し、特定段ボールシート及び特定段ボールケースについて、今後他の事業者と共同して販売価格を決定したり、販売価格の改定に関する情報交換をしたりすることを禁止するとともに、これらの行為をしないことなどを取締役会において決議した上で、その旨取引先である商社等に通知し、かつ自社の従業員に周知徹底させるほか、上記各措置を被告に報告することを内容とするものであって、いずれも本件各違反行為が排除されることを確保するために必要な事項であると認められ、その内容において、裁量権の逸脱又は濫用があるということはできない。
⑷ 争点⑷(本件各課徴金納付命令の適法性)について
ア 課徴金の算定期間(実行期間)
独禁法7条の2第1項は、「当該行為の実行としての事業活動を行った日」を課徴金の算定対象となる商品の売上額に係る算定の始期としている。この実行期間の始期については、違反行為者が合意の対象となる需要者に対して値上げ予定日を決めて値上げの申入れを行い、その日から値上げに向けて交渉が行われた場合には、当該予定日以降の取引には、当該合意の拘束力が及んでいると解され、現実にその日に値上げが実現したか否かに関わらず、その日において、当該行為の実行としての事業活動が行われたものと認められる。
これを本件各違反行為についてみると、本件各合意は、対象となる特定段ボールシート及び特定段ボールケースの値上げの実施時期について定めていないことから、原則としてこれらのユーザーに対して申し入れた値上げの実施予定日のうち、最も早い日が実行期間の始期となる。もっとも、平成23年10月17日の本件各合意成立時点又は本件各合意への参加時点でユーザーに対して既にこれらの値上げを申し入れていた事業者については、上記各時点より前の事業活動は、当該行為の実行としての事業活動とは認められないから、値上げ交渉の結果、値上げした価格で、本件各合意成立又は本件各合意への参加以降に当該商品を引き渡した最初の日が、上記のユーザーに対して申し入れた値上げの実施予定日のうち最も早い日より前である限り、同時点が実行期間の始期となる。これに当たる日は、第1事件の違反行為につき、別紙3の「実行期間の始期」欄の各記載の日であり、第2事件の違反行為につき、別紙4の「実行期間の始期」欄の各記載の日である。
そして、本件各事業者は、平成24年6月5日に、被告の立入検査が行われたことを契機に、特定段ボールシート及び特定段ボールケースの情報交換を止めたから、同日をもって、本件各違反行為は終了し、当該行為の実行としての事業活動はなくなったものと認められる。これに当たる日は、別紙3又は別紙4の「実行期間の終期」欄に各記載の日(平成24年6月4日)である。
イ 課徴金の算定対象となる商品の該当性及び売上額
独禁法7条の2第1項にいう「当該商品」とは、違反行為である相互拘束の対象である商品、すなわち、違反行為の対象商品の範疇に属し、違反行為である相互拘束を受けたものをいうと解されるところ、課徴金制度の趣旨及び課徴金の算定方法に照らせば、違反行為の対象商品の範疇に属する商品については、一定の商品につき、違反行為を行った事業者が明示的ないし黙示的に当該行為の対象から除外するなど、当該商品が違反行為である相互拘束から除外されていることを示す特段の事情が認められない限り、違反行為による相互拘束が及んでいるものとして、課徴金の算定の対象となる商品に含まれ、違反行為者が実行期間中に違反行為の対象商品の範疇に属する商品を引き渡して得た対価の額が、課徴金の計算の基礎となる売上額となると解すべきである。
これを本件について見ると、独禁法7条の2第1項にいう「当該商品」には、特段の事情がない限り、第1事件については、特定段ボールシートが、第2事件については、特定段ボールケースがこれに当たるところ、原告らから提出された報告書を基に、その報告に係る売上額からその重複部分及び上記特段の事情があると認められる部分を控除した、特定段ボールシート及び特定段ボールケースの売上高を独禁法施行令5条1項の規定に従って算定すると、別紙3又は別紙4の「売上額(円)」欄に記載のとおりである。
ウ 課徴金の算定率及び課徴金額
原告らは、いずれも段ボール製品の製造業を営んでいる者であるから、独禁法7条の2第1項柱書のかっこ書に規定する「小売業」及び「卸売業」のいずれにも当たらないと認められるところ、原告らから提出された報告書に基に判断される算定率及び課徴金額は、別紙3又は別紙4に記載のとおりである。
5 本件訴訟における被告の主張の要旨
本件審決は、別紙7に記載のとおり事実を認定し、争点⑴ないし⑷につき、前記4のとおり判断したところ、本件審決における上記認定、判断は、実質的な証拠に欠けるところはなく、その認定、判断には、手続を含め法令違反はない。
6 本件訴訟における原告らの主張の要旨
本件の各争点に関する前記4の本件審決の判断は、以下のとおり、審決の基礎となった事実を立証する実質的な証拠がない場合(独禁法82条1項1号)、又は法令に違反する場合(同項2号)に当たり、取り消されるべきである。
⑴ 争点⑴(本件各合意の成否及びその内容)について
ア 10月17日の三木会で意思の連絡がされたとは考え難い事情があること
段ボールメーカーは、輸送費用の制約から各段ボール工場から一定の輸送距離の範囲に所在する地場ユーザーに対してのみ段ボールケースを供給しているのが通例であって、各工場に近接する一定の都道県内にとどまっているのである。このような製品の特性上、北海道、東北地方、関東地方、甲信越地方及び静岡県では、地域ごとに競争者が異なっており、製品単価も異なっているのである。また、国道4号線付近における段ボールシートの需要及び供給については、他の地域とは異なる競争原理が働いており、価格帯が低い状態にあった。このような客観的事実に基づけば、東日本地区内で段ボール製品の値上げ幅を一律にすることはおろか、一定の値上げ幅を指標として各社がこれと大差のない値上げ幅を目安に足並みを揃えて値上げを実施することも困難である。上記客観的な競争状況に反する本件審決の認定は不合理と言わざるを得ない。被告は、他都府県から北海道内への段ボール製品の納入について、査334・3頁のような取引数量も不明、時期も不明かつ出荷伝票が添付されているわけでもない事例を挙げるのみであり、商圏が北海道を越えるということはできない。
そもそも、三木会は、東段工の一組織という位置付けが形式的にはなされてはいたものの、労働条件の向上を含めた段ボール業界全体の地位の向上を図るための組織であり(審C共17・3頁)、実際の活動内容を見ても、三木会においては、東段工による営業マンセミナーや東段工の海外研修の開催に関する事項のほか、東段工忘年懇親会や新春賀詞交歓会の準備に関する事項といった内容が議題に挙げられており、段ボール業者の間での懇親会としての性格を持つ組織であったのであり、何かを決定する会議体ではなかった。
