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熊本県漁業協同組合連合会による留置物仮還付義務付け等請求事件

独禁法19条、一般指定12項
福岡地方裁判所第1民事部

令和6年(行ウ)第14号

判決

令和7年1月29日

熊本市西区中原656番地
原告          熊本県漁業協同組合連合会
同代表者代表理事    ≪X1≫
同訴訟代理人弁護士   平山賢太郎
同           山本陽介
同           堀 隆聖
東京都千代田区霞が関一丁目1番1号
被告          国 
同代表者法務大臣    鈴木馨祐
処分行政庁       公正取引委員会
同委員会代表者委員長  古谷一之
同指定代理人      窪田大輔
同           田中義一
同           石野耕二
同           下川琴江
同           永峰加容子
同           福重有紀
同           細波 涼
同           岩下生知
同           石井崇史
同           岡田博己
同           高取勇介
同           堤 優子
同           並木 悠
同           深澤尚人
同           田邊節子
同           石原健司
同           鹿野修弘
同           川口菜摘子
同           山中康平
同           本田朋宏
同           松下晃輔
同           野津沙織
同           藤村 響
同           山本浩平
同           荻野祥平

令和7年1月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和6年(行ウ)第14号 留置物仮還付義務付け等請求事件
口頭弁論終結日 令和6年10月9日
判決
当事者の表示 別紙1当事者目録記載のとおり
主文
1 本件訴えをいずれも却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 原告が公正取引委員会に対して令和6年3月4日付けでした原告と乙種指定商社との間で締結された令和3年度の入札等に関する契約書類一式(以下「本件物件」という。)の仮還付の申請につき、公正取引委員会が当該申請に対する仮還付をしないことが違法であることを確認する(以下、この請求に係る訴えを「本件不作為違法確認の訴え」という。)。
2 公正取引委員会は、原告に対し、本件物件を仮還付せよ(以下、この請求に係る訴えを「本件義務付けの訴え」という。)。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
公正取引委員会は、令和4年6月7日、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)47条1項4号に基づき、原告の事業所への立入検査を行い、原告に対し、同項3号に基づき、物件の提出を命じ、これを留置した。
本件は、原告が、被告を相手に、行政事件訴訟法に基づき、公正取引委員会の留置した前記物件の一部である本件物件(原告と乙種指定商社との間で締結された令和3年度の入札等に関する契約書類一式)について、公正取引委員会の審査に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第5号。以下「審査規則」という。)17条2項に基づく仮還付をしないことが違法であることの確認及び本件物件の仮還付の義務付けを求める事案である。
1 前提事実(争いのない事実、顕著な事実並びに掲記の証拠〔書証の記載は、特に断らない限り、枝番号のものを含む。以下同じ。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
⑴ 当事者
原告は、水産資源の管理及び水産動植物の増殖、水産に関する経営及び技術の向上に関する指導、所属員の漁獲物その他の生産物の運搬、加工、保管又は販売等を事業とする漁業協同組合連合会である。
⑵ 本件物件の留置
公正取引委員会は、原告の行為が独占禁止法19条に違反する疑いがあるとして、令和4年6月7日、独占禁止法47条1項4号に基づき、原告の事業所への立入検査を行うとともに、同項3号に基づき、原告に対して物件(本件物件を含む)の提出を命じ、これを留置した(乙1の1)。
