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独禁法3条後段
令和06年(措)第14号
東京都千代田区神田駿河台三丁目9番地
三井住友海上火災保険株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》
東京都千代田区大手町二丁目6番4号
東京海上日動火災保険株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》
東京都渋谷区恵比寿一丁目28番1号
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》
東京都新宿区西新宿一丁目26番1号
損害保険ジャパン株式会社
同代表者 代表取締役 《氏名》
公正取引委員会は、上記の者らに対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。
なお、主文、理由、別紙1及び別紙2中の用語のうち、別紙2「用語」欄に掲げるものの定義は、別紙2「定義」欄に記載のとおりである。
主 文
1 三井住友海上火災保険株式会社(以下「三井住友海上」という。)、東京海上日動火災保険株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社(以下「あいおい」という。)及び損害保険ジャパン株式会社(以下「損保ジャパン」という。)の4社(以下「4社」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
(1) 別紙1記載の損害保険(以下「本件グループ包括保険」という。)について、4社が、遅くとも令和元年12月25日以降共同して行っていた、幹事会社とすべき者(以下「予定幹事会社」という。)を決定し、予定幹事会社が幹事会社に選定されるようにするとともに、予定幹事会社が定めた見積金額を基にした保険料及び保険料率(以下「保険料等」という。)で契約できるようにする行為を既に行っていないことを確認すること。
(2) 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、京成電鉄株式会社(以下「京成電鉄」という。)が見積り合わせの方法により発注する京成電鉄を保険契約者とする損害保険について、予定幹事会社又は見積金額を決定せず、自主的に決めること。
2 4社は、それぞれ、前項に基づいて採った措置を、自社を除く3社並びに京成電鉄及び《損害保険代理店A》(以下「《代理店A》」という。)に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 4社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、京成電鉄が見積り合わせの方法により発注する京成電鉄を保険契約者とする損害保険について、予定幹事会社又は見積金額を決定してはならない。
4 4社は、それぞれ、次の(1)から(3)までの事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 共同保険の形式により発注される損害保険の引受けに関する独占禁止法の遵守についての、共同保険の形式により発注される損害保険の営業担当者に対する定期的な研修並びに法務担当者及び第三者による定期的な監査
(2) 独占禁止法違反行為に関与した役員及び従業員に対する処分に関する規程の改定(損保ジャパンにあっては独占禁止法違反行為に関与した役員に対する処分に関する規程の改定)
(3) 独占禁止法違反行為に係る調査への協力を行った者に対する適切な取扱いを定める規程の作成
5 4社は、それぞれ、第1項、第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
理 由
第1 事実
1 関連事実
(1) 名宛人の概要
4社は、それぞれ、肩書地に本店を置き、保険業法(平成7年法律第105号)の規定に基づき内閣総理大臣の免許を受け、損害保険業を営む者である。
なお、損保ジャパンは、令和2年4月1日付けで、商号を損害保険ジャパン日本興亜株式会社から現商号に変更した者である。
三井住友海上及びあいおいは、MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社の完全子会社である。
(2) 本件グループ包括保険の発注方法等
ア 京成電鉄は、本件グループ包括保険を共同保険として発注し、引受損害保険会社を4社としていた。
イ 《代理店A》は、京成電鉄の完全子会社であり、損害保険代理業を営む者であるところ、4社と損害保険代理店契約を締結し、本件グループ包括保険に係る契約事務等を行っていた。
ウ 本件グループ包括保険の保険期間は1年間であり、毎年更改が行われていた。
また、本件グループ包括保険の保険料は、本件グループ包括保険の保険料算出の基礎となる数字に保険料率を乗じて算出されていた。
エ 京成電鉄は、本件グループ包括保険の更改に際して、3年に1回、4社による見積り合わせを実施して、最も低い保険料の見積金額を提示した者をその後の3年間の幹事会社となる者としていた。そして、当該幹事会社となる者が提示した見積金額を基にして当該幹事会社となる者と交渉を行い、3年間の原則となる保険料率を決定していた。
オ 京成電鉄は、幹事会社の引受割合を最も大きいものにするという前提の下、幹事会社及び非幹事会社の引受割合を決定していた。
カ 京成電鉄は、《代理店A》を通じて、幹事会社及び非幹事会社に対し、前記エの保険料率によって算出した保険料を、前記オの引受割合に応じて支払っていた。
2 合意及び実施方法
4社は、遅くとも令和元年12月25日以降、本件グループ包括保険について、保険料等の低落防止等を図るため
(1) ア 予定幹事会社を決定する
イ 予定幹事会社以外の者は、予定幹事会社が幹事会社に選定されるように協力する
ウ 予定幹事会社が定めた見積金額を基にした保険料等で契約できるようにする
旨の合意の下に
(2) ア 前回の見積り合わせにおいて幹事会社となった者を予定幹事会社とする
イ 予定幹事会社が提示する見積金額は予定幹事会社が定め、予定幹事会社以外の者は、予定幹事会社から連絡を受けた当該見積金額よりも高い見積金額を提示する
ことにより、予定幹事会社を決定し、予定幹事会社が幹事会社に選定されるようにするとともに、予定幹事会社が定めた見積金額を基にした保険料等で契約できるようにしていた。
3 実施状況
(1) 予定幹事会社は、前記2(1)の合意に基づき、本件グループ包括保険の全てについて、幹事会社となっていた。
(2) 4社は、前記2(1)の合意に基づき、本件グループ包括保険の全てについて、予定幹事会社が定めた見積金額を基にした保険料等で契約していた。
4 前記2の行為が既に行われていないこと
(1) 損保ジャパンは、令和5年7月28日までに、課徴金の減免に係る事実の報告及び資料の提出に関する規則(令和2年公正取引委員会規則第3号。以下「課徴金減免規則」という。)第4条第1項の規定に基づき、公正取引委員会に対して様式第1号による報告書を提出するとともに、本件グループ包括保険に係る自社の営業担当者に対して前記2の合意に基づく行為を行わないよう指示を行い、同日以降、同合意に基づく行為を行っていない。
(2) 三井住友海上及びあいおいは、令和5年7月31日までに、課徴金減免規則第4条第1項の規定に基づき、共同して、公正取引委員会に対して様式第1号による報告書を提出するとともに、それぞれ、本件グループ包括保険に係る自社の営業担当者に対して前記2の合意に基づく行為を行わないよう指示を行い、同日以降、同合意に基づく行為を行っていない。
(3) 前記(1)及び(2)の事実によれば、令和5年7月31日以降、前記2の合意に基づく行為は行われていないと認められる。
第2 法令の適用
前記事実によれば、4社は、共同して、本件グループ包括保険について、予定幹事会社を決定し、予定幹事会社が幹事会社に選定されるようにするとともに、予定幹事会社が定めた見積金額を基にした保険料等で契約できるようにすることにより、公共の利益に反して、本件グループ包括保険の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、4社は、いずれも、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が長期間にわたって行われていたこと等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、4社に対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。
令和6年10月31日
委員長 古 谷 一 之
委 員 三 村 晶 子
委 員 青 木 玲 子
委 員 𠮷 田 安 志
委 員 泉 水 文 雄