また、意思の連絡があり、本件各合意が成立したとされる平成23年当時、段ボール原紙の値上げによって段ボール業界をとりまく環境が激変していた状況であった上(審C共17・4ないし5頁)、10月17日の三木会の段階では、原紙の価格は上がっておらず、いつどの程度原紙の値上げがなされるのか不透明な状況であり、段ボールメーカーにとって段ボール原紙の値上げを受け入れざるを得ない状況ではなかった。
さらに、原告トーモク及び原告トーシンパッケージの値上げ開始日として本件審決が認定する平成23年12月1日は、全ての特定ユーザーの期替わり前であり、段ボールの値上げを受け入れられる状況ではなかったのであり、このような内容を含む本件の値上げ合意を原告らが行うことは困難な状況にあった。このように、本件においては、少なくとも10月17日の三木会の時点では、「意思の連絡」があったとはいえないことを示す客観的な事実が多数存在している。本件審決は、これらの客観的な事実を無視して、10月17日の三木会の時点で「意思の連絡」があったとするものであり、重大な事実誤認である。
イ 10月17日の三木会での情報が東段工の6支部に伝達されていないこと
被告は、本件審決において、前記の客観的な事実を無視して「東日本地域全域を地理的範囲とする単一のカルテル」を認定するに至ったが、東段工の6支部(北海道支部、新潟四木会、長野5社会、群馬会、栃木会、宮城支部会)においては、10月17日の三木会における合意の内容が伝達された証拠が何ら存在しない。
本件審決は、大手の段ボールメーカー及びそのグループ会社が各支部会等において、10月17日の三木会で協議した内容と同様の値上げの意向を表明すれば、10月17日の三木会でその旨の合意が成立した事実自体を伝達しなくても、従前からの慣行に照らし、他の地場の段ボールメーカーもこれに追随して値上げの実施に向かうことは容易に予測される状況にあったので、10月17日の三木会の会議内容が伝達されていない支部会等の参加者も、本件各合意に参加したといえるとした。しかし、「競り込み」という値上げ局面において、段ボール製品を安値で販売する行為を避けるという従前からの慣行は、平成23年当時において、既に過去の遺物になっていた。また、従前からの慣行が当時どの程度の強度を有していたか、それが本件当時に現存していたか、仮に現存していたとしてどの程度の者にどれだけ強く認識されていたか等、従前からの慣行が本件各合意の存在を推認させるために必要な前提事実を認定しておらず、論理に飛躍がある。
なお、原告らは、東段工の9支部会のうち、3分の2に当たる6支部において、三木会の内容が伝達された証拠がないにもかかわらず、支部会を通じて東日本地区全体に対する合意があったとすることは不合理であることを主張するものであって、原告らに三木会の内容が伝達されていたとしても、そのことは、上記主張の合理性を左右しない。
ウ 原告遠州紙工業固有の主張
原告遠州紙工業は、東段工に所属していない中小企業であり、その事業規模は、本件当時において営業部に所属する従業員数は≪略≫名程度、月間売上高は平成25年9月において約≪金額≫円、このうち段ボールシートが約≪金額≫円程度、段ボールケースが約≪金額≫円程度である。また、原告遠州紙工業の段ボール製品の営業地域は、浜松市等の静岡県西部地域を中心としており、それ以外は、せいぜい愛知県及び静岡県東部地域である。
原告遠州紙工業は、現在は、原告トーモクの子会社であるが、本件当時においては原告トーモクとの間に資本関係は全く存在しておらず、独立の地場段ボールメーカーであった。このような狭い商圏しか持たず、規模も小さい原告遠州紙工業が、東日本地区全体の値上げの意思の連絡に参加したとは考え難い。仮に、被告の主張するとおり、重畳的に一定の取引分野が成立するとしても、東日本地区についての意思の連絡に、東日本地区では静岡県に営業地域が限定されている原告遠州紙工業が参加したとは到底考えられない。
⑵ 争点⑵(本件各合意による実質的な競争制限の有無等)について
ア 市場画定について
最高裁平成24年2月20日第一小法廷判決・民集66巻2号796頁(以下「平成24年最判」という。)は、一定の取引分野の画定は違反者のした共同行為が対象としている取引及びそれにより影響を受ける範囲とは別に一般的・客観的に行うという考え方を採用するものと解される。
なお、企業結合規制(独禁法第4章)においては、特定の商品又は役務の提供を中心に競争の実質的制限の有無が判断されるのであり、このような企業結合規制の場合と同様、価格協定による不当な取引制限の有無においても、特定の商品等を中心に競争の実質的制限の有無が判断されるべきである。
これを本件について見ると、前記⑴アの段ボール製品の平均輸送距離やその競争環境という商品の特性に鑑みれば、東日本地区全体が一般的・客観的に見て同一市場でないことは明らかである。1つの取引分野の成立が他の取引分野の成立の可能性を排除するものではないとしても、「東日本地区」という市場における単一の違反を認定することはできないというべきである。
イ 地理的範囲に関して
本件審決は、特定の事業者及び生産拠点ごとに存在する競争関係について、重層的に成立し得るものとして、東日本地区を「一定の取引分野」の地理的範囲としている。しかし、このような被告の主張に立ったとしても、複数市場を併合して全ての市場を含む1つの市場を画定するという手法は、複数の市場に分けたとしても供給者の顔ぶれやシェアの状況に大差がなく、同様の弊害要件論を繰り返すことになるだけなのであれば、議論の簡素化の観点から、便宜的に市場を併合して1個にまとめることを許容するものに過ぎず、複数の市場に分けた場合に供給者の顔ぶれやシェアの状況が大きく異なることになる場合に、1個の市場にまとめることを許容するものではない。
本件においては、各地域における供給者の顔ぶれや、供給される段ボールの特徴が大きく異なっており、東日本地区には、地域間で製品の行き来がほとんどない地区が含まれるから、東日本地区全域を地理的範囲として一定の取引分野が成立し得るとする被告の主張は、全く根拠のないものである。
特に、被告の主張では、一定の取引分野に、北海道地区が含まれることになるが、北海道と本州(取り分け段ボール産業が集積している宮城県、福島県・新潟県及びそれ以南)との間で納入エリアが競合していないことが明らかであるから、商圏が重なることのないことが明白な北海道地区が一定の取引分野に含まれるとすることは、不合理である。