その際、公正取引委員会は、原告に対し、「立入検査の翌日以降、提出物件(留置物)を閲覧・謄写することができる」旨の記載がある「事業者等向け説明資料」(乙1の2)を交付した。
⑶ 意見聴取の通知
公正取引委員会は、原告に対する事件(以下「本件審査事件」という。)の審査を進め、令和5年11月28日付けで、原告に対し、原告に対して独占禁止法20条1項に基づき行う予定の排除措置命令(以下「本件排除措置命令」という。)に係る意見聴取を行う旨の①意見聴取通知書及び②証拠の閲覧・謄写申請書等の書式を送付した。
⑷ 排除措置命令の差止めの訴え等の提起
原告は、前記⑶の意見聴取の通知を受け、令和5年12月14日、東京地方裁判所に対し、本件排除措置命令の差止めの訴え(以下「別件差止訴訟」という。)を提起するとともに、本件排除措置命令の仮の差止めの申立て(以下「別件仮の差止申立て」という。)をした(甲2、乙3)。
⑸ 別件仮の差止申立てを却下する旨の決定
東京地方裁判所は、令和6年1月9日、別件仮の差止申立てについて、仮の差止めの要件である「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要」行政事件訴訟法37条の5第2項)がないことを理由に、これを却下する旨の決定(乙3)をした。
⑹ 本件仮還付請求
原告は、令和6年3月5日、公正取引委員会に対し、「審査規則17条2項に基づく請求」と題する同月4日付け上申書(甲3)を提出し、「排除措置命令に対する差止訴訟のため」として、審査規則17条2項に基づき、公正取引委員会が留置する本件物件について仮に還付することを請求した(以下、留置物の仮還付の請求を「本件仮還付請求」という。)。
⑺ 公正取引委員会事務総局審査局の原告代理人に対する電子メールの送信
公正取引委員会事務総局審査局は、原告代理人に対し、令和6年3月6日、要旨次のような記載がある電子メール(以下「本件電子メール」という。甲6)を送信した。
ア 本件仮還付請求については、事件審査に支障を来すこと、また、排除措置命令に係る訴訟が係属中であることから、これに応ずることはできない旨
イ 留置物については、審査規則18条により、閲覧謄写を申請することができるので、閲覧謄写を希望する場合には、希望する物件を留置物目録から特定した上で、添付の「提出物件の閲覧・謄写申請書」を提出するように求める旨
⑻ 本件訴えの提起
原告は、令和6年3月7日、本件訴えを提起した(顕著な事実)。
⑼ 別件差止訴訟を却下する旨の判決
東京地方裁判所は、令和6年5月9日、別件差止訴訟について、「重大な損害を生ずるおそれ」(行訴法37条の4第1項本文)があるとは認められないことを理由に、これを却下する旨の判決(乙5)をし、その後、当該判決が確定した。
⑽ 本件排除措置命令
公正取引委員会は、原告に対し、令和6年5月15日付けで、本件排除措置命令(ただし、本件排除措置命令の案文(甲1)からその内容が一部変更されたもの。乙6)をした。
3 本件の争点及びこれに関する当事者の主張
本件の争点は、次の⑴~⑷であり、これに関する当事者の主張は、別紙2争点に関する当事者の主張のとおりである。
⑴ 本件不作為違法確認の訴えの適法性(本案前の争点)
ア 審査規則17条2項に基づく仮還付の請求が行政事件訴訟法3条5項にいう「法令に基づく申請」に該当し、当該請求に対する公正取引委員会の応答が抗告訴訟の対象となる行政処分に該当するか否か
イ 訴えの利益の有無
⑵ 本件義務付けの訴えの適法性(本案前の争点)
⑶ 公正取引委員会が原告に対して本件物件の仮還付をしないことが違法であるか否か(本案の争点)
⑷ 本件義務付けの訴えの本案要件(行政事件訴訟法37条の3第7項)の具備の有無(本案の争点)
第3 当裁判所の判断
1 争点⑴(本件不作為違法確認の訴えの適法性)について
⑴ 行政事件訴訟法3条5項にいう「法令に基づく申請」の該当性等について
ア 独占禁止法47条1項は、公正取引委員会は、事件について必要な調査をするため、次に掲げる処分をすることができる旨を規定し、同項3号は、「帳簿書類その他の物件の所持者に対し、当該物件の提出を命じ、又は提出物件を留めて置くこと。」を掲げ、同法76条1項は、公正取引委員会は、その内部規律、事件の処理手続及び届出、認可又は承認の申請その他の事項に関する必要な手続について規則を定めることができる旨を規定する。そして、これを受けて、審査規則17条は、①留置物で留置の必要がなくなったものは、事件の終結を待たないで、これを還付しなければならず(1項)、②留置物は、所有者又は差出人の請求により、仮にこれを還付すること(以下「留置物の仮還付」という。)ができる(2項)旨を規定する。
