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独禁法3条後段
令和06年(措)第13号
東京都千代田区神田駿河台三丁目9番地
三井住友海上火災保険株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》
東京都新宿区西新宿一丁目26番1号
損害保険ジャパン株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》
東京都千代田区大手町二丁目6番4号
東京海上日動火災保険株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》
公正取引委員会は、上記の者らに対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。
なお、主文、理由及び別紙2中の用語のうち、別紙2「用語」欄に掲げるものの定義は、別紙2「定義」欄に記載のとおりである。
主 文
1 三井住友海上火災保険株式会社(以下「三井住友海上」という。)、損害保険ジャパン株式会社(以下「損保ジャパン」という。)及び東京海上日動火災保険株式会社(以下「東京海上」という。)の3社(以下「3社」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
(1) 別紙1記載の損害保険(以下「本件マリン保険」という。)について、3社が、遅くとも令和2年8月28日以降共同して行っていた、保険料の水準を維持できるようにする行為を既に行っていないことを確認すること。
(2) 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、シャープ株式会社(以下「シャープ」という。)を保険契約者とする損害保険の見積保険料を決定せず、自主的に決めること。
2 3社は、それぞれ、前項に基づいて採った措置を、自社を除く2社並びにシャープ及び《損害保険代理店》(以下「《代理店》」という。)に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 3社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、シャープを保険契約者とする損害保険の見積保険料を決定してはならない。
4 3社は、それぞれ、次の(1)から(3)までの事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 共同保険の形式により発注される損害保険の引受けに関する独占禁止法の遵守についての、共同保険の形式により発注される損害保険の営業担当者に対する定期的な研修並びに法務担当者及び第三者による定期的な監査
(2) 独占禁止法違反行為に関与した役員及び従業員に対する処分に関する規程の改定(損保ジャパンにあっては独占禁止法違反行為に関与した役員に対する処分に関する規程の改定)
(3) 独占禁止法違反行為に係る調査への協力を行った者に対する適切な取扱いを定める規程の作成
5 3社は、それぞれ、第1項、第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
理 由
第1 事実
1 関連事実
(1) 名宛人の概要
3社は、それぞれ、肩書地に本店を置き、保険業法(平成7年法律第105号)の規定に基づき内閣総理大臣の免許を受け、損害保険業を営む者である。
なお、損保ジャパンは、令和2年4月1日付けで、商号を損害保険ジャパン日本興亜株式会社から現商号に変更した者である。
(2) 本件マリン保険の発注方法等
ア シャープは、平成28年以降、本件マリン保険を共同保険の形式で後記エの方法により発注し、引受損害保険会社を3社としていた。
イ 本件マリン保険の保険期間は1年間であり、毎年11月に更改されていた。
ウ 《代理店》は、平成28年以降、本件マリン保険に係る保険契約の締結の媒介等を行っていた。
エ シャープは、平成28年以降、本件マリン保険について、毎年11月の更改に際し、《代理店》を介することにより、次の方法により発注していた。
(ア) 毎年おおむね7月から8月までの間に、3社による見積り合わせを実施する。
(イ) 前記(ア)の見積り合わせの実施後、3社の中から更改後に幹事会社となる者を指定する。
(ウ) 前記(イ)の幹事会社となる者との間で、3社から提示された見積保険料のうち最も低いものを起点として、保険料及び補償内容に関する交渉を行い、更改後の保険契約における保険料等を決定する。
(エ) 前記(ウ)で決定した保険料等で、3社と保険契約を締結する。
オ 三井住友海上は、平成28年以降、毎年、本件マリン保険の幹事会社に指定されていた。
2 合意及び実施方法
3社は、遅くとも令和2年8月28日以降、本件マリン保険について
(1) 各社の見積保険料を調整することによって保険料の水準を維持する
旨の合意の下に
(2) 3社の営業担当者による会合を開催するなどして
ア 三井住友海上が定めた見積保険料の水準を共有し、当該水準を基準として各社の見積保険料を決定する
イ 前記アの決定に当たっては、各社の見積保険料のうち、三井住友海上の見積保険料が最も低くなるように調整する
ウ 前記ア及びイで調整した見積保険料を提示する
ことにより、保険料の水準を維持できるようにしていた。
3 実施状況
3社は、前記2により、令和2年から令和4年までに更改された本件マリン保険の全てについて、保険料の水準を維持していた。
4 前記2の行為が既に行われていないこと
(1) 東京海上は、令和5年7月28日までに、課徴金の減免に係る事実の報告及び資料の提出に関する規則(令和2年公正取引委員会規則第3号。以下「課徴金減免規則」という。)第4条第1項の規定に基づき、公正取引委員会に対して様式第1号による報告書を提出するとともに、本件マリン保険に係る自社の営業担当者に対して前記2の合意に基づく行為を行わないよう指示を行い、同日以降、同合意に基づく行為を行っていない。
(2) 損保ジャパンは、令和5年7月31日までに、課徴金減免規則第4条第1項の規定に基づき、公正取引委員会に対して様式第1号による報告書を提出するとともに、本件マリン保険に係る自社の営業担当者に対して前記2の合意に基づく行為を行わないよう指示を行い、同日以降、同合意に基づく行為を行っていない。
(3) 前記(1)及び(2)の事実によれば、令和5年7月31日以降、前記2の合意に基づく行為は行われていないと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば、3社は、共同して、本件マリン保険について、各社の見積保険料を調整することによって保険料の水準を維持できるようにすることにより、公共の利益に反して、本件マリン保険の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、3社は、いずれも、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が長期間にわたって行われていたこと等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、3社に対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。
令和6年10月31日
委員長 古 谷 一 之
委 員 三 村 晶 子
委 員 青 木 玲 子
委 員 𠮷 田 安 志
委 員 泉 水 文 雄