公正取引委員会審決等データベース

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損害保険会社らに対する件

独禁法3条後段

令和06年(措)第12号

排除措置命令

東京都千代田区神田駿河台三丁目9番地
三井住友海上火災保険株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》

東京都新宿区西新宿一丁目26番1号
損害保険ジャパン株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》

東京都千代田区大手町二丁目6番4号
東京海上日動火災保険株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》

東京都中央区日本橋二丁目2番16号
共立株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》

公正取引委員会は、上記の者らに対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。
なお、主文、理由、別紙1及び別紙2中の用語のうち、別紙2「用語」欄に掲げるものの定義は、別紙2「定義」欄に記載のとおりである。

主    文
1 三井住友海上火災保険株式会社、損害保険ジャパン株式会社(以下「損保ジャパン」という。)及び東京海上日動火災保険株式会社(以下「東京海上」という。)の3社(以下、後記2を除き「3社」という。)は、次の(1)及び(2)の事項を、共立株式会社(以下「共立」という。)は、次の(1)及び(3)の事項を、それぞれ、取締役会において決議しなければならない。
(1) 別紙1記載の損害保険(以下「本件備蓄基地保険」という。)について、3社及び共立(以下「名宛人4社」という。)が、遅くとも令和2年8月26日以降共同して行っていた、3社が事前に想定した引受保険料及び引受割合で受注できるようにする行為を既に行っていないことを確認すること。
(2) 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(以下「JOGMEC」という。)を保険契約者とする損害保険について、入札保険料及び共同保険の引受けに同意する保険料の最低額(以下「入札保険料等」という。)を決定せず、自主的に決めること。
(3) 今後、3社又は他の損害保険会社に対し、JOGMECを保険契約者とする損害保険について、入札保険料等を共有しないこと。
2 名宛人4社は、それぞれ、前項に基づいて採った措置を、自社を除く3社及びJOGMECに通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 3社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、JOGMECを保険契約者とする損害保険について、入札保険料等を決定してはならない。
4 共立は、今後、3社又は他の損害保険会社に対し、JOGMECを保険契約者とする損害保険について、入札保険料等を共有してはならない。
5 3社は、それぞれ、次の(1)から(3)までの事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、第3項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 共同保険の形式により発注される損害保険の引受けに関する独占禁止法の遵守についての、共同保険の形式により発注される損害保険の営業担当者に対する定期的な研修並びに法務担当者及び第三者による定期的な監査
(2) 独占禁止法違反行為に関与した役員及び従業員に対する処分に関する規程の改定(損保ジャパンにあっては独占禁止法違反行為に関与した役員に対する処分に関する規程の改定)
(3) 独占禁止法違反行為に係る調査への協力を行った者に対する適切な取扱いを定める規程の作成
6 共立は、次の(1)及び(2)の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、第4項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) JOGMECを保険契約者とする損害保険契約の締結の代理又は媒介に関する独占禁止法の遵守についての、JOGMECを保険契約者とする損害保険の営業担当者に対する定期的な研修並びに法務担当者及び第三者による定期的な監査
(2) 独占禁止法違反行為に関与した役員に対する処分に関する規程の改定
7 3社は、それぞれ、第1項、第2項及び第5項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
8 共立は、第1項、第2項及び第6項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

