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ASP Japan合同会社による仮の差止め申立却下決定に対する抗告事件

独禁法19条、一般指定10項

令和6年(行ス)第42号

決定

令和6年6月24日

東京都港区港南2丁目15番2号
抗告人         ASP Japan合同会社
同代表者代表社員    アドバンスド・プロダクト・ステリライゼーション・ホールディング・ゲーエムビーハー
同代表社員職務執行者  ≪X1≫
同代理人弁護士     舟木 健
同           平山賢太郎
同           山本陽介
東京都千代田区霞が関1-1-1
相手方         公正取引委員会
同代表者委員長     古谷一之

本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
第1 抗告の趣旨及び理由
抗告の趣旨及び理由は、別紙「抗告状」及び「抗告理由書」に記載のとおりである。
第2 事案の概要等(略称は、原決定のものを用いる。)
1 抗告人は、本件内視鏡洗浄消毒器(商品名「エンドクレンズNeo」等)及びその消毒剤であるフタラール製剤(商品名「ディスオーパ」)の販売等の事業を営んでいるところ、相手方から、独禁法20条1項に基づき本件排除措置命令を発令する予定であるとして、同法49条及び50条に基づく意見聴取を行う旨の通知を受けた。
本件は、抗告人が、本件排除措置命令の差止めの訴えを提起した上で、これを本案事件として、行訴法37条の5第2項に基づき、その仮の差止めを求める事案である。
原審は、本件申立ては、同項所定の「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要」があることが疎明されていないとして、これを却下したところ、抗告人が、これを不服として抗告した。
2 前提事実
前提事実、争点及び当事者の主張は、以下のとおり補正し、既に述べた抗告理由を加えるほかは、原決定の「理由」中の「第2 事案の概要」の1ないし3に記載のとおりであるから、これを引用する。
⑴ 原決定1頁12行目の「別紙2」を「本決定添付の別紙排除措置命令書(案)主文」に改める。
⑵ 原決定2頁4行目の「甲1、9、12、15」を「甲1、5~7、9、10、12、15」に改める。
⑶ 原決定2頁23行目の末尾に改行の上、次のとおり加える。
「本件内視鏡洗浄消毒器には、バーコードリーダーが取り付けられており、本件製剤の容器には、当該バーコードリーダーで読み取ることができる二次元コード(バーコードのうち、縦横の二方向に情報を持つコード)が貼付されている。
エ 軟性内視鏡用の内視鏡洗浄消毒器の競合他社
内視鏡洗浄消毒器の消毒の対象である軟性内視鏡の我が国における主なサプライヤーは、≪C≫株式会社(以下≪C≫という。) 、≪D≫株式会社(以下≪D≫という。) 及び≪E≫株式会社(以下≪E≫という。)であるところ、≪C≫及び≪D≫は、軟性内視鏡用の内視鏡洗浄消毒器も供給している。
2021年度(令和3年度)の内視鏡洗浄消毒器の販売台数は、抗告人が260台であったのに対し、≪C≫は550台、≪D≫は240台であった。
≪C≫及び≪D≫の各軟性内視鏡用の内視鏡洗浄消毒器で使用する消毒剤は、いずれも過酢酸製剤であり、本件内視鏡洗浄消毒器の消毒剤である本件製剤(フタラール製剤)との互換性はない。」
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、本件申立てを却下するのが相当であると判断する。その理由は、以下のとおり原決定を補正するほかは、原決定の「理由」中の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。