なお、レンゴー等が値上げ幅に地域によって差を設けていないのは、地域ごとに異なる値上げ幅を公表することにより、値上げ幅を大きくした地域の顧客からの感情的な反発を避けるためであり、需要者からの競争圧力を受けるからではないから、地域によって値上げに大きな特色がないとはいえない。
ウ 本件審決の認定、判断は「いいとこ取り」であって自己矛盾していること
まず、本件審決は、「競争の実質的制限等」の成否を論ずる争点⑵においては、本件シート合意・本件ケース合意の成立時の三木会出席各社のシェア情報に、そのグループ会社のシェア情報を加算することにより、三木会出席者の合計シェア(特定段ボールシートにつき、約44.29%、特定段ボールケースにつき、約41.24%)ではなく、グループ関係にある会社を合算した合計シェア(特定段ボールシートにつき、62.20%、特定段ボールケースにつき、約51.88%)と認定することにより、「競争の実質的制限」があると判断した(本件審決133ないし136頁)。
次いで、子会社向け商品の売上げを課徴金の算定基礎から除外すべきかという争点⑶においては、子会社について「違反行為者のグループ会社であっても、違反行為者とは別個の法人格を有し、法律上も独立の取引主体として活動している事業者であるから、グループ会社に対する商品の販売が実質的に同一企業内における加工部門への物資の移転と同視し得るなどの事情が存在しない限り、直ちに当該グループ会社に販売された商品が違反行為の対象から除外されているものと認めることはできないと判断した(本件審決148頁)。
このように、本件審決は、「競争の実質的制限」の成否を検討するに当たっては、子会社は親会社の意思のとおり行動するものとして、親子会社の一体性を認めて違反行為者のシェア算定において親子会社を同一の競争主体として扱う一方、課徴金の算定に当たっては、親子会社は原則として一体ではないとして親子会社を別の競争主体として扱っているのであり、同一事件の中で相矛盾する立場をとっており、本件審決の認定、判断は「いいとこ取り」であって自己矛盾しており、不当性は甚だしい。
⑶ 争点⑶(本件各排除措置命令の必要性及び相当性の有無)について
本件において、平成24年6月5日時点以降、違反行為をしたとされる各事業者の自制によって、本件の違反行為は消滅しているところ、本件各排除措置命令が発令されたのは、平成26年6月19日であり、上記から約2年が経過していた。この間、実際にカルテル等が繰り返されることはなく、各製品の価格決定は各社が決定するなど排除措置命令を発令する必要は全くなくなっていた。したがって、本件各排除措置命令は、「特に必要があると認めるとき」(独禁法7条2項)の要件を満たさないから、その発令は違法である。
⑷ 争点⑷(本件各課徴金納付命令の適法性)について
前記⑵で主張したとおり、本件審決は、「競争の実質的制限」の成否を検討するに当たっては、子会社は親会社の意思のとおり行動するものとして、親子会社の一体性を認めて違反行為者のシェア算定において親子会社を同一の競争主体として扱う一方、課徴金の算定に当たっては、親子会社は原則として一体ではないとして親子会社を別の競争主体として扱っているのであり、同一事件の中で相矛盾する立場をとっており、本件審決の認定、判断は「いいとこ取り」であって自己矛盾に陥っている。したがって、親子会社の一体性を認めるのであれば、課徴金の算定対象の売上げから原告らのグループ会社向け商品の売上げを除外すべきである。
第3 当裁判所の判断
1 本件各合意の成否及びその内容(争点⑴)について
⑴ 独禁法2条6項の「共同して」に該当するためには、複数事業者が対価を引き上げるに当たって、相互の間に「意思の連絡」があったと認められることが必要であるところ、上記意思の連絡とは、複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し、これと歩調を揃える意思があることを意味し、一方の対価引上げを他方が単に認識、認容するのみでは足りないが、事業者相互で拘束し合うことを明示して合意することまで必要ではなく、相互に他の事業者の対価引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りるものと解される。
ところで、被告は、別紙7に記載のとおりの事実を認定しているところ(被告が認定した本件審決の認定事実については、原告らも、その存否、その趣旨・評価を争うもの(後記で判断を加える。)を除き、実質的証拠の有無について争うものではないと解される。)、この事実に基づき、前記第2の4⑴のとおり、10月17日の三木会において、三木会に出席した第1事件11社については、本件シート合意が成立するとともに、同会合に出席した第2事件12社については、本件ケース合意が成立し、さらに、第1事件事業者45社(第1事件事業者57社から上記第1事件11社及び群馬森紙業を除いた会社)については、自社の営業責任者等が出席した支部会等において、本件シート合意と同内容の合意が成立し、第2事件事業者49社(第2事件事業者63社のうち、第2事件三木会出席事業者12社並びに群馬森紙業及び鎌田段ボール工業を除いた会社)については、上記と同様に、自社の営業責任者等が出席した支部会等において、本件ケース合意と同内容の合意が成立し、そして、群馬森紙業は、平成23年11月14日の群馬・栃木支部会を通じて、鎌田段ボール工業は、同月17日の三木会を通じて、本件ケース合意に参加したものと認められるとしたが、この認定、判断は、本件審決に掲記の各証拠に基づくものであって、実質的証拠を欠くものとはいえず、また、その判断は、前記で説示した独禁法2条6項の解釈に合致するものであって、法令に反する点は見当たらない。
⑵ 原告らの主張に対する判断
ア 原告らは、10月17日の三木会で意思の連絡がされたとは考え難い事情があるとして、以下のとおり指摘する。すなわち、①段ボールメーカーは、輸送費用の制約から各段ボール工場から一定の輸送距離の範囲に所在する地場ユーザーに対してのみ段ボールケースを供給しているのが通例であり、このような製品の特性上、東日本地区内で段ボール製品の値上げ幅を一律にすることはおろか、一定の値上げ幅を指標として各社がこれと大差のない値上げ幅を目安に足並みを揃えて値上げを実施することも困難である、②段ボール製品の納入について、その商圏が北海道を越えるということはできない、③三木会は、労働条件の向上を含めた段ボール業界全体の地位の向上を図るための組織であり、段ボール業者の間での懇親会としての性格を持つ組織であったのであり、何かを決定する会議体ではなかった、④10月17日の三木会の段階では、原紙の価格は上がっておらず、いつどの程度原紙の値上げがなされるのか不透明な状況であった、⑤原告トーモク及び原告トーシンパッケージの値上げ開始日として本件審決が認定する平成23年12月1日は、全ての特定ユーザーの期替わり前であり、段ボールの値上げを受け入れられる状況ではなかった、このように、10月17日の三木会の時点では、「意思の連絡」があったとはいえないことを示す客観的な事実が多数存在していた旨主張する。
