公正取引委員会審決等データベース

文字サイズの変更

背景色の変更

本文表示content

損害保険会社らに対する件

独禁法3条後段

令和06年(措)第15号

排除措置命令

東京都新宿区西新宿一丁目26番1号
損害保険ジャパン株式会社
 同代表者 代表取締役 《氏名》

東京都千代田区大手町二丁目6番4号
東京海上日動火災保険株式会社
 同代表者 代表取締役 《氏名》

東京都千代田区神田駿河台三丁目9番地
三井住友海上火災保険株式会社
 同代表者 代表取締役 《氏名》

公正取引委員会は、上記の者らに対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき、次のとおり命令する。

主    文
1  損害保険ジャパン株式会社(以下「損保ジャパン」という。)、東京海上日動火災保険株式会社(以下「東京海上」という。)及び三井住友海上火災保険株式会社の3社(以下「3社」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
(1) 警視庁が希望制指名競争入札の方法により発注する任意自動車保険について、3社が、遅くとも令和4年3月2日以降共同して行っていた、受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定し、受注予定者が受注できるようにする行為を既に行っていないことを確認すること。
(2) 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、警視庁が発注する損害保険について、受注予定者を決定せず、自主的に受注活動を行うこと。
2  3社は、それぞれ、前項に基づいて採った措置を、自社を除く2社及び警視庁に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3  3社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、警視庁が発注する損害保険について、受注予定者を決定してはならない。
4  3社は、それぞれ、次の(1)から(3)までの事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 官公需の受注に関する独占禁止法の遵守についての、官公需の営業担当者に対する定期的な研修並びに法務担当者及び第三者による定期的な監査
(2) 独占禁止法違反行為に関与した役員及び従業員に対する処分に関する規程の改定(損保ジャパンにあっては独占禁止法違反行為に関与した役員に対する処分に関する規程の改定)
(3) 独占禁止法違反行為に係る調査への協力を行った者に対する適切な取扱いを定める規程の作成
5  3社は、それぞれ、第1項、第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。

理    由
第1  事実
1  関連事実
(1) 名宛人の概要
3社は、それぞれ、肩書地に本店を置き、保険業法(平成7年法律第105号。以下同じ。)の規定に基づき内閣総理大臣の免許を受け、損害保険業を営む者である。
(2) 警視庁が希望制指名競争入札の方法により発注する任意自動車保険の発注方法等
ア 警視庁は、任意自動車保険について、希望制指名競争入札を実施するに当たり、東京都が定める物品買入れ等競争入札参加資格の中の営業種目「その他の業務委託等」の有資格者を対象に、保険業法の規定に基づく損害保険業の免許を有すること等の所定の条件を付して入札の参加希望者を募り、入札参加希望者の中から当該入札の参加者を指名していた。
イ 令和4年3月2日から令和5年7月27日までの間、警視庁が希望制指名競争入札の方法により発注する任意自動車保険について入札参加者として指名を受けていたのは、3社のみであった。
2  合意及び実施方法
3社は、遅くとも令和4年3月2日以降、警視庁が希望制指名競争入札の方法により発注する任意自動車保険について
(1)ア 受注予定者を決定する
イ 受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に
(2)ア 損保ジャパンを受注予定者とする
イ 損保ジャパンが提示する入札価格は損保ジャパンが定め、損保ジャパン以外の者は、損保ジャパンが定めた価格で受注できるよう、当該価格を上回る入札価格を提示する
ことにより、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。
3  実施状況
3社は、前記2により、警視庁が希望制指名競争入札の方法により発注する任意自動車保険の全てについて、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにし、損保ジャパンは、当該任意自動車保険の全てを受注していた。
4  前記2の行為が既に行われていないこと
東京海上及び損保ジャパンは、それぞれ、警視庁が発注する任意自動車保険に係る自社の営業担当者に対して前記2の合意に基づく行為を行わないよう指示を行うとともに、令和5年7月28日に課徴金の減免に係る事実の報告及び資料の提出に関する規則(令和2年公正取引委員会規則第3号)第4条第1項の規定に基づき、公正取引委員会に対して様式第1号による報告書を提出し、同日以降、同合意に基づく行為を行っていない。このため、同日以降、前記2(1)の合意に基づき受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにする行為は行われていないと認められる。
第2  法令の適用
前記事実によれば、3社は、共同して、警視庁が希望制指名競争入札の方法により発注する任意自動車保険について、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、警視庁が希望制指名競争入札の方法により発注する任意自動車保険の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、この行為は、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。
また、前記の違反行為は既になくなっているが、3社は、いずれも、独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者であり、違反行為が自主的に取りやめられたものではないこと等の諸事情を総合的に勘案すれば、特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって、3社に対し、独占禁止法第7条第2項の規定に基づき、主文のとおり命令する。

令和6年10月31日

委員長 古  谷  一  之
委 員 三  村  晶  子
委 員 青  木  玲  子
委 員 𠮷  田  安  志
委 員 泉  水  文  雄

ページトップへ

ページトップへ