このような公正取引委員会が事件について必要な調査をするための物件の提出・留め置きに関する制度の仕組みに鑑みれば、独占禁止法47条1項3号所定の処分は、公正取引委員会が物件の所持者からその対象となった物件の占有を取得する処分であり、審査規則17条2項は、公正取引委員会が、所有者又は差出人の請求により、留置物の仮還付として暫定的に当該処分を解いて原状を回復することができる旨を規定し、公正取引委員会に対しその裁量により留置物の仮還付をする権限を付与したものと解するのが相当である。そうすると、審査規則17条2項は、公正取引委員会が、留置物の仮還付の請求をした所有者又は差出人に対し、その判断の結果を告知し、これに応答すべきことを定めていると解するのが相当である。
以上によれば、公正取引委員会の行う留置物の仮還付の請求に対する決定は、審査規則17条2項所定の所有者又は差出人の留置物の占有に関する権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解するのが相当である。
そうすると、原告が公正取引委員会に対してした本件仮還付請求(前提事実⑹)は、行政事件訴訟法3条5項にいう「法令に基づく申請」に当たるというべきである。
イ 以上の説示に反する被告の主張(別紙2の1⑴(被告の主張)参照)は、採用することができない。
⑵ 訴えの利益について
ア 独占禁止法及び審査規則は、前記⑴で説示した公正取引委員会の行う留置物の仮還付の請求に対する決定の告知方法については特段の規定を置いていない。そうすると、当該決定の効力は、特別の定めがない限り、当該決定がその請求者に到達した時、すなわち請求者が現実にこれを了知し又は了知し得べき状態におかれた時に発生すると解するのが相当である。
これを本件についてみると、前提事実によれば、公正取引委員会は、令和6年3月5日、原告から本件仮還付請求を受け(前提事実⑹)、同月6日、公正取引委員会事務総局審査局において、原告代理人に対し、事件審査に支障を来すこと、排除措置命令に係る訴訟が係属中であることを理由に、本件仮還付請求には応ずることができない旨の記載がある本件電子メールを送信した(前提事実⑺)というのである。本件電子メールは、その記載内容に照らし、公正取引委員会がした本件仮還付請求を拒否する旨の決定を原告に了知させる趣旨のものと解されるから、当該決定は、これによりその効力が発生したというべきである。本件電子メールに不服申立てをすべき行政庁等の教示(行政不服審査法82条)や取消訴訟等の提起に関する事項の教示(行政事件訴訟法46条)がないことは、行政庁としてすべきことがされなかったにすぎず、このことによりその行政処分が違法となるものでもないから、前記判断を妨げるものではない。
したがって、原告は、本件仮還付請求に対する不作為の違法確認を求める訴えの利益を有しないものと解するのが相当である。
そうすると、本件不作為違法確認の訴えは、訴訟要件を満たさない不適法なものであるといわざるを得ない。
イ これに対し、原告は、本件電子メールが担当審査課の本件審査事件の担当審査官が送付したものであるにすぎず、本件不作為違法確認の訴えについて訴えの利益を失わない旨を主張するが、以上に説示したところに照らし、原告の前記主張は、採用することができない。
2 争点⑵(本件義務付けの訴えの適法性)について
本件義務付けの訴えは、いわゆる申請型の義務付けの訴え(行政事件訴訟法3条6項2号)として提起されたものと解されるところ、同法は、申請型の義務付けの訴えについて、「当該法令に基づく申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされないとき」に限り、提起することができ(同法37条の3第1項1号)、これを提起するときは、その処分又は裁決に係る不作為の違法確認の訴えをその義務付けの訴えに併合して提起しなければならない(同条3項1号)旨を規定している。
前記1で判示したところによれば、本件仮還付請求については、「当該法令に基づく申請に対し相当の期間内に何らの処分がされないとき」に当たるとはいえないから、行政事件訴訟法37条の3第1項所定の訴訟要件を満たしておらず、また、本件義務付けの訴えと併合して提起された本件不作為違法確認の訴えが不適法であるから、同条3項所定の訴訟要件も満たしていない。
したがって、本件義務付けの訴えは、訴訟要件を満たさない不適法なものであるといわざるを得ない。
3 結語
よって、本件訴えは、いずれも不適法であるから却下することとし、主文のとおり判決する。