しかし、上記①については、上記取引分野の中に、段ボール製品の輸送距離の関係から現実の商圏が限定されている事業者がいたとしても、東日本地区全域で活動する他の事業者は隣接する商圏で活動する他の事業者との競争を介して取引分野全体に影響を与え得ることを踏まえると、上記の点は、本件各合意の成立を左右する事情であるとはいえない。
上記②については、東段工の北海道支部の支部長は、三木会には移動時間の関係で出席しないのが通例であったものの、東段工の事務局から送付された三木会の資料等を基にトップ会で内容を報告したり、これらの資料を配布したりするなどして情報共有を図っており(本件審判の認定事実4⑶)、本件各事業者のうち、セッツカートンの新潟工場長は、遠くでは北海道にも一部ユーザーがいると供述していること(査334・3頁)も踏まえると、北海道支部を含む東日本全体を1つの市場と捉えて、その範囲における実質的な取引制限の有無を検討することが不合理であるとはいえない。このことは、仮に、原告らにおいて、北海道に所在する工場で生産された段ボール製品は北海道を商圏として供給され、本州に供給された実績がなかったとしても、上記判断は左右されない。
上記③については、三木会及び支部会等の会合において、ユーザーとの値上げ交渉の状況に関する情報交換が行われており(本件審決の認定事実1)、このことは、三木会が段ボールメーカー間の懇親会として機能していることと両立するものであって、上記判断を左右する事情とはいえない。
上記④については、レンゴーの関係者は、平成23年8月下旬に段ボール原紙及び段ボール製品の値上げを発表し、同年9月22日の三木会や同月26日の5社会において、出席各社に対し、値上げの見通しを表明するよう促し(本件審決の認定事実2⑶)、10月17日の三木会において、値上げ幅の具体的内容を説明し、出席社からの質問に応じてその内訳を詳しく説明した上で、追随して値上げを実施するよう述べていたのであるから(本件審決の認定事実3⑴)、出席各社において、現実に段ボール製品の値上げをする方向で具体的な発言がされていたものといえ、その際、レンゴーの値上げ幅を指標としないとは考え難い。そして、10月17日の三木会が開催されるまでに主要な原紙メーカーによる値上げ表明や社内での意思決定がされており(上記メーカーには、一貫メーカー以外の大手の専業メーカーが含まれる。本件審決の認定事実2⑷)、10月17日の三木会における上記の発言内容を踏まえれば、上記三木会の時点において、原紙の値上がりが不透明な状況であり、本件各合意が成立し得るような状況になかったとはいえない。
上記⑤については、10月17日の三木会以降の段ボール製品の値上げの実施状況について見ると、三木会又は支部会等で公表された値上げ幅をもって、順次、値上げが実施されており(本件審決の認定事実4ないし6)、原告トーモク及び原告トーシンパッケージにおいて、平成23年12月1日において、段ボールの値上げを受け入れられる状況ではなかったことをうかがわせる証拠は見当たらない。
以上のとおり、10月17日の三木会の時点では、「意思の連絡」があったとはいえないことを示す客観的な事実が多数存在していたとはいえない。
イ 原告らは、東段工の6支部(北海道支部、新潟四木会、長野5社会、群馬会、栃木会、宮城支部会)においては、10月17日の三木会における合意の内容が伝達されておらず、また、「競り込み」という値上げ局面において、段ボール製品を安値で販売する行為を避けるという従前からの慣行は平成23年当時において、既に過去の遺物になっていた旨主張する。
しかし、大手の一貫メーカーがまず値上げ表明をし、次にそれ以外の段ボールメーカーがこれに追随して足並みを揃えること、その情報交換は三木会を通じて行われてきた等の従前からの慣行があると認められるところ(「競り込み」という値上げ局面において、段ボール製品を安値で販売する行為を避けるという点を含めて、被告が主張する従前からの慣行の存在は、本件審決の認定事実1末尾に掲記の多数の証拠によって具体的に裏付けられており、従前からの慣行が平成23年当時、既に消滅していたことをうかがわせる証拠は見当たらない。)、10月17日の三木会における協議内容が明示的に伝達されていない支部会等があったとしても、従前からの慣行の下では、各支部会等において、本部役員会社に属する営業責任者が、大手の段ボールメーカーの値上げの方針を説明し、出席各社の値上げの方針が確認されているから(本件審決の認定事実4)、10月17日の三木会における協議内容を認識していたといえ、その内容が実質的には伝わっていたものと評価し得る。
ウ 原告らは、原告遠州紙工業は、本件当時においては原告トーモクとの間に資本関係はなく、独立の地場段ボールメーカーであり、東段工にも所属しておらず、東日本地区では、静岡県に営業地域が限定されているのであって、東日本地区全体の値上げの意思の連絡に参加したとは考え難い旨主張する。
しかし、平成23年10月31日に開催された静岡支部会に出席した原告遠州紙工業の営業責任者は、同支部会の支部長である日本紙工業の≪J≫から、10月17日の三木会の報告を受け、値上げの方針を発表するよう促され、「当社が一番小さい会社なのでナショナルメーカーさんが音頭をとって動いてくれないとなかなか動けない。ただ価格改定の動きはしている。」などと発言し、さらに、営業日報に、同会合で発表された各社の値上げ方針等を記録した上で「業界としてはシートメートル8円、ケース13%(レンゴー)の価格改定で進んでいる」などと記載して社長に報告していたのであるから(本件審決の認定事実4⑹)、原告遠州紙工業は、上記静岡支部会における出席各社と相互に対価の値上げについて、歩調を揃え、相互に他の事業者の対価引上げ行為を認識して認容したものといえるから、本件各合意に参加したものというべきである。このことは、原告らが主張する原告遠州紙工業の固有の事情(本件当時においては原告トーモクとの間に資本関係のない地場段ボールメーカーであったこと、東段工にも所属していないこと、東日本地区では、静岡県に営業地域が限定されていること)によって左右されるものではない。