理    由
第1 事実
1  関連事実
(1) 名宛人の概要
ア 3社は、それぞれ、肩書地に本店を置き、保険業法(平成7年法律第105号。以下同じ。)の規定に基づき内閣総理大臣の免許を受け、損害保険業を営む者である。
イ 共立は、肩書地に本店を置き、保険業法の規定に基づき内閣総理大臣の登録を受け、損害保険代理業を営む者である。
(2) 本件備蓄基地保険の発注方法等
ア JOGMECは、安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第46号)による改正前の独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法(平成14年法律第94号)の規定に基づき、平成16年2月29日に設立された法人であり、東京都港区に主たる事務所を置き、石油及び金属鉱産物の備蓄に必要な業務等を行っている。
なお、JOGMECは、令和4年11月14日付けで、名称を独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構から現名称に変更した者である。
イ JOGMECは、本件備蓄基地保険を共同保険の形式で一般競争入札の方法により発注していた。JOGMECは、本件備蓄基地保険の保険期間を1年間とし、毎年10月に更改していた。
ウ 前記イに係る一般競争入札には、令和2年10月の更改に向けた同年8月の入札時以降、3社及び《損害保険会社》の4社(以下「入札参加4社」という。)が参加していた。
エ 前記ウに係る一般競争入札は
(ア) 引受保険料については、以下の方法により決定する
a 入札参加4社が提示した入札保険料のうち最も低い入札保険料を引受保険料とすることについて、当該入札保険料を提示した社を除いて2社以上の同意が得られた場合、当該入札保険料に決定する
b 入札参加4社が提示した入札保険料のうち最も低い入札保険料を引受保険料とすることについて、当該入札保険料を提示した社を除いて2社以上の同意が得られなかった場合、2番目に低い入札保険料を引受保険料とすることについて、当該入札保険料を提示した社を除いて2社以上の同意が得られれば、当該入札保険料に決定する
c 入札参加4社が提示した入札保険料のうち2番目に低い入札保険料を引受保険料とすることについて、当該入札保険料を提示した社を除いて2社以上の同意が得られなかった場合、再入札を行う
(イ) 各社の引受割合については、後記(ウ)の方法により決まる入札順位等を勘案して決定する
(ウ) 入札順位については、原則として、入札保険料が低い順番に決定する。ただし、例外として、入札参加4社が提示した入札保険料のうち最も低い入札保険料に対して、当該入札保険料を提示した社を除き、いずれの社の同意も得られなかった場合には、最も低い入札保険料を提示した社の入札順位は最下位として扱う
(エ) 入札参加4社が提示した入札保険料のうち最も低い入札保険料に対して、1社のみが同意しなかった場合、当該1社は共同保険の引受けをすることができない
などの仕組みになっていた。
オ 共立は、本件備蓄基地保険について、入札参加4社から委託を受けた損害保険代理店として、保険契約の締結の媒介等を行っていた。
2 合意及び実施方法
名宛人4社は、遅くとも令和2年8月26日以降、本件備蓄基地保険について、自社の利益を確保するため
(1)ア 3社は、共立を介して入札保険料等を決定し、入札において、3社が事前に想定した引受保険料及び引受割合で受注できるようにする
  イ 共立は、3社が入札保険料等を決定できるように協力する
  旨の合意の下に
(2)ア  共立は、3社の入札保険料等に係る情報を適時に3社から入手し、他の2社に共有する
  イ 3社は
(ア) 共立を介して入札保険料等を決定する
(イ) 入札において、前記(ア)で決定した入札保険料を提示するとともに、3社以外の損害保険会社が3社よりも低い入札保険料を提示してきた場合において、当該提示額が前記(ア)で決定した共同保険の引受けに同意する保険料の最低額を下回るときには、当該入札保険料による共同保険の引受けに同意しない
ことにより、3社が事前に想定した引受保険料及び引受割合で受注できるようにしていた。
3 実施状況
前記2により、令和2年から令和4年までに更改された本件備蓄基地保険の全てについて、共立は、3社が入札保険料等を決定できるように協力し、3社は、3社が事前に想定した引受保険料及び引受割合で受注していた。
4  前記2の行為が既に行われていないこと
(1) 東京海上は、令和5年7月20日までに、課徴金の減免に係る事実の報告及び資料の提出に関する規則(令和2年公正取引委員会規則第3号。以下「課徴金減免規則」という。)第4条第1項の規定に基づき、公正取引委員会に対して様式第1号による報告書を提出するとともに、本件備蓄基地保険に係る自社の営業担当者に対して前記2の合意に基づく行為を行わないよう指示を行い、同日以降、同合意に基づく行為を行っていない。
(2) 損保ジャパンは、令和5年7月21日までに、課徴金減免規則第4条第1項の規定に基づき、公正取引委員会に対して様式第1号による報告書を提出するとともに、本件備蓄基地保険に係る自社の営業担当者に対して前記2の合意に基づく行為を行わないよう指示を行い、同日以降、同合意に基づく行為を行っていない。
(3) 前記(1)及び(2)の事実によれば、令和5年7月21日以降、前記2の合意に基づく行為は行われていないと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば、名宛人4社は、共同して、本件備蓄基地保険について、3社が事前に想定した引受保険料及び引受割合で受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、本件備蓄基地保険の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、名宛人4社は、いずれも、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が長期間にわたって行われていたこと等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、名宛人4社に対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。

令和6年10月31日

委員長 古  谷  一  之
委 員 三  村  晶  子
委 員 青  木  玲  子
委 員 𠮷  田  安  志
委 員 泉  水  文  雄

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