⑴ 原決定5頁8行目の「別紙1」を「本決定添付の別紙排除措置命令書(案)主文」に改め、同行目の「ⓐ」の次に「本件内視鏡洗浄消毒器にバーコードリーダーを取り付けるとともに本件製剤の容器に本件二次元コード(本件内視鏡洗浄消毒器の洗浄消毒機能を作動させるために必要な情報が含まれている二次元コード)を貼付し、当該バーコードリーダーによって本件二次元コードを読み取らなければ本件内視鏡洗浄消毒器の洗浄消毒機能が作動しないようにすることにより、」を加える。
⑵ 原決定5頁22行目の「甲1〔5頁〕 、」の次に「甲8、」を、同24行目の「医療機関」の次に「や、■■■」を、同25行目の「19」の次に「、23、甲25〔4~5項〕」を、同26行目の「場合には、」の次に「■■■や、」をそれぞれ加える。
⑶ 原決定6頁11行目の「その内容に照らし、」を「その内容に加え、本件内視鏡洗浄消毒器に用いる消毒剤が患者の安全性に関わるものであり、本件後発製剤の製造業者4社は旧型内視鏡洗浄消毒器については適合性確認を行っていたことをも踏まえると、本件内視鏡洗浄消毒器との適合性も含めて本件後発製剤に本件製剤と同程度の効能があることを前提とするものと解されるし、結局は本件排除措置命令後の本件製剤と本件後発製剤との価格差の有無及び程度次第とするものであって、無条件に本件製剤から本件後発製剤に切り替えるとするものではないと理解される上、相手方に供述した4つの医療機関の意見が全国に数多ある医療機関の意見を代表するものであるかも定かではないから、」に改める。
⑷ 原決定6頁12行目の「できない。」の次に「■■■ものの、これを踏まえても、■■■」を加える。
⑸ 原決定6頁14行目の「あることや、」の次に「一般に消耗品を使用する本体の供給者から供給される消耗品(いわゆる純正品)は適合性や有効性が十分に検証された上で発売され、安定的な使用実績もあると理解されることから、患者の安全性に関わる」を加え、同15行目から同16行目にかけての「(甲12〔3~4頁〕参照)」を削る。
⑹ 原決定6頁19行目から20行目にかけての「フラタール製剤」を「フタラール製剤」に改める。
⑺ 原決定7頁11行目から12行目にかけての「にも照らすと」の次に「(なお、内視鏡洗浄消毒器は消化器内視鏡を使用する医療機関という限られた需要者に対する製品であることからすると、需要者には抗吿人が≪A≫から事業承継をしたものであることは広く知られていると推認できるし、本件後発製剤の製造業者4社もこれを販売するに当たり限られた需要者に対し相応の営業活動を行ったものと推認されるから、旧型内視鏡洗浄消毒器販売時と本件排除措置命令発令後において、内視鏡洗浄消毒器の販売者や本件後発製剤販売開始後の期間が異なることを踏まえても、旧型内視鏡洗浄消毒器販売時の状況を考慮要素の一つとすることが不適当であるとはいえない。)」を加える。
⑻ 原決定7頁12行目及び8頁18行目の「上記陳述をもって」をいずれも「上記陳述を含む本件全疎明資料及び審尋の全趣旨によっても」に改める。
⑼ 原決定7頁17行目の「競合他社」の次に「である≪C≫及び≪D≫」を、同8頁11行目の「その結果、」の次に「≪C≫及び≪D≫の内視鏡洗浄消毒器への切り替えも含めて」をそれぞれ加える。
⑽ 原決定9頁16行目の「含みのある表現であり、」の次に「これが本件排除措置命令に係る独禁法違反の有無や内容等を指すものであるとしても、上記担当者が令和6年5月1日には専ら本件排除措置命令による■■■ており、独禁法違反の有無や内容等についての説明を求めていなかったこと(甲20の1)をも踏まえると、」を加える。
⑾ 原決定12頁7行目の末尾に改行の上、次のとおり加える。
「カ 前記ア~オによれば、抗告人主張の損害を累積的に考慮しても、本件排除措置命令の発令により、抗告人に執行停止等の事後的な手段ではその救済が著しく困難又は不相当といえるほどの経済的損失その他の損害が生ずることの疎明があったものとは認められない。」
2 以上によれば、本件申立てを却下した原決定は相当であり、本件抗告は理由がないから、主文のとおり決定する。

令和6年6月24日

裁判長裁判官  水野有子     
裁判官  伊藤清隆     
裁判官  古庄 研

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