エ 小括
したがって、原告らの上記各主張は採用することができない。
2 本件各合意による実質的な競争制限の有無等(争点⑵)について
⑴ 独禁法2条6項にいう「一定の取引分野」とは、当該共同行為によって競争の実質的制限がもたらされる範囲の市場をいうものであり、その成立する範囲は、当該合意が対象としている取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討して定まるものと解するのが相当である。また、同項にいう「競争を実質的に制限する」とは、当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいい、共同して商品の販売価格を引き上げる旨の合意がされた場合には、その当事者である事業者らがその意思で、ある程度自由に当該商品の販売価格を左右できる状態をもたらすことをいうものと解するのが相当である(平成24年最判参照)。
そして、その判断に際しては、当該合意の当事者である事業者らのシェアの高さとともに、そのシェアの高さに応じて、当該合意の当事者ではない他の事業者の価格引上げに対するけん制力の有無等の諸事情を総合して考慮すべきである。
被告は、本件各合意の成立に関する判断を前提として、本件各合意に基づく共同行為は、段ボール製品の値上げを実現するため、東段工の組織である三木会及び支部会等を利用して行われたから、本件各合意における情報交換の対象となった段ボール製品の値上げについて、その地理的な範囲に東段工の管轄地域である東日本地区が含まれることは明らかであるところ、これらの値上げ交渉が行われる需要者の交渉担当部署の所在地を基準として、その範囲を画定すると、交渉担当部署が東日本地区に所在する需要者に対し、当該交渉担当部署との間で取り決めた取引条件に基づき販売される段ボール製品は、少なくとも本件各合意の対象に含まれるものであって、本件各合意によって影響を受ける範囲も同様と解され、東日本地区全体が1つの市場であり、本件各合意を成立させたことによって、その意思である程度自由に販売価格を左右することができる状態をもたらしたと認めることができ、そして、本件各合意の成立過程に照らすと、本件各事業者が順次本件各合意に参加することにより、そのシェアは、特定段ボールシートについて8割を超え、特定段ボールケースについて6割を超えるものとなるのであり、かかる市場支配は、強固なものとなったということできるのであって、本件各合意は、一定の取引分野における競争を実質的に制限するものであると認められるとした。以上の認定、判断は、本件審決に掲記の各証拠に基づくものであって、実質的証拠を欠くものとはいえず、また、その判断は、前記で説示した独禁法2条6項の解釈に合致するものであって、法令に反する点は見当たらない。
⑵ 原告らの主張に対する判断
ア 原告らは、段ボール製品の平均輸送距離やその競争環境に鑑みれば、平成24年最判の判示に照らしても、東日本地区全体が一般的・客観的に見て同一市場でないことは明らかであり、供給者の顔ぶれやシェアの状況に大差がないような事情がある場合を除き(本件では、原告らにおいて、東日本地区に商圏が重なることがない北海道地区が含まれており、上記の事情は存在しない。)、複数市場を併合して全ての市場を含む1つの市場に画定することは相当ではなく、被告の主張する「東日本地区」という単一の市場における実質的な競争制限を前提に判断すべきではない旨主張する。
しかし、本件各事業者(第1事件事業者57社及び第2事件事業者63社)による各共同行為(本件各合意)において、その対象とされた取引は、それぞれ、交渉担当部署が東日本地区に所在する需要者に販売される外装用段ボールによって製造された特定段ボールシート及び特定段ボールケースに係る取引であったところ、段ボール製品の需要の価格弾力性は小さく、代替的な商品が基本的に見当たらないことから(争いがない(第2回弁論準備手続調書参照)。)、特段の事情がない限り、価格協定の合意(本件各合意)が対象とする取引及びその影響が及ぶ範囲によって、その市場の範囲も画されるものと解するのが相当である。
なお、平成24年最判は、入札談合の事案において、当該審決において認定した事実関係を前提とすると、共同行為である当該基本合意の対象として審決が認定した特定の工事を含めた、より一般的な工事(Aクラス以上の工事)を対象としたものと認めて、それをもって、一定の取引分野と画定したものである。本件各合意が対象としている取引及びそれに影響を受ける範囲を検討して取引範囲を画定した前記判断が平成24年最判に反するものとは解されない。
また、原告らは、企業結合規制の場合と同様、価格協定による不当な取引制限の有無においても、特定の商品等を中心に競争の実質的制限の有無が判断されるべきである旨主張するが、企業結合規制の場合と価格協定による不当な取引制限の有無の場合において、競争の実質的制限の有無に係る判断基準が、審査時点において具体的な行為が行われているか否かにより異なり得るという点はさて措き、本件各合意による不当な取引制限の有無の判断については、上記で説示したとおりである。
ところで、上記取引分野の中に、段ボール製品の輸送距離の関係から現実の商圏が限定されている事業者がいたとしても、現実の供給範囲が限定されている他の事業者との競争を介して広域での市場の形成や取引分野全体に影響を与え寄与し得る。また、大手の段ボールメーカーも少なからず地場ユーザーに段ボールケースを供給していたといえるから(査146・3頁(証拠の写し1883丁)、275・3頁(同4147丁))、需要者が広域ユーザーか地場ユーザーかにかかわらず、大手の段ボールメーカーが製造する段ボールケースと地場の段ボールメーカーが製造する段ボールケースとの間の需要者にとっての代替性の程度は、両者の取引分野を常に別個のものと捉えなければならないほど小さいものとはいえない。したがって、上記の点は、前記の市場の範囲を左右する特段の事情に当たるとはいえない。
また、上記のとおり、東日本地区全体を1つの市場と捉えることができ、このことは、客観的に異なる複数の市場を便宜的な観点から1つの市場と扱うものではないから、原告らの主張はその前提を欠く。