令和7年1月29日

裁判長裁判官  林 史高     
裁判官     住田知也     
裁判官本城伶奈は、差支えのため、署名押印することができない。     
裁判長裁判官  林 史高

(別紙2)
争点に関する当事者の主張

1 争点⑴ 本件不作為違法確認の訴えの適法性(本案前の争点)
⑴ 審査規則17条2項に基づく仮還付の請求が行政事件訴訟法3条5項にいう「法令に基づく申請」に該当し、当該請求に対する公正取引委員会の応答が抗告訴訟の対象となる行政処分に該当するか否か
(原告の主張)
審査規則17条2項は、留置物の還付についての同条1項とは異なり、調査のための留置の必要性はなお認められるものの、「所有者又は差出人」として留置物に対して個別的な権利利益を有する請求人の便宜と留置物を一時的に請求人に返却することが調査に与える支障とを合理的に考量し、留置物の所有者等の「請求」に基づいて当該申請への応答として仮に当該留置物を還付する旨を判断することを規定したものである。
また、審査規則17条2項は、「請求」という文言を用いており、同項の留置物の仮還付は、公正取引委員会が法律の根拠に基づく物件の留置という権力的作用(処分)を解除する行為であって、これにより請求人の留置物の占有を回復することができるから、当該留置物の所有者又は占有者の権利関係に対する法的な影響を認めることができる。
したがって、仮還付の請求には申請権(審査規則17条2項)が認められ、その請求を受けた公正取引委員会には当該請求に対する応答義務が課されているものといえるから、本件仮還付請求は、行政事件訴訟法3条5項所定の「法令に基づく申請」に当たり、本件不作為違法確認の訴えの対象も抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。
(被告の主張)
審査規則17条2項の留置物の仮還付は、留置物について、いまだ留置の必要があることを前提に、所有者又は差出人に対し、当該物件を一時的に交付することであり、独占禁止法47条1項3号に基づく留置の効力は継続したままであるため、仮に、留置物の所有者又は差出人において、留置物の仮還付を受けたとしても、公正取引委員会から当該物件の返還を求められた場合、これを拒むことはできない。
また、審査規則17条2項は、「留置物は、所有者又は差出人の請求により、仮にこれを還付することができる。」と規定するのみであり、法令上、仮還付をするための要件や手続は何ら定められておらず、仮還付の請求に基づいて留置物の仮還付を行う仕組みは規定されていない。また、同項に基づく仮還付の請求に対しては、仮に留置物を還付することが「できる」との文言が用いられており、同請求に対する行政庁の審査・応答義務が規定されていないことからすれば、同項の「請求」とは、飽くまで、公正取引委員会に職権発動を促すにとどまり、当該「請求」に対して公正取引委員会が何らかの処分をすべき義務(応答義務)を負うものではないというべきである。
そうすると、審査規則17条2項に基づく留置物の仮還付は、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものではないし、また、同項に基づく仮還付の請求に対して、これに応じない旨の公正取引委員会の応答は、職権の発動をしない旨を事実上回答したにすぎないものであるから、同項に基づく仮還付の請求に対する公正取引委員会の応答の処分性は否定されるというべきである。
したがって、原告がした審査規則17条2項に基づく仮還付の請求は、行政事件訴訟法3条5項所定の「法令に基づく申請」に当たらず、本件不作為違法確認の訴えの対象も抗告訴訟の対象となる行政処分に該当しない。
⑵ 訴えの利益の有無
(原告の主張)
公正取引委員会第四審査担当審査官が、原告代理人に対し、令和6年3月6日、本件仮還付申請に応じることができない旨の本件電子メールを送付した(前提事実⑺)が、これは、担当審査課の本件審査事件の担当審査官が送付したものであるにすぎず、不服申立て及び取消訴訟に関する事項の教示(行政不服審査法82条1項、行政事件訴訟法46条)もされていないため、原告は、本件電子メールの通知内容が公正取引委員会による行政処分であるという余地はない。