なお、原告らは、レンゴー等が値上げ幅に地域によって差を設けていないのは、地域ごとに異なる値上げ幅を公表することにより、値上げ幅を大きくした地域の顧客からの感情的な反発を避けるためであり、需要者からの競争圧力を受けるからではないから、地域によって値上げに大きな特色がないとはいえない旨主張するが、地域の顧客からの感情的な反発と需要者からの競争圧力の存在とは、両立する事実であって、地域の顧客からの感情的な反発があることによって需要者からの競争圧力の存在を否定することはできず、上記主張は採用することができない。
イ 原告らは、本件審決は「競争の実質的制限」の成否を検討するに当たっては、子会社は親会社の意思のとおり行動するものとして、親子会社の一体性を認めて違反行為者のシェア算定において親子会社を同一の競争主体として扱う一方、課徴金の算定に当たっては、親子会社は原則として一体ではないとして親子会社を別の競争主体として扱っているのであり、同一事件の中で相矛盾する立場をとっており、本件審決の認定、判断は「いいとこ取り」であって自己矛盾に陥っている旨主張する。
しかし、前記で説示したとおり、「一定の取引分野」において、「競争を実質的に制限する」(独禁法2条6項)とは、価格協定に係る事業者らがその意思で、ある程度自由に当該商品の販売価格を左右できる状態をもたらすことをいうものと解され(平成24年最判参照)、その判断に際しては、事業者らのシェアの高さ、他の事業者の価格引上げに対するけん制力の有無等の諸事情を総合して考慮すべきところ、本件各合意に至る経緯(本件審決の認定事実2ないし6)に照らすと、原告トーモクのグループ企業である原告らは、段ボール製品の値上げに同調していたのであるから、そのシェアを合算して、段ボール製品の販売価格を一定程度左右していたといえるか否かを判断することが不合理であるとはいえない。
他方で、独禁法の定める課徴金の制度は、カルテル禁止の実効性確保のための行政上の措置であり、同制度の積極的かつ効率的な運営により抑止効果を確保するために容易かつ明確な算定基準であることが必要とされているものである(最高裁平成17年9月13日第三小法廷判決・民集59巻7号1950頁参照)。カルテル禁止の実効性を確保し、違法行為を抑止しようとする課徴金制度の趣旨に照らすと、グループ企業といえども、独立の法人格を有する別個の法主体である以上、グループ企業間の取引が実質的に同一企業グループ内の加工部門への物資の移動と同視し得る等の特段の事情がない限り、本件各合意による相互拘束の対象外であることが明らかとはいえないのであって、課徴金の算定に当たってはグループ企業、親子会社を別個の法人として扱うことは、上記の制度趣旨に沿うものと解される。そうすると、実質的な競争制限に当たるか否かと、課徴金の算定基礎に含めるか否かは、目的を異にする別個の問題であるから、それぞれの判断基準が同一ではないからといって、両者の判断基準に矛盾等があるとはいえない。
ウ 小括
したがって、原告らの上記各主張は採用することができない。
3 本件各排除措置命令の必要性及び相当性の有無(争点⑶)について
⑴ 独禁法7条2項の「特に必要があると認めるとき」とは、事業者に対し、排除措置を命じた時点では既に違反行為はなくなっているが、当該違反行為が繰り返されるおそれがある場合や、当該違反行為の結果が残存しており競争秩序の回復が不十分である場合などをいうものと解され、その判断については、独禁法の目的を達成することを任務とする被告の専門的な裁量が認められるものと解される(最高裁平成19年4月19日第一小法廷判決・裁判集民事224号123頁参照)。
被告は、前記1及び2の判断を前提として、平成24年6月5日の被告による立入検査の実施(本件審決の認定事実7)により、本件各合意は消滅したと解されるところ、それは、本件各事業者の自発的な意思に基づくものではなく、これまで東段工の組織である三木会及び支部会の会合が本件の価格の維持及び引上げのための情報交換の場として利用されていた経緯を踏まえ、本件各違反行為が終了してから本件各排除措置命令がされるまで2年余りが経過しているとしても、本件各事業者において、再び東段工の会合を利用するなどして、同様の違反行為を繰り返すおそれがあることは否定できず、また、本件各違反行為が終了したことのみをもって、当該取引分野の競争秩序の回復が十分にされたものということもできないとして、本件各違反行為につき特に必要があると認められ、また、本件各排除措置命令の内容は、いずれも本件各違反行為が排除されることを確保するために必要な事項であって、排除措置を命じたことについて、裁量権の逸脱又は濫用があるとはいえないと判断した。以上の認定、判断は、本件審決に掲記の各証拠に基づくものであって、実質的証拠を欠くものとはいえず、また、その判断は、前記で説示した独禁法7条2項の解釈に合致するものであって、法令に反する点は見当たらない。
⑵ 原告らの主張に対する判断
原告らは、平成24年6月5日時点以降、違反行為をしたとされる各事業者の自制によって、本件の違反行為は消滅しており、また、上記から約2年が経過してから本件各排除措置命令が発令されており、この間、実際にカルテル等が繰り返されることはなく、排除措置命令を発令する必要は全くなくなっていたから、本件各排除措置命令は、「特に必要があると認めるとき」(独禁法7条2項)の要件を満たさず、違法である旨主張する。
しかし、原告らを含む本件各事業者が本件各違反行為を取り止めたのは、被告の立入検査を受けたことによるものであって、自発的な意思によるものとは認め難いから、本件各違反行為が本件各事業者の自制によって消滅したとの原告らの主張はその前提を欠く。
また、本件各排除措置命令は、被告の立入検査から約2年が経過してから発令されているが、本件各違反行為が、段ボール製品の製造に関する長年の従前からの慣行(本件審決の認定事実1)を背景に行われたものであり、上記2年間において、段ボール製品の市場構造が大きく変わったといった事情もうかがわれないことからすると、その再発防止措置をとる必要性があったものと認めるのが相当である。そして、被告は、競争政策の専門的知見を有する行政機関として、排除措置命令に関する合理的な裁量を有するものと解されるところ、上記の事情に鑑みれば、本件各排除措置命令の発令に際して、被告に裁量権の逸脱又は濫用があるとは認められない。
したがって、被告の原告らに対する本件各排除措置命令が「特に必要があると認めるとき」(独禁法7条2項)の要件を満たしていないとはいえず、原告らの上記主張は採用することができない。
4 本件各課徴金納付命令の適法性(争点⑷)について
⑴ 独禁法7条の2第1項の「当該行為の実行としての事業活動を行った日」とは、違反行為者が合意の対象となる需要者に対して値上げ予定日を定めて値上げの申入れを行い、その日から値上げに向けて交渉が行われた場合には当該予定日以降の取引には、当該合意の拘束力が及び、現実にその日に値上げが実現したか否かに関わらず、その日において、当該行為の実行としての事業活動が行われたものと解される。
被告は、前記1及び2の判断を前提として、第1事件及び第2事件の違反行為に係る実行期間の始期及び終期につき、別紙3又は別紙4の各「実行期間の始期」欄及び「実行期間の終期」欄に各記載の日であると判断した。
また、独禁法7条の2第1項にいう「当該商品」とは、違反行為の対象商品の範疇に属し、違反行為である相互拘束を受けたものをいうと解されるところ、課徴金制度の趣旨(予防効果の強化、制度の積極的・効率的運営)及び課徴金の算定方法(明確な算定基準によるもので算定が容易なものであることが必要)に照らせば(最高裁平成17年9月13日第三小法廷判決・民集59巻7号1950頁参照)、違反行為の対象商品の範疇に属する商品については、違反行為を行った事業者が明示的ないし黙示的に当該行為の対象から除外するなど当該商品が違反行為である相互拘束から除外されていることを示す特段の事情が認められない限り、違反行為による相互拘束が及んでいるものとして、課徴金の算定の対象となる商品に含まれ、違反行為者が実行期間中に違反行為の対象商品の範疇に属する商品を引き渡して得た対価の額が課徴金の計算の基礎となる売上額となるものと解するのが相当である。このように、課徴金の額は、カルテルによって実際に得られた不当な利得の額と一致しなければならないものではない。
被告は、前記1及び2の判断を前提として、特段の事情がない限り、第1事件の違反行為に係る「当該商品」を特定段ボールシートと、第2事件のそれを特定段ボールケースとし、原告らから提出された報告書を基に、その重複部分及び上記特段の事情があると認められる部分を控除した、特定段ボールシート及び特定段ボールケースの売上高を独禁法施行令5条1項の規定に従って算定すると、別紙3又は別紙4の「売上額(円)」欄に記載のとおりであると判断した。また、原告らは、いずれも段ボール製品の製造業を営んでいる者であるから、独禁法7条の2第1項柱書のかっこ書に規定する「小売業」及び「卸売業」のいずれにも当たらないとして、原告らから提出された報告書を基に判断される算定率及び課徴金額は、別紙3又は別紙4に記載のとおりであると判断した。
以上の被告の認定、判断は、本件審決に掲記の各証拠に基づくものであって、実質的証拠を欠くものとはいえず、また、その判断は、前記で説示した独禁法7条の2の解釈に合致するものであって、法令に反する点は見当たらない。
⑵ 原告らの主張に対する判断
原告らは、本件審決は「競争の実質的制限」の成否を検討するに当たっては、子会社は親会社の意思のとおり行動するものとして、親子会社の一体性を認めておきながら、課徴金の算定に当たっては、親子会社は原則として一体ではないとして親子会社を別の競争主体として扱っている点で自己矛盾に陥っており、親子会社の一体性を前提とするのであれば、課徴金の算定対象の売上げから原告らのグループ会社向け商品の売上げを除外すべきである旨主張する。
しかし、競争の実質的制限の成否を検討するに当たっては、価格けん制力の有無という観点から子会社のシェアを加算する扱いをし、他方で、違法行為の抑止という観点から、課徴金の算定対象の売上げから原告らのグループ会社向け商品の売上げを除外しない扱いをすることとの間に、矛盾があるといえないことは、前記2⑵で説示したとおりである。
したがって、原告らの上記主張は採用することができない。
5 その他、原告らの種々の主張並びに原告らが審判請求に係る審判手続において提出した証拠及び同手続において取り調べられた参考人の供述を踏まえても、当裁判所の判断は左右されない。
第4 結論
以上の次第で、本件審決の基礎となった事実を立証する実質的証拠がない(独禁法82条1項1号)とはいえず、かつ本件審決が法令に違反する(同条1項2号)ともいえない。
よって、本件審決には、同項所定の取消事由があるとは認められず、本件審決は適法であって、その取消しを求める原告らの請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する。

令和6年5月31日

東京高等裁判所第3特別部
裁判長裁判官  相 澤 眞 木     
裁判官     河 村   浩     
裁判官     廣 瀬   孝     
裁判官     宮 崎 拓 也     
裁判官佐々木健二は、転補のため、署名押印することができない。
裁判長裁判官  相 澤 眞 木

(別紙) 指定代理人目録

宮本 信彦  榎本 勤也  齋藤 みずえ  岩丸 華子  小室 尚彦
以上

(別紙) 独禁法の条文

2条(定義)
1項ないし5項(省略)
6項 この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもってするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
(以下省略)
3条(私的独占又は不当な取引制限の禁止)
事業者は、(省略)不当な取引制限をしてはならない。
7条(私的独占等の禁止違反に対する措置)
1項 第3条又は前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第8章第2節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為の差止め、事業の一部の譲渡その他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。
2項 公正取引委員会は、第3条又は前条の規定に違反する行為が既になくなっている場合においても、特に必要があると認めるときは、第8章第2節に規定する手続に従い、次に掲げる者に対し、当該行為が既になくなっている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができる。ただし、当該行為がなくなった日から5年を経過したときは、この限りでない。
一 当該行為をした事業者
二 当該行為をした事業者が法人である場合において、当該法人が合併により消滅したときにおける合併後存続し、又は合併により設立された法人
三 当該行為をした事業者が法人である場合において、当該法人から分割により当該行為に係る事業の全部又は一部を承継した法人
四 当該行為をした事業者から当該行為に係る事業の全部又は一部を譲り受けた事業者
7条の2(課徴金)