したがって、公正取引委員会の組織としての意思決定である本件仮還付申請の当否に関する処分は、未だされていない状態(申請に対して法令上の応答がない状態)であり、本件不作為違法確認の訴えにつき、訴えの利益は認められる。
(被告の主張)
公正取引委員会は、令和6年3月6日、原告代理人宛ての電子メールで、原告に対し、本件仮還付請求には応じることができない旨を回答した(前提事実⑺)。
したがって、原告の本件仮還付請求に対し何らの応答がされないという不作為の状態は既に解消されているのであり、本件不作為違法確認の訴えは、訴えの利益が失われた。
2 争点⑵ 本件義務付けの訴えの適法性(本案前の争点)
(原告の主張)
本件不作為違法確認の訴えが適法であることは、前記1(原告の主張)のとおりである。
(被告の主張)
申請型の義務付けの訴えについては、申請又は審査請求に対して相当の期間内に処分又は裁決がされないことを理由とするときは、その処分又は裁決に係る不作為の違法確認の訴えを、その義務付けの訴えに併合して提起しなければならない(行訴法37条の3第3項1号)。そして、同項は、併合提起される不作為の違法確認の訴え等が適法であることを前提としているものと解されるため、併合提起された不作為の違法確認の訴え等が不適法なものであるときは、義務付けの訴えは、適法な不作為の違法確認の訴え等と併合して提起されたことにはならず、不適法な訴えとして却下すべきこととなる。
これを本件についてみると、本件不作為違法確認の訴えは、前記1(被告の主張)のとおり訴訟要件を欠き、不適法であるから、申請型の義務付けの訴えである本件義務付けの訴えは、行訴法37条の3第3項所定の訴訟要件を欠き、不適法である。
3 争点⑶ 公正取引委員会が原告に対して本件物件の仮還付をしないことが違法であるか否か(本案の争点)
(原告の主張)
原告は、公正取引委員会に対し、令和6年3月5日、本件仮還付請求をした(前提事実⑹)から、公正取引委員会は、相当の期間内に何らかの処分をしなければならないにもかかわらず、これをしない。また、公正取引委員会が原告に対して留置物の仮還付をしなければならないことは、後記4(原告の主張)のとおりである。
したがって、公正取引委員会が審査規則17条2項に基づく本件物件の仮還付をしないことは、違法である。
(被告の主張)
争う。
4 争点⑷ 本件義務付けの訴えの本案要件(行政事件訴訟法37条の3第7項)の具備の有無(本案の争点)
(原告の主張)
審査規則17条は、留置物について還付が行われる旨(1項)を規定した上で、留置物について差出人等に対して一時的に仮の還付が行われる旨(2項)を規定している。公正取引委員会は、この規定の存在を「独占禁止法審査手続に関する指針」において被疑事業者に広く周知しているところ、留置の必要がなくなったといえない楊合であっても、留置物の差出人等から仮還付請求があった場合には事件の終結を待つことなく当該留置物を仮に還付するということが、同条の規定によって当然に予定されているのである。
したがって、原告が差出人等である留置物については、公正取引委員会が原告に対して当該留置物を仮還付することによって、原告に対して、差止訴訟において当該留置物の原本の内容を確認し、その内容に基づく主張立証を行う機会を与える必要がある。
公正取引委員会が原告に対して留置物の仮還付をしなければならないことは明らかであって、これをしないことには合理的な理由を見出すことができず、明らかな裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がある。
(被告の主張)
争う。
以 上

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