1項 事業者が、不当な取引制限(省略)で次の各号のいずれかに該当するものをしたときは、公正取引委員会は、第8章第2節に規定する手続に従い、当該事業者に対し、当該行為の実行としての事業活動を行った日から当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間(当該期間が三年を超えるときは、当該行為の実行としての事業活動がなくなる日からさかのぼって三年間とする。以下「実行期間」という。)における当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額(当該行為が商品又は役務の供給を受けることに係るものである場合は、当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した購入額)に百分の十(小売業については百分の三、卸売業については百分の二とする。)を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、その額が百万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。
一 商品又は役務の対価に係るもの
二 商品又は役務について次のいずれかを実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの
イ 供給量又は購入量
ロ 市場占有率
ハ 取引の相手方
2項ないし4項(省略)
5項 第1項の場合において、当該事業者が次のいずれかに該当する者であるときは、同項中「百分の十」とあるのは「百分の四」と、「百分の三」とあるのは「百分の一・二」と、「百分の二」とあるのは「百分の一」とする。
一 資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であって、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種及び第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二 資本金の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であって、卸売業(第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
三 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であって、サービス業(第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
四 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であって、小売業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
五 資本金の額又は出資の総額がその業種ごとに政令で定める金額以下の会社並びに常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人であって、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの
六 協業組合その他の特別の法律により協同して事業を行うことを主たる目的として設立された組合(組合の連合会を含む。)のうち、政令で定めるところにより、前各号に定める業種ごとに当該各号に定める規模に相当する規模のもの
6項ないし27項(省略)
47条(調査のための強制処分)
1項 公正取引委員会は、事件について必要な調査をするため、次に掲げる処分をすることができる。
一ないし三(省略)
四 事件関係人の営業所その他必要な場所に立ち入り、業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を検査すること。
2項ないし4項(省略)
77条(訴えの提起期間)
1項 公正取引委員会の審決の取消しの訴えは、審決がその効力を生じた日から30日(省略)以内に提起しなければならない。
2項 前項の期間は、不変期間とする。
3項 審判請求をすることができる事項に関する訴えは、審決に対するものでなければ、提起することができない。
78条 公正取引委員会の審決に係る行政事件訴訟法(省略)3条1項に規定する抗告訴訟については、公正取引委員会を被告とする。
82条(審決の取消し)
1項 裁判所は、公正取引委員会の審決が、次の各号のいずれかに該当する場合には、これを取り消すことができる。
一 審決の基礎となった事実を立証する実質的な証拠がない場合
二 審決が憲法その他の法令に違反する場合
2項(省略)
85条(第一審の裁判権)
次の各号のいずれかに該当する訴訟については、第一審の裁判権は、東京高等裁判所に属する。
一 公正取引委員会の審決に係る行政事件訴訟法3条1項に規定する抗告訴訟
(省略)
二 (省略)
以上

(別紙) 独禁法施行令の条文

5条(法第7条の2第1項の政令で定める売上額及び購入額の算定の方法)
1項 法第7条の2第1項(法第8条の3において読み替えて準用する場合を含む。以下同じ。)に規定する政令で定める売上額の算定の方法は、次条第1項及び第2項に定めるものを除き、実行期間において引き渡した商品又は提供した役務の対価の額を合計する方法とする。この場合において、次の各号に掲げる場合に該当するときは、当該各号に定める額を控除するものとする。
一 実行期間において商品の量目不足、品質不良又は破損、役務の不足又は不良その他の事由により対価の額の全部又は一部を控除した場合 控除した額
二 実行期間において商品が返品された場合 返品された商品の対価の額
三 商品の引渡し又は役務の提供を行う者が引渡し又は提供の実績に応じて割戻金の支払を行うべき旨が書面によって明らかな契約(一定の期間内の実績が一定の額又は数量に達しない場合に割戻しを行わない旨を定めるものを除く。)があった場合 実行期間におけるその実績について当該契約で定めるところにより算定した割戻金の額(一定の期間内の実績に応じて異なる割合又は額によって算定すべき場合にあっては、それらのうち最も低い割合又は額により算定した額)
2項(省略)
以上



































注釈 《 》部分は、公正取引委員会事務総局において原文に匿名化等の処理をしたものである。

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